第85回 2016年(平成28年)GDP速報が公表されました~2015年度GDP速報の見方~など、政治・経済を中心とした日常的な情報を、独自な視点で解析します。

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(※2016「年度」第1四半期の速報は、→第140回の記事に掲載しています。)

カテゴリー第二次世界大戦は少しお休みして、本日は発表されたばかりの「2016年度(平成27年度)GDP速報」についての記事を作成したいと思います。

GDPについては、改めて説明する必要はないと思いますが、正式には「国内総生産(Gross Domestic Product)」といいます。
今回発表された速報はこちらになります。↓

【2016年第4四半期別GDP1次速報(2015年度GDP1次速報)】
2016年度GDP速報
四半期別GDP速報 時系列表 2016(平成28)年1~3月期 (1次速報値)

この「速報」は「確報」と共に四半期ベースで公表されています。
「速報」と「確報」は、実は統計方法が異なっていて、速報はデータを「サンプルベース」で集計して公表し、確報はこのサンプルベースデータを「コモディティーフロー法」という方法を使って調整したものです。

私自身はこの様な集計方法に対して懐疑心を抱いてはいるのですが、(第53回 実質GDPへの疑惑第83回 続・「消費税収」と「名目民間最終消費支出」をご参照ください)、とはいえ、政府が公表する最も大きな経済指標であり、参考にしないわけにはいかないデータになります。

指標の見方を正確に理解した上で、改めて他の経済指標とも比較しながら、正確に理解する。私自身としてはこのような方法でGDPについて分析を行っていきたいと思います。

データの名称は「四半期別GDP速報」となっていますが、政府の会計年度は4月~3月となっていますので、事実上2015年度GDP速報となります。

基本的なお話にはなりますが、会計年度には主に1月~12月の「暦年」と、4月~3月の「年度」という二つの期間設定があります。
速報データにもこの「暦年」と「年度」、二つの指標が掲載されています。
ですが、政府の「予算」は基本的に「年度ベース」で組まれますので、データとしては「年度」で見ることの方が重要になります。

また、政府はこれらのデータを、「月別(月次)」、「四半期別」という二つの期間に分けて公表しています。(月次データは、一部にはなりますが日本経済研究センターのホームページから閲覧することができます)

4半期とは、1年を3か月ごとに区切った期間のことで、1月~3月、4月~6月、7月~9月、10月~12月の4つの期間となります。

年度ベースで見る場合、4月~6月を「第一四半期」または「第1クォーター」といいます。「1Q」などと表現されます。
続いて7月~9月が第二、10月~12月が第三、1月~3月が第4となります。

資料は、「実質GDP」および「名目GDP」、更に四半期別ではそれぞれを「原系列」「季節調整系列」にわけ、原系列では「前年同月比」を、季節調整系列では「前期比」をそれぞれ掲載しています。また「季節調整系列」では、この「前期比」を、さらに「年率換算」したデータも掲載されています。

それぞれの言葉の意味については、後段にて必要だと感じればその都度ご説明いたします。今はまだ、「そのような言葉があるんだな」という程度でのご認識をいただければと思います。

またこれ以外に、「GDPデフレーター」という項目も掲載されています。「GDPデフレーター」については、第9回の記事にてご説明していますが、少しわかりにくいかもしれません。

GDPデフレーター=実質GDP÷名目GDP

で、どのくらい物価が上昇したのか、ということを表す指標になります。
それでは後段にて、2015年度のGDPについて、私なりの解釈を加えて分析していきたいと思います。


用いるべき経済指標

単純に「GDP」と言っても、前段でお示ししたように、「名目」だとか「実質」だとか、「原系列」だとか、「季節調整系列」だとか、様々な指標があるのだということはご理解いただけましたでしょうか。

