第278回 2016年(平成28年)12月名目/実質賃金確報値(速報値との比較)など、政治・経済を中心とした日常的な情報を、独自な視点で解析します。

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第276回 2016年(平成28年)12月名目賃金と実質賃金(速報)

21日に 速報値の記事 を掲載したばかりだったのですが、どうもその翌日に確報値が掲載されていたらしく、そしてまたその速報値とのギャップがなかなか鮮やかなので、今回は珍しく「速報値」と「確報値」を合わせて掲載します。


「速報値」と「確報値」の比較

【2016年(平成28年)12月現金給与総額速報値】
調査産業計(12月)

【2016年(平成28年)12月調査産業計確報値】
調査産業計-2

さて、いかがでしょう。

速報値では、名目が0.1%成長、実質が-0.4%成長であったわけですが、これが確報値では名目0.5%成長、実質0.1%成長と、実に理想的な形に変わっているではありませんか。

6月や7月の情況は、原油価格の下落に伴って国内の消費者物価が下落する中で起きた現象です。
「原油価格」が高騰して日本国内で利益を上げられる企業はまずありませんから、これが「下落」するだけで、その下落した分が他の「消費」または「貯蓄」へと回されることになります。

日本国内にとってみればこれは非常に理想的な状況なのですが、原油価格だっていつまでも下落し続けるわけではありません。
大切なのは、「輸入物価の下落」に頼らずともきちんと利益を上げていける経済構造。

そのためにはやはり「物価」が上昇する中で「実質」も上昇する構造が一番望ましいわけです。

例えば天候不順に伴う生鮮食品の価格高騰や、海外の投機的な動きに伴った輸入価格の上昇などが原因で物価が上昇する場合は、これは日本の企業の利益を圧迫しますから、仮に名目と物価が共に上昇したとしても、実質にはマイナス要因として作用します。

だからこそ、「生鮮食品」や「輸入価格(エネルギー価格)」の動向に頼らず、日本国内の「内需」に起因する経済動向で物価を上昇させ、同時に「実質値=消費量」をも上昇させるような経済構造が必要になります。

勿論今回の話題は「消費」ではなく「賃金」に於ける名目値と実質値の問題ですから、「消費」とは必ずしも同列には語れませんけどね。


「速報値」と「確報値」が乖離した理由

さて。では、今回の名目賃金と実質賃金が、「速報値」と「確報値」の値がここまで開いた理由とは一体なんだったのでしょう。

【2016年(平成28年)12月決まって支給する給与速報値】
決まって支給する給与(12月)


【2016年(平成28年)12月決まって支給する給与確報値】
決まって支給する給与(12月)-2


第276回の記事 でも記しましたが、「決まって支給する給与」とは、「基本給+時間外手当」のことです。
グラフで見る限り、この項目は速報値と確報値との間で大きな変化はありませんね。

【2016年(平成28年)12月所定内給与速報値】
所定内給与(12月)


【2016年(平成28年)12月所定内給与確報値】
所定内給与(12月)-2

こちらは、いかがでしょう。「所定内給与」、つまり「基本給」の事です。
こちらは残念ながら、「名目賃金指数」が前年度比0.5%から0.4%上昇にダウン。合わせて「実質賃金指数」も「0.0%上昇」から「0.1%の下落」へと転じています。

ただ、確かに実質値は下落に転じていますが、特に「賃金指数」で考える場合、まずは「名目」です。
「物価」や「消費」で考える場合は、確かに「何が原因で上昇したのか」または「下落したのか」ということを考える必要があるのですが、賃金の場合は違います。

賃金は企業が生まれた利潤を労働者に還元するものですから、「輸入物価が上昇した」としても賃金は増えません(物価や消費『額』は上昇します)。むしろ下落します。

名目賃金が上昇するということは、「起業の利潤が増えている」ということを表しているからです。


少し話が脱線しましたが、「決まって支給する給与」に変化がなく、「所定内給与」の上昇幅が縮小したということは、「現金給与総額」の賃金指数が名実共に改善している理由はこの二つの要因ではないとういことです。

寧ろ、、「決まって支給する給与」に変化がなく、「所定内給与」の上昇幅が縮小したのであれば、この二つの項目は「現金給与総額」の賃金指数を悪化させる要因として働いていることになります。

では、一体なぜ「調査産業計の賃金指数」は名実共に改善したのでしょうか。

第276回の記事 をお読みいただいたかたはもう気づいているかもしれませんね?

