第68回 「北一輝」という人物など、政治・経済を中心とした日常的な情報を、独自な視点で解析します。

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<前回の記事 第67回 日本における「左翼」②

前回までは、「右翼」と「左翼」というタイトルの下、いわゆる「左翼」。共産主義や社会主義に着目して記事を作成してきました。

調べていく中で到達した一人の人物の名称、「北一輝(きたいっき)」という人物。
この人の考え方がとても面白い、と感じたので、少しピックアップして記事を作成したいと思います。

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写真はWikiから拝借しましたので、Wikiへのリンクを張っています。

第67回の記事に於きましては、元々共産党さんの「綱領」を参考に、日本における「共産党」という存在を掘り下げ、その歴史観や現代におけるそのスタンスを認識することを目的としていたのですが、その過程において、「2.26事件」というキーワードが登場し、この2.26事件が一種の「クーデター」であったこと。そして、この事件を引き起こしたのが「皇道派」と呼ばれる、軍隊の中における「右翼」であったということがわかってきました。

つまり、2.26事件が起きるまで、明治憲法下における日本の議会運営は正常に機能していたのに、2.26事件以降、軍隊が政府に対する関与を深めてしまったため、当時の議会が異常な状況になった・・・というのがどうも日本が第二次世界大戦へと突き進んでいく、一つの「要因」となったようです。

ところが、この「皇道派」の起こした事件。この背景を見てみますと、その思想は明らかに「マルクス主義」の影響を受けており、更にこの「皇道派」に対して大きな影響を与えた人物こそ「北一輝」という人物であった、ということです。


「北一輝」という人物

情報としては、こちらのサイトがうまくまとめていて、比較的客観性があると思いますので、こちらを参考にしたいと思います。
北一輝とその思想

彼の幼名は「北輝」。成人して「北輝次郎」と改名し、これが北の「本名」となるのだそうです。
彼は元々「左翼(マルクス主義・社会主義)思想」に傾倒した社会主義思想家で、『国体論および純正社会主義』という書物の中で、「明治憲法下の天皇制の矛盾」を痛切に批判します。

サイトから引用すると、「天皇が現人神として無謬の神として国民道徳の最高規範として君臨することと同時に天皇は元首として過ちと失敗を繰り返さざるを得ない政治権力の最高責任者に位するものと定めた明治憲法の二元性」と表現されています。

要するに、「憲法上、天皇陛下は国民の道徳の規範とされているけど、陛下が最高責任者とされる『政治』は過ちと失敗を繰り返さざるを得ないよね。過ちや失敗を繰り返す分野の最高責任者が、国民の『道徳の規範』だなんて、一体どういうこと?」という主張を行ったのです。

この書物の出版は即座に禁止されたのですが、このころより、第66回の記事でもご紹介した、「幸徳秋水」ら、いわゆる「社会主義者」との交流が始まります。

彼はその後、中国で起きた革命、「辛亥革命」にも参加し、帰国後、後に満州事変を画策したともされる「大川周明」という人物と交流を持つことになります。このころから彼は「北一輝」と名乗るようになります。

更に彼は上海に渡り、ここで執筆したのが『日本改造法案大綱』。この大綱が皇道派の暴走を後押しする「思想」となります。
この書物の冒頭で彼は、「左翼的革命に対抗して右翼的国家主義的国家改造をやることが必要である」と記しています。

彼は、この「右翼的国家主義的国家改造」が、

「天皇は全日本国民と共に国家改造の根基を定めんが為に天皇大権の発動によりて三年間憲法を停止し両院を解散して全国に戒厳令を布く」

という方法によって達成されると考えました。
即ち、天皇陛下が、その「大権」を発動して憲法を三年間停止し、「衆議院」と「貴族院」を解散。新しい法整備が整うまで全国に戒厳令を布いて治安を維持する、という考え方です。

