第111回 将来の年金問題を考える~戦前の出生者数の推移と将来の年代別人口の推移から~など、政治・経済を中心とした日常的な情報を、独自な視点で解析します。

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<前回の記事 第110回 価値観の受け入れ方~「講師」という立場を通じて感じた意思疎通の難しさ~

前回の記事では、私が勉強会における「講師役」を担当させていただいたときの経験をベースに、「将来の年金問題」について記させていただいたのですが、あくまでもベースが「勉強会の報告」のような形になっていて、実際に記事にした内容が埋もれてしまいかねないので、改めて「将来の年金問題を考える」というタイトルで同じ内容を復活させる形で記事を掲載します。

継続的に読んでいただいていて、新しい記事を楽しみにしてくださっている方には物足りない内容とはなってしまいますが、ご了承いただければと思います。前回の記事を「雑記」としてカテゴライズし、今回の記事を「年金の問題」として改めて正式にカテゴライズします。

画像も、前回同様以下の画像からのスタートです。

【国民年金も厚生年金も実は大幅な黒字です】
国民年金も厚生年金も、実は大幅な黒字です。

こちらは、現役世代の「保険料総額」に「国庫負担分」を加えた金額から、受給世代の「給付費総額」をマイナスしたものです。
記事を読み進める前に、まずは第32回の記事を改めて熟読いただきまして、「年金が破綻しない理由」をしっかり頭の中に入れた上で、今回の記事をご覧ください。

【今回のテーマ】
第32回の記事は、主に「現在年金が破綻しない理由」を解説した記事です。

この記事を読んだとき、「確かに現在年金は破綻しないかもしれないが、将来も破綻しないとは言い切れないのではないか?」という疑問が出るのも最もなところだと思います。

前回の記事と重複する内容にはなりますが、では改めて「将来に向けて」も年金制度は本当に安全なのか。
この点を再度記事として取り扱いたいと思います。


「現在の年金制度が破綻しない理由」

まずは「復習」からスタートしてみます。
第32回の記事で、「現在の年金制度が破綻しない理由」について解説しているわけですが、「長くてわかりにくい」という人もいるかもしれませんので、簡単にその理由を解説いておきます。
(ただし、用語説明はしませんので、用語が不明な方は第32回の記事をご参照ください)

破綻しない最大の理由はこちら。

【国民年金も厚生年金も実は大幅な黒字です】
国民年金も厚生年金も、実は大幅な黒字です。

前段でもお示しした画像です。つまり、私たち国民が納めている「年金制度」は、国民年金も厚生年金も大幅な「黒字」だということ。

もう一つ画像をお示しします。

【年金制度には3つの会計帳簿が存在します】
年金システムのからくり

年金制度は、この3つの会計帳簿の間を保険料や給付費が行き来することで運用されています。
実際には「年金会計」の部分は「国民年金会計」と「厚生年金会計」があるので、事実上4つの会計帳簿が存在することになります。

【年金制度のからくり(2016年度の場合)】
①予め「年金会計」には2015年度に現役世代が納めた「保険料」がプールされている。
②2015年度に納められた保険料の中から、2016年度の現役世代全員が納付する予定の保険料をあらかじめ引き出し、「基礎年金勘定」に繰り入れる。
③2015年度に「未納者」がいた場合、基礎年金勘定に移動する金額が足りなくなるので、不足した金額を「年金積立金」から繰り入れる。
④基礎年金勘定に繰り入れられた保険料の中から、今年度の受給者世代全員が受給する給付費をあらかじめ引き出し、「年金会計」に繰り入れる。
⑤2016年度中に受給者が亡くなった場合、給付費が年金会計の中に余ってしまうので、余剰金を年金積立金に繰り入れる。

と、このようなシステムで年金は運用されています。
未納者がいた場合、「基礎年金勘定に繰り入れる額」が不足しますので、「年金積立金」から繰り入れられています。
この金額が一般的に国民が「赤字」だと思い込んでいる金額です。

ですが、未納者には本来年金を受け取る資格がありませんから、年金積立金から繰り入れられた資金は、将来的に「基礎年金勘定」に積み立てられていくことになります。

このような方法で年金積立金に積み立てられた金額が2014年度末で約112兆円。GPIFによる運用収益を合わせて約146兆円。
基礎年金勘定に積み立てられている金額が2014年度末時点で約3兆円ですよ、ということです。

年金収支の黒字分から考えても、年金積立金や基礎年金勘定に積み立てられている金額を考えても、現時点で、とても年金が「破綻する」ような状況とは乖離していることが分かります。

このような状況を踏まえた上で、

・本当の年金問題とは「未納者」が増えることにある。
・未納者は第一号被保険者(自営業者・無職者)にしか発生しない。
・第一号被保険者を第二号被保険者に移行させることで「未納者」の発生を防ぐことができる。
・第一号被保険者を第二号被保険者に移行させる方法とは、無職者を就労状況につかせることである。
・雇用状況の改善とは、すなわち「社会保障問題」の解消ともダイレクトに直結する問題である。

というのが「年金問題」を考える上での「肝」ともいえる部分です。

将来的に年金は破綻することはないのか?

