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<継承する記事>第515回 学術会議問題~民主主義科学者協会法律部会と判例から検証~

本日は令和2年11月20日…ということで、菅(すが)内閣が誕生してから早くも2カ月が過ぎようとしています。

学術会議の問題も少し時代遅れの様相を呈してきましたが、私としては本日の記事が最もオリジナリティの高い内容ともなっていますので、どうしても記しておきたい・・・ということで、空気を読まずに記事を作成していきます。

第514回 学術会議任命拒否は違法か?選任方法が変更された理由
第515回 学術会議問題~民主主義科学者協会法律部会と判例から検証~

こちら2つの記事に続く3記事目。学術会議問題についての完結編です。

第514回の記事では「学術会議法」そのものから、第515回の記事では平成17年に学術会議法改正が行われたその理由と結果という側面からそれぞれ記事を作成しました。

そもそも学術会議会員の選出方法に多くの課題があったわけですが、17年に行われた改正でもこの問題は解決されなかった。

会員全体に占める「法学者」の数に偏りがあり、更にその半数が共産党が設立した民間団体に所属する学者である…という事が現時点で学術会議法最大の課題です。

これを解消するために平成30年、「推薦」によって任命される他の法制度の過去の「判例」を下に、17年に法改正された学術会議法の「法的な解釈」を明確化するための協議が内閣法制局と学術会議事務局との間で行われ、学術会議事務局によってその書類が作成されました。

ここまでがこれまでの「あらすじ」です。

菅さんはこの「任命拒否」について、その理由を説明しようとしないわけですが、この事を「違法である」という意見を見かけることがあります。

私の予測としては、この理由を説明してしまうと野党によってさらに質問の応酬に晒され、国会審議で重要な審議等に時間をさけなくなることを想定してのものだと考えているのですが、ではこの菅さんの対応は法的に問題があるのでしょうか?

本日の記事のテーマはこの内容について記してみたいと思います。


学術会議任命拒否理由を説明すべき法的根拠

では、菅さんが任命拒否理由を説明しないことが「違法である」と主張する人たちは一体どのような理由でこれが
「違法」だと主張しているのでしょうか?

実は、この理由ではないかと考えられる法律がたった一つだけ存在します。それが「行政手続法」です。

行政手続法 

第8条
1.行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない。

ただし、法令に定められた許認可等の要件又は公にされた審査基準が数量的指標その他の客観的指標により明確に定められている場合であって、当該申請がこれらに適合しないことが申請書の記載又は添付書類その他の申請の内容から明らかであるときは、申請者の求めがあったときにこれを示せば足りる。

2.前項本文に規定する処分を書面でするときは、同項の理由は、書面により示さなければならない。

第14条
1.行政庁は、不利益処分をする場合には、その名あて人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならない。ただし、当該理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要がある場合は、この限りでない。

2.行政庁は、前項ただし書の場合においては、当該名あて人の所在が判明しなくなったときその他処分後において理由を示すことが困難な事情があるときを除き、処分後相当の期間内に、同項の理由を示さなければならない。

3.不利益処分を書面でするときは、前2項の理由は、書面により示さなければならない。

学術会議は「内閣府」に所属する行政機関、との位置づけですから、学術会議会員の任命とは「国家公務員の任命」を行う手続きになります。

国家公務員の任命は、「特許」という「行政行為」になるのだそうです。

で、もし今回の学術会議の問題において、菅さんの行った内容が任命「拒否」なのだとすれば、任命を拒否されたことによって不利益を被った人がいるはずです。

もしくは、学術会議法に定められている「会員の推薦」という手続きが、任命権者である総理大臣への「申請手続き」に該当するのだとすれば、その申請を拒否するわけですから、菅(すが)さんには前記した行政手続法第8条によって申請を拒否した理由を説明する「義務」が発生します。

この事が、菅さんに対して「拒否理由を説明すべき」「説明しないのは違法である」と主張する人たちのその「法的根拠」です。


任命拒否理由を説明しないのは違法なのか?

「会員の推薦」という手続きを「申請」と考えるのであれば、推薦を行った人間(もしくは団体)が申請をしているわけですので、推薦を行った現学術会議の会員が「申請者」ということになりますね?

では、行政手続法において「申請」という行政手続きはどのように定義されているのでしょうか?(後程ピックアップしますので、まずは枠内は読み飛ばしてください)

行政手続法

第2条
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 法令 法律、法律に基づく命令(告示を含む。)、条例及び地方公共団体の執行機関の規則(規程を含む。以下「規則」という。)をいう。

二 処分 行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為をいう。

三 申請 法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分(以下「許認可等」という。)を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているものをいう。

四 不利益処分 行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分をいう。ただし、次のいずれかに該当するものを除く。

 イ 事実上の行為及び事実上の行為をするに当たりその範囲、時期等を明らかにするために法令上必要とされている手続としての処分
 ロ 申請により求められた許認可等を拒否する処分その他申請に基づき当該申請をした者を名あて人としてされる処分
 ハ 名あて人となるべき者の同意の下にすることとされている処分
 ニ 許認可等の効力を失わせる処分であって、当該許認可等の基礎となった事実が消滅した旨の届出があったことを理由としてされるもの

五  行政機関 次に掲げる機関をいう。
 イ 法律の規定に基づき内閣に置かれる機関若しくは内閣の所轄の下に置かれる機関、宮内庁、w:内閣府設置法 (平成11年法律第89号)第49条第1項 若しくは第2項 に規定する機関、w:国家行政組織法 (昭和23年法律第120号)第3条第2項 に規定する機関、会計検査院若しくはこれらに置かれる機関又はこれらの機関の職員であって法律上独立に権限を行使することを認められた職員
 ロ 地方公共団体の機関(議会を除く。)

六 行政指導 行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものをいう。

七 届出 行政庁に対し一定の事項の通知をする行為(申請に該当するものを除く。)であって、法令により直接に当該通知が義務付けられているもの(自己の期待する一定の法律上の効果を発生させるためには当該通知をすべきこととされているものを含む。)をいう。

