第53回 実質GDPへの疑惑など、政治・経済を中心とした日常的な情報を、独自な視点で解析します。

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<前回の記事 第52回 「左翼」の変遷
<関連する記事 第36回 実質GDPの正体

前回の記事とは少し趣旨を変えまして、また前回の趣旨でもご案内いたしました通り、今回は「実質GDPへの疑惑」について記事にしたいと思います。
予告では「消費量ベース」と「金額ベース」とのタイトルにする予定だったのですが、少し変更いたしました。

実質GDPへの疑惑

そもそも私がなぜこの実質GDPへ疑惑を抱くようになったのか。

すでに過去の記事で何度もご説明していますが、GDPには2種類あり、一つが名目GDP、一つが実質GDPです。
名目GDPとは、「金額ベース」の指標であり、「全体として何円流通したのか」という指標です。
実質GDPとは、「消費量ベース」の指標であり、「全体として何個流通したのか」という指標です。

名目GDPで、たとえ金額が増えていたとしても、それは単価が上がっただけで、結果的に流通数量が減っていたら意味がないじゃないか、という考え方です。その、「流通数量」を図るための指標として公表されているのが「実質GDP」です。
たとえ名目GDPが増加していたとしても、実質GDPが減少していれば結果として「消費」は減っていると考えるわけです。

ですが私は、実質GDPが「消費量ベースの指標」となることは、事実上不可能だと考えています。
考えてもみてください。「物価」そのものが変動する中で、例えば、「消費者が高速道路を利用した回数」と「消費者がリンゴを買った数」の変化のみを抽出し、これをさらに同じ一つに指標の中で表現することが本当に可能なのでしょうか。

実質GDPでは、この2つの指標を同じ一つの指標の中で表す方法が用いられている、ということになってます。


実質GDPの計算方法

実質GDPとは、名目GDPをGDPデフレーターで割り算することで求められます。
例えば1年目を基準年、2年目を対象年としたとき、「2年目の売上数量を、1年目の物価にかけると一体いくらになるのか」という数字が実質GDPです。

チョコレートを例にとって、一つ例題を示してみます。
<例題A>
1年目
100gのチョコレートが100円で10個
200gのチョコレートが180円で5個

2年目
100gのチョコレートが120円で8個
200gのチョコレートが200円で6個

売れた場合。1年目を基準年として、2年目の売り上げの実質値を求めよ
つまり、チョコレート全体の売り上げを名目GDPであると考えて、2年目の実質GDPを求めよ、という例題です。

先ほどお伝えしたように、「実質GDP」とは、「2年目の売り上げ数量を1年目の物価にかけた値」ですから、答えは簡単ですね。
<解答A-1>
(1年目の100gの物価100円×2年目の100gの売り上げ個数8個=800円)

(1年目の200gの物価180円×2年目の200gの売り上げ個数6個=1080円)
=1880円
答えは1880円。
1年目の実質値=1年目の売上総額は1900円ですから、実質値は下落していることになります。


では、次のような問題であればどうでしょう。
<例題B>1年目
100gのチョコレートが100円で10個
200gのチョコレートが180円で5個

2年目
100gのチョコレートが120円、売上総額が960円
200gのチョコレートの200円、売上総額が1200円

であった場合。1年目を基準年として、2年目の売り上げの実質値を求めよ
1年目は単価も売上個数もわかっていますが、2年目は売上個数がわからない場合の例題です。

もちろん、単純に考えれば売り上げを単価で割ればよいわけですが、マクロベースで考える場合、「単価」そのものがサンプルの平均値であったり、または単位そのものが異なる場合もあるため、単純に売り上げを平均単価で割るだけではその信ぴょう性に疑問が残る場合があります。
このような場合に用いられるのが、「加重平均」という考え方です。

「加重平均」というマジック

実はこの考え方、先ほどお示しした、例題Aの事例でも、同じ方法を使って計算しています。

加重平均に登場する、新しい考え方は、「ウェイト」という考え方です。
「ウェイト」とは、各項目ごとに、「どのくらい重要なのか」という「重要度」のことです。

例えば、例題Aの事例であれば、ベースを「消費量」に設定し、項目ごとの「重要度」を設定します。2年目の消費量は100gが8個、200gが6個ですから、2年目のウェイトは100gが8、200gが6となります。
<解答A-2>

①実質値の加重平均を求める

1年目の100gの物価100×2年目の100gの消費量ベースのウェイト8=800

1年目の200gの物価180×2年目の200gの消費量ベースのウェイト6=1080
=1880円

実質値の加重平均=1880÷(消費量ベースのウェイトの合計=14)≒134.29・・・①

②名目値の加重平均を求める

2年目の100gの物価120×2年目の100gの消費量ベースのウェイト8=800

2年目の200gの物価200×2年目の200gの消費量ベースのウェイト6=1080
=2160円

名目値の加重平均=2160÷(消費量ベースのウェイトの合計=14)≒154.2857・・・②

③デフレーターを求める
デフレーター=名目値÷実質値
=②÷①≒1.15・・・③

④実質値を求める
実質値=名目値÷デフレーター
=2160÷③=1880
解答A-1と同じ結果になりますが、計算過程が異なることはご理解いただけると思います。

例題2の場合は、明確な数量がわからない、という前提ですので、ウェイトを消費量ではなく、「消費金額」に置いて考えてみます。
2年目の売上総額は100gが960円、200gが1200円ですから、ウェイトは100gが960、200gが1200になります。
<解答A-2>

