第167回 マイナス金利政策をわかりやすく/長期金利目標導入とは?など、政治・経済を中心とした日常的な情報を、独自な視点で解析します。

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第166回 政策金利と公定歩合の違い/「金利目標」と「量的緩和」

昨日、こんな記事がニュースになりました。

【読売新聞 2016年09月21日】
日銀、長期金利0%に誘導…新政策目標

日本銀行は21日の金融政策決定会合で、金融緩和の枠組みを変更し、軸足をこれまでの世の中に出回るお金の「量」から、長期と短期の「金利」に移すことを決めた。

 金融機関が日銀に預けているお金の一部に事実上の手数料を課す「マイナス金利政策」の金利と、10年物国債の流通利回り(長期金利)を目標とする。主要国の中央銀行が長期金利を金融政策の目標とするのは異例で、日銀の取り組みは新たな局面に入った。

 黒田東彦総裁は会合後の記者会見で、「新たな政策枠組みの下で、2%の(物価目標の)実現に向けてより一段と強力な金融緩和を実現する」と述べた。その上で、「量、質、金利で追加緩和の余地はあり、必要に応じて行う」と強調した。

 日銀はマイナス金利については年マイナス0・1%を維持し、長期金利については現在の市場金利と同水準の0%程度で推移するよう国債を買い入れることを決めた。日銀はこの枠組みの導入を、7対2の賛成多数で決めた。日銀が利回りを指定する新たな国債買い入れの手法も導入する。

黒田総裁

この記事、見る人によっては少し「わかりにくい」と感じる方もいらっしゃるでしょうし、ここに記されている情報から、正確な情報を読み取ることができない方もいらっしゃると思います。理由は、黒田さんが勘違いされるような表現方法を用いているから。
半ば意図的だと思います。

【今回のテーマ】
今回ご説明する内容は日銀の「マイナス金利政策」と、今回発表された「長期金利政策目標の導入」について記事にしようと考えています。

丁度「マイナス金利政策」に関しては記事にする予定でしたし、前回作成した記事のおかげで、「マイナス金利政策」についての説明が行いやすい状況も作れていましたので、丁度良いタイミングだと思います。

また今回の「長期金利政策目標の導入」に関しては私、それなりに好印象を抱いておりまして、限界を迎えつつあった「金融緩和緩和政策」が漸く正常な判断に転換されたな、というのが私の感想です。

丁度同じ記事の中に二つのキーワードが含まれておりますので、この機会にこの二つの言葉の意味について記事にしたいと思います。

日銀の「マイナス金利政策」ってなに?

日銀の「マイナス金利政策」。わかるようで案外理解しにくい言葉です。
この言葉がニュースになり始めた当時は、「ひょっとして私たちが銀行にお金を預けていたら、金利を受け取れるんじゃなくて、逆に金利を取られるんじゃないか」なんて言う情報が流れていたと思います。

ただ・・・調べてみると、結構危険な状況になっていることが解ってきました
第166回の記事 でご説明しましたように、民間の金融機関は「政策金利」を顧客に融資する際、又は預金を受ける際の目安にしています。

【日本の政策金利の推移】
政策金利の推移

いや・・・しかし改めてこのグラフ見てると、ちょっと危機感を覚えますね。

上グラフのオレンジ色のラインが現在の日本の「政策金利」。ただ、安倍内閣に入ってから事実上この「政策金利」は廃止されていますので、もうすでに「政策金利」とは呼べない代物ですが、要はA銀行がB銀行からお金を借りるとA銀行がB銀行に対して金利分を「手間賃」として相手に支払わなければならない状況だってことですよね。

青いラインは「基準割引率及び基準貸付利率」。かつて「公定歩合」と呼ばれていた数字です。
(※詳しくは第166回の記事 をご覧ください)

オレンジ色のラインは正式には「無担保コール翌日物金利」の推移を表しています。
(※こちらも詳しくは第166回の記事 をご覧ください)