ここが、つまり勉強会でも指摘を受けた部分です。
年金問題を含む「社会保障問題」を考える上で、もう一つ「肝」となるのは、「団塊の世代」と「団塊ジュニア世代」の存在です。
「少子高齢化」という言葉でひとくくりにされてしまいがちですが、実は本当に「少子高齢化」が深刻だったのは、団塊の3世代が生まれた直後から10年間にかけての方がよほどひどかったですし、「団塊ジュニア」のピーク時以降20年間に比べると、「少子高齢化問題」はだいぶん改善されている、というのが本当のところです。

戦直後、つまり第二次世界大戦が終了した後の出生数の推移、というのは様々なところでよく見かけると思うのですが、前回の記事に引き続き、今回の記事でお見せしたいのは、「戦前の出生者数を含めた現在までの出生者数の推移」です。

【戦前の出生者数を含めた現在までの出生者数の推移】
出生者数推移(戦前データを含む)

左側の赤い線が、今年100歳になる皆さんが生まれた都市中央部の二本の赤い線は「団塊の世代」の始まりと終わりです。
確かに戦前の出生者数の方が戦後の出生者数に比べて多く見えますが、当時の寿命と現在の寿命を比較すれば、当然ある一定の年代まで生き残っている割合は当然戦後と比較すると少なくなっているはずです。

そこで、厚労省がホーム―ページに掲載している、「生命表上の特定年齢まで生存する者の割合の年次推移」という一覧表を参考に、各年代で現在生存している人の数を推測してグラフ化したのが以下のグラフです。

生存状況

ちなみに、「生命表上の特定年齢まで生存する者の割合の年次推移」とは、下記の一覧表です。

【生命表上の特定年齢まで生存する者の割合の年次推移】
生命表上の特定年齢まで生存する者の割合の年次推移

各年代の出生者数に、この一覧表にある生存割合をかけたものが上のグラフです。
ある一定の年齢から年齢までの感覚に開きがありますので、それぞれの期間の生存割合は均等に減少する様に計算しなおしています。

グラフの赤い部分が現在生存している人の人口推移を示したグラフとなっています。
101歳以上の方の人口はグラフから外しています。
黄色いラインで囲んだ部分が「現役世代」の人口です。

私が現在検証しているのは、あくまでも「年金問題」に限定した社会保障問題であり、「医療」や「介護」の問題は外して考えている、ということをまずはご認識ください。

そして、現在のこの状況で毎年年金会計は大幅な黒字を出しており、150兆近い「積立金」が存在しているという事実です。

ちなみに、2014年度の年金保険料総額が国庫負担分と合わせて37兆7334億円。
2014年度の現役世代総数が7246万人。一人当りの保険料が年間約52万円です。

2014年度の年金給付費総額が23兆9775億円。
2014年度の受給世代総数が4142万人。一人当りの給付費が年間約59万円です。

飽くまで概算で、全く正確性があるとは言えない数字ですが、現在の統計データから試算するとこのような計算結果になります。
実際にこの数字になるのだと考えるのではなく、「指数」のようなものだと考えてください。

この時点での現役世代一人当りの受給者数は0.57人になります。

【20年後の生存状況】
20年後の生存状況

こちらは、今から20年後。2024年の生存状況です。
この時の現役世代一人当たりの受給者数は0.58人で現在とほぼ変化していませんから、この時点で何か年金財政に問題が出ることは考えられません。

問題となるのは、ここから5年後の人口です。(団塊ジュニアが受給世代となる年)

【25年後の生存状況】
25年後の生存状況

2014年以降5年間の出生者数は2014年とまったく同じ出生者数で計算しています。
この時点での現役世代一人当たりの受給者数は0.63人で現在を0.06人ほど上回っていますので、ひょっとすると支障が出てくるかもしれません。

ここからさらに5年後、2044年の時点では、0.67人と、現在より約0.1人増えています。そこで、2044年の保険料の総額と給付費の総額を比較してみます。

2014年のデータで、現役世代一人当たりの保険料が年間約52万円、受給世代一人当たりの保険料が年間約59万円だという計算結果が出ていますから、これを2044年時点での現役世代と受給世代の人口に乗じてみます。

2044年の現役世代の人口・・・5260万人
2044年の受給世代の人口・・・3523万人

現役世代保険料総額=5260万×52=27兆3512億円
受給世代給付費総額=3523万×59=20兆7883億円

2044年の年金収支・・・27.4兆円-20.8兆円=6.5兆円

いかがでしょう。
年金収支はこの時点でもプラスになりましたね?
勿論この数字は現時点での指標を基に指数化して計算したものであり、この通りの計算結果になるとは限りません。
ですが、それほど大きな違いが生まれるものでもないと思います。

そして、それでも尚支給状況に不具合が生じたときのために「年金積立金」は存在するのです。

ちなみにこれから5年後は現役世代の負担人数は減少に転じます。
つまり、「年金問題」を考えるときのピークは2044年だということになります。

ピークを迎えたときに破綻しないよう、「注視」する必要はあるかもしれませんが、現実的にすでに年金問題については「解消された」と考えるのが筋ではないかと私は思います。

今後の制度改正として、年金を受給するために必要となる納付期間が現在25年となっているものが10年に短縮される等、このような改正が行われる可能性はありますが、だから年金が破綻する・・・という理屈にはならないのではないでしょうか。

将来の年金給付状況について、改めて記事にしてみましたが、いかがだったでしょうか。

【次回テーマ】
次回記事では、このところよく耳にする、「年金支給額が削られている」といううわさについて。
これを検証するため、「マクロ経済スライド」というキーワードに着目して記事を作成してみたいと思います。


このシリーズの過去の記事
>> 第56回 GPIFと年金の運用
このシリーズの新しい記事
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