第257回 日本はなぜ真珠湾を攻撃したのか/日米開戦の原因に迫る⑨など、政治・経済を中心とした日常的な情報を、独自な視点で解析します。

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<継承する記事>
第256回 日本はなぜ真珠湾を攻撃したのか/日米開戦の原因に迫る⑧

さて、それでは日本国内に於ける軍部と外相間での協議内容から改めて本筋、「日米諒解案」へと移りたいと思います。

記事内容いたしましては、第251回 よりの引き続き。復習がてら、「日米諒解案6月21日米国対案」を再掲いたします。(長くて読みにくいですから、一旦は読み飛ばしてください)

【米側対案(6月22日在米大使取次)】
(極秘)(非公式、試案にして拘束力なし)
合衆国及日本国政府は伝統的友好関係の回復の為共同宣言に於て表現せらるるが如き了解に関する一般的協定の交渉開始及締結の為に共同の責任を受諾す

両国国交の最近の疎隔の特定原因に論及することなく両国民間の友好的感情悪化の原因となる事件の再発を防止し且其の不測不幸なる結果に付矯正を図ることは両国政府の衷心よりの希望なり

共同の努力に依り合衆国及日本国が太平洋に於ける平和平和を樹立及保持のため友好なる貢献を為すこと及し友好的了解を速かに完成することに依り世界平和を助長し且文明を覆没せんとする惧ある悲しむべき混乱を假令一掃せしむること不可能なりとするもなるに之が悪化を抑制せんことは両国政府の真摯なる希望する所なりとす

斯かる果断なる措置の為には長期の交渉は不適当にして又果薄弱なり、仍て両国政府は両国政府を不取敢道義的に且其の行動に関し拘束すべき一般的了解を成立せしめ之を完成する為にはを適当のなる手段を案出実施することを希望す

両国政府は斯る了解には緊急を要する枢要問題のみを包含せしめ後会議の審議に譲り得べき附随的事項は之を含ましめさること然るべしと信ず

両国政府間は左記の如き特定の付事態を明瞭にし又は之を改善するに於ては融和関係の達成を期待し得べしと認む

 一、国際関係及び国家の本質に関する合衆国及日本国の日米両国の観念

 二、欧州戦争に対する両国政府の態度

 三、日支間の和平解決に対する措置

 四、両国間の通商

 五、太平洋方面に於ける両国政府の経済的活動

 六、太平洋地域に於ける政治的安定に関する両国政府の方針

 七、比律賓群島の中立化

因て合衆国政府及日本国政府は並に左の相互的了解及政策の宣言に到達したり

一、国際関係及び国家の本質に関する合衆国及日本国の日米両国の観念

 日米両国政府は相互に其の国策は永久的平和樹立並びに両国民間の相互信頼及協力の新時代の創始を目的とするものなることを確認す

 両国政府は各国家及民族が正義及衡平に依る萬邦協和の理想の下に存在する一宇を為すとは其の伝統的及現在に於ける観念及革新なることを声明す

即ち平和的手続に依り規律せられ且精神的及物質的福祉の追及を目的とする相関的利害関係に基き何れも等しく権利を共有し責任を容認す

而して右福祉たるや各国家及民族が他の為に之を毀損すべかざるが如く自らの為に之を擁護するものとす

更に両国政府は他の民族の抑圧又は搾取を排撃すべき各自の責任を容認す

 両国政府は国家の本質に関する各自の相互に両国固有の伝統的観念並びにに基く国家観念及社会的秩序及び並に国家生活に関するの基礎的たる道義的原則は引き続き之を保存持すべく且右道義的原則及び観念に之に反する外来思想又は「イデオロギー」に依り変改せしめの跳梁を許容せざることを固くの鞏固なる決意を有す

二、欧州戦争に対する両国政府の態度

 日本国政府は三国条約の目的が過去に於ても又現在に於ても防御的にして挑発に依らざる欧州戦争の拡大防止に寄与せんとするものなることを闡明す

 合衆国政府は其の欧州戦争に対する態度は現在及将来に亙り防護と自衛即ち自国の安全と之が防御の考慮に依りてのみ決せらるべきものなることを声明す

注、(1941年5月31日案の一部を成せる本問題に関する合衆国政府の付属追加処の代わりとして並びに交換公文の試案添付せらる)

三、日支間の和平解決に対する措置

 日本国政府は合衆国政府に対し日本国政府が支那国政府との和平解決交渉を定義すべき場合に於ける基礎的一般条件即ち日本国政府の声明するところに依れば善隣友好、主権及領土の相互尊重に関する近衛原則並びに右原則の実際的適用に矛盾せらるものなる条件を通報したるを以て合衆国大統領は支那国政府及び日本国政府が相互に有利にして且受諾し得べき基礎に於いて戦闘行為の終結及平和関係の回復のための交渉に入る様支那国政府に慫慂すべし

注、(第三項の前期案文は共産運動に対する共同防衛問題(支那領土に於ける日本軍隊の駐屯問題を含む)及日支間の経済的協力の問題に関する今後の討議に依り変更せらることあるべし、第三項の案文修正の定義に関しては如何なる修正案も本校に関し付属書に掲げられたる一切の點が満足に起草せられ本稿及付属書が全体として検討し得るに至りたる上にて考究すること最も好都合なりと信ず)

