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<継承する記事>第533回 岸田内閣の令和5年「総合経済対策」はなぜ評価されないのか
今回の動画の最大の目的は、「魚屋のおっちゃんねる~木原・平の地上波いらず~」をご紹介すること・・・にあると言っても過言ではありませんね。
勿論ご存じの方は既にたくさんいらっしゃるでしょうが、改めて、私のブログでも紹介しよう、と思った次第です。
タイトルにある「年収の壁撤廃」のお話は、実はこの魚屋のおっちゃんねるから登場しています。発言を行ったのは番組に出演している平将明衆議院議員で、過去に放送された「木原・平の地上波いらず」の番組内で「年収の壁撤廃」について言及なさいました。
これが岸田内閣の政策として取り上げられたわけですが、単純に「年収の壁撤廃」と耳にする語感以上に考え方が面白いなと思いましたので、この話題に触れてみようと思います。
「年収の壁」とは?
冒頭に今回の年収の壁支援パッケージの画像を掲載しておきます。
と言っても意味が解らないかもしれませんので、「そういった物がある」程度に最初は目にしていただくだけで大丈夫です。
図にあるように、「年収の壁」には「106万円の壁」と「130万円の壁」の2種類があります。厳密には更に複数の「年収の壁」がありますが、今回話題になっているのはこの2つの壁です。
この二つの「年収の壁」とは一体何なのかと申しますと、「パート・アルバイト労働者」の内年収が106万円、もしくは130万円を超えると「社会保険」に加入しなければなりませんよ、というその基準を示したものです。
従業員が101名を超える企業は106万円、100名以下の企業は130万円がそれぞれ基準となっていて、それぞれが「年収の壁」と呼ばれています。
年収の壁の問題点
では、その「年収の壁」の一体何が問題なのかと申しますと、例えば130万円の壁で考えた場合。
年収129万円までは支払う必要がなかった「社会保険」を130万円を超えると支払わなければならなくなるため、手取りで考えた場合、年収130万円の場合の手取りが年収129万円の場合の手取りよりも少なくなってしまう、という事です。
この為、企業側でアルバイト・パート労働者の労働時間を調整し、101名を超える企業であれば年収106万円、下回る企業であれば130万円の年収を超えない様、労働時間を調整するような習慣が日本ではずっと続いてきていました。
この「年収の壁」を調整するため、
106万円の壁の場合…本来であれば企業が支払うべき給与の一部を企業ではなく政府が負担
130万円の壁の場合…繁忙期、一時的に労働時間が増加し、収入が増えた事を事業所が証明
する事によって、年収の壁以上に年収が増えても引き続き従業員が同居する家族の扶養の範囲内であることを認める制度改正が行われたのが今回の「年収の壁撤廃」と呼ばれる政策です。
なぜ今回の経済政策で年収の壁撤廃が取り上げられたのか
もちろんこの「年収の壁」は本年突然問題になったわけではなく、以前から存在していた問題です。
また更にもともと106万円の壁は従業員500名以上の企業に適用されていたものですが、これが2022年に101名以上の企業にまでその範囲が広げられました。
実は年収の壁の範囲が広げられた理由と、今回の「年収の壁撤廃」政策が実行された理由とは、根本的には同じ理由がその根拠にあります。
最大の問題は、「年収の壁」が理由で本来であれば働くことができるのに、制限をかけてしまう人がいる、という事。
これはネガティブな意味ではなく、もし「年収の壁」がなければもっと働きたい人はいるのですが、働くと収入が減るために働くことをやめてしまっている、という意味です。
「社会保険」には健康保険と年金の二つがあるわけですが、年収106万円であれば合算で約15万円、130万円であれば約30万円。これまで天引きされていなかった金額が差し引かれて手取りとして支給される様になるのです。
勿論、一括して差し引かれるわけではありませんが、特に年収130万を超えた場合などは月額でも2万円以上増えるわけですから、やはり「労働する意欲」が削がれるのは当然の事かと思います。
「年収の壁撤廃」が話題に上ったもう一つの理由
前章の「理由」はこれまでも同様であり、今年度になって突然降って湧いた理由...というわけではありません。
ですが、今年度...というよりやはりアベノミクスが実行されるようになって以降、特に岸田政権下で発生するようになった理由として、「時給の増加」という事が理由としては非常に大きいです。
きれいな表現が思いつきませんので「時給の増加」という表現を使用させていただいたのですが、もっとわかりやすく申しますと、「給与所得者全体の所得増」です。
どのような増加をしているのか、については 前回の記事 の最終章を読んでいただければと思うのですが、岸田内閣の政策を通じて、給与所得者全体の所得は間違いなく増加しています。
増加する理由として最も多いのはこれは間違いなく「時給アップ」です。
同じ会社の中でもそうかもしれませんが、より時給の高い企業が選択されるようになっており、より良い人材を獲得しようとすれば当然企業としても時給を上げざるを得ない状況になっています。
ところが、これをパート・アルバイト労働者で考えてみますと、今回話題としている「年収の壁」が存在しますから、どんなに年収を増やしたくてもこの「年収の壁」が障壁となって、それ以上に年収を増やすことができないわけです。
増やしたければ扶養控除を外れて自ら社会保険料を負担是ざるを得ません。
そして更に、「時給」が上がっていますから、昨年、一昨年と比較してもパート・アルバイト労働者が労働することが可能な「労働時間」は減ってしまっているのです。
当然ですね。受け取ることができる給与は決まっているのに、その「単価」が増加しているわけですから。
「実質」「名目」「物価」の関係で考えると、「時給」は「物価」、「労働時間」が「実質」、「給与所得」が「名目」となります。
「名目」の上限が決まっている中で「物価」だけが上昇していますので、当然「実質」は減少します。
「年収の壁」を考えた場合、実は岸田内閣における最大の問題点はここにあるのです。
「物価上昇」を抑え、国民の生活を豊かにするために
これは、魚屋のおっちゃんねるの他の動画で木原さんがおっしゃっていた内容(ひょっとするとこの動画でも言及しているかもしれません)で、私も思わず「なるほどな」と思わされました。
「物価」が上昇する理由として「消費(量)の増加」が挙げられることは 前々回の記事 でお伝えさせていただいた通りなのですが、「供給」が伸び悩む中で「消費量」のみが増加すれば、当然供給量不足に陥り、「物価」は上昇します。
私が前々回の記事 でお伝えした、「消費量」と「物価」との関係性について、私の想定にはなかった考え方ですが、考えてみれば当然のお話なのです。
前回の記事 に於いて、今回の「総合経済対策」において、その中心となる政策が「給与所得層に対する所得税減税」と「非課税世帯に対する給付」の二つである事。
そして、「給付」の対象が「非課税世帯」のみであり、給与所得層に対しては「減税」という政策しかとられていないことが世論として岸田内閣が批判される理由の一つとなっていることもお伝えしました。
ですが、まず一つ考えていただきたいのは、現在の日本社会は、「消費が不足している社会」なのでしょうか?
寧ろ現在は供給力に対して「消費過多」となっており、このことが日本の「物価」を釣り上げる要因ともなっている様に思います。
これを最も象徴するのが現在の日本の「労働力不足」という言葉です。
前回の記事 において、確かに昨年の「給与所得者数」そのものは減少したものの、所得として400万円以上稼ぐ給与所得者数の数がすべての給与所得層において増加している事。更に生産年齢における「無職者」と「失業者」の数が減少している事を話題にさせていただきました。
これは、決して「労働力」が余っているわけではないことを示すデータでもあります。
一昨年と比較すると「給与所得者数」は確かに減少しましたが、それでも例えば安倍内閣以前の給与所得者数から考えると非常にその数は増えています。
にも拘わらず、現在の日本社会は「労働力不足」だと言われているのです。そして実際に足りないから給与所得そのものも増えています。労働力不足とは=「供給量不足」であることを示しています。
このような状況の中でいくら「国民が求めているから」と言って無責任にすべての所得層に莫大な、例えば今回非課税世帯に分配される、とされている7万円という金額を給付したとしたら、日本社会はどのような状況になるか、想像できるでしょう?
間違いなく「供給量不足」に拍車が掛けられますますの「物価高騰」へとつながるでしょう。
今回、岸田内閣において「年収の壁」撤廃が行われるようになった最大の理由は、実は「供給量不足」の解消にあります。
例え政府が給与所得の一部を負担する状況を作ったとしても、その事でパート・アルバイト労働者が年収の壁を気にすることなく働くことができるようになり、労働時間が増えることになれば、これを日本の「供給量不足」の解消にもつながります。
これは、実は単に供給量不足の解消のみが実現されるだけではなく、「物価高騰の抑制」にもつながることになるのです。
その上で給与所得者には、景気が向上したという事実を「給与所得(労働の対価)」として感じることができるよう、「所得税減税」が行われるのです。
「目の前にニンジンをぶら下げる」ことを国民が要求する時代はそろそろ終焉を迎えようとしています。
「消費」を活性化することよりも「供給」を安定させることが必要な時代が訪れた事に、私たち国民はいい加減、気づかなければならないではないでしょうか。
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<継承する記事>第532回 岸田内閣での物価高騰は実質増税?物価が上昇する3つの理由
令和5年11月2日、岸田内閣では「デフレ完全脱却のための総合経済対策~日本経済の新たなステージにむけて~」というお題目で新たな総合経済対策を発表しました。
下記画像では非常に見にくいと思いますので、PDFデータリンク先を合わせて張り付けておきます。
デフレ完全脱却のための総合経済対策
この内、このところSNS、マスコミを含めて散々「問題」であるとされているのが「第1節 物価高から国民生活を守る」にある、以下の部分です。
・所得税・個人住民税の定額減税(納税者及び配偶者含む扶養家族1人につき令和6年分の所得税3万円、令和6年度分の個人住民税1万円の減税)【税制】
・低所得世帯への支援(重点支援地方交付金の低所得世帯支援枠に1世帯当たり7万円を追加し、住民税非課税世帯1世帯当たり合計10万円を目安に支援)
・両者の間におられる方(※)への丁寧な対応
(※)①住民税非課税世帯には該当しないが、住民税均等割のみ課税される世帯、定額減税が開始される時期に新たな課税情報により住民税非課税世帯に該当することが判明する世帯、②低所得世帯のうち世帯人数が多い子育て世帯や、定額減税の恩恵を十分に受けられないと見込まれる所得水準の者
・燃料油の激変緩和措置を2024年4月末まで講ずる。また、電気・ガスの激変緩和措置を2024年4月末まで講じ、同年5月は激変緩和の幅を縮小する。
・漁業者、施設園芸事業者等向けの燃料油価格の激変緩和措置も引き続き実施
・重点支援地方交付金の追加
生活者向け:学校給食費、プレミアム商品券等発行による消費下支えの取組、LPガス使用世帯等への支援
事業者向け:中小企業(特別高圧・LPガス)、農林水産事業者、地域観光業、医療・介護・保育施設、学校施設、商店街・自治会等への支援
・公共事業について、適正な予定価格の設定やスライド条項の適切な運用徹底の上、必要な事業量を確保賃金支払の原資となる適切な労務費の確保に係る制度改正を含めた対応の具体化を進める
・食品ロス削減、フードバンク・こども食堂支援
上記枠の内、特に赤文字で掲載した部分がこのところ話題になっている部分ですね。
SNS発信、マスコミ報道双方を見てもこの内容に批判的な内容が多く、このことが岸田内閣の政権支持率を大幅に下落させる一因とすらなっており、また私自身が本日の記事のメインテーマとして据えている内容でもあります。
「デフレ完全脱却のための総合経済対策」はなぜ評価されないのか
それでは、一体なぜ今回の岸田内閣での経済対策がここまで批判されているのでしょうか。
これには、大きく分けて4つの理由があると思います。
1.なぜ「給付」ではなく「減税」なのか
これは、最も多く聞かれる理由の一つです。
低所得者の内「非課税世帯」に対しては、1世帯当たり7万円という給付が行われるのですが、課税世帯に対しては3万円の所得減税及び1万円の住民減税が行われることとなっており、更にこの金額が支給されるのは一括ではなく、月額で3333円の減税となっています。
計算すると約13.3か月にわたって減税が行われる計算になるのですが、この金額が独り歩きし、「月額で3000円ちょっとではあまりに少ないのではないか」という批判が起きています。
正確には、世帯を構成する一人当たりに行われる減税ですから、単純に「月額3000円」の範囲で収まる話でもありますんが。
2.なぜ来年の6月からなのか
二つ目の批判として、特に所得減税の措置が取られるのが来年の6月であることから、「それではあまりに遅すぎるのではないか」という批判が起きています。
根本として「物価高騰が起きている」という社会背景を前提としての批判で、これは上記一覧表に掲載されているお題目にも「物価高から国民生活を守る」とされており、批判する人の多くは「国民が最も物価高に苦しめられるのは年末の12月であり、同じ減税を行うにしてもなぜすぐ行う事ができないのか」という内容の批判が行われているのです。
3.なぜ「消費減税」ではなく「所得減税」なのか
これは、確かにマスメディアでも同様の報道がなされている様には思うのですが、その声を多く見かけるのはむしろSNSなのではないかと思います。
れいわ新選組や共産党などを初め、れいわ新選組であれば10%の消費増税が行われる前後から、共産党であれば消費税導入当初より「消費減税」の主張をおこなっていた勢力に加え、私が 第529回の記事 において若干話題にした「MMT」という考え方を基に消費減税を訴えていたグループがその中心となっています。
多かれ少なかれ、元々はこのような考え方を行っていなかった人達も少しずつ感化されていて、「消費増税が行われたのはおかしい」という考え方を行う国民が決して無視できるレベルではないほどに増えていることもまた事実です。
そういった人たちが上記小タイトル3にあるような批判を行っており、私が見たマスコミ報道でも、かつて「アイドル」に含まれる立場にあった女性がコメンテーターとして報道番組に出演し、「なぜ消費減税ができないのかという説明を全く行っていない」などという主張すら行っていました。
このこともまた、所得減税が批判される理由の一つとなっています。
4.「後手後手」になっているのではないか。
これは、上記3つの理由と比較するとそう多く見かける意見ではありませんが、それでもこのような批判のされかたもしているのが今回の「所得減税」です。
3番にある「消費減税」などを主張する人は何年も前から多く存在しましたし、今回、このタイミングで「減税」が「漸く」話題となった事そのものを批判し、「世間で減税が騒がれ始め、批判に耐えられなくなって減税を持ち出したんだろう!」という意見も決して少なくはない規模で見かけることがあります。
これは、例えば「エネルギー」に対する補助金等に関しても、国民民主の玉木代表が「トリガー条項、トリガー条項」と騒いだ結果、ようやく導入した...様に見えてしまうケースがあるのと構造はよく似ていて、こういった批判が出るのはやむを得ないのかな、とは思います。政府がこれを意図していたのかどうかは別として、その様に見えてしまう事は「事実」ですので。
「総合経済対策」への評価は妥当なのか?
で、です。私の今回の記事のテーマの中心となる話題はここからスタートいたします。
先ほどお示しした様に、令和5年11月2日に発表された岸田内閣の「デフレ完全脱却のための総合経済対策」は、発表される以前から漏れ出てくる情報の段階で既に私から考えると全く場当たり的で不適当な「批判」が行われていました。
ですが、私は先ほどの1~4なるような批判について、決して妥当な評価ではないと考えています。繰り返しになりますが、批判そのものは非常に場当たり的で、ことわざで言う「朝三暮四」的な内容だと思っています。
意味合いとしては、「目前の差にこだわり、結局は同じ結果なのに気がつかないこと」という意味です。
政府に対し、目の前に吊り下げられたニンジンのような政策ばかりを求め、喉元を過ぎればまた同様な現状が目の前に繰り広げられていて、また同じニンジンのような政策を政府に求める。本当にその繰り返しでよいのかと私は訴えたい。
では、なぜ今回の岸田内閣の政策に前記したような批判が出るのかというと、実は岸田内閣が考えている日本の現状と、批判ばかりしている人たちが考える日本の現状には、とある、全く異なる「条件」が前提とされているからです。
そして、それこそが「賃金」についての考え方、受け止め方とその評価についてです。
今の日本の「賃金」は増えているのか、減っているのか?
今回の岸田内閣の経済政策を批判する人の多くは「日本の賃金は減っている」と考えています。
ですが、評価する人の多くは「増えている」と考えています。
現象は同じはずなのですが、なぜこのように180度異なる受け止め方を国民は行うのでしょうか?
「名目賃金」と「実質賃金」
2つの「属性」の国民の間で、現在の日本の賃金状況に対して受け止め方が二分する最大の理由が賃金を「名目」で考えるのか、「実質」で考えるのかという事です。
「実質賃金」については私、過去の私の記事の中で度々検証をしておりまして、その集大成として作成した記事が次の記事です。簡単な概略をフレーム内に記しています。(※本筋とは直接関係がないのでフレームで囲っています。読みたい方だけ読んでください)
第464回 物価から考える実質賃金~実質賃金の正体完結編~
仮に前月末、10月31日に賃金を受け取り、31日には1銭も消費することなく11月1日がスタートしたと考えます。この場合、「11月1日」が「期首」。月末、11月30日が「期末」です。11月30日には給料を受け取ったとしても、それは11月の消費に使用できる給料ではなく、12月から使用することができる給料であると考えます。
11月の「名目賃金」とは10月31日に実額として受け取った賃金の事で、仮にその金額が30万円であったと考えます。
ここから消費生活がスタートし、家賃や水道代光熱費、食費や学費等を初め、趣味や娯楽に充てられた資金も含め、支出が全て完了した後、手元に貯蓄額として5万円の賃金が残ったとします。
「実質賃金」とは、今年度11月と昨年度の11月を比較しようとした際、今年度11月に手元に残った貯蓄で、昨年度11月に行った「消費」を何回繰り返すことができるのかを比較するための数字です。
昨年度も同様に貯蓄が残っていた場合、その貯蓄で同じ月の消費を何回行えるのか。その回数同士を今年度と昨年度とで比較します。
この為の数字が「実質賃金」です。具体的にどのようにして計算するのかは第464回の記事 で再度ご確認ください。
フレーム内にも記させていただいた通り、「実質賃金」は「すべての消費活動を終えた後、手元に残った貯蓄で比較期と同じ消費を何度起こすことができるか」という数字です。
実際には両年の貯蓄額を同じ数字で割りますので、「計測期にどのくらいの貯蓄が行えたのか」を比較する数字であり、貯蓄額と実質賃金が同じ意味である、といっても間違いではないかと思います。
いうなれば、現在「実質賃金」を用いて岸田内閣の政策を批判している人は、「岸田内閣では貯蓄が増えなくなった!岸田内閣の政策は失敗だ!」と言っているに等しいわけです。
ですが、その「貯蓄」が変動する理由には様々な理由がありますから、大事なのは実質賃金が増えたのか減ったのかという事ではなく、実質賃金が「なぜ変動したのか」というその理由なのです。
これを検証する能力のない連中から批判されているのが今回の岸田内閣の経済政策です。
物価が変動しても実質賃金は変動しない?