①実質値の加重平均を求める

1年目の100gの物価100×2年目の100gの金額ベースのウェイト960=96000

1年目の200gの物価180×2年目の200gの金額ベースのウェイト6=216000
=312000

実質値の加重平均=312000÷(金額ベースのウェイトの合計=2160)≒144.44...・・・①

②名目値の加重平均を求める

2年目の100gの物価120×2年目の100gの金額ベースのウェイト960=115200

2年目の200gの物価200×2年目の200gの消費量ベースのウェイト1200=240000
=355200円

名目値の加重平均=355200÷(金額ベースのウェイトの合計=2160)≒164.44...・・・②

③デフレーターを求める
デフレーター=名目値÷実質値
=②÷①≒1.14・・・③

④実質値を求める
実質値=名目値÷デフレーター
=2160÷③=1897.297

さて。当然といえば当然ですが、消費量ベースの実質値と金額ベースの実質値の間に、「誤差」が生まれましたね。
この計算式では17円程度のわずかな開きですが、これが500兆円GDPクラスになってくると、10兆円レベルの、もっと大きな開きが生まれることが想像できると思います。

ですが、これは何も私の勝手な推測でもなんでもなく、総務省のホームページには下記のような内容が実際に掲載されています。
総務省統計局「物価」より

【企業物価指数】
ウェイト対象:経済産業省「工業統計表 品目編」の製造品出荷額から,財務省「貿易統計」の輸出額を差し引いた国内向け出荷額を基に算定

【輸入物価指数】
ウェイト対象:財務省「貿易統計」の輸出額を基に算定

【消費者物価指数】
ウェイト対象:「主に「家計調査」によって得られた市町村別の平成22年平均1か月の1世帯当たり品目別消費支出金額を用いて作成」


もちろん、「すべて」がそうだというわけではありませんが、物価指数の対象となっている「ウェイト」とは、すなわち「数量」ではなく、「金額」だというわけです。

先ほどのチョコレート2項目。たったそれだけの項目で、消費量ベースと金額ベースの間で、割合として1%近いバイアスが発生していました。
GDPは500兆クラスですから、5兆円のバイアスが発生してもおかしくないことをこれは暗示しています。


「GDPデフレーター」のマジック

また一方で、GDPデフレーターとは、「名目GDP」÷「実質GDP」である、ということを幾度かお示ししたと思います。
ですが、実際に計算する際には、「(対象年(例:2年目)の財の価格×対象年の財の数量)÷(基準年(例:1年目)の財の
価格×対象年の財の数量」という等式で表されます。(パーシェ指数)

ですが、もし本当に価格が基準年の価格になるならば。

例えば、対象年(2年目)は価格が大幅に上昇したのに、基準年(1年目)は「価格が上昇していない」と考えて計算するわけです。
ですが、もし本当に対象年(2年目)の経済規模で、価格が下落したと考えたのなら、本当ならば「財の数量」は増加しているはずです。

つまり、基準年では、「財」の価格が下落しているにも関わらず、「消費量は伸びない」と考えて計算するわけです。
逆に対象年の財の価格が下落している場合も分母の側では「価格が下落していない」つまり、対象年と比較して物価が高い状態にある、と考えるにも関わらず、「消費は減らない」と考えて計算しています。

このことから、加重平均を取る過程で登場する「GDPデフレーター」では、実際の経済現象よりも、その影響が小さく過小評価されて算出されます。

一方で、実質GDPとは、「名目GDP÷GDPデフレーター」の公式で算出されますので、分母の影響が過小評価されている以上、実質GDPそのもの影響は「過大評価」されて算出されます。

つまり、消費増税により物価が大幅に上昇したケースでは、実質GDPの物価への影響として、消費増税に伴う物価上昇よりもさらに過大な影響が「バイアス」として加えられて算出されたことになります。

第36回 実質GDPの正体の記事で掲載した「連鎖方式」。

これは、前述した「ウェイト」を4半期ごとにデフレーターにかけ合わせることで、生じるバイアスの影響をより少なくしよう、として考え出されたものです。

ですが、そもそも「ウェイト」が消費量ベースにはなっていないこと、またGDPデフレーターによって算出される影響が過小評価されてしまうというウィークポイントを、完全に排除できたわけではありません。

特に、「アベノミクス」による経済成長や、消費増税に伴う物価上昇の影響は、実質値においては「過大評価」されてしまっているわけです。

個人的には、その様な「実質GDP」って、本当に必要なのか、という突っ込みを入れたい気持ちが消えません。

「実質GDP」なんて指標に影響されず、単純に名目値をブレイクダウンして指標を判断したほうが、よほどより現実に即した対策が打てると思うのですが。

さて。それでは次回記事では、改めて「右翼と左翼」に章を戻して、「共産主義と左翼」のタイトルで記事を作成したいと思います。


このシリーズの過去の記事
>> 第140回 2016年度(平成28年)GDP第一四半期速報が公表されました
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