第322回 2016年度(平成28年度)GDP(速報)が公表されました:後編など、政治・経済を中心とした日常的な情報を、独自な視点で解析します。

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第321回 2016年度(平成28年度)名目/実質GDPが公表(速報)前編

2016年度GDPに関しまして、前回の記事では高橋洋一氏の見解をただす形で記事を作成しましたが、今回は改めまして私自身の視点から「2016年度GDP」公表結果についてポイントを整理してみたいと思います。

既にお伝えしています通り、私が大切にしているGDPは

・名目
・原系列
・前年同月比

という3つの要素を持ち合わせた指標です。
一方マスコミ等が重宝したがる

・実質
・季節調整系列
・年率換算
・前期比

という指標は、実際の経済現象では起きていない、経済予測に基づいて人為的に算出された数字が多く用いられていますので、私は全くあてにしていません。「実質値」に関しては参考にはしていますが、それ以外の数値は信頼に値しない数字だと考えています。

ですので、四半期別GDPを考えるときは「名目原系列前年同月比」を中心に記事を作成しているわけですが、一年で唯一、「1-3月期」、つまり2016年度であれば「2016年度第4四半期」の統計データが出て来た時だけは、「前年同月比」ではなく、「前年度比」という1年間を通じて、季節の変化まですべて反映された統計データを比較することができます。

「四半期別GDP」ではなく、「年度別GDP」で最大のマクロ指標、「GDP」を見ることができます。

内閣府


2016年度GDPの統計結果

【2016年度GDP(前年度比)】
名目GDP
全体 537.986 兆円(1.2%)

 民間最終消費支出 299.8 兆円(1.2%)
 家計最終消費支出 293.0 兆円(0.3%)
  除く持家の帰属家賃 243.1 兆円(0.3%)

 民間住宅 16.9 兆円(6.2%)
 民間企業設備 82.4 兆円(1.6%)

実質GDP
全体 523.4 兆円(1.3%)

 民間最終消費支出 297.0 兆円(0.6%)
 家計最終消費支出 289.3 兆円(0.6%)
  除く持家の帰属家賃 236.5 兆円(0.4%)

 民間住宅 16.0 兆円(6.5%)
 民間企業設備 81.3 兆円(2.3%)

こちらが「2016年度」のGDP統計結果です。


2016年度GDP評

政府が様々な経済政策に取り組んでいる理由は、こちらに掲載された「民間」の消費を伸ばすことにあります。
言い換えれば、これらの項目さえ伸びているのであれば、「政府最終支出」や「公的固定資本形成」などを気にする必要はありません。

上記指標の中で大切なのは「名目GDP」が伸びているのか、それとも下落しているのかということなのですが、見ての通りきれいにすべての項目でプラス成長を遂げています。そしてそれは名目だけでなく実質も同様です。

民間最終支出、家計最終消費支出の伸び率が0.3%とやや勢いを欠くように見えますが、カテゴリー 「物価」の見方 で散々追求してきた様に、これらの消費支出には「エネルギー価格」の大幅な下落、及び家電製品の下落が反映されており、逆に言えばそれにも関わらず消費支出全体としてはプラス成長を遂げたのだ、ということです。

物価サイドから見ると、エネルギーの消費者物価前年同月比がマイナスからプラスに転じるのは2017年2月から。
家計最終消費支出を四半期別に見ると、第3四半期(10-12月度)も第4四半期同様プラス成長していますが、この時はまだエネルギー価格は全体でマイナス。代わりに生鮮食品が高騰しました。

第4四半期に至ってようやくエネルギー物価が前年同月比プラスに転じますが、それでも実際にプラス成長しているのは1月~3月の3か月の内、2月、3月の2か月間。

2016年度1年間の名目GDPを見ますと、4月~6月の第一四半期、7月~9月の第二四半期の民間・家計最終消費支出は前年度割れしており、残る10月~12月の第3四半期、1月~3月の6か月間で年度全体をプラスに押し上げていることになります。

この時、年度後半の二四半期がプラス成長した理由が本当に経済成長したからなのか、それとも私が説明した様に、「エネルギー価格」の前年度比が第4四半期においてようやくプラスに転じ、かつ第3四半期に於いて生鮮食品の価格が高騰したことに伴う一時的な現象なのか。

これを判断するときに役に立つのが「実質GDP」なのです。


2016年度実質GDPの動向から見える2016年度の経済状況

既実質GDPは名目GDPを持家に帰属する家賃を除く消費者物価指数で割ったものであり、名目も消費者物価指数も、元々人為的な計算方法を用いて算出されたものですから、人為的に算出された数字を人為的に算出された数字で割った「実質GDP」は、更に信憑性の薄いものとなります。

