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第457回 「実質賃金がマイナスになった!」とバカ騒ぎする前に知るべき事など、政治・経済を中心とした日常的な情報を、独自な視点で解析します。

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この記事のカテゴリー >>実質賃金と名目賃金


今朝、ネット情報をチェックしていますと、以下のようなニュースが話題になっていました。

【読売新聞ニュース 1/30(水) 21:55配信】
実質賃金、実は18年大半がマイナス…野党試算

 立憲民主、国民民主などの野党は30日、毎月勤労統計の不適切調査問題をテーマとした合同ヒアリングを国会内で開き、2018年1~11月の実質賃金の伸び率が大半でマイナスになるとの試算を示した。

 厚生労働省は23日、不適切調査問題を受けて再集計した実質賃金の伸び率を公表した。これによると、3、5~7、11の5か月で前年同月比がプラスだった。最もプラス幅が大きかったのは6月の2・0%。

 これに対し、野党の試算では、6月と11月を除き、すべて前年同月比でマイナスとなった。最もマイナス幅が大きかったのは1月で、1・4%だった。

 厚労省の調査は、前年の17年と18年で対象となる事業所を一部入れ替えている。野党は17、18年を通じて調査対象だった事業所のデータを試算に使った。

 厚労省の担当者は、野党の試算について「同じような数字が出ることが予想される」として事実上、追認した。野党は「政府が公表した伸び率は実際より高く出ている」と批判している。

大元となるのは、厚生労働省が民間企業の「賃金指数」を集計した「毎月勤労統計調査」において、

1.東京都における
2.500人以上の規模の事業所に対して
3.本来であれば全数調査にすべきところを
4.一部の企業のみを抽出して調査していた

という、「不正」が根源にあるわけですが、引用したニュースはこの事例について言及されているニュースではありません。


1月31日のニュースの概要

わかりにくいと思いますので、一つずつご説明します。

まず、厚生労働省は前記した「不正」に関して、既に修正を行っており、2019年1月23日に修正結果を毎月勤労統計調査のホームページに修正後のデータを公表しているわけですが、引用した記事で問題とされているのは、2018年度の毎月勤労統計調査において、対象とするサンプルを2017年度とは入れ替えていることにあります。

2017年度までは同じ対象となる企業について調査を行っているのですが、2018年度はその対象を入れ替えましたよ、ということです。

そして、今回の「不手際」が発覚したのは、その「対象の入れ替え」が行われた結果、17年度と比較して賃金指数が大きく跳ね上がったからです。

しかも、この「不正」が平成16年、西暦で2004年。小泉内閣当時から継続して行われていた・・・ということが発覚しました。

本来であればその「不正」について追求し、今後同じようなことが起こらないように厚生労働省に反省を促すのが本来の国会の在り方だと思うのですが例によって野党の皆さんは、この情報を安倍内閣を攻撃する材料として利用し始めています。

これが、引用した「実質賃金」に関するニュースです。


安倍内閣は、アベノミクスによる効果をねつ造するために対象企業を入れ替えた?

「賃金指数」の中で、誤って算出されていたのは「きまって支給する給与」で、軒並み公表されていた「月間平均給与」を再集計されたものが上回っています。

野党がピンポイントで着目したのは、その結果、2018年の「賃金指数」が、2017年と比較して伸びたのか下落したのかというところ。

政府が公表したデータは、もちろん「対象とする企業を入れ替えて」算出したもの。2018年は1月から最新の11月まで含めて前年を大きく上回っています。最大で6月の2.8%です。

しかし、当然野党はこう主張します。「サンプルが変わったから結果が変わったんだろう!」と。

そこで厚労省が示した、同一のサンプルを用いた場合の「参考値」が以下の通り(すべて前年同月比です)。

1月 0.3%
2月 0.8%
3月 0.2%
4月 0.4%
5月 0.3%
6月 1.4%
7月 0.7%
8月 0.9%
9月 0.1%
10月 0.9%
11月 1%

