第166回 政策金利と公定歩合の違い/「金利目標」と「量的緩和」など、政治・経済を中心とした日常的な情報を、独自な視点で解析します。

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とあるサイトに「回答」を行っていたとき、私の中にある大きな「勘違い」に気づかされましたので、今回はその「勘違い」について記事を作成したいと思います。

その問題がタイトルにも掲載した「政策金利」と「公定歩合」の違いについてです。
やはり、一つ一つの情報は、きちんと理解したうえで言葉にしなければらないな、と改めて感じさせられました。

「思い込み」は「知ったかぶり」につながる、という典型的な事例でした。

【日本の政策金利の推移】
政策金利の推移

【今回のテーマ】

上図は、「日本の政策金利」の推移です。
青いグラフは、かつて「公定歩合」と呼ばれていたものの推移。オレンジのグラフは、現在「政策金利」と呼ばれているものの推移です。

今回の記事では、この「公定歩合」と「政策金利」の違いを中心に、現在の日銀の金融政策について、トータルで考えてみたいと思います。

「公定歩合」と「政策金利」

もう少し深く調べておくべきだったな・・・と今更ながら後悔したこの二つの言葉。「公定歩合」と「政策金利」。
どこに記したのかを調べていると時間がかかるのでページ紹介までは行いませんが、私はおそらく過去の記事で、「政策金利」を「かつて公定歩合と呼ばれていたもの」と表現していると思います。

特に「流動性の罠」について解説するときに私はこの「政策金利」という言葉を多用していますね。

「公定歩合」とは市中金融機関が日銀からお金を借りるときに市中金融機関が日銀に対して支払う「利息」のことである。
現在はこれが「政策金利」と呼ばれている・・・という風に私は解釈していました。

ところが、実はそうではなかった、ということを示され、ある意味私は愕然としました。
それが、私が先ほど掲載したこちらのグラフです。

政策金利の推移

公定歩合」は「政策金利」と名を変えたわけではなく、現在は「基準割引率及び基準貸付利率」と名を変えて「政策金利」とは別に存在したんですね。この、「基準割引率及び基準貸付利率」とは、「公定歩合」と同じく、金融機関が日銀から直接お金を借りるときに設定されている金利のこと。

これは今でも変わりありません。かつてこれが「公定歩合」と呼ばれていた時代には、市中金融機関はこの「公定歩合」によって自行の預金・貸付金利等を決めていました。

というよりも、各行の預金・貸付金利はこの「公定歩合」と連動されており、日銀が公定歩合を変更すれば、自動的に銀行の金利も変動する仕組みが採用されていたのです。

ところが、1994年10月。当時村山富市内閣において、当座預金(利付禁止預金)以外のすべての金利が完全自由化されたことにより、市中金融機関の金利と、銀行の「公定歩合」との間に「連動性」がなくなってしまいました。

では、金利が自由化され、「公定歩合」と連動しなくなった後、金融機関はいったいどこから資金を調達するようになったのでしょうか。「公定歩合」と連動しないということですから、当然公定歩合よりも低い金利設定を行っていたはずです。

とすると、公定歩合より低い金利で資金を調達できる「市場」があることになりますね?
それが、グラフのオレンジ色のライン。「無担レート」という金融商品になります。


「無担保コール翌日物」とは?

こういう情報って、元々知っていた人から見れば「なんだこいつ、こんなことも知らずに経済ブログを書いていたのか」とバカにされてしまいそうですが・・・。私のような恥をかかない様、このブログを見た人が正確に情報を判断できるようにすることを目的としてこの記事は作成しています。

グラフにある「無担レート」とは、サブタイトルに記した「無担保コール翌日物」という金融商品のことです。
ちなみに「コール」というのは金融機関が資金調達を行うための短期(1年以内)金融市場のこと。

私たちがお金を借りるときのことを考えるとよくわかると思うのですが、普通お金を借りるとき、何の保証もなくお金を貸してもらえるケースは稀です。資産を調べられて、土地等を担保に取られて、それでようやく貸してもらえるのが普通です。

コール市場」とは、このようなめんどくさい手続きを経なくても、「お金を貸してください」といえば「ハイどうぞ」と、すぐに答えてもらえる、そのような市場のことを言うのだそうです。借り入れを起こせるのは金融機関限定です。

またさらに、「無担保コール市場」とはさらに担保(保障)なしでお金を貸してもらえる市場のことで、「無担保コール翌日物」とは、金融機関がお金を借りたその翌日に、すぐに返済をする金融商品になります。

「国債」のことを考えるとわかると思いますが、国債は10年後に返済をする国債よりも1年後に返済する国債の方が金利が低いですよね?(第27回の記事 をご参照ください)

当然今日借りて明日返す金利の方がより低くなることはわかっていただけると思います。
金利が完全自由化された後、金融機関は日銀ではなく、この「無担保コール翌日物」という金融商品を利用して資金を調達するようになりました。

これまでは公定歩合の方が無担保コール翌日物よりも金利が低かったのですが、特に1995年以降、無担保コール翌日物金利が公定歩合を下回ることとなり、市中金融機関は公定歩合ではなく、無担保コール翌日物金利を預金・貸付金利の目安とするようになったのです。


