第271回 2016年度(平成28年)GDP第三四半期第一次速報が公表されましたなど、政治・経済を中心とした日常的な情報を、独自な視点で解析します。

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今回は真珠湾攻撃の話題は少しお休みして、今朝公表されたばかりの「2016年度(平成28年)GDP第三四半期第一次速報」について記事にしたいと思います。

先ずは、公表されたGDPについてのニュースから。結構歪んでます。

【日本経済新聞 2017年2月13日】
10~12月の実質GDP、年率1.0%増 外需に伸び

内閣府

2017/2/13 8:50

 内閣府が13日発表した2016年10~12月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除く実質で前期比0.2%増、年率換算では1.0%増だった。プラスは4四半期連続。輸出主導で外需が伸びた。個人消費は振るわなかったが補った。

 QUICKが集計した民間予測の中央値は前期比0.3%増で、年率では1.0%増だった。

 生活実感に近い名目GDP成長率は前期比0.3%増、年率では1.2%増だった。名目も4四半期連続でプラスになった。

 実質GDPの内訳は、内需が0.0%分の押し下げ効果、外需の寄与度は0.2%分のプラスだった。項目別にみると、個人消費が0.0%減と、4四半期ぶりにマイナスだった。生鮮野菜の高騰が家計支出を抑制した。

 輸出は2.6%増、輸入は1.3%増だった。アジア向けや北米向けに需要が回復し輸出が拡大した。国内需要が伸び、輸入量が増加した。 設備投資は0.9%増と、2四半期ぶりにプラスだった。輸出増などを受けて生産活動が回復し、設備投資需要が高まった。住宅投資は0.2%増。公共投資は1.8%減。民間在庫の寄与度は0.1%のマイナスだった。

 総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは前年同期と比べてマイナス0.1%だった。輸入品目の動きを除いた国内需要デフレーターは0.3%のマイナスだった。

 同時に発表した16年暦年のGDPは実質で前年比1.0%増、生活実感に近い名目で1.3%増となった。

代表して日本経済新聞記事から引用していますが、今回の報道はどこもこんな感じ。今回のGDP速報にて最も特徴的な部分を、どの報道機関もまったく報道していないのです。

しかも・・・記事内容、ほぼ「嘘」ですからね。
「嘘」というと語弊があるんですが、報道機関で共通して掲載しているのは

 「輸出主導で外需が伸びた。個人消費は振るわなかったが補った」

という内容です。これ、まったくの嘘。出鱈目です。
寧ろ今回の速報の特徴は「個人消費が」伸びた」事。

しかも「横ばい」だとか「微増」だとか、そんなレベルじゃなく、「名実共」に、はっきりと。

「GDP(支出側)」っていうのは、基本的に以下のような項目で構成されています。

国内総生産(支出側)

 民間最終消費支出
  家計最終消費支出
  除く持ち家の帰属家賃

 民間住宅

 民間企業設備

 民間在庫変動

 政府最終消費支出

 公的固定資本形成

 公的在庫変動

 財貨・サービス

 純輸出
  輸出
  輸入

この内、「個人消費」と呼ばれるのは、

  家計最終消費支出
  除く持ち家の帰属家賃

の2つ。
「持家の帰属家賃」っていうのは、本来GDPにすら加えるべきではない指標だと思うのですが、なぜか継続して掲載され続けています。

合わせて言えば、「民間住宅」も「個人消費」として考えることができます。

過去のGDPに関する記事で何度もお伝えしていることですが、改めて復習がてら、「GDP」について解説してみたいと思います。

「GDP」には「名目」と「実質」の2種類があります。

このうち、「名目」とは、全体で「何円」消費されたのかという「金額」を考えるための統計データ。
一方「実質」とは、全体で「何個」消費されたのかという「数量」を考える為の統計データのことです。

ただ、この世の中にある全てのサービスを「個数」で表現することなどとてもできません。不可能です。
「何リットル」という単位、「何グラム」という単位、「何人」という単位等々数多の「単位」が存在しますし、同じ単位でもサービスによってその価値は大幅に変化します。

「実質GDP」というのは、その本来であれば集計することが不可能なはずの「単位」を強引に統合し、唯一示すことの出来る共通の単位、「円」で表現したものです。

ですがそもそも、例えばGDPを「みかん」で考えると、

 「100円のみかんを10個、合計で1000円購入した」場合。

合計値である「1000円」が名目GDP、購入数量である「10個」が実質GDP、更に単価である「100円」が「GDPデフレーター」と呼ばれるものです。

本当にただこれだけの話。こんな単純な指標なんですよ、ほんとは。
「組み合わせ」のパターンが余りにも複雑なんでとても分かりにくく感じるかもしれませんが、単純化する「GDP」とはそういう指標なんです。

四半期別GDPを見る際に問題なのは、政府が集計している指標の中に、「原系列GDP」と「季節調整系列GDP」、そして「年率換算」という3つの指標が含まれていること。名実共にそれぞれの指標がありますから、合計で6つの「GDP」が存在することになります。

