第273回 日米開戦決断に至る経緯/ハルノートが提示されるまでの日本など、政治・経済を中心とした日常的な情報を、独自な視点で解析します。

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この記事のカテゴリー >>十五年戦争(日中戦争)の原因と結果


<継承する記事>
第270回 日本が日米開戦を決断するに至る経緯~真珠湾攻撃

今回の記事では、時間帯を一気にハルノートが突きつけられた時間まで進めます。

ハルノートは、11月20日に日本側が出した「対案」」への返答として送られてきたものなのですが、ハルノートの中でハルは、

「1940年6月21日にアメリカが側が出した提案と、日本が9月25日に出した提案のギャップを埋める事を目的としている」

としていますので、今回の記事ではまず、ハルが「ギャップを埋める」対象としている日本側の「9月25日提案」について検証してみたいと思います。内容は、一旦読み飛ばしていただければと思います。

【9月25日提案】
日米了解案(9月20日)

日本国「アメリカ」合衆国国交調整に関する了解案
合衆国及日本国政府は伝統的友好関係回復の為共同宣言に於て表現せらるるが如き了解に関する一般的協定の交渉開始及締結の為共同の責任を受諾す

両国国交の最近の疎隔の特定原因に論及することなく両国間友好的感情悪化の原因となれる事件の再発を防止し且其の不測不幸なる結果に付矯正を図ることは両国政府の衷心よりの希望なり

共同の努力に依り合衆国及日本国が太平洋に於ける平和の樹立及保持のための有効なる貢献を為す事及友好的了解を速に完成することに依り、世界平和を助長し且現に文明を没滅せんとする惧ある悲しむべき混乱を仮令一掃せしむること不可能なりとするも之が悪化を抑制せんことは両国政府の真摯なる希望なり

斯かる果断なる措置の為には長期の交渉は不適当にして又効果薄弱なり。仍て両国政府は両国政府を不取敢道義的に且其の行動に関し拘束すべき一般的了解を成立せしめ之を完了する為には適当の手段を案出実施することを希望す

両国政府は斯る了解には緊急を要する樞要問題のみを包含せしめ後日会議の審議に譲り得べき附随的事項は之を含ましめざること然るべしと信ず

両国政府は左の如き特定の事態及態度を明瞭にし又は改善するに於ては融和関係の達成を期待し得べしと認む

1.国際関係及国家の本質に関する合衆国及日本国の観念
2.欧州戦争に対する両国政府の態度
3.日支間の和平解決に対する措置
4.両国間の通商
5.南西太平洋地域に於ける経済問題
6.太平洋地域に於ける世事的安定に関する方針

因て合衆国政府及日本国政府は茲に左の相互的了解及政策の宣言に到達セリ

第1条(国際関係及国家の本質に関する観念)
 両国政府は其の国策は永続的平和の樹立並に両国民間の相互信頼及協力の新時代の創始を目的とするものなることを確認す

 両国政府は各国家及民族が正義及衡平に依る萬邦協和の理想の下に生存する一宇をなすことは其の伝統的及現在に於ける観念並びに確信なることを声明す。

 即ち平和的手続きに依り規律せられ、且つ精神的及物質的福祉の追及を目的とする相関的利害関係に基き何れも等しく権利を享有し、責任を容認す、而して右福祉たるや、各国家及民族が他の為に之を毀損すべからざると同様に自らの為に之を擁護すべきものとす。更に両国政府は他の民族の抑圧又は搾取を排撃すべき各自の責任を容認す

 両国政府は国家の本質に関する各自の伝統的観念並に社会的秩序及び国家生活の基礎的道義的原則は引き続きこれを保存すべく、且右道義的原則及び観念に反する外来の思想又は理念に依り之を変革せしめざることを固く決意す

第2条(欧州戦争に対する両国政府の態度)
 両国政府は世界平和の将来を共同の目標とし適当なる時期至る時は相協力して世界平和の速かなる克復に努力すべし
世界平和克復前に於ける事態の諸発展に対しては両国政府は防護と自衛との見地により行動すべく、又合衆国の欧州戦参入の場合に於ける日本国独逸国及伊太利国間三国条約に対する日本国の解釈及之に伴う義務履行は専ら自主的に行わるべし

