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<前回の記事 第31回 アベノミクスを問う⑥>
アベノミクスを問う⑦
前回の記事では、「社会保障制度」全体を検証する上で、私自身がまだ解析したことのない、健康保険制度についての解析にチャレンジしてみました。
社会保険制度には主に「被用者保険」と「国民健康保険」の2種類あり、「保険料」と「給付金」の収支差額に着目すると、「被用者保険」は大幅な黒字、逆に国民健康保険については大幅な赤字になることがわかりました。
この赤字を補てんするために、被用者保険の収入(保険料+公費)から一部を補てんし、さらに公費を補てんして給付金を支出していること、しかしこの補てん分を含めた国民健康保険の収入分からさらに「後期高齢者医療保険」という項目に組み込んで、「後期高齢者医療保険制度」を構成しているということもわかりました。
医療保険制度からの支出は40兆近くあり、このうち約半分に公費が、残る半分に現役世代の保険料が充てられています。
保険料の収入が横ばいである中、「後期高齢者医療保険制度」への支出が増え続けているため、ここに国費を充てざるを得ない状況になっているということです。
ただし、

こちらのグラフを見ると、社会保障給付費の支出と社会保険料収入の間に、平成22年(2010年)の時点で47兆を超える収支差額があります。
健康保険制度の収支差額は約21兆円ほどで、グラフから読み取れる数字では、この分を差し引いてまだ26兆円近い収支差額があります。
前回の記事では、この残る差額分が「年金」の収支差額に相当するのではないか、という考え方をお示ししました。
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<前回の記事 第55回 情報を捏造する方法>
予定しております、共産主義と左翼に関する記事ですが、中々まとめる時間が取れずにいますので、きちんとした時間が取れるまで少し記事を先延ばししたいと思います。後日、掲載したいと思います。
ブログへのアクセス状況
さて。私がブログをスタートして、約半年ほど経過しました。
ブログを掲載した目的として、一般的に考えられている「常識」と「真実」とのギャップをより多くの皆様に知っていただきたい、というのが最大の目的です。
私が作成しているようなタイプのブログとして、最もアクセスに期待ができるのが「キーワード検索」です。
最初は、いわゆる「リフェラスパム」と呼ばれる、海外の悪質なサイトからのアクセスが多かったのですが、今年に入ったあたりから、徐々にこのリフェラスパムとキーワード検索とのアクセス数が逆転するようになります。
中には「アベノミクスを問う 真実を問う」「データから見る日本」など、明らかに私のブログをピンポイントで検索していただいたのであろう、キーワードも含まれており、これはやはりうれしい限りです
ある程度キーワード検索されるようになってくると、次に期待したいのが、「参照元サイト」。つまり、どなたかのホームページやブログなどに私のサイトへのリンクURLが掲載され、そこから私のブログに流入されるようになること。
もちろん私自身もいくつかは仕掛けを行っていまして、外部サイトから私のブログに流入があるような仕掛けはしています。
ですが、それはほぼ「無作為に掲載された」、あるいは「たくさんのサイトの中の一サイト」として掲載していただいたのであり、そのサイト運営者が何らかの関心を持って掲載して下さっているわけではございません。
ところが、です。先日、解析を行っていますと、私が仕掛けをした記憶のない、見覚えのないサイトから、私のサイトへの流入がありました。
先方の了承を得ているわけではございませんので、もしサイト運営者が気づいた上で、もし不都合がある場合はぜひ削除依頼をお寄せください。
こちらのサイトです。
Spotlight 心うごかす、新発見を
このサイト中の、この記事になります。
「だったらもう廃止しろよ」安倍総理の“年金給付減額あり得る”に不安の声続々
この記事の中で、↓こちらの画像を、掲載元として私のブログをご紹介していただいたうえで掲載していただいています。

とても光栄なことだと思います。
本当なら、掲載していただいているサイトにコメントを行うことが可能なのであれば、そちらにコメントをしたかったのですが、コメントのできる仕様ではございませんでしたので、私のブログに直接掲載する形をとりたいと思います。
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<前回の記事 第110回 価値観の受け入れ方~「講師」という立場を通じて感じた意思疎通の難しさ~>
前回の記事では、私が勉強会における「講師役」を担当させていただいたときの経験をベースに、「将来の年金問題」について記させていただいたのですが、あくまでもベースが「勉強会の報告」のような形になっていて、実際に記事にした内容が埋もれてしまいかねないので、改めて「将来の年金問題を考える」というタイトルで同じ内容を復活させる形で記事を掲載します。
継続的に読んでいただいていて、新しい記事を楽しみにしてくださっている方には物足りない内容とはなってしまいますが、ご了承いただければと思います。前回の記事を「雑記」としてカテゴライズし、今回の記事を「年金の問題」として改めて正式にカテゴライズします。
画像も、前回同様以下の画像からのスタートです。
【国民年金も厚生年金も実は大幅な黒字です】

こちらは、現役世代の「保険料総額」に「国庫負担分」を加えた金額から、受給世代の「給付費総額」をマイナスしたものです。
記事を読み進める前に、まずは第32回の記事を改めて熟読いただきまして、「年金が破綻しない理由」をしっかり頭の中に入れた上で、今回の記事をご覧ください。
【今回のテーマ】
第32回の記事は、主に「現在年金が破綻しない理由」を解説した記事です。
この記事を読んだとき、「確かに現在年金は破綻しないかもしれないが、将来も破綻しないとは言い切れないのではないか?」という疑問が出るのも最もなところだと思います。
前回の記事と重複する内容にはなりますが、では改めて「将来に向けて」も年金制度は本当に安全なのか。
この点を再度記事として取り扱いたいと思います。
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<前回の記事 第111回 将来の年金問題を考える~戦前の出生者数の推移と将来の年代別人口の推移から~>
(※「マクロ経済スライド」についての説明は、後段3章目からスタートします。「マクロ経済スライド」についての説明のみ読みたい方は、後段3章目まで画面をスクロールさせてください)
シリーズ 年金の問題に於きまして、前回までの記事では、年金システムが国の制度としてそもそも破綻するのか、しないのかという、「支給する側」のシステムに基づいた解析結果をお示ししました。
ですが、それ以上に、みなさんが気にかかるのは、じゃあ自分たちが実際に受け取れる年金の受給金額。
これは将来どのくらいのものになるのか、ということになるのではないでしょうか。
私の記事を読んで、年金が破綻する可能性は限りなくゼロに近いことはわかった。だけど自分が一番知りたいのは、将来自分たちが納めた分以上の年金を受け取ることができるのかということなんだ・・・という理屈もまたごもっともだと思います。

【本日のテーマ】
そこで、今回のテーマは、これまで私がお示ししてきた「年金は破綻しない」という衝撃の事実。
これに基づいて、現在の年金の「給付システム」について検証してみたいと思います。
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<前回の記事 第116回 消費税問題最終結果から検証する新たなる課題>
先日、私の記事をご覧いただいた方から、特にこの「年金制度」について、
「そうはいってもやっぱりわかりにくい」
「脳がパンクしそうだ(T_T)」
なる旨のご意見をいただきました。
私、このブログを始めた最大の目的は、一般的に「難しい」と考えられていることを、一般の方、情報に通じていない方でもわかりやすくご理解いただける記事にすることを目的としてこのブログをスタートしたのですが、改めて初心に返る大切さが必要だと痛感させられております。
年金の問題についていえば、一般的に年金の収支状況は「赤字」であり、年金会計は今にも破綻しそうである・・・という誤った情報にメスを入れ、決してそうではない。
年金制度は、事実大幅な「黒字」であり、「破綻」なる状況とはとても縁遠い位置にあることを「わかりやすく」解説しようとしていたのですが、そもそもその大本となる「年金制度」。
ここが「わかりにくい」というご意見が一般的に多いのだ・・・という視点を改めて大切にすべきだった、と痛感しております。
仕組みについては、第32回の記事で詳細に解説してはいるのですが、確かに・・・文字だけで、読んでいると脳が沸きそうです・・・。
【今回のテーマ】
【3つの年金会計帳簿】

そこで、今回はこの図表を用いて、画面を動かしながら(といっても動画にするわけではございません)解説してみたいと思います。
わかりやすく・・・できるかな・・・?
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<前回の記事 第117回 公的年金制度の仕組みをわかりやすく図解入りで解説いたします。>
前回の記事では、私の過去の検証が「国民年金」の運用状況に限定されていたことを受け、「厚生年金」の運用状況についても検証することをお約束しました。
厚生年金も、「基礎年金部分」については国民年金(第一号被保険者)と同じような運用方法がとられているのですが、所謂「二階部分」。
【公的年金制度の体系表】

上図で「厚生年金」と書かれている部分に関しては、「厚生年金勘定」と「年金積立金」の二つの会計帳簿だけで運用されています。
前回の記事でお伝えした「国民年金(基礎年金部分)」のような「基礎年金勘定」なる部分は存在しません。
この部分に関して私が放置していた理由の一つとして、「厚生年金は給与天引きであり、納付率100%(企業による未納部分は政府が補てんする)である」という理由にありました。
ですから、政府もこの部分に関しては「破綻する」という想定がありませんでしたので、私もあまり深くは考えてきませんでした。
【本日のテーマ】
ですが、やはりこの「厚生年金部分」に関しても検証は行っておくべきだと思います。
検証方法を考えたのですが、やはり一番フェアな検証方法は、最新の26年度単年度だけでなく、過去の収支状況まで遡って「安全である理由」を追求することが一番の検証方法ではないか、と考えました。
そこで、今回の記事では、現在厚労省のホームページで確認できる最も古いデータ(平成8年度:1995年)まで遡って、その収支状況を検証してみます。
情報的には厚生年金だけでなく、国民年金についても同様の調査を行います。
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このところ、私の「マクロ経済スライドの記事」へのアクセスが少し増えている状況にあります。
漸く皆さんの目に留まるようになったのかな・・・と軽く考えていたのですが、どうもその理由として、今国会で民進党が行っている質問内容に理由があったようです。
【玉木議員のマクロ経済スライドに関する質問】
質問者は玉木雄一郎議員です。
冒頭にあるGPIF関連についての内容は、まるでテニスコートの勝負を土俵で挑んでいるような内容になっているのですが、マクロ経済スライドに関連した話が出てくるのは2分40秒頃から。
玉木議員、「新規裁定者」についての解釈が間違ってますね・・・。
「新規裁定者」とは年金受給年度内に67歳になる人以下の年齢の人、既裁定者は年度内に68歳になる人以上の年齢の人を言います。「すでにもらっている人」とか「これからもらう人」とかいう解釈ではありません。
玉木議員の質問内容を文字起こししたものが民進党のホームページに掲載されていましたので、ご紹介しておきます。
2016年10月03日 【衆院予算委】「アベノミクスは年金と年金生活者の敵だ」と玉木議員
玉木議員が用いているパネルも掲載されていましたので、これも合わせてお示ししておきます。

年金制度をめぐっては、政府が先の通常国会で提出し、継続審議となっている年金制度改革関連法案では、賃金や物価の改定率よりも緩やかに年金の給付水準を調整する「マクロ経済スライド」を見直し、物価が上がっても賃金が下がった場合、今年金を受け取っている人の受給額を引き下げることを可能としている(現行ルールではゼロ改定)。
しかし、この玉木議員の質問、聞けば聞くほど頭が痛くなります。
多分、玉木議員、ある程度分かったうえで、あえてこのような説明を行っているのではないかと思うのですが、一体この人どっちを見て政治をやっているんだ、と思いっきり突っ込みたくなります。
厚生労働省が示しているマクロ経済スライド改定案
【公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律案(平成28年3月11日提出)】
(※すべて必要なわけではないので読み飛ばしてください)
500人以下の企業も、労使の合意に基づき、企業単位で短時間労働者への適用拡大を可能とする。
(国・地方公共団体は、規模にかかわらず適用とする。)
※ 501人以上の企業等を対象に、平成28年10月から適用拡大を実施することは既に法定化。
2.国民年金第1号被保険者の産前産後期間の保険料の免除(平成31年4月施行)
次世代育成支援のため、国民年金第1号被保険者の産前産後期間の保険料を免除し、免除期間は満額の基礎年金を保障。
この財源として、国民年金保険料を月額100円程度引上げ。
3.年金額の改定ルールの見直し((1)は平成30年4月、(2)は平成33年4月施行)
公的年金制度の持続可能性を高め、将来世代の給付水準を確保するため、年金額の改定に際して、以下の措置を講じる。
(1) マクロ経済スライドについて、年金の名目額が前年度を下回らない措置を維持しつつ、賃金・物価上昇の範囲内で
前年度までの未調整分を含めて調整。
(2) 賃金変動が物価変動を下回る場合に賃金変動に合わせて年金額を改定する考え方を徹底。
4.年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の組織等の見直し(平成29年10月(一部公布日から3月以内)施行)
合議制の経営委員会を設け、基本ポートフォリオ等の重要な方針に係る意思決定を行うとともに、執行機関の業務執行
に対する監督を行うほか、年金積立金の運用に関し、リスク管理の方法の多様化など運用方法を追加する措置を講ずる。
5.日本年金機構の国庫納付規定の整備(公布日から3月以内施行)
日本年金機構に不要財産が生じた場合における国庫納付に係る規定を設ける。
厚労省が今回出している年金制度一部改訂に関する内容は上記の通りです。
玉木議員が話題にしているのはこのうち3番。
『年金額の改定ルールの見直し((1)は平成30年4月、(2)は平成33年4月施行)
公的年金制度の持続可能性を高め、将来世代の給付水準を確保するため、年金額の改定に際して、以下の措置を講じる。
(1) マクロ経済スライドについて、年金の名目額が前年度を下回らない措置を維持しつつ、賃金・物価上昇の範囲内で
前年度までの未調整分を含めて調整。
(2) 賃金変動が物価変動を下回る場合に賃金変動に合わせて年金額を改定する考え方を徹底。』
この内容を、「年金を減らす新ルールだ」と彼は言っているのですね。
ですが、本当にそうなのでしょうか?
次回記事に於きまして、玉木議員が発言している「デタラメ」な内容についてご説明したいと思います。
>>次回記事はこちら
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<継承する記事>第184回 マクロ経済スライドの改定内容をわかりやすくご説明いたします。①
それでは、前回の記事の続きです。
もう一度厚生労働省が提出した法案の内、年金に部分に関する概要をお示ししたいと思いjます。
【マクロ経済スライドの改正内容】
公的年金制度の持続可能性を高め、将来世代の給付水準を確保するため、年金額の改定に際して、以下の措置を講じる。
(1) マクロ経済スライドについて、年金の名目額が前年度を下回らない措置を維持しつつ、賃金・物価上昇の範囲内で
前年度までの未調整分を含めて調整。
(2) 賃金変動が物価変動を下回る場合に賃金変動に合わせて年金額を改定する考え方を徹底。
「年金制度」とはもともと、
「物価や賃金が上昇すれば物価や賃金に合わせて年金支給額を上昇させ、
物価や賃金が下落すれば物価や賃金に合わせて年金支給額も減少させましょう」
というルールで運用されてきました。これを「物価スライド」または「賃金スライド」といいます。
当時のルールでは、物価か賃金の内、上昇する場合は上昇幅が少ないほうを、下落する場合は下落する幅が少ない方を採用しましょう、ということになっていました。
西暦2000年に物価が下落した時、本来であれば年金支給額を減らす必要があったのですが、この時の経済状況を鑑みて、年金の下落を据え置く、「物価スライド調整措置」というものが採用されました。
このスライド調整は3年間継続し、2003年からはこの措置が終了し、物価が下落した分年金支給額も減少することになりましたが、この3年間の間据え置いた分の「物価スライド据え置き分」が解消されないまま、現在に至っているのです。
マクロ経済スライドが導入された2004年の年金制度改定では、この「据え置き分」について、
「過去3年分の物価スライドの特例措置(1.7%分)については、平成17(2005)年度以降、物価が上昇する状況の下で解消する。 」
とされていますが、2006年~2008年にかけて物価は上昇に転じるのですが、この据え置き分が解消されることはありませんでした。(2008年にはリーマンショックが発生しましたね)
現在の安倍内閣において年金支給額が減少している様に感じるのは、安倍内閣においてこの時の「据え置き分」の解消がスタートしたからです。ですが、この据え置き分の解消はすでに2015年に終了しており、2015年以降は正規の「マクロ経済スライド」が適用されています。
では、そもそも「マクロ経済スライド」と何なのか?
実は、先ほど述べた「物価下落」に関する記述は「マクロ経済スライド」に関する説明ではなく、あくまでも「物価スライド」。
つまり、マクロ経済スライドが導入される以前から導入されていた制度に関する記載です。
厚労省の改正内容の内、「マクロ経済スライド」に関する改正内容は実は(1)のみ。(2)は「物価スライド」や「賃金スライド」に関連した記載内容です。
「マクロ経済スライド」とは、同制度が実施されるまでの「物価スライド」や「賃金スライド」制度に「スライド調整率」を導入した仕組みのことを言います。
「スライド調整率」が導入されるのは物価が上昇する場合のみで、下落する場合には導入されません。ということは、「マクロ経済スライド」とは「年金上昇率を抑えるための仕組み」ということになりますね?
【スライド調整率図解】

