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第514回 学術会議任命拒否は違法か?選任方法が変更された理由など、政治・経済を中心とした日常的な情報を、独自な視点で解析します。

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先日より、とあるSNSでタイトルにある学術会議任命拒否の問題が議論となっておりまして、議論を通じて私の中で一つの「答え」がまとまりましたので、備忘録的にこの記事を作成します。

まずはニュースの引用から。

【NHKニュースより】2020年10月9日 17時59分
日本学術会議の元会長 任命拒否は法律違反の可能性と批判

NHKニュース学術会議批判

「日本学術会議」の会員候補6人が任命されなかったことをめぐり、会議の元会長2人が野党の会合に出席し、在任中に2度、会員候補の任命などで政府の関与があったことを明らかにしたうえで、今回の政府の対応は法律違反の可能性があると批判しました。

野党の会合には、3年前の平成29年まで6年間、「日本学術会議」の会長を務めた東京大学の大西隆名誉教授と、大西氏の前に会長を務めた東京大学の広渡清吾名誉教授が出席しました。

この中で大西氏は、在任中、4年前の平成28年に行われた会員の定年に伴う補充人事と、3年前の平成29年の新たな会員候補の任命で、総理大臣官邸の関与があったことを明らかにしました。

そして、4年前の補充人事では官邸が難色を示して欠員となった一方、3年前の会員候補の人事は、候補者を決める前の段階で官邸から選考状況について説明を求められたものの、会議の推薦どおりに任命が行われたということです。

大西氏は政府の対応について「会議の会員になることは、学問の表現の1つの手段だ。その機会が奪われることは、学問の自由を制約していることになる。また、選考基準と違う基準を適用し、任命拒否したとなれば日本学術会議法違反になる」と述べました。

また、広渡氏は「今回の判断は、明らかに日本学術会議法に反する判断で、菅総理大臣の行動は全く誤っているとしかいいようがない。任命されなかった6人を外せば、会議が総合的、ふかん的になるのか、きちんと説明する責任がある」と述べ、それぞれ政府の対応を批判しました。

一方、広渡氏は、自民党の下村政務調査会長が、7日の記者会見で「日本学術会議」について、「法律に基づく政府への答申が2007年以降、提出されていないなど、活動が見えていない」と指摘したことについて、「答申は、政府が諮問してくれないとできない。『あなた方が諮問しなかっただけですよ』ということだ。喜んで活動するので、どうぞ諮問してください」と述べました。

任命された学術会議の会員は99人
日本学術会議の会員として今月1日付けで任命された研究者は99人です。

学術会議の会員は210人とされていて、3年ごとに半数を任命する制度になっていますが、今回は菅総理大臣が6人の任命を見送ったため、会員は204人となっています。

今回、任命された会員は、人文・社会科学の研究者が所属する第一部には、津田塾大学学長の※高橋裕子さん。

生命科学の研究者が所属する第二部には、大阪大学医学系研究科の心臓血管外科学の教授で、世界で初めてiPS細胞を使った心臓病治療の手術を行った澤芳樹さん。

理学・工学の研究者が所属する第三部には東京大学地震研究所の教授で、津波のメカニズムの研究をしている佐竹健治さんなどがいます。

一方、今回、会員に任命されなかった6人は全員、「安全保障関連法に反対する学者の会」の呼びかけ人、または賛同者でした。

NHKが調べたところ任命された99人のうち、劇作家で大阪大学特任教授の平田オリザさんなど10人もこの会の呼びかけ人、または賛同者として会のホームページに掲載されています。

改めて述べる必要もないかもしれませんが、上記の記事で問題とされているのは、本年(令和2年)10月に内閣総理大臣へと就任した菅(すが)さんが、日本学術会議新会員を任命する際、日本学術会議から新会員候補者として推薦を受けた105名の内、任命しなかった、とされる問題の事です。

推薦を受けた新会員候補者の内6名を任命しなかったことを「任命を拒否した」と吹聴し、これが「日本学術会議法違反の疑いがある」と前学術会議会長である大西隆氏が主張している、というのが上記記事の内容です。

今回の記事の目的は、この「任命拒否問題」の違法性を否定することにあります。


前会長が違法性を主張する「学術会議法」とは?