昔はお金を借りたら借りた方が課した相手に利息を支払わなければならなかったのですが、現在はお金を借りるとお金を貸してくれた相手からさらに利息までいただける状況になっている、と・・・。

なんでこんなことになっているのでしょう。これははっきり言って「異常」ですよね。
その原因を作っているのがタイトルおよびサブタイトルにある「日銀のマイナス金利政策」なのです。


【日銀のマイナス金利政策とは?】

先ほどご紹介した「マイナス金利」は「日銀のマイナス金利政策」ではなく、「無担保コール翌日物」のマイナス金利です。

では、「日銀のマイナス金利政策」とは何かっていうと、第166回の記事 でご紹介した「日銀当座預金」。
つまり、民間の金融機関が日銀にお金を預けるときに開設した民間の金融機関専用口座の金利に対する政策のことです。

第166回の記事 でもご紹介した通り、「法定準備預金額」と言って、民間の金融機関は日銀に毎月前月の預金金額(実績)の何%かを「無利息で」預けることが法律で定められています。割合は預金金額の規模によって固定されています。

無利息で」というところがポイントです。日銀は、この「法定準備預金額」を上回って各金融機関が日銀当座預金に預けてある金額については「通常であれば」利息を支払う必要がありました。

日銀当座預金には、法定準備預金額を一旦預けてしまうと、あとは別にこの法定準備預金額を上回っていようが、下回っていようが、各金融機関が日銀に預けておく金額は自由です。ただ、法定準備預金額を上回った金額については利息が付きます。

勿論「利息」とは、お金を預けているのは各金融機関ですから、預かっている先の日銀が、金融機関に対して支払っていました。
ところが、黒田さんは日銀金融政策決定会合において、この金利を「マイナス」にすることを決定したのです。

つまり、法定準備預金額まではお金を預けていても手数料は発生しませんが、法定準備預金額を上回る金額を預けるのならば、上回る金額の内○%(現在であれれば0.1%)を手数料として日銀に支払ってくださいね、というルールを決めてしまったのです。

この政策を日銀の「マイナス金利政策」といいます。

もちろんこのマイナス金利政策にもきちんとした理由はあります。
本来金融機関は預金者から預かった預金金額を運用し、利息分を預金者に対して支払う義務があります。

その運用先の一つとして日銀当座預金口座が選ばれていたわけですが、ここがマイナス金利になってしまったため、日銀当座預金講座は「運用先」としては全く機能しなくなってしまいました。そうすると金融機関は日銀当座預金以外に運用先を探さなければなりませんから、その「運用先」として「企業への投資」を行うことを日銀は期待していたのです。


日銀マイナス金利政策の弊害

さて、先述した「無担保コール翌日物金利」。これ、立派な金融商品ですから、本来であればこれを買うことで利益が発生しなければならない代物です。ところが、現在はこの「無担保コール翌日物金利」はマイナス金利になっています。

普通に考えれば、この商品は銀行が銀行にお金を貸すシステムですから、融資したA銀行が融資を受けたB銀行から利息を受け取るシステムでなければ販売できません。

売れないはずなんです、普通は。にも拘らず、なぜこの金融商品は売れているのか。
つまり、A銀行はわざわざお金を支払ってまでB銀行にお金を融資しているのか。

理由はただ一つ。「日銀よりも安い金利でお金を預かってくれるから」です。金融機関の使命には、資産の価値を毀損させず、安全に運用する必要がありますから、本来であれば安全に預けておく先を確保しておく必要があるのです。

その預け先が「日銀当座預金」であり、「国債」であったはずなんです。
ところが、黒田さんの金融政策で、「日銀当座預金」はマイナス金利となり、また「異次元の量的緩和」が続行されているせいで「国債」の価値も目減りし続けています。