さて。前章のような記し方をすると、人によっては、
「物価が変動しても実質賃金は変動しないという事なのか?」
という疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、この質問に関しては「必ずしも正確ではない」というお答えになろうかと思います。
条件として、「物価=物の値段ではない」という前提で私はこのブログ全体を作成していますが、ただこの質問へのお答えとしては、例外として「物価」と「物の値段」をほぼ同等のものである、と考えて記事を進めます。
つまり、質問を言い換えると「物の値段が変動しても実質賃金は変動しないのか」という意味合いに置き換えて記事を進めます。
「物の値段の変動」と「実質賃金の変動」が連携するケース
これは単純なお話で、名目賃金を「消費に回された部分」と「貯蓄に回された部分」に分けて考えた場合。
・基準年と比較年とで受け取った名目賃金は同額である。この額を仮に5万円と考える。
・名目賃金で購入した品目は1種類で、両年で購入量(数量)は同じで量であると考える。今回は品目をアンパンで、数量を200個と考える。
基準年のアンパンの購入単価=100円
比較年のアンパンの購入単価=200円 であった場合。
基準年の実質賃金(貯蓄額)
=名目賃金5万円-(アンパンの購入単価100円×購入量200円)=3万円
比較年の実質賃金(貯蓄額)
=名目賃金5万円-(アンパンの購入単価200円×購入量200円)=1万円
このケースですと、「物価」つまり「アンパンの購入単価」が100円→200円に上昇したことで「実質賃金」、つまり「貯蓄額」が大幅に減少していることがわかります。
マスメディアやSNS上で岸田内閣の経済政策を批判し、「実質賃金が減少し続けてている事」を理由に「賃金がいつまでたっても上がらない」と批判している人の多くはこの発想で岸田内閣の政策を批判しています。
改めてのお話ですが、この評価は本当に「妥当」なのでしょうか?
改めて考える「物価」の意味
先ほどの事例では物事を理解しやすくするために、「物価=物の値段」という前提でお話をしましたが、この事例は「実質賃金(=貯蓄額)」を考える上での立った一つの事例にすぎません。
例えば、先ほどの同じ例で、多くの人の頭の中には、「100円のアンパン」と「200円のアンパン」は全く同じ原料から作り出した同じ規格のアンパンだ、という思い込みが発生しているかもしれません。
ですが、ひょっとしたら、基準年のアンパンは量販店で販売されている全国メーカーが生産したアンパンで、比較年のアンパンは老舗のパン屋さんが特別な材料を用いて手作りで作ったアンパンかもしれません。
この場合、単純に「実質賃金が下落した」と言われても、それは本当に経済政策が失敗したのかどうかと聞かれると多くの人の頭の中に疑問符が浮かぶのではないでしょうか。
また、先ほどはアンパン同士で比較しましたが、「実質値」を考える場合、実はそのコンテンツがアンパンなのか食パンなのか、はたまたお米なのかジュースなのか、場合によっては家電製品なのかどうかすら「考慮」はされていません。
それがアンパンであろうが食パンであろうが、実質値の単位は数量ですから同じ「1」という数字になります。100円であっても、0円であっても。
混乱させないように掲載ししますが、先ほどの事例で言えば
アンパンの単価=物価、購入数量=実質値、購入総額=名目値であり、これに別枠として「貯蓄額=実質賃金」という要素が加わっている、という風に考えます。
そして実質賃金の正式な数字は「基準年」と「比較年」それぞれの期末の「貯蓄額」を基準年の「消費総額」で割ることによって算出されます。
比較年に「何が消費されたのか」など本来全く関係がない事がよくわかりますね?
改めて考える、「物価が変動する理由」
その上で、前回、第532回の記事 内で「物価が変動する理由」について掲載させていただきました。
理由としては、大枠で
・売上単価が変動する
・消費量が変動する
という二つの理由があり、更に「売り上げが変動する」ケースでは
・原価部分が変動する
・利益部分が変動する
という二つの理由があること。合わせてこの3つの理由が連動して物価は変動するという事をお伝えさせていただきました。
「物価が高騰している」という事のみがニュースになりがちですが、その高騰する「物価」の中には「人件費(つまり賃金)」も含まれている事を忘れてはならないと思います。
「名目賃金」から見る岸田内閣の賃金動向
私、中間層の見方 というシリーズ等、複数の記事において、日本の給与所得、特に「名目賃金」の動向を見る資料として、厚労省が出してくる「毎月勤労統計」よりも国税庁が出してくる「民間給与実体統計」のデータの方がより正確性があり、賃金を見る資料としては信頼性が高い事をお伝えしてきました。
ですが、その唯一であり最大のウィークポイントとして、そのデータが更新される機関の遅さを挙げておりました。
厚労省データが毎月更新され、データとしておよそ2か月ほど遅れて出てくるのに対して、国税庁データは更新が年1で9月に更新される頻度である上、出てくるデータが2年前のデータであることから、その「速報性」に対する問題をお示ししていました。
ですが、先日改めて国税庁のホームページを閲覧しますと、なんと昨年度、令和4年の民間給与実体統計データが掲載されているではありませんか。
情報を見てみると「復元方法の見直し」が行われたことが掲載されており、これが直接集計期間が早くなった原因なのかどうか迄は掲載されていませんが、恐らく関連性があるのでしょう。
私のような統計好きにとっては、この変更は非常にうれしい内容で、確かに厚労省データに比べて速報性は劣りこそしますが、それでも1年遅れであればその「信頼性」との兼ね合いで十分すぎるスピードだと思います。
国税庁データの中で私が最も重宝しているデータが「給与階級別給与所得者数・構成割合」という項目のデータで、要は給与所得者総数の内、どの給与所得層に何人の給与所得者が含まれるのかという人数が掲載されたものです。
全てを数字として転載できればよいのですが、時間の関係上画像データとして張り付けておきます。
この内最新、令和4年度の数字のみ転載します。
100万円以下 3,985(4,241)
100万~200万 6,433(6,758)
200万~300万 7,179(7,484)
300万~400万 8,395(8,768)
400万~500万 7,789(7,635)
500万~600万 5,511(5,399)
600万~700万 3,504(3,509)
700万~800万 2,437(2,450)
800万~900万 1,675(1,536)
900万~1000万 1,116(999)
1000万~1500万 2,019(1,895)
1500万~2000万 431(426)
2000万~2500万 131(127)
2500万円超 170(148)
比較しやすいよう、( )内に令和3年分のデータも記しています。
見ていただくとよくわかると思うのですが、年収100万円以下の所得層~年収300万円超400万円以下の所得層まで、各所得層を構成する給与所得者の数は全て令和3年より減少している一方、年収400万円超500万円以下の所得層~2500万円超の所得層まで、すべての所得層で給与所得者数が令和3年の給与所得者数を上回っています。
時間の都合上、具体的な数字は転載しませんが、総務省データの「非労働力人口(18~65歳)」及び「完全失業者数」については人数が減少しています。
唯一ネガティブなデータとして、国税庁データにおける「給与所得者数」全体としては51375千名→50775千名と減少こそしているものの、これらのデータが示している事実は、「日本国民の中間層の水準が大幅に上昇した」ことを示しています。
「物価」が上昇していることが問題視されていますが、そもそも「消費」されていないものは物価になりません。
名目の給与所得が大幅に上昇する中で、「物価」も合わせて上昇しているという事は、その上昇している名目所得分が「利益」としてきちんと上乗せすることができているからこそ起きている減少です。
年収400万を下回る給与所得者数はすべての所得層において減少し、逆に400万を超える給与所得者数はすべての所得層において増加しています。
この状況のどこをどう判断すれば「岸田内閣の経済政策が失敗している」ことになるのでしょうか?
前半は「デフレ完全脱却のための総合経済対策」が批判されている事を話題としましたが、批判している人たちの頭の中からごそっと抜け落ちているのは、岸田内閣下、安倍内閣より続いている「アベノミクス」を継続して実行し続けてきた結果、自分たちの給与所得が大幅に上昇しているという「事実」です。
勿論、これに該当しない人もいることは事実でしょうが、その絶対数が減少していることは先ほど国税庁データを用いて検証させていただいた通りです。
そして、それでも救済できない人のために「低所得世帯への支援(重点支援地方交付金の低所得世帯支援枠に1世帯当たり7万円を追加し、住民税非課税世帯1世帯当たり合計10万円を目安に支援)」が短期的に実行すべき経済対策として含まれているのです。
4万円の所得・住民税減税が行われるのは、岸田内閣下、給与所得が大幅に上昇にした世帯に向けて、その上昇を「労働の対価(成果)」として実感してもらえるよう、「給付」ではなく「所得減税」という方法で行われるのです。
その事がまた労働する意欲へとつながり、日本国全体の経済を「流動化」させる原動力となるのです。
いつまでも国民が、目の前にぶら下げられるニンジンを必死に要求する様では、いつまでたっても日本国経済が「自立的に回転」して発展する時代は訪れないと思います。
私たち日本国民の頭の中こそ、大きく「パラダイムシフト」する時代が来ているのではないかと私は思います。
時間が作れれば、「年収の壁」についても一度記事にしたいと思っています。記事としては短い内容になるとは思いますが。
この記事のカテゴリー >>「物価」の見方
本日は2023年10月23日。
このところ、特にSNS上で岸田内閣の政策を「増税メガネ」などといった中傷する言葉で批判し、岸田内閣の政策があたかも増税をベースとした政策であるかのように吹聴する意見が非常に多く見られます。
ですが、実際に行われた「増税」に相当する政策は、「森林環境税」の新規導入(年間1000円)くらいのもので、この法律についても実際に決まったのは2019年の話で、岸田内閣以前から決められていた事です。
近い事例は他にもいくつかありますが、その殆どが岸田内閣以前から法律として決まっていたもの。もしくは制度として従来よりその前提で運用されている(社会保障関係など)もの。
防衛費や少子化対策費については「将来の増税」を前提として運用されているものもありますが、まだこの増税の開始時期を明確に定められた法制度まだ存在しません。
寧ろ岸田内閣ではコロナ期の影響はあるものの、補正予算まで含んだ規模として令和4年度(2022年度)はその前年度、前々年度次ぐ規模の歳出を行っています。
令和5年度(2023年度)は当初予算ベースとしては過去最高の規模での予算を編成しており、その財源を賄っているのは「増税」ではなく、2022年度に過去最高を記録した「税収」と国債発行で賄われています。
「歳出」が増えているという事は、当然政府の税収が還元されているから増えているのであり、これはむしろ「実質減税」と言われてもおかしくはない政策です。
ですが、にも拘らずなぜか岸田内閣は「増税を行う内閣」という誤った印象が植え付けられており、最近では「増税メガネ」などと中傷される状況にあります。
そして、これを否定する論拠を相手にぶつけた折、相手から返ってくるキーワードとして「物価上昇」というキーワードが多く見られます。彼らの論拠として、岸田内閣における物価上昇が、「実質増税である」という主張が返ってくるのです。
では、本当に岸田内閣における「物価上昇」は私たち国民にとっての「実質増税」となるのでしょうか?
本日の記事では、まず、「物価」という言葉の持つ意味からこの事を検証してみたいと思います。
物価について(おさらい)
私自身、この「物価」に関連して数多くの記事を作成していますので、あえてこれを具体的に説明する記事にするつもりはないのですが、簡単に「おさらい」となるような章を作成してみます。
(1)「消費」されなければ「物価」にはならない。
そもそもの基本的なお話ですが、「物価」と「価格」は全くの別物です。
物価を考える場合、これが前提となっていなければなりません。(便宜上、物価と価格を同列に扱うケースはあります)
例えば店頭に120円のパンが10個並んでいたとしても、このパンの物価は120円にはなりません。これが客の手に渡り、レジで精算されてはじめて「物価」になるのです。「物価」とはすなわち「店頭価格」ではなく、「販売価格」が基礎になっています。
例えばよく「物価が上がった」という話を耳にしますが、お店に400円の油、600円の油、800円の油、1200円の油が並んでいたとして、400円の油ばかり売れていれば油の物価は400円にしかなりません。400円以上の物価になっているのだとすれば、それは400円以上の油が消費されているってことです。
(2)「物価」とは店頭価格の単なる平均値ではない
物価を算出する際には、「加重平均」という計算方法が用いられています。
先ほどの油の事例ですと、油の値段は400円、600円、800円、1200円の4種類の油が
400円 100個
600円 50個
800円 100個
1200円 50個
売れたとした場合、単純な平均値であれば
(400+600+800+1200)÷(4種類)=750円
ですが、加重平均を行う場合は
{(400×100)+(600×50)+(800×100)+(1200×50)}÷(100+50+100+50)=700円
となります。加重平均を行う際の数量の事を「ウェイト(重要度)」と呼びます。
(3)「物価」を算出する際、ウェイトには「売上金額」が用いられる
先ほどの「油」の事例を出した際、あえて言及しなかったのですが、油にももちろん「規格」が存在します。
500ml なのか、1リットルなのか、はたまた200グラムなのか。
商品やサービスは種類が変われば共通の「単位」というものが存在しなくなります。
この不具合を解消するため、物価を統計データとして集計する場合は本来「数量」にすべき「ウェイト(重要度)」が「金額」に変化してしまっているのです。
(4)「実数」と「指数」
マクロ指標を算出する際、「実数」を導き出すことは事実上不可能ですので、「実数」の代わりに「指数」が用いられます。
この場合、統計上、非常に問題のある「不具合」が発生します。
例えば今月は2023年10月ですが、昨年、2022年10月の数字と比較しようとした際、とある商品が
2022年 1000円 50個
2023年 1000円 100個
売れたものがあったとします。この場合、実数では
2022年 名目=50000円 実質=50個 物価=1000円
2022年 名目=100000円 実質100個 物価=1000円
となるのですが、これを指数で考えようとした場合、2020年の数字の中に奇妙な数字が登場します。
2022年 1000円:50個 0円:50個
2023年 1000円:100個
同じ「名目値0円」でも、実数だと「0×0=0」の「0円」が、指数で考えると「0×1=0」の0円の化けてしまうんですね。
この前提で本日の話題を進めていきます。
「物価」は3つの理由で上昇する
「物価」を単純な「売上価格」と考えた場合。あくまで消費されたものであることを前提として考えるのですが、その売り上げは
「原価+利益」
で表されます。
これを「物価」だと考えた場合。物価が上昇する、つまり「インフレ」になる理由は経った2つです。
「原価」が増えるか、「利益」が増えるか。その2つです。
このところネットでは「コストプッシュインフレ」や「ディマンドプルインフレ」だとかいう名称が話題になっていますが、どんな理由をこねようがインフレはインフレ。「原価」が増えて利益が圧迫されるか、原価を増やさずに利益を増やすか。そのどちらかです。
勿論「原価」が減少し、その減少分以上に利益を増やすことができても「インフレ」になりますし、原価が上昇したとしても、その分をきちんと販売価格に上乗せした上で利益を増やすことでも「物価」は上昇します。
物価が上昇する第3の理由
私の記事を読み込んでいる方や、もしくは勘の良い方でここまでの内容をきちんと理解されている方であれば既にご理解なさっているかもしれませんが、「物価」は単純な「原価」と「利益」以外にも「消費量」の増減によっても変動します。
つまり、例え「売上価格」が減落したとしても、ある一定の「消費量」が増加すれば物価は上昇します。もしくは売上価格が全く変動しなかったとしても、消費量さえ増やすことができれば、物価は上昇するのです。
「原価」が上昇する理由
岸田内閣の政策における「物価上昇」が「実質増税」だと主張する連中の多くが、現在起きているインフレを「原材料費高騰による物価上昇」である、と主張しています。
では、この「原材料費」は一体なぜ上昇するのでしょうか。
その最も典型的な理由は「エネルギー物価の変動」と「生鮮食品の物価変動」です。
エネルギーの問題で言えば、日本は主にエネルギーの原料となる「原油」を海外。特に中東に依存していますから、この原材料費としての「エネルギー物価」だけはコントロールすることは非常に困難です。
原油の「利益」も「原価」もひっくるめて日本国内ではなく海外に支払うことになるからです。国内の事業者は海外に支払う資金に利益を上乗せして販売するしかありません。
値下げをしようとしても、仕入れ価格以下に値下げをすれば赤字になりますから、原油の輸入額以上に値段を下げることは民間レベルでは通常できません。
岸田内閣では、ここに手を加えることで、国民の負担を抑えようとしています。
一方で生鮮食品に関しては、特に天候等気象条件の影響を受けることが多く、不作になれば当然生鮮食品の「販売価格」は高騰します。
ですので、この「エネルギー」と「生鮮食品」の物価を日本の物価全体から取り除くことで「原価」に左右されない、販売価格に含まれる「利益」や「消費量」によって変動する、「物価」を見ることができます。
日本の物価を見る際に最も用いられる指標である「消費者物価指数」には、この「生鮮食品」及び「エネルギー」の物価を取り除いた物価、「コアコアCPI」を確認することができる項目があらかじめ設けられています。
岸田内閣における物価上昇は「実質増税」なのか?
