第250回 日本はなぜ真珠湾を攻撃したのか/日米開戦の原因に迫る②など、政治・経済を中心とした日常的な情報を、独自な視点で解析します。

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<継承する記事>
第249回 日本はなぜ真珠湾を攻撃したのか/日米開戦の原因に迫る①

前回の記事に引き続き、ハルノートの検証から記事に入りたいと思います。

コーデル・ハル

前回の記事で、Yahoo知恵袋に投稿されていた回答より、ピックアップした5つのポイント。

 ・ハルノートが突きつけられる前に、既に日本軍はアメリカとマレーに向けて大規模な軍隊を進出していた。

 ・ハルノートは、冒頭に「暫定的」「拘束力のない」「提案」「草案」と書かれており、「最後通牒」と呼ぶには程遠いものであった。

 ・ハルノートの中でアメリカの唯一の「要求」は中国・仏領インドシナから軍隊・警察力を引き揚げる事だけである。
 日本がパリ不戦条約、九ヶ国条約を破って満州・中国を侵略し、フランスがドイツに負けたどさくさに仏印を侵略していたのだからこれは当然であり、且つハルノートには「いつ、どんな方法で」撤退すべきなのかは書かれていない。

 ・ハルノートには、「三国同盟を解消しろ」とは書かれていない。

 ・ハルノートには、中国大陸における日本の権益や満州についてもまったく書いていない。

この内容を検証することで、少しこの「ハルノート」の性格が見えてくるのではないでしょうか。
冒頭の「ハルノートが突きつけられる前に、既に日本軍はアメリカとマレーに向けて大規模な軍隊を進出していた」という内容については、おそらく事実と思われますが、少し角度の違う検証が必要かと思いますので、今回の検証対象からは外します。

それでは、二つ目のポイントから記事にしていきたいと思います。

『ハルノートは、冒頭に「暫定的」「拘束力のない」「提案」「草案」と書かれており、「最後通牒」と呼ぶには程遠いものであった』のは本当か?

これは、英文でこのように記されています。(英文、および翻訳は こちらのサイト を参考にしました)
「United States Note to Japan November 26, 1941

Strictly confidential, tentative and without commitment
November 26, 1941.

Outline of Proposed Basis for Agreement Between the United States and Japan」

回答に記されている英文はこのうち2行目、「Strictly confidential, tentative and without commitment」の部分です。
「Strictly confidential,(極秘)」「tentative(思案)」 「without commitment(拘束されない)」という意味です。

また、冒頭にある「Note」の文言が、「提案」とも意訳されていますから、回答者が文中で述べているのはこれらの内容のことです。

そう書かれてあるからと言って、疑いもせずまともに受け止めるのもどうかと思うのですが、実はこの提案書にはもう一つ、コーデル・ハルによる「オーラルステートメント(口頭陳述)」なるものがセットで送られてきています。

先ほどのリンク先にこのオーラルステートメントもセットで掲載されているのですが、この部分に関しては訳文が存在しません。
ポイントとなるのは、こちらの英文です。
「The proposals which were presented by the Japanese Ambassador on November 20 contain some features which, in the opinion of this Government, conflict with the fundamental principles which form a part of the general settlement under consideration and to which each Government has declared that it is committed. 」

記されている内容をざっくりと要約すると、

「日本大使が提示した11月20日の提案は、和解のための基本原則と矛盾し、受け入れることはできない」

といった内容です。


その上で、
「The plan therein suggested represents an effort to bridge the gap between our draft of June 21, 1941 and the Japanese draft of September 25 by making a new approach to the essential problems underlying a comprehensive Pacific settlement. 」

このプラン、つまり「ハルノート」は、1940年6月21日にアメリカが側が出した提案と、日本が9月25日に出した提案のギャップを埋める事を目的としている。

と記されています。

つまり、この「ハルノート」に掲載された内容を理解するためには、ハルが主張する和解のための「基本原則」そしてアメリカが日本に出した6月21日の提案内容。これに対して日本が返した9月25日の提案内容、更にハルノートが返した11月20日の提案内容を理解することが必要だということを意味しています。