皇道派は、これを実現するために天皇陛下に「輔弼(ほひつ)」する役割を持つ大臣を皆殺しにし、皇道派が主権を握ることで、この「革命」を実現しようとしたわけです。

国家社会主義

さて。北一輝という人物のたどった人生と、結果として発生した「2.26事件」。
ここに、大きな「矛盾」があることにお気づきでしょうか。

北は、元々天皇制を批判し、社会主義者たちとも交流を持つ「社会主義思想」の持ち主でした。
ですが、『日本改造法案大綱』の中では、この「天皇制」を否定せず、天皇陛下の下で革命を実現するべきだ、と打ち出したわけです。

北は、途中で気づくんですね。日本という国で革命を行うためには、天皇制を否定するよりも天皇制を維持し、天皇制の下で、合法的に革命を実践することが最も合理的である、と。

ただ、結果的に用いられた手法は「暴力によるクーデター」という手法でしたし、また彼と親交のあった「大川周明」という人物が、「満州国」を打ち立てる目的で考えられた「クーデター」もまた、同じ思想の下で実行されました。これこそが「満州事変」なのです。

北の思想は「国家社会主義」と呼ばれます。ですが、フレームこそ違え、その手法。やり方はまさしく「マルクス主義」そのものです。
日本共産党は、その綱領の中で、第二次世界大戦を引き起こす原因となったものを「帝国主義」や「ファシズム」、「独占的資本主義」が原因だと主張していますが、どう感じられるでしょうか。

日本改造法案大綱

さて。ところが、です。
私がなぜこの「北一輝」という人物に対して、「興味深い」と記したのか。それは、サブタイトルにある『日本改造法案大綱』。
その中身にあります。

緒言
…全日本國民ハ心ヲ冷カニシテ天ノ賞罰斯クノ如ク異ナル所以ノ根本ヨリ考察シテ、如何ニ大日本帝國ヲ改造スベキカ大本ヲ確立シ、擧國一人ノ非議ナキ國論ヲ定メ、全日本國民ノ大同團結ヲ以テ終ニ天皇大權ノ發動ヲ奏請シ、天皇ヲ奉ジテ速カニ國家改造ノ根基ヲ完ウセザルベカラズ。…
卷一 國民ノ天皇
憲法停止。天皇ハ…三年間憲法ヲ停止シ兩院ヲ解散シ全國ニ戒嚴令ヲ布ク。
卷ニ 私有財産限度
卷三 土地處分三則
卷四 大資本ノ國家統一
卷五 勞働者ノ權利
勞働賃金。勞働賃金ハ自由契約ヲ原則トス。…
勞働時間。勞働時間ハ一律ニ八時間制トシ日曜祭日ヲ休業シテ賃金ヲ支拂フベシ。
幼年勞働ノ禁止。満十六歳以下ノ幼年勞働ヲ禁止ス。…
註。…四海同胞ノ天道ヲ世界ニ宣布セントスル者ガ、自ラノ國家内ニ於ケル幼少ナル同胞ヲ酷使シテ何ノ國民道徳ゾ。
婦人勞働。婦人ノ勞働ハ男子ト共ニ自由ニシテ平等ナリ。…
註三。婦人ハ家庭ノ光ニシテ人生ノ花ナリ。婦人ガ妻タリ母タル勞働ノミトナラバ、夫タル勞働者ノ品性ヲ向上セシメ、次代ノ國民タル子女ヲ益々優秀ナラシメ、各家庭ノ集合タル國家ハ百花爛漫春光駘蕩タルベシ。特ニ社會的婦人ノ天地トシテ、音樂美術文藝教育學術等ノ廣漠タル未墾地アリ。此ノ原野ハ六千年間婦人ニ耕ヤシ播カレズシテ殘レリ。婦人ガ男子ト等シキ牛馬ノ勞働ニ服スベキ者ナラバ天ハ彼ノ心身ヲ優美繊弱ニ作ラズ。
卷六 國民ノ生活權利
兒童ノ權利。滿十五歳未滿ノ父母又ハ父ナキ兒童ハ、國家ノ兒童タル權利ニ於テ、一律ニ國家ノ養育及ビ教育ヲ受クベシ。國家ハ其ノ費用ヲ兒童ノ保護者ヲ經テ給付ス。
註五。以上兒童ノ權利ハ自ラ同時ニ母性保護トナル。
卷七 朝鮮其ノ他現在及將來ノ領土ノ改造方針
卷八 國家ノ權利
國家ハ又國家自身ノ發達ノ結果他ニ不法ノ大領土ヲ獨占シテ人類共存ノ天道ヲ無視スル者ニ對シテ戰爭ヲ開始スルノ權利ヲ有ス(則チ当面ノ現實問題トシテ濠州又ハ極東西比利亞ヲ取得センガタメニ其ノ領有者ニ向テ開戰スル如キハ國家ノ權利ナリ)。
結言
…全世界ニ與ヘラレタル現實ノ理想ハ何ノ國家何ノ民族ガ豐臣徳川タリ神聖皇帝タルカノ一事アルノミ。……戰ナキ平和ハ天國ノ道ニ非ズ。