金融機関は、確かに資産を運用して増やし続ける必要のある業界です。ですが、そこには必ず「リスク」が付きまとってきます。
現金で保有し続けていても預金者に対して利息を支払わなければなりませんから、安倍内閣までの金融市場の様に「現金のまま保有し続ける」ことはリスクになります。

かといって日銀に預けることもできませんし、国債を保有しても利益は増えるどころか毀損し続けていきます。
横ばいにすらならないのです。ということは、金融機関は常に投資先を探し続けなければなりません。

ですが、肝心の「政策金利」に相当する無担保コール翌日物金利がマイナス金利(借りれば借りるほど利益が増える構造)ですから、貸し付けによってすらまともな利益を手に入れることはできません。こうなってくると、本来の貸付業務ではない預金業務。

つまり、お金を預けてくれる顧客から「手数料」という形で「利息」を吸収するしかなくなってしまいます。
そうなると当然顧客はお金を銀行に預けようとはせず、現金のまま、自宅に保管しようとするでしょう。

あるいは財産のない、リスクの高い顧客に対しても破綻することを織り込み済みで高金利で融資を行うのではないでしょうか。


「長期金利目標の導入とは?」

では、改めて冒頭のニュースに目を通してみましょう。
【読売新聞 2016年09月21日】
日銀、長期金利0%に誘導…新政策目標

日本銀行は21日の金融政策決定会合で、金融緩和の枠組みを変更し、軸足をこれまでの世の中に出回るお金の「量」から、長期と短期の「金利」に移すことを決めた。

 金融機関が日銀に預けているお金の一部に事実上の手数料を課す「マイナス金利政策」の金利と、10年物国債の流通利回り(長期金利)を目標とする。主要国の中央銀行が長期金利を金融政策の目標とするのは異例で、日銀の取り組みは新たな局面に入った。

 黒田東彦総裁は会合後の記者会見で、「新たな政策枠組みの下で、2%の(物価目標の)実現に向けてより一段と強力な金融緩和を実現する」と述べた。その上で、「量、質、金利で追加緩和の余地はあり、必要に応じて行う」と強調した。

 日銀はマイナス金利については年マイナス0・1%を維持し、長期金利については現在の市場金利と同水準の0%程度で推移するよう国債を買い入れることを決めた。日銀はこの枠組みの導入を、7対2の賛成多数で決めた。日銀が利回りを指定する新たな国債買い入れの手法も導入する。

黒田さんは、現在の金融政策の目標を、「『マイナス金利政策』の金利と、10年物国債の流通利回り(長期金利)」とすることを発表しました。

特に、「10年物国債の流通利回り(長期金利)」の目標を0%ととする政策については、いくつかの視点があります。

最も大きな視点は、黒田さんが事実上「異次元の金融緩和政策」の規模を大幅に縮小したという規模の縮小を想定に加えた)、の方が正確ですね。失礼しました)視点。
記事中で黒田さんは、「新たな政策枠組みの下で、2%の(物価目標の)実現に向けてより一段と強力な金融緩和を実現する」と発言したことが記されていますが、これ、言葉で言っていることと実際にやっていることは真逆ですよね。

「より一段と強力な金融緩和を実現」したのではなく、金融緩和の規模を縮小することを暗にコミットしているのです。
市場に大きな影響を与えないように、表現としては「より一段と強力な金融緩和」という表現を行っていますが、決定された内容は真逆。金融緩和の規模を縮小しますよ、と言っているのです。

現在の10年物国債の長期金利は-0.065%。
これを0%にすると言っているんですから、少なくとも国債の購入速度を減速させるか、現在日銀が保有している国債を売りに出すかしなければ長期国債の金利は上昇しません。0%にはならないのです。


