第266回 日本はなぜ真珠湾を攻撃したのか/日米開戦の原因に迫る⑬など、政治・経済を中心とした日常的な情報を、独自な視点で解析します。

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<継承する記事>
第265回 日本はなぜ真珠湾を攻撃したのか/日米開戦の原因に迫る⑫

それでは改めまして、1941年6月21日に米国より突きつけられた「米国対案」に関連して行われた連絡懇談会、「第38回連絡懇談会」について記事にしてみたいと思います。

【第38回連絡懇談会】
7月10日(水)第38回同連絡懇談会
日米国交調整特に6月21日附「ハル」
長官の同答に関する外務省側の意見開陳の件

場所 首相官邸
出席者 前回に同じ(ただし両次長列席せず)

松岡外相
成るべく「ハル」の同党案に就て取り入れるべきものは取り入れて見ようと考えてみたが結局本案は最初の案より悪い
野村電によれば中々にやりにくい故何とかしてきまるものならば考え直して成立できるようにしてくれと言ってきているかどうかも此案では六け敷い

以下斎藤顧問をして説明させる


斎藤顧問
研究をして見ると色々先のような点で本案は受け入れられないところが多い

第一 今世界は現状維持と現状打破
 民主主義と全体主義がまんじ巴になりて戦うている
 「ハル」の回答案は現状維持であり民主主義である

 「アメリカ」が英国及支那と協議してやったことは申す迄もあるまい
 斯くして現状維持国が一致して日本威迫に乗り出すものと思う
 日支間の交渉に就ても「アメリカ」の考えていることは事変前の形に返して交渉させようとするにある

 此案中「支那政府」という文句を使っているが「クセモノ」であるこれは日支基本条約を取り消せというのと同じだと思う。
 南京政府承認の取り消しは頻死の重慶を回生せしめることになる

 此の「支那政府」という言葉を克く玩味して検討するを要す

第二 満州は支那に復帰すべきものであると考えている
 本案は要するに日満支の共同宣言を白紙にして日支交渉せよというている

 重慶が失地回復を目的として来ている際こんな考えで交渉を始めたら初めから逆転するに決まっている

第三 治安駐兵を認めていない
 無条件撤兵を目標としている

 治安駐兵は帝國の国策として最も重要なる要求である
 無条件撤兵せば事実問題とし支那は共産党、国民党、国民政府重慶側が争闘して非常に紊乱してくる
 かくなれば英米が介入してくることになる
 従って無条件撤兵も亦交渉の行詰りを招来する

第四 防共駐兵を否認している
 日本案は今日迄の条約を生かして行こうと努めているにも拘わらず米国はこれを削ってかかろうと考えている
 防共駐兵を「アメリカ」がみとめていないことは「ハル」の「ステートメント」中に現れている

第五 日本は日支の完全なる提携を企画するに対し米国側は無差別待遇を主張している
 これでは東亜新秩序の建設の如きは不可能である
 英米は今日迄援蒋行為を続け支那に於て将来有利なる地位を確立しようと考えている

 全面和平の時今日の特権を基礎とし全支に亘り全世界の八割を有する米国の「弗(ドル)」の力が蔓ることとなる

第六 日支和平交渉解決の根本を日米両国間で決めて其範囲内で日支交渉をさせようと考えている
 即ち東亜の指導権を「アメリカ」に譲ることになる
 帝国の自主的国策の遂行を妨害することになり支那問題に対し口を入れさせる権利を米国に与えることになる

第七 欧州戦争に対する日米両国の態度に就ては大いにちがう
 換言すれば米国は参戦するが日本は黙って居ろとしかみえぬ
 「アメリカ」は自衛権については非常に広い解釈をしてきている

 又日本に対し三国条約より脱退せよと云わぬばかりのことを述べている
 こんな考えは当然否定せねばならぬ

第八 日米間の貿易については事変前の額に釘付けしようと考えている
 要するに現状維持の頭がはっきりしてきている

 然も普通の商取引ということに書いてあるが将来鋼材屑鉄等重要物資に就ては貿易額を増加しなkればならぬものを事変前と同じということは日本の貿易発展を合法的に防止することになる