八 命令等 内閣又は行政機関が定める次に掲げるものをいう。
 イ 法律に基づく命令(処分の要件を定める告示を含む。次条第二項において単に「命令」という。)又は規則
 ロ 審査基準(申請により求められた許認可等をするかどうかをその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準をいう。以下同じ。)
 ハ 処分基準(不利益処分をするかどうか又はどのような不利益処分とするかについてその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準をいう。以下同じ。)
 ニ 行政指導指針(同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し行政指導をしようとするときにこれらの行政指導に共通してその内容となるべき事項をいう。以下同じ。)

行政手続法2条全体を掲載しましたが、この内「申請」については第3項に以下のように掲載されています。不利益処分についても掲載されていますので、ついでにピックアップしてみます。

申請 法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分(以下「許認可等」という。)を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているものをいう。

不利益処分 行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分をいう。ただし、次のいずれかに該当するものを除く。

 イ 事実上の行為及び事実上の行為をするに当たりその範囲、時期等を明らかにするために法令上必要とされている手続としての処分
 ロ 申請により求められた許認可等を拒否する処分その他申請に基づき当該申請をした者を名あて人としてされる処分
 ハ 名あて人となるべき者の同意の下にすることとされている処分
 ニ 許認可等の効力を失わせる処分であって、当該許認可等の基礎となった事実が消滅した旨の届出があったことを理由としてされるもの

「申請」の部分を見てみますと、以下のように掲載されています。

法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分(以下「許認可等」という。)を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているものをいう。


これが行政手続法における「申請」の定義です。

行政法における「特許」とは、「国民が本来有していない特殊の権利・能力・法的地位を与える行為」についていうのだそうです。

公務員の任命とは、まさにこの「特許」に該当するわけです。「公務員に登用」された結果、「特殊の権利・能力・法的地位」を与えられるわけですから、公務員の任命手続きは行政法第2条でいう「行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分」に該当しますね?

では、「学術会議法」にのっとって学術会議の現会員が推薦し、その結果としてその推薦された候補者が学術会議の会員として認定される手続きの場合はどうでしょうか?


「推薦」と「申請」

私、今回の記事の中で、学術会議よりの「推薦」について、「仮にこれを申請と考えるのだとすれば」という仮定の下にお話ししていますね?

では、学術会議よりの「推薦」とは、本当に「申請」に該当するのでしょうか。

仮に、学術会議よりの「推薦」を「申請」と考えるのだとすれば、その申請者は推薦を行った「現学術会議の会員」になることをご説明しました。

そして「申請」の定義の中に、「自己に対し何らかの利益を付与する処分を求める行為」である、という文言が含まれていましたね?

仮に「現学術会議の会員よりの推薦」を「申請」であると考えるのだとすれば、行政手続法、「申請」の定義における「自己」とはすなわち「現学術会議の会員」だということになりますね。

定義を読みかえれば、「申請者に何らかの利益を付与する処分を求める行為」が「申請」なのですから。

では、「行政団体」であるはずの「学術会議」。その会員は当然「国家公務員」です。では、現在国家公務員であるはずの現学術会議の会員が、「自己の利益」を求める申請を行うことは、果たして法的に問題はないのでしょうか?

あくまでも仮定の話ですが、現学術会議の会員が「申請」を行うことによって、次期学術会議の会員が選出されることになります。

現在民間人である(現在国立大学の教授の場合は既に公務員)非会員が新たに学術会議の会員になることによって現学術会議の会員が利益を得る。

果たしてそのようなことが許されるのでしょうか?


「行政機関」の行う手続きは「行政手続法」によっては規定されていない

そうです。

当然前述したような内容は法律。「行政手続法」そのものによって否定されています。(枠内はまずは読み飛ばしてください)

行政手続法

第4条
1.国の機関又は地方公共団体若しくはその機関に対する処分(これらの機関又は団体がその固有の資格において当該処分の名あて人となるものに限る。)及び行政指導並びにこれらの機関又は団体がする届出(これらの機関又は団体がその固有の資格においてすべきこととされているものに限る。)については、この法律の規定は、適用しない。

2.次の各号のいずれかに該当する法人に対する処分であって、当該法人の監督に関する法律の特別の規定に基づいてされるもの(当該法人の解散を命じ、若しくは設立に関する認可を取り消す処分又は当該法人の役員若しくは当該法人の業務に従事する者の解任を命ずる処分を除く。)については、次章及び第三章の規定は、適用しない。
 一 法律により直接に設立された法人又は特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人
 二 特別の法律により設立され、かつ、その設立に関し行政庁の認可を要する法人のうち、その行う業務が国又は地方公共団体の行政運営と密接な関連を有するものとして政令で定める法人

3.行政庁が法律の規定に基づく試験、検査、検定、登録その他の行政上の事務について当該法律に基づきその全部又は一部を行わせる者を指定した場合において、その指定を受けた者(その者が法人である場合にあっては、その役員)又は職員その他の者が当該事務に従事することに関し公務に従事する職員とみなされるときは、その指定を受けた者に対し当該法律に基づいて当該事務に関し監督上される処分(当該指定を取り消す処分、その指定を受けた者が法人である場合におけるその役員の解任を命ずる処分又はその指定を受けた者の当該事務に従事する者の解任を命ずる処分を除く。)については、次章及び第三章の規定は、適用しない。