内容は第112回の記事 と同じものになりますが、内容は上図のようなイメージです。
「スライド調整率」は現役世代の人口の伸び率や受給世帯の平均余命(何歳まで生きるのか)というデータに基づいて政府が独自に作成したもの。計算方法まではわかりません。
法律では、「受給権者が65歳に達した日の属する年度の初日の属する年の3年後の4月1日の属する年度」以前と以降で法律を分けて適用されることになっています。
「物価変動率」と「賃金変動率」
私、単純に「新規裁定者」は賃金スライドが、「既裁定者」は物価スライドがそれぞれ単純に適用されるものと思っていたのですが、法律によりますと、どうやらいくつか組み合わせがあるようです。
大枠で、
新規裁定者が「名目手取り賃金変動率が1以上である場合」と「1を下回る場合」、
既裁定者が「物価変動率が1以上である場合」と「物価変動率が1を下回る場合」
に分けられます。
【新規裁定者の場合】
・名目手取り賃金変動率が1を下回る場合(通常は名目手取り賃金変動率を基準とします)
物価変動率が賃金変動率を上回る場合・・・物価変動率を基準とする。
【既裁定者の場合】
・物価変動率が1以上である場合(通常は物価変動率を基準とします)
物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回る場合・・・名目手取り賃金変動率を基準とする
・名目手取り賃金変動率が1を下回る場合
物価変動率が名目手取り賃金以下である場合・・・名目手取り賃金変動率を基準とする。
物価変動率が名目手取り賃金を上回る場合・・・物価変動率を基準とする
となっています。
「マクロ経済スライド」とは、それぞれの「基準」に従って毎年物価、又は賃金上昇率を「スライド調整」します。
このスライド調整率が現在は0.9となっていて、基準となる変動率が0.9を上回った場合にのみ年金支給額が上昇します。
0.9以下の場合は変動しません。改定ルールの中で、
『(1) マクロ経済スライドについて、年金の名目額が前年度を下回らない措置を維持しつつ、賃金・物価上昇の範囲内で
前年度までの未調整分を含めて調整』
とされているのは、物価(もしくは賃金)が上昇する過程において、例えば物価上昇率が0.5であった場合。
スライド調整率を下回っていますが、その差額0.4がマイナスされることはありませんよ、ということです。
物価、もしくは賃金が上昇する過程においては、年金が前年度を下回ることはなく、0.9以上上昇すれば年金も上昇しますよ、ということです。
それでは、もう一つ。私が「マクロ経済スライドの改正内容」に記した、厚労省の法案。
(2) 賃金変動が物価変動を下回る場合に賃金変動に合わせて年金額を改定する考え方を徹底。
これはすでに現行法案にも記されている内容です。改正法案では、重複していたりわかりにくかったりする部分を整理してはいますが、記している内容は全く同じ内容を記しています。
今回の改正内容には、あくまでも「賃金変動が物価変動を下回る場合に賃金変動に合わせて年金額を改定する考え方を『徹底』」するとしているだけで、何か特別に変更しようとか、そういうことを書いているわけではありません。

そもそも「年金を減らす新ルール」などという表現が間違っていることは簡単に理解できますね?
玉木議員の説明は、「現行法制度を守る必要はない」と言っているに等しいのです。
しかもこのケースが発生するのは、
物価上昇率が1%を上回る状況の中で、名目手取り賃金の下落率が物価上昇率の絶対値を下回る場合、
もしくは
物価上昇率が1%を下回る状況の中で、名目手取り賃金下落率が1%を下回る場合
のどちらかです。
しかも玉木議員は、この状況が「現在発生している」と言っていますが、現在名目手取り賃金は上昇し続けています。
【全労働者の内、1年以上継続で働いた労働者の平均給与所得(国税庁より)】

「手取り」というわけではありませんが、明らかに安倍内閣に入って以来、給与所得の名目値は上昇し続けていますね?
今年度の厚労省データを見てみましても、5月にこそ前年同月比で0.1のマイナスを記録していますが、6月は1.4%、7月は1.2%とプラス成長。また賃金に反映される「物価」とは「消費者物価指数(総合)」ですが、原油価格の下落の影響で、むしろマイナスを記録しています。
パターンとして、名目手取り賃金変動率が1以下で、かつ物価変動率が名目以下である場合以外、年金はマイナスされてしまうことになるんですが、玉木議員が本当に年金受給者のことを思うのなら、本当に問わなければならないのはこの事じゃありませんかね?
安倍内閣としては、これを補てんするため、年金受給者に対して年6万円の給付を行うことを考えている様ですが。
玉木議員も動画の終わり辺りでこのことに言及しており、この点に関しては自民・民進の意見は一致した、と考えてよいのでしょうか?
大切な国会の予算委員会なんですから、このような見当はずれのレッテル貼りに終始するのではなく、きちんと国民の方を向いた、国民にとって本当に必要な議題について、安倍首相を論破するためじゃなく、国民が分かりやすく理解するためにその時間を使ってもらいたいものです。
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あえてこのタイトルで行きます。冒頭に記しておきますが、タイトルに「マクロ経済スライドの終焉」と記していますが、本当にマクロ経済スライドが終わるわけではありません。
私の中に少し勘違いしていた部分があって、平成30年4月でマクロ経済スライドの調整機関が終了する、と思っていたのですが、そうではなく、平成30年4月より、前年度に調整できなかったスライド調整分をキャリーオーバーする・・・というルールに変更された、ということでした。
勘違いも甚だしいですね・・・。反省しきりです。
ただ、スライド未調整分をキャリーオーバーする、というルールには納得がいきませんので、その詳細を確認するため先ほど厚生労働省年金局 総務課へ電話してみました。
で・・・個人的にいろんな意味で年金局に対してガッカリさせられました。このブログは、基本的に政府の政策に対して、よりポジティブな情報を掲載することを目的としていますし、行政に対しても、批判するのではなく、よりポジティブな情報を掲載しようと、ずっと考えて作成してきました。
ですが、今回ばかりはさすがにそうはいきません。年金制度改定が、それこそ「こんな人たち」によって行われたのかと考えると、あまりにがっかりすぎます。

スライド未調整分キャリーオーバーとは?
まずはここを説明しておきます。
改めて「マクロ経済スライド」のざっくりとした説明を先にしておきます。
【マクロ経済スライドとは?】
大きく分けて「新規裁定者(67歳未満の年金受給者)」と「既裁定者(68歳以上の年金受給者)」の2種類の年金受給者がいて、基本的に「賃金スライド」の対象となっているのは新規裁定者、「物価スライド」の対象者となっているのは既裁定者です。
年金は、「物価」もしくは「賃金」が上昇すれば上昇し、逆に下落すれば下落する仕組みになっています。
「マクロ経済スライド」とは、将来にわたって安定して年金を供給するため、「年金上昇率」を抑制するために、2004年より導入された仕組みです。
マクロ経済スライドが導入されている状況で、年金が上昇するのは物価上昇率(もしくは名目賃金上昇率)が「1%」を上回る場合で、「1%未満(正確には0.9%以下)」の場合は年金は上昇しません。この、「年金上昇」を抑制している0.9%という数字が「スライド調整率」と呼ばれるものです。
物価が仮に1%上昇したとすれば、年金上昇率は(1-0.9)%=0.1%となります。
※スライド調整率は本来毎年変更されることが前提となっている数字ですが、0.9%で実質的には固定されています。
ものすごくざっくりと記しているので、本当にマクロ経済スライドを理解している人から見れば「間違っている!」と言われそうですが、現状こういうルールで動かされています。
正確なルールを知りたければ、第185回の記事 をご覧ください。
で、今回の法改正で問題となるのは、マクロ経済スライドにより年金上昇が据え置かれる期間。
及び物価・賃金が下落し、年金が下落する期間の話です。
私、物価上昇率が0.9%を下回る場合、単に年金は「据え置かれている」だけかと思っていたのですが、どうも年金局の考え方では、据え置かれているのは年金ではなく、「スライド調整」が据え置かれている、という発想であったようです。
例えば、物価上昇率が0.5%であった場合、スライド調整は行われず、年金は据え置かれるわけですが、年金局の発想では、据え置かれているのはスライド調整が行われなかった0.4%の部分。
つまり、0.4%スライド調整が行われなかったので、その分調整期間が先延ばしにされますよ・・・という発想であったわけです。
【スライド未調整分キャリーオーバーとは?】
マクロ経済スライドには、そもそも「スライド調整期間」が想定されており、年金局の言い分をそのまま記しますと、
「政府の試算で100年後、年金積立金が丸1年分残ることが確定すればスライド調整期間は終了します」
とのこと。
ちなみに年金積立金の考え方に関しては、私が第118回の記事 にて記している内容を読んでいただけると、よくご理解いただけるのではないでしょうか。
はっきり言って、日本の年金制度について、日本一わかりやすく説明している、と自負している記事ですから。
平成30年3月末までの運用方法では、据え置かれたスライド調整分が、スライド調整期間の最終年度以降に回されていたため、いつまでたってもスライド調整期間が終了することはなかったわけですが、翌年に回されたことで、最終年度以降にまで持ち越されることなく、より早くスライド調整期間が終了するでしょ、というのが彼らの言い分です。
「スライド未調整分キャリーオーバー制度」の欠陥
先ほどの年金局側の言い分。一聞すると「なるほどな」と納得してしまいそうになりますが、ちょっと待ってほしい。
このキャリーオーバールールは、「日本国内の物価が、毎年0.9%以上上昇し続けることが前提となったルール」です。
現行のルールでは、0.9%の物価上昇率が達成できなければ、その差額分は毎年翌年に繰り越されていくことになります。
ちなみに、この場合の「物価」とは、「消費者物価指数(総合)」の上昇率のことを指しています。
シリーズ 物価の見方 におきまして、この「消費者物価指数」については具に記事としているわけですが、先日記した第400回の記事 におきまして、2017年度全体の「消費者物価指数(総合)」が公表されたことを記事にしました。
この、2017年度の消費者物価指数は前年比「0.7%」の上昇となっています。
しかし、平成30年度の年金で採用されているのは0.5%の物価上昇率ですから、年金制度で用いられている「消費者物価指数(総合)」は、「年度」ではなく「暦年」の物価指数を用いているものと考えられます。「2017年度」の物価上昇率は0.7%ですが、「2017年」の物価上昇率は0.5%ですので。
余談になりましたが、平成30年度の年金はこの0.5%の物価上昇率が採用され、0.9%を下回っていますから、年金は上昇せず据え置かれることになります。ですが、実際に据え置かれているのは年金の支給額ではなく「スライド調整分」です。
つまり、0.9%-0.5%=0.4%が「据え置かれて」いることになります。
つまり、その差額分0.4%が翌年度、平成31年度に「キャリーオーバー」されることになるのです。ただし、年金局の話ではなぜかこのキャリーオーバー分は0.4%ではなく、0.3%、とのことでした。
この0.3%に、来年度のスライド調整率=0.9%が加算され、来年度は今年度の物価上昇率が1.2%上昇しない限り、年金支給額が上昇することはない・・・と、すなわちそういうことになります。
ちなみに直近では2017年12月の消費者物価指数(総合)上昇率が前年同月比1.4%、翌1月が1.4、2月が1.5、3月が1.1となっていますので、確かに物価は上昇する傾向にあります。
ですが、この「物価」はあくまでも原油価格の上昇に依存したもの。どこかで原油価格が頭打ちとなれば、再び0.9%以下の圏内に舞い戻ってしまうことは想像に難くありません。
もし平成30年(2018年)度の消費者物価指数(総合)が0.9を割り込み、例えば翌年度への持ち越し分が今年度と同じ0.3%であったとすれば、その0.3%がさらに加算され、32年度には1.5%を上回る物価上昇を果たさない限り、年金支給額が増えることはなくなってしまうわけです。
それって、本当にキャリーオーバーする意味あるの?
むしろ年金の支給額が上昇するハードルが引き上げられただけ、安倍内閣の支持率に悪影響を与える材料を増やしただけじゃないの? というのが現時点での私の意見です。
愚かなり!年金局
ここからははっきり言って年金局に私が抱いた失望感を書き綴っていきます。
そもそも、今回のキャリーオーバーが導入されるに至った経緯として、マクロ経済スライドが導入された2004年度以降、物価が上昇することはなく、安倍内閣がスタートするまで、長い間マクロ経済スライドを導入することができなかったことが発端です。
例えば、物価が下落し、年金が下落する状況下では、「マクロ経済スライド」を導入することはできませんから、年金局的に言えば0.9%分のスライド調整分が調整されることのないまま、「先送り」にされているわけです。
ちなみに、どのサイトで見たのか・・・を現在思い出せずにいるのですが、この未調整分は総額で7兆円になるのだそうです。(ここはあくまで私のうろ覚えの数字だと思っていてください)
で、です。
年金の資金を使って運用されている会計帳簿の中には、「年金積立金」があるわけです。
2015年度こそ5兆3098億円の損失を生み出したわけですが、2016年度は7兆9363億円、2017年度は第一四半期が5兆1153億円、第二四半期が4兆4517億円、第三四半期6兆549億円の運用収益を生み出しています。
第四四半期を待たずして、2017年度の運用収益はなんと15兆6219億円の黒字です。
だったらなぜ年金積立金の運用収益をたかが7兆円程度の未調整分の補填に充てることができないのか、と私は年金局の担当者と名乗る人物に問いかけました。すると、担当者からは以下のような回答が返ってきました。
A.マクロ経済スライドの未調整分が7兆円だという数字はどこから出てきたのか?週刊誌等で好き勝手に書いている数字では回答することができない
Q.では、実際のその数字はいくらなのか?
A.年金局ではそんな計算はしていない
え・・・
私は絶句しました。そんな計算すらせずに年金受給者に負担を要求するキャリーオーバーを実施していたのか・・・と。
A.それは、確かにその通りだ。受け止めたい。
Q.で、どうして年金積立金の運用収益をその補填に回さないのか?
A.政府の試算で100年後、年金積立金が丸1年分残ることを目標として積み立てられているものだ?
Q.けれど、年金積立金って、毎年切り崩されていることなく、むしろ加算されていますよね?
A.そんなことはない。運用収益としては増えているが、毎年切り崩されている
ここも、絶句でした。
改めて第118回の記事 を見ていただくとわかりやすいと思うのですが、現行の年金運用方法で年金積立金が切り崩されているのは、