以下のグラフは、そんな日本の「消費者物価指数」の内、「エネルギー」の物価。その変動率を示したものです。時期としては現時点で確認できる最新のもの。2023年9月(+8月)の物価です。
私たちは、岸田内閣に入って以来の物価上昇が、例えばウクライナ・ロシアの戦争や為替相場の円高の影響で日本の物価が上昇している、と多くの国民がそう信じています。
ですが、この表を見て意外に感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
こちらは「エネルギー」の物価で、これについては国民民主党の玉木代表が「ガソリン減税」を声高に叫んでいる事などから、「ガソリン価格が高騰している」という印象を強く持っている方が多いと思います。
7月までの間に原油の相場が安定し、8月以降、政府が手を出さずとも国内のガソリン等の原油精製品の価格が下落する傾向がみられた為、所謂「ガソリン補助金」として政府が介入する金額の幅を縮小し始めたため、8月以降の原油相場(もしくは為替相場)の変動に対応することができず、「ガソリン価格」がみるみる上昇していたことは事実です。
ですが、先ほどの表を見ていただくと、確かにガソリン(及び軽油)の物価は昨年と比較しても上昇していることはわかると思うのですが、それ以上に「電気代」の物価が大幅に下落していることがわかると思います。
8月も9月も20%を超える下落率となっています。
また更に、電気代だけでなく、エネルギー全体の物価も8月が9.8%、9月が11.7%の下落率となっています。
ガソリン価格の上昇に目を奪われがちですが、電気代に対してもまた政府から補助金が支給されており、この政策は電気代のみならず、エネルギー物価全体を引き下げる方向に影響が出ているのです。
その上で、9月度の「生鮮食品及びエネルギーを除く物価(コアコアCPI)」の上昇率は4.2%となっており、同じ食料でも「生鮮食品を除く食料」は+8.8%。
勿論、この物価上昇率には輸送価格をはじめとしたこれまでのエネルギー価格の上昇が含まれており、また食料の中にも輸入品が含まれていますから、一概にこの後の私の主張が当てはまるわけではありません。
ですが、それでもエネルギー以外の物価が上昇している理由は、多くの国民が思っているような「原材料費の高騰」だけが原因とは言い切れないのです。
例えば、企業側から見ると、確かに企業の倒産件数が17か月連続で増加(帝国データバンク調べ)するなど、景気の悪化を示すデータももちろん存在するのですが、同じ帝国データバンクの資料として、今後の景気動向のプラス材料の中に、「価格転嫁による企業の財務改善もプラス材料となりうる」という内容が含まれています。
これは、報道でも同様の報道が行われていて(元情報は見つけることができませんでしたが)、これまで続いてきた食料品や生活用品の値上げが11月でピークを迎える、との報道がありました。
これは、これまで企業が販売価格に原材料費の高騰分をきちんと転嫁することができていたことを理由として挙げていました。
これが可能になるという事は、つまり消費者側をベースとして考えた場合、例え価格が上昇していたとしても、これを一定量以上消費することができていたという事。
それを支えていたのが例えば政府による給付や補助、助成金制度であり、「賃上げ政策」です。
このことによって、日本の「物価」は単純な原材料費の高騰という理由だけでなく、利益の販売価格への転嫁、消費量の増加という複合的な理由で上昇してきました。
岸田内閣における物価上昇を「実質増税」だというグループが複数存在することは事実です。
ですが、「物価」とは本来原材料費のみが引き上げるものではなく、「利益」と「販売数量」もその動向に影響を与えるのだという事を忘れてはならないと思います。
この3つの要素が複合的に入り混じって「物価」を決定します。
政府の政策を批判する前に、こういった情報をきちんと調査することが何より必要な事です。「実質増税」説を唱えるグループがそこまできちんと調べた上で批判を行っている様には、私にはとても思えないのです。
時間があれば、「賃金」の側面からも岸田内閣の政策を改めて記事にすることができればと思います。
この記事のカテゴリー >>ニュースの見方
少し私として気にかかる情報がこのところネット上で世間を騒がせている様ですので、私の方で少し記事にしてみようと思いました。タイトルの通り、コオロギ、食用コオロギの問題です。
傾向としては、この食用コオロギを批判する意見が多く見られます。個人的に、なぜ急にこの食用コオロギがここまで話題になったのか、非常に疑問に思いましたし、これがここまでやり玉に挙げられるようになったことにも疑問を抱きました。
私自身としては別に食べたい人がいれば食べればいいし、自分自身が食べないからと言ってそれを不必要に批判する必要もないと思っています。
にもかかわらず、なぜこの「食用コオロギ」がここまで「炎上」と言ってもよいほどにSNSをにぎわせているのか。
この疑問が、一つ私がこの問題を記事にしようとした理由です。
「コオロギ叩き」に利用されるデマ
同じことを記すようですが、私自身はこのコオロギ問題そのものに関心があるわけではありませんし、まして食用コオロギを流行らせよう…などと考えているわけでもありません。
ただ、たかがコオロギ問題が、ここまで世間をにぎわせている事に疑問を持っているのです。
ですが、たとえどのような情報であってもこれは正確に発信されるべきですし、誤った情報がその根源になっていてはいけないと思っております。その上で、私が今回の記事を記そうと思った最大の理由は、次の画像です。
これは、とあるチョコレート菓子の成分表示欄の画像です。
ここに、「ドライクリケット」という表示がなされています。「ドライクリケット」とは何のことかと言いますと、「コオロギ」の事です。
で、この画像がとあるSNSで、「成分表示に『コオロギ』と掲載せずにチョコレートを販売するのは問題があるのではないか」、という批判と共に投稿されていました。
私としては、この情報を最初に見たときに、かすかな疑問が起こりました。まずコオロギをコオロギと表記せずに販売をするようなことを、果たして業者が行うのかどうかという事。そしてそれを法制度が許すのかどうかという事です。
個人的には、このような疑問を放っておくのは好きではないので、少し考えてみました。
では、これ、一体どのような商品の成分表示なのだろう…と。
ざっと見てみますと、まずここに製造者として「ダイヤ製菓株式会社」。販売者として「FUTURENAUT株式会社」と記していますね。
つまり、この2社と「ドライクリケット」というキーワードでコンボ検索をかければ、答えを探すことはそう難しくありません。
こちらがその商品。「コオロギチョコクランチ」です。はっきりと書いていますね。「一箱にコオロギパウダー約15匹分」と。
つまり、何者かがこの「一箱にコオロギパウダー約15匹分」という言葉を隠し、成分表示部分だけを撮影し、あたかもこの会社が重要な事実を秘匿してチョコクランチを販売しているかのような、あからさまな「デマ情報」を作成し、拡散したのです。(ちなみに私がこのデマ情報を最初に目にしたのは参政党界隈です)
これは、明らかに「ダイヤ製菓株式会社」や「FUTURENAUT株式会社」に対する事実に基づかない誹謗中傷であり、営業妨害です。告訴されても文句は言えません。
では、なぜその人物そのような「犯罪相当」の行為を行ったのでしょうか?
この人物の思想がどこにあるかはわかりませんが、最大の理由は「コオロギ問題」を「政権批判」に利用したいと考えた人間がいる事は事実です。
「コオロギ産業」に公金が使われたというデマ
この問題の根源を探っていく流れで登場した情報が、「コオロギ産業に公金が使われた」という情報です。
で、この情報を掘っていくと、その根源に、次のような情報が関係していることが見えてきました。(以下記事引用)
長野県茅野市から認定農業者として認定されました
(引用元はこちら)
株式会社CricketFarm
2022年6月29日 11時30分
長野県でコオロギの養殖事業を展開する株式会社CricketFarm(以下、クリケットファーム)は、この度、長野県茅野市より認定農業者として認定されましたので、ここにお知らせいたします。
認定農業者制度とは、農業への意欲を持った農業者が自らの農業経営を計画的に改善するために作成した「農業経営改善計画」を市が認定し、その計画達成に向けた取組みを関係機関が支援していく制度です。専業農家や兼業農家を問わず、一定の収入を得られる農業経営を目指す場合に認定の対象となり、土地利用型の農業はもちろんですが、農地を持たない畜産経営もその対象となります。
コオロギ養殖も農業の1つ。認定農業者として地域農業に貢献
私たちが事業としているコオロギの養殖は、畜産農業の一種に分類され、れっきとした農業です。認定農業者として認定されることで、農業用機械や農業用施設の導入に対する補助金をはじめ、農業経営基盤強化準備金制度や低金利融資といった手厚い支援を受けられるようになります。
2021年8月に新たな地として長野県で創業したクリケットファームですが、この度、認定農業者として認定いただいたことで、地元に根付く昆虫食文化を継承した意欲ある農業経営者として地域の皆様からより厚い信頼をいただけるよう、これからも長野県の地域農業に貢献していく所存です。
記事は、株式会社 PR TIMESという東京の会社が作成したもので、内容は株式会社CricketFarmというコオロギの養殖を営む会社が長野県茅野市より、「認定農業者」として認定されたという内容です。
ちなみに認定農業者制度とは
【認定農業者制度とは】
「農業経営改善計画」の認定を受けた農業者を、認定農業者と言います。
内容は北海道のホームページより引用しています。農林水産省のホームページよりも私が欲しい内容が掲載されていたのでこちらを引用しました。
制度内容に、「農業経営基盤強化資金(スーパーL資金)の低利融資、税制上の特例措置(農業経営基盤強化準備金)、農業者年金の保険料支援などの支援措置の対象となる」と記されています。
これを、例えばれいわ新選組の山本太郎などの悪意のある人間によって「食用コオロギの推進に補助金を出した」というデマ情報がばらまかれたわけです。
ですが、私が引用した記事を読んでから山本太郎らの主張を見ると如何に悪意のある情報であるかという事がご理解いただけると思います。
ちなみに、上記商品成分表示にある「ドライクリケット」とは、こちら。
これ、恐らくは商品名なのだと思います。「ドライクリケット」という名称の商品を使用したから成分表示に「ドライクリケット」と書かれているだけなのではないか、と。どちらにせよ、包装にしっかりと「一箱にコオロギパウダー約15匹分」と書かれています。これを見て「コオロギが入っていない」と思う人はまずいないでしょう。
「コオロギ食推進担当大臣河野太郎」というデマ
こちらは、朝日新聞記事から引用します。
(引用元はこちら)
斉藤智子2022年2月21日 9時10分
徳島発のベンチャー企業が事業を紹介し合い、地方起点のビジネスの未来などについて考える会が19日、徳島市内であった。ごみステーションやホテルの複合施設「上勝町ゼロ・ウェイストセンター」の運営会社や小児リハビリの普及などに取り組む会社、クラウド型のタクシー配車システムを提供する会社など5社の代表が発表した。
海陽町でICT(情報通信技術)を活用したカキ養殖に取り組む「リブル」の早川尚吾代表取締役は「失敗しにくい、誰でもできる水産業を目指す」。食用コオロギを養殖する「グリラス」CEOの渡辺崇人・徳島大助教は「おいしさをコントロールするのは、えさや育て方」と築いてきたノウハウの自信を語った。
規制改革担当大臣を務めたことがある河野太郎氏がゲスト参加し、「新しい世代が新しいことを始めるときに対応できるように、国のルールはフレキシブルなものにしておかないといけないのかなと感じた」と話した。ミックスナッツとあえてコオロギエキスと塩コショウで味付けした乾燥コオロギも試食し、「おいしかった。抵抗なく、あっさり」と話した。(斉藤智子)
つまり、2月19日に徳島で開催された「徳島発のベンチャー企業が事業を紹介し合い、地方起点のビジネスの未来などについて考える会」(正式名称であるかは不明)に河野太郎氏が参加した、というニュースです。
ここの中に、コオロギを養殖する「グリラス」という会社も参加しており、記事ではこの会社が用意したコオロギを河野大臣が食べて感想を述べた、という記されているだけにすぎません。
これを、例えばネットでYoutube動画を配信するジャーナリストである有本香氏などに代表される「限界保守」と呼ばれる連中が、「「コオロギ食推進担当大臣」、もしくはこれに相当する表現で河野太郎氏を中傷することを目的としたデマを配信しているのが現在の状況です。
まとめ
例えば、
「世界でやけに昆虫食がもてはやされ、これが日本にも流入しようとしている。何か特定の目的があるのではないか」
という主張があるとします。こういう事実が仮に存在していたとしても、それはあり得るかもしれません。
例えば、
「国内で特定の企業が昆虫食ビジネスに出資していてこれをメディアが後押しししようとしている」
という主張があるとします。そういう事実もひょっとすると、あるのかもしれません。
ですが、現在のコオロギバッシングブームを見ていますと、事実ではない「デマ」、もしくは事実を不必要に誇張した情報を元に、自分たちが結び付けたい架空の情報と強引に関連づけさせ、自民党という政党や岸田内閣という世間を追い落とすために利用しようとしているのであれば、それは少しおかしいのではないでしょうか?
左翼を批判する限界右翼が左翼がでっち上げて拡散したデマ情報に尾ひれをつけて拡散している事実ははっきり言って笑えません。
「たかがコオロギ」が完全にイデオロギー化してしまっています。
食用コオロギ賛成派と反対派に分かれて冷戦でも始める気なのでしょうか。
敷島パンがコオロギパウダー入りのパンを販売したからと言って、敷島パンそのものをバッシングして、炎上させて良い理由にはならないと思います。
↓「返信を読む」をクリックし、現状を確認してみてください。正常な感覚の持ち主であれば、「異常だ」と感じるはずです。
もうすぐ #バレンタイン🥰
— Pasco/敷島製パン株式会社【公式】 (@Pasco_JP) February 9, 2023
今年もロッテさん(@ghana_recipe)の #ガーナ と #超熟ロール でちょっと大人なチョコスイーツに🍫#バレンタインのせいにして、チョコレートのトッピングは贅沢にたっぷりと❤
毎日頑張る自分へのご褒美や、だいじな人と。
特別な #バレンタインデー をお過ごし下さい😘 pic.twitter.com/d0jxb8zgb9
↑「返信を読む」をクリックし、現状を確認してみてください。正常な感覚の持ち主であれば、「異常だ」と感じるはずです。
人間には、もう少し冷静に情報と向き合う姿勢が必要なのではないでしょうか。
この記事のカテゴリー >>政府データ(経済指標の見方)
【※本日の記事の主題は岸田首相の動画と写真の下。「岸田首相年頭会見を検証」というサブタイトルからスタートします】
まだ少し体力と時間に余裕がありそうなので、記事を更新してみます。
昨日、(令和5年1月5日)、岸田首相より年頭の記者会見が行われました。(フレーム内は会見の文字起こしです。気になる人だけ全文目を通していただけるればと思います。それ以外の人は読み飛ばしてください)
【岸田首相 年頭会見】
冒頭、この年末年始、大雪と災害に見舞われた皆様に心よりお見舞いを申し上げます。引き続き各自治体と連携しつつ、国としても万全の対策を採ってまいります。
先ほど私は伊勢神宮に参拝し、国民の皆さんにとって今年がすばらしい1年になるよう、また、日本、そして世界の平和と繁栄をお祈りしてまいりました。
今年の干支(えと)は、「癸(みずのと)卯(う)」です。「癸卯」の「癸」は、十干の最後に当たり、一つの物事が収まり、次の物事へ移行する段階を、そして「卯」は、「茂(しげる)」を意味し、繁殖する、増えることを示すと言われています。この両方を備えた「癸卯」は、去年までの様々なことに区切りがつき、次の繁栄や成長につながっていくという意味があると言います。
私は、本年を昨年の様々な出来事に思いをはせながらも、新たな挑戦をする1年にしたいと思います。
今、世界、そして日本は、経済についても、国際秩序についても歴史の分岐点を迎えています。政権をお預かりして1年3か月、この時代の大きな転換期にあって、未来の世代に対し、これ以上先送りできない課題に正面から愚直に挑戦し、一つ一つ答えを出していく、それが岸田政権の歴史的役割であると覚悟し、政権運営に臨んでまいりました。
この覚悟の下で取り組んだのが、国際社会が分断し、急速に安全保障環境が厳しさを増す中で、国民の命や暮らしを守るために待ったなしの課題である、防衛力の抜本的強化、エネルギーの安定供給のためにも、多様なエネルギー源を確保するためのエネルギー政策の転換とGX(グリーン・トランスフォーメーション)の実行、さらには、日本における第二の創業期を実現するためのスタートアップ育成5か年計画、資産所得倍増に向け、長年の課題であったNISA(少額投資非課税制度)の恒久化など、先送りの許されない課題でした。昨年に引き続き、本年も覚悟を持って、先送りできない問題への挑戦を続けてまいります。
特に、2つの課題、第1に、日本経済の長年の課題に終止符を打ち、新しい好循環の基盤を起動する。第2に、異次元の少子化対策に挑戦する。そんな年にしたいと考えています。
この30年、世界では、グローバル化の進展とともに、マーケットも生産・製造も物流も一体化が進んできました。そして、我々は世界の一体化とともに、垣根が取り払われ、平和と繁栄を手にできると信じてきました。しかし、現実には、格差の拡大、地球環境問題などの課題の深刻化に直面しています。また、権威主義、国家資本主義的な国々と、自由主義、資本主義を掲げる我々民主主義国家との対立を深刻化させています。我々は、協力と対立、協調と分断が複雑に絡み合う、グローバル化の第二段階に入ったと認識しなければなりません。
グローバル化を利用し、コストの安い国に工場を移すことが効率的だ、グローバル化で拡大するマーケットを低価格の商品、サービスで確保することが先決だ、企業の利益を上げるため、賃金や研究開発、設備投資等もできるだけ抑えよう、こうした考え方を私たちは、言わば常識として信じてきました。
しかし、グローバル化の第2弾とも言える国際社会の現実を前に、我々は正にこの常識への挑戦を求められています。コロナ禍でマスクや半導体の不足に直面したように、生産拠点の海外移転は国の安全保障にまで影響を与えています。安売り競争に勝つための強力なコストカットにより、人への投資が十分になされず、賃金も上がらず、さらに、研究開発投資等も抑制された結果、新たな価値創造も停滞し、日本企業は競争力を失う一方で、現預金は増え続けてきました。