「ゼロ金利政策の導入」と「誘導目標」

また、小泉内閣失礼しました小渕恵三内閣です)において、当時の日銀は「ゼロ金利政策」を導入しました。ゼロ金利政策が導入された折、これまでの「政策金利」であった公定歩合に代わって、無担保コール翌日物金利が「誘導目標」とされることとなりました。

誘導目標」とは、日銀が「無担保コール翌日物」市場に介入することで、市中金融機関が資金を調達する際に利用する「無担保コール翌日物」の金利をコントロールすることを言います。

以下に、この「無担保コール翌日物」の金利をコントロールする方法をご説明いたします。(結構めんどくさいです)


【日銀準備預金制度】

市中金融機関は、日本銀行に対して、保有する預金の一定割合以上の金額を一定期間の間に日本銀行の当座預金に預け入れることが義務付けられています。

この「一定割合」のことを「預金準備率」と言います。準備率は各銀行の種類や預金金額によって違います。
各銀行の預金金額とは、前月の預金金額。この預金金額に種類別の準備率を掛けた金額のことを「所要準備額(法定準備預金額)」と言います。

各銀行は、この「所要準備額」に対象月(前月)の日数を掛けた金額を、当月の16日~翌月15日の間にそれぞれの銀行が日銀に開設している「日銀当座預金」に預けなければなりません。

一旦預けてしまえばそれから後の日銀当座預金残高が(前月の平均)所要準備額を下回っていても上回っていても問題はないのだそうです。


【日銀による無担保コール翌日物への介入とは】

「無担保コール翌日物」とは、各銀行が日銀に設置しているこの「日銀当座預金」の間で行われます。

A銀行がB銀行からお金を借りる場合、B銀行が日銀当座預金に預けている所要準備額の中からB銀行は資金を引き出してA銀行に貸し出します。

過去の調査結果から、日銀が各行の「日銀当座預金残高」を増やすことで無担保コール翌日物の金利も下がることが算出されています。つまり、日銀による「無担保コール翌日物」への介入とは、日銀が各行の「日銀当座預金残高」を増やすことにあります。

では、日銀はどうやってこの日銀当座預金残高を増やすのか。これは、すなわち各行が当座預金に積み立てる所要準備額の額を増やすことにあります。

では、どのようにして所要準備額の額を増やすのか。
「所要準備額」は「各行の前月の預金金額」がベースとなりますから、すなわち日銀が各行の預金金額を増やすことが日銀の「無担保コール翌日物」への介入だということになりますね。

では、どうやって日銀は各行の預金金額を増やすのか。これはすなわち、日銀が各行に貸し付けを行ったり、または所謂「量的緩和」を行い、国債などの債券や株などの証券を現金に交換し、「流動性」を高めること。つまり、現在日銀が行っている「量的緩和」とはすなわち「政策金利」のコントロールにもつながっているんですね。


「基準割引率及び基準貸付利率」の意義

さて。それでは、「基準割引率及び基準貸付利率」と名前を変えた「公定歩合」ですが、公定歩合を下回る「無担保コール翌日物金利」が市中金融機関の金利を決定する役割を果たすこととなり、また小泉内閣でゼロ金利政策が導入されてから「無担保コール翌日物の誘導目標」がすなわち「政策金利」となったことで、「公定歩合」はお払い箱となったのでしょうか?

ですが、この「公定歩合」は「基準割引率及び基準貸付利率」と名を変え、現在でも存在し続けています。
では、「基準割引率及び基準貸付利率」とは一体何のために存在しているのでしょうか。


【無担保コール翌日物取引に参加できない金融機関】

「無担保コール翌日物」とは、その名の通り「無担保」ですから、信用のない金融機関では資金を貸してもらうことはできません。ですが、それでも資金は必要となるわけです。

この時信用のない金融機関に対して「日銀当座預金に預けた資金」を担保に貸し出しを行ってくれるのが「日銀」です。
このときの貸出金利が「基準割引率及び基準貸付利率」です。

政策金利の推移

改めてこちらのグラフを見てみます。上の青いラインの棒グラフ。ずっと「0.3%」を維持し続けています。
この0.3%がすなわち「基準割引率及び基準貸付利率」。信用のない企業に対して日銀が貸し付けを行う際の金利です。

また、この0.3%という金利は日銀が無担保コール翌日物に介入する際の金利の「上限」ともなります。
量的緩和をやめ、財政の緊縮に入ったとき、無担保コール翌日物の金利は上昇します。

もちろん「基準割引率及び基準貸付利率」を上回ることも考えられます。
ですが、この場合「基準割引率及び基準貸付利率」が「無担保コール翌日物金利」を下回ることになりますから、市中金融機関は無担保コール翌日物を利用せず、日銀からお金を借りることになります。

こうなると、再び「基準割引率及び基準貸付利率(旧公定歩合)」が政策金利となります。

色々と複雑なんで、結構頭を使いましたが、「政策金利」の意味がようやく理解できた気がします。
ま、自分の持っている常識を疑い、正しい情報を追い求める姿勢が必要だということですね。



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>> 第167回 マイナス金利政策をわかりやすく/長期金利目標導入とは?
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