では、どの指標が一番正しく経済を見ることができるのか、というと、私は「名目」の「原系列」だと考えています。

「季節調整系列」というのは、例えばクリスマスと夏休みの経済状況を比較しようと考えたとき、当然売れるものも違いますし、消費される量も異なります。そこで、そのような季節特有の事情を計算式上除外して、純粋な生産量や消費量で比較するために考えられた指標です。
もちろんそれなりに知識のある人が、長年研究してはじき出したデータから割り出してこのような「季節調整」を行っているわけですが、それでも計算式だけで、完全にそのような「季節特有の影響」を除外することはまず不可能です。

そのような計算式からはじき出された「季節調整系列」は、参考にはなるかもしれませんが、鵜呑みにできるデータではありません。ですから、本来であればこのような「季節調整」など行わず、単純に同じ気候の「前年同月」と比較することで、一番純粋に経済の変化を観測することが可能だと私は考えています。

また、「名目」か「実質」かと考えた場合も、第53回の記事でお示ししたように、本来「消費量ベース」で計算しなければならない部分がやむを得ず「消費金額」で計算されてしまっていることなど、その計算方法には懐疑心を抱いています。

名目の計算方法についても疑問がないわけではありませんが、「実質」で発生しているバイアスに比較すれば何倍もまし。
また、そもそも四半期別ではなく、「年別」で比較することができれば、「季節調整」など行う必要がありませんから、今回の様に「年度別名目GDP」が発表された直後というのは、年度間の経済政策を分析すべき絶好のチャンスです。

GDP統計資料の項目の説明

以下は単純な用語説明です。一見すると難しく感じるので、あとから疑問に感じたら振り返ってみてください。

四半期別GDP速報 時系列表 2016(平成28)年1~3月期 (1次速報値)

各ページの項目は、下記のような名称になっていますね。

【GDP一覧表に掲載されている項目一覧】
項目名:
 民間最終消費支出 
   家計最終消費支出・除く持ち家の帰属家賃

 民間住宅
 民間企業設備
 民間在庫品増加

 政府最終消費支出
 公的固定資本形成
 公的在庫品増加

 財貨・サービス
   純輸出
    輸出・輸入

簡単な説明を行っておくと、

【GDPに関連する用語説明】
・「民間」とは「企業」と「家計(家庭)」のこと。
・最終消費支出とは、一年間でいくらお金を使ったのか(支出したのか)ということ。
・「帰属家賃」とは、家を所有している人が、自分自身に家賃を支払ったとするといくらになるのか、という数字。
・民間住宅とは家計が住居購入のために充てた支出。
・民間設備投資とは、企業が建築物や機械などの購入に充てた支出。
・公的資本形成とは、政府による公共事業(土地代を除く)やIT環境の整備費
・純輸出とは、輸出金額-輸入金額

となります。

2015年度の名目GDP

さて。ここからがいよいよ本題です。一応、先ほどの用語説明は全項目共通になっています。
では、さっそく2016年度の経済指標を見てみます。

ページ数はリンク先PDF資料の27ページ目です。
2015年度の名目GDPは全体で 500兆円となっていますね。前年2014年の名目GDPが489兆円ですから、10.7兆円の経済成長となります。
ちなみに2014年度は増税年度ですから、増税前の2013年度と比較して、「消費が低迷した」と言われている年です。

名目GDPには税収も含まれています。
2014年度の消費税収は16兆円。これを5%あたりに換算すると10兆円で、差額6兆円分が経済成長ではなく、増税によって増えた消費ということになります。2013年度の数字を2014年と比較する場合は、この6兆円を差し引いた金額、すなわち483兆円で比較する必要があります。
ちなみに2013年度の名目GDPは482兆円ですから、差額約1兆円分2014年度増税前の2013年度と比較して経済成長している、と考えることができます。ただ、GDPの算出は正確な「消費」を反映しているわけではありませんから、実際の消費税収と単純比較はしないように気を付ける必要はあります。

2014年度と2015年度を比較する場合は、共に増税後のデータになりますから、同一の水準で比較することが可能です。
名目GDP全体で見ますと、10.7兆円の経済成長で、名目GDPが500兆円を超えたのはリーマンショック直前、2007年以来のこととなります。