ハルが述べている「基本原則」とは、ハルが野村米国大使に対し、米国が日本と交渉に入る直前に示した4原則のことで、以下のような内容です。

1.すべての国の領土と主権尊重
2.他国への内政不干渉を原則とすること
3.通商上の機会均等を含む平等の原則を守ること
4.平和的手段によって変更される場合を除き太平洋の現状維持

また、ハルがこの四原則を野村に示した際、これに先んじて日米間でまとめられた草案として、「日米諒解案」なるものが存在します。例によって難しい内容となっていますので、まずは読み飛ばしてください。

【日米諒解案】
「五、四月十六日日米両国諒解案四月十七日来電二三四号」
(1941年4月16日)

日本国政府及米国政府両国間の伝統的友好関係の回復を目的とする全般的協定を交渉し且之を締結せんが為此に共同の責任を受諾す

両国政府は両国国交の最近の疎隔の原因に付ては特に之を論議することなく両国民間の友好的感情を悪化するに至りたる事件の再発を防止し其の不測の発展を制止することを衷心より希望す

両国共同の努力により太平洋に道義に基く平和を樹立し両国間の懇切なる友好的諒解を速かに完成することに依り文明を覆没せんとする悲しむべき混乱の脅威を一掃せんこと若しその不可能なるに於ては速かに之を拡大せしめさらんことは両国政府の切実に希望する所なりとす

前記の決定的行動の為には長期の交渉は不適当にして又優柔不断なるに鑑み茲に全般的協定を成立せしむる為両国政府を道義的に拘束し其の行動を規律すべき適当なる手段として文書を作成することを提議するものなり

右の如き了解は之を緊急なる重要問題に限局し会議の審議に譲り後に適宜両国政府間に於て確認し得べき附随的事項は之を含ましめさるを適当とす

両国政府間の関係は左記の諸点に付事態を明瞭にし又は之を改善し得るに於ては著しく調整し得べしと認めらる

 一、日米両国の抱懐する国際観念並に国家観念

 二、欧州戦争に対する両国政府の態度

 三、支那事変に対する両国政府の関係

 四、太平洋に於ける海軍兵力及航空兵力並に海運関係

 五、両国間の通商及金融提携

 六、南西太平洋方面に於ける両国政府の経済的活動

 七、太平洋の政治的安定に関する両国政府の方針

前述の事情より此に左記の了解に到達したり右了解は米国政府の修正を経たる後日本国政府の最後的且公式の決定に俟つべきものとする

一、日米両国の抱懐する国際観念並に国家観念

 日米両国政府は相互に其の対等の独立国にして相近接する太平洋強国たることを承認す

両国政府は恒久の平和を確立し両国間に相互の尊敬に基く信頼と協力の新時代を画さんことを希望する事実に於て両国の国策の一致することを闡明せんとす

 両国政府は各国並に各人種は相拠りて八紘一宇を為し等しく権利を享有し相互に利益は之を平和的方法に依り調節し精神的並に物質的の福祉を追求し之を自ら擁護すると共に之を破壊せざるべき責任を容認することは両国政府の伝統的確信なることを声明す

 両国政府は相互に両国固有の伝統に基く国家観念及社会的秩序並に国家生活の基礎たる道義的原則を保持すべく之に反する外来思想の跳梁を許容せざるの鞏固なる決意を有す

二、欧州戦争に対する両国政府の態度

 日本国政府は枢軸同盟の目的は防御的にして現に欧州戦争に参入し居らざる国家に軍事的連衡関係の拡大することを防止するに在るものなることを闡明す

 日本国政府其の現在の条約上の義務を免れんとするか如き意志を有せず尤も枢軸同盟に基く軍事上の義務は該同盟締約国独逸か現に欧州戦争に参入し居らざる国に依り積極的に攻撃せられたる場合に於てのみ発動するものなることを声明す

 米国政府は其の欧州戦争に対する態度は現在及将来に於て一方の国を援助して他方を攻撃せんとするか如き攻撃的同盟に依り支配せらるべきことを闡明す米国政府は戦争を嫌悪することに於て牢固たるものあり従って其の欧州戦争に対する態度は現在及将来に亙り専ら自国の福祉と安全とを防衛するの考慮に依りてのみ決せらるべきものなることを声明す