4.次に掲げる命令等を定める行為については、第六章の規定は、適用しない。
 一 国又は地方公共団体の機関の設置、所掌事務の範囲その他の組織について定める命令等
 二 皇室典範 (昭和22年法律第3号)第26条 の皇統譜について定める命令等
 三 公務員の礼式、服制、研修、教育訓練、表彰及び報償並びに公務員の間における競争試験について定める命令等
 四 国又は地方公共団体の予算、決算及び会計について定める命令等(入札の参加者の資格、入札保証金その他の国又は地方公共団体の契約の相手方又は相手方になろうとする者に係る事項を定める命令等を除く。)並びに国又は地方公共団体の財産及び物品の管理について定める命令等(国又は地方公共団体が財産及び物品を貸し付け、交換し、売り払い、譲与し、信託し、若しくは出資の目的とし、又はこれらに私権を設定することについて定める命令等であって、これらの行為の相手方又は相手方になろうとする者に係る事項を定めるものを除く。)
 五 会計検査について定める命令等
 六 国の機関相互間の関係について定める命令等並びに地方自治法 (昭和22年法律第67号)第二編第十一章 に規定する国と普通地方公共団体との関係及び普通地方公共団体相互間の関係その他の国と地方公共団体との関係及び地方公共団体相互間の関係について定める命令等(第1項の規定によりこの法律の規定を適用しないこととされる処分に係る命令等を含む。)
 七 第2項各号に規定する法人の役員及び職員、業務の範囲、財務及び会計その他の組織、運営及び管理について定める命令等(これらの法人に対する処分であって、これらの法人の解散を命じ、若しくは設立に関する認可を取り消す処分又はこれらの法人の役員若しくはこれらの法人の業務に従事する者の解任を命ずる処分に係る命令等を除く。)

ピックアップしますと、

1.国の機関又は地方公共団体若しくはその機関に対する処分(これらの機関又は団体がその固有の資格において当該処分の名あて人となるものに限る。)及び行政指導並びにこれらの機関又は団体がする届出(これらの機関又は団体がその固有の資格においてすべきこととされているものに限る。)については、この法律の規定は、適用しない。

要約しますと、「行政機関と行政機関との間の手続きには『行政手続法』は適用しない」

と書かれています。

同じく4条の以下の条文では
2.次の各号のいずれかに該当する法人に対する処分であって、当該法人の監督に関する法律の特別の規定に基づいてされるもの(当該法人の解散を命じ、若しくは設立に関する認可を取り消す処分又は当該法人の役員若しくは当該法人の業務に従事する者の解任を命ずる処分を除く。)については、次章及び第三章の規定は、適用しない。

「行政機関が行った『不利益処分』には『行政手続法』は適用しない」

と記されています。

私自身、SNSで議論する中で、行政書士さんから直接教えていただいた内容にはなりますが、今回の学術会議の問題を考える上では皆さんの参考になると思いますので、今回記事にさせていただきました。

現学術会議の会員が行ったのはあくまでも「推薦」であり、当然「指名」ではありませんし、「申請」でもありません。

やはりその判断は 第515回の記事 にて私が掲載しましたように、他の法律で行われた「推薦」。その「判例」に基づいて判断されるのが適正であると思います。

つまり、菅さんが、次期学術会議会員候補者の一部をその推薦から除外したことに、ついて、その理由を説明しなかったことについて、これが「違法である」と裏付ける法律は存在しません。

つまり、菅さんは法令に則って粛々と自らの職務を果たしているのだという事がよくわかります。

30に上る学術会議の「専門分野」に対して、「法学者」のみが他分野の倍近い会員数を占めていて、かつその半数がなぜ共産党が設立した民間団体に所属する学者であるのか。

寧ろその「説明責任」は「共産党」にこそ求められるのではないでしょうか?




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<継承する記事>第514回 学術会議任命拒否は違法か?選任方法が変更された理由

前回に引き続き、「学術会議」の「任命問題」に関連した記事を作成します。

この問題について客観的に判断するため、まずは前回の記事から、「学術会議の任命」についての考え方を纏めてみます。

1.学術会議における「選定方法」の変遷

・昭和57年 日本学術会議法の成立
・昭和58年 学術法の改正が行われる
・平成17年 推薦の選出を「学会」ではなく、「学術会議」が行うよう法改正が行われた。
・平成30年 前記した協議が学術会議事務局と内閣法制局との間で行われた。

2.政府より内閣総理大臣の任命権限について、「形式的な任命」との発言が行われたのは、58年の法改正に関連したもので、「現在(学術会議法制定当時)の有権者である科学者が会員の選出に関与する」ことが前提とされていた。

3.平成17年の法改正が行われた際、「学術会議法制定当時の有権者による推薦」ではなく、「学術会議の会員による推薦」へと選出方法が改められた。

4.17年に法改正が行われたことで、58年当時の政府が想定していた「現在(学術会議法制定当時)の有権者である科学者が会員の選出に関与する」という前提条件が崩壊した。

5.17年の改正は

・「在来の学問体系や諸学問分野の組織図から離れて組織が構成され、メンバーも選出されるべき」
・「科学に関する知識・意見の集約を幅広く行うため、産業人や若手研究者、女性研究者、地方在住者など多様な会員が業績、能力に応じて適切に選出されるようにすべきである」

という「総合科学技術会議」の具申を受けて行われた改正である。

6.筆者である私の私見として、17年の改正が行われたことを考慮しても、そもそも、「学術会議の会員」から「在来の学問体系や諸学問分野の組織」の影響が排除されていなければ、学術会議の根本的な問題は解消されない。

大きく纏めるとこのような内容になります。

今回の記事では、ここから更に6番の具体的な考え方と、タイトルにある「行政手続法」に関連した話題を記事としてまとめようと思います。


「在来の学問体系や諸学問分野の組織図」

先ほどの「まとめ」6番のポイントとして一番大きいのはこの「在来の学問体系や諸学問分野の組織図」ではないかと思います。

ということで、まずは「学術会議のホームページ」を見てみます。

日本学術会議

こちらが日本学術会議のホームページです。

ここから会員の名前なども見ることができるのですが、今回着目してみたいのはこちら。

学術会議協力学術研究団体

画像にリンクを貼ってますので、画像をクリックすると学術会議ホームページの「日本学術会議協力学術研究団体」というページにアクセスできます。

リンク先頁でPCであれば右サイドバー、スマホであれば画面下部より上図のようなリンク元を発見することができると思います。

「協力学術研究団」との名称がつけられていますが、要は17年に法改正が行われるまで、ここに記されているような組織からの推薦を受けて学術会議の会員が決められていたということです。