第3条(日支間の和平解決に対する措置)
 両国政府は支那事変の解決が太平洋全域の平和延(ひ)いては世界の平和に至大の関係あるを認め之が急速なる実現促進の為努力すべし

 合衆国政府は支那事変解決に対する日本国政府の努力と誠意とを諒解し、之が実現促進の為重慶政権に対し戦闘行為の終結及平和関係の回復の為速に日本国政府と交渉に入る様橋渡しを為すべく且日本国政府の支那事変解決に関する措置及努力に支障を与うるが如き一切の措置及行動に出ざるべし

 日本国政府は支那事変解決に関する基礎的一般条件が近衛声明に示されたる原則及右原則に基き既に実施せられたる日支間約定及事項と矛盾せらるものなること並に日支間の経済協力は平和的手段に依り且国際通商関係に於ける無差別の原則及隣接国間に於ける自然的特殊緊密関係存立の原則に基き行わるべく而して第三国の経済活動は公正なる基礎に於て行わるる限り之を排除するものに非ることを声明す

駐 日支和平基礎条件別紙の通り
  連絡会議決定案に依る

第4条(日米両国の通商)
 両国政府は両国間正常の通称関係を回復せしむるに必要なる措置を遅滞なく講ずることに同意す

 両国政府は前項の措置の第一着手として現に実施しつつある相互の凍結措置を直に撤廃し且両国の一方が供給し得且他方が必要とするが如き物資を相互に供給すべきことを保証すべし

第5条(南西太平洋に関する経済問題)
 両国政府は南西太平洋地域に於ける日本国及合衆国の経済活動は平和的手段に依り且国際通商関係に於ける無差別待遇の原則に?し行わるべきことを相互に誓約す

 両国政府は前項の政策遂行の為両国が通商手続きに依り各国が自国の経済の安全防衛及発達の為必要とする商品及物資獲得の手段を確保する為の合理的機会を有し得るが如き国際通商及国際投資の条件創設に付相互に協力すべきことに同意す

 両国政府は石油、護謨(ゴム)、「ニッケル」、錫等の特殊物資の生産及供給に付無差別待遇の基礎に於て関係諸国との協定及其の実行に関し有効的に協力すべし

第6条(太平洋地域に於ける政治的安定に関する方針)
 両国政府は太平洋地域に於ける事態の速かなる安定の緊急なる所以を認め右安定に脅威を与うるが如き措置及行動に出てざるべきことを約す

 日本国政府は仏領印度支那を基地として其の近接地域(支那を除く)に武力的進出を為さざるべく又太平洋地域に於ける公正なる平和確立する場合には現に仏領印度支那に派遣し居る日本国軍隊は之を撤退すべし

 合衆国は南西太平洋地域に於ける軍事的措置を軽減すべし

 両国政府は「タイ」及蘭領印度の主権及領土を尊重すべきこと並に比律賓の独立が完成せらるべき際に於て同群島の中立化に付協定を締結する用意あることを声明す

 合衆国政府は比律賓群島に於ける日本国人に対する無差別待遇を保障すべし

別紙
日支和平基礎条件

1.善隣友好
2.主権及領土の尊重
3.日支共同防衛
 日支両国の安全の脅威となるべき共産主義的並に其他の秩序攪乱運動防止及治安維持の為の日支協力
 右の為及従前の取極及慣例に基く
4.撤兵
 支那事変遂行の為派遣せられたる前号以外の軍隊は事変解決に伴い撤退
5.経済協定
(イ) 支那事変に於ける重要国防資源の開発利用を主とする日支経済協定を行う
(ロ) 右は公正なる基礎に於て行わるる在支第三国経済活動を制限することはなし
6.蒋政権と汪政府との合流
7.非併合
8.無賠償
9.満州国承認

やはり中心となっているのは、日本の三国同盟に対するスタンスと米国の蒋介石軍に対する態度について。

私、松岡が外相の座を退いた事で、後の日本国政府が何がしかの「譲歩」を示したのかと思ったのですが、少なくともこの25日対案を見る限り、譲歩するどころかむしろ、エスカレートしていますね。