ですが、季節調整系列や年率換算に比べればまだ参考にはなる数字です。
実質GDPの捉え方は飽くまでその程度である、と念頭に置いた上で今後の文章は読んでいただければと思います。


前回の記事でも、第218回の記事 でもご説明しました様に、「実質GDP」とは消費された「数量」の事。名目GDPは消費された「合計金額」の事。

名目成長率と実質成長率は以下の様な数式で表すことができます。

 名目成長率-実質成長率=物価上昇率

この等式を頭に入れて2016年度名目GDPと実質GDPを見てみますと、とある特徴があることに気づかされます。
それは、全ての項目にわたって「実質成長率」が「名目成長率」を上回っているということです。

これは、言い換えると物価が下落しているということで、高橋洋一流に言えば「GDPデフレーターが下落している」ということで、「失われた20年や25年に戻った」ことになるのかもしれません。

ですが、そんな高橋洋一の説など詭弁にすぎません。
バブル崩壊以降の日本国経済は、「名目値が下落する中で物価が下落していた」のです。

ですが、2016年度に起きた経済現象は「物価が下落する中で、名目値は上昇していた」ということ。安倍内閣以前の経済とは全く事情が異なります。

言い方を変えれば、「物価は下落したが、販売総数は大幅に上昇し、結果として売上総額もプラス成長した」というのが2016年度のGDP評です。

一方で第3四半期に於いて生鮮食品の価格が高騰し、第4四半期に於いてエネルギー価格が前年度比でプラス成長したことが2016年度の家計最終消費支出を押し上げた最大の原因とは考えられるわけですが、2016年度第4四半期前年同月比に限定して数字を見てみますと、

【2016年度第4四半期GDP統計結果】
名目GDP
全体 0.8%

 民間最終消費支出 1.0%
 家計最終消費支出 1.0%
  除く持家の帰属家賃 1.2%

 民間住宅 8.0%
 民間企業設備 3.0%

実質GDP
全体 1.6%

 民間最終消費支出 1.0%
 家計最終消費支出 0.9%
  除く持家の帰属家賃 0.9%

 民間住宅 6.9%
 民間企業設備 3.0%

確かにGDP全体で見ると名目0.8%、実質1.6%、物価上昇率 -0.8% ですから、高橋洋一流に言えば「悪い状況」なのかもしれません。

ですが、よく見てみましょう。
民間最終消費支出は 名目1.0、実質1.0 の物価上昇率0%、
家計最終消費支出は 名目1.0、実質0.9 で +0.1% の物価上昇率。
除く持家の帰属家賃は 名目1.2、実質0.9 で +0.3% の物価上昇率。

民間住宅は 名目8.0、実質6.9%で1.1%の物価上昇率。
民間企業設備は 名目3.0、実質3.0で 0%の物価上昇率。

企業消費支出こそ0%と横ばいですが、家計、特に私が重視している「持家に帰属する家賃を除く家計」は0.3%のプラス成長、民間住宅は1.1%の物価上昇を果たしているわけです。

これ、本当に「悪い状況」なんですかね、高橋洋一さん。
確かに第4四半期は「エネルギー物価」がプラスに転じており、ひょっとするとそれが原因だったのかもしれません。

ですが、伸びているのは「名目」だけでなく「実質」も伸びています。エネルギー物価が上昇し、物価全体が上昇したにも関わらず、「名目」と同時に「実質」も上昇しているんですよ。

ではなぜ「GDP全体」では物価が下落したことになっているのか。
確かに「政府支出」が前年度割れしていることにも原因はあるのかも知れません。ですが、政府が経済政策を行う最大の理由は「GDPデフレーターをプラス成長させること」にあるのでしょうか?

違いますね。GDP統計で云うのなら、「家計最終消費支出(持家に帰属する家賃を除く)」ことにこそ政府が経済政策を行う理由はあります。

そして統計データとして、「輸出入デフレーター」に於いて、実質と名目で輸出入の前年同月比が逆転していることも忘れてはいけません

マネタリストたちの中では完全に「目的」と「手段」が入れ替わってしまっているのです。
GDP評で言うのなら、2016年度GDPは

「GDP、及び民間消費、設備投資に於いて名目成長率を実質成長率が上回る状態となったが、全ての項目に於いて名実ともにプラス成長することができた。

最新の2016年度第4四半期に於いては民間企業の物価成長率こそ横ばいだが家計においては名実、物価成長率すべてでプラス成長を果たしており、漸くアベノミクスの成果を家計に於いても実感できる状況が生れた」

とするのが正しいのではないでしょうか?

今後もGDP、賃金、物価、税収。これらの項目を中心に、引き続き詳細な政府統計の分析を行っていきたいと思いjます。


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