「現金給与総額の賃金指数」が名実共に改善した最大の理由は、「特別に支払われた給与」。つまり「ボーナス」です。

速報値の段階では、2016年12月に支払われたボーナスは従業員一人当たり平均で28万4327円。
前年、2015年12月のボーナスが28万4537円ですから、割合にして約0.1%のマイナス。名目値で前年度割れと試算されていました。

所が、確定値では2016年12月に支払われたボーナスは従業員一人当たり平均で28万6866円。
0.8%のプラス成長です。持家に帰属する家賃の消費者物価指数が0.5%ですから、実質値では0.3%のプラス成長になります。

そう。このボーナスの大幅改善こそが「速報値」と「確報値」を乖離させた最大の理由だったのです。

前回の記事で、仮にほぼすべての被雇用者の賃金が増えていたとしても、

 「平均賃金を下回る給与所得者の数」×「平均賃金を下回る給与所得者の平均賃金上昇額」

が、

 「平均賃金を上回る給与所得者の数」×「平均賃金を上回る給与所得者の平均賃金上昇額」

を上回っていた場合、平均賃金は下落する、という話をお伝えしました。
特に安倍内閣スタート時の様に、大量の無職者が有職者となるようなケースであれば、元々賃金が「0(ゼロ)」であった無職者が、一斉に賃金を手にするようになるわけですから、当然

 「平均賃金を下回る給与所得者の数」×「平均賃金を下回る給与所得者の平均賃金上昇額」

の値は急速に上昇します。ですから、無職者が減り、給与所得者全体の賃金が上昇したとしても、「名目賃金が下落する」という様な矛盾が公然に発生していました。

で、この現象は「基本給」にのみ起きる現象ではなく、当然「ボーナス」に関しても発生します。
つまり、

 「平均ボーナスを下回る給与所得者の数」×「平均ボーナスを下回る給与所得者の平均ボーナス上昇額」



 「平均ボーナスを上回る給与所得者の数」×「平均ボーナスを上回る給与所得者の平均ボーナス上昇額」

を上回っていれば、当然「平均ボーナス」の金額は減少します。
例え給与所得者全員のボーナスの額が増額していたとしても、です。

速報値の段階では、ボーナスの名目賃金指数が0.1%のマイナスでしたから、私は

 「平均ボーナスを下回る給与所得者の数」×「平均ボーナスを下回る給与所得者の平均ボーナス上昇額」



 「平均ボーナスを上回る給与所得者の数」×「平均ボーナスを上回る給与所得者の平均ボーナス上昇額」

を上回っている

から発生した現象である、と指摘したのですが、なんと確定値ベースではこの「名目前年同月比」が0.8%ものプラス上昇。
速報値を0.9%も上回る結果です。

私が、中間層の見方 によってお示しした様に、安倍内閣に入って以来、毎年継続して「低所得者」の数が下落し、「中間層」の水準がどんどん上昇している傾向はとても顕著となってきています。

ボーナスの傾向も逆転し、

 「平均ボーナスを上回る給与所得者の数」×「平均ボーナスを上回る給与所得者の平均ボーナス上昇額」



 「平均ボーナスを下回る給与所得者の数」×「平均ボーナスを下回る給与所得者の平均ボーナス上昇額」

を上回っている

という情況に変化したということですね。

これは今回の賃金指数の見方としては非常に特徴的な部分だと思います。
2016年(平成28年)12月賃金指数の総評としては、

「アベノミクスの効果が、ついにボーナスの分野でもはっきりと見えるようになった」

というのが今回の私の総評でございます。


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