第117回 公的年金制度の仕組みをわかりやすく図解入りで解説いたします。など、政治・経済を中心とした日常的な情報を、独自な視点で解析します。

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<前回の記事 第116回 消費税問題最終結果から検証する新たなる課題

先日、私の記事をご覧いただいた方から、特にこの「年金制度」について、

「そうはいってもやっぱりわかりにくい」

「脳がパンクしそうだ(T_T)」

なる旨のご意見をいただきました。
私、このブログを始めた最大の目的は、一般的に「難しい」と考えられていることを、一般の方、情報に通じていない方でもわかりやすくご理解いただける記事にすることを目的としてこのブログをスタートしたのですが、改めて初心に返る大切さが必要だと痛感させられております。

年金の問題についていえば、一般的に年金の収支状況は「赤字」であり、年金会計は今にも破綻しそうである・・・という誤った情報にメスを入れ、決してそうではない。

年金制度は、事実大幅な「黒字」であり、「破綻」なる状況とはとても縁遠い位置にあることを「わかりやすく」解説しようとしていたのですが、そもそもその大本となる「年金制度」。

ここが「わかりにくい」というご意見が一般的に多いのだ・・・という視点を改めて大切にすべきだった、と痛感しております。
仕組みについては、第32回の記事で詳細に解説してはいるのですが、確かに・・・文字だけで、読んでいると脳が沸きそうです・・・。

【今回のテーマ】

【3つの年金会計帳簿】
年金システムのからくり

そこで、今回はこの図表を用いて、画面を動かしながら(といっても動画にするわけではございません)解説してみたいと思います。
わかりやすく・・・できるかな・・・?


年金制度内での資金の動き方

【年金制度でありがちな誤った解釈の仕方】

年金制度の仕組みを理解する上で、最も多くの人が誤解しているのではないかと考えられるのは、年金制度が「年金保険料」と「年金給付費」の2つの項目だけで単純に運用されているのではないか、とする「誤解」ではないでしょうか。

上図で考えれば、「年金会計」だけで運用されているのではないか、とする「誤解」です。

次に、このところ「GPIF」という言葉をよく見かけるようになりましたから、GPIFで運用されている、上図でいえば「年金積立金」の存在は認識するようになっている人も増えているかもしれません。

ですが、この「年金積立金」のことを、読んで字のごとく、

「毎年私たちが納めた『年金保険料』が『年金積立金』の中に積み立てられていて、ここから毎年『年金給付費』が引き出されているのではないか」

という「誤解」です。

ですから、GPIFが運用に失敗して、5兆円の運用損が発生した・・・という報道が流されただけで、私たち国民は

「えっ!?本当に年金制度って大丈夫なの?」

と俄かに不安が大きくなり、大騒ぎします。

次に、「年金積立金」そのものは理解していて、年金会計から出た黒字が積み立てられたものが「年金積立金」であるということは理解しているのですが、「年金積立金は毎年切り崩されていて、毎年数兆円引き出されている」などという話題を耳にすると、

「やっぱり年金会計は赤字で、毎年年金積立金が切り崩されているんじゃないか!」

と誤解する人もいらっしゃいます。

「基礎年金勘定」という概念

そう。多くの人の頭の中に存在しないのは、この「基礎年金勘定」という概念なのです。

改めてこちらの図表をご覧ください。

【3つの年金会計帳簿】
年金システムのからくり

年金会計は、あくまでもこの3つの年金会計の中を、資金が流動することによって運用されています。

2015年度と2016年度における「年金資金」の運用状況を考えてみます。

【2015年度末から2016年度にかけての年金資金の運用方法】
年金会計の「運用」は、予め「『前年度』の保険料が年金会計に納められた状態」からスタートします。

「前年度」ですから、今回の事例で考えますと、「2015年度」が「前年度」に相当します。

こんな感じです。

【年金制度の運用図①】
年金システムのからくり①
「昨年度末の年金保険料総額」というのが、つまり2015年度に納められた年金保険料の総額、ということになります。

次に、ここから、2016年度の期首、つまり4月1日の時点で、2016年度、一年間をかけて納められる保険料の総額を計算して、「年金計会」から引き出し、「基礎年金勘定」に繰り入れます。


【年金制度の運用図②】
年金システムのからくり②

こんな感じです。
通常であれば、今は「少子化」の状況にあり、年々年金保険料の納付者数は減っていますので、「年金会計」の会計帳簿に、その差額分が残るはずなんですが・・・

【年金未納者の考え方】

2015年度に、全ての年金加入者が全額年金保険料を納めていれば問題はないのですが、残念ながら特に「国民年金加入者」の中には、「未納者」が存在します。

特に事前に免除申請を出していて正規な方法で減免手続きを踏んでいれば事前に計算することもできるのですが、そのような減免手続きを踏まずに「未納」であった場合。

【年金制度の運用図③】
年金システムのからくり③

こんな感じで、「不足分」が発生します。この不足分が・・・

【年金制度の運用図④】
年金システムのからくり④

年金積立金」から繰り入れられます。
多くの方が「赤字」だと思いこんでいるのはこの部分です。


【年金制度の運用図⑤】
年金システムのからくり⑤

こんな感じです。
年金積立金より繰り入れ」部分と「昨年度末の年金保険料総額」が合算されて「基礎年金勘定へ繰り入れ」られます。

年金システムのからくり②

先ほど「皆さんが赤字だと思い込んでいる」として示した年金積立金の「年金会計へ繰り入れ」部分は、年金積立金から→「年金会計」→「基礎年金勘定」へと移動しただけで、年金会計システムトータルで考えると、まったく赤字とも黒字ともなっていないことが分かりますね?