まとめ

安倍さんの周りを取り囲んでいる自称「ブレイン」。金融バカたちは発狂するかもしれませんが、私は今回の日銀政策を非常に評価しています。

第166回の記事 でもお伝えしたように、日銀が行っている「量的緩和」はそのまま「無担保コール翌日物金利」を引き下げる要因となっています。

これが普通ゼロになればストップするはずなのに、日銀がマイナス金利政策をとっているために金利ゼロを下回り、マイナスになっても尚購入され続けている状況が異常なのです。

黒田さんは今回、事実上量的緩和の規模を縮小することをコミットしたわけですから、今後この無担保コール翌日物金利も上昇に転じる可能性があります。金融機関がリスクをヘッジ(回避)できるほどの規模となるかどうかはわかりませんが、金融緩和政策の転換は、現在の異常な金融市場に一石を投じるための第一歩となる政策です。

黒田さんがこうまでして「金融緩和政策」の継続をコミットしているのは、「2%の物価上昇率」を実現するためです。
私自身は、この「2%の物価上昇率」というのは、あくまでも期待インフレ率を下落させないためのリップサービスに過ぎないと考えています。

その背景には私が大嫌いな「金融バカ」たち(日本人エコノミスト・外国人投資家を含む)が、盛んに「消費の伸び悩み」を喧伝し、さらなる金融政策の必要性を煽りまくっている現状があります。

このブログで私が散々お伝えしているとおり、日本の「消費」が伸び悩んでいるように見えるのは、あくまでも原油価格の下落に伴う輸入物価の減少とエネルギー価格の減少に起因するものであり、これらの要素を排除すれば安倍内閣に入ってからの「物価」も「消費」も健全に上昇しています。(第158回の記事 参照)

何もやみくもに「追加緩和」ばかり、しかも何十兆円の規模で実施し続けずとも、「金融政策の効果」という意味では、その効果はきちんと出ているんです。

エコノミストたちが正確な情報を発信しようとせず、非常に変更した情報ばかりを発信しようとするスタンスは全く変わっていないように感じます。ですが、実は安倍さんも私の同じような考え方をきちんと発信しているんですよ。
デフレから脱却しつつある、金融政策の効果徐々に波及=安倍首相

[東京 14日 ロイター] - 安倍晋三首相は14日、足元の物価動向について「生鮮食品やエネルギー関連の影響を除けば、34カ月連続でプラス。デフレから脱却しつつある」との認識を示した。その上で「日銀の金融政策の効果も、実体経済に徐々に波及している」と語った。

米バンクオブアメリカ・メリルリンチが同日、機関投資家向けセミナーでビデオメッセージを公開した。

安倍首相はその中で世界経済の見通しについて「下方リスクは高まっている」と述べた。今年5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)や先週の中国・杭州での20カ国・地域(G20)首脳会合でも「危機感を共有し、すべての政策対応を行う必要性で一致した」と指摘。「世界経済の成長と市場の安定のため、(G7の議長国として)今後も果断に行動していく」と語った。

一方、首相は環太平洋連携協定(TPP)に関しては「成長戦略の鍵となる。早期に国会の承認が得られるよう全力を尽くす。TPPの早期発効に弾みをつけたい」と述べた。

世界経済の見通しやTPPに関する記述は蛇足ですが、「物価」についてはこれをきちんと評価したメッセージを発信していますね。

つまり、継続した物価の上昇を評価し、市場状況に応じた政策の転換をきちんと図れる段階に来たということなのではないでしょうか。

第81回の記事第82回の記事に於いて私は、「金融政策の限界」について記事にしました。

市場にある「国債」をはじめとする金融商品の量には限界があります。
これを無視し、海外の投資家の御機嫌伺ばかり行うような政策では、いつまでたっても日本の経済は成長できないと思います。

海外の金融に頼るのではなく、日本国が本来持っている「底力」を今こそ見せてもらいたいと思います。
安倍さん、黒田さん。そして財務大臣麻生さん、官房長官菅さん。

周りの「ノイズ」に惑わされず、本当に必要な政策をぜひ、お願いします。



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