三,支那事変に対する両国政府の関係

 米国大統領か左記条件を容認し且日本国政府が之を保障したるときは米国大統領は之に依り蒋政権に対し和平の勧告を為すべし

 A、支那の独立
 B、日支間に成立すべき協定に基く日本国軍隊の支那領土撤退
 C、支那領土の非併合
 D、非賠償
 E、門戸開放方針の復活但し之が解釈及適用に関しては将来適当の時期に日米両国間に於て協議されるべきものとす
 F、蒋政権と汪政権との合流
 G、支那領土への日本の大量的又は集団的移民の自制
 H、満洲国の承認

 蒋政権に於て米国大統領の勧告に応じたるときは日本国政府は新たに統一樹立せらるべき支那政府又は該政府を構成すべき分子をして直に直接に和平交渉を開始するものとす

日本国政府は前記条件の範囲内に於て且善隣友好防共共同防衛及び経済提携の原則に基き具体的和平条件を直接支那側に掲示すべし

四、太平洋に於ける海軍兵力及航空兵力並に海運関係

 A、日米両国は太平洋の平和を維持せんことを欲するを以て相互に他方を脅威するが如き海軍兵力及航空兵力の配備は之を採らざるものとす右に関する具体的な細目は之を日米間の協議に譲るものとす
 B、日米会談妥結に当りては領国は相互に艦隊を派遣し儀礼的に他方を訪問せしめ以て太平洋に平和の到来したることを寿ぐものとす
 C、支那事変解決の緒に着きたるときは日本国政府は米国政府の希望に応じ現に就役中の自国船舶にして解役し得るものを速かに米国との契約に依り主として太平洋に於て就役せしむる様斡旋することを承諾す但し其の屯数等は日米会談に於て之を決定するものとす

五、両国間の通商及金融提携

 今次の了解成立し両国政府之を承認したるときは日米両国は各其の必要とする物資を相手国が有する場合相手国より之が確保を保障せらるるものとす又両国政府は嘗て日米通商条約有効期間中存在したるが如き正常の通商関係への復帰の為適当なる方法を講ずるものとす尚両国政府は新通商条約の締結を欲するときは日米会談に於て之を考究し通常の慣例に従い之を締結するものとす

両国間の経済提携促進の為米国は日本に対し東亜に於ける経済状態の改善を目的とする商工業の発達及日米経済提携を実現するに足る金クレジットを供給するものとす

六、南西太平洋方面に於ける両国政府の経済的活動

 日本の南西太平洋方面に於ける発展は武力に訴うることなく平和的手段に依るものなることの保障せられたるに鑑み日本の欲する同方面に於ける資源例えば石油、護謨、錫、「ニッケル」等の物資の生産及獲得に関し米国側の協力及支持を得るものとす

七、太平洋の政治的安定に関する両国政府の方針

 A、日米両国政府は欧州諸国が将来東亜及南西太平洋に於て領土の割譲を受け又は現存国家の併合等を為すことを容認せざるべし
 B、日米両国政府は比島の独立を共同に保障し之が挑戦なくして第三国の攻撃を受くる場合の救援方法に付考慮するものとす
 C、米国及南西太平洋に対する日本移民は友好的に考慮せられ他国民と同等無差別の待遇を与えらるべし

日米会談

 (A)日米両国代表者間の会談はホノルルに於て開催せらるべく合衆国を代表してルーズヴェルト大統領日本国を代表して近衛首相に依り開会せらるべし代表者数は各国五名以内とす尤も専門家書記などは之に含まず
 (B)本会談には第三国オブザーバーを入れざるものとす
 (C)本会談は両国間に今次了解成立後成るべく速かに開催せらるべきものとす(本年五月)
 (D)本会談に於ては今次了解の各項を再議せず両国政府に於て予め取極めたる議題は両国政府間に協定せらるるものとす

付則
本了解事項は両国政府間の秘密覚書とす本了解事項発表の範囲性質及時期は両国政府間に於て決定するものとす

この案に日本側で松岡外相が修正を加え、ハルに送った内容が以下の通り。日米諒解案は全文掲載した上で、削除された部分に訂正線を、追加された部分にアンダーラインをそれぞれ掲載しています。