↑この図で「不足する保険料」と記された部分を補填するためのものです。
では、なぜこの保険料が「不足する」のかというと、保険料を納付しない「未納者」がいるから。
前年度、本来であれば納付されるはずの保険料が納付されていませんので、年金会計年度の期首に、年金会計は一時的に「資金不足」に陥ります。
ですが、こちらの会計システムでは、「期末」に納付される予定となっている保険料を予測して、全額「基礎年金勘定」という別の会計帳簿に移すことになっていますから、どうしてもその不足する保険料分が必要となります。
そこで、一時的に「年金積立金」を切り崩す形で年金積立金より不足分を繰り入れ、他の保険料と合わせて「基礎年金勘定」へとさらに繰り入れているのです。
ですから、その切り崩された年金積立金は「年金積立金」から「年金特別会計」を経て「基礎年金勘定」へと移動しただけで、年金会計全体で考えればびた一文、減っていません。良くて会計枠を移動するのにかかる手数料程度の金額です。
A.未納者は関係ない。未納者は本来支給する必要はなく、未納者のために年金積立金を切り崩したりはしない!
Q.いやいや、未納者がいるから年金積立金が切り崩されてるんです、って。
A.違う。こちらは運用している側なんだからわかる。未納者は関係ない!
しばらくこの押し問答です。いやいや、オタク、運用してる側なのに、自分たちが運用している年金制度を全く理解していないだけなんじゃ・・・・
A.基礎年金・・・??? それ、運用の話でしょ?
いやいや、運用も何も、年金制度全体の話してるんですが・・・( ̄▽ ̄;)
A.きしゅ・・・???
Q.だから、期間の始めのことですよ
A.運用のことは財務局に確認しなければわかりません。ここは制度を管理しているのであって
Q.だから、年金制度のことを聞いているんですが?
全く話のかみ合わないまま時間が過ぎていきます。向こうがあまりにも制度を理解できていないものだから、ここからは私が年金局の担当者に非常にわかりやすく年金制度の運用方法について説明してやりましたよ。
いやいや・・・( ̄▽ ̄;) マクロ経済スライドの話をききたくて電話したのはむしろ私の方なんですが( ̄▽ ̄;)
A.スライド未調整分がいくらになるのか、確かにその試算が行われていないのは問題だと思う。
そこよりも、むしろ積立金で未調整分を補填する方を優先してほしいんですが・・・( ̄▽ ̄;)
で、最後に私から問いかけたのは、次の質問です。
A.収支って、年金全体ですか?
Q.年金保険料から年金給付金を差し引いた差額ですよ。
A.財務局に聞いてみないとわかりません。
Q.黒字なんですよ。黒字なのに積立金を切り崩さなければならない、ってだけでそもそもおかしいと思いませんか?
一応、こっちも大人なんで、最後は別に年金局を責めたくて連絡をしたわけではなく、ただたんにキャリーオーバーのことを理解したくて電話しただけなんだ、ということを伝え、「おかげさまで、よくわかりました。ありがとうございました」とだけ伝えて電話を切りました。
いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや・・・・・・( ̄▽ ̄;)( ̄▽ ̄;)( ̄▽ ̄;)( ̄▽ ̄;)( ̄▽ ̄;)
こんな奴らが年金制度を決めて、運用しているのかと思うと、はっきり言って納得いきません。
自分たちが作ってリアルに運用している制度の仕組みくらい、理解しとけよ!!!!!!
ほんっっっとに理解ができません。ってか、キャリーオーバーやめましょうよ、ほんと。
この記事のカテゴリー >>日本の年金
<継承する記事>第401回 年金と消費者物価指数~マクロ経済スライドの終焉~
タイトルを見て意味が分からない・・・という方は多々いらっしゃるかもしれませんが、内容としては前回の記事 を引き継いでいます。
非常に簡単に「マクロ経済スライド」を改めて説明しますと、
・年金は物価上昇(下落)率に合わせて1年間の支給額が変動している。
・マクロ経済スライドとは、物価が上昇した場合の年金の変動率(上昇率)を抑制するための仕組みである。
・マクロ経済スライドにより、年金は1年間の物価が1%以上上昇しなければ増えない仕組みとなっている。
簡単に言うとこんな感じでしょうか。前回の記事でのマクロ経済スライドの説明がわかりにくい・・・とのご意見がございましたので、わかりにくくしている要素を取り除いてみました。
簡単にしすぎると、誤解を生みそうなので本当は嫌なんですが、マクロ経済スライドが導入されたことにより、事実上このような状況が生まれている、と思っていただければと思います。
そしてこのような切り取りの解説がさらに切り取られて、マスコミで情報がねつ造されていく・・・というのが残念ながら今の日本の社会システムとなっております。与党マスコミがわかりやすく説明しようとすると情報が切り取られ、詳しく説明すると「もっと簡単に説明しろ」と言われる状況が続いているのが今の政界です。
あと少しだけ詳しく知りたい方は 前回の記事 を、さらに詳しく知りたい方は185回の記事 をご覧ください。
マクロ経済スライド未調整分キャリーオーバーとは?
前回の記事 を解説するような形で記事を進めてみます。
といっても、この「キャリーオーバー」の考え方をご理解いただくのは難しいかもしれませんね。一応、厚労省が出している画像を使ってみます。

私、先ほどの説明では年金の支給額は「物価」に合わせて変動している、と説明しましたが、賃金によって変動する場合もあります。ここでは詳しくは説明しませんので、詳細は185回の記事 をご覧ください。
ここも誤解を受けそうなくらい簡単に説明します。
・年金の上昇率、もしくは下落率は「%」で表します。
・年金の上昇(下落)率は、小数点第一位以下は四捨五入されます。
・マクロ経済スライドという仕組みが導入されている現在、年金の上昇率は以下のような計算式であらわされます。
物価(賃金)上昇率 - 0.9%=年金上昇率
・上記計算式の、「0.9%」という数字に「スライド調整率」という名前が与えられています。
・物価上昇率が0.9%を下回るときは、一律で年金支給額は前年度に対して「据え置き」となります。
【「未調整分」とは何か?】
・「未調整分」とは、物価上昇率が0.9%を下回るときに発生します。
・物価変動率が0.8%の場合、0.9% - 0.8%=0.1%←この0.1%が「未調整分」となります。
・物価変動率が0.7%であれば0.2%、0.6%であれば0.3%、0.5%であれば0.4%が未調整分となります。
・未調整分の最大値は0.9%で、それ以上増えることはありません。
【キャリーオーバーとは何か?】
・キャリーオーバーとは、前年度の「未調整分」を翌年に持ち越すことを言います。
・前年度の未調整分が0.1%であれば、スライド調整率は0.9% + 0.1%=1.0%となります。
・未調整分が0.2%であればスライド調整率は1.1%、0.3%であれば1.2%となります。
・そしてこの持ち越し分は、当年で消化できなければ、さらにその翌年に持ち越されることとなります。
「持ち越される」というと何が問題なのかわからないかもしれませんが、簡単に言えば、「年金支給額が増えるためのハードルが上がった」ということ。今までと比べて年金がより上昇しにくくなった・・・ということです。
この仕組みが、今年度よりスタートしましたよ、ということですね。
マクロ経済スライド未調整分キャリーオーバーのどこが問題なのか?
そもそも、この「マクロ経済スライド」とは、2004年、小泉内閣よりスタートした制度です。ところが、安倍内閣がスタートするまで物価や賃金が上昇に転じることはなく、それどころかむしろ物価が下落する状況においても物価スライドは適用されず、そのまま据え置かれてきました。
2015年度、安倍内閣において、据え置かれた物価スライド分は解消されたわけですが、「マクロ経済スライド」そのものは安倍内閣がスタートするまで発動することはありませんでした。つまり、2004年より長年の間、「スライド調整」は行われないまま年月が経過していたことになります。
【で、なんでスライド調整をする必要があるの?】
という疑問が多くの人の頭の中に浮かび上がっていると思います。
スライド調整を行う必要があった、その最大の理由が記されているのは私が記した 第118回の記事 にあります。

ご覧いただくとわかると思いますが、特に1995年の段階では年金収支は完全な赤字。それ以降も2004年まで国庫による給付費の負担がなければ年金の収支は赤字であったことがわかります。
これは、国民年金だけでなく、

厚生年金の方でも収支状況はきわどい状況が続いていました。
このような状況を改善するため、2004年に年金制度が大幅に変更されたわけです。詳細は第112回の記事 に記しています。
ただし、近年になってこういった年金の収支状況が大幅に改善されていることもまた、ご理解いただけるのではないでしょうか?
【未調整分はなぜキャリーオーバーされるのか?】
問題はここです。
年金局の職員の話では、これを行うための理由として、
「政府の試算で100年後、年金積立金が丸1年分残ること」
を目指していることを挙げていました。ただし、この100年後、っていうのは2004年に考えられた話ですから、あれからすでに14年経過しており、実質的には後86年持てばよい話。一体いつまで「100年後」って言い続ける気なんでしょうね?年金局は。
で、これを目指してマクロ経済スライドを考え出したのに、安倍内閣が始まるまでスライド調整ができなかった、だからその「調整」を早める必要がある、として考えだえされたのが今回の「キャリーオーバー」制度です。
で、この制度の詳細を確認するために先日私は年金局に電話をしたわけですが、この年金局の職員・・・そもそも、私、厚労省に電話して年金局に回されて、一人目の職員が私の質問に全く明確な回答をすることができず、「詳しいものに変わる」と言って変わった相手が前回の記事 で紹介した担当者。
大雑把に言えば、
・年金積立金が切り崩されている理由を知らない
・年金の支出の中に「基礎年金勘定へ繰り入れ」という項目があることを知らない
・そもそも「基礎年金勘定」を知らない
・スライド調整が遅れているからキャリーオーバー制度を導入したはずなのに、そもそも年金局では一体いくら遅れているのかということを計算すらしていない。
・年金収支(保険料-給付費)が国民・厚生年金とも黒字であることを知らない。(聞いても答えられない)
これが、キャリーオーバー制度を考えた年金局の実態ですよ、皆さん。
で、どこの記事で見たのか、記憶が定かではないのが残念なのですが、何かの記事でスライド調整が遅れている金額が7兆円である、との情報を見たことから私は年金局に対して「その程度の金額であればなぜ年金積立金の収益分でカバーしないのか」と問いかけたわけです。
実際、昨年度だけで、第4四半期の結果を待たずして15兆円もの運用益を生み出しているわけですから。
マクロ経済スライド未調整分キャリーオーバーを中止すべきもう1つの理由とは?
先ほどの質問に対して、結局年金局は明確な回答はしなかったのですが、今回の記事では、いよいよ本題である「マクロ経済スライド未調整分キャリーオーバーを中止すべきもう1つの理由」について記事にしてみたいと思います。
まず皆さんに見ていただきたいのは以下のグラフ。

これは、第112回の記事 でも同じグラフを掲載しているのですが、「戦後」だけでなく、「戦前」の出生者数まで合わせて掲載した「出生者数の推移」を示したグラフです。戦後の出生者数の推移を示したグラフはよく見ると思うのですが、戦前からのグラフを掲載しているのは、おそらく私のブログだけです。作成者は私ですので。
で、ご覧いただくとわかると思いますが、「出生者数」のピークは「1948年」を挟んでの3年間。1947年と1949年が赤い棒線になっているので、よくわかると思います。
第二次世界大戦が終結したのは1945年。その翌年にかけてぐっと出生者数が減少してはいますが、そのさらに翌年。終戦の2年後から3年間にかけての出生者数が以上に多いのがご理解いただけますでしょうか。いわゆる「団塊の世代」です。
この年代の人が今年69歳~71歳になります。
年金の支給開始年齢は65歳です。つまり、「団塊の世代」に当たる3年間の世代はすべて、すでに「受給開始年齢」に至っていることがわかりますね?
人口はこの3年間に向けて年々増加し、逆にこの3年間を過ぎると急速に減少に転じました。
私が何を言いたいかわかりますでしょうか?
団塊の世代が65歳になった年。今から6年前~4年前にかけて、2012年~2014年の3年間までにかけて、「年金受給開始者」の人口は毎年増えていたのです。そのピークが2012~2014年にかけてです。
逆に言えば、その「ピーク」はすでに過ぎていることになります。年が経過するからと言って、2012年以前に受給者となった方の人口が増えることはありません。当たり前の話です。不謹慎な話かもしれませんが、むしろ2012年以前受給者となった方の人口は、寿命によりこれからは減り続ける一方です。
逆に、2015年以降に受給者となる人の人口は、毎年前年を下回ることになります。
1961年より出生者の数が再び増加に転じはしますが(団塊ジュニア)、しれでも団塊の世代の人口を上回ることはありません。
つまり、今後「年金受給者」の人口は、年々減少に転じていくことになるのです。
私が一人目の年金局の職員に対して、
と聞いたとき、その職員はこう答えました。
と。
これに対して、私はこう問いかけます。
と。
すると、職員はこう答えました。
と。これに対し、職員は再びこう答えます。
と。再び私はこう質問しました。
職員は再びこう答えます。
ここからはループ状態でした。で、私が
「根拠は?」
と繰り返し問いかけたことに対し、その職員は同じ回答を繰り返すことしかできず、「詳しいものと変わります」と、最後は逃げてしまいます。
そして変わって出てきたのが前回の記事 でご紹介した職員でした。
いやいやいや・・・・
・・・・
・・・・
・・・・
・・・・
・・・・
お前ら一体何の仕事してんだ・・・・と。
その程度の回答しかできないんだったら、そもそも電話にでてくるなよ。
少なくとも第114回の記事 でご紹介した、「消費増税で増える税収が私の予想を屈辱的なほどに下回った理由」について、財務省の職員は、私が足元から崩れるほど衝撃的な回答を私によこしてきましたけど?
その程度の仕事しかできないのなら、さっさと年金局の職員をやめちまえ、と。
ほんと、あれはさすがにないですね・・・
2連続で同じ内容の記事を記しましたが、はっきり言います。
「スライド未調整分のキャリーオーバー制度など、さっさと廃止してください!!」
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年金問題に関するシリーズ において私、たびたび話題にしているとは思うのですが、この「年金崩壊論者」たちの話題。
最近また復活しつつあるので、私のブログでもこの話題を取り上げたいと思います。
火をつけたのは朝日新聞。
朝日の記事を以下に引用します。