「日本学術会議」そのものについては私も今回の騒動で初めて認知したタイプですから、これがどのようなものか、という具体的な説明は省略します。(正確性を欠く可能性が非常に高いため)

単純に言えば「日本の学者によって構成された、内閣府の下部組織」です。それ以上具体的な説明は現段階では控えます。

で、「日本学術会議法」とは、その日本学術会議の在り方について定めた法律の事です。

前文と1条、2条だけ先に掲載しておきます。

日本学術会議法

日本学術会議は、科学が文化国家の基礎であるという確信に立つて、科学者の総意の下に、わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と提携して学術の進歩に寄与することを使命とし、ここに設立される。

第一章 設立及び目的

第一条 この法律により日本学術会議を設立し、この法律を日本学術会議法と称する。
2 日本学術会議は、内閣総理大臣の所轄とする。
3 日本学術会議に関する経費は、国庫の負担とする。
(平一一法一〇二・平一六法二九・一部改正)

第二条 日本学術会議は、わが国の科学者の内外に対する代表機関として、科学の向上発達を
図り、行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させることを目的とする。

で、前学術会議会長は菅さんの「任命拒否」がこの「学術会議法」違反に当たる、と主張しているわけです。


菅首相の任命拒否は学術会議法の何に違反しているのか?

前学術会議会長を始め、多くの「知識人」やはっきり言えば「現政権に反対的な立場をとる人たち」は、まず今回の「任命拒否」が以下の法律に反している、と主張しています。
第七条
2 会員は、第十七条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する。

第十七条 日本学術会議は、規則で定めるところにより、優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考し、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣に推薦するものとする。

上の条文にある「内閣府令」とは以下の内容です。

平成十七年内閣府令第九十三号
日本学術会議会員候補者の内閣総理大臣への推薦手続を定める内閣府令

日本学術会議法(昭和二十三年法律第百二十一号)第十七条の規定に基づき、日本学術会議会員候補者の内閣総理大臣への推薦手続を定める内閣府令を次のように定める。

日本学術会議会員候補者の内閣総理大臣への推薦は、任命を要する期日の三十日前までに、当該候補者の氏名及び当該候補者が補欠の会員候補者である場合にはその任期を記載した書類を提出することにより行うものとする。

附 則
この府令は、平成十七年十月一日から施行する。

主張の根幹としては、「内閣総理大臣に学術会議の推薦を拒否する権利はない」といいう主張です。

と、ここまで読めば学術会議や政権に反対する立場をとる人がいかに無茶苦茶な主張をしているのか・・・という事を感じていただくことができると思います。

実は、ここに記されている「推薦」の問題については既に裁判にて複数の「判例」が出ており、行政府や地方公共団体が「推薦」に基づいて「任命」を行う際にはある程度の「裁量」があることが認められています。

記事としては、以下のリンク先が非常に詳しいので、そちらのリンク先でご覧いただければと思います。
↓↓↓
日本学術会議の問題雑感

判例では、「推薦は、指名とは異なる」ことを根拠に、「任命行為は、その性質自体から、本来的に任命権者の広範な自由裁量に委ねられていると解するのが相当である」とされています。

判例はこれを覆す判決が出るまでは一つの「法律」としての性格を持ちますので、要は推薦に裁量が認められることは法律で保障されている、と解釈すべきでしょう。(ただし、その裁量の範囲については異論あり)


任命拒否を問題視するグループが違法であるとする根拠

とはいえ、相手も「学術会議」の名の通り、法律の専門家も多く抱えた組織ですから、何の根拠もなく推薦拒否の違法性を主張しているわけではありません。

これはニュースとしては既出ですので、多くの方がご存じだとは思いますが、昭和58年に学術法の改正が行われた際、当時の中曽根総理大臣より「政府が行うのは形式的任命にすぎません」との発言が行われていること。

合わせて当時の総理府総務長官より、「学会の方から推薦をしていただいた者は拒否はしない、そのとおりの形だけの任命をしていく」との発言が行われていること。

同じ時期に作成された内閣府資料には「特に法律に想定するものを除き、内閣総理大臣は、日本学術会議の職務に対し指揮監督権を持っていないと考える。」との文言が記されていること。

この3つを根拠として任命拒否を問題視するグループは菅さんの任命拒否を「違法である」としているわけです。もしこれが合法だとするのなら、中曽根政権時代の解釈を変更しなければなりませんからね。


変更された「会員の選出方法」

ですが、上記を根拠とした主張にも当然「穴」があります。

中曽根さんが推薦方法に対する「解釈」を述べたのには当然「きっかけ」がります。以下の年表は私が作成したものです。
昭和57年 日本学術会議法の成立

昭和58年 学術法の改正が行われる
これまでの会員の選出方法が学会での総選挙から「科学者が自主的に会員を選出する推薦制」に変更。(首相による任命制度が行われるようになったのはこのとき)

