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この記事のカテゴリー >>「物価」の見方


今回も第363回の記事 同様、カテゴリーとしては 「物価」の見方 としてはいるものの、本日2017年10月15日(日)、来週末10月22日(日)の第48回衆議院総選挙を控え、第363回の記事 を継承する形で2012年12月に成立して以来、4年10か月の「安倍内閣の成果」を今回は「消費者物価指数」の視点から見てみます。

改めての復習ですが、「物価」というと皆さん店頭で並んでいる商品の「売価」をイメージされるかもしれませんが、それは単なる「店頭表示価格」であり、「物価」ではありません。

例えばA店の店頭で10万円のエアコンと20万円のエアコンが並んでいる様子を考えます。

多くの人は、「10万円」も「20万円」もそれぞれエアコンの「物価」だと考えるかもしれません。ですが、それは違います。

A店において10万円のエアコンしか売れなければA店のエアコンの物価は10万円。逆に20万円のエアコンしか売れなければ20万円がA店のエアコンの「物価」です。

つまり、店頭でいくらの値段がついて販売されていようが、実際にその商品が購入されなければ、それは「店頭価格」であって「物価」にはなりません。消費者が購入して初めて「物価」になるのです。

実際にはエアコンは1台しか売れないわけではないでしょうし、ひょっとすると10万円のエアコンが10台、20万円のエアコンが20台、なんていう売れ方をするかもしれません。

この場合は販売された台数を「ウェイト=重要度」と考え、

 {(10万×10)+(20万×20)}÷(10+20)=16万円

となり、この16万円がA店におけるエアコンの「物価」となります。

このような計算方法を「加重平均」と言い、この「加重平均」を繰り返し行うことで最終的な「消費者物価指数」は算出されています。(加重平均の詳細は 第53回の記事 をご覧ください)

ですから、例えば安倍内閣で本当に賃金が伸びず、消費者が安いものしか購入することができていないのであれば、いくら店頭における「店頭売価」が上昇していたとしても、本当にその商品が購入されていなければそれは「物価」としては計上されません。

消費者物価指数が上昇しているということは即ち消費者が店頭で実際に支払った「購入金額」が上昇していることになります。


この「消費者物価指数」の中には、先ほどご説明した、「店頭で実際に購入された金額」が物価として計上されていくわけですが、同じ物価でも、その上昇する理由が国民のお財布事情に関係なく上昇する場合があります。

その代表的なものが「原油」。そして「生鮮食品」です。

原油の相場を決めているのは、日本国内の消費事情ではなく、主に「投機市場」。つまり、日本国内ではなく海外で、原油が「投資対象」として売り買いされた際の相場価格によって原油の値段はきまっていきます。

ですから、いくら日本国民が安い原油を買おうと思っても、海外で販売される原油価格が日本国民が望む金額よりも高く取引されていれば、必然的に「原油」の物価は高くなります。これが日本国内で販売される「ガソリン」や「灯油」、そして原油を原料として生み出される製品の価格に反映されることとなるのです。


「エネルギー」CPIの影響

「消費者物価指数」は、略称で「CPI」と呼ばれます。CPIは大枠で、すべての物価を含んだ「総合」、「生鮮食品」を除いた「コアCPI」、「食料及びエネルギーを除く総合」という2つの「CPI」が存在し、それぞれ「CPI」「コアCPI」「コアコアCPI」と呼ばれています。

「生鮮食品」が除かれるのは、生鮮食品が天候の影響を受けやすく、日本国内の景気動向とは異なる動きをすることが理由です。

そして、安倍内閣や日銀が目指している「物価上昇率」はこの3つのCPIのうち「コアCPI」の2%上昇を目指しているのですが、ここには「エネルギーCPI」が含まれています。前述した通り、エネルギーCPIは日本国内ではなく、「海外」のしかも「投機動向」の影響が反映されることから、いくら日本国内で頑張ったところで、海外で原油価格が大幅に下落したのでは意味がありません。

そこで、生鮮食品に加えてこの「エネルギー価格」を除いた物価動向を示す数字が欲しいところなのですが、今年度がスタートするまで、実はこの「生鮮食品及びエネルギー価格を除く総合」という指標は存在しませんでした。

正確には「日銀版コア」と呼ばれ、2015年11月より日銀によって公表されていた、統計局データとしては存在していませんでした。

代わりに、存在したのが「食料」全体とエネルギーを除く総合=「コアコアCPI」であったのですが、「食料」の中には天候の変動を受けないものも多く存在し、項目の重要度を示す万分率に換算された「ウェイト」は生鮮食品の414/10000に対し、生鮮食品を含まない食料は2209/10000ですから、食料全体のCPIを取り除くことは決して適切ではありません。

このことから、今年度に入って統計局は正式に「日銀版CPI」をこれまでの「コアコアCPI」と同じ位置での掲載を始めました。事実上、「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」が「コアコアCPI」としてのポジションを獲得した形になります。

【消費者物価指数(前年同月比)の推移/2014年1月~2017年8月】
CPI(前年同月比)推移
※少し小さくて見えづらいかもしれませんが、クリックしていただきますと画像は大きくなります。

こちらの画像は、これまで政府・日銀が物価目標としていた「生鮮食品を除く総合」と新しく指標として登場した「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」、そして「ガソリンCPI」の3つを示しています。

ガソリンではなくエネルギー全体で表してもよいかな、とは思ったのですが、電気代等はどちらかというと電気代の自由化の影響で日本国内の事情も反映されていることもありますので、あえて「ガソリンCPI」の動向に絞ってみました。

赤い横線が前年同月比0%、青い縦のラインは「ガソリンCPI」の前年同月比が0%を割り込んでから再び0%を上回るまでの期間を示しています。

グラフは、消費増税が行われた2014年度が始まる直前。2014年1月から最新の2017年8月までの推移を示しています。ガソリンの動向が激しいので、コアCPI、新コアコアCPIは左軸に、ガソリンCPIは右軸に数値を掲載しています。

黄色のラインが「生鮮食品を除く総合」、オレンジのラインが「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」、そしてグリーンのラインが「ガソリンCPI」です。

「前年同月比」の推移を示していますので、グラフが右下がりになっていますと、あたかも前年度より物価が下落しているかのような錯覚に襲われますが、実際には0%赤い横ラインを下回るまでは物価は上昇し続けています。

特に、2014年度に「消費増税」がおこなれて以来、あたかも消費者物価が伸び悩み、むしろ下落し続けているかのような印象を私たちはマスコミ報道等を通じて刷り込まれてはいないでしょうか?

まず第一に、増税が行われた後も、増税年度である2014年7月まで、政府日銀が物価目標としています、「コアCPI」は上昇し続けています。7月から8月、9月にかけて、ガソリンCPIの「前年同月比」が8.7%から2%に急落しますが、それでも「コアCPI」は前年度割れなどしていませんね?

7月の1.6%から1.3%に、「緩やかに下落」しただけです。

この間、「新コアコアCPI」は、増税以来7月に一時的に「1.1%」に物価上昇率が上昇しはしていますが、10月まで「1%の物価上昇率を維持」しています。

そして10月から11月にかけて、ついにガソリンCPIが前年度割れを起こすのですが、これに伴って「物価上昇率」が下落するのは「コアCPI」のみであり、確かに「新コアコアCPI」は11月、一時的に1.0%から0.8%に、2015年3月から4月にかけてさらに0.6%に「物価上昇率が下落」するものの、それ以降「新コアコアCPI」の物価上昇率は上昇し、同年11月には1.3%まで上昇しているのです。

どうもこの「物価上昇率」に関しては、政府日銀が示した「2%の物価上昇」という言葉が独り歩きし、あたかも安倍内閣に入って物価が下落し続けているような錯覚を皆さん起こしているのではないかと思うのですが、けっしてそんなことはない、ということをこのグラフを見ればご理解いただけるのではないでしょうか?

確かに「コアCPI」を見ると2015年7月に0%を付けた後、11月、12月と一時的にプラスに転じはするものの、ガソリンCPIがプラスに転じる2016年12月、その翌2017年1月を迎えるまで前年度割れを続けているのですが、その間も「新コアコアCPI」は上昇し続けていますね?

「物価上昇率」こそ縮小してはいるものの、決して下落などしていないことがわかります。


私たちが本当に問題にしなければならないこと

ただ、私がこのブログで問題にしているのは、2017年3月、ちょうどガソリンCPIが前年同月比20.4%と最高値を記録した月、ついに前年度割れを起こしていることです。

特に2016年度に入って以降、新コアコアCPIは物価上昇率を縮小させ続けているのです。

では、この時肝心の国会は何をやっていたのでしょうか?

そう。「モリカケ問題」です。そして、防衛相の隠ぺい問題。

国会がモリカケ問題でこの世の終わりでもあるかのようにして大騒ぎしている間、安倍内閣が目指す「物価上昇率」のうち、肝心な「新コアコアCPI」はその物価上昇率を縮小させ続けていたのです。

もし、私が野党の立場にいて、本当に安倍内閣を攻撃したいのであれば、私ならこの「新コアコアCPIが急速に縮小していること」をまず槍玉にあげますね。そしてこういいます。

「アベノミクスの『効果』もそろそろ限界に来ているんじゃないですか?」

と。

その方がよほど説得力がありますよね?

そして、さらにこの様に言います。

「アベノミクスも、同じことばかりやっていたのでは長期的にその効果は頭打ちになります。

経済指標がその限界を示しているのですから、今こそ新たなる『経済政策』に手を打つべきではありませんか?」

と。その財源はもちろん

 「国債」

です。

さて、では。安倍内閣は私が主張するようなこの「新たなる経済政策」は何も実施していないのでしょうか?

実はそんなことはありません。

2016年第二次補正


ちゃんと実行しているんですね。
しかも私が言ったように「国債(建設国債)」を2.7兆円発行した上で。

このような経済政策の「効果」はすぐに出るもんじゃありません。ですが、第362回の記事 でお示しした、特に「源泉分所得税」の動向をみるとこれは一目瞭然なのではないでしょうか。

野党の皆さんは、「アベノミクスはもう限界に来ているんです!」と言いながら、このような新たなる経済政策の事は一切話題にせず、必死に「モリカケ暴き」に終始していましたね?

では、もし本当にこのモリカケに専念してこの新たなる経済政策に手を付けなかったら、いったいどうなっていたのでしょうか?

共産党も、元民進=希望の党&立憲民主党も「モリカケは税金の無駄遣いだ!」と言います。

ですが、モリカケに精一杯国会審議の時間を費やし、経済政策に全く手を付けず、結果として税収が2017年度も減収していたとしたら、これは一体どちらが「税金の無駄遣い」なんでしょう。

私は、2016年度の税収が減収に転じた理由の一つとして、一部を除く野党の皆さんが、まったくと言っていいほど本当に日本の国にとって必要な議論を行わず、まともな政策を提示しようとしなかったことに原因があるのではないかと思っています。

特に加計問題に関して言えば、あれはむしろ「国家戦略特区制度」を活用することで、今治市の地域経済を活性化することを目的とした政策です。

財源は今治市が学園都市構想を実現するため、小泉内閣下で実施された「合併特例債」を活用して積み立てた40億円の「合併振興基金」。土地は同じく学園都市構想を実現するために、1983年に造成された土地。残る24億円を今治市が、32億円を愛媛県が、96億円は加計学園自身が拠出しますので、日本国政府にとっては痛くも痒くもありません。

国家予算について審議する場」で、地方である今治市の、しかも民間の大学をつぶすための議論を繰り返していたのがあのモリカケ問題の真相です。

日本の経済を将来に向けて継続して成長させ続けるための議論を行わなければならない場で、まったく逆の議論を審議するためにあれだけの莫大の時間と経費が費やされていたわけです。

もちろん「経済」は政府が手を施さずとも、地方や企業の力だけで自律的に回転していけるに越したことはありません。

ですが、それが足踏みしそうなのであれば間髪入れず、速やかに政府が次の一手を施せる仕組みこそが日本国経済を成長させるために本当に必要な政策です。

「消費者物価指数からみるアベノミクスの成果」。毎月「物価」に関してはもう少し細かい記事を作成しているのですが、今回はあえて基本に立ち戻り、総論としての「物価」に関する記事を作成してみました。

政府を批判することは自由です。ですが、同じ批判をするのでも、誤った情報で誤った批判を行うのではなく、正確な情報で、的確な批判を行うことこそ、これは「野党」だけでなく、私たち一般国民にも求められている姿なのではないでしょうか?


この記事のカテゴリー >>実質賃金と名目賃金


今回のシリーズは2017年9月28日衆議院解散を受けまして、「アベノミクスの成果」を具体的にお示しすることを目的として作成しています。

記事としては、またしてもカテゴリーをまたぎ、第362回の記事 を引き継ぐ形での記事になります。

またこれとは別に、第361回の記事 で「国税庁データ」をベースに、2016年(暦年)1年間を通じた民間給与所得情報を記事にしましたが、これは従業員の数が1名以上の事業所をすべて対象としており、厚労省データと比較して正確性はあるものの、速報性に欠けるデータですので、

 「じゃあ今年度の給与はどうなんだ!」

という声も聞こえてきそうですから、この声にお応えする形で、「常勤雇用者数が5名以下の事業所のデータが含まれていない、正確性に欠ける」で^多ではあるものの、「速報性のあるデータ」として、厚労省データより、2017年8月度の「月間給与所得」に関連した記事を掲載しようとおもいます。


「賃金指数」の推移

賃金指数(総合)

こちらは、「賃金指数」の推移。ボーナスの金額も含んでますので、12月や7月の数字が大きくなっています。

2017年(暦年)に入って、これまで業種別に分かれていた項目が「総合」「一般」「パートタイム」の3項目で掲載されるようになっていますので、さかのぼってみることができる、2015年12月からの数字をグラフ化してみました。

「賃金指数」とは、今年度であれば2015年(暦年)の年間の平均賃金を100として、これに対する増減を指数化したものです。もちろん指数ではなく実額で掲載することもできるのですが、残念ながら実額は一覧では掲載されておらず、集計に膨大な時間を必要としますので、増減の割合に関しては実額と同様に正確に算出されている「賃金指数」で掲載してみました。

パートタイム=非正規、一般労働者=正規、というわけではありませんが、イメージはしやすい分け方だと思います。

賃金指数(きまって支給する給与)

一方こちらは「決まって支給する給与」の推移で、賞与(ボーナス)が含まれないものです。

「賞与」を含む推移でみると、7月の賃金指数は総合で前年比-0.6%、一般労働者で-0.7%となっていますが、これを賞与を含まない賃金指数の推移でみますと、総合は0.5%、と前年の給与所得よりも増加しています。

7月の賞与を含む賃金指数が前年度割れしている理由として、産業全体で7月に支払われた賞与が平均で10万9189円であるのに対して6月に支払われた賞与が17万1278円。

一方2016年7月に支払われた賞与は11万2637円(2017年+3448円)、17万0630円(2017年-648円)となっており、賞与が支払われたタイミングが2016年と2017年との間でずれたことがあげられると思われます。

また、決まって支給される給与を見てみますと、1月の賃金指数が総合で-0.1%、パートタイム労働者で-0.9%と前年割れしていますが、この月を除くときまって支給される給与は全体で14か月、特に「一般労働者」に限定すれば、少なくとも私がグラフに掲載をした期間すべての月で前年同月を上回っていることがわかります。

これは、賞与を含む「総合」でも同様の事が言えますね。

また、賞与を含む「総合」で見れば、特に2017年度(4月)に入って以降、「パートタイム労働者」の賃金が前年同月を大きく上回っていることもわかります。


「実質賃金指数」の推移

「実質賃金指数」は、前章で掲載した「賃金指数」、すなわち「名目賃金指数」を「持ち家の帰属家賃を除く総合」で割ったものです。

実質賃金指数(総合)

実質賃金指数(きまって支給する給与)

さて、いかがでしょう。両グラフとも、赤いラインが「前年同月比0%」を示すラインです。つまり、これを下回っていれば前年割れ、上回っていれば前年オーバーということになります。

2017年(1月)に入ってからの数字を見てみると、いかがでしょうか。両グラフとも、完全に「前年割れ」していますね。

共産党の志位さんや小池さん当たりに餌を与えてしまいそうな数字ですが、私の記事をよく読んでいる賢明な読者の方にはもう想像がついているかもしれませんね。

なぜこんなことになっているのか。答えは簡単です。「分母が『持ち家の帰属家賃を除く消費者物価指数』だから。

特に「きまって支給する給与」の実質賃金の推移をみるととてもよくわかると思います。9月から10月にかけて一気に値を下げていますね?

