第102回 「リーマンショック級の危機」は本当に訪れないのか?~「金融取引」から見る世界経済など、政治・経済を中心とした日常的な情報を、独自な視点で解析します。

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<前回の記事 第101回 「リーマンショック級の危機」は本当に訪れないのか?~「外需依存度」から見る世界経済

前回の記事より今回の記事にかけて、安倍首相が発言した「リーマンショック級の危機」という言葉について、現在の世界経済の状況が、本当にそのような状況に至っていないのか。そのことを検証するための記事を作成しています。

勿論私としても、現在の世界経済が「リーマンショック級の危機」にあるとは考えていないわけですが、世界経済における指標が、
リーマンショック以前と比較して改善されているのかというと、これにはいささか疑問を覚えています。

前回の記事では、リーマンショックの際に麻生さんが、G20金融サミットにおいて行った発言に着目し、輸出入の総額=「外需依存度(または貿易依存度)」の側面から記事を作成しました。
おさらいをすると、麻生さんが発言した「リーマンショックが発生した理由」とは、下記のとおりです。

【リーマンショックが発生した理由】
・外需依存度の高い国が、アメリカの巨大な消費に依存した経済政策を取り続けたこと。

つまり現在、外需依存度が高い国が、内需主導の経済政策に転向し、米国の巨大な消費に頼らずとも、自国内で経済を回していけるような経済システムになっているのであれば、「リーマンショック級のリスク」を現時点で回避できていることになるのですが、特にドイツと韓国は未だに「貿易依存度」が高い状況にあること、そして「中国」はものすごい勢いで輸出入の総額を拡大し続けている、という状況にも拘わらず、貿易依存度は下落し続けるといういびつな状況にあることをお示ししました。

【今回の記事のテーマ】
ですが、前回の記事でお示しした「外需依存度」とは、あくまでも物やサービスを介在させた場合の国際取引に限定した「依存度」であり、物やサービスを介在させない、「投資」という分野についてはこの指標に含まれていません。
そこで今回は、「金融収支」という言葉に着目して、「金融取引」への「依存度」を比較する形で記事を作成したいと思います。

「対外直接投資」と「対内直接投資」

前回の記事でもお示ししたのですが、私はこの、「直接投資」というキーワードに着目してこの記事を作成する予定でいました。

【直接投資とは】
ちなみに、「直接投資」とは、日本を基準として考えると、「対外」であれば日本から日本以外の他国に対して「投資」を行うこと。
「対内」であれば、日本以外の他国から日本に対して投資活動が行われることを言います。

こういった国際的な指標を見るときにいつも参考にしているのが「ジェトロ(日本貿易振興機構)」のホームページです。

ジェトロデータより、日本の「直接投資」を閲覧できますので、このデータを参考にしますと、「直接投資」の項目は以下のような項目で構成されています。

【直接投資項目】
製造業
 食料品
 繊維
 木材・パルプ
 化学・医薬
 石油
 ゴム・皮革
 ガラス・土石
 鉄・非鉄・金属
 一般機械器具
 電気機械器具
 輸送機械器具
 精密機械器具

非製造業
 農・林業
 漁・水産業
 鉱業
 建設業
 運輸業
 通信業
 卸売・小売業
 金融・保険業
 不動産業
 サ-ビス業

このうち、「物やサービスを介在させない、『投資』という分野」に着目して分析するとすれば、「金融・保険業」がこれに相当するものと思われます。

「対外直接投資」に着目しますと、日本もやはりこの「金融・保険業」への投資が最も大きく、最新の2015年データで、全体の25.4%を占めています。

ちなみに、世界の主要国の「直接投資」を比較してみますと、以下の様になります。

【対外直接投資国際比較】
対外直接投資国際比較

【対内直接投資国際比較】
対内直接投資国際比較

全ての国のデータで最新のものが2014年ですので、データは2014年の数値となっています。このデータは、実はジェトロではなく世界のネタ帳様より拝借しています。

先進国の中でも、特に影響力が大きいと思われる日本・ドイツ・アメリカ・イギリスの4カ国と、中国、そして金融という分野では最も大きな影響を持つ香港のデータになります。