全部目を通すと脳が沸きそうになるので、とりあえず読み飛ばしてください。
日本国政府及米国政府両国間の伝統的友好関係の回復を目的とする全般的協定を交渉し且之を締結せんが為此に共同の責任を受諾す

両国政府は両国国交の最近の疎隔の原因に付ては特に之を論議することなく両国民間の友好的感情を悪化するに至りたる事件の再発を防止し其の不測の発展を制止することを衷心より希望す

両国共同の努力により太平洋に道義に基く平和を樹立し両国間の懇切なる友好的諒解を速かに完成することに依り文明を覆没せんとする悲しむべき混乱の脅威を一掃せんこと若しその不可能なるに於ては速かに之を拡大せしめさらんことは両国政府の切実に希望する所なりとす

前記の決定的行動の為には長期の交渉は不適当にして又優柔不断なるに鑑み茲に全般的協定を成立せしむる為両国政府を道義的に拘束し其の行動を規律すべき適当なる手段として文書を作成することを提議するものなり

右の如き了解は之を緊急なる重要問題に限局し会議の審議に譲り後に適宜両国政府間に於て確認し得べき附随的事項は之を含ましめさるを適当とす

両国政府間の関係は左記の諸点に付事態を明瞭にし又は之を改善し得るに於ては著しく調整し得べしと認めらる

 一、日米両国の抱懐する国際観念並に国家観念

 二、欧州戦争に対する両国政府の態度

 三、支那事変に対する両国政府の関係

 四、太平洋に於ける海軍兵力及航空兵力並に海運関係

 、両国間の通商及金融提携

 、南西太平洋方面に於ける両国政府の経済的活動

 、太平洋の政治的安定に関する両国政府の方針

前述の事情より此に左記の了解に到達したり右了解は米国政府の修正を経たる後日本国政府の最後的且公式の決定に俟つべきものとする

一、日米両国の抱懐する国際観念並に国家観念

 日米両国政府は相互に其の対等の独立国にして相近隣接する太平洋強国たることを承認す

両国政府は恒久の平和を確立し両国間に相互の尊敬に基く信頼と協力の新時代を画さんことを希望する事実に於て両国の国策の一致することを闡明せんとす

 両国政府は各国並に各人種は相拠りて八紘一宇を為し等しく権利を享有し相互に利益は之を平和的方法に依り調節し精神的並に物質的の福祉を追求し之を自ら擁護すると共に之を破壊せざるべく且後進民族の抑圧又は搾取を排撃すべき責任を容認することは両国政府の伝統的確信なることを声明す

 両国政府は相互に両国固有の伝統に基く国家観念及社会的秩序並に国家生活の基礎たる道義的原則を保持すべく之に反する外来思想の跳梁を許容せざるの鞏固なる決意を有す

二、欧州戦争に対する両国政府の態度
 日本国政府及米国は世界平和の将来を共同の目標とし相協力して欧州戦争の拡大を防止するのみならず 其の速かなる平和克復に努力す

 日本国政府は枢軸同盟の目的はが防御的にして現に欧州戦争に参入し居らざる国家に軍事的連衡関係の拡大することをの戦争参加を防止するに在るものなることを闡明す

 日本国政府其の現在の条約上の義務を免れんとするか如き意志を有せず尤も枢軸同盟に基く軍事上の義務は該同盟締約国独逸か現に欧州戦争に参入し居らざる国に依り積極的に攻撃せられたる場合に於てのみ発動するものなることを声明す

 日独伊三国条約に基づく軍事的援助義務は同条約三条に規定せらるる場合に於て発動せらるるものなること勿論なることを闡明す

 米国政府は其の欧州戦争に対する態度は現在及将来に於て一方の国を援助して他方を攻撃せんとするか如き攻撃的同盟に依り支配せらる施策に出てざるべきことを闡明す

米国政府は戦争を嫌悪することに於て牢固たるものあり従って其の欧州戦争に対する態度は現在及将来に亙り専ら自国の福祉と安全とを防衛するの考慮に依りてのみ決せらるべきものなることを声明す