人生100年時代に向け、長い老後を暮らせる蓄えにあたる「資産寿命」をどう延ばすか。この問題について、金融庁が22日、初の指針案をまとめた。働き盛りの現役期、定年退職前後、高齢期の三つの時期ごとに、資産寿命の延ばし方の心構えを指摘。政府が年金など公助の限界を認め、国民の「自助」を呼びかける内容になっている。
報告書案「高齢社会における資産形成・管理」として、金融審議会で示した。
平均寿命が延びる一方、少子化や非正規雇用の増加で、政府は年金支給額の維持が難しくなり、会社は退職金額を維持することが難しい。老後の生活費について、「かつてのモデルは成り立たなくなってきている」と報告書案は指摘。国民には自助を呼びかけ、金融機関に対しても、国民のニーズに合うような金融サービス提供を求めている。
報告書案によると、年金だけが収入の無職高齢夫婦(夫65歳以上、妻60歳以上)だと、家計収支は平均で月約5万円の赤字。蓄えを取り崩しながら20~30年生きるとすれば、現状でも1300万~2千万円が必要になる。長寿化で、こうした蓄えはもっと多く必要になる。
まず、現役期は「少額からでも資産形成の行動を起こす時期」と説明。生活資金を預貯金で確保しつつ、長期・分散・積み立て投資を呼びかけた。具体的な方法として、年40万円まで20年間非課税で投資できる「つみたてNISA」や、個人型の確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」などをあげた。出産や住宅購入などの生活設計に応じた預貯金の変化や家計収支を「見える化」することも、効果的な対応として触れた。
定年退職者のほぼ半数は、退職時点か直前まで退職金額をわかっていないのが実情だ。このため、退職前後の時期は、退職金がいくらかや使い道などのマネープランの検討を勧める。
高齢期は、資産の計画的な取り崩しを考えるとともに、取引先の金融機関の数を絞ったり、要介護など心身が衰えた場合にお金の管理をだれに任せるかなどを考えたりしておくことを、課題としてあげている。
65歳以上の認知症の人は2012年の462万人から30年に830万人となる見込みだ。それに伴う課題にも触れた。認知症の人が持つ金融資産は、計200兆円超にも及ぶことになる。認知症になった場合にも生活を維持できるよう、お金の管理を親族や成年後見人らに任せることを考える心構えを訴えた。
資産寿命を延ばしたい顧客の要望にこたえるため、金融機関に対しては商品のわかりやすい説明や手数料の明確化などを求めている。(山口博敬、柴田秀並)
問題なのは、この記事の内、次のフレーズ。
『政府が年金など公助の限界を認め、国民の「自助」を呼びかける内容になっている』
『報告書案によると、年金だけが収入の無職高齢夫婦(夫65歳以上、妻60歳以上)だと、家計収支は平均で月約5万円の赤字。蓄えを取り崩しながら20~30年生きるとすれば、現状でも1300万~2千万円が必要になる。長寿化で、こうした蓄えはもっと多く必要になる』
という部分です。
朝日新聞による「印象操作」
金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」
↑こちらは金融庁のHPに掲載されている原文になっています。
同じ資料で、朝日新聞の「印象操作」部分と比較する上で重要な部分を抽出してツイートしている方がいらっしゃいましたので、そちらの資料をお借りしてまずは記事を作成ていきます。

この金額はあくまで平均の不足額から導き出したものであり、不足額は各々の収入・支出の状況やライフスタイル等によって大きく異なる。
当然不足しない場合もありうるが、これまでよりん學生きる以上、いずれにせよ今までより多くのお金が必要となり、長く生きることに応じて資産寿命を延ばすことが必要になってくるものと考えられる。
重要なことは、長寿化の進展も踏まえて、年齢別、男女別の平均寿命などを参考にしたうえで、老後の生活において公的年金以外で賄わなければならない金額がどの程度になるか、考えてみることである。
それを考え始めた時期が現役期であれば、後で述べる長期・積立・分散投資による資産形成の検討を、リタイヤ期前後であれば、自身の就労状況の見込みや保有している金融資産や退職金などを踏まえて後の資産管理をどう行っていくかなど、生涯にわたる計画的な長期の資産形成・管理の重要性を認識することが重要である。
では、改めて先ほどの朝日新聞によって表現の書き換えが行われた文章と、これに該当する表記を比較して並べてみます。
【朝日新聞の文章】
【金融庁の原文】
この金額はあくまで平均の不足額から導き出したものであり、不足額は各々の収入・支出の状況やライフスタイル等によって大きく異なる。
当然不足しない場合もありうるが、これまでより長く生きる以上、いずれにせよ今までより多くのお金が必要となり、長く生きることに応じて資産寿命を延ばすことが必要になってくるものと考えられる。
いかがでしょう。ずいぶん印象が違うのではないでしょうか。
そもそもこのモデルは前提として、「夫65歳、妻60歳以上の夫婦のみの無職の世帯」の内、実収入が20万9198円の世帯に限定した、モデルケースであるということ。この20万9198円という数字も政府が把握している様々な統計データから、計算式によって算出したものにすぎません。
また更に、この世帯の支出が26万3718円である、とされていますが、これはおそらく私が 第473回の記事 などで話題にしました、「消費動向指数」などから算出したものだと考えられます。
内訳を見てみます。
総額 263718円
1.食料 64444円
2.住居 13656円
3.水道・光熱 19267円
4.家具・家事用品 9405円
5.被覆及び履物 6497円
6.保健・医療 15512円
7.交通・通信 27576円
8.教育 15円
9.教養娯楽 25077円
10.その他消費支出 54028円
11.非消費支出 28240円
そう。私のブログをよくご覧になっている方には非常におなじみの「内訳」。消費者物価指数のシリーズなどで頻繁に登場させている、「10大費目別」の内訳です。
もう少し詳細な品目別にサンプルデータを収集し、「加重平均」に「加重平均」を繰り返し合算した上で「ウェイト」を算出。更に万分率で割り戻し、ウェイトを掛けて指数化したもの・・・。
正確な表現ではありませんが、このようにしてサンプルデータから計算式によって算出したものがこの「10大費目別」のデータです。
更に、「年代」までは同じ資料でも計算できるのかもしれませんが、これが「夫65歳、妻60歳以上の夫婦」に限定するとなるととても消費動向指数の統計データだけでは足りるわけがありません。
対象となるサンプルも計算式も異なる全く別の統計手法を用いて算出されたデータと合算して算出されたものがこの統計資料だと考えられます。
そもそも、「収入」の方は統計局の仕事ではないはずですから、そもそもが全く異なる資料から算出されたものが掲載されているはずです。「参考にはなるがあてにはできない」データの典型的なものです。
「じゃあなんでそんなあてにならないデータを」という人もいるかもしれませんが、そもそもそういう計算方法を用いて収集するしか統計を取る方法がありませんし、あてにはならないかもしれませんが、世間の実態を推測する上では必要なデータなんです。
私自身がこのブログでそういった方法を用いて数多く資料を作成していますから、そのことはとてもよく理解できます。
ですが、そのような非常にアバウトなデータであり、更にピンポイントで実収入が20万9198円の世帯に限定して算出されたデータであるも関わらず、マスコミや野党の皆さんは、特に「2000万円」という数字のみをクローズアップして、「将来の不安」を煽るのみならず、更に年金制度があたかも崩壊してしまうかのような表現を用い国民に対して誤った情報を拡散している。
これが現在の状況です。
立憲民主党蓮舫による印象操作
こちらの動画は、6月10日、国会決算委員会において蓮舫氏が、前記した金融庁が公開した、金融調査委員会の資料に関して行った質疑の模様です。
この動画において、麻生さんや安倍首相は、非常に大切なことを答弁しています。
ですが、そのことをクローズアップして報道しているマスコミは皆無。質疑している蓮舫や背後にいる立憲民主党をはじめとする野党の連中はそれを深めようとするどころかむしろ大声を立てて答弁を妨害し、そのことをむしろ説明させないように必死になっている様子が見てわかります。
まず、冒頭から蓮舫氏により、安倍首相に次のような質問が投げかけられます。
ここまで私の文章を読んでいただいている方にはもうご理解いただいていると思いますが、2000万円必要だとされたのは、あくまでも夫65歳、妻60歳以上の夫婦のみの無職の世帯の内、「実収入が20万9198円」の世帯に限定して行われた試算の結果です。
かつ支出に関しては「消費動向指数」などのデータから計算式によって算出した、世間の実態を推察する上で、参考程度にしかならないデータです。
このような、非常にアバウトな計算に基づいて作成された資料を、あたかも事実であるかのようにして蓮舫は表現し、安倍首相に質問しています。
これに対して安倍首相はこう答えます。
「これは、不正確であり、誤解を与えるものであった」と。
更に麻生さんがその答弁に応じるわけですが、以下のように答弁を行っています。
いうことを込めて考えたんだと申し上げております。
しかし高齢者の家計については、貯蓄や退職金を活用しているということに触れることなく、家計調査の結果に基づく単純計算で老後に月5万円、30年で2000万円の赤字であるかのように表現したという点につきましては、これは国民の皆さまに誤解や不安を広げる不適切な表現であったと私どもは考えております。
公的年金については老後の生活を支える柱でして、将来にわたり持続可能な制度を確保しております。
更に医療・介護といった社会保障制度は全体として、国民の高齢期に対する包括的なセイフティネットとして機能も致しております。
また 本年10月から、低年金の方へ年間最大6万円の年金生活者支給給付金を支給し、セイフティネットにおいて更に充実させていくということにいたしております、というんで、我々は人生100年時代において誰もが安心して暮らすことのできる社会を実現するために老後生活を支える柱である年金生計をはじめとして、働き方や改革や予防健康づくりなど、丁寧に議論してまいりたいと考えております
ここで麻生さん、非常に重要な事をおっしゃっていますね。
今年10月より、年間6万円ですから、それほど多い金額であるとは言えないかもしれませんが、低年金者の生活を直接支援するための給付金が支給されることに言及しているのです。
ですが、麻生さんがこの話題に言及し始めたあたりから急に野党の外野席がざわめき始め、麻生さんにこの答弁をさせないよう、大きな声で妨害を始めていることがわかると思います。(→この辺り です)
これ、こんな2000万円が云々といった話より、余程重要な内容だと思いますが、蓮舫氏はこの話題について深めることを全く使用としないどころか、外野の野党は麻生さんの答弁を妨害しようとする始末。
野党の役割って、本来国民が知っておくべきことを国会で質問し、答弁させることで国民に知らしめることにあるはずだと私は思っているんですが明らかに野党がやっていることは真逆。蓮舫をはじめとする野党はこの事を国民に知らせたくないわけですよ。
蓮舫はこれに対し、次のように質問をします。
そう。蓮舫は麻生さんの答弁を全く聞いていないんです。
麻生さんは当然次のように答えます。
はい。当然です。
あくまで夫65歳、妻60歳以上の夫婦のみの無職の世帯の平均値ではありますが、実収入が20万9198円の世帯に限定したケースが、あたかもすべての世帯に当てはまるかのように言い換えて質問している蓮舫は非常に悪質だと思います。
ここから更に蓮舫は次のように質問します。
「この報告書、読みました?」
と。これに対し、麻生さんは次のように答えます。
「冒頭の部分、一部分目を通させていただきました。全体に目を通しているわけではありません」
と。これに対し、更に蓮舫次のように質問します。
ほんと殴ってやりたい・・・
「読んでいる」と「理解している」では全く話が異なります。蓮舫ははっきりいって5分読んだら終わる報告書全体に目を通しているはずなのに、そこに書かれてある内容を全く理解していないのです。
一方の麻生さんは、もちろん官僚からレクは受けているでしょうし、答弁書そのものは官僚が作成したのかもしれませんが、少なくとも蓮舫よりは間違いなく報告書の内容を理解しています。
麻生さんが「豊かさ」に言及しているのは
と表現しているのであって、そんなピンポイントで、実収入が20万9198円の世帯に対して言及しているわけではありません。
報告書全体に対して言及しているのです。麻生さんはこれに対し、次のように答えます。
ここで麻生さんが言っている「そういったもの」というのが「更に豊かな老後を送るためにはどうしたらよいのか」ということに言及した内容に当たります。
これに対する蓮舫の答弁は次の通り。
一つ。勉強するためのグループが話したものじゃなくて、麻生大臣が諮問をした審議会のワーキンググループですよ?
でそしてこの報告書には、豊かな老後のために25万円いるから5万円足りないとは1行も書いていません。
その問題認識が甘い。
このおばちゃんには「比喩」とか「たとえ」といった表現は全く通じないんでしょうね。まずは日本語をきちんと勉強するところから始めてほしい。日本語を理解出来ない人がなぜ国会議員をやっているのだとマジで言いたい。
麻生さんは自身が諮問をした審議会のワーキンググループの事を聞いている人にも理解しやすい様に「年金の、これを勉強するグループ」と言い換えているにもすぎませんし、このグループそのものが豊かな老後を送るためにはどうすればよいのかということを研究することを目的としたグループだと散々言っているのに、そのことが全く理解できていない。
ハッキリ言ってこんなおばちゃんに答弁させるなんて私たちの大切な税金の「無駄遣い」以外の何者でもありません。
記事が長くなってしまいますので、今回、私が本来お伝えしたい内容に移ります。
マクロ経済スライド調整率改定の意義
さて。先ほどからご紹介している動画ですが、この動画の内、一番大切な部分は、麻生さんが軒並み答弁を終えた後。安倍さんが答弁に入った後の内容です。
例によって野党陣営がわぁわぁわぁわぁ騒いで必死に安倍さんの答弁を妨害しています。
ここからですね。文字起こししていきます。
まあ、事実そのように書いて、そのような誤解を与えたと思います。
まあそこでですね、そこで、そこでまああの、100年安心という事について申し上げますと、これはですね、高齢期の生活は多様であってですね、それぞれの方が望ましいと考える生活水準や働き方の希望収入、資産の状況なども様々であります。
まぁ現在でも、ですね。国民の老後所得は公的年金を中心としつつ、ですね。しつつ、えぇ、稼働所得、そして仕送り、企業年金、個人年金、財産所得などが組み合わさっているのが実態であると、こう我々は理解しております。(この辺りで外野がざわめきます)
まぁその上で、ですね。この上において、年金、年金100年安心が嘘であったというご指摘がございますが、そうではないという事を今申し上げさせておきたいと、これ重要な点でありますから申し上げたいと思いますが、
まぁこの国民の老後所得の中心となる公的年金制度についてはですね、将来世代の負担を加重にしないために、保険料水準を固定した上で、長期的な給付と負担の均衡を図るマクロ経済スライドによりですね。一定の給付水準を確保する事を前提にこれ、持続可能な、えぇ制度に改めたものであります。
まぁこれは、平成16年の大改革でありまして、マクロ経済スライドを導入する、つまり平均余命が長くなれば当然給付が増えいく。一方、同時にですね。えぇ被保険者の数がどうか。これ減っていけば、(ここで再び外野がざわめき始めます)当然これは、収入も減っていく。でそのバランスが大切であると、それがマクロ経済スライドであります。(ここで蓮舫が安倍さんの答弁を止めようとします。外野はざわめき続けます)
こっからが大切なんですよ。で、そこで、ですね(外野のざわめき具合は絶好調。マイクを通してですら安倍さんの答弁が聞き取れないほどのざわめきっぷりです)、アベノミクスの進展によってもはやデフレではないという状況を反映し、今年度の年金は0.1%も・・・
さあ。ここでついに安倍さんは答弁を止め、外野のざわめきを止めに入ります。
こうやって説明させないという態度はおかしいと思いますよ。
ここで、委員長から「速記を止めてください」との静止入りますが、安倍さんにも既に聞こえない状況にあるのか、安倍さんはそのまま答弁を続けます。
ここで委員長より、「速記を起こしてください」のアナウンスが入ります。これに対し、安倍さんは「あ、今止まってたんですか?今まで、止まってたの?」と返しています。
そう。外野がうるさすぎて、委員長のアナウンスが安倍さんに届いてさえいないんですね。ここで蓮舫より、「委員長、指導してください」との声が入っていますが、その前にまず外野のおっさんたちを注意しろよ、と思います。
ここで安倍さんが言っている事、かなり重要な内容なんです。
ここで委員長より再び「速記を止めてください」のアナウンスが。しかし安倍さん、かまわず続けます。
で、こ・・・えっ?速記止まってたの?
ここで正式に速記が止まり、各政党の陣営が委員長席の周りに集まり、安倍さんは着席。
委員長の「速記を起こしてください」の声を受け、安倍さんは挙手し、再び委員長の氏名を受けて答弁に移ります。
皆さんね、年金というのは制度の説明ですから。少しは時間がかかるんですよ。スローガンを言い合うことではないんですよ。で100年安心ではないという非常に重要な点を指摘されましたから、それに対して反論するのはですね、不安を煽らないためにも大切ではないでしょうか。
でそこでですね、簡単にお答えをいたします。簡単にいたします。アベノミクスの進展によってですね、もはやデフレではないという状況ができたことを反映してですね。今年度の年金は0.1%増額改定となりました。
でこれはですね、これは未調整だった分も含めて(委員長より、発言者のためにもご静粛にお願いします、とのアナウンス)将来世代のためのマクロ経済スライド調整を行った上で尚、現在の受給額がプラスの改定になったものであり・・・
これですね、皆さんにとって都合の悪い説明だと遮るんですか?皆さんにとって都合の悪い説明だと遮る・・・
で、これはですね・・・いいですか?、いいですか?
で、私が答えますから、いいですか?(蓮舫より、続けてください、どうぞ、との声)
これは、これまで未調整だった分も含めてまぁ将来世代のための、マクロ経済スライド調整を行った上で尚、現在の受給額プラスの改定となった。ものでありまして、現在の受給者、将来世代の相互にとってプラスとなるものであります。(委員長より「ご答弁は簡潔にお願いします」とのアナウンス)
で今、正確に制度についてですね、説明させていただいているんですが、『とめろよ』とか、ですね、『やめろよ』とかですね、大きな声出すのは皆さん、やめましょうよ。
で、尚デフレが・・・尚、ですね。(委員長より「ご答弁は簡潔に」とのアナウンス)
すみません委員長ですね、委員長ああいう大きな声出されてですね・・・・・・・・あ、いや私がですね、答弁し始めて10秒くらいたった段階でそうやって大きな声出されたら、説明できないじゃないですか。
これ皆さんにとって都合が悪い答弁だからですか?(蓮舫よりどうぞお話になってください、との声)
じゃ、じゃあよろしいですか? いや、つまりですね、マクロ経済スライドによって、マクロ経済スライドによって100年安心という、そういう年金制度ができたという事なんです。それ給付、いいですか、これ給付と負担のバランスですから。それを調整するものができた。
そして今年度においてはプラス改正ができた。かつマクロ経済スライドも発動された、マクロ経済スライドが発動されたという事が、大きなポイントであるという事は、これ、多くの方々ご理解いただいてないんで申し上げさせていただきたいと、こう考えております。
いやぁ・・・ひどい。安倍さん、ほとんど発言させてもらえていませんね。
当然繰り返し同じ文言を述べることになりますから、必然的に答弁も長くなっているのがわかると思います。
そう。実はこの「マクロ経済スライドが発動された」という話題、これ、本当にとても大切な事なんです。
と言ってもこの記事を読んでいる皆さんの中で、この「マクロ経済スライド」の事を正確にご理解していらっしゃる方がどの程度いらっしゃるでしょうか?
実は、今回の安倍さんの答弁を拝聴していて、私自身も本当の意味でこの「マクロ経済スライド」のことを理解できていなかったんだ、という事を思い知らされました。
私自身、この「マクロ経済スライド」については
第112回 マクロ経済スライドをわかりやすく~デフレ時・インフレ時のマクロ経済スライド~
第184回 マクロ経済スライドの改定内容をわかりやすくご説明いたします。①
第185回 マクロ経済スライドの改定内容をわかりやすくご説明いたします。②
第401回 年金と消費者物価指数~マクロ経済スライドの終焉~
第402回 マクロ経済スライド未調整分キャリーオーバーを中止すべきもう1つの理由
という5つの記事で話題にしてきました。
「マクロ経済スライド」についてわかりやすく簡潔にご説明しますと、そもそも日本の年金制度には、「物価・賃金スライド」という制度が反映されていることが前提となります。
「賃金スライド」に触れると説明が煩雑になるので、「物価スライド」のみを説明しますと、年金を受給する際、前年度と比較して物価(持家の帰属家賃を除く消費者物価指数)が下落すると年金は下落し、逆に上昇すると年金も上昇する、という単純な仕組みです。
ところが、2004年度に行われた改定以降、「物価スライド」において物価が上昇する場合、ここに「マクロ経済スライド」という新たな仕組みが導入されることになりました。