「アメリカさん。もしオタクが欧州戦線に参戦した場合、うちは独自のスタンスを取らせていただきますよ」
と述べ、暗に参戦するなと圧力をかけた上で更に

「支那事変の解決こそが太平洋地域、ひいては世界平和の肝となるわけだから、さっさと蒋介石軍に引導を渡し、日本との和平交渉に応じる様仲介してくださいよ」

と言っています。また更に、「別紙」を添付し、「和平」のための条件も付きつけていますが、これは基本的に汪兆銘政権と日本国政府が実際に行っている内容ですから、実績があります。

内容としては、それほど無茶な要求である様には思えないのですが、当然米国側は応じません。

日本側としては、「南仏進駐」は将来的な対米開戦を視野に入れた決断であり、その判断基準として「米国が石油全面禁輸」を行ってくるかどうかにあったわけですが、米国は予測された通り、「石油全面禁輸」を実行してきました。

ここまでくると、日本の資源の備蓄にも限りがあるわけですから、日米交渉にもタイムリミットが切られます。
日本側は、そのタイムリミットを「1941年10月15日」に設定しました。

つまり、10月15日までに対米交渉に進展がみられなければ、「対米開戦」を決意せざるを得ない、と。
ここに記している内容は、日本側とすると「絶対に譲れない条件」です。対米開戦が既に念頭にありますから、もう譲歩する必要はない・・・といったところでしょうか。

ところが、肝心の米国と交渉する立場にある米国大使、「野村吉三郎」はとても及び腰。
米国に完全に抱き込まれていますから、日本側の要求を正確に伝えきっていないのだと思われます。

日米諒解案が示された時点からそうでしたが、彼は「交渉役」としては適任ではなかったのでしょうね。
もし日米開戦に対する「戦犯」が存在するとすれば、残念ながら彼はその「戦犯」であったともいえるのかもしれません。

【1941年9月20日第54回連絡会議】
9月20日第54回連絡会議
日米諒解案の最終的決定に関する件

1.要旨
日米国交調整に関する了解案に対し参謀本部より修正意見を提議し全部可決せられ最後的決定を見るに至る
本件に関し前日連絡会議を開くべく総理以下集合待機し居りたる所参謀本部より意見ありとて之が延期を要望したるものなり

2.審議に方り議論せられたる要点左の如し
(1)第二条三国同盟に関する態度に就て
書記官長
 三国同盟の見解は日本政府としては防御的のものなりと??説明せる所なるを以て其の意味の事を附加いたし度(たい)


 右防御的との見解は日本の意見として述べたるものにして米側は何等意見を述べあらず又其の態度を示し居らず。
 即ち防護と自衛と云う大きくかぶせた表現法を適当と思う

右に依り後者の意見の如く決定す

(2) 第三条の「且日本国政府の平和的解決に関する措置」を「日本国政府の支那事変解決に関する措置」と改むる件に就て
山本局長
 和平解決の方が興意義なり

参謀総長
 戦闘行為の終結及び平和関係の終結の為に橋渡しをするものにして「平和解決」のみでは戦闘行為の終結と云うことが除外されて居る様に思われる、支那事変解決と改めた方が適当なり

(3)第三条の「註」に就て
岡局長
 駐兵の地点及機関をはっきりしない様にしたい、即ち駐兵の地点を削除し一定地域所期期間としたい

右意見に依り先般の連絡会議決定案を修正することとせり

(4)第6条 北方不進出の件削除に関し
総理
 北方に故なく進出せざることは既に先方に云うてある、従て之をかくすのも変だ、又必ず尋ねてくる。故に残すを適当とす

右と同一趣旨にて相当発言あり
参謀総長
 本庄の主要問題は仏印と南西である、北方は直接関係がない。北方に関する問題は先方から聞いて来れば答えるのであって了解案に特別入れる必要なし。特に南にも北にも何れも武力的に手を出すことは出来ぬと云う形にするのは考物である。南にも北にも故なく出ぬことは考に於て一致して居る点であるが北は望みとしては云い度くない