こうした現実を前に、今こそ我々は新たな方向性に踏み出さなければならない。私の掲げる新しい資本主義はそのための処方箋です。新自由主義的発想から脱却し、官と民の新たな連携の下で、賃上げと投資という2つの分配を強固に進め、持続可能で格差の少ない、力強い成長の基盤をつくり上げていきます。そのためには、成長と分配の好循環の中核である賃上げを何としても実現しなければなりません。企業が収益を上げて、労働者にしっかり分配し、消費が伸び、企業の投資が伸び、更なる経済成長が生まれる。こうした経済の好循環が実現されて初めて国民生活は豊かになります。しかし、この30年間、企業収益が伸びても、期待されたほどに賃金は伸びず、想定されたトリクルダウンは起きなかった。私はこの問題に終止符を打ち、賃金が毎年伸びる構造をつくります。
今年の春闘について、連合は5パーセント程度の賃上げを求めています。是非、インフレ率を超える賃上げの実現をお願いしたいと思います。政府としても、最低賃金の引上げ、公的セクターで働く労働者や政府調達に参加する企業の労働者の賃金について、インフレ率を超える賃上げが確保されることを目指します。
そして、この賃上げを持続可能なものとするため、意欲ある個人に着目したリスキリングによる能力向上支援、職務に応じてスキルが正当に評価され、賃上げに反映される日本型の職務給の確立、GXやDX(デジタル・トランスフォーメーション)、スタートアップなどの成長分野への雇用の円滑な移動を三位一体で進め、構造的な賃上げを実現します。本年6月までに労働移動円滑化のための指針を取りまとめ、働く人の立場に立って、三位一体の労働市場改革を加速します。
もちろん女性の積極登用、男女間賃金格差の是正、非正規の正規化なども経済界と共に進めていきます。また、女性の正規雇用におけるL字カーブや、女性の就労を阻害する、いわゆる103万円、130万円の壁などの是正にも取り組んでまいります。
官民連携でのこうした取組を通じて、実質賃金の上昇が当たり前となる社会、そうした力強い経済の実現を目指します。賃上げはコストだという時代は大きく変わり、能力に合った賃上げこそが企業の競争力に直結する時代になっています。賃上げによる人への投資こそが日本経済の未来を切り開くエンジンとなります。
加えて、重要な2番目の柱が、国内での研究開発投資や設備投資による日本企業の競争力強化です。一部の権威主義的国家は、サプライチェーンを武器として使い、外交上の目的を達成するために経済的威圧を使うようになりました。もはやコストが安いというだけで海外に生産を依存するリスクを無視できません。そして、世界では、官民連携の下での投資促進によって、技術力、競争力を磨き上げる熾烈(しれつ)な競争が起こっています。今こそ、国内でつくれるものは国内でつくり、輸出する、また、研究開発投資、設備投資を活性化し、付加価値の高い製品サービスを生み出す、日本の高度成長を支えたこうした原点に立ち返るときではないでしょうか。
そのために、国が複数年の計画を示し、予算のコミットを行い、企業に対して期待成長率をはっきりと示すことで企業の投資を誘引していく、そうした官民連携が不可欠です。官民合わせて150兆円のGX投資を引き出す成長志向型カーボンプライシングによる20兆円の先行投資の枠組みは、その先行事例の一つです。今後、半導体、人工知能、量子コンピューター、バイオ技術、クリーンエネルギーなど、次世代の経済を支える戦略産業について強固な官民連携を打ち立て、国内で大胆に投資を進めていきます。
こうした新たな官民連携の成否を最終的に決める鍵は、民間のアニマルスピリットです。幸い、我が国には、社会課題を解決しよう、社会変革を促そう、世界に打って出よう、挑戦の心を持った方々が多数おられます。そうした方々の挑戦を妨げる規制は、断固、改革していきます。また、皆様が失敗を恐れず果敢に挑戦できるよう、昨年決定したスタートアップ育成5か年計画を着実に実行していきます。その中でも、日本をスタートアップのハブとするため、世界のトップ大学の誘致と参画による「グローバルキャンパス構想」を本年、具体化していきます。
そして、今年のもう一つの大きな挑戦は少子化対策です。昨年の出生数は80万人を割り込みました。少子化の問題はこれ以上放置できない、待ったなしの課題です。経済の面から見ても、少子化で縮小する日本には投資できない、そうした声を払拭しなければなりません。こどもファーストの経済社会をつくり上げ、出生率を反転させなければなりません。本年4月に発足するこども家庭庁の下で、今の社会において必要とされるこども政策を体系的に取りまとめた上で、6月の骨太方針までに将来的なこども予算倍増に向けた大枠を提示していきます。
しかし、こども家庭庁の発足まで議論の開始を待つことはできません。この後、小倉こども政策担当大臣に対し、こども政策の強化について取りまとめるよう指示いたします。対策の基本的な方向性は3つです。第1に、児童手当を中心に経済的支援を強化することです。第2に、学童保育や病児保育を含め、幼児教育や保育サービスの量・質両面からの強化を進めるとともに、伴走型支援、産後ケア、一時預かりなど、全ての子育て家庭を対象としたサービスの拡充を進めます。そして第3に、働き方改革の推進とそれを支える制度の充実です。女性の就労は確実に増加しました。しかし、女性の正規雇用におけるL字カーブは是正されておらず、その修正が不可欠です。その際、育児休業制度の強化も検討しなければなりません。小倉大臣の下、異次元の少子化対策に挑戦し、若い世代からようやく政府が本気になったと思っていただける構造を実現するべく、大胆に検討を進めてもらいます。
以上、今年は、賃上げ、投資促進、子育て支援強化に全力で取り組みます。賃金が増え、日本企業が強くなり、子供が増える、そんな社会を次の世代に引き継いでいきます。
そして、この伊勢の地を訪れるたびに思い出すのは、7年前の伊勢志摩サミットです。G7議長としての安倍(元)総理の卓越したリーダーシップの下で、世界経済の安定化、海洋秩序の維持など、多くの成果が上げられました。7年の時を経て、本年、再び我が国はG7議長国を務め、5月にはサミットを開催します。今年の開催地は広島です。ロシアのウクライナ侵略という暴挙によって国際秩序が大きく揺らぐ中で、自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値を守り抜くため、そうしたG7の結束はもとより、G7と世界の連帯を示していかなければなりません。同時に、対立や分断が顕在化する国際社会をいま一度結束させるために、グローバルサウスとの関係を一層強化し、世界の食料危機やエネルギー危機に効果的に対応していくことが求められます。
また、世界経済に様々な下方リスクが存在する中で、G7として世界経済をしっかりと牽引(けんいん)していかなければなりません。さらに、感染症対策や地球温暖化問題などの地球規模課題においてもリーダーシップの発揮が求められます。そして、ロシアの言動により核兵器をめぐる深刻な懸念が高まる中、被爆地広島から世界に向けて、核兵器のない世界の実現に向けた力強いメッセージを発信してまいります。こうした考えの下、まずは、諸般の事情が許せば、1月9日からフランス、イタリア、英国、カナダ、そして米国を訪問し、胸襟を開いた議論を行う予定です。G7サミット議長として今年1年強いリーダーシップを発揮してまいりたいと思います。
このうち、米国バイデン大統領との会談は、G7議長としての腹合わせ以上の意味を持った大変重要な会談になると考えています。我が国は年末に安全保障政策の基軸たる3文書の全面的な改定を行いました。そして、それを形あるものにする防衛力の抜本的強化の具体策を示しました。これを踏まえ、日本外交、安全保障の基軸である日米同盟の一層の強化を内外に示すとともに、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた更に踏み込んだ緊密な連携を改めて確認したいと思います。
最後に、新型コロナウイルス対応について申し上げます。
年末年始、基本的な感染防止対策、適切な換気、さらにはワクチン接種など、国民の皆様に多大な御協力を頂き、ありがとうございます。まだ安心できる状況にはありませんが、こうした皆様の御努力を力に変えて、足元の感染状況に十分注意しながら、いわゆる第8波を乗り越え、今年こそ平時の日本を取り戻してまいります。そして、今後いつ襲ってきてもおかしくない感染症に適切に対応するため、感染症危機管理統括庁や、いわゆる「日本版CDC」の設置などのための法案を次期国会に提出いたします。引き続き、国民の皆様の御協力をお願いいたします。
なお、中国本土からの入国者に対する年末年始の検査結果や各国の水際措置を踏まえ、臨時的な措置を強化します。8日より中国本土からの入国者の検査を抗原定量又はPCR検査に切り替えるとともに、中国本土からの直行便での入国者に陰性証明を求めることとします。あわせて、検疫に万全を期するため、中国本土便の増便について必要な制限を引き続き行うことといたします。詳細は担当部局より公表いたします。
今年は4月に統一地方選挙があります。国民に最も近い地方自治体における選挙は、我が国民主主義にとって非常に重要な選挙です。デジタル田園都市国家構想を進め、地方創生につなげていくためにも、与党としてもしっかりとした成果を出してまいりたいと思います。
結びに、国民の皆様にとって本年が実り多い1年になりますことを心から御祈念申し上げて、年頭に当たっての御挨拶とさせていただきます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
で、この中から私が今回記事内容としたい、気にかかる部分をピックアップしよう…と考えたのですが、ちょっとその部分だけ切り取ってしまうと岸田首相が政策として訴えようとする主旨について、誤った内容をお伝えしてしまいそうなので、上記内容から「経済政策」に特化した部分を切り取ってみます。(切り取る、と言いながらも長文になりますから、読み飛ばしていただいて構いません)
【岸田内閣令和5年年頭会見ー経済政策パートー】
グローバル化を利用し、コストの安い国に工場を移すことが効率的だ、グローバル化で拡大するマーケットを低価格の商品、サービスで確保することが先決だ、企業の利益を上げるため、賃金や研究開発、設備投資等もできるだけ抑えよう、こうした考え方を私たちは、言わば常識として信じてきました。
しかし、グローバル化の第2弾とも言える国際社会の現実を前に、我々は正にこの常識への挑戦を求められています。コロナ禍でマスクや半導体の不足に直面したように、生産拠点の海外移転は国の安全保障にまで影響を与えています。安売り競争に勝つための強力なコストカットにより、人への投資が十分になされず、賃金も上がらず、さらに、研究開発投資等も抑制された結果、新たな価値創造も停滞し、日本企業は競争力を失う一方で、現預金は増え続けてきました。
こうした現実を前に、今こそ我々は新たな方向性に踏み出さなければならない。私の掲げる新しい資本主義はそのための処方箋です。新自由主義的発想から脱却し、官と民の新たな連携の下で、賃上げと投資という2つの分配を強固に進め、持続可能で格差の少ない、力強い成長の基盤をつくり上げていきます。そのためには、成長と分配の好循環の中核である賃上げを何としても実現しなければなりません。企業が収益を上げて、労働者にしっかり分配し、消費が伸び、企業の投資が伸び、更なる経済成長が生まれる。こうした経済の好循環が実現されて初めて国民生活は豊かになります。しかし、この30年間、企業収益が伸びても、期待されたほどに賃金は伸びず、想定されたトリクルダウンは起きなかった。私はこの問題に終止符を打ち、賃金が毎年伸びる構造をつくります。
今年の春闘について、連合は5パーセント程度の賃上げを求めています。是非、インフレ率を超える賃上げの実現をお願いしたいと思います。政府としても、最低賃金の引上げ、公的セクターで働く労働者や政府調達に参加する企業の労働者の賃金について、インフレ率を超える賃上げが確保されることを目指します。
そして、この賃上げを持続可能なものとするため、意欲ある個人に着目したリスキリングによる能力向上支援、職務に応じてスキルが正当に評価され、賃上げに反映される日本型の職務給の確立、GXやDX(デジタル・トランスフォーメーション)、スタートアップなどの成長分野への雇用の円滑な移動を三位一体で進め、構造的な賃上げを実現します。本年6月までに労働移動円滑化のための指針を取りまとめ、働く人の立場に立って、三位一体の労働市場改革を加速します。
もちろん女性の積極登用、男女間賃金格差の是正、非正規の正規化なども経済界と共に進めていきます。また、女性の正規雇用におけるL字カーブや、女性の就労を阻害する、いわゆる103万円、130万円の壁などの是正にも取り組んでまいります。
官民連携でのこうした取組を通じて、実質賃金の上昇が当たり前となる社会、そうした力強い経済の実現を目指します。賃上げはコストだという時代は大きく変わり、能力に合った賃上げこそが企業の競争力に直結する時代になっています。賃上げによる人への投資こそが日本経済の未来を切り開くエンジンとなります。
加えて、重要な2番目の柱が、国内での研究開発投資や設備投資による日本企業の競争力強化です。一部の権威主義的国家は、サプライチェーンを武器として使い、外交上の目的を達成するために経済的威圧を使うようになりました。もはやコストが安いというだけで海外に生産を依存するリスクを無視できません。そして、世界では、官民連携の下での投資促進によって、技術力、競争力を磨き上げる熾烈(しれつ)な競争が起こっています。今こそ、国内でつくれるものは国内でつくり、輸出する、また、研究開発投資、設備投資を活性化し、付加価値の高い製品サービスを生み出す、日本の高度成長を支えたこうした原点に立ち返るときではないでしょうか。
そのために、国が複数年の計画を示し、予算のコミットを行い、企業に対して期待成長率をはっきりと示すことで企業の投資を誘引していく、そうした官民連携が不可欠です。官民合わせて150兆円のGX投資を引き出す成長志向型カーボンプライシングによる20兆円の先行投資の枠組みは、その先行事例の一つです。今後、半導体、人工知能、量子コンピューター、バイオ技術、クリーンエネルギーなど、次世代の経済を支える戦略産業について強固な官民連携を打ち立て、国内で大胆に投資を進めていきます。
こうした新たな官民連携の成否を最終的に決める鍵は、民間のアニマルスピリットです。幸い、我が国には、社会課題を解決しよう、社会変革を促そう、世界に打って出よう、挑戦の心を持った方々が多数おられます。そうした方々の挑戦を妨げる規制は、断固、改革していきます。また、皆様が失敗を恐れず果敢に挑戦できるよう、昨年決定したスタートアップ育成5か年計画を着実に実行していきます。その中でも、日本をスタートアップのハブとするため、世界のトップ大学の誘致と参画による「グローバルキャンパス構想」を本年、具体化していきます。
ここから、改めて私が今回記事に取り上げたい話題をピックアップします。記事内容としては若干岸田さんの会見内容を批判するように感じられる部分も出るかとは思いますが、これはあくまで用語のとらえ方を問題にしているのであり、岸田さんの会見内容そのものを批判する意図は全くありません。
岸田首相年頭会見を検証
以下、私が気にかかる部分をピックアップいたします。
<中略>
新自由主義的発想から脱却し、官と民の新たな連携の下で、賃上げと投資という2つの分配を強固に進め、持続可能で格差の少ない、力強い成長の基盤をつくり上げていきます。そのためには、成長と分配の好循環の中核である賃上げを何としても実現しなければなりません。企業が収益を上げて、労働者にしっかり分配し、消費が伸び、企業の投資が伸び、更なる経済成長が生まれる。こうした経済の好循環が実現されて初めて国民生活は豊かになります。しかし、この30年間、企業収益が伸びても、期待されたほどに賃金は伸びず、想定されたトリクルダウンは起きなかった。私はこの問題に終止符を打ち、賃金が毎年伸びる構造をつくります。
今年の春闘について、連合は5パーセント程度の賃上げを求めています。是非、インフレ率を超える賃上げの実現をお願いしたいと思います。政府としても、最低賃金の引上げ、公的セクターで働く労働者や政府調達に参加する企業の労働者の賃金について、インフレ率を超える賃上げが確保されることを目指します。
<中略>
官民連携でのこうした取組を通じて、実質賃金の上昇が当たり前となる社会、そうした力強い経済の実現を目指します。賃上げはコストだという時代は大きく変わり、能力に合った賃上げこそが企業の競争力に直結する時代になっています。賃上げによる人への投資こそが日本経済の未来を切り開くエンジンとなります。
総裁選時の岸田首相
去る令和3年9月。当時菅(すが)首相が自民党総裁満期を迎え、自民党の総裁選が行われることになりました。
当時の菅首相は自民党総裁続投を断念し、新総裁として現首相である岸田さんに加え、河野さん、高市さんが総裁選への立候補を表明しました。ちなみに私の自民党員としての1票は高市さんに入っています。
総裁選時の岸田さんの主張の中で、私自身が不満を覚えていたのは、菅内閣の前の内閣。即ち安倍内閣への「賃金」に関する評価が正当ではない、と感じていたことです。
第526回の記事 で私自身が記事にしています通り、実は安倍内閣、所謂「アベノミクス」と呼ばれる経済政策の下で、私たち国民が実感できる最も大きな「成果」こそ、「賃金状況の改善」にあったからです。
これを、岸田さんは「安倍内閣では賃金が上昇しなかった」と評価していました。これは全く逆だろう、と当時私は感じました。
この時の岸田さんの考え方が、今回の年頭会見スピーチの中にはまだ影響として見られる様に思います。
止まったままの時計
これは、以前から感じていた事ではあるのですが、岸田さんの中の時間軸は、いまだにリーマンショック以前。丁度小泉内閣当時の時間軸から動いていない様に思います。
ただ、確かに安倍さんの政策は当時として小泉内閣の影響を引きずっている様にも感じていましたし、特に第二次安倍内閣当初の経済政策は、未だに「新自由主義」的な考え方を引きずっていた様に思います。
「新自由主義」とは、即ち「小さな政府」とか「大きな政府」とかいった考え方にとらわれた考え方。小泉内閣を象徴する「民間でできることは民間で」という発想を持った経済政策の事。民間の経済への政府のかかわり方を少しでも縮小しようとする考え方です。
財政政策としては「緊縮財政」のイメージがありますが、ただ確かに民間でできることを政府がやってしまっていると、却って国民が享受できるメリットは少なくなり、いつまでたっても経済が成長しない…という考え方は間違いではないと思います。
ただ、本当にやらなければならないのは「民間でできることは民間で」という考え方ではなく、「民間でできることを政府が積極的にサポートする」という考え方です。
実は、今回の年頭会見スピーチで岸田さんが述べていることはまさにそういったことです。
ただ、実際にこういった発想は2008年の麻生内閣の時に既にスタートしており、民主党内閣という黒歴史も存在しましたが、後を引き継いだ安倍さんも、菅さんも同様の発想で経済政策を実行していました。
そして、安倍さんの政策は何より「トリクルダウン(大企業が得た利益おおこぼれに下請けや孫請けが預かる)」を狙ったものではありません。「トリクルダウン」という用語については、私のブログでも第54回の記事 で触れています。
記事中では、麻生さんがとった経済政策と「トリクルダウン」政策の違いについて述べています。