で、このような団体からの影響を排除しよう・・・というのが17年法改正の趣旨であったとも考えられるわけですが、この推薦団体の中に、以下のような名称の団体が存在します。

民主主義科学者協会法律部会

実際に学会のホームページより、前述の「協力学術研究団」の項目、マ行にアクセスしていただきますと、実際にその名称が記されており、クリックすればその団体のホームページへと遷移することができます。

情報としては私オリジナルのものではなく、以下のホームページで既に掲載されている内容です。

事実を整える

実は、前回の記事で引用させていただいた→「日本学術会議の問題雑感←こちらのリンク元ページと同じ作者の方。

たどり着き方は別々の方法でたどり着いたのですが、作者が一緒だったことに正直驚いています。私もこのような、多くの人に参照とされるような記事を作成していきたいですね。とても勉強になります。

引用します。

現時点での学問分野は30ありますので単純計算すると各学問分野で7名が選出されることになります。

法学はそのうちの1つであり、法学者がどれほど選出されているのか調べました。

18期 法学者23名 政治学者3名で第二部は計26名 ※7部構成 法学は第二部

19期 法学者20名 政治学者6名で第二部は計26名 

20期 法学者15名 ※3部構成に 法学は第一部

21期 法学者15名

22期 法学者15名

23期 法学者14名

24期 法学者15名

25期 法学者11名(外された3名を加えて14名) ※令和2年10月1日時点

裏付けはきちんとできている情報だと思いますので、この情報を事実として記事は進めていきます。

疑問点としてはまさに引用先の記事に記されている通りで、学術会議会員のすべての分野に占める「法学者」の割合が多いこと。

更に問題点として挙げられるのは、このうち

22期
法学者全15名中 民主主義科学者協会法律部会所属6名

23期
法学者全14名中 民主主義科学者協会法律部会所属5名

24期
法学者全15名中 民主主義科学者協会法律部会所属7名

25期(令和2年)
法学者全14名中 民主主義科学者協会法律部会所属7名(3名が任命されず)

引用元記事では25期の3名について「任命拒否」と記されていますが、私は「拒否」されたわけではないと考えていますので、「任命されず」と表記しています。

いかがでしょうか?

本来、全分野に平等に振り分けたとすれば、各分野7名ずつにしかならないはずなのに、なぜか法学者は毎年その倍以上の人数が推薦されており、更にその半数近くが「民主主義科学者協会法律部会」という民間団体に所属しています。

この状況を「異常だ」と感じることができない人がいるとすれば、その人の方が異常だと私は感じます。


民主主義科学者協会法律部会

では、この「民主主義科学者協会法律部会」とは一体どのような集団なのか。

これは、この団体が出している「声明」を見れば一目瞭然です。
①安保関連法案の強行採決に抗議し、そのすみやかな廃案を求める。(2015年7月26日)

②安保関連法案の採決に断固抗議する。(2015年9月20日)

③憲法9条解釈変更・集団的自衛権行使容認の閣議決定に抗議する声明(2014年7月20日)

④安保関連法案(戦争法案)に反対し、そのすみやかな廃案を求める研究団体共同アピール(2015 年6 月24 日)

ちなみに③の声明に関しては日本語だけでなく、韓国語、中国語、英語での声明も掲載されています。

「安保関連法案」の事を「戦争法案」と言っていた政党はどこだったか。考えなくてもわかりますね。

「日本共産党」です。

「民主主義科学者協会法律部会」という名称から想像がつくと思いますが、「民主主義科学者協会法律部会」は「民主主義科学者協会」の「法律部会」です。

つまり、本来であれば「民主主義科学者協会法律部会」以外に「民主主義科学者協会」というものが存在していなければおかしいのですが、実はこの「民主主義科学者協会」という団体、「1950年代末から1960年代前半頃にかけて大部分の部会は実質的に解体」しているのだそうです。

情報ソースとして、Wikiに掲載されている柘植正臣という人物の記した『民科と私』という書籍のみが現時点での情報ソースなのが心もとない点はありますが、この情報を下に記事は進めます。

この情報によりますと、「1956年の第11回全国大会開催を最後に民科本部としての正常な運営体制が崩壊」し、「翌1957年に本部事務所を閉鎖、事務局を解散した」とあります。

同ページにある情報として気になるのは、

「これらは運動体というより学会・研究会として活動しており、民科の当初の目的・活動はむしろ日本科学者会議に引き継がれている」

という部分です。あくまでWikiソースで、100%信用することはしませんが、そのような見方があるって事です。

ちなみに、「民主主義科学者協会法律部会」の「声明」としてご紹介させていただいたタイトルの3番には、その「賛同団体名」として以下の団体の名前が掲載されています。
新日本医師協会

新薬学研究技術者集団

地学団体研究会

日本医療総合研究所

日本科学者会議

日本科学者会議東京支部

民主教育研究所

文学教育研究者集団

民主主義科学者協会法律部会

唯物論研究協会

歴史科学協議会

歴史教育者協議会

東京歴史学研究会

歴史学研究会

この内「新薬学研究技術者集団」「日本医療総合研究所」「民主教育研究所」の3団体以外の名称は全て「日本学術会議協力学術研究団体」の一覧の中に掲載されています。(日本科学者会議東京支部は日本科学者会議、東京歴史学研究会は歴史学研究会の一部と考えます)

この事からも、「民主主義科学者協会法律部会」が学術会議全体に及ぼしている影響も決して小さいとは言えないと思います。


改めて考える、17年法改正の理由

それでは、改めて17年に「学術会議法」の「会員の選出方法」が変更された理由について考えてみます。

・「在来の学問体系や諸学問分野の組織図から離れて組織が構成され、メンバーも選出されるべき」

・「科学に関する知識・意見の集約を幅広く行うため、産業人や若手研究者、女性研究者、地方在住者など多様な会員が業績、能力に応じて適切に選出されるようにすべきである」

