第268回 日本はなぜ真珠湾を攻撃したのか/日米開戦の原因に迫る⑮など、政治・経済を中心とした日常的な情報を、独自な視点で解析します。

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<継承する記事>
第268回 日本はなぜ真珠湾を攻撃したのか/日米開戦の原因に迫る⑭

私のブログのタイトルは「データから見る日本」となっております。

「歴史」というのは「経済」や「現代政治」とは異なり、後世の人々が行った「評価」により簡単にその姿を変えてしまいます。
これが「現代」であれば様々なデータを集めることで検証し、より正解に近い回答を導き出すこともできますが、これが「歴史」となるとそうは行きません。

タイムマシンを使ってその時代に戻り、その現場を再確認すること以外に、本当の「真実」を探り出すことは難しいのではないでしょうか。

唯、現在行っている「公文書」の検証。
これは「議事録」であり、「歴史」を検証する資料としては、比較的第三者による評価が含まれにくい構造となっていて、そういう意味では同じ「歴史」であっても、私のブログタイトル、「データから見る日本」が求めている情報に比較的適合した内容となっているのではないでしょうか。

まあ、内容が読みにくく、理解しにくいという点で時に見るのも嫌になるかもしれませんが。
ただ、実際に公文書を書き写した部分は枠で囲んでおりますので、ちょっと読みにくい・・・と感じる方はどうぞ枠内は読み飛ばしてください。

記事の作成方法として、公文書を書き写した後で再度重要だと感じている部分をピックアップして記事にしておりますので、そこに目を通していただければ充分かな、とも思います。


それでは本日の記事です。
第38回連絡懇談会 の内容は、主に松岡外相と斎藤顧問による「米国対案」についての評価のみが掲載されており、その内容について検証するための議論は行われていません。

また、この議事録より、米国対案と共に送られてきた「オーラルステートメント」にいかに重要な意味合いを含まれているのかということが読み取れますので、前回の記事 ではその「オーラルステートメント」についての訳文を掲載し、私なりの評価を加えました。

今回は更に第38回連絡懇談会 の内容に対し、詳細に議論が行われた「第39回連絡懇談会」の内容を掲載したいと思います。

【第39回連絡懇談会】

第39回連絡懇談会

7月12日第39回連絡懇談会
対米国交調整に関する件

1.出席者 寺崎亜米利加局長を加う

2.要旨
前回に引続き対米国交調整今後の処理に関し審議したる結果、飽迄帝国最初の案を堅持するも尚交渉の余地を残し、文句の修正を多少にてもなし得るならば修正をして回答をなすことに決す
之が為本日午後陸海外産局長に於て一案を造ることとす

尚「ハル」国務長官の「オーラルステートメント」は之を拒否することとなせり

3.審議の概要は左の如し

外相
前回云うた事で付て居るが更に附言すれば、「ハル」長官の「オーラルステートメント」は読んだときに実際は直に返すべきものである。実に言語道断なり。

10日間考えたがあの様な「ステートメント」は米国が恰(あたか)も日本を保護国乃至は属領と同一視し居るものにして、帝國が之を甘んぜざる限り受理すべきにあらず。

拒否の理由は明瞭なり。吾輩が外相たる以上受理できぬ。「ステートメント」以外は考えることは出来るが、「ステートメント」の受理は出来ぬ。米人は弱者には横暴の性質在り、この「ステートメント」は帝国を弱国属国扱いにして居る。

日本人の中には吾輩に反対し、総理迄も吾輩に反対なりなどと云う者がある。
この様なことで、米国は日本が疲れ切って居ると考えて居るから、此の如き「ステートメント」をよこすのだ。

吾輩は「ステートメント」を拒否することと対米交渉は之れ以上継続出来ぬことを茲(ここ)に提議する
尚昨日状況説明の為若杉を返せと云うてやった所、野村は自ら帰る、今は居っても何も出来ぬから帰ると云うて来たが、今野村が帰ってきては適当でないので辛抱してもらうことにした

暫く沈黙続く、依って参謀総長発言す

参謀総長
外相の意見は自分も同感在り。然れども軍部としては南方には近く仏印の進駐あり、北には関東軍の戦備増強と云う重大なる事態を直後に控えて居る。この際米に断絶の様な口吻を漏らすのは適当ではない、交渉の余地を残すを妥当とす