先ほどもお伝えしたように、これらの項目には「金融」以外の「物」や「サービス」の分野も混在したデータとなっていますので、これらを詳細に分析するため、ジェトロのホームページより、「業種別」データを引っ張ってきてこれを比較しようと考えていたのですが・・・

・・・

・・・

・・・

・・・

・・・


・・・


・・・

ないんです。

検索結果画面はこんな感じです。

【検索結果画面】
ドイツ 対外直接投資 Google 検索

ですが、クリックしてアクセスすると、下記のような画面が表示されます。

【クリック後、表示される画面】
ページが見つかりません ジェトロ

調べてみると、2015年にサイトが改修されたようで、日本の直接投資データ以外に、直接投資の詳細を見ることはできなくなっているようです。

「金融収支」

そこで、代わりになる指標を調べてみたのですが、ここで出てきたのが「金融収支」という指標です。

用語説明を行う前に、項目を見ていただいた方が理解しやすいかと思いますので、まずは項目から見てみます。

【金融収支項目】
金融収支
 直接投資 証券投資 金融派生商品 その他投資 外貨準備

このような4つの項目で構成されています。

ありますね、「直接投資」。「金融収支」はこれ以外に、証券投資、金融派生商品、その他投資、外貨準備の4つの項目で構成されています。

外務省ホームページによりますと、「直接投資」と「証券投資」の違いについて、下記のように記しています。

【直接投資と証券投資の違い】
投資は、現地企業に対する経営参加や支配を目的とした直接投資と、配当や利子の獲得のために外国の有価証券を取得する証券投資に分けられる。
「直接投資」には、直接投資を行う企業(親会社)が投資先(子会社など)に経営に対する長期的な権益を有することを目的とした株式取得、賃金貸借など、すべての企業間取引が含まれる。

この2つ以外の金融商品が「金融派生商品」、「外貨準備」とは、政府が保有する金融商品だと思ってください。

「金融収支」ですので、政府・民間を合わせて、一刻が受け取った収益から、一国から投資された金額をマイナスした、「純収益」となります。

では、下記のグラフをご覧ください。

【金融収支の国際比較】
金融収支

こちらのグラフは、2014年の投資収益を、日・独・米・英・中・香の6カ国・地域間で比較したものです。
明らかですね。最も収益を上げているのがドイツ。最も利益を吸い上げられているのがアメリカという構造です。

改めて思い出していただきたいのは、麻生さんの言葉。

・過剰消費国(アメリカ)において消費抑制策の実施と、同時にアメリカの巨大な消費需要に支えられて経済成長を遂げていた外需依存度の大きな国々において、自律的な内需主導型モデルへとシフトするときなのです。

この言葉。果たして本当に実現できているでしょうか。

・基軸通貨国アメリカへの世界中からの資本流入という形で、アメリカの赤字がファイナンスされるという根本がある

という言葉。「ドイツ」という外需依存度の高い国からの資本流入という形で、アメリカの「赤字」がファイナンスされているという状況が、いまだに改善されていないことが分かります。中国も、イギリスも「投資先」として選ばれる傾向が強いようです。

ただし、2014年単年で指標を図ることは、フェアであるとは言えませんので、過去の推移も見てみることにします。

金融収支の推移

【日本の金融収支推移】
金融収支推移(日本)

【ドイツの金融収支推移】
金融収支推移(ドイツ)

【アメリカの金融収支推移】
金融収支推移(アメリカ)

【イギリスの金融収支推移】
金融収支推移(イギリス)

【中国の金融収支推移】
金融収支推移(中国)

【香港の金融収支推移】
金融収支推移(香港)

不思議なことではあるのですが、どうもヨーロッパ地域の「金融収支」は2010年以降しかデータがなく、それ以前のデータは掲載すらされていません。

日本も、アメリカも、中国も、香港もすべてデータが存在するのに、一体なぜでしょう。
できれば、それぞれの国々から、一体どの国に対して、どれくらいの割合が投資されているのか。そこまでわかるといいんですが、ジェトロHPから直接投資に関連したデータが一切消えてしまっている以上、現時点でこれ以上調査することは不可能ですね。