全月プラス成長となっていますが、この値は、すべて「名目値」です。

そう。野党やマスコミが大好きなのは「名目値」ではなく、「実質値」なんですね。

ちなみに、「名目値」とは、「もらった賃金のうち、何円が支出に回せるのか」という値。「実質値」とは、「受け取った給料でいくつ買えるのか」という値。

野党やマスコミは、「何円使えるか」より、「何個購入できるのか」ということの方が大事だ、と鉄板で主張します。

厚労省は「実質値」を出すのを渋るわけですが、実質値を出すための計算式は決まっていて、「名目賃金指数÷持家に帰属する家賃を除く消費者物価指数」という公式で簡単に算出できます。私自身も計算してみましたが、野党の計算結果とほぼ同じ結果になりました。

実質賃金は、「6月」と「11月」以外、すべての月で実質賃金指数は前年度割れ、となっていたんですね。ちなみにサンプルを入れ替えた後だと1マイナスとなっているのは1月、2月、5月、8月、10月の5か月のみ。で、「サンプルを入れ替えたのは実質賃金がマイナスになっていることを隠すためだろう!!」と野党はわめき散らしているわけです。

データを入れ替えて集計を始めたのは2018年1月になってからで、その時に2月~11月までのデータなんてわかるわけがないんですけどね。超能力者でもない限り。


「実質賃金」がマイナスになると何か問題なのか?

実質賃金については私、シリーズ 実質賃金と名目賃金 において散々話題にしています。

第363回の記事 でも記していますが、実は私、元々厚労省の「毎月勤労統計」については全くあてにしていません。

参考程度にしかならないと思っていましたから、今回厚労省による不正が発覚したところで、「え、今更?」というのがニュースを見た第一印象でした。

というのも、そもそも厚労省のデータは「常勤雇用者数が5名以上の企業」しか対象としておらず、「常勤雇用者が5名未満の企業」は対象になっていません。

ですが、政府データには厚労省データとは別に、「国税庁」が公表している「従業員1名以上の企業」を調査対象としたデータがございまして、こちらの方が正確で、より実態に近い数字となっています。(参考:第43回 実質賃金と名目賃金⑤~厚労省データと国税庁データの違い~

なので、私は賃金の情報を見るときは、厚労省の毎月勤労統計ではなく、国税庁の「民間給与実態統計調査」の方を参考にしています。

このデータですと、業態別だけでなく、受け取っている給与階層別の労働者数なども見られますので、私はとても重宝しています。シリーズ、中間層の見方 で具体的に作成しましたね。今から3年以上前のデータにはなりますが。

ただ、国税庁データの欠点は、集計時間が長く、年に一度しか発表されないこと。昨年2018年のデータが掲載されるのが今年の9月です。

毎月勤労統計は、国税庁のデータほど正確ではないものの、その「速報性」にこそ魅力があるんですよね。

ちなみに、両方の統計データを比較すると、このようになります。

給与所得比較

厚労省データは平成19年(2007年)のデータが17年基準(20年以降は22年基準)のデータしかなかったので、私の手元で計算することは避け、空欄にしています。

厚労省データは「指数」、国税庁データは「年間平均給与所得」です。ともに年間のデータを用いています。「指数」も、基本的には「給与所得」実学をベースに算出されたものですので、単位は違いますが、伸び率や減少率はほぼ同じ基準で比較することができます。

ご覧いただくと一目瞭然ですが、平成29年(2017年)のデータと平成20年(2008年)のデータを比較した場合。「2008年」。つまり、リーマンショックが起きたその年です。

厚労省データは2008年が「103.6」で、2017年が「101.1」。割合にして2.4%、2017年の値が2008年の値を下回っています。

ところが、国税庁データでは2008年が429.6万円。2017年が432.2万円ですから、今度は2017年の値が0.6%、2008年の値を上回っています。

この違いはいくら経済感覚に疎い人にだって理解できるのではないでしょうか?厚労省データと国税庁データの違いは、「常勤雇用者5名未満の企業」が含まれているのか、含まれていないのか、その違いだけです。

2017年と比較して、2018年の「実質賃金」が下回っているからアベノミクスは失敗だ、と野党やその支援者たちはわめき散らしているわけですが、国税庁データによれば、2017年の実績は既にリーマンショックが起きた年の数字を上回っているんですよ?

更に、2018年は実質賃金こそ2017年を下回ったかもしれませんが、名目賃金指数においては2017年の給与所得を上回っています。

実質賃金が下回ったから、一体何だと言いたいのでしょう、彼らは?


今回の「実質賃金の下落」が意味すること

さて。それでは一体なぜ、名目賃金が上昇したにも関わらず、実質賃金指数が下落したのでしょう?