安倍さんが第二次安倍内閣において取った政策は、結果的に麻生さんの政策とは違ったものとなりましたが、それでも国民の就労状況と給与を政策の中心に置き、大企業ではなく末端である「就労者」の生活を大幅に改善させた、第二次安倍内閣における安倍さんの政策は「トリクルダウン」とは程遠いものでした。
岸田さんがその事を本当に理解していたのかどうか。実は、このことに私は疑問を感じます。ひょっとして首相になって初めて時代が変わっていたことに気づいたんじゃないか…と。
また、賃金(給与)の事を岸田さんが「企業が収益を上げて、労働者にしっかり分配」と表現していることも実は気にかかっています。
「分配」と表現されると、政府から第一次消費者に対して直接分配を行う、「社会保障」に近いイメージを持っている人も決して少なくはないはずです。特に、経済の事を勉強している人であればより強く感じるのではないでしょうか。
ですが、岸田さんの意図する「分配」とは、即ち企業から従業員に対して支払われる「給与」の事を意味しています。
このギャップを岸田さんはおそらく理解していないんじゃないでしょうか。「分配」と表現してしまう事で、岸田さんの経済政策に対する「センス」が誤って判断されてしまいかねません。これは非常にもったいないと思います。
「デフレ」の元凶
また、頻繁に登場する「グローバル化」という表現も同様です。小泉内閣以前の内閣....というより経済界の考え方は、原価を極力抑え、消費者に物やサービスを安く届けることが消費者の生活を楽にし、「販売数量」を増やすことで企業も利益を得ることができる。そんな考え方でした。
所謂「ダイエー方式」。「薄利多売方式」というやつですね。
ですが、原価を抑えるために企業が実行したのは、原材料や中間生産物を安く生産できる、特に中国(場合によっては北朝鮮)に生産拠点を移すというやり方。人件費が安い地域で大量生産を行う事で原価を抑え、これが最終生産物の価格を抑制することにつながります。
こうやって安いもの大量に販売する方法を取っていたのが当時の販売店のやり方です。
ですが、このやり方では確かに販売店における販売価格こそ安く抑えることはできますが、生産が海外で行われていますので、国内から「労働市場」を奪う事につながっていました。更に、海外で安い人件費で生産を行う事ができるわけですから、日本国内で高い人件費でわざわざ人を雇う必要がなくなります。
つまり、仮に日本国内で人を雇うとしても、その労働賃金が「海外の人件費」をベースの決められてしまうわけです。小泉内閣で「派遣労働者」が問題となりましたが、これはその最たるものですね。これを「グレシャムの法則(悪化は良貨を駆逐する)」と言います。
結果、日本国内では「労働者」の数が伸び悩み、収入がない人が増える→安売りをしても物が売れなくなるという状況が生まれました。つまり、「デフレスパイラル」に陥ってしまったのですね。
現在「デフレ」が問題視される最大の理由はここにあります。
岸田さんが会見で述べているはそういう事です。ですが、実際には安倍内閣ではこういった労働状況は大幅に改善しており(第526回の記事 で述べた通りです)、所謂「物価(消費者物価指数)」についても安倍内閣では上昇に転じていました。
当時消費増税(8%増税)が問題にされていましたが、この増税による影響を除いても物価(エネルギー・生鮮食品を除く)は上昇に転じていたのです。(ただし、海外でイスラム国等が話題となった年に関してはその影響を受けて国内の物価も下落しています)
安倍内閣当時、既に「新自由主義」が暗躍する時代は終結していました。海外に生産拠点が移転しまっていた理由には、民主党時代に「超円高」が野ざらしにされていた影響も決して小さくないのですが(白物家電業界の崩壊はピンポイントでその影響を受けています)。
岸田さんの言っていることは間違いではないのですが、こういった事実をきちんと伝えることもまた、岸田さんの役割ではないかと思うんですよね。リーマンショック以前の経済状況を正確に伝えると同時に、安倍内閣の「成果」も伝えることが、きっと岸田さんの「支持率」の向上にもつながっていくと思うのです。
「物価」が上昇する理由
岸田さんは、掲載政策における「物価」と「賃金」について、「インフレ率を超える賃上げの実現」、そして「実質賃金の上昇が当たり前となる社会」という表現方法を用いています。
私、この記事の中で日本の「デフレ」がなぜ起きたのかという内容に触れています。
これは、つまり企業が消費者にとって、物を安く購入できる状況が理想であると考え、原価を抑えることに必死になり、結果として日本の雇用を崩壊させ、賃金水準を大幅に引き下げてしまったことにあります。
「薄利多売方式」こそがその元凶でした。このことは、岸田さんも会見において触れています。
そして、このことを批判する国民層から「インフレを起こすべきだ」という主張が発信されるようになりました。
ですが、こういった層の国民が考えている「インフレ」とは、消費者が店頭で購入する商品に、製造段階でもその利益が大企業に搾取されることなく、購入される際にも販売店の利益が上乗せされており、その結果として商品の店頭販売価格が正当に値上がりしていく。そんな「インフレ」です。
ですが、このところ、海外における資材不足や原材料費の高騰、円安等が日本国内の物価にも影響を与えています。
現在の日本における「物価高騰」、即ち「インフレ」は必ずしもデフレを批判している国民層が望む「インフレ」とはなっていません。そして、そういった層の国民は、「ディマンドプル」だの「コストプッシュ」だの新しい経済用語を濫用し、政府に「国債を発行し、日本国民にお金をばらまけ」と訴えています。
ですが、単純に日本国民に対し、直接給付としてお金がばらまかれたとしても、その根本的な原因は改善されず、この事がかえって(悪い意味での)物価高騰を斡旋してしまう可能性すら否定することはできません。
そして、岸田首相の述べる「インフレ率を超える賃上げ」について、こういったインフレの背景を全く考えず、単純に実現したとしても、これが必ずしも国民の生活を豊かにするとは限りません。
そこで、私のブログ記事、第522回 実質値における「実数」と「指数」~狂わされている「解釈」~
に少し目を通していただきたいと思います。サブタイトル『実質値における「実数」と「指数」』の章に特にご着目ください。
数字だらけなのでちょっと難しい、と抵抗感を覚えるかもしれませんが、記している内容は、
例えば物やサービスの値段が変化せずとも、「消費量」が増えればその商品やサービスの「物価」は上昇するという事です。
無理に物の値段を上げることばかりに執着するのではなく、そういった物やサービスを少しでも多く消費しようと思えるような社会を作り出すことこそ、今の日本の社会に求められているのではないでしょうか。
人によって異なる「物価」
また、同じ「物価」でも、実は国民一人一人全く同じ「物価」である人が存在する確率は限りなく0に近いです。
例えば「消費者物価指数」という言葉があります。
これは、実は「消費者」全体の物価であり、同じ消費者の中には例えば給与所得者もいれば経営者も、無職者もいます。
ですが、「実質賃金」を求める際の分母として使われる物価指数は「消費者物価指数」です。
これでは、実は正確な実質賃金を求めることはできません。
また、同じ給与所得者でも、年収200万円の給与所得者と1000万の給与所得者では起こす消費の内訳が異なりますから、所得層によっても「物価」は異なります。
ですが、どの所得者の物価も「同一である」として提示されている指数が「消費者物価指数」なのです。
経済政策を考える場合、このこともきちんと考えるべきです。単純に「インフレ率」だけ追いかけて経済政策を打てば、必ずこういったマクロ指数には見えないデータの被害を受ける国民が生まれます。できれば岸田さんには、そういった所得水準毎の物価に焦点を当て、取りこぼされる国民が極力少なくなるような政策を実現していただきたいと思います。
「実質賃金」の正体
これは、私が記事としては繰り返し更新しながら検証してきた内容で、集大成が以下の記事になります。
第464回 物価から考える実質賃金~実質賃金の正体完結編~
勿論、この記事単独で検証したわけではなく、記事内でリンクできる「継承する記事」から遡っていただくと、同記事でたどり着いた結論までの私の苦労も見ていただけるとは思います。
結論として実質賃金とは、
「期首に受け取った名目賃金の内、期末に貯蓄に回すことのできた金額で比較年と同じ買い物を何回行う事ができるのか」
という数字です。
ですので、ザックリわかりやすく言うと、実質賃金とは、
「名目賃金から貯蓄に回すことのできた金額」
の大小でその規模が決まることになります。ポイントとなるのは、「何円の物やサービス、どのくらいの数量消費したのか」という事は数値上、全く考慮されていないという事です。
つまるところ、実質賃金にこだわって経済政策を施しても、全く意味がないという事です。
前章で述べた、各所得層で、どのような物やサービスをどのくらいの数量消費しているのかという事を調査し、これに対して経済対策を打った方が、実は生活水準はよほど大きく改善するのではないかと私は考えています。
そして、それこそが実は本当の意味での「実質賃金」なのです。政府の統計指標で算出されている「実質賃金」、正確には「実質賃金『指数』」とは、実は全く経済の実態を反映しておらず、実は「実質賃金」でさえありません。
このような誤った経済指標を参考に経済政策を行ったのでは、その政策が国民の生活に与える影響は非常に限定的なものになると私は思います。
名目賃金だけにこだわるのではなく、「インフレ」が起きている理由と、その賃金状況下でどのような生活水準を享受することができているのか。本当の意味での「実質賃金」をぜひ算出していただき、私たちの生活にそれを政策として反映させていただきたい。
岸田首相が、このことに気づいてくださることを、私は心から願っております。
この記事のカテゴリー >>政府データ(経済指標の見方)
本日は2023年1月3日。また暫く記事を更新する体力を失う時期に入りますので、その前に一つ更新しておきます。
このタイトル記事は、実は前々から作成したいと思いつつ、中々更新できなかった記事でもあります。前回の記事 で、現在の総理大臣でいらっしゃいます、岸田首相が「防衛増税」で叩かれている事を話題にしました。
ですが、岸田さんがこのような理不尽な内容で攻撃されているのは何も今回の「防衛増税」に始まった事ではありません。
要は、政府を運営するための財源を「税」に頼らず「国債発行」で賄えという主張が多く見られるようになったことがその原因としてあります。
この根拠として、「MMT(現代貨幣論)」というキーワードが使用される光景をよく見かけるようになりました。(見かけるようになってからも相当期間は経過しています)
「財源論」の変遷
日本国政府が国家財政を運営するためには当然、その運営するための「財源」が必要です。
私自身が所謂「政治」や「経済」に関心を持ち、熱心に調べ事をするようになったのは、2008年9月に発生したリーマンショック。その直後、麻生太郎さんが副総理となったころです。
特にマスコミ報道を見ていて、麻生さんの一言一句に揚げ足を取るかのようにして報道内容がコロコロ変わる様子を見ていて、「おかしい」と感じたことが原因でした。
調べるようになると、間もなくであったのが政府の「財政政策」に対する考え方です。
大きく分けて、
「積極財政」 と 「緊縮財政」
という二つの考え方。明らかにこの二つに分かれていました。
特に、「経済の専門家」として紹介される人たちの多くが当時「緊縮財政」に寄った考え方をしており、財源に目途をつけずに使っていると、やがて日本政府は財源を失い、「財政」が破綻してしまう、という「財政破綻論者」がその体制を占めていました。
一方で、当時のYoutubeやニコニコ動画といった動画コンテンツ、もしくは私以外にブログを作成している人達の中には、その真逆の主張をする人達がいました。
「日本の財政は破綻しない」という考え方です。
ではどちらが正しいのだろうかと調べることを目的として私が参考にした動画は、財政は破綻しないというスタンスで開設を行っており、私自身もその動画を参考に政府の統計データを調査するようになりました。
当時、その人物の主張を参考にしたことは事実であり、現在もその人物が記した著書が私の部屋にはたくさんあるのですが、現在、私の中ではその人物の考え方に対しても否定的ですので、この場でその人物の名前を紹介することは致しません。
簡単に要約しますと、要は日本には通貨発行機関(日銀)が存在し、日銀の株式の50%以上を日本国政府が保有することが日銀法で定められている事。それゆえ、日銀は日本国政府の事実上の子会社であり、いざ財源不足に陥ったら日本国政府が発行した国債を直接日銀に買い取らせればよい、という考え方です。
これについては所謂「財政法第5条」によって日銀による国債の直接引き受けは禁止されているのですが、同条文に「国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない」とも記されており、国会の決議さえあれば日銀は政府から直接国債の引き受けを行うことができます。
で、この考え方のフレームについては私は今でも正しいと思っていますし、財政問題を考えるベースにしておくべき事項だと思っています。(あくまで、「財政について考える際、選択肢としてこのフレームを外すべきではない」という趣旨です)
「財源」と「物価」
ですが、この当時の「財源論」について私の中で考えている内に、「無制限に国債を発行して財源とすること」の危険性について考える場面に出会います。
元々、前章で記した考え方については、戦前、所謂「昭和恐慌」が起きた際、高橋是清という当時の財務大臣がこの恐慌から脱するために発行した国債を日銀に直接購入させ、その資金を当時の軍需産業(今でいえば公共事業費)に充てるという方法を用いました。
このことで、日本国全体のGDPが年間3%成長したことを受け、今度は財政の引き締めに入ろうとしたのですが、この時起きたのが「226事件」で、是清は当時の日本軍の内、「皇道派」と呼ばれる派閥の青年将校によって暗殺されてしまいました。
後段は余談にはなりますが、日本で起きた「昭和恐慌」は米国のニューヨーク株式市場における株価大暴落をきっかけとして発生した「世界恐慌」が原因となって発生したのですが、この「世界恐慌」が起きた根本的な原因は、実は第一次世界大戦後、ドイツで発生した「ハイパーインフレ」という経済状況にあります。
このハイパーインフレを終息させようとする中で起きた経済現象の一つが「世界恐慌」です。
「ハイパーインフレ」とは、つまり当時のドイツが産業の中心地であるルール地方を占領するフランス・ベルギー軍に対抗するため、地元労働者にストライキを呼びかけ、その生活費として「通貨発行」という手段を用いたことで、物価が一日に何百倍というレベルで高騰(倍率は正確ではないです。それくらい酷い状況だった、という趣旨で受け止めてください)し、通貨そのものが信用を無くしました。
「信用を無くす」というのは、つまり今朝のパンの売価に相当する金額を銀行から引き落として昼にパンを買いに行ったら既にその何十倍もの価格まで高騰していてとてもパンを買える状況ではない、といった、そういう意味です
つまり、手元に「通貨」があったとしても、物価が安定していなければ通貨を「品物やサービスを購入する手段」として用いることができないケースがある、という事です。
ハイパーインフレや戦後日本を引き合いに出すのはあまりに極端すぎますが、そこまでではないにせよ、これに近い状況は発生しうるという事です。
例えば「オイルショック」がそうですし、コロナが原因で発生した「マスク不足」やその後の「原油価格の高騰」などもそうです。
後程この話題は使用しますので、覚えておいてください。
「財政破綻論者」との闘い
暫くの間は国債発行による財源の調達という考え方には否定的な人が多く、私がこのブログの 第二回の記事 でご紹介したような理由で反論を行っていたのですが、この際、私がよく使用していた(現在も頻繁に使用しています)考え方が、「60年償還ルール」 についての考え方です。
詳細はリンク先を見ていただければと思います。
また、第26回の記事 では、日本国政府が国債を調達する方法についても紹介しており、「国債の『表面金利』」が理由で日本国債が破綻することはありえないことも議論を行う際、よく用いています。ちなみに記事内容は黒田日銀総裁による「異次元の量的緩和」がスタートとする遥か以前に作成した記事で、当時から日本の国債の金利は「超低金利」であり、財政運営に支障をきたすようなものではなかったこともよくわかりますね。
で、これはあくまで「日本国債が破綻する」と主張する人たちを対象として議論するために用いていた考え方なのですが、その内真逆。「国債をじゃんじゃん発行するべきだ」と主張する人たちが登場します。
高橋洋一信者との闘い
「国債をじゃんじゃん発行するべきだと主張する人たち」とは、即ち「高橋洋一信者」の事です。
安倍内閣がスタートした当初、「金融政策至上主義者」なる者たちが次々に登場します。
黒田さんが「異次元の量的質的緩和」を行う際、市場から既に発行済みの「既発国債」を金融市場から大量に取得しました。
このことによってただでさえ金利の低い日本国債が、「ゼロ金利」からさらに「マイナス金利」まで突き進みました。
日本国債は世界でも極端に信用が高く、破綻する可能性が少ないため、特に日本の金融機関がお客様から預かった預金を運用する先としてこの「日本国債」を選択していたことにその理由があります。
ただでさえ金利の低い国債をその運用先として選んでいますから、「政策金利(日銀が市中金融機関が金融機関同士で取引を行う際の金利=無担保コール翌日物)」を低価格に抑え、企業が銀行からお金を借りやすい状況を作ったとしても、破綻する可能性のある企業よりも国債に投資をしようとする銀行の体質が変わらず、資金が流動しない状況=「流動性の罠」と呼ばれる状況が長らく日本では継続していました。
そこで、日本の市場から投資先として選択される「国債」を日銀が強制的に引き上げることで、銀行が国債では利益を得ることのできない状況を作り出しました。こうすることで、銀行が国債ではなく、企業に優先して貸し出しを行うようになり、企業が賃金や設備投資のために資金獲得しやすい状況が生まれる、と考えたことがその理由です。
そして、その副産物として民主党内閣時代に高騰し続けていた円が急速に日本の株式へと向かい、そして漸く「円安」へと為替相場が大きく動くことになりました。
金融市場主義者たちは為替相場が大きく動いた事に歓喜し、黒田日銀総裁や安倍内閣の意図を理解せず、「量的質的緩和を行い続ければ円安になるんだ!」と騒ぎ立て、日銀に対して「もっと量的質的緩和をしろ!」と、その目的を大きく違えた要求をすることになります。
ですが、金融政策にしても財政政策にしても、同じ政策ばかり取っていればやがてその効果は鈍化し、思ったほどの効果が出なくなります。しかし、それでも金融政策至上主義者たちは日銀に対し、「なぜもっと量的質的緩和を行わないんだ!」と無茶な要求を行いだします。
「マイナス金利政策」が実行に移されたのもこれが原因でしたね?