この時期に何があったのか。そう。

 「原油価格(前年同月比)の上昇」

です。例えば、「実質賃金」の分母から「エネルギー(及び生鮮食品)」を除くとこんな感じになります。

実質賃金(生鮮及びエネルギーを除く)

もちろん、ここまで単純に考えることはできません(エネルギー価格が上昇すれば、それだけ家計には負担になる)。

「実質賃金」とは、「消費者物価指数」が上昇すれば下落し、下落すれば上昇します。当然ですね。「消費者物価指数」は実質賃金の分母なんですから。

本当は、ここから「生鮮食品」を除くことができれば良いのですが、残念ながらそのような政府データはありませんから、生鮮食品の物価変動まで含まれた情報になります。

私がなぜこんなグラフを出したのかというと、理由は二つあります。

最新の2017年8月の実質賃金指数(きまって支給される)は99.8で、前年度、2016年8月よりも0.2ポイント下落しています。

一方、2017年8月の持ち家の帰属家賃を除く消費者物価指数は100.5で、2016年8月よりも0.8上回っています。
生鮮食品も0.8ポイント、エネルギーに関してはなんと7.0ポイントも前年同月を上回っています。

消費者物価指数が上昇すると実質賃金が下落するのは、賃金が同じでも、物価が上昇することによって購入できる物品の量が減少することに由来します。

つまり、生鮮食品やエネルギー(ウェイト⦅重要度⦆は両方合わせて1198)がこれだけ上昇しているわけですから、今年は昨年と比較すると、「消費」は起こしにくい状況にあったはずです。

逆に言えば、昨年の方が今年に比べて消費は起こしやすかった=実質賃金は多かったはずなのです。

ところが、先ほどのグラフの様に、実質賃金の分母である消費者物価指数から「生鮮食費」と「エネルギー」を除外して考えると、なんと実質賃金は前年同月よりも0.4ポイントも増加してしまっています。

つまり、「生鮮食品」と「エネルギー」が上昇し、消費者物価指数全体が上昇したため、本来であれば消費は抑圧される=実質賃金は下落するはずなのに、逆に生鮮食品及びエネルギー以外に割くことが可能な賃金の量は増えているわけです。

「生鮮食品及びエネルギー以外の物価が下落したんじゃないか」という声が聞こえてきそうですが、「生鮮食品及びエネルギーを除く消費者物価指数」は前年同月比で0.2%増加しています。

もちろんこの中には「持ち家の帰属家賃」が含まれていますから、これを除くとどうなのか、という声も聞こえてきそうですが、持ち家の帰属家賃は前年同月比で-0.2%。「生鮮食品及びエネルギーを除く消費者物価指数」と同じ絶対値です。

「生鮮食品及びエネルギーを除く消費者物価指数」のウェイトは8802、持ち家の帰属家賃のウェイトは1499ですから、いくら持ち家の帰属家賃のウェイトが大きいからと言って、それ単独で「生鮮食品及びエネルギーを除く消費者物価指数」の増加分を相殺することはできません。

つまり、「生鮮食品やエネルギーの物価が上昇」し、本来であれば国民の消費は圧迫され、生鮮食品及びエネルギー以外の実質賃金は減少しなければならないのに、逆に生鮮食品及びエネルギーを除外した実質賃金は増加しているということになります。


また、先ほどのグラフを掲載した二つ目の理由として、「エネルギー」は日本国内ではなく、むしろ「海外の需要の影響」を大きく受けるものであり、「生鮮食品」は「天候の変動の影響」を大きく受けるものです。

つまり、どちらも「アベノミクス」の失敗や成功の影響で増えたり減ったりするものではない、ということ。

実際に共産党の志位さんや小池さんがこの「実質賃金の下落」を「アベノミクスの失敗」の根拠としてあげるシーンを良く見かけますが、彼らは自分たちにとって都合の悪い情報には一切見向きもしていないということです。

「実質賃金」の側面から見ても、アベノミクスは非常に好調である。このことを立派に証明することができました。

次回記事では、続きまして今回話題にした「消費者物価指数」の側面からアベノミクスを検証してみたいと思います。


この記事のカテゴリー >>日本の税収の見方


記事としては、カテゴリー「税収の見方」 の一記事であり、先月掲載した 2017年7月分税収記事 を引き継ぐものとなっているわけですが、何しろ今月(2017年10月)は衆議院解散総選挙の月となっております。

ですので、今回の記事は「アベノミクスの成果」を掲載する意味合いも含まれており、

 第361回 2016年版民間給与統計(国税庁Ver.)が公表されました

の内容も引き継ぐ記事としたいと思います。

第361回の記事 では、厚労省データと比較してより詳細な民間給与所得情報である2016年(暦年)の「国税庁データ」が先月9月に公表されたことを受け、「給与所得者数」「一人当たり平均年間給与」「給与所得者総合の年間給与総額」の3つの面から「アベノミクスの成果」としての民間給与所得情報を解析してみました。

今回はその後。2017年度に入ってからの給与所得状況を「税収」の側面から解析してみたいと思います。
また、併せてその他の「税収」に関連した情報も掲載いたします。


2017(平成29)年度8月分税収

2017年8月税収
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【2017(平成29)年度8月分税収】※(  )内は前年同月比です。
所得税全体 8月分 1.32兆(112.3%) 累計 6.93兆(106.2%)

 源泉分 8月分 1.29兆(112.5%) 累計 6.45兆(106.8%)
 申告分 8月分 0.02兆(103.3%) 累計 0.48兆(99.2%)

法人税 8月分 0.63兆(169.4%) 累計 0.49兆(370.3%)

消費税 8月分 1,78兆(101.6%) 累計 3.18兆(98.9%)

一般会計全体 8月分 4.56兆(111.0%) 累計 13.62兆(105.8%)


【法人税評】

おさらいですが、法人税の申告期限は「事業年度終了の日の翌月から2か月以内」となっています。

今回掲載しているのは8月の税収ですので、仮に8月決算の企業があったとしても、その申告は10月に行われるものが多くなると推察されます。

その上で、8月の法人税収を見てみると、8月単月での税収が6300億円。累計で4900億円となっています。

単月の数字よりも累計の方が少なくなっているのは、7月までの数字がマイナスだったから。つまり納付される額よりも還付される額の方が多かったから、ということになります。

納税する側の気持ちから考えると、決算状況が苦しければ、税金の支払いは先に延ばして、その額で他の支払いに回そうとする心理が働くのではないかと考えられます。このことを考えると、8月単月での納税額が前年度比で169%オーバーということは、8月決算の企業が10月に納税するはずの税収に関してもある程度期待ができるのではないでしょうか。


【所得税評】

今回の本丸はここですね。

「所得税」でも特に「源泉分」の所得税に対する評価です。

他の税制度と異なり、源泉分の所得税納税申告期限は「翌月10月」がその申告期限とされており、「源泉分」ですから、この税金は企業が一般の従業員に対して支払った給与から源泉徴収されたものです。

ということは、ここの金額は2017年7月に企業が従業員に対して支払った給与総額がそのまま反映されているということ。「所得税」や「消費税」、または「申告分所得税」と比較しても、この時点での源泉分所得税の納税額は、直近の日本の景気状況を最も反映したものである、ということができるのではないでしょうか。

その額が、 8月単月で1.29兆で前年同月比112.5%、累計でも6.45兆で前年同月比106.8%増しとなっており、少なくとも企業活動がより活発になっていることをきれいに反映していると考えることができます。

また、「源泉所得税」が増えているということは、考えられる状況は3つ。

 1.「給与所得者の数」が増えた
 2.「一人当たりの平均給与所得」が増えた
 3.「1」と「2」の両方が増えた

この3つのどれかです。源泉所得税は、4月分が前年度からマイナスされているため、現時点では累計で106.8%となっていますが、

5月分前年同月比 111%
6月分前年同月比 112.3%
7月分前年同月比 103.1%
8月分前年同月比 112.3%

となっており、その好調さがとてもよく反映されています。

第361回の記事 におきまして、昨年(2016年:暦年)の「給与所得者」と「平均給与所得」がともに上昇していることから、「高齢者の現役引退」は安倍内閣における雇用状況の改善を批判する材料とはならないことを示しましたが、本年8月分の状況からみても、その状況は今年も継続していることがとてもよくわかります。

とはいえ、年度ベースでは昨年度の源泉徴収分は前年度を割り込みましたから、それを100%否定するものとはならないのかもしれません。


【消費税評】

先月はここを「本命」として記事を作成しました。

「消費税」は「前年度の納税額」を参考に納税されますから、今年度の納税額は、2018年3月を迎え、さらに4月分、5月分のデータが出てくるまでは必ずしも今年度の消費状況を反映したものとはなりえません。

ですが、消費税はあくまで「消費されたもの」に対して加算される税制度であり、消費税納税額の推移をみることは、その「消費状況」を見るデータとしては役に立つものです。

そして、今年度の消費税納税額は「昨年度」の消費納税額を反映したものですから、つまり今年度納税された消費税額を見れば、昨年度の国内の消費状況をうかがうことができます。

このことを念頭において今月の消費納税額を見ますと、

8月単月で8月分1,78兆(前年度比101.6%)。累計で3.18兆(前年度比98.9%)となっています。

消費税納税額が累計で前年度割れを起こしているのは6月まで消費税納税額がマイナス計上(還付)されていたことが理由です。プラス計上が始まったのは7月からで、

 7月分前年同月比 105.2%
 8月分前年同月比 101.6%

となっていますから、少なくとも昨年度がスタートした当初消費状況は悲観するほど悪かったわけではなかったと考えることができます。消費税の申告期限も、前年度の納税額によって異なるとは言うものの、基本的に申告月より2か月以内となっていますから、7月分は昨年の5月分、8月分は6月分の消費状況を反映していると考えることができます。


【一般会計税収評】

さて。それでは最後に「一般会計税収」全体に対する評価について。

単月では前年度比111%、累計で105.8%となっていますから、税収全体としても非常に好調であることがわかります。
一般会計税収全体も4月はマイナスから入り、6月までは消費税と法人税両方のマイナス分の影響を、7月は法人税単独でのマイナス分の影響を受けています。

そのうえで、各々単月の前年度比は

 5月 96.9%
 6月 104.6%
 7月 106.1%
 8月 111.0%

となっています。8月累計の前年度比は105.8で金額は13.62兆円となっています。

予算ベースで考えますと、一般会計税収全体の前年度比は104.0%で組んでいますから、8月の時点で1.8%予算を上回っていることになります。

金額で考えると2318億円の「上振れ」です。

「源泉分所得税納税額」の推移から考えると、今年度の消費状況も、昨年度と比較すると「大幅に」改善するのではないか、と考えられます。

さて。これはあくまで私の「推測」にすぎませんが、今年度の「税収」は一体どうなるんでしょうか。現時点でも非常にワクワクさせられる数字です。


さて、いかがだったでしょうか。「税収」って、確かにタイムラグの発生する数字で、期間が終了するまでは正確性に欠ける数字でもあります。ですが、他の経済指標と異なり、あくまでも「実数」ですから、税収の持つ「意味」さえきちんと理解していれば、より実態に近い状況が反映されています。

この数字をもとに「アベノミクスの成果」を考えますと。特に今年度の数字はいよいよその大成功を予感させるものとなっているように思えてなりません。

今回の記事では、「源泉分所得税」の推移を参考に、「給与所得者数×平均給与所得」の総額の推移を見てみました。
ですが、これでもまだ、「単に給与所得者の数は増えたかもしれないが、給与は減っているんじゃないか」とか、逆に「一人当たりの給与は増えているが、格差が広がっているんじゃないか」といった意見を言う人がいるかもししれません。

次回の記事では、では「給与所得者数の推移」や「平均給与所得」は一体どうなっているのか。

第361回の記事 では「国税庁データ」ベースで昨年(暦年)の給与所得状況を分析しましたが、次回記事では厚労省データより、あくまでも「速報」レベルではありますが、今年度の給与所得状況について記事にしたいと思います。


この記事のカテゴリー >>実質賃金と名目賃金


本日は2017年10月。ですので、今更2016年の民間給与統計?、と思う方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、実はこの情報は最新情報だったりします。

昨年はこの情報を 第175回の記事 で掲載しました。

タイトルをご覧いただくとわかると思うのですが、「民間給与所得」を公表している政府機関は実は2カ所。

一つは厚生労働省。もう一つは国税庁です。

厚労省のデータは毎月公表されていまして、最新だと2017年7月の確報まで公表されています。

ですが、今回スポットを当てたいのは厚労省データではなく国税庁データ。国税庁データは年に1度、毎年9月に公表されています。

今回このタイトルでの記事を作成したのは、つまり、2016年のデータが先月、9月末に公表されたからです。


民間給与所得、厚労省データと国税庁データの違い

まずは復習です。同じ給与所得のデータでありながら、なぜ厚労省データと国税庁データが二つ存在するのか。

これは、第43回の記事 で一度ご説明しました。

賃金違い

この情報は、人事院のホームページ に掲載されています。

最大の違いは、その調査対象が、厚労省のデータは「常用労働者」の人数が「5人以上」いる事業所に限られていることに対して、国税庁データは常用雇用者であるか非常勤であるかに関係なく、「従業員」の人数が「1人以上」いる事業所をその対象としていることにあります。

わかりやすく言いますと、「速報性」を重視しているのが「厚労省データ」であり、その「正確性」を重視しているのが「国税庁データ」だということになります。


2016年給与所得者数の推移

給与所得者数2016(国税庁Ver)

国税庁データは、年間を通じたデータですから、「1年間を通じて働いた給与所得者」というデータが存在します。2016年12月末時点での給与所得者数です。

給与所得者の増加数だけを見ると、消費増税年度である2014年から翌2015年よりも、2015年から2016年にかけての増加数の方が多いことがわかりますね。

安倍内閣スタート前の2012年と比較すると、実に300万人を超える「年間を通じて働いた給与所得者」の数が増えていることがわかります。


2016年平均給与所得の推移

平均給与2016(国税庁Ver)

こちらは年間を通じて働いた給与所得者が受け取った、一人当たりの「平均給与所得」の総額です。月間ではなく年間の給与所得。単位を掲載し忘れていますが、単位は「千円」。ですから2016年の年間平均給与は421万6千円。

増加幅で見ると増税年度であった2014年から2015年の増加額が4万4千円であるのに対して、2015年から16年の増加額は1万2千円。増加幅が縮小しているようにも見えますが、2014年が増税年度であり、企業も支出を抑制していた可能性がありますから、その分2015年の増加幅は大きくなったのではないかとも考えられます。


2016年年間給与総額の推移

年間給与総額2016(国税庁Ver)

こちらのグラフは、すべての給与所得者が年間を通じて受け取った給与所得の総額を示したものです。

こうしてみると、もちろん2011年に発生した東日本大震災の影響がある、とはいうものの、2012年の給与所得総額の落ち込みがいかに激しいかがわかります。

一方2015年~2016年にかけては、特に給与所得者数の上昇幅が大きかったこともあり、2014年から2015年にかけての1.7兆円を上回り、実に3兆円を超える給与所得が2015年よりも上乗せして給与所得者に対して支払われていることがわかります。