この仕組みは、物価が上昇した際、「スライド調整率」というものを設け、物価がこのスライド調整率を上回らない限り年金は上昇しない、という仕組みです。
このスライド調整率は0.9と設定されていて、つまり物価が前年同月比で0.9を超えなければ年金が上昇することはありません。
スライド調整率の計算式としては、
「公的年金全体の被保険者数の減少率(3年平均)に平均余命の伸びを勘案した一定率(0.3%)」
とされており、つまりスライド調整率が0.9という事は、「公的年金全体の被保険者数の減少率」が0.6%だという事。
つまり、物価上昇率が1%だった場合、1%から0.9%を引いた0.1%が年金の上昇率だということになります。
更に30年度より、このマクロ経済スライドが反映されなかった割合が翌年に持ち越されることとなり、例えば物価上昇率が0.6%であった場合、0.3%分はスライド調整率を下回っていますから、翌年に持ち越されることとなったのです。
つまり、31年度に年金が上昇するためには、本来のスライド調整率である0.9%に昨年のスライド調整率未反映分0.3%が加算され、物価上昇率が1.2%を上回らなければ年金は上昇することはない・・・という非常にあくどい状況となっていた・・・はずだったんです。
ところが、です。
スライド調整率の引き下げ 0.9%→0.2%に
そう。今回の決算委員会における蓮舫との質疑応答の中で最も重要な情報はこちら。
私、安倍さんの口からこの話題が出たとき、一瞬画面を二度見しましたよ。一瞬のけぞったほどです。
文字起こししてみます。
先ほど申し上げましたように、100年安心というのはまさにマクロ経済スライドが発動される、という事でございますが、そのマクロ経済スライドについてはですね、平成28年までは、0.9だったものがですね、31年度においては0.2まで下がった。
これ、0.2まで下がったという事はですね、被保険者、つまり働き始めた人が増えた事によってですね、保険料収入が上がって、0.9が0.2に下がったわけでございますから、こういうものも含めて、プラス改定が可能になったという事でございますので、年金体制を支える経済基盤はより確かなものとなったという事は確認したいと思います。
びっくりですよ、はっきりいって。
私が真っ先に感じたのは、「スライド調整率って変わるんだ・・・」という、まさにその一言です。
しかも0.2って・・・(;'∀')
ほんと、びっくりしました。安倍さんは28年までは0.9だったといっていますが、0.9だったのは平成30年度まで。今年度から変更となっています。
加えて安倍さんが盛んに言っている「未調整だった分も含めて将来世代のためのマクロ経済スライド調整を行った」というのは、つまり平成30年度に反映しきれなかったスライド調整率分が31年度にキャリーオーバーされ、このキャリーオーバー分も吸収した上で0.1%増という受給率の改定が行われたと、つまりそういう意味です。
ちなみに30年度からキャリーオーバーされたスライド調整率は0.3。新しく改定されたスライド調整率が0.2。その上で受給率の改定が0.1という事ですから、つまり昨年度と比較して今年度の物価上昇率は0.6%だったってことですね。
スライド調整率が改定されていないままだったらキャリーオーバーされた0.3にスライド調整率0.9が加算された1.2から0.6をマイナスして、更に0.6が来年にキャリーオーバーされていたことになりますね・・・。
ちなみに安倍さんも言ってますけど、スライド調整率が改定されたのは、30年度と比較して公的年金の加入者の数が増えたから。
「公的年金全体の被保険者数の減少率(3年平均)に平均余命の伸びを勘案した一定率(0.3%)」
というのが計算式ですから、スライド調整率が0.2%になったという事は減少率がマイナスになったという事。
0.3%から更に0.1%減少していますので、逆位言えば公的年金の加入者が0.1%増えたってことです。
特にその増加幅が顕著なのは「厚生年金」で最新のデータとして平成30年2月の厚生年金加入者(被保険者)の数が3916万人、安倍内閣初年度の加入者が3527万人ですから人数としては389万人の増加ですね。約9.9%の増加です。
その代わり、国民年金加入者は減っていますので、トータルで0.1%の増加という事になっています。
まぁ・・・しかしびっくりしました。
私、
第401回 年金と消費者物価指数~マクロ経済スライドの終焉~
第402回 マクロ経済スライド未調整分キャリーオーバーを中止すべきもう1つの理由
の二つの記事で年金局の人をまぁまぁディスってしまいましたが、こういう事だったんですね。改めて、お詫びを申し上げたいと思います。
蓮舫は安倍さんがこれほど大切な説明をしたことなど全く理解できていませんから、これに対して「全く誠実に答えていただけないことに本当に憤りを感じるんですが」と答えた上で話題を別の話題に切り替えています。
憤りを感じる前にまず年金制度のことくらい勉強してから安倍さんや麻生さんに質問しろ、とマジで言ってやりたいです。
本日は長くなりました。この記事の内容、ご理解いただけたでしょうか。「安倍内閣の成果」とは何なのか。
是非皆さんのお知り合いにもこの事をぜひ「シェア」していただければ幸いです。
この記事のカテゴリー >>日本の年金
今回の記事、私としては非常に不本意な記事になります。
タイトルにある通り、私が長年主張していた年金の考え方について、一部ですが、私の年金問題に対する主張全体に大きな影響を与えるほどに誤った部分があったことがわかりました。
私のブログの記事を読んで、参考にしてくださっていた方もいると思う中で、これは本当に申し訳ない思いがします。私自身としてもショックでしたし、非常に恥ずかしい思いがしています。
きっかけは本年(2019年)6月24日、以下の記事に読者の方からお寄せいただいたコメントです。(本日は同年7月26日です)
第476回 マクロ経済スライド調整率改定の意義~年金崩壊説の崩壊~
コメントそのものを抜粋いたします。
年金特別会計を見ていると「基礎年金給付費等基礎年金勘定へ繰入」という項目があり、検索してみるとこちらのサイトに出会いました。
記事を読み一旦は理解した気になってましたが、どうもおかしいような気がして確認のためコメントさせていただきます!
今のところの理解としては、
国民年金勘定では付加年金、死亡一時金などの給付を行い、残りを基礎年金勘定に入れます。
厚生年金勘定では報酬比例の年金、障害年金等を給付し、残りを基礎年金勘定に入れます。
基礎年金勘定では国民年金勘定、厚生年金勘定から受け取ったお金で基礎年金給付費、基礎年金相当給付費を支払います。
給付額は平成29年ですと基礎年金勘定22,408,941、国民年金勘定554,147、厚生年金勘定23,666,851で合計約46兆くらい
保険料は国民年金勘定1,396,425、厚生年金勘定30,944,165で合計約32兆
国庫負担は国民年金勘定1,939,211、厚生年金勘定9,481,945の約11兆
その他いろいろな歳入歳出があり(理解できてない項目が沢山あります)、結果としては何とか黒字で積立金に移行。
こう理解してます。
こちらのサイトでは基礎年金勘定を考慮されていないように見えました。
前回の財政検証では平成30年あたりまで赤字でしたが、厚生年金加入者が増えたのでしょうずっと黒字です。
それはいいのですが、マクロ経済スライドがデフレのせいでほぼ発動しておらず(今回何とか発動)所得代替率が思うほど下がりません。この調子ですと少子化による大赤字が待っています。
このままだと本当に破綻してしまうのではないでしょうか?
ちなみに私の破綻の定義は積立金が無くなり多額の赤字を所得代替率を大幅に下げること(30%くらい)で保つようにすることです。
長くなってしまい申し訳ありません!よろしくお願いします!
難しいと感じるかもしれませんので、まずは私のこちらの記事をご覧ください。
第117回 公的年金制度の仕組みをわかりやすく図解入りで解説いたします。
記事の中で、年金の運用が「年金特別会計(厚生・国民)」、「基礎年金勘定」、「年金積立金」の3つの財布を使って、トータルで運用されていることをお示ししています。

