第70回 平成28年度予算成立~子育て支援事業について~など、政治・経済を中心とした日常的な情報を、独自な視点で解析します。

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<前回の記事 第69回 平成28年度予算成立①

さて、今回の話題。実は前回の記事で掲載しようと考えていた内容なのですが、前回は別のネタが大きく膨らみすぎまして、とても今回の内容を掲載するスペースを作ることができず・・・。

ということで、改めて今回の記事にて掲載いたします。

「予算」の考え方

今回の記事を作成するに至った一つの理由が、ニュース上でよく話題になっている、「保育園落ちた。日本しね」という内容のブログに関する話題です。

山尾志桜里議員が国会で取り上げ、これがにわかにマスメディアでも数多く取り上げられるようになりました。

「保育園落ちた」現象と政治の甘さ
 「保育園落ちた日本死ね!!!」と書かれたブログがきっかけだった。保育制度の改革を求める3万近くの署名がたちまち集まり、ブログに共感した人たちが「保育園落ちたの私だ」と国会前で訴えた。このスピード感と規模。一方、政権の側は当初の冷淡な反応も含め、後手に回っているという印象がぬぐえない。この認識の甘さは何だ?

朝日新聞のWEBRONZAという記事から拝借しました。正直、この記事のあまりにもの稚拙さには幻滅します。

考えればわかると思うのですが、このブログを国会で取り上げることは事前に民主党支持者側には周知されており、この報道に合わせて計画的に集合した、と考えるのが普通です。つまり、スピード感があるのも、規模があるのも当たり前。
政権側の対応と比べることそのものがナンセンスだと思います。

それでは、いわゆる「政権側」は、山尾議員が国会でこのブログを取り上げるまで何もしていなかったのでしょうか。
もちろんそんなことはありません。山尾議員が言っているのは、「もっと金を出せ」と言っているわけです。

保育士処遇改善へ共同 給与5万円上げ 5野党が法案提出

その額実に月額5万。その理由として、「全産業平均給与所得と比較して保育士の平均給与は10万円近く少ない」ことが理由として挙げられています。
ただ、月額5万円とすると、年額で60万円の増額になります。
リンクを張っている赤旗さんの情報によれば、これは予算総額で2800億円に上るのだそうです。

私のブログを見ていると、「え? たった2800億円?」という感覚を覚える人も多いかもしれませんね。
それでもものすごい金額であることには変わりないんですが。

ただ、この「2800億円」という予算。これ、「単年度、単発で支給すればよい財源」ではなく、「恒久的に、永続して支払う必要のある財源」であるところが一つの肝になります。

消費税予算表


こちらは、今年度。平成28年度に見込まれる消費税収のうち、消費増税に伴う増収分。8.2兆円となっていますね。
13年度が10.8兆円でしたから、19兆円は見込んでいる、ということでしょうか。

こちらは、私が第65回の記事で「政府が想定している」とした金額を3兆円ほど上回っていますね。

表は、内閣府が公表している平成28年度予算案における 子ども・子育て支援新制度の状況についてというPDF資料から拝借しました。

ちなみに、10%まで増税されたケースも想定されています。

消費税財源グラフ

14兆円ですか・・・。私が試算している28年度消費税収総額を3兆円ほど上回っていますね。ここはまあ、前度の消費税収が最終的にいくらになるのか、それ次第ですね。

一方で年金の国庫負担分についてはほぼ増えていません。
私の試算では13年~15年の3年間が年金収支のピークだと考えていますので、これ以降で年金財政が大問題になることはない、と想定していますが、ここは政府も同様の考えのようです。

少し脱線しました。
「恒久的に、永続して支払う必要のある財源」となりますと、これはやはり「消費税収」ということになります。
この理屈については第33回の記事をご参照ください。

また、一方、同じ平成28年度予算案における 子ども・子育て支援新制度の状況についてを参照すると、政府の新制度により、待機児童の受け入れ数は、下記図の様に拡大しています。

保育所受け皿推移

26年度までが確定数なので、確定しているだけで安倍内閣誕生前と比較して218千人増えていることになります。
ところが一方で、

待機児童数推移

こちらは厚労省が公表している「保育所等関連状況取りまとめ(平成 27 年4月1日)」より拝借した、保育所利用者数と待機児童数の推移を比較したものです。

簡単に表現するとすれば、平成27年度4月時点で、前年度と比較して保育所利用者数が63千人増えた結果、待機児童が増えて合計で23千人になりましたよ、ということになります。

政府の予定では、平成29年度の時点で、25年より5年間で合計456千人の受け皿を作ろうとしています。
問題になっているのは、この時「箱もの」だけできても、ここで働く保育士の数が足りない、ということなのです。