他のソリューションがあれば今後の記事でご紹介したいと思います。

ということで、現状わかる範囲での内容になります。

【ドイツの金融収支】
ドイツのデータは、2015年のものが出ていませんので、ドイツの2015年データを他国と比較することができないのが残念ですが、解析が可能になっている2010年以降の推移を見ますと、年を追うごとに年々その金額が増え続けていることが分かります。
貿易依存度だけでなく、金融収支に関してもドイツの「外需依存度」の高まりが顕著であることは明確ですね。

【イギリスの金融収支】
一方でイギリスのデータを見てみますと、逆に2012年以降、2015年にかけて、毎年マイナス幅が拡大しています。
実は、イギリスに関しては「対外直接投資」の推移から見ても、他の国とは少し違った現状が見えます。
イギリス 対外直接投資推移

スペースの都合上、全ての国のデータをお示しすることはしないのですが、イギリス以外のすべての国は、過去10年間にかけて、前年において、対外直接投資の値は全てプラスに推移しています。
ところが、唯一イギリスだけは、2012年以降金額が下落し、2013年、2014年と対外投資金額がマイナスの値を付けています。
これは、つまりイギリスがこれまで他国に対して行っていた投資を引き上げている、という状況です。

イギリスの金融収支がマイナスで拡大している最大の理由はこれだと思います。
一方でイギリスのGDPは現地国通貨建てで毎年上昇し続けており、サミットや財務大臣・中央銀行総裁会議において、安倍さん、麻生さんが求めた「財政出動」という面から見ると、イギリスは唯一これを達成済みだったということが言えるのではないでしょうか。

そういった意味で、イギリスが日本からの要求に対して少し引いた態度をとっていたことも理解できます。

【アメリカの金融収支】
アメリカの金融収支はずっとマイナスを記録しているわけですが、2011年以降、その値は縮小していますね。
『過剰消費国(アメリカ)において消費抑制策の実施』という側面で見れば、それは実現出来つつある、と考えてもよいかもしれませんね。

【中国の金融収支】
中国もアメリカ同様、金融収支はずっとマイナスを記録しています。
ところが、中国の場合、アメリカとは少し違った状況があります。

中国 対外直接投資推移

そうです。中国は過去10年間にわたり、リーマンショックの影響すら受け付けず、毎年「対外直接投資」の金額が増え続けているのです。
勿論その内訳をみる必要もありますが、中国の金融収支のマイナス幅が減少している一番に理由はここにあるのではないでしょうか。

【香港の金融収支】
香港は、完全に「金融」によってその地域の経済が成り立っている地域です。特徴的なのは2010年の数字で、リーマンショックの下落幅を更に大幅に下回る下落幅を記録しています。
これは、所謂「ギリシャショック」の影響で、ギリシャショックが世界の金融に対して与えた影響がどれほど大きかったのかということを示しています。

【日本の金融収支】
最後に、日本の金融収支ですが、安倍内閣に入って初年度である2013年、初めて金融収支がマイナスを記録するのですが、その後14年、15年と大幅にその値を拡大している・・・・様に見えます。

ですが、これをドイツと同じグラフの中で比較すると、少し変わった事情が見えてきます。

金融収支 日独比較

2014年と2015年を比較した日本の金融収支の拡大幅は、確かに大きいものがありますが、ドイツの金融収支の大きさはそれを更に上回っていることが分かります。
2015年のドイツの金融収支が分からないのが残念ですが、これだけの状況を見ても、ドイツの「外需依存度」がいかに大きいのかということがご理解いただけるのではないでしょうか。

英国EU離脱で「リーマン並み超円高」は本当か
こちらの記事に関するコメントは、次回記事にて記すつもりです。

麻生さん、安倍さんが「財政出動」を迫る中、これを拒んだドイツ。
ですが、そのドイツの「外需依存度」の深刻さをご理解いただけたでしょうか。

日本としても、本当に大切なのは、ドイツの様に「外需」や「金融」に頼るのではなく、「内需」。
海外の需要に頼らずとも、自律的に自国経済を回せるようになることを目指す「財政政策」こそ、本当に必要なのだと、私は思います。
このシリーズの過去の記事
>> 第103回 麻生副総理の真意~麻生副大総理は本当に増税延期に反対だったのか~
このシリーズの新しい記事
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