第81回 金融政策の限界①など、政治・経済を中心とした日常的な情報を、独自な視点で解析します。

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<前回の記事 第80回 日銀政策の意義

シリーズ第二次世界大戦についても鋭意製作中なのですが、前回の記事に関連した内容で、とあるところで議論になりましたので、そのことについて少し掲載してみたいと思います。

議論になった相手は、第15回の記事でご紹介した、「マネタリズム」という考え方にとらわれた相手でした。

改めて「マネタリズム」という言葉について解説させていただきますと、
マネタリズムとは

市場に流通する通貨の量さえ増やせば、国民の所得は拡大するという考え方。
日銀による「金融政策」さえ行っておけば、国民の所得は増え、経済は成長するという考え方。

詳細な内容については改めて第15回の記事に目を通していただければと思うのですが、ここでいう日銀による「金融政策」とは、主に

・政策金利(民間の金融機関が日銀からお金を借りるときの金利のこと)の引き下げ
・量的緩和(民間の金融機関が持つ国債や株などの金融商品を買い取って日本銀行券に換えること)の実施

この二つです。
マネタリズムとはつまり、政府が行う政策より、日銀によって実施されるこの二つの政策のほうが重要である、という考え方です。

ですが、「流動性の罠」という状況に陥った市場では、このようなありとあらゆる金融政策には意味が失われ、効果が失われてしまいます。(理由はクリック後の記事を参照ください)

このような市場における有効な手段は、「財政政策の実施」に他なりません。
後段において、日本銀行が公表している「資金循環表」に基づいたデータから、「流動性の罠」と呼ばれる状況について、具体的に解説していきたいと思います。


「第一の矢」の意味

第23回の記事より、少し抜粋します。

現金通貨の量は増え続けている=流動性は高まり続けている状況にあるわけですから、本来であればわざわざ「大胆な金融政策」を項目として掲げる必要はないようにも感じます。

ですが、その中で安倍内閣があえて「大規模な金融緩和」を第一の矢として掲げた理由には、「期待インフレ率」を高めることが一つあげられます。

「期待インフレ率」とは、将来日本の物価が上昇するのではないか、というその期待値。「予想インフレ率」のことを言います。

上記は、私が感じる「第一の矢」の意味について記したものです。
この時ご紹介した「フィッシャー方程式」について、若干正確性を各部分があったかと思いますので、この場で補足します。

「フィッシャー方程式」とは、米国の統計学者である「アーヴィング・フィッシャー」という人物が考えた公式です。

実質金利=名目金利-期待インフレ率

「流動性の罠」と呼ばれる状況は、この公式のうち「名目金利」の部分が0%になり、その結果「実質金利」も0%になることを意味しています。

名目金利が0%で、仮に将来期待される物価上昇率がマイナスであった場合、元本となるお金をそのまま手元に残しておけば、物価が下落した分、同じ商品を購入したとしても、手元にお金が残ることになります。
このため、「現金のまま資金を持っておこう」と考えるのが「デフレ」。

逆に将来期待される物価上昇率がプラスであった場合、手元に残るお金は減少することになりますから、今のうちにものを買っておいた方がお得だ、ということになります。
後者はどちらかというと「投資」的目的お金を使う場合に起きる発想だと思います。

今のうちにお金を使っておけば、購入した商品を将来高く売ることができる、という発想です。
つまり、この「期待インフレ率」を高めることが、実質金利を高めることにつながり、企業や投資家の投資意欲を活性化することができます。

安倍内閣にて実施されている「第一の矢」は、いわゆる金融緩和政策に当たり、上記にも掲載しているとおり、「流動性の罠」に陥った市場では、本来ならば効果が失われてしまうはずの政策です。ですが、この政策に対して意味があるとすれば、それは市場の「期待インフレ率を高める」ということです。

ですが、いくら期待インフレ率を高めることができたとしても、その効果はいつまでも及ぼし続けることはできません。
せいぜい、政策を維持することで、「高まった期待インフレ率を維持する」ことが関の山ではないでしょうか。

今回の記事は、つまり安倍内閣において実施された、「第一の矢」の限界について検証することが目的です。

グラフで見る「流動性の罠」

まず見ていただきたいのは、こちらのグラフです。

グラフ①
預金取扱機関 現金預金残高推移
少し見にくいと思いますので、クリックして拡大してください。
グラフは、日銀の資金循環表をより抜粋しました。

内容は「預金取扱機関が保有する現金資産の推移」です。

上の水色が「ストック」。つまり保有する現金資産全体の金額。
下の青色は「フロー」。同じ期間でどのくらいの資金が増えたり減ったりしているのか、その変化額です。
プラスだといくら増えましたよ、マイナスだといくら減りましたよ、という金額です。

明らかにわかると思うのですが、2013年より、水色の「ストック」の額が急上昇しています。
つまり、安倍内閣に入ってから、「預金取扱機関」が、「現金のままで保有している資産」の量が急激な変化率で上昇し続けていますよ、ということです。

下の「フロー」の方は少し見にくいと思いますので、拡大してみます。

グラフ②
預金取扱機関 現金預金残高推移フロー
こちらも、このままでは見にくいと思いますので、クリックして拡大してください。

安倍内閣に入ってからは減ったり増えたりを繰り返し、少しずつその額が増えていることがわかると思います。
ただ、調べていてこのグラフ自体にはあまり大きな意味はないこともわかりましたので、グラフとしてはグラフ①の水色の部分に着目していただければと思います。

では、改めてグラフ①の水色のグラフをご覧ください。
安倍内閣に入った直後の現金資産が約200兆。その数字が、最新のもので2015年12月末の430兆円にまで増大しています。
その差額が230兆円。預金取扱機関全体でこれだけの現金資産が増えた、逆に言うと運用されることなく放置されている、ということです。

では、一体なぜこれだけの金額が膨らんだのでしょうか。理由は二つ考えられます。
一つ目がこちらのグラフです。

グラフ③
預金取扱機関 現金預金負債推移フロー
こちらは預金取扱機関の「現金負債残高」。
簡単に言えば、預金取扱機関に預けられている現金の現金総額の推移を示したものです。預金取扱機関全体で、民間人や企業からこれだけのお金を預かっていますよ、ということです。

安倍内閣に入って突然増え始めたわけではありませんが、安倍内閣以降で約100兆円増額しています。

そして、もう一つ考えられるのがこちらのグラフ

グラフ④
預金取扱機関 国債保有残高
こちらは、預金取扱が保有する「国債」の残高です。

見ての通り、安倍内閣に入って以降、急激に減少していることが分かります。
なぜでしょう。答えは、日銀による「量的緩和」が原因です。
安倍内閣に入って以降、日銀により、総額90兆円にも上る国債が、現金化されているのです。

金融機関としても、これだけの莫大な資産を預かっている以上、利息も発生しますから、利息分を何らかの方法で稼ぎ出さなければなりません。

その運用先として国債が選ばれていたわけですが、それを「量的緩和」により日銀が90兆円も現金化してしまったということです。

もちろん、このように金融機関にとってみれば大切な運用先をなくされたことで、非常に困ることになってはいるわけですが、それ以上に、日本国全体、アベノミクスとしてもきちんと考えなければならない部分があります。

そして、それこそが「金融政策の限界」なのです。
他の用事がございますので、今回はここで終了し、次回記事につなげたいと思います。


このシリーズの過去の記事
>> 第82回 金融政策の限界②
このシリーズの新しい記事
>> 第70回 平成28年度予算成立~子育て支援事業について~

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