第36回 実質GDPの正体など、政治・経済を中心とした日常的な情報を、独自な視点で解析します。

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アベノミクスを問う⑪

前回の記事では、首相官邸のHPに「アベノミクスの成果」として掲載されている、こちらの図表を参考に、まずは「実質GDP」について説明する形で、アベノミクスの成果についての掲載をスタートしました。
seika201506.gif

前回の記事では、消費税前後の年度で比較したとき、実質GDPが下落していることへの一般的な判断の仕方として、

「消費増税により消費量が減ったため実質GDPが下落した」

と考えられることを掲載しました。ですが、この考え方に私が疑問を持っていることを示し、そのことを今回の記事に託しました。


「実質GDP」への疑惑

こちらは、第29回の記事で掲載した、『平成26年度 27年5月末租税及び印紙収入、収入額調』です。
平成26年度 27年5月末租税及び印紙収入、収入額調 財務省
ここに、平成26年度最終月の税収が掲載されています。

この図表を参考にしますと、平成26(2014)年度の消費税収は約16兆円、平成25(2013)年度の消費税収は10.8兆円。その差額は5.2兆円で、消費増税に起因する物価の上昇は5.2兆円にすぎません。

ところが、名目GDPに着目しますと、2014年度の名目GDPは490兆。2013年度の名目は483兆で、7兆円上昇しています。

名目成長分-消費税増額分=5.2兆円。
つまり、「消費増税以外の要素」で名目が約1.8兆円成長しており、消費増税以外のなにがしかの分野で1.8兆円、余分に支出が行われていなければ名目GDPが成長することはあり得ないわけです。

消費増税以外の分野で名目GDPが上昇しているにも関わらず、実質GDPが下落している理由は、「消費増税により消費量が減ったため実質GDPが下落した」からではなく、「実質GDPの算出結果が、正確に消費量を計算しきれていないからではないか」という疑問がわきます。

また、仮に消費量が下落していたとしても、消費増税以外の理由で消費単価が上昇していたとすれば、これは「消費が縮小している」とは言えません。このように、「実質GDP」で景気をみるやり方には、非常に疑問が残るのです。

実は、この疑問に対して、非常に参考になる資料が内閣府「経済社会総合研究所 国民経済計算部」のHPに掲載されています。
連鎖方式に関するよくある質問

「連鎖方式」というのは実質GDPが算出される際に用いられている計算方式なのですが、ここでは説明が煩雑になるので割愛します。
文章を一部抜粋します。

【連鎖方式について】
参照年とは何ですか?

参照年とは、デフレーター=100 となる年(金額ベースの実質値を計算する際に参照する名目値の金額を与える年)のことです。英語では「reference year」といいます。現行のGDP(支出系列)では実質値の金額表示の計算にあたって 2000 暦年の名目値を参照しており、実質値の単位は「2000 暦年連鎖価格表示」となっています。
固定基準年方式では、参照年(これまで基準年と呼んでいたものと同じです)を変更すると、各期の成長率が改定されますが、連鎖方式では、参照年を変更しても基本的に各期の伸び率は変わりません。

加法整合性とは何ですか?
例えば、GDPを構成する家計最終消費支出などの内訳項目をすべて加算した結果がGDPの値になることを「加法整合性がある」といいます。固定基準年方式の実質値には加法整合性がありますが、連鎖方式の実質値にはありません(注1)。
したがって、①連鎖方式による実質値については単純な足し算・引き算はできません(注2)。②また、実質値を用いて割合を計算することにも意味はありません。
(注1)連鎖方式の実質値についても、例外的に、参照年とその翌年の暦年値についてのみ加法整合性が成立します。年度値や四半期値については成立しません。
(注2)「純輸出」については、ゼロやマイナスになる可能性があるため、連鎖方式による実質値が計算できません。このため、(連鎖方式による輸出実質値-連鎖方式による輸入実質値)により計算したものを参考として掲載しています。これに対し、純輸出の寄与度は、(輸出の寄与度-輸入の寄与度)により正確に計算することができます。このため、純輸出の前期差(前年差等)の符号と寄与度の符号が一致しない場合があります。


書いている内容はとても難しくて理解しづらいと思いますので、特徴的な部分のみ色を変えています。

要約しますと、

・実質GDPは「消費量ベース」であるはずなのに、大本となる数字は「金額ベース」で産出されている。
(算出した後で「連鎖指数」をかけて計算しています)
・「GDP」とは、「家計」「企業」「行政」「輸出入」等の内訳を合計しているはずなのに、実質GDPではこれらの項目を合計しても実質GDPの値にはならない。(整合性が取れていない)
・現在用いられている連鎖方式では、「純輸出高」に関する実質値を計算することができない。(参考値を掲載している)

ということが書かれています。

また、実質GDPを計算する際に用いられる「指数」の算出方法も、本当に「消費量」をあらわすことができているのかどうか、疑問に感じています。

サンプルデータから「ウェイト」を計算し、ここから様々な「指数」を計算するのですが、
「ウェイト」
こちらは総務省資料からその「ウェイト」の例を抽出したものです。

抽出する際のサンプルデータは、確かに「〇kg〇〇円」というように、「消費量」に着目してデータを抽出するわけですが、指数に置き換えた時点で、「消費量」と呼べるデータなのかどうかが既に怪しくなっています。

また、指数を算出する際には「平均値」が用いられていますので、ここに、「シンプソンのパラドックス」が成り立つ可能性もあります。(シンプソンのパラドックスについては、後日「平均寿命」を検証する形で解説いたします)

ちなみに、このような「ミクロの世界で成り立つ現象が、マクロでは矛盾する現象」のことを「合成の誤謬」といいます。

このようなことから、デフレ経済では名目GDPが下落すればするほど実質GDPが上昇する、などという矛盾が発生するのではないでしょうか。消費が控えられるからデフレが発生するはずなのに、なぜか消費量が増える、という現象が発生するのです。

実質GDPの変化率は参考にはなるかもしれませんがこれを基準に経済指標を図ることには非常に疑問があります。

さて。それでは改めてこちらの図表。
seika201506.gif
抽出します。

実質GDP
 年率 +2.4%成長(2015年1-3)
 累計 +2.0%成長(2015年1-3月期/2012年10-12月期)

こちらの数字。このような解りにくい表現方法を用いてごまかす必要があったのでしょうか。

「2014年度名目GDP+1.4%成長
 消費増税の影響を排除した名目成長率0.37%」

と正直に掲載すればよかったのではないかと思います。
もちろん、成長率に伴う内訳には家計消費支出の大幅なマイナスという現状があるわけですから、2014年度に限って言えば経済に対してマイナス要素であることは否めません。

ですが、例えば「企業最終消費出」で考えた場合

2013年度 実質GDP 78.5兆
2014年度 実質GDP 81.3兆
実質GDP成長率 3.5%

2013年度 名目GDP 73.2兆
2014年度 名目GDP 76.7兆
名目GDP成長率 4.8%

と、消費増税が行われたにも関わらず、名実共に大幅に成長していることを併記した方が、よほど国民に与えるインパクトは強いように感じます。

何を恐れているのかは知りませんが、できたことはできた、できなかったことはできなかったと正直に書くほうが、却って国民の安倍内閣に対する信任を得るためには大切であるように感じます。

次回以降の記事では、

・「円安」によって本当に「輸入物価」は上昇したのか?
・「賃金」や「就業率」に着目して安倍内閣の成果を検証

という項目に関して記事を作成したいと思います。

このシリーズの過去の記事
>> 第37回 就労状況から見るアベノミクスの成果
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