安倍内閣誕生前の2012年と比較すると、実に17兆円の給与が上乗せして給与所得者に対して支払われていることになります。

年度ではなく、暦年ベースで見ますと、2016年の名目GDPは537.06兆円。2012年の名目GDPは494.95兆円でGDP全体で37兆円を超える伸び率を示していますが、このうち17兆円が企業から従業員に対して支払われた給与であることになります。

これが、「安倍内閣の成果」です。

よく野党の皆さんやアベノミクスに否定的な皆さんが安倍内閣における「給与所得」や「労働者数」の増加、そして「求人率」や「雇用率」の増加を批判する際、

 「高齢者が定年で退職したため、労働者の数が不足し、結果としてこれらの数字が増えているのだ」

という主張を行うシーンを良く見かけます。

ですが、高齢者が退職したことが雇用状況の『見かけ上の改善』に影響しているというのなら、少なくとも「労働者数(給与所得者数)」は減少していなければつじつまが合いません。

アベノミクスの結果として、高齢者が退職する数以上に現役の給与所得者数の数が増え、かつその年間の平均給与所得も増加している。これが「アベノミクス」がもたらした「成果」です。

本日は2017年10月5日。巷では「希望の党」なる政党が名を馳せ、代表である小池百合子氏を筆頭にアベノミクスがあたかも失敗であったかのように吹聴するシーンをよく見かけます。

「でもそれは2016年までの話で、今年は・・・」

という声が聞こえてきそうですが。実は今月冒頭には「2017年8月度税収」が公表されており、ここには2017年度に入って私たち国民が受け取る「給与所得」がさらに上昇している様子がはっきりと示されています。

次回記事では、この2017年8月度税収をベースに、記事を作成したいと思います。


この記事のカテゴリー >>日本の税収の見方


<継承する記事>
第359回 60年償還ルールで財政が破綻しない理由

前回の記事はカテゴリーを 日本国債の問題 とし、今回は 日本の税収の見方 としていますので、連続性が失われていますが、 政府データ(経済指標の見方) から見ていただきますと、連続した記事としてご覧いただくことができます。

前回の記事では、今回の記事、「それでも消費増税を行わなければならない理由」を記す前提条件として、あくまでの日本国債はまず破綻することはありませんよ、と、この理由を「60年償還ルール」を用いることで解説させていただきました。

で、今回の記事は「それでも消費増税を行わなければならない理由」。

このタイトルって、現在のコアな安倍内閣支持者からは袋叩きに合いそうなタイトルなんですが、私は このブログを始める前に作成していたブログ の時代から、一貫して消費増税の必要性は主張してきました。

ですが、そもそも旧ブログを作成した当時の私は、10%増税を前提として、私たち一般国民が強いられる負担は15兆円、GDPを500兆円と考えると、ちょうど3%分の増税額となることから、「民間給与所得を平均で3%増加させること」を増税の条件として掲載していました。もちろん名目です。

麻生さんは、麻生内閣当時、さらにこの名目3%成長を3年間、同時に実質2%、物価上昇率1%成長を3年間連続で果たすことを明確な条件として提示していました。

「景気回復に全治3年。私たちは3年間経済成長をさせることに専念しますので、これを達成した暁には増税させてください」

という、国民としても非常にわかりやすい形でした。ですが、麻生内閣は2009年8月、たった1年で倒閣してしまい、民主党鳩山内閣が誕生。以後2012年12月までの地獄の3年数か月がスタートしました。

この間、民主党政権は麻生内閣当時に実施された経済政策以外、何一つとして明確な経済成長戦略を実施せず、結果として超円高の大不景気が日本全土を覆った・・・というのがあの時の状況でした。

麻生さんは2008年を含めた3年間、景気回復に向けた集中的な経済政策に専念し、3年連続で経済成長を果たした後、速やかに消費増税の議論に入る、としたのです。
(※枠内は長文になりますので、最初は読み飛ばしてください)

【所得税法等の一部を改正する法律(平成21年法律第13号)(抄)】

附則
(税制の抜本的な改革に係る措置)

第104条
政府は、基礎年金の国庫負担割合の2分の1への引上げのための財源措置並びに年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する費用の見通しを踏まえつつ、平成20年度を含む3年以内の景気回復に向けた集中的な取組により経済状況を好転させることを前提として、遅滞なく、かつ、段階的に消費税を含む税制の抜本的な改革を行うため、平成23年度までに必要な法制上の措置を講ずるものとする。

この場合において、当該改革は、2010年代(平成22年から平成31年までの期間をいう。)の半ばまでに持続可能な財政構造を確立することを旨とするものとする。


前項の改革を具体的に実施するための施行期日等を法制上定めるに当たっては、景気回復過程の状況、国際経済の動向等を見極め、予測せざる経済変動にも柔軟に対応できる仕組みとするものとし、当該改革は、不断に行政改革を推進すること及び歳出の無駄の排除を徹底することに一段と注力して行われるものとする。


第1項の措置は、次に定める基本的方向性により検討を加え、その結果に基づいて講じられるものとする。

個人所得課税については、格差の是正及び所得再配分機能の回復の観点から、各種控除及び税率構造を見直し、最高税率及び給与所得控除の上限の調整等により高所得者の税負担を引き上げるとともに、給付付き税額控除(給付と税額控除を適切に組み合わせて行う仕組みその他これに準ずるものをいう。)の検討を含む歳出面も合わせた総合的な取組の中で子育て等に配
慮して中低所得者世帯の負担の軽減を検討すること並びに金融所得課税の一体化を更に推進すること。

法人課税については、国際的整合性の確保及び国際競争力の強化の観点から、社会保険料を含む企業の実質的な負担に留意しつつ、課税ベース(課税標準とされるべきものの範囲をいう。第5号において同じ。)の拡大とともに、法人の実効税率の引下げを検討すること。

消費課税については、その負担が確実に国民に還元されることを明らかにする観点から、消費税の全額が制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する費用に充てられることが予算及び決算において明確化されることを前提に、消費税の税率を検討すること。その際、歳出面も合わせた視点に立って複数税率の検討等の総合的な取組を行うことにより低所得者への配慮について検討すること。

自動車関係諸税については、簡素化を図るとともに、厳しい財政事情、環境に与える影響等を踏まえつつ、税制の在り方及び暫定税率(租税特別措置法及び地方税法(昭和25年法律第226号)附則に基づく特例による税率をいう。)を含む税率の在り方を総合的に見直し、負担の軽減を検討すること。

資産課税については、格差の固定化の防止、老後における扶養の社会化の進展への対処等の観点から、相続税の課税ベース、税率構造等を見直し、負担の適正化を検討すること。

納税者番号制度の導入の準備を含め、納税者の利便の向上及び課税の適正化を図ること。

地方税制については、地方分権の推進及び国と地方を通じた社会保障制度の安定財源の確保の観点から、地方消費税の充実を検討するとともに、地方法人課税の在り方を見直すことにより、税源の偏在性が小さく、税収が安定的な地方税体系の構築を進めること。

低炭素化を促進する観点から、税制全体のグリーン化(環境への負荷の低減に資するための
見直しをいう。)を推進すること。

これが、麻生内閣において取り決められた消費増税法である、「附則104条」と呼ばれるものです。

ただ、結果的に民主党内閣では何一つとして「景気回復に向けた集中的な取組」は行われれず、「経済状況を好転させること」はありませんでした。

ですが、にも関わらず2012年8月に民主党内閣下における消費増税法が成立し、ここに「景気付帯条項第18条第3項」があるにも関わらず、2013年(平成25年)10月、安倍内閣において増税が決定し、翌年2014年4月に消費増税が実施されました。
(※枠内は長文になりますので、最初は読み飛ばしてください)

【景気付帯条項第18条】
第18条 消費税率の引上げに当たっては、経済状況を好転させることを条件として実施するため、物価が持続的に下落する状況からの脱却及び経済の活性化に向けて、平成23年度から平成32年度までの平均において名目の経済成長率で3パーセント程度かつ実質の経済成長率で2パーセント程度を目指した望ましい経済成長の在り方に早期に近づけるための総合的な施策の実施その他の必要な措置を講ずる。

2 税制の抜本的な改革の実施等により、財政による機動的対応が可能となる中で、我が国経済の需要と供給の状況、消費税率の引上げによる経済への影響等を踏まえ、成長戦略並びに事前防災及び減災等に資する分野に資金を重点的に配分することなど、我が国経済の成長等に向けた施策を検討する。

3 この法律の公布後、消費税率の引上げに当たっての経済状況の判断を行うとともに、経済財政状況の激変にも柔軟に対応する観点から、第2条及び第3条に規定する消費税率の引上げに係る改正規定のそれぞれの施行前に、経済状況の好転について、名目及び実質の経済成長率、物価動向等、種々の経済指標を確認し、前二項の措置を踏まえつつ、経済況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ず等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる。

そもそも「消費増税」が大バッシングを受けたのはこの時のことです。


そもそもなぜ「消費増税」が必要とされるのか?


私のブログではすでに説明済みですが、これは福田内閣~麻生内閣にかけて行われた「社会保障国民会議」によって話し合われた内容がルーツとなっています。

社会保障国民会議

この会議を通じて

「2025年には、「医療・介護」にかかる医療費が、凡そ15兆円ほど、2008年当時の状況より増額する」

ことが試算されました。このための財源として、

「景気の良し悪しに左右されにくく、毎年安定して一定の税収が期待できる財源」

である「消費税」にスポットが当てられたのです。


※厚労省ホームページより一般会計税収推移

上図は、一般会計税収の総額、および三大税収である所得税、法人税、消費税の動きを示したものです。
見ていただくとわかると思いますが、所得税や法人税は「リーマンショック」などの経済危機に見舞われると大幅に税収を落としていますが、消費税だけはそう大きな増減はなく、ほぼ横ばいで一定の税収を確保していることがわかると思います。

赤いラインはそれぞれ増税のタイミングを示していますが、3%→5%、5%→8%に引き上げたとき、それぞれ消費税収が大幅に上昇していることがわかります。

「消費税」とは、そもそも景気がよかろうが悪かろうが、必ず消費されるものに対して課税されることがその税収が安定している最大の理由で、税率を引き上げれば引き上げただけ税収が上昇している理由でもあります。

「社会保障」は特に、景気がよかろうが悪かろうが、必ず必要となってくる「経費」です。景気が悪くなったから医療費は自己負担してください・・・というわけにはいかないのが「社会保障」です。

そこで、景気の変動を受けにくい税収として「消費税」にスポットが当てられたわけです。


「消費増税」はなぜ批判されるのか

消費増税が批判される理由として、よく言われるのが、「消費増税を行えば、国民の生活に負担をかけ、かえって消費を冷え込ませる」という内容です。

この根拠としてよく用いられるのが、先ほどの一般会計税収の推移を示したグラフで、1997年(平成9年)に行われた、いわゆる「橋本増税」です。

もう一度同じグラフを掲載します。
一般会計税収推移

見ていただきたいのは、「一般会計税収」総額の推移です。

5%増税が行われる前。1996年の税収は52.1兆円。増税年である1997年は53.9%と、唯一増税前の税収を上回るのですが、翌1998年が49.4兆円、その翌年が47.2兆円。

安倍内閣において増税が行われた2014年に至るまでの間で最も税収が多かったのが第一次安倍内閣当時(2007年)の51兆円で、増税年以降、増税前の1996年の一般会計税収を上回った年度が1年もない(増税年は除く)のです。

つまり、1997年に増税し、消費税収が増えたのは良いが、税収全体を見ると却って増税前を下回っており、増税は失敗だったのではないか・・・というのが消費増税が批判される最大の理由です。


税収が減退したのは本当に消費増税が原因だったのか?

勘違いをしていただきたくないのですが、私自身、8%増税が行われる前は、「私たちの所得が増税による物価上昇幅を上回るまでは消費増税を行うべきではない」と主張していましたし、前章で記した「消費増税を行うべきではない理由」は、実は私は誰かの情報を見て気づいたわけではなく、私自身が自ら発見しました。

もちろん私が発見する以前にもこのことに気づいていた人はいたでしょうが、私は旧ブログにこの情報を掲載していて、少なくともその記事を掲載する前にネット上でこの情報を投稿していたとはいなかったのではないかと思います。(リンクを張ろうと思ったのですが、記事数が多く見つけられませんでした)

つまり、橋本増税以降、一般会計税収が増税前を上回ったことが一度もない、という情報の発信元は私だったのではないか・・・とすら考えているわけです。(思い上がりだと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、私の気持ちの問題なのでご容赦ください)

私が言いたいのは、私は元々「私たちの所得が増税による物価上昇幅を上回る前の消費増税」には反対していた人間だということです。

ですが、「消費増税」を批判するのであれば、公平な情報に基づいて、偽りではなく正確な情報を用いて批判するべきだと私は考えています。

例えば、橋本増税において「税収が減退した」ことを私は記していますが、これが本当に橋本増税のせいだったのかというと、これにはいささか疑問があります。というのも、第14回の記事 にて掲載しましたように、橋本増税が行われた年も、7月までは順調に経済は成長しており、同年7月に「アジア通貨危機」が勃発したため橋本内閣までの日本が抱えていた課題が一気に噴出した、というのがその後の税収減退の理由としては正しいのではないかと考えているからです。

もちろん旧ブログに前章の情報を掲載した時にはそのことには気づいていませんでしたから、一方的に橋本増税悪玉論を私自身掲げていましたが、それは必ずしも正しい意見ではなかった、と現時点では思っています。


8%増税によって本当に日本国内の「消費」は減退したのか?

安倍内閣において行われた消費増税により、「景気に水を差した」とする主張を行う人を良く見かけます。
その理由として、「消費者物価指数」の減退が掲げられています。

消費者物価指数2013年~2017年8月

安倍内閣が目指す消費者物価指数は本来「生鮮食品を除く総合=コアCPI」なのですが、上図ではあえて「総合」と「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」を掲載しています。

期間は安倍内閣が誕生した2012年12月~最新の2017年8月までを掲載しています。消費増税に伴う物価上昇がおおよそ1.7%に相当しますから、これを除外した数字で示しています。

この数字が、安倍内閣では2%を目指しているわけですが、これが増税年度である2014年5月に達成するものの、これ以降下落を続け、翌15年9月には0%、1月には前年度割れ。2月にふたたびプラスに戻りはするものの、3月の0%以降2016年10月まで前年度割れを継続するわけです。

もちろん私は赤いライン=総合の話をしています。

ですが、青いライン=「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」を見てみますと、少し違った状況が見受けられますね?

このグラフは、あくまでも「前年同月比」を示していますので、0%を上回れば物価は上昇し続けていることを示しているので、そこだけは勘違いなされないようにしてほしいのですが、この「前年同月比」のうち、赤いライン=「総合」が見かけ上急落し始める2014年6月以降も、「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」は横ばい、もしくは上昇を続け、特に2015年度、11月までは総合が下落する中で「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」は上昇していることがわかります。

この理由として、シリーズ「「物価」の見方」の中で、海外で急落し始めた「原油相場」が最大の原因であり、これを除けば物価は継続的に上昇し続けていたこと。

これ以外に「持ち家の帰属家賃」や「家電製品の店頭売価」が物価を下落させている要因であることを具体的な数字とともにお示しし続けました

その上で昨年度末、「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」が昨対0%、3月にはマイナスをつけたことを受け、「新たなる経済対策が必要なんじゃないでしょうか」、と訴えたわけです。モリカケでわちゃわちゃやってる暇はないでしょう、と。

もちろん消費増税の影響がなかったとか、そういうことを言いたいわけではありません。ですが、消費増税によって本当に「消費」が減ったのかどうか。「減った」という人たちに対して私は「そうではないでしょう?」という記事を作り続けていました。

「批判を行うのなら、公平に行いましょう」と私が言っているのはすなわちそういうことです。


それでも消費増税を行わなければならない理由

では、8%増税は行うべきだったのでしょうか、それともやめるべきだったのでしょうか?

再来年には10%に引き上げられるわけなのですが、これは取りやめるべきなのでしょうか、それとも実施するべきなのでしょうか。それとも、「5%に戻すべき」なのでしょうか?