そこで、政府は制度を改正して「保育補助者雇上強化事業」を導入することにより、この保育士の不足分を補おうと考えている、というのが現状です。保育士の資格は持たないが、保育事業にかかわることのできる「保育補助者」を導入し、より早く人材不足解消につなげようとしているわけです。

ところが、野党が主張しているのは、「わざわざそんな制度を導入しなくても、保育士の資格を持っていながら、低賃金が理由で保育にかかわっていない「潜在保育士」がいるのだから、給与を上げて潜在保育士が復帰しやすい状況を作ればよいではないか、と主張しているわけです。

野党の主張に介在する、致命的な「矛盾」

さて。お気づきでしょうか。サブタイトルにある、「野党の主張に介在する、致命的な『矛盾』」とは何か。
野党は、

1.人材が不足しているのは、保育士が低賃金が理由で離職することが原因だ。賃金を上げれば人材不足は解消される。

と主張しています。そして、

2.低賃金が理由なのだから、今働いている保育士の賃金を月額で5万円上げろ。その予算は2800億円だ。

ですが、政府は

3.将来的な待機児童問題に対応するため、合計で456千人の待機児童の受け皿を作ることが必要だ

と考えているわけです。
ちなみに、保育園の運営費はほぼ100%運営費補助金なのだそうです。(そのうち1割は保育料)

つまり、実に90%が国や地方公共団体からの補助でこの90%のうちの1/2、つまり45%を国が負担しているんだそうですよ。
もちろんこの45%は、野党が要求している「保育士一人当たり5万円」とは別の財源が必要とされます。

これを、「保育士の賃金を45%国が負担している」といえるのかどうか、これ以上詳細な情報は現時点では集めきれていませんが、即ち国が負担しなければならない「恒久的な財源」としての人権費は毎年2800億円にはとても収まりきらない、ということです。

このことをまったく報道は伝えていませんね?

元々、「社会保障の財源」として消費増税を充てることは、福田内閣~麻生内閣にかけて行われた「社会保障国民会議」にて話し合われました。
このことは、第34回の記事にも掲載しています。

この会議内容とまったく同じ内容の「社会保障制度国民会議」が民主党政権下で行われた(←これぞ典型的な『税金の無駄遣い』)わけですが、この二つの会議の結果として決定的に異なるのは、「社会保障国民会議」では「2025年にかけて、毎年1兆円ずつ増加する『高齢者医療』『介護』『年金』のための財源」を補てんするため消費税率を10%にまで引き上げることが必要だとされた(全額高齢者社会保障のために充ててもまだ財源が不足する)とされたことに対して、「社会保障制度国民会議」では、「10%に増税された中で、一部を少子化対策としても利用することができる」とした点です。

そもそも消費増税が行われることが話し合われたのは、「2023年~2025年にかけて、『団塊の世代』が『後期高齢者』となるために毎年1兆円ずつ不足する『高齢者のための社会保障』」を補てんすることが目的で、元々少子化対策は含まれていませんでした。

にも拘わらず、民主党内閣下で決定した消費増税に関連する法案では、ここに少子化対策のための予算も咲くことが決められたわけです。

そして、掲載した赤旗記事の中で野党5党が主張する「保育士の給与アップのための財源」は「公共事業の削減や法人税課税の見直し」とし、また「大企業の内部留保を踏まえて法人税課税の見直しを行う」としています。

しかし、例えば法人増税を行えば、企業が法人税の安い海外に逃げ出すことも想定されますし、公共事業の削減を行うということは、保育士以外の人たちの仕事を奪うことも想定されるわけです。

安倍内閣も、別に保育士の給与に対して対策をとっていないわけではありません。安倍内閣下でも、安倍内閣以前と比較して、合計で5%。月給20万であれば、月額1万円ずつの給与の見直しもしているわけです。

何より、保育の受け皿を広げることが、今後アベノミクスによって雇用状況が改善されることが想定される中で、喫緊の課題となります。
このようにして考えると、野党5党の主張が、いかに無責任で、実現性を無視した主張であるのかということがわかるのではないでしょうか。

安倍内閣のスタイルは、アベノミクスによって生まれた「果実」を財源として国民に還付していくスタイルです。
財源の裏付けを確保しつつ、現実的な範囲の中で保育士の雇用状況の改善も行っていけばよいだけのこと。

「手段」と「目的」をすり替える野党の姿勢には、正直辟易しますね。

次回記事内容はまだ未定ですが、呼んでいただける皆様のお役に立てる記事を、今後も作成していきたいと思います。



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