 即ち日本の将来の経済発展を妨害し米国自体としては東洋の市場を自由に占むことになる

第九 南西太平洋の南西という字を削っている
 これは北太平洋にも重大なる関心を払っていることを実証し得る

第十 普通の商取引と云うているけれども日本としては単に商業のみならず鉱工業等をも考えているので米国は商取引と縛って日本の要求を明らかに制限している

第十一 日米移民の問題については此前の案では他国のものと同じようにすると言っているけれども此度の案では削ってきている

第十二 「フィリッピン」の独立に関して提議したけれども「フィリッピン」は未だとても独立せざる程度迄発達していないとあっさり取り扱ってきている

 殊に「ハル」の「ステートメント」は言語道断の言葉遣いである
 「防共駐兵を考える余地なし」

 とか

 「日本政府内にはいろいろと意見が別れている枢軸側に立ちて「ヒ」と共に戦うをかとする関係がいるそうだがそんな日本政府と協定は出来ぬ
 日米国交調整を図りたければ内閣を改造せよ」
 というが如き日本を馬鹿にした態度である

 自分も長い間外交官生活をしたがこんな言い分は対等の国に対する言葉遣いでなくして保護国又は属領に対する態度であり不都合千万である


松岡外相
斎藤顧問の報告と大体同意見であるが1、2の考えを申し述べる

第一 「ハル」の「ステートメント」は乱暴千万で帝国が対等なる外交を行う様になって以来未だ嘗てないことである

 野村は自分と親しい間柄であるがこんな無体千万なる「ステートメント」を取継ぐが如きはこれ亦不届千万である
 内閣改造の如きを世界的に強大なる日本に対して要求したのを黙って聞いているとは実に驚き入った次第である

 そこで早速自分から
 「君はあんな「ステートメント」は取継ぐべきではなかったと思うが何か錯覚はなかりしや
 当時の情況知らせよ」というてやった次第だが何の返事もない

第二 三国同盟の抹殺は出来ぬ

第三 「アメリカ」の案を容れることは大東亜新秩序建設をゆすることであり事極めて重大である

第四 日支間の解決を英米が手を代え品を代え口はしを入れてやろうと考えてきているものと思う
 尚不愉快なのは国民の中にも日清日露講和条約判のとき「アメリカ」はじめ第三国の世話になったことを例にして三十年後の帝國の地位を忘れ東亜の指導権を確立せんとし四年間も戦い抜いて来た今日此の際尚且第三国の世話により講和をした方がよいと考えているものがあることである

 俗に云えば支那事変を持て余して自分の理想を討ち忘れ「花より団子」という考えを抱くものが相当あるのが不愉快に思う

 「アメリカ」は「アイスランド」を占領した
 当然参戦も同様であるに拘わらず目を掩(おお)うて参戦にあらずといってきている

 貿易でも現状を維持し事変前の形にもどせとは日本の経済的発展を望めないのは眼に目ざる
 要するに「アメリカ」は日本の東亜の指導権を抹殺しようと考えている

 こんなところでぐずぐずしていると結局日本の云うことを取り上げて日本攻撃の材料に取入れさせるだけである
 其中に上院あたりで勝手な質問を発することとなり日本国内への影響も亦大である

 右の次第である故自分は「ハル」案を受け入れることはできない
 何とかして話合を付けたいと思うが到底成功の見込みなし

 元来「アメリカ」は日本案を四十日も放置した
 こんどの案が来たのは6月22日だからまだ2週間にもならぬのに野村は45度も催促してくる

 交渉を此儘ずるずる伸ばすのはのばしてもよいが先方の言い分を受け容れることは絶対できない

 尚「ハル」の「ステートメント」に「大使及同僚等の努力に拘らず」とあったから同僚等とは誰か国家の外交機密外務大臣から大使へ大使から「ハル」長官へと話さるべきに拘わらず多人数が関係しているが如きは不届きだと野村に詰問してやった

斯くして12日(土)更に本題を討議することにして散会せり

第38回連絡懇談会


長かった・・・

さて。この議事録を読むと、発言者である松岡外相と斎藤顧問が共に非常に激昂していることが分かります。
そして、その激昂している最大の理由は、「米国対案」の内容もさることながら、同時にハルが送ってきた「オーラルステートメント」にあることが分かります。

前々から見つけてはいたのですが、少し字が読みにくく、またまだ「公文書」を読むことに慣れていなかったこともあり、このブログでテキスト化はしていないのですが、大分公文書に目を通すのにも慣れてきましたから、次回記事でこの「オーラルステートメント」もテキスト化したいと思います。