今更言うまでもありませんが、それは実質賃金の算出方法にからくりがあります。

既に掲載していますが、実質賃金指数は、

 実質賃金指数=名目賃金指数÷持家の帰属家賃を除く消費者物価指数

で算出されます。

名目賃金指数が上昇したのに実質賃金指数が下落した理由は単純で、持家の帰属家賃を除く消費者物価指数の上昇率が、名目賃金指数の上昇率を上回ったからです。

私のブログを読み込んでくださっている方であれば、私が次にどんな情報を持ち出すか、予想はついていらっしゃるかと思います。

そう。「消費者物価指数」の「十大費目別消費者物価指数」です。

物価が上昇するには、上昇する鳴りの理由があるんです。そしてこの「消費者物価指数」に関してもまた、私は散々シリーズ、「物価の見方」の中でご説明しましたね?

データは、あえて1年分を掲載しますから膨大になります。後で解説しますが、どの項目にプラスが多く、どの項目にマイナスが多いのか、ということに着目しながら、画面をザっとスクロールしてみてください。

平成30年(2018年)の消費者物価指数

【消費者物価指数(10大費目別)の前年同月比】
食料 ウェイト:2623
1月 3.2
2月 3.0
3月 1.9
4月 0.7
5月 0.8
6月 0.4
7月 1.4
8月 2.1
9月 1.8
10月 2.4
11月 0.5
12月 -1.1

 生鮮食品 ウェイト:414
 1月 12.5
 2月 12.4
 3月 6.3
 4月 -1.5
 5月 -0.7
 6月 -1.2
 7月 4.3
 8月 8.7
 9月 5.6
 10月 10.8
 11月 -1.4
 12月 -9.4

 生鮮食品を除く食料 ウェイト:2209
 1月 1.3
 2月 1.2
 3月 1.1
 4月 1.1
 5月 1.1
 6月 0.7
 7月 0.8
 8月 0.9
 9月 1.0
 10月 0.9
 11月 0.9
 12月 0.7

住居 ウェイト:2087
1月 -0.1
2月 -0.1
3月 -0.2
4月 -0.2
5月 -0.1
6月 -0.1
7月 -0.1
8月 -0.1
9月 -0.1
10月 -0.2
11月 -0.1
12月 -0.1

 持家の帰属家賃を除く住居 ウェイト:589
 1月 0.1
 2月 0.1
 3月 -0.1
 4月 0.0
 5月 0.1
 6月 0.1
 7月 0.1
 8月 0.1
 9月 0.1
 10月 -0.1
 11月 0.0
 12月 0.1

光熱・水道 ウェイト:745
1月 4.6
2月 4.3
3月 4.0
4月 3.6
5月 3.1
6月 3.3
7月 3.1
8月 3.4
9月 3.7
10月 4.4
11月 5.0
12月 5.0

家具・家事用品 ウェイト:348
1月 -1.2
2月 -1.7
3月 -1.4
4月 -1.5
5月 -1.5
6月 -1.0
7月 -1.1
8月 -1.1
9月 -1.0
10月 -1.0
11月 -0.7
12月 0.1

 家庭用耐久財 ウェイト:111
 1月 -2.0
 2月 -3.8
 3月 -3.3
 4月 -3.8
 5月 -3.5
 6月 -2.9
 7月 -2.1
 8月 -2.5
 9月 -2.0
 10月 -2.0
 11月 -0.6
 12月 0.5

被服及び履物 ウェイト:412
1月 0.5
2月 0.3
3月 0.0
4月 0.1
5月 0.1
6月 0.0
7月 0.3
8月 -0.1
9月 0.1
10月 0.1
11月 0.1
12月 0.1

保健医療 ウェイト:430
1月 1.6
2月 1.8
3月 1.7
4月 1.9
5月 1.9
6月 2.0
7月 2.0
8月 1.1
9月 1.0
10月 1.1
11月 1.2
12月 1.3

交通・通信 ウェイト:1476
1月 0.7
2月 1.5
3月 1.7
4月 1.1
5月 1.3
6月 1.4
7月 1.5
8月 2.0
9月 2.1
10月 1.9
11月 1.2
12月 -0.1