ですが、「マイナス金利政策」だってずっとやり続ければいつか効果が出なくなります。全くでないわけではありませんが、「横ばい」を維持するのが精いっぱいの状況が生まれるのです。
そしてそんな中、日本国政府に対し、「なんで日本国政府はもっと国債を発行しないんだ! 日銀が量的質的緩和を行えないじゃないか!」というかなり無理筋な要求をするものが現れます。それが、高橋洋一とその信者たちです。
「国債」が発行される目的
そもそも私は、『「財源」と「物価」』の章で述べたように、「通貨の価値」とは、そこに流通する「物やサービス」が存在してこそ初めて成り立つものだという考えを持っていますし、これは事実です。
いくら買いたいものがあったとしても、そこにほしいものがなければ買う事はできません。人が複数いる中で、全員が欲しいものやサービスが一つしかなければ、当然最も多くの金額を出せる人物がその物やサービスを取得することになります。
そして、物やサービスを提供できるという事は、その物やサービスを生産する「生産者」がいるという事です。
量的質的緩和を行うために国債を発行しろと言っても、じゃあその発行した国債は一体何に使用するの? その目的は?
高橋洋一という人物は、その目的論を全く語ろうとせず、ただ「国債発行」のみを要求し続けました。
MMT論者が登場するころになって、彼も漸くその目的論について言及するようになったようですが。
MMT論者たちとの闘い
かつて、政治家のほとんどは「財源論」について「緊縮論」を取っていましたが、麻生さんが登場したころから与党議員の中に少しずつ「積極財政」の立場を取る人たちが現れるようになりました。これは、与党支持者についても同様で、やがて「積極財政論者」=与党支持者、「緊縮財政論者」=野党支持者といったような構図も生まれるようになりました。
ところが、この「MMT」と言われる主張を目にするようになったころから、
「積極財政論者」=与党支持者、「緊縮財政論者」=野党支持者
↑
という構図が非常にあいまいなものとなるようになりました。
「MMT論者」はその多くが「国債=財源」といった主張を展開し、その多くがその財源を何に充てるのかという「目的論」に言及しようとしません。
ですが、本当に一番大切なのは、その「目的論」なのです。
例えば国債を発行し、その事によって取得した財源を「社会保障費」に充てるとします。
「医療費は全て無料です。老後の年金も全て国費で負担します」
勿論、それは理想的に思えるかもしれません。ですが、例えば医療費だけで考えた場合。それが全て無料だとした場合、一体何が起きるのかという事を私たちは「コロナ騒動」を通じて体感したのではないでしょうか。
私たちが医療機関を利用したいと考えても、そこに利用者に見合った医療設備や医師や看護師といった人員がいなければ医療機関を利用することはできません。
技術を持った医師の数も看護師の数も限られています。そのキャパを超える利用者が発生してしまえば、当然供給能力は追い付かなくなりますし、必然的に受けられるサービスの質も劣化します。
年金で考えたとしても、「すべての国民の老後の年金を国費で負担します」とした場合、一番憂慮されるのは労働しようとしない現役世代が大幅に増大してしまう事です。
それだけであればまだ良いかもしれません。老後を国費で負担できるのであれば、当然要求として現役世代の生活費の負担も政府に要求される社会構造が生まれてしまいます。最終的には「労働せずとも生きていける社会」が誕生してしまいます。
そうなった場合、日本国内では完全に供給不足が発生しますから、不足する供給は海外に依存せざるを得なくなります。単純な「物の供給能力」だけであればまだ良しとして、例えば先ほどの医療で考えた場合はどうでしょうか? 医師や看護師は代替えが聞きません。
海外から「輸入」でもするのでしょうか? ですが、そういった労働市場でも既にそういう現象は起きていますね?
日本国内だけでは既に「労働市場」ですら国内だけでは供給能力が追い付かなくなっているのです。そして、そういう国内の状況を批判する人ほど、「減税」を訴え、日本国政府が選択できる選択肢の幅を必死に狭めようとしているのです。
残念なことに、こういった傾向は与党支持者の中も生まれるようになり、例えば考え方の違いから、与党ではなく「参政党」や「国民民主党」といった新興政党を支持するようになり、所謂「与党離れ」も顕著になってきました。
同じ自民党支持者の中にも、同様の理屈から現内閣である岸田さんを執拗に叩きまくる「反岸田」勢力が非常に目立ちます。
前回の記事 でも同様の内容をお伝えしましたが、所謂「出口戦略」を考えておくことはとても大切です。
出口戦略をきちんと決めた上で、時代時代の世相、経済状況に合わせた財政政策を考えていくことが大切なのです。
このことがひいては日本国経済を守り、外資に依存せず、海外で巨大な経済危機が発生したとしてもこれに振り回されず、国内の経済を維持できる構造を作る上で役に立つのだと私は思います。
麻生内閣がマスコミ報道が作り上げた世論に敗北し、「民主党政権」というまるで素人のような内閣が誕生した記憶は私の中では決して古い記憶ではありません。
安倍内閣が誕生し、せっかく「衆参のねじれ」が解消されたのです。このことが私たちの生活を守るため、どれほど大切な事なのか。今一度国民の皆様には考えていただきたいと思います。
この記事のカテゴリー >>経済
私の記事としてはかなり久しぶりになります。
現在は2022年(令和4年)大晦日。
話題にしたいのは、本年12月16日、岸田首相によって公表された、所謂「防衛増税」の問題にありますので、話題にする時期としてはやや後発ですね。
ニュースはこちらを引用します。
【2022年12月16日 16時16分 NHKニュースより】
自民党は、防衛費増額の財源を賄うため法人税、所得税、たばこ税の3つの税目で増税などの措置を取ることを盛り込んだ、税制改正大綱の案を了承しました。
了承された税制改正大綱の案では、防衛力の抜本的な強化に必要な財源として、5年後の2027年度に1兆円余りを確保するとして、法人税、所得税、たばこ税の3つの税目で増税などの措置を複数年かけて実施するとしています。
具体的には、◇法人税は、中小企業などに配慮する措置をとった上で、納税額に4%から4.5%の付加税を課すとしています。
また、◇所得税は、納税額に1%の新たな付加税を課すとしています。
一方で、東日本大震災からの復興予算に充てる「復興特別所得税」は、税率を1%引き下げたうえで、復興財源の総額を確保するのに必要な期間、課税期間を延長するとしています。
そして、◇たばこ税は、1本あたり3円相当の引き上げを段階的に行うとしています。
それぞれの措置を始める時期は「2024年以降の適切な時期」とするにとどめています。
このほか来年度の税制改正の主要項目では、▼個人投資家を対象にした優遇税制「NISA」の非課税で保有できる限度額を1800万円に拡充するほか、▼車検の際にかかる自動車重量税を減免する「エコカー減税」の期限を来年4月末から3年間延長するなどとしています。
さらに▼1年間の総所得が30億円を超えるような著しく所得が高い人を対象に3年後から課税を強化します。
大綱の案は、16日午前、自民党の税制調査会の総会に続き、総務会でも了承されたほか、公明党の税制調査会の総会でも了承されました。
両党は、16日午後、与党の税制改正大綱を決定することにします。<以下略>
※画像は首相官邸HPより
記事は所謂「防衛増税」の内訳に関して自民党内で決定した税制改正大綱案についての内容で、「以下略」以降は数名の自民党議員の所感について記載された内容で、私の記事としては蛇足的な内容になりますので、省略しています。
税制の内容に触れる前に、ではそもそも岸田さんは何を決めたのか、という事についてまとめてみます。
記事としては
↓以下リンク先↓
岸田内閣総理大臣記者会見(首相官邸HPより)
から抜粋する形でまとめます。
岸田首相が決定した内容
これについては、まず会見から抜粋していきます。抜粋といっても、「12月16日に行われた首相会見の「冒頭発言」(会見全体の内、質疑応答以外の部分)を掲載しますので、まあまあ長文です。後でポイントごとに抜粋するので、まずは読み飛ばしてください。
【岸田総理冒頭発言】
私は、かねてより、世界は歴史的分岐点にあると申し上げてきました。この30年間、世界はグローバル化が進展し、世界の一体化、連携が進んできました。しかしながら、近年、国際社会におけるパワーバランスの変化などによって、国と国の対立、むき出しの国益の競争も顕著となり、グローバル化の中での分断が激しくなっています。国際社会は、協調と分断、協力と対立が複雑に絡み合う時代に入ってきています。
その分断が最も激しく現れたのが、ロシアによるウクライナ侵略という暴挙であり、残念ながら、我が国の周辺国、地域においても、核・ミサイル能力の強化、あるいは急激な軍備増強、力による一方的な現状変更の試みなどの動きが一層顕著になっています。
今年1年間を振り返っても、5年ぶりに弾道ミサイルが我が国上空を通過いたしました。我が国のEEZ(排他的経済水域)内に着弾する弾道ミサイルもありました。さらに、核実験に向けた準備の兆候もあります。そして、有事と平時、軍事と非軍事の境目が曖昧になり、安全保障の範囲は、伝統的な外交・防衛のみならず、経済、技術などにも広がっています。
この歴史の転換期を前にしても、国家、国民を守り抜くとの総理大臣としての使命を断固として果たしていく、こうした決意をもって、昨年末から18回のNSC(国家安全保障会議)4大臣会合での議論を重ね、新たな国家安全保障戦略の策定と防衛力の抜本的強化を含む、安全保障の諸課題に対する答えを出させていただきました。
今後5年間で緊急的に防衛力を抜本的に強化するため、43兆円の防衛力整備計画を実施する。令和9年度には、抜本的に強化された防衛力とそれを補完する取組を合わせて、GDP(国内総生産)の2パーセントの予算を確保する。そのための安定した財源を確保する。この結論に至る過程においては、国家安全保障局等におけるヒアリングや有識者会議を通じて様々な御意見を頂きました。自公の与党ワーキングチームにおいても、率直かつ精力的な議論を頂きました。さらに、日本維新の会や国民民主党からも御提言を頂きました。日本と国際社会の平和と安全を願う、全ての皆様の真摯な御協力に感謝を申し上げます。
もちろん、国民の命、暮らし、事業を守り抜く上で、まず優先されるべきは、我が国にとって望ましい国際環境、安全保障環境をつくるための外交的努力です。今後とも自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値を重視しつつ、日米同盟を基軸とし、多国間協力を推進する、積極的な外交を更に強化していきます。同時に、外交には裏付けとなる防衛力が必要であり、防衛力の強化は外交における説得力にもつながります。
その上で、今回、防衛力強化を検討する際には、各種事態を想定し、相手の能力や新しい戦い方を踏まえて、現在の自衛隊の能力で我が国に対する脅威を抑止できるか。脅威が現実となったときにこの国を守り抜くことができるのか。極めて現実的なシミュレーションを行いました。率直に申し上げて、現状は十分ではありません。新たにどのような能力が必要なのか、3つ具体例を挙げたいと思います。
1つ目は、反撃能力の保有です。これまで構築してきたミサイル防衛体制の重要性は変わりません。しかし、極超音速滑空兵器や、変則軌道で飛しょうするミサイルなど、ミサイル技術は急速に進化しています。また、一度に大量のミサイルを発射する飽和攻撃の可能性もあります。こうした厳しい環境において、相手に攻撃を思いとどまらせる抑止力となる反撃能力は、今後不可欠となる能力です。
2つ目は、宇宙・サイバー・電磁波等の新たな領域への対応です。軍事と非軍事、平時と有事の境目が曖昧になり、ハイブリッド戦が展開され、グレーゾーン事態が恒常的に生起している厳しい安全保障環境において、宇宙・サイバー・電磁波等の新たな領域でも、我が国の能力を量・質両面で強化していきます。
3つ目は、南西地域の防衛体制の強化です。安全保障環境の変化に即して、南西地域の陸上自衛隊の中核となる部隊を倍増するとともに、日本全国から部隊を迅速に展開するための輸送機や輸送船舶を増強します。これは、万一有事が発生した場合の国民保護の観点からも重要です。さらに、尖閣(せんかく)諸島を守るための海上保安庁の能力増強や、防衛大臣による海保の統制要領を含む自衛隊との連携強化といった取組も進めていきます。
こうした取組を始め、弾薬等の充実、十分な整備費の確保、隊員の処遇改善などを含め、今後5年間で43兆円程度の防衛力整備計画を実行します。計画の着実な実行を通じて、自衛隊の抑止力、対処力を向上させることで、武力攻撃そのものの可能性を低下させることができます。
また、防衛力だけでなく、総合的な国力を活用し、我が国を全方位でシームレスに守っていきます。このため、海上保安庁の能力強化、経済安全保障政策の促進など、政府横断で早急に取り組みます。そして、これらの取組も踏まえ、防衛力の抜本的強化を補完するものとして、研究開発や公共インフラ整備に取り組むなど、総合的な防衛体制を強化します。
以上の防衛力の抜本的強化とそれを補完する取組を合わせて、令和9年度には現在のGDPの2パーセントに達することとなるよう予算措置を講じてまいります。
NATO(北大西洋条約機構)を始め各国は、安全保障環境を維持するために、経済力に応じた相応の防衛費を支出する姿勢を示しており、こうした同盟国、同志国等との連携も踏まえ、令和9年度に向け、取組を加速してまいります。
5年間かけて強化する防衛力は、令和9年度以降も将来に向かって維持・強化していかなければなりません。そのためには、裏付けとなる毎年度約4兆円の安定した財源が不可欠です。このため、私はこの春の通常国会から、防衛力強化の内容、予算、財源、この3つを本年末に一体的に決め、国民に明確にお示しするとの方針を一貫して申し上げてまいりました。
安定的な財源として、財務大臣に対し、まずは歳出削減、剰余金、税外収入の活用など、ありとあらゆる努力、検討を行うよう厳命をいたしました。結果として、必要となる財源の約4分の3は歳出改革等の努力で賄う道筋ができました。残りの約4分の1の1兆円強については様々な議論がありました。
私は、内閣総理大臣として、国民の命、暮らし、事業を守るために、防衛力を抜本強化していく、そのための裏付けとなる安定財源は、将来世代に先送りすることなく、今を生きる我々が将来世代への責任として対応すべきものと考えました。また、防衛力を抜本的に強化するということは、端的に申し上げれば、戦闘機やミサイルを購入するということです。これを借金で賄うということが本当によいのか自問自答を重ね、やはり安定的な財源を確保すべきであると考えました。
今回、一体的に決めるとの方針の下、与党において熱心な議論が行われ、本日、与党税制改正大綱が決まりました。法人税については、法人税額に対し、税率4~4.5パーセントの新たな付加税をお願いいたします。これは、法人税率に換算すると1パーセント程度です。また、その際、中小企業への配慮を大幅に強化し、所得換算で約2,400万円の控除を設けました。その結果、今回の措置の対象となるのは、全法人の6パーセント弱です。
所得税については、物価高に賃上げが追い付いていない現下の家計の状況を踏まえ、所得税の負担が増加しないようにしています。具体的には、まず、所得税額に対して2.1パーセントをお願いしている復興特別所得税を1パーセント引き下げるとともに、課税期間を延長し、復興財源の総額を確実に確保いたします。廃炉や福島国際研究教育機構の構築など、息の長い取組についてもしっかりと支援できるように引き続き責任を持って取り組んでまいります。その上で、減額分に相当する税率1パーセントの新たな付加税をお願いすることとしております。
さらに、たばこ税については、1本3円相当の引上げを段階的に実施いたします。
従来から申し上げているとおり、これらの措置は来年から実施するわけではありません。実施時期は、現下の経済状況等を踏まえ、9年度に向けて、複数年かけて段階的に実施することとし、その開始時期等の詳細については、更に与党でも議論を続けて、来年、決定することとなります。そうであれば別に今年決定しなくてもいいのではないかという御意見も頂きました。しかし、将来、国民の皆様に御負担いただくことが明らかであるにもかかわらず、それを今年お示ししないことは、説明責任を果たしたことにはならない。誠実に、率直に、お示ししたい。そのように判断いたしました。引き続き国民の皆様に、今回の措置の目的、内容を丁寧に御説明するよう努めてまいります。私たちの今の平和で豊かな暮らしを守るために、また、我々が未来の世代、未来の日本に責任を果たすために、どうか御協力をお願いいたします。
安倍政権において成立した平和安全法制によって、いかなる事態においても切れ目なく対応できる体制が既に法律的、あるいは理論的に整っていますが、今回、新たな3文書を取りまとめることで、実践面からも安全保障体制を強化することとなります。正にこの3文書とそれに基づく安全保障政策は、戦後の安全保障政策を大きく転換するものであります。もちろん、これは、日本国憲法、国際法、国内法の範囲内での対応であることは言うまでもありません。非核三原則や専守防衛の堅持、平和国家としての日本の歩みは、今後とも不変です。こうした点について、透明性を持って国民に説明するのみならず、関係国にもよく説明し、理解をしてもらう努力を続けてまいります。
以上、日本を守るための防衛力強化等について御説明させていただきましたが、防衛力の強化は国民の皆様の御協力と御理解なくしては達成することはかないません。我々一人一人が主体的に国を守るという意識を持つことの大切さは、ウクライナの粘り強さがよく示しています。我が国の安保政策の大きな転換点に当たって、我々が未来の世代に責任を果たすために、国民の皆様の御協力を改めてお願い申し上げます。
ありがとうございました。
「増税」が話題になる以上、当然はそれは「増税」される理由があります。
その「理由」とは日本国の「防衛費」を増額することにあります。増額する以上、新たなる財源が必要になりますから、その財源を確保する手段として「増税」という手段を用いると言っているわけです。
で、増税の話題に入る前にまず、何のために「防衛費」を増額するのかという話題から入ります。
防衛費が増額される理由
ポイントとなる部分をまずは冒頭会見から抜粋します。
この30年間、世界はグローバル化が進展し、世界の一体化、連携が進んできました。しかしながら、近年、国際社会におけるパワーバランスの変化などによって、国と国の対立、むき出しの国益の競争も顕著となり、グローバル化の中での分断が激しくなっています。国際社会は、協調と分断、協力と対立が複雑に絡み合う時代に入ってきています。
その分断が最も激しく現れたのが、ロシアによるウクライナ侵略という暴挙 であり、残念ながら、我が国の周辺国、地域において も、核・ミサイル能力の強化、あるいは 急激な軍備増強、力による一方的な現状変更の試み などの動きが一層顕著になっています。
今年1年間を振り返って も、5年ぶりに弾道ミサイルが我が国上空を通過 いたしました。我が国のEEZ(排他的経済水域)内に着弾する弾道ミサイル もありました。さらに、核実験に向けた準備の兆候 もあります。そして、有事と平時、軍事と非軍事の境目が曖昧になり、安全保障の範囲は、伝統的な外交・防衛のみならず、経済、技術などにも広がっています。
これを受け、日本国政府が実行すること
今後5年間で緊急的に防衛力を抜本的に強化するため、43兆円の防衛力整備計画を実施する。
令和9年度には、抜本的に強化された防衛力とそれを補完する取組を合わせて、GDP(国内総生産)の2パーセントの予算を確保する。そのための安定した財源を確保する。
具体的な取り組み
1つ目は、反撃能力の保有です。
これまで構築してきたミサイル防衛体制の重要性は変わりません。しかし、極超音速滑空兵器や、変則軌道で飛しょうするミサイルなど、ミサイル技術は急速に進化しています。また、一度に大量のミサイルを発射する飽和攻撃の可能性もあります。こうした厳しい環境において、相手に攻撃を思いとどまらせる抑止力となる反撃能力は、今後不可欠となる能力です。
2つ目は、宇宙・サイバー・電磁波等の新たな領域への対応です。
軍事と非軍事、平時と有事の境目が曖昧になり、ハイブリッド戦が展開され、グレーゾーン事態が恒常的に生起している厳しい安全保障環境において、宇宙・サイバー・電磁波等の新たな領域でも、我が国の能力を量・質両面で強化していきます。
3つ目は、南西地域の防衛体制の強化です。
安全保障環境の変化に即して、南西地域の陸上自衛隊の中核となる部隊を倍増するとともに、日本全国から部隊を迅速に展開するための輸送機や輸送船舶を増強します。これは、万一有事が発生した場合の国民保護の観点からも重要です。さらに、尖閣(せんかく)諸島を守るための海上保安庁の能力増強や、防衛大臣による海保の統制要領を含む自衛隊との連携強化といった取組も進めていきます。