これは、平成15年、に開催された「総合科学技術会議」によって具申されたものです。

この時の「総合科学技術会議」のメンバーは次の通り。

議長 小泉 純一郎 内閣総理大臣
議員 福田 康夫 内閣官房長官
 同 細田 博之 科学技術政策担当大臣
 同 片山 虎之助 総務大臣(代理 加藤 紀文 総務副大臣)
 同 遠山 敦子 文部科学大臣
 同 平沼 赳夫 経済産業大臣(代理 高市 早苗 経済産業副大臣)
 同 吉川 弘之 日本学術会議会長
 同 阿部 博之  
 同 井村 裕夫  
 同 大山 昌伸  
 同 黒田 玲子  
 同 松本 和子  
 同 薬師寺泰蔵  
 同 吉野 浩行  
  (臨時)    
議員 坂口 力  厚生労働大臣(代理 木村 義雄 厚生労働副大臣)
 同 大島 理森 農林水産大臣(代理 北村 直人 農林水産副大臣)
 同 鈴木 俊一 環境大臣
 同 石破 茂 防衛庁長官(代理 赤城 徳彦 防衛庁副長官)

こんな感じです。小泉内閣当時の「総合科学技術会議」ですね。

中には当時の学術会議会長も参加しています。それ以下の(臨時)の手前まで記されている「議員」は全て民間人ですね。(学術会議の会員がそうであるように、肩書は公務員となっているかもしれません)

このようなメンバーが具申した内容が先述した枠内の記述です。

現在ですらそうなのですから、「在来の学問体系や諸学問分野の組織図」の影響は当時はさらに問題となっていたのかもしれません。

法改正前の総務書の資料の中に「日本学術会議から推薦された会員の候補者につき、内閣総理大臣が任命を拒否することは想定されていない」との文言が出てきます。

例えばこのような文言が登場した理由として、ひょっとすると学術会議側からの「圧力」が存在した、もしくは当時の関係者等との間で一種の癒着のようなものがあったことも否定派できないかと思います。


内閣総理大臣の任命権

平成30年に、17年改正に関する内閣総理大臣の「任命権」について学術会議事務局と内閣法制局との間で資料が作成されたわけですが、その内容は以下の通り。

日学法第7条第2項に基づく内閣総理大臣の任命権の在り方について

内閣総理大臣による会員の任命は、推薦された者についてなされねばならず、推薦されていない者を任命することはできない。その上で、日学法第17条による推薦のとおりに内閣総理大臣が会員を任命すべき義務があるかどうかについて検訳する。

(1) まず、

①日本学術会議が内閣総理大臣の所轄の下の国の行政機関であることから、憲法第65条及び第72条の規定の趣旨に照らし、内
閣総理大臣は、会員の任命権者として、日本学術会議に人事を通じて 一定の監督権を行使することができるものであると考えられること

②憲法第15条第1項の規定に明らかにされているところの公務員の終局的任命権が国民にあるという国民主権の原理からすれば、任命権者たる内閣総理大臣が、 会員の任命について国民及び国会に対して責任を負えるものでなければならないことからすれば、 内閣総理大臣に、 日学法第 17 条による推薦のとおりに任命すべき義務があるとまでは言えないと考えられる。

(※)内閣総理大臣による会員の任命は、推膊を前提とするものであることから「形式的任命」と言われることもあるが、国の行政機関に属する国家公務員の任命であることから、司法権の独立が憲法上保障されているところでの内閣による下級裁判所の裁判官の任命や、 憲法第23条に規定された学閤の自由を保障ずるために大学の自治が認められているところでの文部大臣による大学の学長の任命とは同視することはできないと考えられる。

・最高裁判所の指名した者の名簿によって秤われる内閣による下級裁判所の裁判官の任命(憲法第80条及び裁判所法第40条)
・大学管理機関の申出に基づく任命権者による大学の学長等の任命(教育公務員特例法(昭和24年法律第1号)第10条)

こちらの内容ですが、憲法に言及した件は於いておくとして、ここに記されている内容は前回の記事でリンクを貼らせていただいた

日本学術会議の問題雑感

に掲載されている、「労働者委員の任命が争われた裁判例(大阪地判昭和58年2月24日)」の内容を考慮に入れたものではないかと考えられます。

リンク先内容をそのままコピペするのはちょっと控えたいので、判例の原文からポイントとなる部分を引用してみます。ちなみにこの訴訟の「原告」は「総評、同盟、中立労連、新産別などの中央組織に所属せず、純中立系もしくは無所属系と通称される大阪府下の単位産業別労働組合」。

「被告」は「知事」です。(何県かは調べられてないです)

で、原告の中には複数の原告がいて、「全大阪金属産業労働組合以外の原告」と「全大阪金属産業労働組合」。

内容はややこしいのでここですべてを記すことはしませんが、「全大阪金属産業労働組合以外の原告」の訴えは却下され、「全大阪金属産業労働組合」の訴えは棄却されています。

知事が訴えられた理由としては
地方労働委員会の労働者委員は、労働組合の推薦に基づいて、都道府県知事が任命し(法一九条二一項、七項)、知事は、当該都道府県の区域内のみに組織を有する労働組合に対して候補者の推薦を求め、その推薦があつた者の中からこれを任命するものとされている

わけですが、

被告は中立系労組の推薦する候補者のうちから、少なくとも二名を中立系労組に割り当てるべきである

のに、

「産別、総同盟、中立等系統別の組合員数に比例させる」という規準を無視し

要は中立系労組の候補者2名を任命せず、「裁量権を濫用して差別的な処分をした」というのがと主張し、原告は「本件任命処分は、被告が裁量権を濫用した違法なものであるから、その取消しを求め」ました。

人間関係や組合の構成が全くわかりませんので、具体的な内容は理解し難いのですが、この判決の中で裁判官は「全大阪金属産業労働組合以外の原告」については利益が侵害されることはない、として訴えを却下しました。

