第32回 公的年金制度の仕組みなど、政治・経済を中心とした日常的な情報を、独自な視点で解析します。

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アベノミクスを問う⑦

前回の記事では、「社会保障制度」全体を検証する上で、私自身がまだ解析したことのない、健康保険制度についての解析にチャレンジしてみました。

社会保険制度には主に「被用者保険」と「国民健康保険」の2種類あり、「保険料」と「給付金」の収支差額に着目すると、「被用者保険」は大幅な黒字、逆に国民健康保険については大幅な赤字になることがわかりました。

この赤字を補てんするために、被用者保険の収入(保険料+公費)から一部を補てんし、さらに公費を補てんして給付金を支出していること、しかしこの補てん分を含めた国民健康保険の収入分からさらに「後期高齢者医療保険」という項目に組み込んで、「後期高齢者医療保険制度」を構成しているということもわかりました。

医療保険制度からの支出は40兆近くあり、このうち約半分に公費が、残る半分に現役世代の保険料が充てられています。
保険料の収入が横ばいである中、「後期高齢者医療保険制度」への支出が増え続けているため、ここに国費を充てざるを得ない状況になっているということです。

ただし、
社会保障給付費・保険料差額

こちらのグラフを見ると、社会保障給付費の支出と社会保険料収入の間に、平成22年(2010年)の時点で47兆を超える収支差額があります。
健康保険制度の収支差額は約21兆円ほどで、グラフから読み取れる数字では、この分を差し引いてまだ26兆円近い収支差額があります。
前回の記事では、この残る差額分が「年金」の収支差額に相当するのではないか、という考え方をお示ししました。

公的年金制度の仕組み

医療保険制度もそうなのですが、こちらの年金に関しても、自分が現在、または将来いくら受け取れるのか、ということに関心を持つ人は多くいるのですが、そもそもその財源や収支に関してはどのような形で運用されているのか、ということに関心を持っている人はあまりいません。

いない、というより知る方法がない、といったほうが良いでしょうか。
例えば年金に関して、その受給額に関しては、例えば生命保険会社の営業マンが良く勉強会などを開催しています。

ですが、例えばファイナンシャルプランナーの資格を取った保険の営業マンでさえ、受給側に関しては関心を持って調べるのでよく知っているのですが、支出側についてはあまり関心がないのではないかと思われます。
それどころか「年金制度が破たんすること」を前提に説明することが自分たちの収益につながりますから、多くの場合、誤った説明を行います。

知っていて説明しないのか、元々知らないのかはわかりません。

年金制度そのものについての説明を行う上では、下記のような図表が良く用いられています。
年金制度1

言葉として

・第一号被保険者
・第三号被保険者
 ・国民年金(基礎年金)
・第二号被保険者
  ・厚生年金部分
  ・共済年金部分

という合計6つの言葉が掲載されています。
働いていない人、または自営業者は「第一号被保険者」となります。

見ての通り、第一号被保険者は「国民基礎年金」のみを支払っており、年金の受け取りもこの「国民基礎年金」の部分からのみ受け取ります。
一方、働いている人は一部を除き「第二号被保険者」となります。一部というのは、第二号被保険者となるための条件を満たしていない保険者、ということになるのですが、これを詳しく説明することはこの記事の趣旨から外れるので、ここでは割愛いたします。

また、第二号被保険者のうち、民間企業のサラリーマンが支払っているのが「厚生年金」。公務員が支払っているのが「共済年金」です。基礎年金部分に、さらに上乗せして支払っていますね。
まとめますと、国民基礎年金とは、第1号被保険者だけでなく、すべての保険者が加入し、支払う義務のある部分。
厚生年金、共済年金とは、就労状態にある人が、基礎年金部分に上乗せして支払う年金、ということになります。

ただし、今年(2015年)10月より、厚生年金と共済年金は、制度として統合されることが決まっています。
年金制度2

引用した画像は共に地方公務員共済組合連合会がHPに掲載しているPDFから引用しています。

残る第三号被保険者は第二号被保険者の配偶者のことです。保険料負担はなく、国民基礎年金部分から受給します。

「国民基礎年金部分」とは、第一号・第二号被保険者がともに支払っている年金で、「1階部分」とよく表現されます。
現在は1/2を国民が負担し、残る1/2を国が負担しています。一方、「2階部分」。サラリーマンや公務員が、国民基礎年金以外に支払っている年金は、半分を企業が、半分を労働者が負担しています。

3階部分には現時点では撤廃、または撤廃される予定ですので、ここでは説明を割愛します。

前述した通り、「国民年金」とはすべての被保険者が加入する義務のある部分なのですが、一般に、第一号被保険者のみが加入している基礎年金部分について、「国民年金」と呼称されています。
国民年金も厚生年金も同様の方法で運用されますので、まずはわかりやすい、(狭義での)「国民年金」の運用方法からご説明します。