次に、「給付費」のことを考えてみます。
年金給付費」は、上図、「年金制度の運用図②」の状況からスタートします。
年金会計から年間の年金保険料を計算して、総額を「基礎年金勘定へ繰り入れ」たときと同じように、今度は一年間必要となる「年金給付費」をあらかじめ計算して、その総額を「基礎年金勘定」から「年金会計」へ繰り入れます。


【年金制度の運用図⑥】
年金システムのからくり⑥

【年金制度の運用図⑦】
年金システムのからくり⑦

こんな感じです。
第111回の記事でもお伝えしましたように、年金会計は「給付費」よりも「保険料」のほうが圧倒的に多いですから、「年金会計の会計帳簿から基礎年金勘定へ繰り入れられた金額よりも、基礎年金勘定から年金会計へ繰り入れられた金額のほうが多くなります。

その差額は・・・

【年金制度の運用図⑦】
年金システムのからくり⑧
こんな感じで「基礎年金勘定」部分に積み立てられます。
ちなみに、先ほど年金積立金より繰り入れられた「未納部分」については、そもそも未納者には年金を受け取る権利がありませんので、受け取り者がいない年金資金として基礎年金部分に積み立てられます。

そして先ほど基礎年金勘定から年金会計に繰り入れられた年金資金から受給世代に年金給付費が支払われるわけですが・・・

【年金制度の運用図⑦】
年金システムのからくり⑨

こんな感じで、「受け取り者がいなくなってしまう場合」が発生ます。
基礎年金勘定から繰り入れられた年金資金は、「会計年度中に、年金受給者が生存し続けた場合」に支払われる年金給付費があらかじめ計算されて繰り入れられています。

ですが、特に年金受給世代はそのほとんどが「高齢者」であり、会計年度中に亡くなってしまう可能性が最も高い世代です。
ですので、当然会計年度中に受け取り者がいなくなり、宙に浮いてしまう「年金資金」が発生します。

この「宙に浮いた年金資金」がどうなるかというと・・・

年金システムのからくり⑩

「年金積立金」に繰り入れられることになります。
この様に、実は「年金積立金」とは、「受け取り者がいなくなった年金」が積み立てられた資金の総額で、万が一将来的に支給金額足りなくなった時に利用される資金です。

まとめ

いかがでしょう。「わかりやすかった」でしょうか・・・。
これはあくまでも「国民年金(第一号被保険者)」の運用方法で、厚生年金部分にはこのような「基礎年金勘定」という部分は存在しません。

ただもちろん、第二号被保険者も「国民年金」を納めていますから、その部分は同じように運用されています。
(意味が分からん!という人は、第32回の記事をご参照ください)

この他にも、「保険料」の中には「国庫負担分」も存在しますが、このことは本日の説明の中では言及していません。

次回記事では、「厚生年金部分の収支状況」について、少し内容を深めてみたいと思っています。
現在「破綻する」と大騒ぎされているのは「国民年金部分」であり、厚生年金部分についてはあまり深く考えていませんでしたので、これをよいきっかけとして、「厚生年金部分収支状況」について解析してみたいと思います。



このシリーズの過去の記事
>> 第112回 マクロ経済スライドをわかりやすく~デフレ時・インフレ時のマクロ経済スライド~
このシリーズの新しい記事
>> 第118回 公的年金収支状況の推移~厚生年金・国民年金の収支状況を検証します~ にほんブログ村 政治ブログへ にほんブログ村 経済ブログへ

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このエントリーにお寄せ頂いたコメント

年間保険料(収入)より給付費(支出)が少ないならば年々黒字なわけで、国庫負担(1/2)は必要ないのではないでしょうか?
チダ at 2016/07/30(土) 13:24 | URL

チダ様

コメント、ありがとうございます。
第118回の記事で記したのですが、政府サイドに立った「言い訳」として、「年金制度改正を行った当時は、政府支出がなければ赤字だった」からだ、ということはできると思います。
http://nonkinonki007.blog.fc2.com/blog-entry-119.html

国庫負担分を1/2にすることを決めたときは、国民保険料だけでは給付費を賄えていませんでしたから。

ですが、現時点では、私も正直なところ、ここ負担を1/3から1/2に引き上げる必要はなかったのではないか、と思っています。

現時点では政府支出が0円であったとしても、十分に保険料収入の中で賄えていますからね。

年金保険料を1/3から1/2に引き上げたことにより、消費税率1%分の予算が必要になり、これが消費税率が引き上げられた理由に含まれていますから。
のんき at 2016/07/31(日) 10:43 | URL

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