難しいですね。
ここに掲載されてある内容は以下の通りです。
・言論の自由
・基本的人権尊重
・華族制廃止(貴族院も廃止)
・「国民の天皇」すなわち象徴天皇制もしくは立憲君主制の確立
・農地改革
・普通選挙
・私有財産への一定の制限(累進課税の強化)
・財閥解体
・皇室財産削減
・労働者の権利確保

等々の実現

いかがでしょう。彼がこの「日本改造法案大綱」に掲載した内容。
そのほぼすべてが敗戦後、GHQ支配下の日本において実現しています。

では、この革命を行った「北一輝」なる人物。彼は本当に「右翼」であったのでしょうか。
2.26事件の後に制定した「国家総動員法」。これは、激化する日中戦争の最中、戦時体制を整えるために施行された法律です。
この期間、事実上明治憲法で保障されていた権利は制限されていましたし、経済そのものも国家が管理する「計画経済制度」であり、ソビエトが当時用いていた社会主義政策とも酷似していました。

共産党が批判しているのは、このような状況下における政治政策です。

戦争によって日本が壊滅的な打撃を受け、アメリカによる占領政策下に於いて実現した社会政策こそ北が提唱した政策まさにそのものでした。
そしてそれは、天皇制を是認していることを除けば、共産党の目指す社会構造そのものではないでしょうか。

そしてそんな法制度がまさしく「アメリカから押し付けられた社会システム」です。
その社会システムを「保持するべきだ」と叫びながら、一方で「アメリカから独立すべきだ」と訴えているのが現在の共産党です。

前回の記事において私は、共産党員の方から、議論の中において、

「マルクス」という人物は、当時発展しつつあった「資本主義社会」というシステムの抱える課題に、当初より気づいていたということ。
そしてその課題(矛盾点)により、自ら崩壊し、将来的に現在のような社会システムへと変革を遂げていくことを当初より予測していた。


とお伝えしました。
ですが、誕生して間もない社会システムが矛盾を抱えているのは当たり前で、他の社会システムとぶつかりあいながら、欠点を排除し、長所を吸収していくこともまた当たり前のことです。

現在の日本の社会システムが、本当に共産党が主張するような「独占的資本主義」であり、「国民の権利が制限されている」ような社会なのでしょうか?

近代の歴史を見てもわかるように、近代の戦争の原因となったのは、その多くが「マルクス主義的思想」であり、革命を起こそうとする側の思想です。

先日、ついにあれほどに議会を紛糾させて成立した「安保法制」が成立しました。
【安保法制施行】 安倍首相「同盟の絆を強くする」 新任務実施は当面見送り(産経ニュース 2016.3.29 23:53)

そして、当然のごとく日本各地で「反対デモ」が巻き起こりました。
安保法施行 「命守らない政治、反対」37都市で抗議集会
ちなみに、ここでデモを行っている人たちがいわゆる「プロレタリアート」です。本当に労働者であるかどうかは甚だ疑問ですが。

彼らのこのような行動が「暴力的である」と感じるのは私だけでしょうか。
ともあれ、現在の安倍内閣の様に「民主的」な政党を生み出す原因となったのは、図らずもこのようなデモを行っている人々が訴えている内容なのかもしれませんね。

シリーズ「右翼」と「左翼」についてはいったんここで終了したいと思います。


このシリーズの過去の記事
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>> 第123回 フランスニースにおけるトラックテロを考える~改めて考えるフランス革命~

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