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<前回の記事 第15回 デフレを脱却する方法⑩

前回の記事では、バブル崩壊以降、アジア通貨危機が発生するまで、一貫して「政府が適宜財政出動を行うこと」がデフレ脱却の方法となっていることをお示ししました。

一方で小泉内閣以降、第一次安倍内閣においても、政府は具体的な「財政政策」を実行せず、「金融政策」のみに依存する「マネタリズム」と呼ばれる考え方に基づいた政策をとってきたことをお示ししました。

安倍さんは、実際第二次安倍内閣が誕生する前、このようなことを言っています。
「あと少しだった」と。

政府債務の推移

こちらは、「政府債務発行残高」の推移。「国債」だけでなく、地方政府(自治体)の債務まで含む、所謂「公債発行残高」の推移です。
世界経済のネタ帳サイト様からお借りしています。

表中、赤枠で囲った部分を見てただきますと、バブル崩壊以降でたった一回だけ、公債発行残高が前年を下回っている年があります。つまり、いわゆる「政府の借金」が減った年がある、ということです。

第一次安倍内閣がスタートしたのが2006年の9月末で、2007年8月末まで継続しますから、まさに当時の安倍内閣にて達成した成果、ということになります。

ですが、安倍さんはこのように言っています。「(当時の)安倍内閣が何か特別なことをしたわけじゃない。景気が良くなり、税収が増えたから改善しただけだ」と。

名目も実質もプラス成長する中、唯一デフレーターだけがマイナスの値を付けていますから、「あと一歩でデフレを脱却できた」と安倍さんは言っているのです。

そして、デフレを脱却できなかった理由が、「日銀のせいだ」と安倍さんは言っています。
というのも、2007年2月。日本銀行はそれまで0.25%だった政策金利を0.5%に引き上げています。
「日銀が政策金利さえ引き上げなければ、日本はデフレから脱却することができた」と言っているのです。

今回のテーマは、「本当にそうだったの、安倍さん?」という問いかけがそのテーマです。
実際、第一次安倍内閣の経済政策と第二次安倍内閣の経済政策は明らかに異なっています。

マネタリズムからケインズ政策へ。マネタリズムを否定した「流動性の罠」という言葉からその違いを比較してみます。

「流動性」とは

では、抑々「流動性の罠」とは何か。ここからまずはお伝えしていきます。
流動性の罠」を知るためには、当然「流動性」という言葉の意味を理解する必要があります。

前回の記事 で、日銀が単独で行える金融政策として、以下の三つを上げました。

・金融機関が設立時、日本銀行に預けおくべき資産の一部である「準備預金」の額を増やしたり減らしたりすること。
・金融機関にが日銀からお金を借るときの金利=政策金利を上げたり下げたりすること。
・国債や株式など、既に市場に流通している現金通貨以外の資産を買い上げたり(買いオペ)、日銀が保有している資産を売り払ったり(売りオペ)すること。


日銀の金融政策の中で、デフレ経済で市場の資金が動かないときは、「準備預金の額を減らし」、「政策金利を引き下げ」、「買いオペを行う」ことが有効だといわれます。

これらの政策はすべて、金融市場の「流動性」を高めるために行われる政策です。
流動性」とはすなわち、「資金の動きやすさ」のことを言います。

例えば、手元に価値があるものとして、20グラムの金(きん)があるとします。
途中、とてもおなかが減って、アンパンが食べたくなったとします。

コンビニに寄ってアンパンを手に取り、代金を払う際、お金の代わりに「金(きん)」を差し出すとします。
はたしてコンビニでアンパンを買うことができるでしょうか。

価値があるものですから、ひょっとすると金(きん)と引き換えにアンパン1個くらい譲ってくれるかもしれません。

ではたとえば、コンビニではなく、家電量販店で、「8万円のテレビを譲ってくれ」といった場合はどうでしょうか。
ちなみに金20グラムで約10万円ほどの価値があります。

金を手渡されたとき、まずは金の重さを測り、金の価値を調べ、その金が本物かどうかを調べなくてはなりません。
その手間のほうが無駄だと感じ、門前払いにされるかもしれませんね。その金に8万円以上の価値があるにも関わらず、です。

では、手元にあるのが20グラムの金ではなく、10枚の一万円札であった場合はどうでしょう。
テレビを譲ってくれるばかりでなく、おつりとして2万戻ってきますね。

このケースでいえば、金(きん)が「流動性の低い資産」。1万円札が「流動性の高い資産」ということになります。

つまり、専門家でなくとも価値の判断が行いやすく、手続きも複雑でない、取り扱いが簡単な資産が「流動性の高い資産」。
逆に取り扱いが複雑な資産が「流動性の低い資産」です。

上記ケースで日銀が行っている、市場に流動性の高い資産である現金通貨を供給し、代わりに流動性の低い資産である株や国債を市場から引き揚げた=「流動性を高めるための金融政策ということになります。

流動性の高い資産の方が貸し借りもしやすいですし、市場経済が活性化するのではないかと考えられるわけです。

金融機関も保有している資産の大部分は顧客から預けられた「預金」ですから、現金通貨という形では、保有しているだけで利息が増え続けますから、利息以上の資金を稼ぐために、保有している現金通貨を貸し出し、金利を得る必要がありますから、「積極的に貸し出すに違いない」というのがこの金融政策の考え方です。

「流動性の罠」

しかし、考えてみてください。
日銀は、流動性を高めるために、「政策金利」を引き下げていますね。
「政策金利」とは、ありとあらゆる資産の利率のベースとなる指標です。

つまり、政策金利が0%に近付けば近づくほど、その他の資産の利率も0%に近づきます。
下手をすれば元本割れ。企業でいえば倒産する可能性すらあります。

借り入れを起こす側とすれば、確かに利率が低いほうがお金は借りやすいかもしれません。
ですが、借り入れを起こした資金を投資する先がなければ、誰も投資など行わないのです。

そんな中でいくら日銀が金融緩和を行い、「流動性を供給」したところで、投資する対象のない資金を借りる人は誰もいません。

政策金利が0%に近付けば近づくほど、現金通貨の価値が高くなり、みんな資産を現金のままで保有しようとするようになります。

「政策金利が0%に近づけば近づくほど、ありとあらゆる金融政策の効果が全く失われてしまう」。

これこそが「流動性の罠」です。
マネタリズムでは、「流動性の供給さえ行っておけば、経済は活性化し、デフレから脱却することができる」と考えます。
ですが、「政策金利が0%に限りなく近づいた市場経済」では、「金融政策そのものの効果」が失われてしまうのです。

バブル崩壊後の日本経済は、この「流動性の罠」と呼ばれる経済状況に突入していたのではないか、と考えられるのです。

では、このような経済状況下、なぜ第一次安倍内閣では名目、実質GDPを上昇させ、税収を増やし、公債発行残高をマイナスに転じさせるほどの経済成長を遂げることができたのでしょうか。

次回は、「円キャリートレード」という言葉に着目して記事を進めてみたいと思います。
このシリーズの過去の記事
>> 第18回 「流動性の罠」と「円キャリートレード」を問う
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