 本了解案に再び更めて入れる必要なく先方より問われれば答えて可なるべし

右に依り削除することに決す

3.尚
鈴木総裁
 本案は最後的のものなりや、更に修正の余地ありや、時間に余裕あるならば之を以てぎりぎりのものとする必要はないのではないか

陸相/参謀総長
 時日に余裕なし、既に本日迄の進方は遅く時期は既に切迫して居る

総理
 成るべく早く進行せしむる様処置する必用あり、故に問返のなき様(北方のこと)に云う方が宜しい

外相
 外国人の旅行制限令を出し度いと云うことだが何か新しい事をやる様な感じを与える、此の点どうか、急に色々処置されると外交上困る

陸相 防諜上処置する必要あり

外相 陸軍の若い者が南方進出をいきまいて居ると云うが此の点はどうか

参謀総長
 いろいろ国防上の見地から若い者の中でも心配して論議するものがあるだろうが画策として決定せられたるものは大臣総長が実行して居るのであって一々若い者の云うことなど気にする必要なし


【1941年9月25日第55回連絡会議】
9月25日第55回連絡会議
政戦の転機に関連し対米外交交渉成否の見透
決定の時期に関する件

1.陸海両総帥部長の情報説明の後、対米政戦略の転機は遅くも10月15日を以て決せらるべき必要に関し参謀総長より総帥部の見解を説明し、軍令部総長亦海軍側の見解を補足説明す

2.右に対し直接の意見なかりしも

外相
 遅くも10月15日迄に決すべき件は能く承知せり

「グルー」に27日迄に返事をする様云うてある。27日は三国同盟締結1周年記念日でもあり、何時迄も問題が長引いてはよろしくない故此の日迄に返事をする様云うた次第である

 総帥部が此の様に要求せられるならば回答に期限を切ろうか、而しそれも最後通牒のようになり具合が悪い

参謀総長
 とにかく早くやって呉れ


 近衛「ルーズベルト」会見が成立せぬ場合は問題ではないか、成立する場合には15日の決意の為に10月1日頃出発せなければならぬ、其の様な事が果たして出来るか

陸相
 大体の見込みをつけて決定すればよいではないか

参謀総長
 先方と話合の結果僅か数年の小康を保ち得るに過ぎずして数年後又いざこざを起す様では宜しくない。数十年間も穏やかなる様なものでなければならぬ

以上を以て本件は政府の諒承を得たるものと認めらるるも特に深く立入って論議せられたることなし

3.20日連絡会議決定の日米諒解案の取扱について
参謀総長
 あの了解案は如何取扱たるや、米側に伝えたりや

外相
 未だ伝えあらず、本日午後発電す

参謀総長
 なぜ今迄発電せざりしや

外相
 何も新しいことはないので従来の質問に返事をしておけばよいわけだ。此の際この了解案を出すと何か又新しい条件でも出す様に思われるので今迄出さなかった

総長所見
 了解案取扱に関し今日質問せざるは非常に良かったと思う

このような会議を経て、米国側に「9月25日対案」が送られるわけですが、これに対して米国側からは改めて、「ハル四原則」すなわち、

(1)すべての国家の領土と主権を尊重すること
(2)他国の内政に干渉しない原則を守ること
(3)通商の平等を含めて平等の原則を守ること
(4)平和的手段によって変更される場合を除き太平洋の現状を維持すること

の確認と、

「仏領インドシナおよび中国からの撤兵を要求する覚書」

が野村を通じて送られてきます。
ハル四原則の内「(2)」に於いて、日本側とアメリカ側は全く相容れることができないわけですね。

そして、10月9日第58回連絡会議において、ついに「タイムリミット」が話題に上ります。


次回記事に於きましては、第58回連絡会議より3日後、

 近衛内閣総理大臣
 豊田外務大臣
 東条陸軍大臣
 及川海軍大臣
 鈴木企画院総裁

この5者の間で行われた、対米英開戦に向けた論議について記事にしたいと思います。

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