で、問題になるのはもう片方。「全大阪金属産業労働組合」の訴えに対する判決です。

この原告が原告として「侵害される利益」を有するかどうかという項目で判事は

 これらの規定の趣旨は、候補者の推薦をした労働組合に対し、その推薦をした候補者が知事から必ず任命されることまでも保障したものでないことは、推薦の性質上当然である。

 しかし、知事は、労働組合の推薦を受けていない者を労働者委員に任命することはできないから、その意味では、推薦は、被告の任命行為を拘束する性質をもつとしなければならない。


と述べています。

これは言い換えると、「労働組合の推薦を受けていない者を労働者委員に任命することはできない」けれども、「推薦をした候補者が知事から必ず任命されることまでも保障したものでないことは、推薦の性質上当然」だと言っているわけです。

この場合、「全大阪金属産業労働組合」が推薦者であり、他に推薦を受けた者がいるわけですが、推薦者である「全大阪金属産業労働組合」も侵害される利益があり、要は「原告適格を有する」とここでは述べています。

その上で判決としては、
法及び法施行令は、知事が、地方労働委員会の労働者委員を任命するには、労働組合から推薦があつた者の中から任命することにし
ている。

 したがつて、知事は、推薦があつた候補者の中から労働者委員を任命しなければならず、労働組合から推薦されなかつた者を労働者委員に任命することは裁量権の範囲を逸脱したものとして許されない。

 また、前に説示したように本件推薦制度の趣旨に照らし、労働組合から推薦された者全員を審査の対象にしなければならないから、推薦された者の一部をまったく審査の対象にしなかつた場合にも、推薦制度の趣旨を没却するものとして、裁量権の濫用があったとしなければならない。

 しかしながら、推薦は、指名とは異なるから、推薦に基づいて任命する場合の任命権者には、裁量権が与えられており、推薦された者が審査の対象とされた以上、推薦された候補者が労働者委員に任命されなかったからといつて、直ちに裁量権の濫用があったとするわけにはいかない。

本件任命処分は、地方労働委員会の委員という特別職の地方公務員の任命行為であるところ、このような行為を、相手方の同意を要する行政処分とみるか、公法上の契約とみるかはともかくとして、この任命行為は、その性質自体から、本来的に任命権者の広範な自由裁量に委ねられていると解するのが相当である。

したがつて、任命行為をするに際しての具体的な任命規準等については、そもそも法律による規制になじみにくい性質の行為であるといえる。

行政庁が、その裁量に任された事項について、裁量権行使の準則を定めることがあつても、このような準則は、本来、行政庁の処分の妥当性を確保するための一つの指針となるにすぎないものであつて、処分が右準則に違背して行われたとしても、原則として、当不当の問題を生ずるにとどまり、当然に違法となるものではない(最判昭和五三年一〇月四日民集三二巻七号一二二三頁)。

 そして、本件任命処分については、前記①(推薦がなかった人を任命しようとした)、②(法的な欠格がある人を任命しようとした)の各要件以外の事項は、すべて任命権者の裁量に委ねられているから、被告のした本件任命処分が、仮に右通牒(その存在については、当事者間に争いがない)に違背してなされたものであつたとしても、それによつて、当不当の問題が生じることは格別、違法の問題が生じる余地はない。

といった形で任命権者の裁量権の逸脱を意図した主張を徹底的に却下しています。


改めて、内閣総理大臣の「任命権」について

上記判例を頭においた上で、改めて、平生30年に作成された学術会議事務局資料を見直してみますと、
内閣総理大臣による会員の任命は、推薦された者についてなされねばならず、推薦されていない者を任命することはできない。その上で、日学法第17条による推薦のとおりに内閣総理大臣が会員を任命すべき義務があるかどうかについて検訳する。

特に前半部分、「内閣総理大臣による会員の任命は、推薦された者についてなされねばならず、推薦されていない者を任命することはできない」という文言を使用しているところから、上記判例に基づいて作成したである可能性が高いですね。

私としては「本丸」である「行政手続法」のところまで進みたかったのですが、やはり記事が長くなってしまいましたので、後は次回記事に委ねます。

ただ、「推薦の裁量権」が「任命段階」で違法となるようなことが判例でも徹底的に否定されていることが記事としてはご理解いただけたのではないでしょうか。ちょっと、他人のふんどしで相撲をとったような記事ではあったかもしれませんが、私としては訴えたい内容の一つでしたので、ご容赦いただければと思います。




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先日より、とあるSNSでタイトルにある学術会議任命拒否の問題が議論となっておりまして、議論を通じて私の中で一つの「答え」がまとまりましたので、備忘録的にこの記事を作成します。

まずはニュースの引用から。

【NHKニュースより】2020年10月9日 17時59分
日本学術会議の元会長 任命拒否は法律違反の可能性と批判

NHKニュース学術会議批判

「日本学術会議」の会員候補6人が任命されなかったことをめぐり、会議の元会長2人が野党の会合に出席し、在任中に2度、会員候補の任命などで政府の関与があったことを明らかにしたうえで、今回の政府の対応は法律違反の可能性があると批判しました。

野党の会合には、3年前の平成29年まで6年間、「日本学術会議」の会長を務めた東京大学の大西隆名誉教授と、大西氏の前に会長を務めた東京大学の広渡清吾名誉教授が出席しました。

この中で大西氏は、在任中、4年前の平成28年に行われた会員の定年に伴う補充人事と、3年前の平成29年の新たな会員候補の任命で、総理大臣官邸の関与があったことを明らかにしました。

そして、4年前の補充人事では官邸が難色を示して欠員となった一方、3年前の会員候補の人事は、候補者を決める前の段階で官邸から選考状況について説明を求められたものの、会議の推薦どおりに任命が行われたということです。

大西氏は政府の対応について「会議の会員になることは、学問の表現の1つの手段だ。その機会が奪われることは、学問の自由を制約していることになる。また、選考基準と違う基準を適用し、任命拒否したとなれば日本学術会議法違反になる」と述べました。