年金制度の運用方法

こちらは、平成26年度「国民年金(第一号被保険者)」の収支状況です。

平成26年度国民年金

項目名として、様々な名称が登場しています。年金制度を理解するうえで必要な項目をピックアップして掲載します。

【歳入】
・保険料収入
・一般会計より受入
基礎年金勘定より受入
積立金より受入

【歳出】
・国民年金給付費
・基礎年金給付費等基礎年金勘定へ繰入

見慣れない言葉だと思います。「基礎年金勘定」と「積立金」。この二つの言葉だけ色を変えて表示しています。

実は、「国民年金」には3つの会計帳簿があり、この3つの会計帳簿を行き来する形で年金は運用されています。

それが、

・基礎年金勘定
・年金特別会計
・年金積立金


という3つの会計帳簿です。
「年金積立金」という言葉は最近よく耳にするようになったかもしれません。
「GPIF(Government Pension Investiment Fund)」=「年金積立金管理運用(独立行政法人)」という言葉がよくニュースに登場するようになりました。

この言葉も含めて解説していきます。

まずは基礎的な部分から。

日本の年金制度には、「賦課方式」という方式が採用されています。
年金制度の方式には、「賦課方式」以外に「積立方式」という方法があります。

「積立方式」とは、その名の通り、自分が収めた年金保険料を積み立てて、将来そこから年金を受け取るという方式です。
貯金のようなものですね。人間って弱いから、たとえ貯金していたとしても、自分のお金が足りなくなればいつか引き落として自分のために使いたくなるもの。ですので、国が強制的に年金を徴収し、国民に代わってこれを貯めておく、という考え方です。

理由については割愛しますが、しかし日本でとられている年金制度は、このような「積立方式」ではなく、もう一方の「賦課方式」が採用されています。

「賦課方式」とは、現役世代が、その年に収めた保険料の中から、必要な給付額を受給世代に支払う、という考え方です。
先ほどの表で考えると、収入部分では「保険料収入」が、支出部分では「国民年金給付費」がこれに当ります。

26年度で見ると、保険料収入が1.6兆円、給付費が0.8兆円ということになります。
保険料収入のほうが、給付費のほぼ倍に当たり、赤字どころか、大黒字であることがわかりますね。

これは、何も国民年金に限ったことではなく、厚生年金の側でも同様のことが言えます。国民年金ほどはっきりした差額ではありませんが、厚生年金の保険料が26.3兆、支出が23.1兆円と、実に3兆円近い開きがあります。
※ 厚生年金では、ここから基礎年金に該当する部分が計算され、厚生年金の会計とは別枠で、「基礎年金勘定」の部分へ繰り入れられています。
「基礎年金勘定」の部分に関しては、第一号被保険者と第二号被保険者を区別することなく、一括して同一の会計帳簿の中で運用されています。「基礎年金勘定」の解説は後程行います。


またさらに、国民年金にも、厚生年金にも、ともに「一般会計から受け入れ」という項目があります。
「一般会計」。つまり「国費」からの受け入れということです。

ただでさえ黒字であるにも関わらず、年金収入には国民年金では1.9兆円、厚生年金では8.7兆円の国費が投入されています。

この理由は、実は支出項目の内、もう一つの支出項目、「基礎年金給付費等基礎年金勘定へ繰入」という項目に理由があります。

国民年金の給付費が8275億円であるにもかかわらず、その実に四倍もの額が「基礎年金給付費等基礎年金勘定へ繰入」という名称で支出されているのです。

この項目の数字、実は国民年金の歳入のうち、「保険料」と「一般会計より受入」という二つの項目の数字を合計した金額に相当します。

現在の年金制度では、年度が始まると同時に、その年に国民年金を納付する義務のある国民が、全員で何人いるのか、という人数を計算し、その人数×国民年金保険料を計算して、その合計金額を二倍し、二倍した後の金額を「基礎年金勘定」という別の会計帳簿に移しているのです。

二倍する理由は、国庫が基礎年金部分の1/2を負担することが決まっているからで、保険料の合計値を二倍したものがその年の基礎年金部分の金額になる、と予測されるからです。

予測された金額をあらかじめ年金特別会計から引き出し、基礎年金勘定へ入金します。
一方で、基礎年金勘定には、昨年度期首に、同じ方法で年金特別会計から引き出された保険金が1年分蓄積されています。

この基礎年金勘定から、今度は今年度、国民年金を受け取る資格のある人の数を計算し、その人数×受給額を合計し、その合計額を引き出します。
今度はその引き出した額を全額、年金特別会計へと入金するのです。

さて。ここで疑問がわきます。
国民年金収支から見れば、特別会計より引き出された額は3.49兆円。基礎年金勘定より引き出した金額は0.719兆円。

その差額は約2.8兆円になります。では、その2.8兆円は、一体どうなるのでしょうか。
答えは簡単です。利用方法がありませんから、基礎年金勘定から引き出されることがないまま、蓄積されることになります。