 自動車等関係費 ウェイト:836
 1月 2.0
 2月 2.6
 3月 1.8
 4月 2.1
 5月 2.7
 6月 4.0
 7月 4.3
 8月 4.2
 9月 4.5
 10月 4.6
 11月 3.3
 12月 1.3

教育 ウェイト:316
1月 0.4
2月 0.4
3月 0.3
4月 0.3
5月 0.3
6月 0.5
7月 0.5
8月 0.5
9月 0.5
10月 0.5
11月 0.5
12月 0.5

教養娯楽 ウェイト:989
1月 0.5
2月 1.3
3月 0.5
4月 0.2
5月 0.0
6月 0.8
7月 0.6
8月 1.6
9月 1.0
10月 1.4
11月 1.0
12月 0.9

 教養娯楽用耐久財 ウェイト:59
 1月 -1.1
 2月 -1.5
 3月 -2.5
 4月 -5.0
 5月 -3.8
 6月 -2.9
 7月 -2.4
 8月 -2.1
 9月 1.7
 10月 -0.3
 11月 -1.0
 12月 -0.3

諸雑費 ウェイト:574
1月 0.5
2月 0.6
3月 0.5
4月 0.1
5月 0.3
6月 0.4
7月 0.3
8月 0.0
9月 0.2
10月 0.8
11月 0.9
12月 0.8

段違いになっているところ、例えば「家具・家事用品」の下にある「家庭用耐久財」は、「家具・家事用品」の中に含まれる項目をピックアップしたものです。

「10大費目」とは、「食糧」「住居」「光熱・水道」「家具・家事用品」「被服及び履物」「保健医療」「交通・通信」「教育」「教養娯楽」「諸雑費」の10の項目の事。

この10の項目のうち、物価を大きく上昇させる要因となっている項目が「光熱・水道」であることがご覧いただけると思います。

この他、「食糧」の中の「生鮮食品」や、「交通」の中の「自動車関係費」。

「光熱・水道」や「自動車関係費」を上昇させる主要因となっているのは「原油価格」。特に2018年は大きく「円安」に物価が振れることもありませんでしたから、原油価格が上昇する原因は、「海外の原油取引価格の上昇」が原因です。アベノミクスとは全く関係ありませんね?

更に、「生鮮食品」が高値を付けているのはアベノミクスのせいではなく、「気象条件」が原因です。

つまり、海外や気象条件が要因となり、名目賃金の上昇率を上回る物価上昇を見せたため、実質賃金指数が下落することになった・・・というのが今回のデータの正しい見方です。

物価が下落する主要因となっているのは「家庭用耐久財」や「教養娯楽用耐久財」。つまり、「家電製品」の大安売りがそもそもの原因です。つまり、ジャ〇ネットタ〇タのせいですね。

このように、物価が下落するにも上昇するにも、きちんとした理由があります。確かにアベノミクスが目標に掲げているのは「生鮮食品を除く消費者物価指数の2%上昇」かもしれませんが、仮にこれが達成できなかったとしても、物価が下落して尚手取りが増えるのであれば、これほど喜ばしいことはないのではないでしょうか?

「アベノミクス」が本当に目指しているのは「自立した経済成長」です。「これがアベノミクスである」と訴えられている内容は、そのアベノミクスが目指す社会の一側面を示しているにすぎません。

その結果、アベノミクス目的として示していないところで経済成長の要素が見えたとして、何か問題があるのでしょうか?

・・・と、本来はこういう批判をしたいわけですよ。

なのになぜか今は「物価が上昇して生活が苦しくなっていることがわかったぞ!!どうしてくれるんだ!!」という主張のオンパレード。

いやいや、確かに原油価格の上昇が経済に悪影響を与えているかもしれないけど、家電製品と携帯電話、その通信料以外はちゃんと成長しているでしょ、と。成長しているから消費者物価指数は上昇するんですよ、と。

「木を見て森を見ず」・・・というか、「森を見て木を見ず」というか。「全体像」をきちんと把握せず、安倍内閣を批判することのできる経済現象が登場したからといって、そこに食らいついて安倍内閣を批判することに終始するのはいい加減やめてほしい。

「賃金が増えているんだから、その増えた賃金を消費に回すにはどのようにすればいいか」ということを全体で話し合える、そんな国会であってほしいと、私は切に願っております。



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>> 第458回 実質賃金マイナス公表の見方~消費されなければ物価にはならない!~
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