第43回 実質賃金と名目賃金⑤~厚労省データと国税庁データの違い~など、政治・経済を中心とした日常的な情報を、独自な視点で解析します。

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【アベノミクスを問う17】

前回の記事では、名目賃金指数と実質賃金指数を比較し、名目賃金指数が上昇する中で実質賃金指数が下落する理由として、「消費者物価指数」の推移が関係していることをお示ししました。

今回の記事に託した内容として、「物価の変動」についての解析があります。
ただその前に、国税庁データと厚労省データを比較する形で、改めて「実質賃金指数の正体」について検証してみたいと思います。


実質賃金指数の正体

【賃金指数推移】
賃金指数推移

【平均給与所得推移】
平均給与所得

こちらは、前回の記事でもお示しした厚労省データの「賃金指数」の推移と国税庁データの「平均給与所得」の推移です。
こちらの数字に対して、前回の記事では、

国税庁データを参考にした「平均給与所得」では、安倍内閣に入って以降、2013年のデータも2014年のデータも、リーマンショック以降、2009年~2012年のデータをすべて上回っています。実質だけでなく名目も、です。

ところが、厚生労働省のデータを参考にした「賃金指数」では、2013年の数字はなんと2009年~2012年のデータをすべて下回っており、2014年の数字でさえ2009年~2011年までの数字を下回っているのです。

と示しています。

同じ賃金を示す名目の数字でありながら、国税庁と厚労省で、なぜこのように数字が異なるのでしょう。
一方が賃金の「指数」であり、もう片方が賃金の「実数」だからでしょうか?

ですが、「賃金指数」は、2014年度データであれば、基準年となる2010年の数字を100として、ここから増えているのか、減っているのかを示す、単純な指数です。

国税庁データは実数を示しています。
国税庁データによれば、2013年度は、2010年度と比較して年平均で1万4千円のプラス。2014年度は3万円のプラス。2010年度の名目賃金を100として指数であらわすのなら、2013年度も2014年度も、プラスになっている以上、2010年度と比較して増えているのですから、少なくとも100以上になっていなければおかしい。

ですが、厚労省データでは100以下。2010年度データと比較してマイナスになっています。
片方が指数であり、片方が実数だから、という理由などではありません。

ではなぜこのような違いが出ているのでしょうか。

答えは簡単です。「国税庁データには含まれていて、厚労省データには含まれていない数字があるから」です。

以下は、厚生労働省HPの、「毎月勤労統計調査 平成26年6月分結果確報」の一覧です。

【毎月勤労統計調査 平成26年6月分結果確報】
統計表
表名
第1表 月間現金給与額 [30KB]
第2表 月間実労働時間及び出勤日数 [29KB]
第3表 常用雇用及び労働異動率 [29KB]
第4表 就業形態別月間現金給与額 [27KB]
第5表 就業形態別月間労働時間及び出勤日数 [26KB]
第6表 就業形態別労働異動率 [26KB]
第7表 パートタイム労働者比率 [25KB]
第8-1表 賃金指数、労働時間指数及び常用雇用指数並びに入離職率(5人以上(1)) [36KB]
第8-2表 賃金指数、労働時間指数及び常用雇用指数並びに入離職率(5人以上(2)) [37KB]
第8-3表 賃金指数、労働時間指数及び常用雇用指数並びに入離職率(30人以上(1)) [36KB]
第8-4表 賃金指数、労働時間指数及び常用雇用指数並びに入離職率(30人以上(2)) [37KB]
時系列第1表 賃金指数 [33KB]
時系列第2表 労働時間指数 [33KB]
時系列第3表 就業形態別賃金・労働時間指数 [32KB]
時系列第4表 常用雇用指数 [33KB]
時系列第5表 労働異動率 [28KB]
時系列第6表 実質賃金指数 [28KB]
時系列第7表 季節調整済指数 [31KB]
付表 [36KB]

この項目のうち、「名目賃金指数」に該当するのは「第8表(1~4)」及び時系列第1表になります。
見ていただければわかると思いますが、第8表1~2には「5人以上」、第8表3~4には「30人以上」と汁あsれています。
ここに掲載されている「賃金指数」とは、「事業所規模5人以上」の事業所の賃金指数のみしか掲載されていません。
これは名目賃金指数だけでなく、実質賃金指数も同様です。

【実質賃金指数 時系列一覧表】
実質賃金指数

こちらは厚労省データ時系列第6表、実質賃金指数の表です。
左上に「事業所数5人以上」と記されています。5人未満の事業所の賃金は厚労省データの賃金指数には含まれていないのです。

【厚生労働省・国税庁における「賃金」の定義づけの違い】
賃金違い

手ごろな資料がこちらしか見当たらなかったのですが、こちらは平成12年、人事院のウェブサイトに掲載されていたものです。
古い資料ではありますが、定義の問題なので、資料としては問題ないものと思われます。

いくつか違いがあるようですが、最大の違いはその調査対象事業所。

厚労省データでは、「常用労働者5人以上の事業所」とあります。
一方、国税庁では、「従業員一人以上の事業所」とあります。

つまり、厚労省データには常用労働者しか含まれておらず、しかも「常用労働者5人未満」の事業所は含まれていません。
そして、「実質賃金指数」はこの「常用労働者5人未満」の事業所が含まれていないデータを用いて作られた指数なのです。

もちろん、14年度に実質賃金が下落している最大の理由は「消費増税による物価の上昇」であり、仮に国税庁データを用いたからと言って名目同様に実質賃金も2010年のデータを上回る指標になるのかというと、それはまた別の話にはなります。

ですが、「実質賃金指数」という指標が、やや正確性を欠く指標である、ということはおぼろげにご理解いただけたのではないでしょうか。

次回記事では、実質賃金の上下に大きくかかわっている「消費者物価指数」に着目して記事を進めてみたいと思います。
このシリーズの過去の記事
>> 第87回 2015年度版実質賃金の見方
このシリーズの新しい記事
>> 第42回 実質賃金と名目賃金④~続実質賃金の正体~

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