増税をやめるべきだ、または増税前の状態に戻すべきだ、とする立場の人たちはこのように主張します。「増税よりも、経済成長戦略に専念すれば、経済成長によって新たなる税収が生れるはずだ」と。

ですが、そもそも「消費税」は「社会保障のための財源」として本来充てられるべき税金です。経済成長によって、確かに税収は増えるかもしれません。ですが、逆もまたあり得るわけです。現在はアベノミクスの効果もあり、経済は順調に成長し続けているわけですが、例えば「リーマンショック級の経済危機」が訪れたとしたらどうでしょうか?

民主党時代の2012年から安倍内閣が誕生した2013年にかけて、消費増税を行う前であったにもかかわらず、税収は3兆円増加しています。ですが、これはあくまでもそれまでの経済政策がダメすぎたことと、そして増税前の「駆け込み需要」があったこと。を忘れてはならないと思います。

ではもし「そうではない状況」が生れたとき、その財源は一体どこから捻出するのでしょうか。不足するのであれば、その方法は一つしかありません。「国債」を発行して財源を賄うという方法です。


「日本国債の信認」と「労働する意欲」

はっきりといえば、社会保障の財源が不足するのであれば、バンバン国債を発行して銀行に購入させることで消費増税どころか、消費税を全額撤廃したとしてもその社会保障費を完全に賄うことができます。

既に掲載している通り、「60年償還ルール」を利用して運用すれば、元本次第で「国債発行残高総額」は増加しますが、この増加額には限度があります。仮に毎年60兆円ずつ国債を発行したとしても、80兆円ずつ国債を発行したとしても、60年経過すれば頭打ちになり、ある一定額以上は上昇しなくなります。

これは、第359回の記事 で解説した通りです。

もしそれでも、なにがしかの理由で日本国債が破綻するというのであれば、最終的に日本国政府が55%の最大株主である日銀が日銀券を発行し、日本国債を全額買い取り、日本国政府と日銀の会計帳簿を連結し、日本国政府の負債である国債と、日銀の資産である国債を相殺すれば日本の国債など一瞬で0円になります。


現在安倍内閣を支持する人の中でも、消費税率を10%に引き上げることに反対する人、または8%から5%に引き下げるべきだという人の主張として、「増税は消費を抑制し、却って税収を冷え込ませてしまう」という意見があります。

すでに述べていますように、確かに橋本増税では消費増税が行われた後、アジア通貨危機が勃発したこともあり、結果的に日本国内の消費を冷え込ませ、税収を増税以前と比較しても大幅に減退させてしまう結果となってしまいました。

ですが、安倍内閣において行われた8%増税はどうだったのでしょうか。

消費者物価指数2013年~2017年8月

8%増税において、あたかも消費が減退しているように見えるのは、「原油価格の下落」などに伴うエネルギー相場の減退が最大の理由であり、これを取り除けば毎月「前年同月」を上回っていたことは既にお伝えした通りです。昨年度末に初めて前年度割れを起こしましたが、それまではプラス成長を続けています。

一般会計税収推移

また「税収」に関しても同様です。確かに昨年度は税収が前年度割れを起こしていますが、それでも増税前、2013年度の税収と比較すれば、9兆円近い税収増を果たしており、橋本増税の時とは状況が異なっていることがわかると思います。

リーマンショック前年、2007年度の51兆円と比較しても、5兆円近く税収が増えていることになります。

また一方で、高齢者医療、介護の増加に伴い、2025年には2008年当時と比較して15兆円の財源が不足すると試算されています。

平成29年度一般会計予算

こちらは予算ベースですが、本年度、2017年度の歳入歳出を示した円グラフです。

歳入の内、国債発行額が34.3兆円、歳出のうち国債の償還額が23.5兆円。両歳費の差額、10.8兆円分が現時点の一般会計予算で不足している金額です。(国債の償還のために国債が発行されていることを批判なさりたい方は第359回の記事 をご覧ください)

29年度の税収は予算ベースで57.7兆円ですから、このうち32.4兆円が年金・医療・介護等の社会保障費に、残る25.3兆円がその他の財源に充てられることになります。

また残る税収のうち、15.5兆円は地方交付税・交付金として当てられており、税収の中で政府や国の行政機関が自分たちのために使っているお金は10兆円程度だということになります。

では、この10兆円が一体何のために使われているのかというと、公共事業費や防衛費を含む公共サービスを私たち一般国民に行うために用いられているわけです。(公務員の給料も当然含まれていますが、これも公共サービスの一環だと考えます)

2017年度に発行されている予定の、償還費以外の10兆円の国債は、このような政府や国の行政機関が私たち国民に施すための行政サービスのための資金が不足するために発行されている、ということになります。


2014年の8%増税に対して私が賛成なのかどうかと言われれば、必ずしも積極的に「賛成」だとは言えません。ですが、それでも「社会保障の財源は、国債の発行に頼らず、きちんとした裏付けを示すことが必要だ」と考えています。

今後、社会保障のための財源が今以上に不足することとなれば、おのずと私たちが政府や行政機関から受けているサービスの質が低下していくことを示しています。

もしも行政サービスの質を落とさず、ある一定以上の予算を確保しようと考えるのであれば、政府が

 「社会保障に不足する財源を補填するため、国債を発行して賄います」

と宣言すれば、それで事足りる話ではあります。ですが、私が危惧しているのは、ではこのような社会保障費のために政府が国債を発行します、といった場合、日本国民の

 「労働する意欲」

を担保することができるのかどうか、という話です。

生活保護受給者数の推移

こちらのグラフは、第28回の記事 で掲載した、生活保護者の数と、前年度と比較した伸び率を掲載したグラフです。

情報としては最新のものではないのですが、リーマンショック後、平成22年1月まで急激に生活保護受給者数が増加した後、前年同月比で生活保護受給者の伸び率は減退するものの、生活保護受給者の数そのものは減少していないことを示しています。

「社会保障費」って、きちんとしたルールの中で運用されていて、現役時代によく働いた人ほど老後により多くの社会保障費を享受することができるようになっています。その代表的なものが「年金」です。

ですが、現役時代に意図的に労働を行わず、または労働する意欲があったとしても定職に就くことができなかった人のうち、年金の免除申請を行わなかった人は、その「年金」を受け取る資格がありませんから、当然老後の生活費がなくなってしまいます。

そのような人たちがどのような手段をとるのかというと、それは「生活保護」という最終的なセイフティネットを利用することになります。このような人たちは、確かに家賃光熱費は保護費の中から支払いますが、例えば「医療費」も自己負担せず、全額国費で治療を受けることができます。

もしも政府が

 「あなたたちが現役時代に働こうが働くまいが、あなた方の老後の生活はすべて政府が面倒を見ますよ」

と宣言してしまった場合、私は上記に掲載したように、「労働」することを放棄し、行政サービスに頼りっぱなしになる人が増えるのではないか、と考えているのです。

その結果、日本国内では「生産力」が衰退し、物資を海外からの輸入に頼るようになり、日本国内の物価が海外の情勢や為替変動に左右されるような、そんな社会が訪れるのではないかと考えているわけです。

 「そんなことはない。ルール整備をきちんとすればいい」

という人はいるでしょうが、いつまでも現在の政権が続くとは限りません。経営者をサポートすることを批判し、労働者や非正規労働者、もしくは無職者の支援を重視する政府が現れれば、全くない、といえる話ではありません。

社会保障のサービスを安定して提供し、かつ日本国内の「労働する意欲」を担保しようとするのであれば、やはり、特に「老後」の社会保障費は財源の裏付けを明確にした上で運用するべきだ、というのが私の考えです。


私にだって、消費増税は凍結すべきだとか、繰り延べるべきだという人たちの意見が理解できないわけではありません。それも一つの考え方だと思いますし、逆に消費増税を行うことで日本国民の労働する意欲を減退させてしまう、という意見も当然あるでしょう。

また、第358回の記事 でもお示ししましたように、もともと高齢化に伴う社会保障費の自然増に伴う財源に充てるつもりであった消費増税分を幼児教育無償化等の他の政策に充てる余裕が出てきたということは、高齢化に伴う自然増の伸び率が思ったほど深刻ではなかったのではないか、とも私は考えています。

であればその分の伸び率を抑えるという方法もあるんじゃないか、という考え方も当然できると思います。

このように考えると、「消費増税」もまた数多くの政策判断の中の一つであり、これだけを理由で安倍内閣をたたいたり、掌を返したりする姿勢は果たしてどうなのかと私は思います。

中には消費増税を肯定する立場の人を貶したり、罵倒したりする意見を見ることもあります。もし消費増税に反対なのであれば、政府をきちんと納得させられる意見を持った人に票を投じ、または当選した議員さんを通じて政府に自分自身の意見を届けるような努力を行うのが本来のあるべき姿なのではないでしょうか。

ましてこのように将来のヴィジョンを描くこともせず、

 「政府が国債を発行し、日銀が金融緩和を行い続ければいつかは日本の景気は良くなるはず」

といった無責任な意見を述べることは果たしてどうなのでしょうか?

本当に日本の事を思い、自分自身の主張を行うのは正しいことだと思います。ですが、そのような自分の意見を通したいからと言って、「マクロ指標」を「ブレイクダウン」せず、つまり例えば「消費者物価」が下落している理由が消費増税のせいだと思い込み、誤った情報を根拠として現在の政策の批判を行うやり方はいただけません。

私は現在の安倍内閣を支持しています。それは「経済」だけでなく、「外交」や「防衛」、そして「憲法改正」の考え方も含めた、全体像としての安倍内閣を支持しているということです。

もちろん各論としてそれは違うんじゃないか、と思う部分も多々としてありますが、であればその部分を「おかしい」といえばよいのであって、だから安倍内閣はおかしい、ということにはなりません。まして誤った情報を下に安倍内閣を叩くのははっきりって間違いだと思います。

本日は長文になりましたが、「批判する」のであれば、情報をきちんと分析したうえで、現時点で自分場一番正しいと判断している情報を下に批判するのが政治家だけでなく、私たち日本国民も含めて本来の「あるべき姿」だと思います。

そして一方的に批判するのではなく、きちんと相手の意見にも耳を貸し、全否定をせず、正しいと思ったことは受け入れる姿勢を持つことこそ、日本を世界に誇れる国とするために、本当に必要なことなのではないでしょうか?


この記事のカテゴリー >>日本国債の問題


私のブログにおきまして、もはやその代名詞ともなっているのが以下の記事です。

第27回 国債を返済する仕組み~60年償還ルール~

第358回の記事 では、「次回記事では改めて『それでも消費増税を行わなければならない理由』について、改めて記事にしてみたいと思います」と掲載しました。

ですがその前に、改めて「60年償還ルールで財政が破綻しない理由」についてご説明しておきたいと思います。

60年償還ルールを端的にご説明しますと、
日本国債を60分割で返済するためのルール

です。ここは今更解説するまでもありませんね。
(※60年償還ルールそのものがわからない、という人は第27回 国債を返済する仕組み~60年償還ルール~ の方へどうぞ)

問題となるのは、ではなぜ「60年償還ルール」を用いれば日本国債は破綻しないのか、ということ。この理由を端的に説明しますと、
60年償還ルールとは、国債を1円でも発行すれば、60年間は永続的に国債発行残高は上昇し続け、60年目を迎えた時点で増加額が頭打ちになるルールだから

ということになります。

逆に言えば、国債を1円でも発行する限り、国債発行残高は増え続けなければおかしい、とも言えます。

で、「60年目を迎えた時点で増加額が頭打ちになる」と掲載しましたが、これは何も60年目を迎えれば、国債発行残高が1円も増えなくなるとか、そういうことを言っているわけではありません。60年目を迎えると、あとはその年に発行された新規国債の額がいくらなのか、ということに左右されることになりますよ、ということです。

といってもやはりわかりにくいかもしれませんね。実際にこのことを巡ってとあるSNS上で議論になりましたので、この内容をシェアしてみたいと思います。


60年償還ルールの基本的な考え方

重ねてご説明しますと、60年償還ルールとは、今年発行された新規国債を、60年間分割払いにすることを可能としたルールの事です。

事例としてわかりやすくするため、今年発行された新規国債が仮に30兆円であったとします。

今年(2017年)に30兆円の国債を発行した場合、2018年にはいったん全額返済し、29.5兆円分の「借換債」を発行します。つまり、0.5兆円だけ返済したことになります。

2019年にはまた更に0.5兆円のみを返済し、29兆円分の借換債を発行。2020年には28.5兆円、2021年には28兆円の借換債を発行し、60年経過すると全額返済されることになります。


では、仮に2年目も同額、つまり30兆円分の「新規国債」を発行したとするとどうでしょう。

実際には「新規発行国債」として最も多く発行されている国債は「長期国債」と呼ばれる10年物国債で発行されていますので、毎年10年物国債が30兆円ずつ発行され続けると考えます。

そうすると10年後にはこんな感じになります。


60年償還ルール①

10年間、1円も返済されないまま国債が発行され続けますから、1年目に発行さえた国債が償還期を迎える時には30兆円×10年分、つまり300兆円の「国債発行残高」が蓄積されることになります。

11年目を迎えますと、1年目に発行された国債は、本来であれば1年間に、30兆円の1/60である0.5兆円を返済する必要がありますが、これを返済しないまま10年間経過していますので、0.5兆円×10年分=5兆円を返済する必要があります。

60年償還ルール②

ですので、政府はいったん30兆円全額返済した後、25兆円の借換債を発行します。
11年目も30兆円分の新規国債は発行されていますから、300兆分の「国債発行残高」は蓄積されたまま。ここに、新たに25兆円分の「国債発行残高」が蓄積されることとなります。

借換債は償還期が1年の、いわゆる「短期証券」で発行される場合が多いですから、25兆円の「借換債」の償還期は仮に1年であると考えます。


60年償還ルールのマジック

では、12年目はどのようになるのでしょうか。面白いのはここからです。

12年目に発行される国債(A)は、

1.新規発行国債30兆円
2.2年目に発行された国債の借換債25兆円
3.1年目に発行された国債の借換債24.5兆円

の3つ。


12年目に返済される国債(B)は

1.2年目に発行された国債の償還額30兆円
2.1年目に発行された国債の償還額25兆円

の2つ。

です。数学が得意な人なんかは「なんでそんなに難しく考えるんだ!」という突込みが入りそうですが、あえてこのような考え方をします。

よく見ていただきたいのですが、発行される国債Aの1番と返済される国債Bの1番、そして発行される国債Aの2番と返済される国債Bの2番が同じ金額になっていますね?

つまり、A-1とB-1、A-2とB-2は全く同じ金額になりますから、お互いに相殺されてしまいます。

A-1+B-1=0円
A-2+B-2=0円

となるわけです。残ったのはA-3番。「1年目に発行された国債の借換債24.5兆円」のみです。
つまり、12年目に増えた国債発行残高は、1年目に発行された国債のための借換債として発行された24兆円分の国債だけだということになります。

13年目はどうでしょう?
13年目に発行される国債(A’)は、

1.新規発行国債30兆円
2.3年目に発行された国債の借換債25兆円
3.2年目に発行された国債の借換債24.5兆円
4.1年目に発行された国債の借換債24兆円

の4つ。


13年目に返済される国債(B’)は

1.3年目に発行された国債の償還額30兆円
2.2年目に発行された国債の償還額25兆円
3.1年目に発行された国債の償還額24.5兆円

の3つ。

13年目もやはり

 A'-1=B'-1
 A'-2=B'-2
 A'-3=B'-3

となっており、唯一A'-4、つまり「1年目に発行された国債の借換債」の金額だけが上積みされていることがわかりますね?