外相
日本が如何なる態度を取っても米の態度は変わらぬと思う。
米国民の性格より弱く出るとつけあがる。故に此の際強く出るのを可と思う

内相
此の際帝國はなんとしても米を参戦せしめぬことが大事なのである。本来なれば日米共同し今日の戦争を打ち切ることが宜しいと思う。

然るに此の儘ドンドン進んで行けば50年100年も戦争は続くかも知れぬ。
外相の常に云う日本の大精神八紘一宇から言うなれば戦争はせぬが宜しい。

日本は全体主義にもあらず、自由主義にもあらず、理想から云えば今の戦争を世界からの像ことが皇道主義であると思う。
米にはわからぬかも知れぬが、戦争を止めることが日本の新に取るべき事であって、米をして其の様に仕向けることが日本の取るべき態度ではないか。

此の精神の下に米を説いては如何。
外相の云う如く米の参戦が必ず然りと云うなれば、私の云うことは絶望なるも、外相は「ルーズベルト」が引ぱるから国民がついて行くと云うが、米人中には戦争反対のものも居る。日本ンお皇道精神の様に持って行き度(た)い。

外相の云う様に「オーラルステートメント」に反撃を加えることは宜しいが、交渉に就ては望み薄かも知れぬが右の考の下に努力してもらい度(た)い。

尤も大帝国の面目を失せざる如く骨を折ってもらい度い

外交は外相の責任なること申す迄もなきこと乍(なが)ら之を一筋にする必要あり。之を此の儘に投げうては腹背皆敵となり、物資は欠乏し大戦争の遂行は出来ぬだろう。

「ソ」を打たねばならぬが、現今の時勢では難しい、他日はやらねばならぬ。南方もやらねばならぬが一時に之をやるわけには行かぬ。

日本の現在の状態ではものを取り国力を付ける必要あり。国際信義は固よりなるも帝国の生存上よりすれば已むをえないことも考えられる。陛下の赤子として輔弼(ほひつ)の為には宸襟(しんきん)を安んじ奉る必要あり。

今の人が悪いのなれば之を代えても参戦を止めさしても宜しいではないか

外相
全部内相に同感である。若干附言せば、諸般の情勢上米大統領は引きずって参戦に持って行こうとして居る、但それに米人がついて行かぬかも知れぬという一縷の望あり。

而し大統領は非常に無理と思うことも何とか漕ぎつけて居る。
三選もとうとうやった、「ルーズベルト」は非常に「デマゴー」なり。恐らく米の参戦を止めさせることは到底出来ぬだろう。

帝國は三国同盟を一貫して進んで来て居る。而し最後迄努力を続けましょう。日米の提携は吾輩若い時からの持論なり、絶望と思うが最後まで努力いたしましょう。

「オーラルステートメント」を拒否したことにはならぬ。(ここにて前に云うたことを繰り返し)日本の中には分らず者が居って、国家の為に尽す積りなのか自分を誹謗して居る。自分は若い時からそう云う奴だと思って居った。そいつらは総理以下も俺のことを悪い奴と思って居ると想像しているに違いない。

陸相
望みがなくても最後までやり度(た)い、難しい事は知っているが大東亜共栄圏建設、支那事変処理之が出来なければ駄目であって、三国同盟の関係からも米の参戦の表看板を表に掲げさせぬことだけでも出来ぬか。勿論「ステートメント」は国体の尊厳に関する事故(事項の打ち間違い?)

外相の判断通り拒否するは已むを得ぬと思う。而し乍ら日本人として正しいと思う事を真に伝えれば精神的に気持ちが移るのではないか

外相
日本に其の位の事を平気で云うて居る位だから拒絶しても大したことはない
(原文にも実際に訂正線が入っています)

陸相
海軍情報に依れば、「ハル」長官等は太平洋の戦争には持っていくまいと云う考えがあるらしい、日本は太平洋戦争をせぬ様に考えて居るから、そこに本施策をやる余地がありはせぬか

外相
何か余地がありますか、どう云う余地がありますか、何を入れますか

海相
まー小さい事だ

外相
南に兵力を使用せぬと云うならば聞くだろうか、外の事でなにかありますか

海相
太平洋の保全、支那の門戸開放等を入れることがありはせぬか

外相
今度の米案は第一案より改悪故之を引きもどすことは困難である。日本組みし易しとと思うから此の様な手紙をよこしたのである。原案を堅持して交渉を続けるならば、蹴って蹴って蹴りのめされるから止める様になるだろう

尚「オーラルステートメント」拒否に対しては作文をうまく書け云うたのに対し寺崎米局長はうまくは書けませんんと述べ、外相は俺がチャンと考て居る、斎藤の案をうまくなおし書いてみよと述べたり