また、広渡氏は「今回の判断は、明らかに日本学術会議法に反する判断で、菅総理大臣の行動は全く誤っているとしかいいようがない。任命されなかった6人を外せば、会議が総合的、ふかん的になるのか、きちんと説明する責任がある」と述べ、それぞれ政府の対応を批判しました。

一方、広渡氏は、自民党の下村政務調査会長が、7日の記者会見で「日本学術会議」について、「法律に基づく政府への答申が2007年以降、提出されていないなど、活動が見えていない」と指摘したことについて、「答申は、政府が諮問してくれないとできない。『あなた方が諮問しなかっただけですよ』ということだ。喜んで活動するので、どうぞ諮問してください」と述べました。

任命された学術会議の会員は99人
日本学術会議の会員として今月1日付けで任命された研究者は99人です。

学術会議の会員は210人とされていて、3年ごとに半数を任命する制度になっていますが、今回は菅総理大臣が6人の任命を見送ったため、会員は204人となっています。

今回、任命された会員は、人文・社会科学の研究者が所属する第一部には、津田塾大学学長の※高橋裕子さん。

生命科学の研究者が所属する第二部には、大阪大学医学系研究科の心臓血管外科学の教授で、世界で初めてiPS細胞を使った心臓病治療の手術を行った澤芳樹さん。

理学・工学の研究者が所属する第三部には東京大学地震研究所の教授で、津波のメカニズムの研究をしている佐竹健治さんなどがいます。

一方、今回、会員に任命されなかった6人は全員、「安全保障関連法に反対する学者の会」の呼びかけ人、または賛同者でした。

NHKが調べたところ任命された99人のうち、劇作家で大阪大学特任教授の平田オリザさんなど10人もこの会の呼びかけ人、または賛同者として会のホームページに掲載されています。

改めて述べる必要もないかもしれませんが、上記の記事で問題とされているのは、本年(令和2年)10月に内閣総理大臣へと就任した菅(すが)さんが、日本学術会議新会員を任命する際、日本学術会議から新会員候補者として推薦を受けた105名の内、任命しなかった、とされる問題の事です。

推薦を受けた新会員候補者の内6名を任命しなかったことを「任命を拒否した」と吹聴し、これが「日本学術会議法違反の疑いがある」と前学術会議会長である大西隆氏が主張している、というのが上記記事の内容です。

今回の記事の目的は、この「任命拒否問題」の違法性を否定することにあります。


前会長が違法性を主張する「学術会議法」とは?

「日本学術会議」そのものについては私も今回の騒動で初めて認知したタイプですから、これがどのようなものか、という具体的な説明は省略します。(正確性を欠く可能性が非常に高いため)

単純に言えば「日本の学者によって構成された、内閣府の下部組織」です。それ以上具体的な説明は現段階では控えます。

で、「日本学術会議法」とは、その日本学術会議の在り方について定めた法律の事です。

前文と1条、2条だけ先に掲載しておきます。

日本学術会議法

日本学術会議は、科学が文化国家の基礎であるという確信に立つて、科学者の総意の下に、わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と提携して学術の進歩に寄与することを使命とし、ここに設立される。

第一章 設立及び目的

第一条 この法律により日本学術会議を設立し、この法律を日本学術会議法と称する。
2 日本学術会議は、内閣総理大臣の所轄とする。
3 日本学術会議に関する経費は、国庫の負担とする。
(平一一法一〇二・平一六法二九・一部改正)

第二条 日本学術会議は、わが国の科学者の内外に対する代表機関として、科学の向上発達を
図り、行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させることを目的とする。

で、前学術会議会長は菅さんの「任命拒否」がこの「学術会議法」違反に当たる、と主張しているわけです。


菅首相の任命拒否は学術会議法の何に違反しているのか?

前学術会議会長を始め、多くの「知識人」やはっきり言えば「現政権に反対的な立場をとる人たち」は、まず今回の「任命拒否」が以下の法律に反している、と主張しています。
第七条
2 会員は、第十七条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する。

第十七条 日本学術会議は、規則で定めるところにより、優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考し、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣に推薦するものとする。

上の条文にある「内閣府令」とは以下の内容です。

平成十七年内閣府令第九十三号
日本学術会議会員候補者の内閣総理大臣への推薦手続を定める内閣府令

日本学術会議法(昭和二十三年法律第百二十一号)第十七条の規定に基づき、日本学術会議会員候補者の内閣総理大臣への推薦手続を定める内閣府令を次のように定める。

日本学術会議会員候補者の内閣総理大臣への推薦は、任命を要する期日の三十日前までに、当該候補者の氏名及び当該候補者が補欠の会員候補者である場合にはその任期を記載した書類を提出することにより行うものとする。

附 則
この府令は、平成十七年十月一日から施行する。

主張の根幹としては、「内閣総理大臣に学術会議の推薦を拒否する権利はない」といいう主張です。

と、ここまで読めば学術会議や政権に反対する立場をとる人がいかに無茶苦茶な主張をしているのか・・・という事を感じていただくことができると思います。

実は、ここに記されている「推薦」の問題については既に裁判にて複数の「判例」が出ており、行政府や地方公共団体が「推薦」に基づいて「任命」を行う際にはある程度の「裁量」があることが認められています。

記事としては、以下のリンク先が非常に詳しいので、そちらのリンク先でご覧いただければと思います。
↓↓↓
日本学術会議の問題雑感

判例では、「推薦は、指名とは異なる」ことを根拠に、「任命行為は、その性質自体から、本来的に任命権者の広範な自由裁量に委ねられていると解するのが相当である」とされています。

判例はこれを覆す判決が出るまでは一つの「法律」としての性格を持ちますので、要は推薦に裁量が認められることは法律で保障されている、と解釈すべきでしょう。(ただし、その裁量の範囲については異論あり)


任命拒否を問題視するグループが違法であるとする根拠

とはいえ、相手も「学術会議」の名の通り、法律の専門家も多く抱えた組織ですから、何の根拠もなく推薦拒否の違法性を主張しているわけではありません。

これはニュースとしては既出ですので、多くの方がご存じだとは思いますが、昭和58年に学術法の改正が行われた際、当時の中曽根総理大臣より「政府が行うのは形式的任命にすぎません」との発言が行われていること。