では、14年目はどうでしょう・・・・と、もう言うまでもないですね。

14年目もやはり1年目に発行された国債の借換債分である23.5兆円だけが上積みされることになります。
ということは・・・と私が述べるまでもありませんね。1年目に発行された国債が60年目を迎え、償還額0円となった時点で、「国債発行残高」が上積みされることはなくなります。

もっと言いますと、上積みされる金額そのものも、1年目に発行された国債の「残高」に依存するわけですから、1年目に発行された国債は毎年残高も毎年縮小している以上、その増加幅は毎年縮小することになります。


国債発行残高はいつまで増加し続けるのか?

SNS上で議論になった内容として、相手方が主張していたのは60年償還ルール初年度の新規国債発行額と今年度発行されている国債発行残高の「ギャップ」の話です。

現憲法下の日本において、初めて「国債」が発行されたのは今から53年前。昭和40年(1965年)の事です。
この時に発行された国債は1972億円でした。

今年発行される国債は、仮に補正で発行されなければ34兆3698億円になります。

実に34兆円を大幅に上回る「ギャップ」があるのです。

相手方が主張していたのは、これだけのギャップがあるのに、私の言う「60年目で償還額が頭打ちになる」という理屈はおかしいんじゃないか、という主張です。

これには2つの側面からの反論が存在します。


1.「国債」は単年度に全額返済されるわけではない。

これが、一つ目の反論です。

この記事のタイトルそのものがそうですが、そもそも「国債」は60年間で分割されて返済されます。

では、昭和40年に発行された1972億円の国債は、60年経過して、最後の償還期を迎えたとき、いったいいくらになっているのでしょうか。

1972億円÷60年=33億円
34兆3698億円÷60年=5728億円

いかがでしょう?

1972億円という初年度に発行された国債は、毎年33億円ずつ額は減らすものの、母体となる金額は60年間存在し続けています。

34兆3698億円という数字も一緒です。5728億円毎年その額を減らし続けるものの、その母体となる金額は60年存在し続けるのであり、60年経過する前に、ある日突然特別会計の会計帳簿上から消えてなくなるわけではありません。

そしてそれぞれの数字は、60年間経過すると1972億円は33億円に、34兆3698億円は5728億円にまでその額を減らしています。

一般の生活をしていれば、額が大きすぎてあまりイメージしにくいかもしれませんが、当初34兆円もギャップがあったはずの額も、60年経過すると5000億円を上回る程度の金額にまで縮小しているのです。

もっと言えば、昭和40年に発行された国債は、1年に33億円しかその額を減らしませんが、平成29年度に発行された国債は毎年5728億円ずつその額を減らし続けるのです。その影響はどちらが大きいのかは一目瞭然ですね。


国債発行額は、償還期が隣接する年度との間で相殺される

もう一度、「毎年30兆円の長期国債が新規で発行された続けた場合の13年目」の国債の発行及び償還状況を見てみます。
13年目に発行される国債(A’)は、

1.新規発行国債30兆円
2.3年目に発行された国債の借換債25兆円
3.2年目に発行された国債の借換債24.5兆円
4.1年目に発行された国債の借換債24兆円

の4つ。


13年目に返済される国債(B’)は

1.3年目に発行された国債の償還額30兆円
2.2年目に発行された国債の償還額25兆円
3.1年目に発行された国債の償還額24.5兆円

の3つ。

このケースでは、

 「1年目に発行された国債の償還額」と「2年目に発行された国債の借換債」

 「2年目に発行された国債の償還額」と「3年目に発行された国債の借換債」

そして

 「3年目に発行された国債の償還額」と「新規国債」

との間で金額がバランスしていることがわかります。

では、この「バランス」はどのような場合に崩れるのでしょうか?
答えは簡単です。

例えば「1年目に発行された国債」とバランスが取れているのは「2年目に発行された国債」ですから、1年目と2年目の間で発行額に相違があれば、これが「国債発行残高」全体に影響を与えることになります。

つまり、考えなければならないのは「昭和40年に発行された国債」と「平成29年度に発行された国債」との関係性ではなく、昭和40年であれば翌年の昭和41年、平成29年であれば前年の平成28年、または来年発行される国債とのバランスだということになります。


昭和40年と平成29年を比べてみると・・・

それでは改めて考えてみましょう。

昭和40年目に発行された国債が13年目を迎えた時

発行される国債(A)

1.昭和53年の新規国債10兆6740億円
2.昭和42年に発行された国債の借換債5793億円
3.昭和41年に発行された国債の借換債5325億円
4.昭和40年に発行された国債の借換債1545億円

返済される国債(B)は

1.昭和42年に発行された国債の償還額7094億円
2.昭和41年に発行された国債の償還額5436億円
3.昭和40年に発行された国債の償還額1578億円

昭和40年の国債を考えるとこんな感じです。それ以外の期間のものはまだ償還期を迎えていない、と考えますので必要な数字はこれだけです。

A-1とB-1、A-2とB-2、A-3とB-3が本来バランスべきポイントです。

A-1-B-1=9兆9646億円
A-2-B-2=357億円
A-3-B-3=3747億円

合計10兆3750億円

一方、今年の国債で考えると、
発行される国債(A)

1.平成29年の新規国債34兆3698億円
2.平成18年に発行された国債の借換債22兆4338億円
3.平成17年に発行された国債の借換債25兆152億円
4.平成16年に発行された国債の借換債27兆8005円

返済される国債(B)は

1.昭和18年に発行された国債の償還額27兆4707億円
2.昭和17年に発行された国債の償還額25兆5364億円
3.昭和16年に発行された国債の償還額28兆3920億円

となります。

A-1とB-1、A-2とB-2、A-3とB-3が本来バランスべきポイントとなりますので。

A-1-B-1=6兆8991億円
A-2-B-2=-3兆1026億円
A-3-B-3=-5915億円

合計3兆2020億円



いかがでしょうか。意外かもしれませんが、「国債発行残高への影響」だけで考えると、国債発行初年度である昭和40年以降13年間の影響よりも、最新年度である平成29年度より過去13年の影響の方が、より少ないことがわかります。

合計10兆3750億円 と 3兆2020億円

ですから、その差は歴然としています。

もちろん計算式自体がここまで単純ではありませんから、あくまでも一つの「例」として考えていただければと思います。


念のため、下となる数字は政府が公表しているデータを用いていますし、前提として、

「新規国債が必ず10年物国債で発行され、借換債が必ず1年物国債として発行された場合」

としています。新規債がすべて10年物で発行されるわけがありませんし、借換債も必ず1年物で発行されるわけはありませんから、このあたりも誤解なさらぬよう、お願いいたします。

このほか、一般会計において毎年「利息」だけは全額返済されていますので、このあたりも誤解なさらぬよう。


「国債が破綻しない理由」はこれ以外にもたくさんあります。ですが、60年償還ルール以外の「破綻しない理由」は、抽象的なものも多いので、破綻論者を一撃で黙らせるためには「数字」できちんと把握することのできる60年償還ルールが一番効果的だと私は思っています。

何が言いたいのかといいますと、私はここまで具体的に日本国債が破綻しない理由を説明できる人間である、ということです。ですが、そんな私でも「消費増税」が必要だと考えているわけです。

もちろんいつ増税するのかとか、増税する前にやることがあるだろうとか、そういったことはすべて踏まえた上で、です。

次回記事ではそんな私が考える「それでも消費増税を行わなければならない理由」。これを記事にしたいと思います。


この記事のカテゴリー >>アベノミクスを問う


さて。いよいよ行われましたね、衆議院解散会見。

【安倍首相、衆院解散を表明【記者会見ノーカット】/産経ニュース】
(※引用文は長文になります。ピックアップするポイントは後ほど掲載しますので、まずは読み飛ばしてください)


【安倍総理冒頭発言】
 5年前、国民の皆様のお力を得て政権を奪還しました。当時、私たちが公約に掲げた大胆な金融政策には大変な批判がありました。しかし、総選挙で勝利したからこそ実行に移すことができた。アベノミクス三本の矢を放つことで日本経済の停滞を打破し、マイナスからプラス成長へと大きく転換することができました。

 今、日本経済は11年ぶりとなる6四半期連続のプラス成長。内需主導の力強い経済成長が実現しています。雇用は200万人近く増加し、この春、大学を卒業した皆さんの就職率は過去最高です。この2年間で正規雇用は79万人増え、正社員の有効求人倍率は調査開始以来、初めて1倍を超えました。正社員になりたい人がいれば、必ず1つ以上の正社員の仕事がある。

 この5年近く、アベノミクス改革の矢を放ち続け、ようやくここまで来ることができました。今こそ最大の壁にチャレンジするときです。

 急速に少子高齢化が進むこの国が、これからも本当に成長していけるのか。この漠然とした不安にしっかりと答えを出してまいります。それは、生産性革命、そして人づくり革命であります。この2つの大改革はアベノミクス最大の勝負です。国民の皆様の支持を頂き、新しい経済政策パッケージを年内に取りまとめる考えであります。

 4年連続の賃金アップの流れを更に力強く、持続的なものとする。そのためには生産性を高めていくことが必要です。ロボット、IoT、人工知能、生産性を劇的に押し上げる最先端のイノベーションが今、世界を一変させようとしています。この生産性革命を我が国がリードすることこそ、次なる成長戦略の最大の柱であります。2020年度までの3年間を生産性革命集中投資期間と位置づけ、中小・小規模事業も含め、企業による設備や人材への投資を力強く促します。大胆な税制、予算、規制改革。生産性革命の実現に向かってあらゆる施策を総動員してまいります。

 生産性を押し上げ、今年より来年、来年より再来年と、皆さんの所得を大きく増やしていく。デフレ脱却へのスピードを最大限まで加速してまいります。

 もう1つの最大の柱は人づくり革命です。子供たちには無限の可能性が眠っています。どんなに貧しい家庭に育っても、意欲さえあれば専修学校、大学に進学できる社会へと改革する。所得が低い家庭の子供たち、真に必要な子供たちに限って高等教育の無償化を必ず実現する決意です。授業料の減免措置の拡充と併せ、必要な生活費を全て賄えるよう、今月から始まった給付型奨学金の支給額を大幅に増やします。

 幾つになっても、誰にでも学び直しと新しいチャレンジの機会を確保する。人生100年時代を見据え、その鍵であるリカレント教育を抜本的に拡充します。こうしたニーズに応えられるよう、大学改革も強力に進めていかなければなりません。

 幼児教育の無償化も一気に進めます。2020年度までに3~5歳まで、全ての子供たちの幼稚園や保育園の費用を無償化します。0~2歳児も、所得の低い世帯では全面的に無償化します。待機児童解消を目指す安倍内閣の決意は揺らぎません。本年6月に策定した子育て安心プランを前倒しし、2020年度までに32万人分の受皿整備を進めます。

 2020年代初頭までに、50万人分の介護の受皿を整備する。最大の課題は、介護人材の確保です。これまで自公政権で月額4万7,000円の改善を実現してきましたが、他の産業との賃金格差をなくしていくため、さらなる処遇改善を進めます。

 子育て、介護。現役世代が直面するこの2つの大きな不安の解消に大胆に政策資源を投入することで、我が国の社会保障制度を全世代型へと大きく転換します。急速に少子高齢化が進む中、国民の皆様の支持を得て、今、実行しなければならない、そう決意しました。2兆円規模の新たな政策を実施することで、この大改革を成し遂げてまいります。

 しかし、そのつけを未来の世代に回すようなことがあってはならない。人づくり革命を力強く進めていくためには、その安定財源として、再来年10月に予定される消費税率10%への引上げによる財源を活用しなければならないと、私は判断いたしました。2%の引上げにより5兆円強の税収となります。現在の予定では、この税収の5分の1だけを社会保障の充実に使い、残りの5分の4である4兆円余りは借金の返済に使うこととなっています。この考え方は、消費税を5%から10%へと引き上げる際の前提であり、国民の皆様にお約束していたことであります。この消費税の使い道を私は思い切って変えたい。子育て世代への投資と社会保障の安定化とにバランスよく充当し、あわせて財政再建も確実に実現する。そうした道を追求してまいります。増税分を借金の返済ばかりでなく、少子化対策などの歳出により多く回すことで、3年前の8%に引き上げたときのような景気への悪影響も軽減できます。

 他方で、2020年度のプライマリーバランス黒字化目標の達成は、困難となります。しかし、安倍政権は財政再建の旗を降ろすことはありません。プライマリーバランスの黒字化を目指すという目標自体はしっかりと堅持します。引き続き、歳出・歳入両面からの改革を続け、今後達成に向けた具体的な計画を策定いたします。

 少子高齢化という最大の課題を克服するため、我が国の経済社会システムの大改革に挑戦する。私はそう決断いたしました。そして、子育て世代への投資を拡充するため、これまでお約束していた消費税の使い道を見直すことを、本日、決断しました。国民の皆様とのお約束を変更し、国民生活に関わる重い決断を行う以上、速やかに国民の信を問わねばならない。そう決心いたしました。28日に、衆議院を解散いたします。

 国民の皆様は、北朝鮮の度重なる挑発に対して、大きな不安を持っておられることと思います。政府として、いついかなるときであろうとも危機管理に全力を尽くし、国民の生命と財産を守り抜く。もとより当然のことであります。

 他方、民主主義の原点である選挙が、北朝鮮の脅かしによって左右されるようなことがあってはなりません。むしろ私は、こういう時期にこそ選挙を行うことによって、この北朝鮮問題への対応について国民の皆さんに問いたいと思います。

 我が国を飛び越える弾道ミサイルの相次ぐ発射、核実験の強行、北朝鮮による挑発はどんどんエスカレートし、その脅威は正に現実のものとなっています。こうした中で、私は、国際社会の連帯をより強固なものとするため、米国、韓国はもちろんのこと、中国、ロシア、インド、欧州、中東、アジアの首脳たちと対話や協議を重ねてきました。そして先般、国連安保理が原油や石油製品の輸出制限を含む厳格な制裁措置を全会一致で決定しました。まず、これを完全に履行する。さらに、北朝鮮がその政策を変更しないのであれば、国際社会と共に一層圧力を強化してまいります。

 北朝鮮には勤勉な労働力があり、資源も豊富です。北朝鮮が正しい道を歩めば、経済を飛躍的に伸ばすこともできる。しかし、拉致、核・ミサイル問題の解決なくして、北朝鮮に明るい未来などあり得ません。北朝鮮にその政策を変えさせなければならない。そのための圧力であります。

 圧力の強化は北朝鮮を暴発させる危険があり、方針転換して対話をすべきではないかという意見もあります。世界中の誰も紛争などを望んではいません。しかし、ただ対話のための対話には、意味はありません。

 この20年間、我が国を始め国際社会は六者協議など対話による平和的解決の努力を重ねてきました。その中で北朝鮮は2度にわたり、核・ミサイルの放棄を約束しましたが、結果としてそれらはことごとく裏切られ、核・ミサイル開発が継続されていた。

 対話の努力は時間稼ぎに利用されました。北朝鮮に全ての核、弾道ミサイル計画を完全な、検証可能な、かつ不可逆的な方法で放棄させなければならない。そのことを北朝鮮が受け入れない限り、今後ともあらゆる手段による圧力を最大限まで高めていく他に道はない。私はそう確信しています。

 そして、拉致問題の解決に向けて、国際社会でリーダーシップを発揮し、全力を尽くしてまいります。

 北朝鮮が意図的に緊張をあおっている今だからこそ、私たちはぶれてはならない。北朝鮮の脅かしに屈するようなことがあってはなりません。私はこの選挙で国民の皆さんから信任を得て、力強い外交を進めていく。北朝鮮に対して、国際社会と共に毅然(きぜん)とした対応を取る考えであります。

 さきの国会では、森友学園への国有地売却の件、加計学園による獣医学部の新設などが議論となり、国民の皆様から大きな不信を招きました。私自身、閉会中審査に出席するなど、丁寧に説明する努力を重ねてまいりました。今後ともその考えに変わりはありません。

 この選挙戦でも、野党の皆さんの批判はここに集中するかもしれない。こうした中での選挙は厳しい、本当に厳しい選挙となる。そのことはもとより覚悟しています。しかし、国民の信任なくして国論を二分するような大改革を前に進めていくことはできない。我が国の国益を守るため、毅然とした外交を推し進めることはできません。国民の皆様の信任を得て、この国を守り抜く決意であります。