また一方で、特別会計に繰り入れられた3.49兆円ですが、その年に受給資格のある人が全員受給した場合の金額ですから、もし仮に、その年にその受給資格者がなくなった場合。
当然ながら受け取り者がいなくなるわけですから、受給者のいない資金が宙に浮くことになります。

では、その受け取り者のいなくなった資金はいったいどうなるのでしょう。
基礎年金勘定と同じように、特別会計の中にそのまま蓄積される・・・わけではなく、特別会計で利用されることがなく宙に浮いた資金は、今度は「年金積立金」という項目に繰り入れられます。

実は、この積立金が長年蓄積されており、その額が100兆円を大幅に上回るまでになっていますので、これが「GPIF」によって運用されているというわけです。

また、その年度に1年間かけて納付された保険料の総額と、期首に引き出された金額がぴたりと一致することはまずありません。なぜならば、「未納者」が存在するからです。

未納者やまたは納付義務を負っていながら、残念ながら年度内に亡くなってしまった人が収めなかった額の総額は、基礎年金勘定へ繰り入れられた額から考えると、年金特別会計上は赤字になります。

では、この赤字になった額はいったいどこから調達するのでしょうか。
正確には、前年度に収められた保険料と国費負担分の総額と、今年度基礎年金勘定へ繰り入れられる額との差額。これがマイナスであった場合、その額は「年金積立金」より繰り入れられます。

ですが、納付者のいない保険料は、いくら年金積立金から繰り入れられようが、そもそも「支払う必要のない保険料」ですので、積立金より繰り入れられた額を気にする必要はありません。

未納者が多ければ積立金が赤字になりますが、たとえ赤字になってもそれは受け取り手のいない保険料だということになります。

単純な保険料と給付費の差額がトータルで大幅な黒字であり、黒字であるにもかかわらず国費が投入されている年金制度が破たんする確率限りなくゼロに近いと思われます。

ただでさえ黒字であるにもかかわらず、さらに基礎年金勘定と年金積立金の部分には資金が積み重ねられています。

さて。改めて見てみます。

社会保障給付費・保険料差額

こちらのグラフ。
実は「基礎年金勘定へ繰入」という項目は、支出差額の中で大きなウェイトを占めています。。
概算ですが、総額で20兆ほどあります。保険料と給付費の収支が4兆ほどの黒字で差し引き16兆ほど。
このほか、生活保護費が約4兆。健康保険制度の赤字分が1.8兆円ほどですから、この3項目で約38兆円ですね。
また、介護保険の収支差額が5兆円ほど。合わせて45兆円。

この中で「基礎年金勘定へ繰入」という支出は本来赤字(マイナスとなる)分ではありませんから、ここは本来このグラフから差し引いておくべきだ思うのですが・・・。

というより、そもそも年金の収支に関しては、やはり社会保険料収支からは切り離して考えるべきですね。
社会保険制度の問題点をより深刻に見せるためか、もしくはわかりにくくするに、あえてやっているとしか思えません。

ともあれ、本質として見えてきたのは、「後期高齢者医療保険制度」と「介護保険制度」の収支状況と公庫負担の増加についてですね。

まとめます。

歳出

こちらは国政の歳出の内訳です。

歳出の割合が多いのは「国債費」「社会保障費」そして「地方交付税交付金等」の3つです。

このうち、「国債費」に関しては日本国債の問題にてお示しした通り、国債償還のために国債を発行していることはまったく問題がない、ということをお示ししました。

同年発行された国債は40.4兆円。国債の返済日が23兆ですので、残る国債費16.6兆円がその他の歳出のために利用されている、ということでしょうか。(27年度予算で、建設国債が6兆円、赤字国債が30兆円です。)

私の考え方として、日本国民の国債の信認を担保しているのは「日本国民の勤勉さ」に裏付けられていると考えています。(日本国債を破たんさせる方法

社会保障費の財源を国債で補うことは、簡単です。
ですが、日本国政府が国民に対して、「社会保障の財源の不足分は、全額国債で賄います」と宣言した場合、どうでしょうか。

おそらく日本国民は、「労働をしない」という選択肢を選ぶ割合が増えるのではないかと考えています。
「日本国民は働かなくても、将来のあなたたちの生活はすべて 国債で保証します」と言っているに等しいからです。

やはり社会保障には財源の裏付けが必要なのです。
私はその財源として、消費税が一番ふさわしいと考えています。

次回記事では、なぜ社会保障の財源として消費税がふさわしいと私が考えるのか。
安倍内閣の現状のデータとも比較する形で、この消費税の特徴について改正つしていきたいと思います。

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このエントリーにお寄せ頂いたコメント

日本の年金運用の赤字は、中国による企てがある。 ・・・ くれぐれも 注意して欲しい。
名無し at 2016/08/26(金) 22:12 | URL

> 日本の年金運用の赤字は、中国による企てがある。 ・・・ くれぐれも 注意して欲しい。

中国による企て・・・ですか。
気にかかかりますね。どのような企てなんでしょう・・・
nonkinonki at 2016/08/29(月) 10:59 | URL

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