今回の速報の中で、特に着目していただきたいのは、当然「個人消費」ですから、今回の記事はこの「個人消費」に着目して記事を作成したいと思います。


家計最終消費支出

2016年度(平成28年)第三四半期家計最終消費支出

名目家計最終消費支出

原系列
 今年度 75,079
 昨年度 74,591
 成長率 0.65%

季節調整系列
 今年度 293,430
 昨年度 291,549
 成長率 0.65%

 前期比 0.3%
 年率換算 1.1%(持家に帰属する家賃を除くと1.4%)

実質家計最終消費支出

原系列
 今年度 73,823
 昨年度 73,189
 成長率 0.87%


季節調整系列
 今年度 289,275
 昨年度 286,764
 成長率 0.88%

 前期比 -0.0%
 年率換算 -0.1%(持家に帰属する家賃を除くと-0.4%)

さて。いかがでしょうか。

どの程度この統計の意味が理解できているのか、という点で見え方は変わってくるとは思うのですが、

 「名目原系列」では昨年と比較して「0.65%」成長しており、
 「季節調整系列」でも同様に「0.65%」成長。
 前期、2016年度第2四半期と比較しても0.3%成長。
 これを「年率換算」すると1.1%成長、
 更にここから「持家に帰属する家賃」を除くと1.4%成長しています。

一方実質でも、

 「原系列」は0.87%成長、
 「季節調整系列」でも0.88%成長

しているのですが、これがなぜか「前期比」となると-0.0%成長、これを「年率換算」すると-0.1%成長、持家に帰属する家賃を除くと-0.4%成長と、軒並み「減少している」ことになってしまうのです。

おかしいですよね、これ?

ちなみに「前年同月比」を昨年12月より合計5四半期の推移を見てみますと、

名目
2015年度第3四半期(10-12) -0.3%
2015年度第4四半期(1-3) -0.5%
2016年度第1四半期(4-6) -0.2%
2016年度第2四半期(7-9) -0.4%
2016年度第3四半期(10-12) 0.7%

実質
2015年度第3四半期(10-12) -0.3%
2015年度第4四半期(1-3) -0.3%
2016年度第1四半期(4-6) 0.3%
2016年度第2四半期(7-9) 0.3%
2016年度第3四半期(10-12) 0.9%

わかりますか?
実質個人消費のマイナス成長は今年度に入って以来解消されていたのですが、名目は昨年度第3四半期より継続して下落しており、今年度第2四半期まで継続していたのですが今期に入ってようやく解消され、プラス成長を果たしたのです。

然も(四捨五入してですが)0.7%成長。
マスコミが大好きな「季節調整系列 前期比 年率換算」ではなんと1.1%。持家に帰属する家賃を除くと1.4%成長となるわけです。

また更に、今期の特徴では「個人消費」に於いても「名目上昇率」を「実質成長率」が上回っているということ。
計算式からすると0.2%物価が下落したことになるわけですが(当然GDPデフレーターもマイナスになります)、名目GDPは上昇し、実質GDPはこれを更に上回る成長率を記録したのです。

先ほどのみかんの例で例えると、

 「100円のみかんを10個、合計で1000円購入」

という状況で、みかんの値段が例えば90円に値下がりするのですが、おかげで販売数量は12個に増え、販売総額は1080円に増えた・・・と、そんなイメージです。

実質賃金と名目賃金のページ でもお伝えした、

 「物価が下落したおかげで、『消費金額』も『消費量』も共に上昇した」

という状況。この状況は「賃金」だけでなく、実際の「個人消費」のケースでも同様の経済現象が起きていたことが、GDPデータにより証明された形です。

ですが、今回ご紹介した日経をはじめ、大手新聞社が掲載した情報は

 輸出主導で外需が伸びた。個人消費は振るわなかったが補った。

消費は増えたんです。外需が伸びたかどうかなど関係ありません。
寧ろ「前年同月」で見れば輸出はマイナスです。

「経済面」を担当する「日本経済新聞」の記者なんですよ、この記事を書いた人物は。どなたかは知りませんが。
どんだけ経済音痴なんだと真剣に罵倒したい気分です。

何が「個人消費は振るわなかった」だ。
もっと真剣に経済統計を見ろよ、と言ってやりたいですね、はっきり言って。

もちろんここには「前年同月比では下落し続けていた原油価格がようやく前年の価格と釣り合った」ことや、「生鮮食品が高騰したこと」なども含まれているわけですが、「実質値を季節調整し、『前期』と比較し、年率換算した数値」はそんな事すら反映できていないわけです。

いい加減人為的な計算式で算出した「実質値」「季節調整系列」「年率換算」などのまったく当てにならない指標に依存した飛ばし記事を書くのはやめてほしいですね。

ちなみに「名目」の「民間住宅」、つまり人間が一生のうちで購入する最も高額な商品であると言われる「住宅」はの2016年度第3四半期の前年同月比は「7.1%」。

第1四半期4.2、第二四半期5.3ですから、どんどん上昇していることが分かります。
「2%物価上昇率」を目指すのは、あくまでも考え方の一つであって、例えこれに追いついていないとしても、「名目」も「実質」も共に大幅なプラス成長を果たしているのなら、最早掲げる必要性すらない目標値です。

難関を超え、大手新聞社の「記者」となった人物なのに、この程度の情報に気づけないなんて、私には信じられません。

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