問題となるのは、この内「基礎年金勘定」に関する説明です。
①年金会計の中から、前年に受け取った国民の「年金保険料」の中から、本年に納付されると考えられる保険料を全額引き出し、「基礎年金勘定」に繰り入れる
②「基礎年金勘定」から同年に給付に回されると考えられる年金受給額を全額引き出し、「年金会計」に繰り入れる
③「年金会計」の中から、その年に受給者がいなくなった金額を「年金積立金」に繰り入れる
という説明を私は行っているのですが、この内の②、コメントをくださったチダ様のご指摘では、基礎年金勘定から年金会計に繰り入れられている額は、「全額ではないのではないか」とおっしゃっられています。
私としては、全く想定していませんでしたから、最初自分が何を言われているのかが理解できていなかったのですが、改めて基礎年金勘定の会計収支を見ると、確かに他の年金会計に繰り入れられている金額以外に、「基礎年金給付費」なるものが設定されていて、最新の使用で繰り入れられている額の20倍近い金額が歳出として計上されていたのです。
思い込みは怖い話で、私は私の説が誤っているとこれっぽっちも思っていませんでしたから、改めてこの「基礎年金勘定」を見直す機会を自分自身の中に設けていなかったわけですね。
項目の中に、「基礎年金給付費」という項目と、「基礎年金相当給付費他勘定へ繰入及交付金」という二つの項目があるのです。
恐らく私は最初に調べたときに、これを同じものである、と大きな勘違いをしていたのだと思います。
かつ、国民年金や厚生年金の収支をグラフで作成する際に参考としていた「基礎年金勘定」から繰り入れられた金額は、それぞれの年金勘定で「基礎年金勘定より繰り入れ」と記されているもののみを参考にしていましたので、よもや基礎年金勘定の側に繰り入れられていない金額が残っているとは思っていなかった、という事です。
今回だけで完結させられるかは自身がありませんが、訂正記事によって影響を受けるのは、私が年金勘定は「国民・厚生共に黒字だ」と主張している部分、及びその証拠として作成しているグラフ、またその運用制度そのものを説明した記事が軒並み影響を受けます。
全く影響を受けないのは「マクロ経済スライド」に関する説明のみです。ですが、マクロ経済スライドの「キャリーオーバー」に関して作成した記事は、「キャリーオーバーすべきではない」理由として年金収支に関する情報を用いているはずですので、こちらも訂正が必要になってくるかと思います。
ただ、私のブログのスタイルとして、記事を削除することはいたしません。記事を削除せず、記事中でどこが間違っていたのか、赤字で訂正文を加える形で修正を行っていきます。
現時点で、いくつかの資料を既に作成しておりまして、これから作成する記事の目的としては、まずは誤りをきちんと訂正する事。
その上で、現在の年金の収支状況が、基礎年金勘定から年金積立金まで含めて、全体で見てどのような収支状況にあるのか。この事を改めてきちんと検証していきたいと思います。
「基礎年金給付費」と「基礎年金相当給付費他勘定へ繰入及交付金」の違い
まずはこのご説明から。私は、基礎年金勘定帳簿に掲載されていた「基礎年金給付費」が、そのまま国民年金勘定、厚生年金勘定へと繰り入れられている金額だと思い込んでいました。
最大の原因は実は次の画像。

今は同じ資料を厚労省のホームページから検索しようとしても出てこないと思います。
野田政権時代に、私が「年金財政は安全だ」ということを裏付けるために資料を作成していたのですが、その時に見つけていた資料で、ここに「基礎年金勘定へ繰入」という項目と「基礎年金勘定より繰入」という二つの項目があるのがわかると思います。
元々は、ここに掲載さ入れていた「基礎年金勘定」とは何ぞやというところから私の基礎年金勘定の検証はスタートしました。当時、この「基礎年金勘定」に着目してデータを作成している人などいませんでしたから、私としてはそれにたどり着いたとき、「これだ!」と心の中で快哉を叫んだ記憶がありますよ。
本当はこの時に、もう少し深く「基礎年金勘定」の事を調べておかなければならなかったのでしょうね。
あれから既に7年ほどたちます。今になって気づくとは・・・
ガッカリしても仕方ありませんね。記事を進めていきます。
では、サブタイトルにある
「基礎年金給付費」と「基礎年金相当給付費他勘定へ繰入及交付金」の違い
について。この二つの項目が生まれた理由は、昭和61年に行われた年金制度の改正。要は、この時に初めて「基礎年金勘定」なるものが生まれたんですね。
これまで国民年金は国民年金、厚生年金は厚生年金として運用されていたものが、基礎年金部分を一旦「基礎年金勘定」へ全額繰り入れ、ここで別枠で運用することで、仮に国民年金が財源不足に陥ったとしても厚生年金受給者が納める基礎年金で国民年金を運用できるように改正された仕組みです。
昭和61年に改正された年金制度が実行されましたので、60年までの年金受給者と、60年以降の年金受給者の間で運用の仕組みに違いが生まれます。
と、ここまで記せば何となくわかるんじゃないかと思いますが、昭和60年までに年金受給者となった人の基礎年金年金給付費が「基礎年金相当給付費他勘定へ繰入及交付金」、それ以降に受給者となった人の基礎年金給付費が 「基礎年金給付費」。
60年までに受給者となった人の基礎年金は基礎年金勘定から国民・厚生両年金勘定に「繰入」られて運用されていますが、それ以降に受給者となった人の基礎年金は、繰り入れられることなく、一括して「基礎年金勘定」の中で運用されていた・・・という事。
これに気づけなかったことは、私のブログ記事に大きな誤りを生んでしまいました。私のブログを信頼し、参考にしていただいた方へは、心の底よりお詫びを申し上げたいと思います。
「国民年金」及び「厚生年金」の収支に「基礎年金勘定」分を加えると・・・
あらかじめ申し上げておきますと、以下のグラフは私の推測に基づく計算式で作成したデータを含めていますので、参考にしていただいても構いませんが、それぞれのグラフを根拠として単独で利用することだけはやめてください。
【国民年金収支推移】

【厚生年金収支推移】

これまで利用してきた以下のグラフ
【A】

【B】

にそれぞれ基礎年金勘定から繰り入れられることなく、基礎年金勘定内で「国民年金受給者」及び「厚生年金受給者」にそれぞれ給付されている給付費を加算したものです。
基礎年金勘定内でわざわざ分けて掲載されているわけではありませんから、ここは計算式によって私が算出したデータを用いています。
計算式として用いた数字は
①基礎年金給付費
②(重複を含まない)年金受給者数
③厚生年金受給者数(共済年金等受給者も含む)
④国民年金受給者数(②-③)
の4つです。ここから
⑤厚生年金受給者数の(重複を含まない)年金受給者全体に占める割合(③÷②)
⑥国民年金受給者数の(重複を含まない)年金受給者全体に占める割合(④÷②)
を算出し、それぞれを①に掛けた値を⑤は厚生年金収支に、⑥は国民年金収支にそれぞれ加算しています。
このグラフで見ますと、国民年金給付費に関しては基礎年金給付費を加えようが加えまいが、年金受給者の数は年々減っており、収支で見てもプラスになっていることがわかります。
一方で、厚生年金給付費に関してはトータルで見ると給付費は増加しており、保険料+国庫負担分も増加してこそいるものの、給付費の増加に追い付くことはできず、トータルで見ると毎年赤字なっていることがわかります。
ちなみに、どの程度の赤字額かと申しますと、
2007年 -7.18兆
2008年 -7.3兆
2009年 -8.04兆
2010年 -7.84兆
2011年 -7.42兆
2012年 -8.32兆
2013年 -8.28兆
2014年 -6.98兆
2015年 -6.32兆
2016年 -5.72兆
2017年 -5.12兆
の赤字です。額がまあまあ太いですね。
ただ、これらの数字の母体となっている厚生年金受給者とは、「厚生年金受給資格者者」の事であり、この人達が皆一生を通じて厚生年金加入者であったわけではありません。ですから、本来は「国民年金受給者」に加えるべき部分も含まれた受給者について掲載したグラフだという事だけはご認識いただければと思います。
また、私があくまでも独自の計算式によって求めた「概算」ですから、これが正しいかどうかは証明することすらできません。
まずは「概算でこのような結果が出た」という事実だけを把握していただければと思います。
という事で、今回は私に時間が無くなってきましたので、この記事は一旦ここで終了にします。あまりにも記事を作成しない期間が長くなると、コメントをいただいたチダ様にも申し訳ないと思いまして、急ぎ作成したのが本日の記事です。
次回記事では、では今回のように私独自の計算式を加えず、「基礎年金勘定」「国民年金勘定」「厚生年金勘定」をそれぞれ加工しない数字を用いて検証するとどうなるのか。年金制度全体での収支状況を検証してみます。
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<継承する記事>第477回 改めて分析する基礎年金勘定~誤っていた私の分析結果~
前回の記事に引き続き、「基礎年金勘定」に関する私の認識の誤りを検証し、その結果から過去の記事をどう訂正していくべきなのか。これを検証することを目的とした記事を作成します。
前回の記事をまとめますと、年金会計全体の内、国民年金の全額、及び厚生年金の基礎年金部分を管理するために設けられている「基礎年金勘定」。
ここには二つの「支出項目」があります。
一つが
「基礎年金給付費」。
もう一つが
「基礎年金相当給付費他勘定へ繰入及交付金」
です。指摘をいただくまでの私の認識としては、年金を給付する際、「基礎年金部分」を全額基礎年金勘定から国民年金勘定、及び厚生年金勘定に繰り入れ、そこから受給者に対して支払われていたと思い込んでいました。

このグラフを見ていただくとご理解いただきやすいでしょうか。
年金受給者は「第一号被保険者」「第二号被保険者」「第三号被保険者」に別れており、第一号被保険者とは全ての保険者の内、「国民年金(基礎年金)」しか受け取ることができない人。
自営業者や学生さんなどがこれに該当します。その他、就労することができない人、もしくは就労していても厚生年金が適用されていない人なども含まれていますが、自営業者以外は基本的に「免除」もしくは「減額」が適用されていると考えられます。収入がなくて支払うことができませんからね。
「国民年金勘定」で管理されているのはこの第一号被保険者の皆さん。
第二号被保険者の人は国民年金以外に「厚生年金」を受け取っている人。「被雇用者(労働者)」の事です。
厚生年金部分はその1/2を企業が負担しています。
厚生年金勘定で管理されているのはこの「第二号被保険者」の事。この他、第二号被保険者の配偶者の事を「第三号被保険者」といいます。ポイントとなるのは、「第二号被保険者」は「厚生年金」だけでなく、同時に「国民年金」の加入者でもあるという事。
現在の制度では、第一号被保険者、第二号被保険者(+第三号被保険者)共に「国民年金(基礎年金)部分」を一旦両年金勘定から引き出し、「基礎年金勘定」という別の会計帳簿に繰り入れ、そこで一括して支払われているという事です。
「基礎年金給付費」と「基礎年金相当給付費他勘定へ繰入及交付金」
改めて両項目の違いですが、「基礎年金勘定」という仕組みが導入された昭和61年よりも前に年金受給者であった人に対して支払われている「年給付費」が「基礎年金相当給付費他勘定へ繰入及交付金」と記されている項目で、この項目は給付される前に再び「国民年金勘定」、及び「厚生年金勘定」に繰り戻され、そこから受給者に対して支払われています。
しかし、昭和61年以後に受給者となった人は、これが他会計に繰り戻されることはなく、第一号~第三号までひっくるめて「基礎年金勘定」から支払われています。それが「基礎年金給付費」です。
私が誤っていたのは、この認識がなかったという事。
自分で調べてたどり着いた結果であり、私自身色んな資料を比較して検証をしていた「つもり」だったのですが、一番肝心な部分を考察することなく思い込んだまま情報として「確定」させてしまっていたという事。
これは改めて読者の皆様にお詫びさせていただきます。
基本に戻って考える
誤ってこそいましたが、ではだからと言って「誤っていました、ごめんなさい」で終わらせるわけにはいきません。
要はどこがどのように誤っていたのか、そしてその結果全体にどのような影響を与えることになるのか。そして終局の目的として、「年金は破綻しない」とする私の主張がそもそも間違っていたのか、それともそうではなかったのか。これを検証しなければ私のブログとしての役割を果たすことができません。
そこで、まずは「基本に立ち返って」考えることが大切かと思います。
私としますと、「国民年金勘定」及び「厚生年金勘定」において収入が減る中で給付費が減っていた(と思い込んでいた)ことを「発見」しましたので、これを「年金が破綻しない」最大の根拠であると考えていました。
それが次のグラフです。


逆に言えば、この数字を下に「破綻するわけがない」と思い込んでいますから、それ以上の検証を行っていない状況でもあります。
ですが、実際には


こちらの方が現在の年金収支状況としては「正解に近い」姿ですから、私のこれまでの根拠が「年金が破綻しない理由」とはなりえていないわけです。
とはいえ、「国民年金」に関しては次期が私のかつての認識と比較すると非常に遅れてはいますが、「破綻はしない」という状況には近づいているかと思います。
問題は「厚生年金」の収支です。前回も示しましたが、赤字幅がどのように推移しているのかと申しますと、以下の通り。
2007年 -7.18兆
2008年 -7.3兆
2009年 -8.04兆
2010年 -7.84兆
2011年 -7.42兆
2012年 -8.32兆
2013年 -8.28兆
2014年 -6.98兆
2015年 -6.32兆
2016年 -5.72兆
2017年 -5.12兆
年々その額を縮小させているとは言うものの、5兆円という額は決して小さいものではありません。ちなみに国民年金の収支状況はと申しますと、以下の通り。
2007年 -4.4兆
2008年 -4.26兆
2009年 0.08兆
2010年 0.04兆
2011年 0.47兆
2012年 1.11兆
2013年 1.37兆
2014年 1.5兆
2015年 1.6兆
2016年 2.13兆
2017年 2.25兆
と、プラス幅を増やしてこそいますが、とても厚生年金の赤字幅を相殺する段階には至っていません。最新の状態で2.87兆円ほどの赤字です。
ただ、今回お示ししている数字の根拠としているのは、「年金受給者」の数とその割合から、私が計算式によって作り出した数字ですので、これが「正しい数字」と言えるのかどうかと申しますと、必ずしもそうだと言い切ることはできません。
という事で、ここからは私の計算式を加えることなく、政府が公表している数字のみを用いて、年金会計の収支全体で考えてみます。
国民年金勘定と厚生年金勘定の考え方
まずはこの部分から。
「国民年金勘定」とは、大きく分けて
収入 「国民年金保険料」「国庫負担分」「基礎年金勘定より受入」
支出 「基礎年金勘定へ繰入」「年金給付費」
という項目で構成されています。その他事務費や運用益、積立金などもありますが、それらは考慮せずに進めていきます。