ところが、その内訳をみてみますと、

【2015年度GDP 項目別速報結果】
 
2015年度-2014年度
 民間最終消費支出 -1.5兆円
   家計最終消費支出 -1.7兆円

 民間住宅 +0.3兆円
 民間企業設備 +1.4兆円
 民間在庫品増加 +1.5兆円

 政府最終消費支出 1.3兆円
 公的固定資本形成 -0.5兆円
 公的在庫品増加 -0.09兆円

 財貨・サービス
   純輸出 8.2兆円
    輸出 -1.0兆円
    輸入 -9.2兆円

とこのようになっており、やはり「民間最終消費支出」が足を引っ張っていることが分かりますね?
しかも、民間最終消費出全体では-1.5兆円なのに、家計最終消費支出は-1.7兆円。項目説明の部分でもお伝えしましたが、「民間最終消費支出」を構成しているのは「企業」と「家計」です。

民間最終消費支出が-1.5兆円、家計が-1.7兆円ですから

企業最終消費支出=(-1.5兆円)-(-1.7兆円)=0.2兆円
となります。

そう。企業最終消費支出は+ですから、完全に足を引っ張っているのは「家計」だということになります。
果たしてこのようないびつな現象がどうして発生するのでしょうか。

「2015年度名目GDP」の真実

実は、この統計指標の中で着目していただきたい部分が3つあります。
一つが「民間住宅」。一つが「純輸出」。ひとつが「輸入」です。

項目の説明でも記載した通り、「民間住宅」とは、所謂「家計」が購入した住宅のことです。
住宅は、一般的な家庭が一生のうちに行う「支出項目」の中で、最も大きな支出項目です。
もちろん前年、つまり2014年度の民間住宅を見てみますと、金額にして1.3兆円、割合にして8.5%ものマイナスとなっており、この反動で増えたのだという考え方もできないわけではありません。

ですが、家計にとって、一生で最も大きな買い物であるはずの「民間住宅」の項目が増えている中で、果たして「家計最終消費支出」のみが大幅なマイナスを記録することなど、果たして考えられるでしょうか。

続いて見ていただきたいのは、「純輸出」です。
「純輸出」金額はなんと8.2兆円のプラス。これは全ての項目の中で最も大きなプラス幅です。

ですが、詳細を見てみますと、別に輸出が8兆円も増えたわけではありません。
輸出は-1.0兆円のマイナス。減っています。実は、2016年度のGDPを構成する項目の中で、GDPに対してもっとも大きな影響を与えているのは「輸入額」のマイナス幅なのです。その額実に-9.2兆円。

純輸出高は輸出-輸入ですから、

(輸出:-1.0兆円)-(輸入:-9.2兆円)=8.2兆円。

これが「純輸出高」です。
このように記載すると、「なんだ、日本の経済は成長したわけではなく、単に輸入が減ったから成長したように見えるだけか」なんて思う人もいるかもしれません。

ですが、この-9.2兆円という輸入金額。これは別に「輸入量が減った」わけではありません。原因は「輸入単価」が下落したこと。
詳しくはぜひ第45回 「原油価格」と「為替相場」の記事を参照してみてください。

そう。「原油価格の下落」です。原油価格が下落したことで、他の輸入品目も影響を受けて単価が下落しました。これも同記事にて説明しています。

「GDP」とは、元々「GNI(国内総所得)」という数字に「輸出」を加え、「輸入」を差し引いた指標です。
言い換えれば、「GNI」という指標には元々「輸入金額」が含まれていたということ。ではその「輸入金額」。一体どこに含まれているのでしょうか。

言うまでもありません。それは「最終消費支出」や場合によってはその他の住宅・設備投資費等に含まれていることになるのです。
GDPの「純輸出」以外の項目には輸入額に相当するものが含まれており、それを合算して「輸入額」としてGDP全体から差し引いている、ということになります。

もう少し具体的に表現してみます。

2014年:輸入価格4000円
2015年:輸入価格2000円

の品物があったとします。
販売者はこれを

2014年:売価1万円
2015年:売価9000円

で売ったとします。

GDPで考えると、消費者は

2014年:消費額1万円
2015年:消費額9000円

ですから、所謂「家計最終消費支出」は1000円下落していることになります。
ですが、販売者側は利益が1000円増えていますから、その分を他の消費支出や設備投資へと向かわせることができます。