合わせて当時の総理府総務長官より、「学会の方から推薦をしていただいた者は拒否はしない、そのとおりの形だけの任命をしていく」との発言が行われていること。

同じ時期に作成された内閣府資料には「特に法律に想定するものを除き、内閣総理大臣は、日本学術会議の職務に対し指揮監督権を持っていないと考える。」との文言が記されていること。

この3つを根拠として任命拒否を問題視するグループは菅さんの任命拒否を「違法である」としているわけです。もしこれが合法だとするのなら、中曽根政権時代の解釈を変更しなければなりませんからね。


変更された「会員の選出方法」

ですが、上記を根拠とした主張にも当然「穴」があります。

中曽根さんが推薦方法に対する「解釈」を述べたのには当然「きっかけ」がります。以下の年表は私が作成したものです。
昭和57年 日本学術会議法の成立

昭和58年 学術法の改正が行われる
これまでの会員の選出方法が学会での総選挙から「科学者が自主的に会員を選出する推薦制」に変更。(首相による任命制度が行われるようになったのはこのとき)

改正を受け、中曾根氏より「形式的な任命」との発言がなされる。

平成17年 推薦の選出を「学会」ではなく、「学術会議」が行うよう法改正が行われた。

平成30年 前記した協議が学術会議事務局と内閣法制局との間で行われた。

今回の「任命拒否騒動」に至るまでの学術会議の「会員選出方法の遷移」について時系列でまとめてみました。

ご覧いただくとわかる通り、中曽根さんが学術会議からの「推薦」についての考え方(解釈)を示したのは昭和58年に行われた学術会議法の「法改正」を受けてのものです。

学術会議法が制定されたのは昭和57年ですが、翌昭和58年、「法改正」という手段によって学術会議の会員選出方法が変更されています。それまでは学術会議ではなく、学会全体における「総選挙」で学術会議の会員は選出されていました。

ですので、その結果を政府側が提示された場合、これを政府側の意思で「拒否」するという想定は当然なかったものと思います。

ですが、その選出方法が「総選挙」から「科学者が自主的に会員を選出する推薦制」に変更されました。つまり、それまで「選挙」という方法を通じて選ばれていた学術会議の会員が、選挙ではなく「推薦」によって選ばれることになったのです。(共産党などはこれを「現在の有権者の学術会議会員を選出する権利を奪う」と考えていたようです)

これに対し、政府側は「現在の有権者である科学者が会員の選出に関与する点においては基本的に同じである」と考えており、ゆえに、「学会の方から推薦をしていただいた者は拒否はしない、そのとおりの形だけの任命をしていく」との考え方を示したのです。

ですが。私が何をお伝えしたいのか、もう既に気づいている方もいらっしゃるでしょうが、平成17年。実はもう一度「会員の選出方法の変更」が行われています。58年同様、「法改正」という方法が取られています。

それも「推薦方法」が変更されており、それまで「科学者が自主的に」選出していた推薦方法から「学術会議が直接」推薦を行う方法に変更されたのです。

この時点で、「現在の有権者である科学者が会員の選出に関与する点においては基本的に同じである」という前提が崩れていることがわかりますね?

であれば、当然推薦方法が変更されたこの時点で、政府より変更された推薦方法に対する新たなる「解釈」が示されるべきだったのではないでしょうか?


「想定」されていなかった任命拒否

ただし、上記内容についても「反論」が存在しないわけではなく、改正法が制定される際、「内閣法制局」によってこの選出方法改正についての資料が作成されています。

学術会議法改正の趣旨

具体的な箇所を転記しますと、
現行の登録学術研究団体の推薦に基づいた会員選出方式を廃止し、会員選考については、現会員による選出制度に改正する。

具体的には、日本学術会議が規則で定めるところにより、優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を決定し、内閣総理大臣に推薦し、内閣総理大臣が、その推薦に基づき、会員を任命することになる。

この際、日本学術会議から推薦された会員の候補者につき、内閣総理大臣が任命を拒否することは想定されていない。

この資料が実際にどのタイミングで作成されたのかはわかりませんが、少なくとも平成17年に行われた「選出方法の改定」に関連した法改正に伴って作成されたことであることは間違いありません。

ここは私の「私見」になりますが、一つ疑問があります。

この文書の冒頭で「総合科学技術会議の意見具申」で具申された内容として、
「在来の学問体系や諸学問分野の組織図から離れて組織が構成され、メンバーも選出されるべき」と記しされており、「現在の7部制や学協会の推薦による会員選出方法は見直す必要がある」

と記されています。

また途中には
「科学に関する知識・意見の集約を幅広く行うため、産業人や若手研究者、女性研究者、地方在住者など多様な会員が業績、能力に応じて適切に選出されるようにすべきである」とも記されています。


では、選定方法を「現行の登録学術研究団体の推薦に基づいた会員選出方式を廃止し、会員選考については、現会員による選出制度に改正する」ことによって、本当に上記のような課題は改善されるのでしょうか?

例えば「現会員」に対して、「在来の学問体系や諸学問分野の組織」であったり、「学協会」であったりの影響が強く残っていたとしたら、会員選出方法を「現会員」からの推薦に限定してしまえばかえってその「偏り」はより深刻なものになるのではないでしょうか?

では、その客観的な判断は一体だれが行うのでしょう?

そもそも一体なぜ「内閣総理大臣が任命を拒否すること」が想定されなかったのでしょうか?

このような疑問は普通、多くの人が持ってしかるべき内容だと思います。


まとめ

本日の記事は少し長くなりましたので、記事を分けて続きは次回記事に委ねようと思います。

予定としては私が最後の章の末尾で示した問いかけに対して、政府はいったい同様な対応をしたのか。

またその上で「学術会議法」ではなく、「行政手続法」の観点から議論となった総理の「任命拒否」について、記事を作成してみようと思います。




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