できたらグラフくらいは自分で作成したかったんですが、時間の都合上、厚労省の資料をそのまま掲載します。
「公的年金保険者数」、つまり年金を国に納めている人たちの数を年経で示したグラフです。
「第一号被保険者(国民年金加入者)」の数を見ますと、平成25年以降、年々減少していることがわかると思います。
という事は、つまり昨年年金を収めた人の数よりも、今年年金を収めた人の数の方が少ないという事。
国民年金の運用では、毎年4月、その年度が始まる一番最初の月に、前年度に納められた保険料の総額から、「今年納められると予測される保険料の総額」を引き出して、「基礎年金勘定」に繰り入れています。
ですが、その「保険者数」が年々減少していますので、当然「昨年納付された保険料の総額」よりも4月の段階で「今年納付されると予測される保険料の総額」の方が少なくなります。
ですから、当然「国民年金勘定」の中にはそこから引き出されることなく、国民年金勘定に残ったままの金額が発生します。
ところが、「国民年金」は個人が意識的に納めるものですから、中には国民年金を収めようとしない「未納者」もいます。
そのことで基礎年金勘定に繰り入れるための保険料が不足することがありますので、その場合は「年金積立金」の中から不足する分を引き出します。ですが、その保険料は「未納」であり、本来受け取り者のいない保険料ですので、その金額は将来給付されることなく「基礎年金勘定」に蓄積されることになります。
混乱するといきませんので、こちらの図を頭に入れながら考えてみてください。

一方、「厚生年金勘定」を考える場合、先ほどの「公的年金保険者数の推移」を見ていただきますと、厚生年金の保険者の数は年々増えていることがわかります。
ちなみに増加に転じたのは、微増ではありますが平成22年から。遡ると平成19年までは継続して増加しています。保険者数全体で見ますと平成28年から増加に転じていますね。
この事が何を意味するのかと申しますと・・・というより、この点に関しては私も思い込んでいた部分があったのですが、保険者数が減少する国民年金勘定とは異なり、保険者数が増加していますので、「基礎年金勘定」の部分に関しては昨年度末に納付が完了した金額より、今年度に納付が予測される金額の方が多くなってしまいます。
そう。「未納者」の存在にかかわらず、厚生年金勘定では「基礎年金部分に繰り入れ」なければならない金額が不足する仕組みになっているんですね。これは盲点でした。
ですから、必然的に「年金積立金」は切り崩されることになります。
ですが、その「切り崩された」積立金も、「年金積立金」の項目から「基礎年金勘定」の項目に移動するだけで、年金会計全体で考えると当然「納付者」が増えているわけですから、収入全体としては増えていることになりますね。
国民年金勘定と厚生年金勘定の「支出」について
一方の「支出」に関しては、国民年金・厚生年金とも、「基礎年金部分」に関しては「基礎年金勘定」より「期首(4月)に年度を通じて必要となると考えられる給付費」が一体いくらになるのかという事が想定され、これが「基礎年金勘定」より繰り入れられ、それぞれの年金会計で給付に回されています。
冒頭でお伝えした通り、「国民年金勘定」「厚生年金勘定」にそれぞれ繰り入れられている金額は「昭和60年までに受給者となった人」の給付費のみであり、昭和61年以降の「基礎年金」は「基礎年金勘定」より支出されています。
国民年金勘定、厚生年金勘定ではそれぞれ、年度末に受給者が死亡し、給付が必要とならなかった金額が必ず残りますから、これが「積立金」として蓄積されていくことになります。厚生年金会計ではこれ以外に、「厚生年金部分」に関する管理が独自になされていますから、もしそこで給付費が不足するのであれば「積立金」の中から切り崩されることとなります。
このようにしてみていきますと、「国民年金」「厚生年金」はそれぞれ貸借対照表上は支出と収入の間ではバランスしているはずですから、何を見ることが大切なのかと申しますと、結果的に両会計から繰り入れられた金額で運用されている「基礎年金勘定」において一体いくら「積立」もしくは「切り崩し」が発生しているのか。
厚生年金勘定にはそれ以外に独自に運用されている「厚生年金部分」が存在しますから、これが積立金を切り崩すことで運用されているのか、それとも逆に積立金が加算されているのか。
「国民年金」はそもそも積立が減少する要素が「未納分」以外には存在しませんから、では一体いくら積み立てられているのか。
そして、最終的に「積立金」は一体総額でいくらになっているのか。これを所謂「運用益」を加味せずに見てみますと、その全容が見えてくるのではないかと思われます。
という事で、私の時間が来てしまいましたので、次回記事では、この「積立金」の収支推移を見ながら年金運用についての「解明」を行っていきたいと思います。
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<継承する記事>第478回 年金制度に対する私の誤った分析結果を再検証します
前回に引き続き、
「基礎年金給付費」 と 「基礎年金相当給付費他勘定へ繰入及交付金」
の認識について、私の誤った部分を全面的に認めさせていただいた上でその検証を続けさせていただきます。
前々回の
第477回 改めて分析する基礎年金勘定~誤っていた私の分析結果~
という記事から継続しての訂正、及び再検証を目的とした記事です。
また繰り返しになりますが、私の認識の誤りによって影響を受ける記事が少なからず存在しますが、私のブログの方針として、それらの記事を削除することは致しません。
なぜならば、それらの記事を下に何らかの分析をなさった方がいらっしゃるかもしれませんし、あるいはなにがしかの「情報ソース」として掲載なさっていた方もいらっしゃるかもしれないからです。
検証が完了後、極力影響を受ける全ての記事に対し、訂正記事の紹介文を掲載し、できれば誤っている部分に対して赤字で訂正を入れていきたいと思っています。掲載した文章は削除ではなく、訂正線を入れて赤字訂正を行う予定です。
改めて行う「基礎年金勘定」の分析
前回までの記事では、「基礎年金勘定」と各「年金勘定」を合算してグラフ化した次の2枚のグラフ。


を通じて、確かに「国民年金勘定」はこれまでの私の主張より時期こそ遅れているものの、「破綻」とは程遠い状況になりつつあること、加えて「厚生年金勘定」については計算式上、実は赤字となっており、とても「破綻しない」と言い切れるほどの状況ではなかったことをお伝えしました。
ですが、この2枚のグラフを作成する際、その計算式に用いた数字は、私がオリジナルの計算式を用いてはじき出した数字を用いていて、必ずしも「正解」とは言えないことをお示ししました。
その上で最終的にたどり着いた結論として、「基礎年金勘定」「国民年金勘定」「厚生年金勘定」の3つの会計において、「積立金がどのように推移し、減っているのか、増えているのかを検証することが、「年金会計」全体の収支状況を見る上で大切でなのではないか、とする考え方に現在たどりつきました。
ところが、分析を進めていますと、どうも年金の収支状況に関しまして、非常に歪な部分が出てきましたので、そちらをまずは優先して解析していきます。
加えてこの解析の結果、私の認識の誤りをもう1か所訂正する必要が生まれる可能性があることをあらかじめお伝えしておきます。

検証に用いるのはこちらのグラフ。
基礎年金勘定の収支の推移です。このグラフを見て、1か所。正確には2か所、いびつな部分があることがわかるでしょうか?
キーワードとなるのは「東日本大震災」。東日本大震災が勃発したのは2011年3月ですが、その翌年と翌々年。つまり2012年と2013年の「国民・厚生年金会計より繰入」の部分が、明らかに減少しているのがわかりますね?
私がこのブログで取り上げたことはあるはずなのですが、どの記事で取り上げたのか、検証する時間がございませんので、直接この記事で説明いたします。
基礎年金部分国庫負担割合1/3→1/2引き上げの経緯
基礎年金部分は、麻生内閣当時まで1/3を国庫にて負担していたのですが、小泉内閣当時の計画に従い、麻生内閣においてこの国庫負担分を1/3から1/2に引き上げました。
ですので平成21年度(2009年度)からは年金の国庫負担分が1/2となっています。
2019年7月の参院選において、福山哲郎が年金国庫負担を1/3から1/2に引き上げたのは自分たちだ、とのデマを振りまいていましたが、民主党政権が誕生したのは2009年9月の事。
同年の予算は前年に決められますし、民主党政権が誕生した時点で既に「平成21年度(2009年度)」はスタートしていましたから、民主党内閣が2009年度からの基礎年金国庫負担分の増額を決めることは物理的に、時系列的に不可能です。タイムマシンをあいつらが持っていたとしても不可能です。
で、年金国庫負担分を引き上げるという事は、当然新たなる財源を必要とします。自民党では、この財源を平成23年(2011年)分まできちんと確保していました。
制度上は「将来の消費増税分を財源として充てる」ことが記されていたわけですが、自民党はこれに頼らない財源を毎年きちんとねん出していたんですね。
例えば平成23年度(2011年度)の財源は以下の通りです。
・ 財政投融資特別会計財政融資資金勘定の積立金・剰余金(1.1 兆円)
・ 外国為替資金特別会計の剰余金(進行年度分:0.2 兆円)
総額2.5兆円分です。
この金額が、平成23年度(2011年度)末に国民年金勘定、厚生年金勘定へそれぞれ繰り入れられ、平成24年度(2012年度)分の基礎年金部分の財源として充てられることが決められていました。
ところが、2011年3月に勃発したのが東日本大震災。この財源として民主党政権では前記した2.5兆円分の年金の為の財源を復興に回してしまいましたから、当然年金会計全体では2.5兆円分の財源が失われてしまいます。
この事を意識して先ほどの基礎年金勘定の収支推移を見ていただきたいわけですが、2011年度に納められるはずの保険料国庫負担分が納められませんでしたので、2014年度分が「財源不足」に陥ります。
その結果、不足した財源が「国民・厚生」両会計か繰り入れられることはありませんでした。
その結果、両年度は基礎年金勘定としては「赤字」になっています。
では、この事を意識しながら次の「基礎年金勘定積立金」の推移グラフを見てみます。

2011年まで上昇の一途をたどっていた「基礎年金勘定」の積立金(+剰余金)の額が、2012年、2013年と急落していることがわかりますね。これは、不足した基礎年金勘定の給付分を賄うため、基礎年金勘定の「積立金」が削られて支給に回されたことを意味しています。
そして2012年(平成24年)11月に「年金特例国債」が平成24年、25年分と発行されることが決められ、両年に年金特例国債がそれぞれ2.5兆円ずつ発行されています。
ただ、この事を考慮しますと、安倍内閣初年度にも同様に基礎年金勘定の「積立金」が削られている様子が見られますので、この事は別途検証が必要かと思います。
また、これとは別に安倍内閣において2016年度、2017年度も共に基礎年金勘定の「積立金」が削られており、更にその削られる幅が増えていますので、この事も別途検証してみます。
少し前置き記事を含む形となりましたが、次回以降記事では改めて他会計の「積立金」も含めて、全体で年金収支の検証を行ってみます。
年金特例国債の発行額がどのように吸収されているのかという部分も含めて検証してみたいと思います。
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<継承する記事>第479回 年金に対する私の認識の誤りを「基礎年金勘定」から検証
第477回 改めて分析する基礎年金勘定~誤っていた私の分析結果~
第478回 年金制度に対する私の誤った分析結果を再検証します
第479回 年金に対する私の認識の誤りを「基礎年金勘定」から検証
の3つの記事に引き続き、私の年金制度に対する認識の誤りを検証し、また更にではどのように誤っていたのか、終局的な目的として、年金は本当に破綻しないと言い切れるのか。この事を目的とした記事としては第4段目。
今回は「厚生年金勘定」を分析することによって、年金の収支を測定する上での「ノイズ」を一つ取り除いてみたいと思います。
前回の記事では『次回以降記事では他会計の「積立金」も含めて、全体で年金収支の検証を行ってみます。』と記したのですが、もう一つ前置きとして今回の記事を作成しています。
「厚生年金勘定」のノイズ
「国民年金勘定」も「基礎年金勘定」も共に年金制度の1階部分。

上図でいう「国民年金(基礎年金)」部分の会計収支のみを現したものですが、「厚生年金勘定」では、この所謂「1階部分」に加えて「厚生年金部分」。つまり「二階部分」が含まれる特殊な年金勘定です。
厚生年金勘定がそもそも黒字なのか、赤字なのか。この事をきちんと算出するために、まずはこの厚生年金勘定の「ノイズ」である「厚生年金部分」に集中して記事を作成してみます。

参考資料としてまずは厚生年金の「保険料」と「給付費」を私独自の計算方法を用いて比較した資料。上表をご覧ください。
この資料で見る限り、厚生年金を「基礎年金勘定+厚生年金部分」で合算して考えると、厚生年金勘定は「赤字」なのではないかとする推測が容易に成り立ちます。
ただし、このグラフの内、「基礎年金部分」に関しては、厚生年金受給者の内に、「国民年金のみを収めていた期間が含まれる受給者」も含まれていますので、単純にこれを「赤字である」と決めつけるわけにもいきません。
ですが、これを「厚生年金部分」に絞れば、ここには重複する受給者は含まれませんから、純粋に厚生年金収支における「厚生年金部分」が赤字であるか、黒字であるのかという事を図ることができます。
もったいぶることはしません。まずは結論から表示します。