四、両国間の通商

 本了解が両国政府に依り公式に承認せられたるときは合衆国及日本国の一方が供給し得て他方が必要とするが如き物資を相互に供給すべきこと保障すべし

両国政府は嘗て日米通商航海条約に基づき確立せられ居りたるが如き正常の通商関係を回復せしむるに必要なる措置を講ずことに同意す、若し新通商条約が両国政府により希望せらるるときはときは右は出来得る限り速かに交渉せらるべく且通常の手続きに従い締結せらるべし

五、太平洋方面に於ける両国政府の経済的活動

 太平洋方面に於ける日本国及米国の活動は平和的手段に依り且国際通商関係に於ける無差別待遇の原則に遵い行はるべしとの並に為されたる相互的誓役に基づき日本国及合衆国政府は南国が夫々自国経済の保全及発達の為必要とする天然資源(例えば石油、護謨、錫、「ニッケル」)等の物資の商業的供給の無差別的均霑を受け得る様相互に協力すべきことを約する

六、太平洋地域に於ける政治的安定に関する両国政府の方針

 両国政府は本了解の基調を為す支配的方針は太平洋地域に於ける平和なること、協力的努力に依り太平洋地域に於ける平和の維持及保全に貢献するは両国政府の根本目的なること並びに両国両国の何れも前記地域に於いて領土的企図を有せざることを声明す

七、比律賓群島の中立化

 日本国政府は合衆国政府が希望する時期に於て合衆国政府と比律賓の独立が完成せらるべき際に於ける比律賓群島の中立化のための条約締結を目的とする交渉に入る用意あることを声明す

6月27日に行われた第34回懇談会の内容 で、松岡の発言として、

『全面和平の為重慶と直接交渉は見込みなし、従って大きく包囲してやる要アリと判断し、「ソ」とも中立条約を作り、独に対しては頼みはしなかったが之と手を握り唯残るは米国のみとなった。よって米国に対し対欧中参戦阻止援蒋中止を趣旨とする個人「メッセージ」を出した。

帰京後米国の返事を見た所、本職の考えと違って居った。変なものになったのは中間に人が入ったからだ』
とあります。

ここにある「米国の返事」こそ、前記した「米側対案」の内容です。
また、松岡より発信した『対欧中参戦阻止援蒋中止を趣旨とする個人「メッセージ」』とは第250回の記事 に掲載した「松岡修正案」ですね。

つまり松岡が自身の修正案に託したのが、

1.「米国が欧州戦、中国戦に参加しないこと」
2.「蒋介石支援をやめること」

この二つのメッセージであったわけですが、ハルより送り返された米国対案には、松岡の意図したものとは全く異なる内容が記されていたと、松岡は少なくともそう受け止めたわけです。

交渉は野村大使が行っていたわけですが、野村大使が松岡の真意をくみ取って交渉することができず、結果的に松岡が望んだものとは違う結果に至った。松岡自身が交渉していればこんなことにはならなかったのに・・・というのが松岡の見解です。

『数日前米国から返事が来たが実に妙なものだ。勿論支那事変をやめればうまく行くかも知れぬが夫れは適当ではない。
結局最後に米国をつかむことに狂を生じた』

とあることから、松岡はこの時点で米国を「交渉」によって「参戦させない」という方法を半ばあきらめたのではないかと思われます。
つまり、この間の交渉がうまく行っていさえすれば、『たとえ南部進駐を行ったとしても米国を参戦させないだけの自信はあった』と暗に言っているのではないかと思われます。

ところがこの交渉はうまく行かず、更にドイツがソ連に対して戦争を仕掛けた。

日本が対ソ参戦をする口実が生れたため、早急にドイツに対する支援を表明し、極力早く中国北方を占領・駐軍し、北側から中国に圧力を加えることで日中戦争を終結に向かわせる・・・という方法を考えていたのかもしれません。

南側は、少なくとも「北部仏印」に関しては進駐しており、軍事拠点も構えているわけですから、英米と開戦状態にさえならなければここにそれほどの兵力を割く必要もありません。南部進駐を行わない限り、英米と開戦状態に陥ることまではないわけですから、北側に集中することができます。

そして、対ソ戦を行い、北側から中国に対して圧力をかけるために必要な領土を占領するまでの時間であれば米の参戦を外交によって阻止する自信はある。

よって南側よりも北側をまずは優先すべきだ・・・というのが松岡の理屈です。

ところが、軍側とするとそういう発想はありませんから、「北に進軍するということは即ち『米英中』に加えて『ソ』をも敵に回す」という発想から松岡に反論します。

連絡会議によって上記した米側対案に対し、日本側の見解が示されるのは7月10日のことになりますので、冒頭では『日本国内に於ける軍部と外相間での協議内容から改めて本筋、「日米諒解案」へと移りたいと思います』と示したのですが、7月10日に向けて、もう少し日本国内での「南進論」V.S.「北進論」について記事にしたいと思います。

一旦記事を分け、次回に委ねます。


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