 少子高齢化、緊迫する北朝鮮情勢、正に国難とも呼ぶべき事態に強いリーダーシップを発揮する。自らが先頭に立って国難に立ち向かっていく。これがトップである私の責任であり、総理大臣としての私の使命であります。苦しい選挙戦になろうとも、国民の皆様と共にこの国難を乗り越えるため、どうしても今、国民の声を聞かなければならない。そう判断いたしました。

 この解散は、国難突破解散であります。急速に進む少子高齢化を克服し、我が国の未来を開く。北朝鮮の脅威に対して、国民の命と平和な暮らしを守り抜く。この国難とも呼ぶべき問題を、私は全身全霊を傾け、国民の皆様と共に突破していく決意であります。

 私からは以上であります。

ポイントとなるのは

1.2019年10月に引き上げられる消費増税分を、当初の予定より変更し、増税分を借金の返済ばかりでなく、少子化対策などの歳出により多く回す。

2.北朝鮮問題への対応について。

この2つでしょうか。

1番の項目の記し方については、いろいろな表現方法があるでしょうが、私としてはあえてこのような表現方法を選択してみました。

私として影響が大きいのは良い意味でも悪い意味でも「消費税」の問題だと考えています。

8%に増税した段階で、これまで安倍内閣を支持していた多くの人が、この「消費増税」というシングルイシューを理由に掌を返したことが私の中では非常に大きな記憶に残っています。私の信頼する麻生さんの評価が一転し、世間一般でが大きく下落したのもこの時でした。

ですが、少なくともこの会見の中で、安倍さんは消費増税が行われることを「前提条件」として話をしています。

私としてはこちらのシリーズ↓
日本の税収の見方

においてずっと「消費増税」を肯定する立場から記事を作り続けてきました。もともと「消費増税の味方」というタイトルをこのカテゴリーには付けていました。

ですから、同シリーズでずっと過去の記事をさかのぼっていただくと、私が「増税後の消費税収予測」で大敗北したことを含めた記事を見ることができます。

ですが、少なくとも「ネット民」の中の安倍内閣支持者の多くは消費増税に反対する立場の方が多いため、この選択肢を巡ってひょっとすると自民党の得票数に影響を及ぼすことになるかもしれません。

ただ、私としても、8%のまま据え置いた方がいい、凍結すべきだとする立場の人たちの意見も理解できないわけではありません。

第27回の記事 でお示ししましたように、日本国では「60年償還ルール」というルールに基づいて財政運営が行われている限り、「財政」が破綻することはまずありません。

このルールに基づけば、国債発行額残高は60年間は増え続けなければおかしいルールとなっており、、60年経過すればその増加はストップし、後は横ばいになる仕組みがこの60年償還ルールです。

最終的には日本国政府の55%株主である日銀に全額国債を市場から買い取らせて、日本国政府と日銀の会計処理を連結させれば、一瞬で日本国債の発行残高など0円になってしまいます。

ですから、例えば今回テーマとして挙がっている「少子化対策」にしても、国債を発行して対応すれば簡単に対処できてしまいます。

ですが、それでも社会保障に関しては「国債」で対応すべきではない、とするのが私の考え方です。既に過去の記事でこの理由は述べていますが、後日改めてこのことは記事にしてみます。

安倍首相会見


安倍内閣における「消費税」の使途は本当に変更されるのか?

さて。今回記事を作成した目的は、実はここにあるわけではありません。

まず見ていただきたいのはこちらの二つの画像。

消費税予算表

消費税財源グラフ

上図の内容を転載してみます。
〈28年度消費税増収分の内訳 〉
《増収額計:8.2兆円》
1.基礎年金国庫負担割合2分の1 3.1兆円
(平成24年度・25年度の基礎年金国庫負担割合2分の1の差額に係る費用を含む)

2.社会保障の充実 1.35兆円
・子ども・子育て支援の充実
・医療・介護の充実
・年金制度の改善

3.消費税率引上げに伴う社会保障4経費の増 0.37兆円
・診療報酬、介護報酬、年金、子育て支援等についての物価上昇に伴う増

4.後代への負担のつけ回しの軽減 3.4兆円
・高齢化等に伴う自然増を含む安定財源が確保できていない既存の社会保障費

このデータがどこに掲載されているのかというと、実は内閣府の公表している、平成28年度予算案における 子ども・子育て支援新制度の状況について」という資料に掲載されています。

「28年度消費税増収分の内訳」とは記されていますが、要は平成26年(2014年)に増税された後に増えた消費税収を8.2兆円と見積り、この金額をこのような用途で利用しますよ、いう内容が掲載された内容です。

あえてそれぞれの項目に番号を振ってみました。

下側のグラフは、左側が8%増税時の予算内訳。右側が10%増税時の内訳です。グラフで水色の部分は1番、「基礎年金国庫負担分」が麻生内閣において1/3から1/2に引き上げられたことに伴って増加する国庫負担分。

赤が2番、「社会保障の充実」となっており、この部分が増税前にはなかった予算となります。

黄色は3番で、増税に伴う社会保障サービスの物価上昇に充てられる金額。

緑は「高齢化等に伴う自然増を含む安定財源が確保できていない既存の社会保障費」とされています。

1番は8%時 3.1兆円→10%時 3.2兆円
2番は8%時 1.35兆円→10%時 2.8兆円
3番は8%時 0.37兆円→10%時 0.8兆円
4番は8%時 3.4兆円→10%時 7.3兆円

となっていますね。では、もう一度安倍首相の会見を振り返ってみましょう。
再来年10月に予定される消費税率10%への引上げによる財源を活用しなければならないと、私は判断いたしました。

2%の引上げにより5兆円強の税収となります。

現在の予定では、この税収の5分の1だけを社会保障の充実に使い、残りの5分の4である4兆円余りは借金の返済に使うこととなっています。

この考え方は、消費税を5%から10%へと引き上げる際の前提であり、国民の皆様にお約束していたことであります。この消費税の使い道を私は思い切って変えたい。

さて。わかりますでしょうか。安倍さんは「2%の引上げにより5兆円強の税収」となると発言し、

「この税収の5分の1だけを社会保障の充実に使い、残りの5分の4である4兆円余りは借金の返済に使うこととなっています」

と発言していますね。「借金の返済」=「国債の返済」です。
ですが、どうでしょう。先ほどの資料を見る限り、どこにも消費増税分が「国債の返済に充てられる」などと記されていませんね?

4番に「後代への負担のつけ回しの軽減」と記されており、これが一見すると国債の返済に充てられるように思われるのですが、ここには「高齢化等に伴う自然増を含む安定財源が確保できていない既存の社会保障費」としか記されていません。

そう。「消費税収」は元々「国債の返済」になど充てられることにはなっていないのです。

つまり、これは完全な「フェイクニュース」だということです。安倍さんが会見で言っているのは、

「消費税は増税したとしても、これまでと同じ用途にしか利用しません。ですが、増えた税収のうち、2番の財源に割り当てる金額を増やします」

と言っているのです。割り当てられることによって減らされるのは4番。

 「後代への負担のつけ回しの軽減」

に用いられるとされている部分です。私なりに言い換えますと、

「高齢化に伴って不足する財源が7.3兆円になると考えられていたのですが、実はそこまでは不足しないことが明らかになりました。ですからその余剰財源を子育て拡充に充当します」

と安倍さんは言っているわけです。私なりの意訳ですが、おそらく間違ってはいないでしょう。

元々国債の返済に充てる額など消費増税分には含まれていないわけですから、当然このことによって「プライマリーバランス」が影響を受けることなどありません。

さて。それでは以下のニュースを見てみてください。

【東京 26日 ロイター】
PB目標「困難は確か」と麻生財務相、達成時期2─3年先送り示唆

麻生太郎

麻生太郎財務相は26日の閣議後会見で、2020年度の基礎的財政収支(PB)黒字化目標の達成が困難になったことを認めた上で、達成時期を見直す考えを表明した。黒字化目標そのものは堅持するが、達成時期を22年度や23年度などに先送りする選択肢も示した。

麻生財務相は、消費税率を10%に引き上げた際の増収分の使い道を変更する安倍晋三首相の方針に関し、「福祉や教育は抜本的につくりかえる必要がある」と述べ、借金返済に充てる予定の財源を政策原資に活用する考えに同調した。

2012年の3党合意では、消費増収分のうち、社会保障の充実と借金返済に回す割合を1対4にすることが決まっていた。麻生財務相は配分比率について「2対3とか、そのくらいまでしていかないといけない」と指摘した。

一方、財政健全化の取り組みが後退するのは決定的となる。政府は20年度のPB黒字化目標を掲げるが、麻生財務相は「なかなか(達成が)出来にくくなった」とした上で「2022年とか23年など、そういったものを作り上げないといけない」と達成時期の先送りを示唆した。

安倍首相は25日の記者会見で、「生産性革命」の実現に向けた税制の活用に言及した。麻生財務相は、企業の内部留保が400兆円超ある現状を踏まえ「それを積極的に使ってくれている企業を優遇するなど、いろんな考え方がある」との見方を示した。
ええ。明らかにこれも「フェイクニュース」だと私は思います。

麻生は、本当に「役者」だと思います。分かっているんですね。増税をずっと主張し続けてきていたのは誰でしたか?

そう。麻生さんです。

PB目標(財政歳入出バランス)にずっと言及し続けていたのは誰でしたか?

そう。麻生さんです。麻生さんは、このことでプライマリーバランス目標達成のために財政支出を抑えなければならない状況に歯止めをかけたんですね。5兆円の税収分をどのくらいの割合で子育て政策に回すのかはわかりませんが、その金額がそっくりそのまま「財政出動」に、しかも永続的に充てられ続けられることを確定させてしまったわけです。

60年償還ルールでは年間に発行しなければならない借換債の発行額はあらかじめ決められているわけですが、現時点でもすでにこの金額を前倒しで返済されるケースも出てきているようです。

どこからその財源が生れているのか。それは当然増えた税収分です。

後半の北朝鮮に関するスピーチは安倍さんの本心がひしひしと感じられますが、経済に関する部分には麻生さんのにおいがプンプンと漂ってきますね。

私としては実に「見事な」会見だったと思っています。

次回記事では改めて「それでも消費増税を行わなければならない理由」について、改めて記事にしてみたいと思います。


この記事のカテゴリー >>ロシア革命とソビエト連邦誕生に至る経緯


<継承する記事>
第355回 ブレスト=リトフスク条約締結~第一次世界大戦終結後のロシア

前回の記事では、主にロシア内戦の様子を中心に、トロツキーやレーニンが内戦中に行使した「戦時共産主義」について記事にしました。

この後、レーニンは急速に健康を害し、1924年1月21日、レーニンはその人生を閉じるわけですが、これまでの功績やレーニンとの信頼関係を考えると、レーニンの後を継ぐのはやはりトロツキーであるべきだと考えられるわけです。

ですが、レーニンの後を継いだのはトロツキーではなく、ヨシフ・スターリンであったわけです。

今回の記事では、なぜレーニンの後を継いだのがトロツキーではなくスターリンであったのか。この謎に迫る形で記事を作成したいと思います。


スターリンという人物

スターリン

現時点で記事を作成している目的は、レーニンの作った「コミンテルン」という組織が世界に与えた影響を調査することを一つの目的としているわけですが、「コミンテルン」そのものを追いかけようとすると、やはりその中心人物であるレーニン、そしてレーニンの後を引き継いだ「スターリン」の両名を追いかける必要があると考えています。

前回の記事では、コミンテルンを結成した後のレーニンについて追いかけたわけですが、彼は1924年1月にはその生涯を閉じてしまうこととなります。

こうなると、問題となるのはロシア共産党やコミンテルンがレーニンからスターリンに引き継がれていく過程を追いかけることで見えてくるものがあるのかな、と思っています。

既に記載しています通り、レーニンの事を一番理解していた人物はトロツキーであり、レーニンが最も信頼を置いていた人物はトロツキーでした。トロツキーは実際に有能でしたし、仮にロシア共産党の党首として選ばれたとしても、非常に全くそん色のない人物であったと考えられます。

ですが、なぜかレーニンの後を引き継いだのはトロツキーではなくスターリンであった。
これまでレーニンやトロツキーについてはたびたび記事に掲載していますので、まずは「スターリン」という人物の為人や経歴等を追いかけてみます。

ただ、スターリンの情報に関しては、彼がロシア共産党書記長となって以降の情報がほとんどで、レーニン体制下のスターリンに関する情報はあまり出て来ません。特に客観性のある情報の乏しいのが難点です。

まず間違いのない情報として、スターリンは「ロシア帝国占領下のグルジアで生まれたグルジア人」であるということ。

レーニンは学者の息子で、トロツキーは地主の息子と、比較的恵まれた環境に育った(共にユダヤ人)であるのに対して、スターリンの父親は靴職人。母親も農奴出身で、スターリンは貧しい家庭に生まれ育ちました。

スターリンの地元は元々荒々しく暴力的な地域で、彼の父親も酒を飲むと母親やスターリンに暴力をふるうような、そんな家庭であったようです。

スターリン自身はグルジア正教会からの推薦を受け、10歳の時に聖職者を要請するための神学校に進みますが、父親はこれに反対。また教会自体もグルジア人には差別的。彼自身も事故を経験するなどし、決して楽な環境ではなかったわけですが、彼はやがて優等生として認められていくことになります。

ですが、トロツキーやレーニンがそうであったように、スターリンもまた在学中にマルクス主義に傾倒し、「神学」に対する疑問を抱くようになります。

トロツキーは、もともとナロードニキ(マルクス主義が入ってくる前のロシア帝国の社会主義者)であったため、最初からマルクス主義に傾倒することはなかったのですが、スターリンはそうではなく、やがて神学校を退学します。

レーニンやトロツキーは機関誌を発行したり、党や団体を指揮するなど、「指導者」としての立場で革命にかかわっていくわけですが、スターリンはそうではありません。

スターリンの場合はもっと小さな組織。製油所の労働者を組織したり、ボリシェビキの中の一部隊を指揮したり、レーニンやトロツキーよりも器の小さな組織を操っているようなイメージを受けます。

やり方もどちらかというと姑息で、人を揺すってお金を巻き上げようとしたり、銀行強盗をしたり、強奪をしたり・・・と、犯罪を行ってお金を集め、これをレーニンに渡してレーニンの支持を得ていくような、そんな構図ができています。

1907年にロンドンで開かれたロシア社会民主労働党第5回大会で彼は初めてトロツキーと出会うわけですが、この時のトロツキーに対する印象もあまりよくなかったようで、後にレーニンの下、トロツキーとスターリンは重用されるわけですが、その後もスターリンはトロツキーのやり方に悉く異を唱えていたようです。


スターリン対トロツキー

両者の対立が表面化するのは、10月革命後、ロシア内戦が勃発した後のことです。

これに対処するため、レーニンは「ソ連共産党政治局」を組織します。構成メンバーは

 レーニン
 レフ・トロツキー
 ヨシフ・スターリン
 レフ・カーメネフ
 ニコライ・クレスチンスキー

の5名。当時の中央委員会の中心メンバーだった5名です。世事局は全ての主要な政治的決定を行うことにより、迅速な意思決定を行えるように設置されたものですね。

言い換えれば、トロツキーとスターリンはともに当時のロシアを含む「ソ連」の最高意思決定機関に配属されたようなもの。
ここにおいて元帝国支持者の扱い方をめぐってスターリンはトロツキーと対立します。

トロツキーはたとえ元帝国支持者であっても、その専門的知識を生かそうとしましたが、スターリンは彼らを信用せず、逆に殺害を命じます。

スターリンはレーニンに対してトロツキーの解任を求めますが、逆に彼のとった戦略が不必要な犠牲者を生んだとして彼はレーニンからも批判されることになります。

スターリンはポーランド戦ではレーニンやトロツキーの戦略と衝突し、最高司令官であるカーネメフの命令を拒否するなどしたため、党大会でトロツキーから痛烈に批判されます。