会談後
参謀総長
仏印の話は14日に交渉開始するにあらずや、故に余り早く米に対し拒否することは米をして興奮せしめることになる「ヴシー」が日本の交渉いは不?米が仏印を抱き込む余を与えることになる。早く「ヴシー」に手を打ち、最通牒の交渉に移った時後に、米に返事を出すようにしてはどうか

外相
あまり不埒だから直ぐ拒絶したいと思い、又野村から何度も催促して来て居るが まー考えましょう

軍令部総長
松岡君、日本が何を云うても態度を変えぬと云うのならば、外務大臣の云う通りやっても宜しいのではないか

岡軍務局長
何ぼかでも努力すると云うならば宜しいが、総長閣下の様にぶっつりと止めると云われては下の者は仕事をやる熱がなくなるではありませんか

軍令部総長
それもそうだ

(右は永野総長が突然云い出したる事にて、本朝海軍側より提案ありたる帝國の取るべき態度とは全然相違するものにして、岡軍務局長は軍令部総長の発言を婉曲に撤回せしめたるものと認めらる

本日は平沼内相が特に長き発言を為せり。
而して総理は一言も発言せざりき)

さて。改めて、ハル長官よりの「オーラルステートメント」 に目を通した上で、連絡懇談会の内容に合わせて目を通しますと、少し内容の見え方が変わってきますね。

「オーラルステートメント」に於いて、ハル長官は以下のように発言しています。

米国が自衛に関する現在の政策を実行することに依り欧州の戦闘行為に巻込まるるが如き場合には日本が「ヒトラ」の側に於て戦うことを予見するが如きものなるべし


また、同様の内容に関して、「別紙甲号」に於いては、以下のようにも記されています。

本長官は既に上記の如く陳述せる自国の安全の防衛の為合衆国が採択するを余儀なくせらるるが如き措置に関し、日本国政府は太平洋地域に於ける平和を樹立し且保全すべし

そう。どう見てもハルは、欧州戦に参戦する気満々なんですね。
そして、日本側は米国に欧州戦に参戦させないために必死に様々な画策を行っているわけです。

日本側とすると、まずは蒋介石軍を殲滅した上で、中国全土を一旦日本の占領下に置いた上で、教育を含めた「文化」を占領下の中国に浸透させ、中国が二度と共産主義に染まったりすることのないよう再構築することを考えています。

ところが、米国側は日本のそのようなやり方は「第三国の主権に介入するやり方で、米国が目指す自由主義社会とは一線を画するため、到底容認できない」としているのです。

例えば日本が三国同盟から脱退し、連合軍側に就くということは即ちこのような日本の中国に対する統治システムも含めて放棄しすることを意味しています。

つまり、日本も「自由主義社会」を目指し、第三国の主権に介入しないやり方に賛同するということになるのです。
先ずこの時点での日本にはできない選択です。日本としては、「連合軍側に就く」という選択肢はありえないのです。

ですが、米国は欧州戦に参戦する気満々。日本が連合軍側に与することができない以上、米国の参戦は即ち日米開戦を意味しています。

懇談会の中で、参加者たちは、「ハルが太平洋戦線にまで拡大させることは考えていない」ことに一縷の望みを託するのか、また仮にルーズベルトが米国民を参戦に向けて駆り立てたとしても、これに反対する米国民もいるわけで、ここに一縷の望みを託するのか、はたまた日本の「皇道主義」、即ち「八紘一宇の精神」を説いて米国に日本側の考え方を理解してもらうのかわずかばかりの望みにすがって最後まで努力をしましょう、という話し合いを行っているのです。

中で内相が、暗に米国の言いなりになって松岡を解任することにまで言及していますね。

で、見えてきたのが「南部仏印進駐」をなぜ日本軍が急いだのかということ。
米国が参戦する理由の一つに、「米国がフィリピンに有する権益」の問題がありますから、日本にこの権益を侵害されない様、事前にヴィシー政府に対して働きかけ、ヴィシー政府を「抱き込む」ことを危惧していたという理由もここに見えてきました。

米国が先手を打つ前に、日本が南仏進駐を完成させ、米国が手出しできないようにしておく、という意図があったわけですね。

なるほど。大分風通しが良くなってきました。
ただ、このやり取りを見ると、松岡自身自分があまり好意的に受け止められていないことを自ら感じ取っている様子が分かりますね。

松岡は野村大使に大使、7月15日、米国対案への回答を送るのですが、翌16日、近衛内閣は総辞職し、遂に松岡は「外務大臣」の座を外されてしまいます。そう。米国の思惑通り・・・。

次回記事では、第三時近衛内閣結成後、初めて開催された「第40回大本営連絡懇談会」に着目して記事を作りたいと思います。


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