改めて今回の議事録。
三国同盟に関してはまあ、米国側の立場を考えると米国側とすれば逆の反応を示すだろうな・・・とは思うのですが、その他の部分に関しては確かに、と思わせられる内容がたくさんあります。

逆に言えば、なぜ日本が米国に戦争をしかけたのか、ということも何となく、ですが見えてきました。
考えてみれば、ワシントン海軍軍縮条約や九カ国条約、四カ国条約、後のロンドン海軍軍縮条約に関しましても、「日本の国力が大きくなりすぎた」ことを憂慮した英米、特にアメリカが、日本の国力を削ぐために行われた節があります。

日米諒解案にしても、仕掛けてきたのは米国側からです。
然も「宣教師」という仮面を被って。

今回の日中戦争に於いて、日本は米国や英国に対して、はっきり言って何も悪いことはしていません。
上海事変に於いて米艦船を誤爆したことや、私のブログではまだ記事にはしていませんが、重慶爆撃に於いて欧米の民間人も巻き込んでしまった経緯こそありますが、これは全て「蒋介石軍」を狙ったものであり、別に欧米人を意図的に狙ったものではありません。

ところが、欧米人は逆に蒋介石軍(中国国民党軍)からは、各所に於いて散々な目にあわされているのです。
通州でこそ欧米人の姿は見えてきませんが、1927年の南京事件、済南事件、そして第二次上海事変に於けるおそらくは意図的な「空爆」。これだけではないはずです。

にも拘らず、欧米人は「九カ国条約」を盾にしてなぜか中国軍に対して報復措置を講じようとはしませんし、逆に切れて蒋介石軍を追い立てた日本軍には「経済制裁」を次々と課してきます。

協力して蒋介石軍を降伏させるための措置は一切取らず、逆に蒋介石軍に対して支援し続ける始末。
いくら国際連盟決議があるとはいえ、いくら何でも彼らがそこまで無能であるとは考えられません。

だとすると、英米政府は既に蒋介石政府と繋がっていて、お互いに連携できる状況にあるのではないか(英米政府から蒋介石政府への支援って普通出来ませんよね)。

蒋介石軍ではなく、日本を降伏させ、「中国大陸」という市場がポカンとあいた後、ここに米国が独占権を有する腹積もりなのではないか。

考えてみれば、天津英租界封鎖事件だって、租界(事実上の自治領)である天津内にそのような「輩」がいることを英国政府が知らないわけがありませんし、言い換えれば租界内で何かもめ事があったとしても、英国政府はこれを見て見ぬふりをしていたということ。

日本軍は大変な犠牲を払って、特に「北華」、そして「汪兆銘政府」において漸く平和と安定を築き上げたのに、ここから軍隊を引き揚げてしまえば、また再び「軍閥」や「共産主義勢力」による争いが復活し、この地域の治安は十中八九崩壊します。

間違いなく日本はここで再び商売を行うことはできなくなり、結果的に国力を衰退させるよりほかなくなってしまうわけです。
何しろ「治安」を維持するために軍隊を駐留させることすらできなくなる、というのですから。このあたりの具体的な内容は「オーラルステートメント」を読んでみる必要がありますね。

松岡をはじめ、日本の政府要人、軍部中枢の人々はつまりこの様なことを考えていた、ということです。
そうなるとなぜドイツでナチスが勃興することになったのか・・・という辺りも気にかかってきますね。
国際連盟(連合軍)は本当に正義だったのか・・・とね。

まあ、その辺りは後日、機会があれば調べてみることにします。

東南アジアの件に関しても、日本が南下し、南部仏印にまで進駐を行おうとすることはひどく非難する癖に、「松岡修正案」に於いて「五、南西太平洋方面に於ける両国政府の経済的活動」とした文言から「南西」の文字が削られていたり・・・。

何しろ非常に矛盾する部分も多いわけです。
この辺り、松岡が外務大臣の役職を外された後どのように変化していくのかも非常に気にかかる所です。

そういえば、議事録の中に

「『日米国交調整を図りたければ内閣を改造せよ』というが如き日本を馬鹿にした態度である」

とありますが・・・まさか、ね。
このあたり、次回「オーラルステートメント」の資料内容にてチェックしてみたいと思いjます。


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