ソビエト連邦共産党初代書記長

ターニングポイントとなるのはここですね。

ロシア内戦が落ち着いた後、1920年後半になると、トロツキーはレーニンに対して国内の生産部門に対する共産党の独裁体制を築く必要性を訴えます。レーニンはトロツキーのこの意見に対する支持基盤を築くよう、スターリンに求めます。この結果、実際、1921年3月の第10回党大会でレーニンの支持基盤は優位な立場を得ます。

ですが、レーニンはこの時自分自身の方針を通すための困難さを感じました。

各地方の共産党委員会を指導する立場にあったのが「責任書記」。カーネメフはレーニンに対してこれらの責任書記を取りまとめる「書記長」という役職を新設することを進言しました。そして、初代書記長に任じられたのがスターリンでした。(1922年4月3日)


結構調べるのに時間がかかっていますので、まずはここまでを「前半」として締めくくりたいと思います。
この後、レーニンは体調を崩し、やがて「死」へと向かって歩みを進めていくことになるのですが、このようなレーニンの歩みの裏側で、「スターリン」と「トロツキー」が対立し、謀略が繰り広げられていく様子を次回記事では掲載したいと思います。



この記事のカテゴリー >>アベノミクスを問う


本日(2017年9月18日)の記事は、先日より報道されている安倍首相の衆議院解散決断のニュースを受けての記事になります。

ソースはこちらから。

【産経ニュースより 2017.9.17 07:01】
安倍晋三首相、衆院解散を決断 10・29衆院選が有力
北朝鮮情勢の緊迫化で方針転換 「安保法制の意義問い直す」 創価学会も緊急幹部会


安倍首相(解散報道)

安倍晋三首相は、28日の臨時国会召集から数日以内に衆院を解散する方針を固めた。

11月上旬にトランプ米大統領の来日が予定されていることから、衆院選は10月17日公示-10月29日投開票が有力だが、10月10日公示-10月22日投開票となる可能性もある。

首相は今月18~22日に訪米するため、帰国後に政府・与党で最終調整する構え。

記事事態にもっと詳細も記されているのですが、大切なのはこの部分のみかな、と思いますので、残る詳細はリンク先にてご確認ください。

野党第二党である民進党のゴタゴタ、前原氏が新党首に選ばれたことから、共産党との連携に軋轢が生れた事。
世間で話題になっている都民ファーストの全国版の準備が整っていないこと。私個人的にいえば民進を離脱した面々と若狭氏との連携が報道されていることから、その信頼性に疑惑が生れつつあること。

そして北朝鮮に関する問題を抱え、解散を来年の満期まで見送ると今以上に重大な状況における政治的空白を生みかねないことなど、戦略的な問題と国内外が抱える問題の両方の側面から安倍さんは解散を視野に入れ始めたわけです。

まだはっきりと安倍さん自身が解散を決断したわけではありませんから解散が確定したわけではありませんが、現在の報道内容より、これはほぼ間違いのではないかと考えられます。


改めて問う森友加計問題

さて。ここに至って私の記事のタイトルは「改めて問う森友加計問題」と銘打っています。

私の記事にたどり着いて、かつ信頼していただいていると思える皆さんの考え方からすれば、「もっと大切なことがあるだろう!」とおっしゃりたい方もいらっしゃるかもしれませんが、私がこのタイトルを選んだ理由は明確です。

この森友加計問題を今回の総選挙において「論点にすべきではない」と考えているからです。

もっと言えば、今回の記事内容は、「森友加計問題を総選挙において論点とすべきではない理由」を記すこととなります。

というのも、これらの問題は既に「結果」が出ています。


森友問題の真相

森友学園

森友問題の真相に関しては、 第345回の記事において既に私が検証し、結果を出している通りで、

1.森友に売却した土地は元々土壌にヒ素などの危険物質が含まれる「特別危険地域」であった。

2.この地域から危険性を取り除き、危険物等を撤去するための総額は、もともと森友が要望していた金額の10倍近くかかること

3.算定されており、土壌工事そのものは必要最低限にとどめた。

4.当初の工事にかかった費用は1億3200万円であり、これが森友に売却する時点での土地評価額の基準となった。

5.ところが、実際に売買交渉に入る段階になって、土地の地下より、「新たなるごみ」が発見された。

6.森友側は、新たなるごみが発見されたことを理由に、当初の土地評価額1億3200万円よりも更に値引きすることを要求してきた。

7.財務局側は新たなるごみ撤去にかかる費用を8億4000万円と査定し、撤去後の売却費用として1億3200万円に8億4000万円を上乗せした9億6000万円になることを森友側に伝えた。

8.更にこのごみ撤去は「森友側で行ってもらっても構わないし、その時の撤去額がいくらになろうとも政府側は何も文句は言わない」と伝えた。

9.結果、国は1億3400万円で森友側に売却し、さらにこの後新たなるごみが発見されたとしても、開学が遅れ、森友側に損害が発生したとしても、国側は一切責任を負わない「瑕疵担保責任免責特約」をつけさせた。

10.森友は8億4000万円分のごみを撤去しないまま工事を進め、開学に向けての準備を始めた。

これが「森友問題」のすべてです。どこにも政府側の「瑕疵」など見当たりませんね?


加計問題の真相

加計学園獣医学部

この問題は、実は当初、いわゆる「石破4条件」を加計学園が満たしていないのではないか、とする「疑惑」からスタートしています。

【石破4条件】
①現在の提案主体による既存の獣医師養成でない構想が具体化

②ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになること

③既存の大学・学部では対応が困難な場合

④近年の獣医師の需要の動向も考慮しつつ、全国的見地から本年度内に検討

というのも、

 そもそもこの石破4条件のうち③は、獣医学会側からの要望で、「どんな大学が要望してきたとしても、獣医学部の新設を絶対に認めさせないため」の条件としてねじ込まれたはずの条件

であったからです。

このことは、第333回の記事 で私が記している通りで、すべて獣医学会のホームページに詳細に記されています。

そして、第331回の記事 でも掲載しましたように、その後

 文科省内にいた前川元文科省事務次官の所より、次々に「今治市が国家戦略特区に認定された後の文科省と内閣府の間でやり取りされた内容をまとめたメモ書き」

が出てきます。

そしてその内容を元に

 加計学園認定の過程において「総理のご意向があったのではないか」とする議論

が巻き起こっていきました。

ですが、

 これらの内容はすべて今治市が国家戦略特区に認定された後にやり取りされた内容であり、今治市が認定される過程におけるやり取りを示したものではない

こと。そして国家戦略特区構想の特徴として、

「申請主体(今治市)が国家戦略特区構想の条件を満たしているのかどうかを証明するのは申請主体側ではなく、申請された側にある」

ということが閣議決定されていることが前川氏や加戸前愛媛県知事などを招致して行われた「閉会中審査」において次々と明らかにされていきます。

ですから、「石破4条件」に関してもこれ今治市がこれに適合していないというのであれば、いないという証拠を申請された側である「文科省」が行わなければならないことになるわけです。

文科省はその立証責任が文科省ではなく内閣府にあるとしてこの立証責任を果たさず、内閣府からの再三の要請にも応じなかったため、結果として今治市は獣医学部新設特区として認定

されることになりました。

つまり、政府側には何ら瑕疵は存在せず、安倍首相から「お友達」である加計学園理事長に対して何一つ「働きかけ」を行うことができるプロセスが存在しないことが証明されていくわけです。


「政府」から「今治市」へ

このころから、姿を見せるようになるのが今治市大三島で農業経営者だと自称しているとある青年です。

彼は「今治加計獣医学部問題を考える会」の共同代表を務める人物で、今回の加計問題に関する一連の情報を民主党側や自由党に流していた人物です。

政府側で加計学園の疑惑を追及することが難しくなると、疑惑追及の舞台は政府から今治市へとシフトします。

この時、一番大きな問題とされたのが次のニュース。

【週刊朝日(AERA)2017.6.19 20:04より】
今治市がたった一日で即決した96億の補助金 安倍首相が会見でスルーした加計疑惑が再燃

 大学設置認可申請書の締切日にあたる今年3月31日、加計学園が今治市に対し、96億円の補助金申請をし、菅良二・同市長はなんと即日に交付を決定。

 加計学園に対し、通知していたことを示す、公文書を筆者は入手した。

 地元では「96億円は市の歳出の12%に相当するのにずさん過ぎる。あまりに露骨だ」と非難の声が上がっている。

 獣医学部の建設予定地約16.8ヘクタール(評価額36億7500万円)は、今治市から加計学園へ無償譲渡されることが決まっているが、さらに県と市から補助金として大学校舎、施設整備費など192億円の半額、96億円を出すことが決定。

 筆者が入手した<今治市大学立地事業費補助金交付決定通知書>という文書によると、加計学園の加計晃太郎理事長名義で<申請書>が出されたのは、3月31日。そして今治市が<交付決定通知書>を出したのも3月31日。申請にかかる書類が起案されたのも、3月31日だ。

ここで筆者とされるのは、AERAの記者である今西憲之という人物です。

「筆者が入手した」としていますが、実際にこの文書を入手したのは「今治加計獣医学部問題を考える会」の共同代表であるK氏。まあ、すでに名前は知れ渡っていますから、私が伏字にする必要もないでしょうけどね。

彼がこのAERAの記者に渡した・・・というよりネット上で共有した資料です。

抜粋しますと、
「96億円は市の歳出の12%に相当するのにずさん過ぎる。あまりに露骨だ」と非難の声が上がっている。

 獣医学部の建設予定地約16.8ヘクタール(評価額36億7500万円)は、今治市から加計学園へ無償譲渡されることが決まっているが、さらに県と市から補助金として大学校舎、施設整備費など192億円の半額、96億円を出すことが決定。

この部分です。

決定されたスピードがどうだったのか、という問題は置いておくとして、問題としたいのは金額の部分。総額192億円のうち、その半分を今治市と愛媛県が出すことが決定したんですよ、という部分です。


今治市が決定した92億円という補助金の金額は適正だったのか?

この当時議論になっていたのはこの部分です。

特に、千葉県銚子市の千葉科学大学(加計学園系列)において、銚子市がほぼ同額の拠出を行い、結果として銚子市が300億円近い負債を背負うことになった・・・とする事例をあげ、加計学園も同様の道を歩むのではないか、とする論調を所謂「反対派」は用いていました。

私は千葉科学大学の事など調査したこともありませんから、この情報そのものの信ぴょう性も全く把握していませんので、銚子市の事例について言及することは致しませんが、こういった文章を読むと、あたかも今治市が借金をして96億円を捻出し、加計学園側に渡したかのような印象を受けるわけです。


加計学園補助金の「財源」

それでは今治市が加計学園のために捻出したこの「補助金」の「財源」は一体どこから出てきたのでしょうか?

市町村の財政の事ですから、国の財政を調べるほど簡単にはいきません・・・と思っていたのですが、やはり情報通はいるものですね。今回は以下のツイートを参考にしました。

omochikun‏  氏のツイート】
1975年【今治市】
大学誘致を目指す「学園都市構想」を決定
1983年【今治市】
建設予定地を土地造成
1983年〜【今治市】
高等教育施設を誘致する目的で、合併振興基金として40億円を積み立て
2006年頃【今治市】
獣医学部の誘致を始める

コピペ等を使われたのかと思われ、若干誤っている部分はありますが、内容としてはなるほどな、と思わされた内容です。
ポイントとなるのは

「1983年〜【今治市】 高等教育施設を誘致する目的で、合併振興基金として40億円を積み立て」

という部分。このうち、1983年~の部分は、おそらく上の項目である「1983年【今治市】 建設予定地を土地造成」という部分から「1983年【今治市】」という部分をコピペして再利用し、修正し忘れたのではないか、と思われまして、実は年代としては誤りがあるわけですが、ポイントとなるのは実はこの内容です。

ここに、「合併振興基金」という言葉がありますね?この言葉を調べてみますと、今回の「加計問題」の「財源」の全容が見えてきました。


「合併振興基金」という財源

合併振興基金」というのは、1995年以降、特に「2005〜06年」。小泉内閣時代に行われた、いわゆる「平成の大合併」に関連した基金です。

今治市でも「平成の大合併」の際に他の11の町村との間で合併が行われており、12市町村が合併されたのが平成17年(2005年)1月の事。

この時、「平成の大合併による新市町村建設計画の事業費として特例的に起債できる地方債」である「合併特例債」が発行されました。

もちろん「特例債」といっても立派な地方債=借金ですから、当然今治市は貸主に対して返済していく必要があります。
ですが、この「合併特例債」。実は特別なルールが設定されていまして、

 発行そのものは今治市側で行うわけですが、その償還にあたって、その70%を政府が今治市に代わって支払う

というもの。

 ・今治市はこの時発行された40億円の「合併特例債」を積み立てて、
 ・「高等教育施設の誘致を目的」とした「合併振興基金」を創設


しました。2005年の事です。

このうちの70%を政府が負担するわけですから、実質的な今治市の負担分はこのうち12億円。しかも基金として積み立てられていたわけですから、今治市一般会計の簿外で管理されていたわけです。

しかも

 「高等教育施設の誘致を目的」

として。
そして

 この40億円を「財源」として加計学園の誘致は決定

されました。

総額96億円ですから、40億円では足りないじゃないか、という人もいるかと思います。
ですが、この96億円の内1/3である32億円は愛媛県が負担しますので、実際に今治市側が拠出するのはこのうちの64億円分。

そしてこの64億円のうち40億円が合併特例基金より拠出されるわけです。

ですので、今治市一般会計の中から拠出されるのはこのうち24億円

これが10年間に分割されて加計学園に対して拠出されることになります。

ですから、1年あたりの拠出金額は2億4千万円ですね。

そしてこの金額に加えて

 1975年に起草された「学園都市構想」に基づいて、1983年に学園建設のために造成された土地

が加計学園に譲渡されたわけです。


この経緯をどう感じるか。それでもやっぱり96億円という拠出金額は大きいと感じるのか、それは読者の判断に一任する部分です。私は今治市に居住する人間ではありませんから、このことに対して云々できる立場にはありません。

最終的な判断もやはり今治市の方が行うべき部分です。

現在反対派の連中はこの96億円が「適正ではなかった」ことにするため、「不正な方法でK氏が入手した加計学園設計書の初期図面」を元に必死に「デマ」をばらまいています。

例えばこの初期図面では「ワインセラー」が設置されることが掲載されていることから、「獣医学部にワインセラーが設置されるのはおかしい」ということが一時話題になりましたが、実際にはこのワインセラーは30万円程度の「冷蔵庫」に相当するサイズのものであったことが明らかになっていますし、最新の図面では設置そのものが見送られていることも明らかになっています。

また、K氏の試算により、加計学園獣医学部の坪単価が150万円であるとされ、他の事例と比較して「高すぎる」との情報も話題となりましたが、これに対しては加計学園自身が、以下のような回答を行っています。

加計学園坪単価FAX

加計学園の回答によると、K氏の試算では、本来坪単価に含まれないはずの「外構工事費」や「設計管理料」なども含まれているため、実際の坪単価より高くなっていることが指摘されています。「外構」つまり、大学の建物の外にある構造物の事ですね。

また、同じFAX資料において、「P3実験室」の事が記されています。

「P3実験室」とは、「病原体」等の研究を行うための施設で、K氏らはこの施設の気密性が問題であるとし、「簡単に病原体が室外に漏れ出す構造になっており、非常に危険である」としました。