消費に回せば「企業最終消費支出」が、設備投資に回せば「民間設備投資」がそれぞれプラスになります。

これは、何も単なる「推測」で話をしているわけではありません。

2016年度消費者物価指数

平成22年基準 消費者物価指数 全国 平成28年(2016年)3月分
↑こちらは、総務省統計局が集計した、「消費者物価指数」のデータです。こちらも「3月分」とはなっていますが、年度末ですので2015年度分のデータが掲載されています。

【2015年度CPI、コア、コアコア別指標および前年度比】
2015年度CPI
↑クリックしていただきますと画像が大きくなります。2015年度消費者物価指数の表を抜粋したものです。

2014年度の指数が大幅に上昇しているのは消費増税の影響です。
2015年度を見ますと、「総合」、所謂「CPI」が前年度比0.2%増、生鮮食品を除く総合、所謂「コアCPI」が0.0%で横ばいとなる中、食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合、所謂「コアコアCPI」が0.7%と他の項目に比較して上昇しています。
(消費者物価指数の見方は第44回の記事をご参照ください)

この段階でもまだわかりにくいかもしれませんので、もう少し突っ込んでこちらの表をご覧ください。

【2016年度10大費目別前年度比】
2015年度CPI-2
こちらもクリックしていただきますと大きくなります。

表7で、「総合」以外の項目を見ていただきますと、マイナスの項目は「高熱・水道」「交通・通信」の2項目であることが分かりますね。他に「住宅」の項目が唯一下落していますが、他の項目は軒並みプラス。上昇しています。

更に表7の下部をご覧いただきますと、もう少し詳細な内容が掲載されています。

10大費目>>中分類>>品目 

の順で詳細になります。中分類は10大費目の詳細で、品目は中分類を更に細かく表示したものです。
ご覧いただくと一目瞭然ですが、値下がりしているのは「灯油」「都市ガス」「プロパンガス」「ガソリン」そして「電気代」。
その値下がり幅も非常に大きな幅となっています。

上昇している項目では、10%以上も上昇している項目が並んでいますね。
ちなみに「消費者物価指数」とは、「消費されなければ上昇しない」項目です。

例えば店頭で「1万円」で販売されていたとしても、これが消費されなければ物価が1万円になることはありません。
逆に言うと、「消費されたから」上昇したということです。

「消費者物価」とは、所謂「単価」に相当するもので、輸入品の代表品目ともいえる「原油価格」がかかわっていない品目は軒並み物価上昇していることが分かります。
とてもざっくりした表現ですが、これに販売量をかけたものが「家計最終消費支出」だと考えることができます。

エネルギー費を除いた「消費者物価」がここまで上昇している中で、GDPを構成する「家計最終消費支出」のみが下落することはとても考えにくいのではないでしょうか。

このような理由から、所謂「家計の消費」は、特に2015年度に限って言えば「下落している」わけではなく、原油価格の大幅な下落に伴って、見かけ上下落しているように見えるだけであり、実際の「消費」は一般で言われている以上に、しかも「大幅に」上昇しているのではないのか、というのが私の現時点での2016年度GDP評でございます。

ちなみに「季節調整して年率換算された四半期ベースの前期比」のみに着目され、リセッションだなんだ騒がれた「実質GDP」も終わってみれば前年度比プラス5兆円の大幅なプラス。

名目成長率2.2%、実質成長率0.8%、物価上昇率1.4%で、同でしょうね。もう「デフレは脱却した」と言ってもよい経済状況ではないかと、私はそう思いますね。


このシリーズの過去の記事
>> 第88回 消費増税、再延期へ(2016年5月27日現)
このシリーズの新しい記事
>> 第83回 続・「消費税収」と「名目民間最終消費支出」

このシリーズの一覧をご覧になりたい方は >>日本の税収の見方 よりご確認ください


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