こうした取組を始め、弾薬等の充実、十分な整備費の確保、隊員の処遇改善などを含め、今後5年間で43兆円程度の防衛力整備計画を実行します。計画の着実な実行を通じて、自衛隊の抑止力、対処力を向上させることで、武力攻撃そのものの可能性を低下させることができます。
また、防衛力だけでなく、総合的な国力を活用し、我が国を全方位でシームレスに守っていきます。このため、海上保安庁の能力強化、経済安全保障政策の促進など、政府横断で早急に取り組みます。そして、これらの取組も踏まえ、防衛力の抜本的強化を補完するものとして、研究開発や公共インフラ整備に取り組むなど、総合的な防衛体制を強化します。
以上の防衛力の抜本的強化とそれを補完する取組を合わせて、令和9年度には現在のGDPの2パーセントに達することとなるよう予算措置を講じてまいります。
ポイントとなるのは主にこの3つですね。
忘れてほしくないのは、岸田さんがこれらの取り組みを決断した背景として、「ロシアのウクライナ侵攻」が挙げられますが、これが具体的に顕在化したのは2022年2月24日の事。
中国で行われた北京オリンピックの閉幕を待っていたかのようにしてロシアがウクライナ侵攻を開始したことは、多くの方の記憶にも深く刻まれていると思います。
この時点で安倍さんも菅さんも総理大臣という役職を離れており、既に「岸田内閣」はスタートしていました。
つまり、この決断を行うきっかけとなった最大の出来事が起きたのは岸田内閣下における出来事だったという事です。
中国の尖閣侵犯も、北朝鮮によるミサイル実験も確かに安倍内閣、菅内閣下で起きていましたが、ロシアがウクライナを侵攻したほどの切迫する危機感を感じていた日本国民はそう多くはなかったはずです。
そして、こういった事件が背景にあるとはいえ、安倍さんも、菅さんも実行に移すことができなかった政策を岸田内閣は見事実行に移したという事。このことをまずは忘れずにいてほしいと思います。
増額される防衛費の「財源」
という事で、いよいよ本題に入ります。
重要なことは、これまであの安倍さんでさえ実行に移すことのできなかった防衛費の増額という重大な決断を岸田さんが見事実行に移したという事にあるはずです。
ですが、なぜかこのことではなく、岸田さんが防衛費増額のための財源として「増税」を持ち出したという事にばかりスポットが当たってしまっている。このことを私は異常だと感じています。
まずはこの「防衛費の増額分」について岸田さんがどのように会見しているのか。こちらを抜粋してみます。前提として、既に掲載してある通り、「5年間で43兆円の予算措置」を講じるための財源です。
5年間かけて強化する防衛力は、令和9年度以降も将来に向かって維持・強化していかなければなりません。そのためには、裏付けとなる 毎年度約4兆円の安定した財源 が不可欠です。このため、私はこの春の通常国会から、防衛力強化の内容、予算、財源、この3つを本年末に一体的に決め、国民に明確にお示しするとの方針を一貫して申し上げてまいりました。
財源の内訳
安定的な財源として、財務大臣に対し、まずは歳出削減、剰余金、税外収入の活用など、ありとあらゆる努力、検討を行うよう厳命をいたしました。結果として、必要となる財源の約4分の3は歳出改革等の努力で賄う道筋ができました。残りの約4分の1の1兆円強については様々な議論がありました。
法人増税の内訳
今回、一体的に決めるとの方針の下、与党において熱心な議論が行われ、本日、与党税制改正大綱が決まりました。法人税については、法人税額に対し、税率4~4.5パーセントの新たな付加税をお願いいたします。これは、法人税率に換算すると1パーセント程度です。また、その際、中小企業への配慮を大幅に強化し、所得換算で約2,400万円の控除を設けました。その結果、今回の措置の対象となるのは、全法人の6パーセント弱です。
所得増税の内訳
所得税については、物価高に賃上げが追い付いていない現下の家計の状況を踏まえ、所得税の負担が増加しないようにしています。具体的には、まず、所得税額に対して2.1パーセントをお願いしている復興特別所得税を1パーセント引き下げるとともに、課税期間を延長し、復興財源の総額を確実に確保いたします。廃炉や福島国際研究教育機構の構築など、息の長い取組についてもしっかりと支援できるように引き続き責任を持って取り組んでまいります。その上で、減額分に相当する税率1パーセントの新たな付加税をお願いすることとしております。
その他増税の内訳
さらに、たばこ税については、1本3円相当の引上げを段階的に実施 いたします。
従来から申し上げているとおり、これらの措置は来年から実施するわけではありません。実施時期は、現下の経済状況等を踏まえ、9年度に向けて、複数年かけて段階的に実施 することとし、その開始時期等の詳細については、更に与党でも議論を続けて、来年、決定することとなります。
以上が防衛費増額分財源の内訳です。
年間4兆円必要となる予算の内、3兆円分は「歳出削減、剰余金、税外収入の活用」によって賄うものの、残り1兆円分は「増税」によって賄いますよ、という内容になっています。
「岸田(防衛)増税」の問題点
あえてこのような表現をしたのですが、というより、私がこの記事を作成した目的はここから後の記載内容にあります。
岸田さんが今回防衛費増額分の財源として「増税」という方法を取ったことに対して、SNSより情報を手に入れる人たちを中心に、これを批判する声が多く聞かれます。
そして、安倍さんの時と異なるのは、その批判を行うのが立憲民主党や共産党などを支持する「野党支持層」ではなく、もともと安倍さんを支持していた「保守層」と言われるグループからの批判が多く見られるというのがその特徴となっています。
「消費増税」を行ったのは岸田さんではなく安倍さんですよ?
所謂「保守層」の頭の中からは記憶喪失化と思うほどにこの事実が飛んでしまっているのではない以下と思ってしまいます。
言わせていただくなら、この人たちは元々「岸田さんに増税をしてほしかった人達」です。
中国や韓国、北朝鮮などに強硬な姿勢を取る安倍さんの復権を願い、岸田さんをそんな安倍さんに対する「仮想敵」であるかのように仕立て上げ、SNS上で世論を構築し、まだ一度も増税など行ったことのない岸田さんが、あたかも増税を行った人物であるかのように情報を発信し続けていた連中です。
そして、そんな岸田さんがついに「増税」に踏み切った。そんな光景に「反岸田、汎安倍」主義の人たちが快哉を叫んだ。そうとしか見えない様な状況が今広がっています。
そして、GDPで2%の防衛費実現を望んでいたのはそんな「反岸田、汎安倍主義」の人達です。このダブルスタンダードっぷりははっきり言って頭が痛くなる思いがします。
防衛費増税に対する考え方
まず、よく考えていただきたい。
年額で4兆円となる増額財源について、岸田さんは3/4を「歳出削減、剰余金、税外収入の活用」で賄うといっていますね?
で、ここには「国債」は含まれていません。
国債発行に対しての考え方として、岸田さんは
と言及しています。
私、「国債」に対する考え方として、例えば「税を取らず、財源は国債で賄う」といった考え方がこのところ所謂「保守層」の間でも「リベラル層」の間でも蔓延しつつあります。
ですが、こういった考え方に私は反対です。
「一次消費者に対する直接給付」は結果的に国民の労働する意欲を減退させ、生産を海外に依存する体制を慢性化させる原因になりかねません。(第28回 日本国債を破たんさせる方法←こちらの記事をぜひご参照ください)
「一次消費者に対する直接給付」なんて話はしていない!という人が現れそうですが、「税を取らず、財源は国債で賄う」という発想の延長線上に、必ずこの問題が顕在化するはずです。
ですから、例えば実際に国債を財源として使用することを想定していたとしても、これを前提として財源論を語ることは非常にリスクが高いですし、まして責任ある首相がそういう方法を取るべきではないと思います。
その上で、ですが。岸田さんが言及した「3/4の財源」の中には、当然「国債」は含まれていません。
つまり、仮に「将来的に増税で対応する」ことが想定されていたとしても、それまでの間は「国債で賄う」という方法が選択肢としてはまだ残されています。
更にこの国債には「赤字(特例)国債」と「建設(4条)国債」というものがあります。
ちょっとだけ話題を逸らします。
東日本大震災と「年金特例国債」
現在、私たちが受け取っている年金は、1/2を私たち国民が負担し、残り1/2を政府が負担しています。
これが実行に移されたのは麻生内閣の時で、これまで政府は年金を1/3しか負担せず、残り2/3は国民が負担していました。
元々1/2への引き上げは小泉内閣で決まっていたのですが、不景気を理由にこれが実行に移されたことは麻生内閣まで一度もありませんでした。
麻生内閣では、その引き上げのための財源を「将来の消費税引き上げ分」としていたわけですが、当然引き上げられるまでの間、財源不足に陥ります。
そのための財源として自民党では「国鉄清算団体の株式」を用意していました。
ところが、民主党政権では東日本大震災が発生した時、この「国鉄清算団体の株式」を東日本大震災の復興に充ててしまい、当然私たちが受け取るべき年金(もしくは納付すべき年金)はその財源を失ってしまいます。
この時自民党も全面的に協力する形で発行されたのが「年金特例国債」。
年金特例国債は、「消費増税時に全額返済する」ことを取り決めて発行されました。
「建設国債」の償還方法
ですが、この時東日本大震災の復興財源として「建設国債」を発行し、「国鉄清算団体の株式」をそのまま年金のための財源として充てておけば、このことがそこまで問題となることはなかったはずです。
なぜなら、「建設国債」には「60年償還ルール 」が適用されるからです。
道路や建造物など、政府の資産として建立する建造物には「対価」が残ります。
仮に国債を使って公共施設建設したとして、仮に国債が返済不能に陥った場合、その建造物を売却すればその返済不能分を賄う事ができる、という考え方です。
で、その公共施設の「減価償却期間」が60年であることが、建設国債の償還期限として60年償還ルールが採用されている理由です。
ちなみに現在は「GDP」の考え方が修正されており、「研究開発費」としても建設国債が使用できるようになっています。
防衛費増額分の財源
さて。改めて話題を本題に戻します。
防衛費の中には、当然自衛官の宿舎であったり、「研究開発費」であったり、当然建設国債で賄ったとしても問題のない「財源」はあるはずです。
勿論岸田さんのおっしゃるように、武器購入のために国債を発行するような選択肢には私も賛同したしかねます。ですが、武器購入以外の部分でも建設国債の対象となる公共物はあるはずです。
勿論、毎年建設国債の対象となるような公共事業費が出てくるのかという事には疑問はありますが、それでもここを不足する1/4の対象とするだけでも、国民の「増税」によって賄わなければならない額は減少するのではないでしょうか。
まとめ
記者に対する受け答えの中で、例えば復興財源を流用する部分についても、「経済成長によって、負担が増えたように感じないような政策をとる」としています。
即ち、増税よりも先に経済成長を優先する必要がありますね? そして、これは現在増税に反対する陣営が岸田さんに対し、「なぜ経済成長で賄うと言えないのか」という批判を行っていますが、これに対する一つの答えでもあります。
法人税についても、年商2400万以上の企業しか対象としないとしており、実際に増税が実行に移されたとしても、一般国民にとっての負担が大きくならない様配慮がされているように思います。
その上で建設国債という選択肢を含めるのであれば、規模はもう少し小さくすることも可能です。
安倍内閣の時も、経済成長により、元々想定していた歳出を大きく補填することができた事例もあります。
岸田さんは、現時点で「増税によって賄う」との会見を行いましたが、これは日本国全体の責任を負うものとして、非常に責任のある姿勢だと私は思っています。
ですが岸田さん本人が
「これらの措置は来年から実施するわけではありません。実施時期は、現下の経済状況等を踏まえ、9年度に向けて、複数年かけて段階的に実施することとし、その開始時期等の詳細については、更に与党でも議論を続けて、来年、決定することとなります」
と述べている様に、増税に言及しておきながらも、まだ十分に対応できる猶予も設けています。
防衛費を対GDP比2%にまで伸ばすべきだ、との主張を行ってきたのはあなた方ですよ、自称「保守」の皆さん。
本当に日本国のことを思うのであれば、現政権である岸田内閣を国民全体で支えていこうとする姿勢こそ、今の日本国民に求められていることであり、このことがやがて日本国が今以上に豊かになり、「外資」の影響を受けずに経済成長していけるための礎となるように、私は思っています。
この記事のカテゴリー >>森友学園問題
<継承する記事>第526回 安倍内閣が成し遂げた事~安倍元首相ご逝去を受け~
カテゴリーは分けていますが、第526回から続くシリーズとして作成します。
前回の記事で記しましたように、昨日、その命を無念にも散らすこととなってしまいました、安倍晋三元首相。れいわ新選組支持者を中心に、その死を嘲笑うかのような投稿を見て、このシリーズはこれを糾弾する意味合いで作成しています。
森友問題の本当の経緯
安倍さんの死を嘲笑う連中が自らを正当化する根拠として挙げる事例の一つがこの「森友学園」問題です。
特に、この結果元近畿財務局職員であった赤木さんが自ら命を絶たれてしまったこと。
森友学園問題が、安倍さんが権力を私物化し、その権力を利用して自らの知己である籠池夫妻に便宜を働いたことが原因である、という妄想を下に、「赤木さんは安倍さんによって殺された」とする彼らの思い込みがその根拠にあります。
私自身は既にその経緯が頭に入っており、人に聞かれてもきちんと答えられる状況にまで落とし込めています。
それは、それこそ過去のシリーズ 森友学園問題 において散々明らかにしてきた通りです。
本日書く文章は、全てその私の過去の投稿を根拠として作成します。ですので、いちいち検証することはしません。
経緯を淡々とストーリーとして作成していきます。(私が正確に把握していない部分は文章にしません)
「森友学園問題」の発端
森友学園問題とは、そもそも籠池夫妻が日本の旧来の伝統や礼儀、教育、歴史観などを小学校教育の段階から子供たちに学ばせ、改めて日本人としての誇りを持たせることを目的として大阪のとある地区に小学校を建設しようとしたことから始まります。
もともと曰く付きであった土地
森友学園が小学校を建設するために購入しようとした土地なのですがこの土地、もともと「地下3メートルの深さまで廃材やコンクリート片などが確認されており、土壌の一部にはヒ素や鉛が含まれていた」土地でした。
近畿財務局が保有していた土地なのですが、この土地を大阪音楽大学に9億円で売却しようとした際にレーダー探査等で確認されました。大阪音楽大学は7億での購入を希望していたのでもともと折り合いがつかず、この土地は「現物出資」という形で「新関空会社」に所有権が移転します。
所が、調査により問題のある土地であることがわかり、その所有権は近畿財務局に戻り、この土地約472平方メートルが特定有害物質の汚染区域に指定されます。
つまり、この時点で土地改良を行わない限り、とても値段が付けられるような土地ではなくなってしまっていたんですね。
この段階でこの国有地の売却を公募しました。これに食いついてきたのが森友学園でした。
土地の「賃貸借契約」に至る経緯
土地取得を希望した森友学園に対し、近畿財務局はこのような条件を提示します。
「7~8年賃借後の購入でもOKの方向だが、土地取引の前提として大阪府から小学校設置認可を受けるように」と。
そしてこの財務局側が森友学園側に示した賃貸借契約の金額が
「土地評価額10億。10年間の定期借地として賃料年4%、賃料年約4000万円」
という金額でした。
この後籠池夫妻は当時の自民党国会議員であった故鴻池氏に賃貸料が高額である、とし、その旨を相談しています。
ですが、この段階で既に「特定有害物質の汚染区域」に指定されており、とても値段がつかないような二束三文の土地であったことは近畿財務局も把握しています。
このことから、森友学園に貸し出す段階で、この土地の土壌改良を行う事は前提とされており、その工事費も含めて賃貸料として森友学園側に提示されていたのではないかと思います。
この工事に関連し、近畿財務局、大阪航空局、設計業者、工事業者の4者で産廃の処分方法について協議が行われており、この時近畿財務局側から
「産廃残土処分の価格が通常の10倍では予算がつかない。借主との紛争は避けたいので、場内処分の方向で協力して欲しい」
という旨の要請が行われています。工事は森友学園側によって行われていることから、設計業者と工事業者は森友学園側が手配した業者だと思われます。
恐らくはこの段階で近畿財務局側から森友学園側に10億の評価額の中には恐らくその評価額とほぼ同等の撤去費用が掛かることが告げられており、その工事費を引き下げるよう、森友学園側から近畿財務局に対して要請が行われていたのではないかと思われます。
この際、恐らく籠池夫妻は近畿財務局に対し、森友学園の名誉校長として昭恵夫人が就任なさっている事などを告げ、近畿財務局に詰め寄っていたのではないかと推測されます。
近畿財務局は籠池夫妻とのトラブルをこれ以上大きくしない様、前記した通り、全域の地下3mまでのコンクリート片や鉛などの汚染土をいったん取り除いた後、処分に費用の掛かるもの等はそれよりも更に深い土壌に埋め戻すという方法を使って小学校として運用するために問題のない全域の地下3mまでの土壌のみを改良する形で費用を1億3200万円に収めます。
つまり、この段階で賃貸借契約における年あたりの支払が当初予定されていた金額より大幅に引き下げられることとなりました。
この時、近畿財務局はこの経緯を森友学園側には一切告げず、協議を行った大阪航空局、設計業者、工事業者との4者の間でのみ、この情報を共有していました。
埋め戻しを行っていたことが籠池夫妻にばれる
ところが、年が明け、翌年森友学園が小学校の建設工事を行うためのくい打ちを始めると、地下3メートル以下に埋め戻した廃材が埋まっていることが発覚します。
この後籠池夫妻は近畿財務局に対し、賃貸借契約ではなく買い取りの交渉をスタートさせます。
地下に埋まっていた廃材分の値引きを求めるのですが、近畿財務局はそれを行うためには更に8億円かかることが提示されます。
一方の籠池夫妻は地下に廃材が埋まっていたのだから、もっと値段は下がるはずだ、詰め寄ります。
ですが、近畿財務局側からはその金額は森友学園側が行った1億3200万円の工事費に既に含まれており、その金額は財務局が負担しているため、どんなに安くなってもその工事費を下回ることはない、と告げます。
こういったやり取りが行われるのですが、最終的に土地購入額は工事費である1億3200万円に200万円上乗せされた1億3400万円で売却されることになりました。
この時の表示内容が
ゴミ撤去費用:8億1900万円
となっています。
近畿財務局が必死に隠そうとしたもの
この際、近畿財務局は自分たちが土地の埋め戻しを行うという手順を使って工事費を低コストに抑えた際、その事を契約者である森友学園に告げずに土地の引き渡しを行いました。
そして近畿財務局は、後からその事を本所等から詰め寄られたときに言い逃れができるよう、その資料に鴻池さんや昭恵夫人の名前までを掲載し、非常に詳細に資料を作成していました。
ところが、安倍さんが「森友学園の土地値下げ問題に私や昭恵が関わっていれば総理を辞する」という発言を行ってしまったため、理財局は近畿財務局に対し、該当する箇所を削除する様求め、公文書が改ざんされることとなってしまいました。
しかし、一連の流れを見てもわかる通り、確かに籠池夫妻よりの執拗な交渉が行われた事実こそありますが、そもそもの問題は森友学園側に事実を告げず、問題のある土地の引き渡しをしてしまった近畿財務局にこそあります。
第511回の記事 でもお示ししましたが、この当時野党側は、事前通告もせず、また、仮に行っていたとしても深夜。通告日の前日、19時、20時を回ったあたりで質問通告を行います。その上で「合同ヒアリング」なる財務省に対する公開処刑上ともいえる会議を開催し、ここに完了を呼びつけるなど、財務官僚に寝る間すら与えないほどのブラック労働を強いていました。
更に、そもそも問題なのは「工事費を場内埋め戻しという方法を使って低価格に抑えた事」にあるのであって、「土地売却時、値引きを8億円行ったこと」にあるわけではありません。
その事を全く理解しようとしない野党、マスコミに対し、更に文書に登場する「昭恵夫人」の名前についてこれ以上説明することはまずできなかったでしょう。結果として踏み切ったのが「公文書改ざん」という悪手でした。
私個人的な考え方としては、佐川さんをはじめとする理財局職員の面々を責めることは正直できないと思います。
佐川さんたちに問題があるとするのなら、行政手続きを全く理解しようとせず、ただ安倍さんを総理の座から引きずり下ろすため、あの異常な、まるで学級崩壊を起こした中学校や高校の教室でもあるかのような真似をした野党連中に対して、何も裁きが降りないことの方が私には不思議でなりません。
この流れの中で、安倍さんが一体いつ「権力を私物化」したのでしょうか?