この「P3実験室」の件で象徴的なものは、「陰圧構造」という問題です。

「陰圧構造」と聞くと非常に難しく感じられるかもしれませんが、部屋の中の気圧を部屋の外よりも低くするための構造、と考えていただくとわかりやすいと思います。

空気は気圧の高いところから低いところに流れていきますから、部屋の中の気圧が外よりも低くなっていれば、病原体が室外に流出する危険性は抑えられます。

ところが、K氏は加計学園獣医学部の資料には、この「陰圧構造に関する記述が記されていない」というデマをばらまきました。

K氏とズブズブの関係にある日刊ゲンダイでは、以下のような記事を掲載しています。

【日刊ゲンダイ 2017年8月23日】
加計獣医学部図面から浮上 バイオハザード施設に重大欠陥

 加計学園が愛媛・今治市に建設中の岡山理科大獣医学部。日刊ゲンダイは先週、計52枚に及ぶキャンパスの建築図面を入手した。獣医学部棟最上階の7階大会議室は、ワインセラーやビールディスペンサーを完備した配膳室の真横。さながら“パーティー会場”だが、問題はそれだけではない。図面から浮かび上がるのは、「世界に冠たる先端ライフサイエンス研究」を行う施設としての重大欠陥だ――。

 加計学園が獣医学部新設の目玉としているのが、バイオセーフティーレベル3(BSL3)の研究施設だ。狂犬病や結核菌、鳥インフルエンザなど、人体に感染したら重篤化の恐れのある病原体を扱う実験室で、WHOの指針によると、<実験室は、建物内の交通が制約されていない区域と切り離されなければならない>と定められている。

 つまり、自由に人が行き来できる場所から遮断する必要があるのだが、今治キャンパスの獣医学部棟に設置されるBSL3施設は、研究エリアやディスカッションスペースのすぐ横に造られる予定だ。WHOの指針を完全に逸脱している。

 万が一の感染リスクについて専門家はどう評価するのか。元国立感染症研究所主任研究員の新井秀雄氏は「病原体を取り扱う以上、人為的ミスや機器の故障などによる実験室内の感染発生の確率はゼロとは言えません」と指摘した上でこう続ける。

「いざという時の処置として、他の人に感染が波及しないように設計上の配慮が求められます。しかし図面を見る限り、学生や教職員が行き来する同一フロア内に、BSL3施設が置かれ、管理区域として区別されていません。実験室感染の対応設備として緊急シャワーが設置されていますが、実験室の前室内ではなく、学生が自由に行き来できるオープンスペースの一角に位置している。これは理解不能です。設計図だけを見ても、感染拡大が懸念されます」

■「1週間で感染者が出る」

 通常ならば、実験室内部は病原体の外部飛散を防ぐために「陰圧構造」になっているが、それも確認できないという。

「感染症の研究を知らない人が設計に携わったような印象を受けます」(新井秀雄氏)

 専門家が見れば一目瞭然。シロート同然の設計なのだ。こんな欠陥施設のために評価額36億円の広大な土地を無償で払い下げ、さらに最大96億円という破格の補助金まで支払われるのだ。締めて、約133億円――。おまけに獣医学部内の事故によってパンデミックが起こっても何ら不思議ではないのだから、害悪施設を税金で建てるようなものだ。

「図面を見た国立研究所の安全管理専門委員のひとりは、このまま研究を始めたら『1週間で感染者が出る』と指摘しています。加えて、実験室の吸気や排気がどうなっているのか分からず、配管設備も不明のまま。病原体に触れた廃棄物がきちんと処理されるのか不安です」(「今治加計獣医学部問題を考える会」共同代表の黒川敦彦氏)

 本当に獣医学部を新設したいのなら、学園側のトップである加計孝太郎理事長は市民に対して、感染リスクの予防についてきちんと説明する必要がある。

 それをせずに逃げていては、先端ライフサイエンス研究なんて“夢のまた夢”だ。

対象となる部分にはアンダーラインを引いています。抜粋します。
 通常ならば、実験室内部は病原体の外部飛散を防ぐために「陰圧構造」になっているが、それも確認できないという。

「感染症の研究を知らない人が設計に携わったような印象を受けます」(新井秀雄氏)

ですが、これは完全な「デマ」。

以下の引用元はあくまで素人の方が作成したブログですので、「信ぴょう性が薄いのではないか」といわれるかもしれませんが、掲載されている資料は「本物」ですから、ここに対して異論をはさむ余地はないと思います。

以下略ちゃんの逆襲 ツイッターGOGOよりの資料引用

加計学園実験室

2加計学園実験

上図面に「室圧ダンバー制御フロー系統図」と記されています。要は、この図面がP3実験室の室圧に関して記された図面だということです。

そして、下図面に赤丸で囲った部分で「+10Pa」「-20Pa」「-50Pa」と記されていますね?
プラスであれば「陽圧」、マイナスであれば「陰圧」であることを示しているのだそうです。つまり、「-20Pa」「-50Pa」の2つの数字が「陰圧」になっていることを示している部分。

「-50Pa」となっているのが「P3実験室」の室圧で、「-20Pa」となっているのがエアロック室。「+10Pa」となっているのが室外ということになります。

つまり、この図面こそまさにP3実験室が「陰圧構造」となっていることを示す図面であり、文中で「新井秀雄氏」という人物の言葉を引用する形で、「通常ならば、実験室内部は病原体の外部飛散を防ぐために『陰圧構造』になっているが、それも確認できないという」

文面が全くのデマであることがわかります。

これらの資料の流出元は完全にK氏。彼がすべての資料や情報を流出させています。

民進党、自由党を含む彼らが政府たたきから今治市たたきにシフトチェンジした理由は、すでに政府レベルでは批判する根拠すら見当たらないからです。そして民進党PT(プロジェクトチーム)が政府を批判するために用いていた情報の流出元はすべてK氏。

そしてその情報は軒並み「デマ」です。


今回の総選挙で安倍内閣が争点とすべきこと

今回安倍首相が衆議院の解散を言及するにあたって、前原代表を筆頭に「森友隠し、加計隠し」という言葉をいう民進党議員をTV上でもご覧になったと思います。

ですが、これらの情報は既に政府側に何一つ問題がなかったことが明らかとなっており、これを選挙の争点とすることははっきり言って時間の無駄。政府が国民に訴えなければならないことはそんなことではないはずです。

個人的には、

1.「アベノミクス」とはいったい何なのか。これを今一度国民に分かりやす形で提示すること。

もちろん「成果」も含めてです。しっかり国民が理解し様にかみ砕いて説明すること。

そしてもう一つ、

2.「改憲」

を、そろそろ明確な争点として打ち出すべきなのではないでしょうか。

自民党ではなく、安倍内閣として明確な方向性を示したうえで、どのように改正すべきなのかという具体的な内容を争点にすべきだと思います。

そして次に

3.北朝鮮問題を含む安全保障の問題

この3つを争点にするだけでも十分に解散総選挙を行い、改めて国民に「信を問う」価値が生まれるのではないかと、私はそう思っています。


この記事のカテゴリー >>ロシア革命とソビエト連邦誕生に至る経緯


<継承する記事>
第352回 ドイツ共産党が起こした「三月行動」とコミンテルンの関わり

前回までの記事では、ロシア革命後のロシアで結成された「第三インターナショナル=コミンテルン」が、一番最初に「支援」を行ったとされる「ドイツ革命」の様子を検証してみました。

コミンテルンがドイツ革命に対して行った支援とはいったいどのようなものだったのか。

これを実行したのはコミンテルンが派遣したハンガリー人クン・ベーラ。
クン・ベーラが介入する以前に、コミンテルンはドイツ共産党中央委員会に働きかけ、当時議長を務めていたパウル・レヴィを組織的に失脚させ、ここに指導者としてクン・ベーラを送り込みます。

クン・ベーラはドイツ共産党の新たなる指導部に働きかけ、当時のドイツの首都、ワイマールに隣接する都市「マンスフェルト」で武装蜂起を起こさせます。

マンスフェルトの占領に一時的には成功するものの、たった3日間で国防軍によって鎮圧されてしまう・・・という非常にお粗末な結果に終わりました。

ともあれ、これが初めてコミンテルンが支援した「共産主義革命」の顛末です。

三月行動が失敗した後、三月行動を批判したパウル・レヴィは共産党そのものから除名され、その後コミンテルンは方針転換し、ドイツ共産党は過激な行動を控えるようになった・・・とWikiベースでは記されています。


今回の記事では、改めてロシア国内におけるコミンテルンの動向に着目してみます。

しかしこの時期のロシア、「ロシア」と呼ぶべきか、「ソ連」と呼ぶべきか・・・迷いますね。


第一次世界大戦後のロシア

第347回までの記事 に於きまして、ロシア革命後の「ウクライナ」の歴史についても振り返りました。

年表で振り返りますと、

ウクライナが中央同盟軍との間で「ブレスト=リトフスク条約」を締結させたのが1918年2月9日。

ロシアが中央同盟国との間で「ブレスト=リトフスク条約」に締結したのが1918年3月3日。

中央同盟国が連合国軍に敗北したのが1918年11月13日。

ドイツ共産党が誕生したのが1919年1月1日。

ポーランド・ソビエト戦争が勃発したのが1919年2月。

レーニンがコミンテルンを結成したのが1919年3月。

ドイツ共産党が三月行動を起こしたのが1921年3月

と、こんな感じです。

ドイツ共産党が誕生するまでの間でも、各国で共産党が結成されていましたから、コミンテルン結成が目的としていたのは、これらの地域での共産革命の支援です。

ロシアで起こった事を東欧を中心とした各地で再現しようとしたんですね。
1918年3月3日、ブレスト=リトフスク条約に署名し、世界大戦から手を引いた後、ボリシェビキはその党名を「ロシア共産党」へと改名しました。

3月3日、対外戦争そのものは終結したわけですが、ドイツとの間で締結したブレスト=リトフスク条約によって、ロシアはドイツに対して圧倒的な譲歩を強いられたわけです。

この事から、第347回の記事 でも掲載しました通り、この事でボリシェビキ政権はロシア国内のあらゆる階層から非難の的に晒されることとなります。

その典型的な事例が、これまで連立して内閣を構成していた社会革命党左派の政権からの離脱、及びボリシェヴィキに対する武装蜂起、1918年8月30日のレーニン暗殺未遂事件です。

レーニン暗殺の犯人だとされた社会革命党右派は弾圧の対象とされ、実際には事件とは無関係の512人の政治家や軍人が処刑されました。

ロシア国内は赤軍(共産派)と白軍(反ボリシェヴィキ派)に別れて内戦状態に突入しました。

ロシア内戦

ドイツが連合国軍に敗北すると、連合国軍は白軍に味方し、赤軍との間で干渉戦争に突入します。

ドイツが撤退した後の空白地域に共産党を結成することを目的としてレーニン自身も赤軍を送り込んでいますね。

結果的にロシア内戦では赤軍が勝利するわけですが、この赤軍を組織したのがトロツキー。
・ボリシェヴィキはロシアの人口稠密(過密)地帯を支配しており、1921年には数百万人もの兵士を徴兵により募兵することが可能であった。それに対し白軍の兵力が25万人を超えることはなかった。

・ボリシェヴィキの支配地域にはロシアにおける主要工業地域が含まれており、武器の供給においても圧倒的な有利にあった。

・鉄道の路線も赤軍が支配しており兵士・装備の輸送を効率的に行えた一方で、白軍は互いに分断され、政治的、民族的に見ても統合される可能性はほとんどなかった。

・白軍の司令官は帝政時代の貴族や地主が大半であり、彼らは占領地で旧体制の復活を望み農民から土地を取り上げたため民衆からの支持を失った。(Wikiより)

赤軍の置かれた立場はこのような状況にあったわけですが、更に。
レフ・トロツキーはブレスト=リトウスク条約調印後の1918年に軍事担当の人民委員に任命された。彼は優れた演説家であるだけでなく、赤軍の組織化にも才能を発揮した。

コルニーロフによる反乱の際に暫定政府によって組織化された赤衛軍を基として、徴兵により赤軍を作り上げた。

彼は列車を駆使し各地を回り赤軍の士気を高めることに成功した。彼の取り決めた規律は厳格を極め脱走兵は直ちに射殺された。

軍の忠誠を維持するためにボリシェヴィキの任命する政治将校が設けられるようになった。

トロツキー自身は軍事作戦に直接関与せず、赤軍に参加していた75,000人もの士官たち、その多くは職業軍人が白軍との戦闘を指揮した。(Wikiより)

要はトロツキーは軍を組織する能力も非常に有能であった、ということですね。

こうしてみると、ロシア革命ってトロツキーがいなかったらどうなってたんだろう・・・と思わずにはいられません。
10月革命も、あそこまで穏やかに収束させることができたのはトロツキーのおかげで、若しレーニンだけしか行かなかったら、もっと凄惨な結果になっていたのではないか・・・と思わずにはいられません。

これは、レーニンがそういうものを望んでいた、というより、たぶんそういう方法しか思いつかなかったんじゃないかという想像からです。ドイツ共産党による三月行動において、クン・ベーラが行った革命の様に・・・。

ただ、実際に内戦で行われた戦闘行為は凄惨なものであったようです。
ここもWikiから引用します。
内戦中赤軍と白軍、両軍の手により一家離散を余儀なくされる民間人も珍しくはなかった。

片方の軍が残虐行為を働くと、もう片方もそれに劣らない報復行為に及んだと言われている。

レーニンの下で誕生した秘密警察チェーカーは令状も無く無制限に市民を逮捕できたため、多くの人々が無実の罪を着せられて処刑された。

また、この時取られた経済政策「戦時共産主義」に関しても同様の傾向がみられます。

1920年から1921年にかけて発生した旱魃が事態を更に悪化させた。

レーニンは市場経済廃絶のために飢餓に苦しむ地域に救援の手を差しのべるどころか逆に食料を強制的に徴発し、多くの餓死者を出した。

革命勃発からわずか数年の内に、およそ800万人が死亡したと推定されている。

この800万人という数字は経済政策のみによるものではなく、戦闘行為まで含まれるものと思われます。

この中で発生したのがあの「尼港事件」です。

尼港事件(リンク先最下部)

尼港事件で焼け落ちた日本領事館

内戦そのものは、ポーランド・ソビエト戦争が終結し、ここに投じられていた赤軍が投じられたことで赤軍側の勝利に終わりました。(1920年11月)


内戦終戦後のロシア

内戦により疲弊したロシア経済を救うため、レーニンがとった経済政策が「ネップ」と呼ばれる経済政策です。

戦時共産主義政策では軍隊に武器と食料を回すため、旱魃に襲われた状況の中でも民間から余剰穀物を強制的に徴収し、ロシア全体を飢餓状態に陥れたわけですが、今度はその余剰穀物に「食料税」を課し、税金を納めた後は自由に売買をしてよい、というルールを作ります。商業も一部認められたのだそうです。

資本主義を否定した共産主義ですが、内戦後のロシアではその「資本主義」の制度が導入されたんですね。

レーニンはこれを「国家資本主義」と呼称したのだそうです。

一方でレーニンは子供のころからロシア正教会=宗教の腐敗ぶりを目の当たりにしており、大人になったレーニンは「マルクス主義」を信仰する「無神論者」だったのだそうです。彼はロシア正教会を「反革命の温床」とみなしていたんですね。

1922年3月、教会の財産の接収に反対するデモで死者まで発生したことを受け、レーニンはロシア正教会の弾圧へと突き進みます。以下、Wikiからの引用です。
1922年3月、イヴァノヴォ州シューヤで発生した教会財産接収に反対するデモが暴徒化した。

死者まで招いたこの事態に憤慨し、3月19日にロシア正教会の弾圧を指示。

『これを口実に銃殺できる反動聖職者と反動ブルジョワは多ければ多いほどよい。今こそ奴らに、以後数十年にわたっていかなる抵抗も、それを思うことさえ不可能であると教えてやらねばならない』

と厳命した

実際に弾圧された教会はロシア正教会に限らず、イスラム教のモスクまで弾圧の対象となったのだそうです。


さて。レーニンは暗殺未遂の後遺症もあり、この頃から徐々に健康を害していくようになります。

今回の記事は「前半」としてここまでとし、次回の記事は「グルジア問題」と「レーニンの死」、そしてレーニンの死後のロシアについて記事にしてみたいと思います。


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