改正を受け、中曾根氏より「形式的な任命」との発言がなされる。

平成17年 推薦の選出を「学会」ではなく、「学術会議」が行うよう法改正が行われた。

平成30年 前記した協議が学術会議事務局と内閣法制局との間で行われた。

今回の「任命拒否騒動」に至るまでの学術会議の「会員選出方法の遷移」について時系列でまとめてみました。

ご覧いただくとわかる通り、中曽根さんが学術会議からの「推薦」についての考え方(解釈)を示したのは昭和58年に行われた学術会議法の「法改正」を受けてのものです。

学術会議法が制定されたのは昭和57年ですが、翌昭和58年、「法改正」という手段によって学術会議の会員選出方法が変更されています。それまでは学術会議ではなく、学会全体における「総選挙」で学術会議の会員は選出されていました。

ですので、その結果を政府側が提示された場合、これを政府側の意思で「拒否」するという想定は当然なかったものと思います。

ですが、その選出方法が「総選挙」から「科学者が自主的に会員を選出する推薦制」に変更されました。つまり、それまで「選挙」という方法を通じて選ばれていた学術会議の会員が、選挙ではなく「推薦」によって選ばれることになったのです。(共産党などはこれを「現在の有権者の学術会議会員を選出する権利を奪う」と考えていたようです)

これに対し、政府側は「現在の有権者である科学者が会員の選出に関与する点においては基本的に同じである」と考えており、ゆえに、「学会の方から推薦をしていただいた者は拒否はしない、そのとおりの形だけの任命をしていく」との考え方を示したのです。

ですが。私が何をお伝えしたいのか、もう既に気づいている方もいらっしゃるでしょうが、平成17年。実はもう一度「会員の選出方法の変更」が行われています。58年同様、「法改正」という方法が取られています。

それも「推薦方法」が変更されており、それまで「科学者が自主的に」選出していた推薦方法から「学術会議が直接」推薦を行う方法に変更されたのです。

この時点で、「現在の有権者である科学者が会員の選出に関与する点においては基本的に同じである」という前提が崩れていることがわかりますね?

であれば、当然推薦方法が変更されたこの時点で、政府より変更された推薦方法に対する新たなる「解釈」が示されるべきだったのではないでしょうか?


「想定」されていなかった任命拒否

ただし、上記内容についても「反論」が存在しないわけではなく、改正法が制定される際、「内閣法制局」によってこの選出方法改正についての資料が作成されています。

学術会議法改正の趣旨

具体的な箇所を転記しますと、
現行の登録学術研究団体の推薦に基づいた会員選出方式を廃止し、会員選考については、現会員による選出制度に改正する。

具体的には、日本学術会議が規則で定めるところにより、優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を決定し、内閣総理大臣に推薦し、内閣総理大臣が、その推薦に基づき、会員を任命することになる。

この際、日本学術会議から推薦された会員の候補者につき、内閣総理大臣が任命を拒否することは想定されていない。

この資料が実際にどのタイミングで作成されたのかはわかりませんが、少なくとも平成17年に行われた「選出方法の改定」に関連した法改正に伴って作成されたことであることは間違いありません。

ここは私の「私見」になりますが、一つ疑問があります。

この文書の冒頭で「総合科学技術会議の意見具申」で具申された内容として、
「在来の学問体系や諸学問分野の組織図から離れて組織が構成され、メンバーも選出されるべき」と記しされており、「現在の7部制や学協会の推薦による会員選出方法は見直す必要がある」

と記されています。

また途中には
「科学に関する知識・意見の集約を幅広く行うため、産業人や若手研究者、女性研究者、地方在住者など多様な会員が業績、能力に応じて適切に選出されるようにすべきである」とも記されています。


では、選定方法を「現行の登録学術研究団体の推薦に基づいた会員選出方式を廃止し、会員選考については、現会員による選出制度に改正する」ことによって、本当に上記のような課題は改善されるのでしょうか?

例えば「現会員」に対して、「在来の学問体系や諸学問分野の組織」であったり、「学協会」であったりの影響が強く残っていたとしたら、会員選出方法を「現会員」からの推薦に限定してしまえばかえってその「偏り」はより深刻なものになるのではないでしょうか?

では、その客観的な判断は一体だれが行うのでしょう?

そもそも一体なぜ「内閣総理大臣が任命を拒否すること」が想定されなかったのでしょうか?

このような疑問は普通、多くの人が持ってしかるべき内容だと思います。


まとめ

本日の記事は少し長くなりましたので、記事を分けて続きは次回記事に委ねようと思います。

予定としては私が最後の章の末尾で示した問いかけに対して、政府はいったい同様な対応をしたのか。

またその上で「学術会議法」ではなく、「行政手続法」の観点から議論となった総理の「任命拒否」について、記事を作成してみようと思います。




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