※グラフとしてはまだ「未完成」ですから、転用はしないでください。どのように未完成なのかは後述します。
青が保険料収入。
(厚生年金保険料収入+国庫負担分)-基礎年金勘定へ繰入
という式です。計算式に国庫負担分が含まれていますが、これは「基礎年金勘定」へ全額繰り入れられています。
一方で、緑が給付費。
「厚生年金保険料給付費-基礎年金勘定より繰入」
という式です。つまり、長い間赤字だったという事・・・。
基礎年金勘定より繰り入れられた額がそのまま「基礎年金」として給付されますので、その差額が厚生年金部分となります。ただし、「基礎年金部分」には繰り入れられた後、同期間中に受け取り者がいなくなる部分がございます。
その部分は当然浮いてしまうことになりますが、厚生年金勘定としては一体ですので、給付者がいなくなった部分は厚生年金部分の不足部分に充てられていると考えられます。
ただし、グラフ中ではその「多めに見積もって繰り入れられている繰入分」を保険料全体からマイナスしていますので、「収入」の側は少しだけ少なめに算出されています。
ちなみに、「厚生年金収支」の赤字幅は以下のようになっています。これは第478回の記事 でお示ししましたね。
2007年 -7.18兆
2008年 -7.3兆
2009年 -8.04兆
2010年 -7.84兆
2011年 -7.42兆
2012年 -8.32兆
2013年 -8.28兆
2014年 -6.98兆
2015年 -6.32兆
2016年 -5.72兆
2017年 -5.12兆
では、同じ「厚生年金」の内、「厚生年金部分」の赤字幅はどのように推移しているでしょうか?
2007年 -5.92兆
2008年 -5.63兆
2009年 -6.63兆
2010年 -6.95兆
2011年 -5.70兆
2012年 -4.69兆
2013年 -4.35兆
2014年 -3.67兆
2015年 -2.65兆
2016年 -1.28兆
2017年 -0.54兆
リーマンショックの起きた2008年、翌2009年に赤字幅が大きく膨らんでいますが、その原因は受給額が減ったことではなく、給付費が急増したこと。
理由は現時点では不明です。
赤字幅としては厚生年金勘定全体よりも、厚生年金部分の赤字幅の方が縮小幅が大きく、近々黒字化してもおかしくないような状況にはなっていますね。
まあ・・・今の私の心境としては誤った情報を長年配信し続けた罪悪感でいっぱいです。
もう一つの視点いたしましては、年金の加入者数の推移。
第478回の記事 でお示ししました通り、厚生年金の加入者の数は、平成19(2007)年度まで増加し、20年、21年の2年間減少。
22年より再び増加に転じ、以降現在に至るまで毎年増え続けています。
「基礎年金勘定への繰り入れ」は毎年の期首、つまり4月に、前年3月末時点での年金加入者数から1年間に納付されると考えられる保険料の総額を予測して基礎年金勘定に繰り入れられるものです。
ですが、昨年度の期首の厚生年金加入者よりも昨年度期末の厚生年金加入者の数の方が多くなっているわけですから、昨年度に納付された保険料の総額は、昨年度期末の厚生年金加入者の数から予測される保険料の納付額よりも少なくなってしまいます。(加入者数が減少した2年間は取り除いて考えます)
この事から、当然今年度の期首に厚生年金勘定より引き出される「基礎年金部分」の金額は、昨年に納められた厚生年金の「基礎年金部分」の総額よりも多くなってしまいますので、必然的に前年までの厚生年金勘定の資産を切り崩して支払わざるを得ません。
その財源として平成25(2013年)までは厚生年金勘定の「年金積立金」が切り崩されていました。
ですが、2014年以降は、実は厚生年金勘定では「年金積立金」より1銭たりとも財源を受け入れていません。
つまり、2014年以降は、わざわざ年金積立金を切り崩すことをせずとも「厚生年金加入者が増えることによって不足する『基礎年金勘定へ繰入』るための財源」を単年度会計の中で賄えるようになっている、という事がわかります。
またもう1点。「厚生年金」に「未納者」はいない。私はこれを前提として今まで記事を作成してきましたが、厚生年金にも、支払い義務を負った企業がこれを支払わず、場合によってはそのまま倒産してしまうケースもありますから、当然「未納額」も存在します。
上記グラフには、これらの情報が加味されていませんから、単純にこのグラフだけを配信する事だけはご遠慮願いたいと思います。
更にもう一点。厚生年金勘定において「基礎年金勘定」より受け入れている額は、「昭和60年以前に年金受給者となった人」への支給額ですから、当然毎年減少しています。(私が勘違いをして誤った情報配信を行っていた部分です)
にもかかわらず、毎年国庫負担分を含む保険料収入が毎年増え続けているという事はきちんと評価すべきだと思います。
後は、年金の受給年齢が毎年上がっている事。

上図にある「定額部分」、これが基礎年金部分、「報酬比例部分」、ここが厚生年金部分です。
基礎年金部分に関しては既に受け取り開始年齢の引き上げが終わっていますが厚生年金部分に関してはまだこれから。上図で見る限り、42年までは継続します。
このような状況を考えますと、少なくとも現時点において厚生年金制度の「破綻」を危惧するような状況にはないのではないか、と私は思います。
それでは、次回記事こそ、「積立金」の部分にポイントを絞り、年金制度の新たな解明に向けて、記事を作成していければと思います。
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<継承する記事>第480回 年金に対する私の認識の誤りを「厚生年金勘定」から検証
第477回 改めて分析する基礎年金勘定~誤っていた私の分析結果~
第478回 年金制度に対する私の誤った分析結果を再検証します
第479回 年金に対する私の認識の誤りを「基礎年金勘定」から検証
第480回 年金に対する私の認識の誤りを「厚生年金勘定」から検証
上記4つの記事に続く第5弾目の記事です。
きっかけとなったのは第477回の記事 でお伝えしました通り、私が正しいと信じていた従来の「年金制度の仕組み」が誤っていたという事。
内容は重複しますのでここには記しませんが、その誤り方。どのように誤っていたのか。ではそれを検証したうえで、それでも年金制度は破綻しないと言い切れるのか。この点を検証しようと思いまして、今回のシリーズを作成しています。
一番大きなポイントとしては、国民年金勘定や厚生年金勘定に繰り入れられることなく、「基礎年金勘定」のみで運用されている「基礎年金」が存在したという事。
この部分が仮に国民年金勘定や厚生年金勘定に繰り入れられていたとしたら収支状況はどのようになっていたのかを示したグラフが次の二つ。


国民年金勘定については、2009年まで赤字でしたが、それ以降は黒字になっています。
厚生年金勘定については、赤字幅が狭まってこそいるものの、収支全体としては赤字です。
最新、2017年の収支状況で5.12兆円の赤字です。
ただし、このデータは私の独自の計算方法を用いて作成したものであり、厚生年金勘定については特に本来国民年金勘定に振り分けられるべきものも含まれていることから、データとしては必ずしも正確なものではないことをもお伝えしました。
また次に、「厚生年金勘定」の内、ここから基礎年金部分を全額取り除き、「厚生年金部分」のみをピックアップしてその推移を示したのが次のグラフ。

支出がほぼ増加しておらず、収入のみが増加しているため、収支差額こそ狭まっていますが、最新の2017年の段階でさえ0.54兆円の赤字。一貫して収支差額は赤字であったことがわかります。
ただし、私が作成したグラフとしては、
・「基礎年金部分から繰り入れ」られている部分がその年に亡くなる人の数までは考慮されておらず、「収入」から多めにマイナスされている事
・厚生年金加入者(納付者)の数が期首より期末の方が増えている事
・厚生年金納付者(納付企業)の中にも「未納者」は存在する事。
主にこの3つの理由が加味されていませんので、必ずしも正確な結果を現したものではありません。ですので、このグラフだけを以て、(現時点において)厚生年金部分収支が本当に赤字なのかどうか。これを断言するのは少し急ぎすぎかと思います。
今回の記事では、これらの前提条件を下に、今度は各年金勘定における「年金積立金」の推移を検証することで、では本当に年金会計は全体として危険な状態にあるのかどうか。その部分を検証してみたいと思います。
基礎年金勘定「積立金」から見る年金の財政状況
この部分に関しては第479回の記事 におきまして、記事としては既に取り上げていますね。

こちらが基礎年金勘定の「積立金」の推移です。
「積立金+余剰金」としているのは、積立金にはその年度末時点での金額であり、その年に発生した「余剰金」は含まれていません。ですので、その年の「余剰金」と「積立金」を加えることで、翌年度の期首(4月時点)での各年金会計の正確な余剰資金を算出することができます。この事が理由です。
2011年までは順調に増加していた基礎年金勘定の「積立金」が翌12年、更に13年と減少しているその理由として、第479回の記事 におきまして、「基礎年金の国庫負担分」の引き上げのための財源を民主党内閣で震災復興のための予算として流用してしまったからだとお伝えしたと思います。

こちらがその時にお示しした基礎年金勘定全体の収支状況です。今更ですが、私の年金に関する資料は、基本的に収入は「保険料収入」及び「国庫負担分」、支出は「保険料給付費」のみしか計算に加えていません。
年金収支にはそれ以外の項目もあるのですが、それを入れてしまうと焦点がぼやけてしまい、本当に「年金のシステム」だけでクロが出ているのか、もしくは赤字なのかという部分が見えてきにくいと思いますので、そのような方法をとっています。
ただし、「年金積立金」に関してだけはそのような算出方法が難しいので、すべての項目の収支が合算された結果の数字となっております。
基礎年金勘定の収支を見てみますと、12年、13年の収入が少なくなっていることがわかるともいます。ですので、この不足分が「積立金」をより繰り入れられたものと考えられます。
ただし、その上で更に2016年度、2017年度の基礎年金勘定の収支を見てみますと、2016年で296.87億円、2017年で1105.34億円それぞれ赤字出していて、基礎年金勘定積立金においてもその分マイナスが出ています。
単純に考えますと、基礎年金勘定ではその年に「納付される」ことが予測される金額が全額国民年金及び厚生年金勘定より繰り入れられています。
その年に亡くなった方へは給付がなされませんので、その分「基礎年金勘定」では資金が余ることになるはずなのですが、それでも尚積立金を削らざるを得ない状況であった、という事でしょうか?
2017年度は10月より年金の受給に必要な納付機関が25年から10年に短縮されましたので、これに伴う歳出の増加も原因として考えられますが、2016年に関してはそれでは説明が付きません。
制度として、基礎年金勘定で運用されているのは「昭和61年以降に受給者となった人」のみです。最も高齢の方で92歳を過ぎたあたりでしょうか?
厚生労働省が公表している最新の「簡易生命表」によりますと、男性の25%、女性の50%程度が90歳までは生きているのだそうです。

その割合も年々増えているようですので、この辺りが想定を超えてきたのでしょうか?
これが「基礎年金勘定」の積立金を見た時点での、現時点での私の「予測」です。
国民年金勘定「積立金」から見る年金の財政状況
気を付けていただきたいのは、ここは「未納者」が多い項目で、その分余計に「年金積立金」から切り崩されて運用されている項目だという事です。

動きとしますと、「基礎年金勘定」の積立金の推移とよく似た動き方をしていますね。
ただし、リーマンショックが起きた2008年と、その翌年の2009年を見ますと、順調に積立金が増えていた基礎年金部分とは異なる動きがみられます。
これは、リーマンショックに関連した動向で、「失業者」が増えた事。この事で年金を支払う事の出来ない「未納者」が一気に増えたのではないかと予測されます。
加えて2012年、2013年の落ち込み方も同様ですね。ここもおそらくは国庫負担増加に伴う財源を民主党内閣で年金ではなく震災復興のために使ってしまったことが一つの原因と考えられます。
ただ、震災に伴って失業者が増加し、同時に「未納者」が増えた事もその理由として考えられると思います。
もう一つ、「国民年金加入者」は毎年減少していて、国民年金勘定での「収入」は未納者の増減に関わらず減少していると考えられますので、安倍内閣以降の伸び悩みの理由の一つとして考えられなくはないかと思います。
ただし、「基礎年金勘定」の動向とも一致が見られることから、それ以外になにがしかの理由が考えられるのではないか、とも思います。
厚生年金勘定「積立金」から見る年金の財政状況
さて。回りくどく記事を書いてきましたが、実は私の中である一定の「結論」は出ています。
それが示されているのがこの「厚生年金勘定」における積立金の推移から見えてきます。

本心とすれば、実は2007年以前のデータも欲しいなと思っています。ただ、今の仕事の都合上、中々まとまった時間が取れませんので、現時点でわかっているデータから検証を進めていきます。
いかがでしょうか? このグラフを見ますと、安倍内閣以前と安倍内閣以後の「動向」が非常にわかりやすく見えてきませんか?
「厚生年金勘定」での積立金の推移を見てみますと、2013年を谷として、それ以前とそれ以後で明らかに動向が異なりますね。
2013年までは積立金が切り崩されており、2014年以降は逆に積み足されていることがわかります。
もう一度こちらのグラフをご覧ください。

こちらは厚生年金勘定の内、「厚生年金部分」の推移を示したグラフです。少なくとも見かけ上は「赤字」でしたね?
もちろん、「厚生年金積立金+剰余金推移」のグラフにはこの「厚生年金部分」のデータも含まれています。
では、先ほどの「厚生年金積立金+剰余金推移」のグラフから、「厚生年金部分」を取り除いてみるとどのようになるでしょうか。

これが、「厚生年金積立金」から「厚生年金部分収支」を取り除いた「厚生年金積立金」の推移です。
ややこしいと思われるかもしれませんが、厚生年金全体の「積立金」から、「基礎年金部分以外の厚生年金保険料(+国庫負担分)」を加え、更に「厚生年金部分の給付費」をマイナスしたデータです。
つまり、もし年金制度が「基礎年金部分」だけで運用されていて、厚生年金会計における「2階部分」がなかったとしたら厚生年金勘定はプラスになるのか、マイナスになるのかというデータです。
ご覧の通り、厚生年金会計全体の収支同様基礎年金部分だけの収支も2013年以降プラスで推移していることがわかります。つまり、「厚生年金部分(二階部分)」では確かに年金会計は赤字かもしれませんが、それを差し引いても「厚生年金会計」全体では安倍内閣以降の収支はプラスだってことです。
こんなことを言うと、「厚生年金だけでいえば確かにそうかもしれないけど、年金会計全体ではどうせ赤字なんでしょ?」
という人もいるかもしれません。では、最後に「年金会計」全体の積立金の収支を見てみましょう。
年金勘定「積立金」全体から見る年金の財政状況

いかがでしょうか? 厚生年金勘定の動きと同様、2013年まで減少し、それ以降は増加に転じていることがわかりますね?

こちらは年金積立金総額から「厚生年金部分」を取り除いた動きです。
いうまでもありませんが、当然「年金積立金総額」と全く同じ動きを見せています。
ちなみに、私が示している「年金積立金」にはGPIFによって運用された「運用益」は含まれていません。
最新の2017年のデータで、GPIFの運用を含まない積立金の総額は基礎年金部分まで含めて総額で122兆円ですが、GPIFの運用益をふくめると164兆円です(基礎年金部分は含みません)から、その違いは明らかですね。
ちなみに、安倍内閣がスタートした2013年の私ベースの年金積立金は108.56兆円。最新の2017年が正確には121.77兆円ですから、GPIFの運用に頼らずとも安倍内閣では年金制度全体で12.9兆円の「運用益」を増やしているってことです。GPIFではこれに加えて更に43兆円の利益が生まれているという事です。
5回に渡りまして、非常に回りくどい記事を作成しましたが、これが「結論」です。
もちろん将来にわたって確実に破綻しないかのような私の言い方は決して正しかったとは言えません。これは本当にお詫びしなければならない部分だと思います。
今回の調査で、「第二号被保険者」を増やし、年金会計を安定させていくことがいかに大切な事なのかという事がとてもよくわかりました。そのことは、私の記事にコメントをいただいた さの 様のおっしゃる通りです。
改めまして、私のこれまでの記事を信頼し、ひょっとすると情報ソースとしてご利用いただいたのではないかと思われる皆様に心よりお詫びを申し上げます。
結論としましては、現在の年金の運用方法に従って丁寧に運用していけば、年金制度は決して破綻を過度恐れる必要はないシステムだという事がわかりました。ただし、条件として「第二号被保険者」の数を増やしていくこと。そして安定させていくことが最低条件です。
改めて現在の安倍内閣の政策がいかに正しい政策を実行しているのかという事も実感させられています。
今後、新らしい記事を作成しながら、並行してという事にはなりますが、私の過去の年金に関連した記事で必要な部分を随時修正していきたいと思います。
今後とも、私のブログをどうぞ、よろしくお願いいたします。
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