ほんと、野党支持者は異常者の集まりだと思います。
現在は2022年7月10日。参議院選挙が行われるまさにその当日です。「公職選挙法」に触れる可能性はない文章だと思いますが、「李下に冠を正さず」。公開は本日20時丁度に公開しようと思います。
この記事のカテゴリー >>アベノミクスを問う
画像は、安倍元首相が私の地元、松山に、愛媛県選挙区から立候補する自民党山本順三先生を応戦するためにお越しくださったときの写真です。
私が直接撮影したものを使用しています。ですので、画像が多少粗い部分はご容赦ください。
本日は2022年7月9日。
本年7月8日17時03分。安倍元首相がご逝去なさいました。同日11時半ころ、奈良県における自民党候補者の応援演説を行う、その真っ只中、背後より放たれた凶弾に撃ち抜かれました。
これは、本当に溜まりません。キツイです。なぜに、と。
一夜明け、私も多少、冷静な感情を取り戻したつもりです。しかし、本当に、言語で表現することのできない、様々な感情が私の内側に沸き起こってきます。
お悔やみの言葉をお届けしたい想いもありますが、心の中で葛藤しています。まだ受け止めることができません。
SNSにおける非道な情報発信を受けて
本日改めて今回の話題を記事にしようと思った理由は、これまで一国を支え、日本国民を守るため、必死で邁進してきた安倍さんの訃報を受け、これを追悼するどころか全く真逆の情報発信を行っている連中を許せない、という思いが抑えられないからです。
以下、その中でも特にひどい投稿を挙げます。
このような、安倍さんの死を冒涜するような投稿が後を絶ちません。言っておきますが、その殆どが「れいわ新選組」を支持する連中です。
勿論それだけではありません。れいわ新選組だけにとどまらず、政治家個人名を挙げれば小沢一郎を筆頭に、様々な人間が同様の行為を行っています。
今回は、このような連中が安倍さんの死を冒涜する、その根拠となる理由を記事を複数回にわけて掲載し、いかにその「理由」が根拠のない「レッテル」」であるのかということを掲載します。
安倍内閣最大の成果~経済面での成果~
安倍内閣の政策、特に「アベノミクス」を考える場合、その批判する声として最も多く聞かれるのが「貧富の差が拡大した」「非正規が増えた」といった批判です。
ですが、この批判を真正面から切り裂くことのできる安倍内閣の「成果」が実はあります。
これが、「 マクロ経済スライド、スライド調整率の改定 」です。
「年金」にはもともと「物価・賃金スライド」というルールが設けられていて、全国で物価・賃金が上昇すれば年金受給額が増額し、下落すれば減額される。そういう仕組みになっています。
「物価」と「賃金」の区別は「新規裁定者(67歳以下の年金受給者)=賃金スライド」か、「既裁定者(68歳以上の年金受給者=物価スライド」かで分けられます。
どちらの場合も、賃金上昇率が物価上昇率を上回る場合は物価上昇率、物価上昇率が賃金上昇率を上回る場合は賃金上昇率が適用されるルールになっています。
もう少し詳しい分け方は 第185回の記事 に掲載しています。
(※私が記している過去の年金記事には、致命的な情報不足があり、その内容は、第477回の記事、第478回の記事、第479回の記事、第480回の記事、第481回の記事 において訂正した上で、再検証しています。ですが、今回話題とする内容については影響はありません)
その上で、改めて「マクロ経済スライド」についてご説明します。
年金制度として「物価賃金スライドが導入されている」という事は情報として変わりはないのですが、「マクロ経済スライド」はこの「物価賃金スライド」に対して「物価が上昇する場合」だけ特殊なるルールを設けています。
マクロ経済スライドには特別なキーワードとして「スライド調整率」という言葉が登場します。
即ち、年金は物価・賃金が上昇したとしても、その上昇率が「スライド調整率」を上回らなければ上昇しませんよ、というルールです。
このスライド調整率は安倍内閣発足後、平成28年度までは0.9だったのですが、安倍内閣発足後、平成31年度より0.2にまで引き下げられました。(平成29年、30年の情報は確認できていません)
つまり、物価・賃金上昇率が1%だった場合、年金上昇率がこれまで0.1%しか上昇しなかったものが31年度以降は物価・賃金が1%上昇した場合、0.8%まで上昇するようになったという事です。
これ、現在確認しますと令和4年の段階で0.1にまで下がっています。
スライド調整率の引き下げ=給与所得者数の大幅な増加
では、一体なぜスライド調整率は引き下げられたのでしょうか。その最も大きな理由は「第二号被保険者」つまり
「厚生年金加入者」の大幅な増大です。
安倍内閣に入り、就労状況が大幅に改善され、「第二号被保険者」、つまり「給与所得者数」が大幅に増加したことにより、年金財政が大幅に改善したことにあります。
具体的な計算方法は公開されていませんが、スライド調整率が引きげられた理由が「厚生年金加入者の大幅な増加」であることに間違いはありません。(実際にそのようにアナウンスされています)
「貧富の差が拡大した」
「非正規労働者が増えた」
と身勝手に叫ぶのは自由です。ですが、特に責任ある立場にある国会議員やマスコミがこれを喧伝し、誤った情報を拡散させてしまうのは果たしてどうなのでしょうか?
例えば
年収2000万円以上の人 10万人から15万に増加
という情報があったとします。
増加した数としては金額の低い年収200万円台の人が50万人増加している中で年収2000万円の人が5万人しか増加していませんので、一見すると「貧富の差が拡大した」ように見えるかもしれません。
ですが、この情報が以下の様な内容であったとしたらどうでしょう。
年収200万円未満の人 700万人から700万人で横ばい
年収200万円台の人 800万人から850万人に増加
年収500万円台の人 400万人から500万人に増加
年収2000万円以上の人 1万人から1万5千人に増加
実はこの人数、平成28年と令和2年を比較した実数にほぼ近づけています。実際には年収200万~300万円の人は横ばいですし、2000万円以上の人の上には2500万円以上の人、というカテゴリーも存在します。
比較しやすい様に情報を加工していますが、安倍内閣がスタートした平成25年と比較するともっと大きな変動が見られます。
無職であった人が漸く非正規労働者となれた結果かもしれませんし、あえて非正規という働き方を選んでいるかもしれません。
非正規の中にも年収500万以上、中には2000万円台稼いでいる人もいるかもしれません。
安倍内閣に入って非正規が増えているように見えるかもしれませんが、「労働者数」の絶対値が上がれば「非正規」の数が増えるのは当然ですし、実は最も直近の数字で見る限り、非正規が7年連続で増加する中、非正規は2年連続で減少しています。
「貧富の差が拡大した」という情報も、「非正規が増えた」という情報も、実は全く根拠のない憶測で、正確な情報ではありません。
ですが就労者数が増加し、ほぼすべての給与所得層においてその数が増加しているという事は年金の面から見ても、税収の面から見てもまぎれもない事実であり、「安倍内閣の実績」にほかなりません。
しかし、そのような事実に見えないれいわ支持者が中心となり、凶弾に倒れ、今まさにその命を閉じようとしている安倍元首相に対して「もう死んだかな」という投稿を行ったり、「殺されて当たり前だ」といった投稿を行ったり、ましてや犯人を賛美するかのような投稿を行ったりしているんですよ。
言いたいことはいっぱいあります。明日は参議院選挙の投票日であり、公選法上明日にはできなくなる表現もあります。
恐らく今晩や明日に続きの投稿も行う予定ですので、その言葉は胸の内にとどめておきます。
日本国民の皆さんにはきちんと考えてもらいたい。本当の「正義」を見失わないでほしい。これだけは声を大きくしてお伝えしたいと思います。
この記事のカテゴリー >>ロシア革命とソビエト連邦誕生に至る経緯
<継承する記事>第523回 現在のロシア・ウクライナと日本の近代史~プーチン大統領の弁明
現在のロシアの姿勢は許容できるものではありませんし、恐らくはその原因を過去に求めても何も解決はしません。
ですが、プーチン大統領を初めとするロシアが自らを理論武装するためにその過去を利用しようとしていることもまた事実です。
そこで、プーチンが主張するロシアの過去を否定することを目的とし、私が過去に作成したシリーズ、 ロシア革命とソビエト連邦誕生に至る経緯 を再び深堀することで「ロシア」と「ウクライナ」の関係。その過去を検証してみたいと思います。
「ロシア人」と「ウクライナ人」
シリーズを改めて読み直してみたのですが、冒頭部分はまだまだ私の「主観」が多分に含まれていますね。
ただ、ロシアに関するシリーズの作成の仕方としては、まず私の主観を記載し、これを客観的な情報によって否定していくという方法を用いていますので、ある意味当然と言えるかもしれませんが。
画像を 第一回目の記事 より抜粋する形でまずは「ロシア」という国がどのように巨大化していったのか、その様子を地図で示してみます。
モスクワ大公国
ロシア・ツアーリ国①
ロシア・ツアーリ国②
倍率を調整することでそれぞれの地図上のサイズを少し近づけてみました。
最初のロシアは「ロシア大公国」。ではこの国がどのようにして誕生したのかという事を記した記事がシリーズ第3回目の記事である
第293回 ロシアとウクライナ/ユダヤ人のロシア流入までの歴史
というタイトルの記事です。
第2回目の記事 でも私、記事冒頭で
「国家」と「民族」
日本人にとって理解しにくい問題としてあるのは、「ウクライナ」という用語について。
私、338回の記事 におきまして「ナショナリズム」という言葉をテーマとして取り上げたことがあります。
この記事において、私は「ナショナリズム」という言葉について、以下のように記しています。
ですが、同じ「ナショナリズム」でも、これが日本語に訳される際は「国家主義」や「国粋主義」と訳されることもあるわけです。
しかし、今回の記事でも記しました様に、逆に日本語である「国家主義」や「国粋主義」を欧州人が自国語に訳そうとしたとき、決して「ナショナリズム」とは訳さないはずです。
ですから、「ナショナリズム」といえばもちろん「大和民族」または「日本人」のことを指していますし、「愛国心」といえば自分たちが住む「日本」という国のことを指しています。
ですが、欧州の場合、日本とは事情が異なります。ヨーロッパでは、そのほとんどの国や地域でその土地に居住している「民族」と、その民族を支配している民族が異なります。ですから、「民族主義(ナショナリズム)」という言葉は、その自分たちを支配する民族、支配層からの「独立」を意味していますので、「愛国」とは対極に位置するものになります。
この様な事情から、ヨーロッパでは「民主主義」と「民族主義」が一致性を見る場合もあるのですが、日本で「民族主義」を掲げると、逆に異民族の排斥を行うようなイメージがもたれてしまいます。
両記事において私が何を訴えているのかと申しますと。
日本では「国家」と言えば「日本」で、「民族」と言えば「大和民族」。この認識については日本人が共通して抱いている認識です。
ですが、欧州ではその「国家」と「民族」が必ずしも一致しません。欧州は常に「支配民族」と「被支配民族」が異なる歴史をすべての国が歩み続けたのです。
日本と同じ島国であるイギリスでさえ、同じ「イギリス(正式名称:グレートブリテン及び北アイルランド連合王国。ユナイテッドキングダム。)という国家でさえ、同じ国家の中に「イングランド」「スコットランド」「ウェールズ」「北アイルランド」という4つの民族が別々に国家を掲載しており、2000年代後半まで「北アイルランド問題」という民族紛争問題を同国の中に抱えていました。
こういった認識は日本人には非常に馴染みにくい考え方です。
「ウクライナ」という「地名」と「民族名」
(画像はWiki画像よりスクショしています。問題がある場合はすぐ削除します)
本年(2022年)2月24日、ロシアがウクライナに進行して以来、「ロシア人」と「ウクライナ人」という言葉が頻繁にニュース紙面上に登場するようになりました。
そして、侵攻が開始された当初より、報道として「ロシア人とウクライナ人が兄弟のような関係にあるのに」といった認識が盛んに報道される様子も多く目にしました。
ですが、私はその報道に非常に違和感を感じていました。
私がロシアの近代史を調べ始めた最大の理由は、太平洋戦争(大東亜戦争)において日本があたかも戦犯国であるかのような情報を広く目にする中で、その真偽を私自身が受け売りではない情報を集め、比較・分析し、私自身が納得できる情報にまで落とし込もうとする中で、「ドイツ」と「ソ連」という二つの国家を分析する必要がある、と考えるようになったからです。
そして、先に「ソ連」という国の分析をスタートし解析を行っていく中で、幾度も「ロシア」と「ウクライナ」という国家がぶつかり合う様を目にしていたから。
また、「ロシア」とはもともと「キエフ大公国(キエフ・ルーシ)」の元首であった「ユーリー・ドルゴルーキー『キエフ大公』」がまだ「ユーリー・ドルゴルーキー公爵」であった時代に治めていた領土を、息子であるフセヴォロド3世に分け与えたもの(後のモスクワ大公国)が原型となっています。
そして、「キエフ大公国」こそ現在のウクライナに存在した国であり、もしもこの「キエフ大公国」と現在の「ウクライナ」が同じものを指すのであれば、「ロシア」とはまさに「ウクライナ」から生まれた国であることになります。
勿論、そのためには「ロシア」もまた「モスクワ大公国」とイコールである必要がありますが。
ですが、実際にはそうではありません。では、「ロシア」とは一体何で、「ウクライナ」とは一体何なのでしょうか?
次回記事では、このあたりの情報をベースに進めてみたいと思います。
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