三,支那事変に対する両国政府の関係

 米国政府は近衛声明に示されたる三原則及び右に基き南京政府と締結せられたる条約及日満支共同宣言に明示せられたる原則を了承し且日本政府の善隣友好の政策に信頼し直に蒋政権に対し和平勧告をなすべし

 米国大統領か左記条件を容認し且日本国政府が之を保障したるときは米国大統領は之に依り蒋政権に対し和平の勧告を為すべし

 A、支那の独立
 B、日支間に成立すべき協定に基く日本国軍隊の支那領土撤退
 C、支那領土の非併合
 D、非賠償
 E、門戸開放方針の復活但し之が解釈及適用に関しては将来適当の時期に日米両国間に於て協議されるべきものとす
 F、蒋政権と汪政権との合流
 G、支那領土への日本の大量的又は集団的移民の自制
 H、満洲国の承認

 蒋政権に於て米国大統領の勧告に応じたるときは日本国政府は新たに統一樹立せらるべき支那政府又は該政府を構成すべき分子をして直に直接に和平交渉を開始するものとす

日本国政府は前記条件の範囲内に於て且善隣友好防共共同防衛及び経済提携の原則に基き具体的和平条件を直接支那側に掲示すべし

四、太平洋に於ける海軍兵力及航空兵力並に海運関係

 A、日米両国は太平洋の平和を維持せんことを欲するを以て相互に他方を脅威するが如き海軍兵力及航空兵力の配備は之を採らざるものとす右に関する具体的な細目は之を日米間の協議に譲るものとす
 B、日米会談妥結に当りては領国は相互に艦隊を派遣し儀礼的に他方を訪問せしめ以て太平洋に平和の到来したることを寿ぐものとす
 C、支那事変解決の緒に着きたるときは日本国政府は米国政府の希望に応じ現に就役中の自国船舶にして解役し得るものを速かに米国との契約に依り主として太平洋に於て就役せしむる様斡旋することを承諾す但し其の屯数等は日米会談に於て之を決定するものとす

、両国間の通商及金融提携

 今次の了解成立し両国政府之を承認したるときは日米両国は各其の必要とする物資を相手国が有する場合相手国より之が確保を保障せらるるものとす又両国政府は嘗て日米通商条約有効期間中存在したるが如き正常の通商関係への復帰の為適当なる方法を講ずるものとす尚両国政府は新通商条約の締結を欲するときは日米会談に於て之を考究し通常の慣例に従い之を締結するものとす

両国間の経済提携促進の為米国は日本に対し東亜に於ける経済状態の改善を目的とする商工業の発達及日米経済提携を実現するに足る金クレジットを供給するものとす

、南西太平洋方面に於ける両国政府の経済的活動

 日本の南西太平洋方面に於ける発展は武力に訴うることなく平和的手段に依るものなることの保障声明せられたるに鑑み日本の欲する同方面に於ける資源例えば石油、護謨、錫、「ニッケル」等の物資の生産及獲得に関し米国側の協力及支持を得るは之に協力するものとす

、太平洋の政治的安定に関する両国政府の方針

 A、日米両国政府は欧州諸国が将来東亜及南西太平洋に於て領土の割譲を受け又は現存国家の併合等を為すことを容認せざるべし
 B
A、日米両国政府は比島をして永久中立を保持せしむること及同島に於て日本国民に対し差別待遇を為さざることを条件として其の独立を共同に保障し之が挑戦なくして第三国の攻撃を受くる場合の救援方法に付考慮するものと
 C、米国及南西太平洋に対する日本移民は友好的に考慮せられ他国民と同等無差別の待遇を与えらるべし

日米会談

 (A)日米両国代表者間の会談はホノルルに於て開催せらるべく合衆国を代表してルーズヴェルト大統領日本国を代表して近衛首相に依り開会せらるべし代表者数は各国五名以内とす尤も専門家書記などは之に含まず
 (B)本会談には第三国オブザーバーを入れざるものとす
 (C)本会談は両国間に今次了解成立後成るべく速かに開催せらるべきものとす(本年五月)
 (D)本会談に於ては今次了解の各項を再議せず両国政府に於て予め取極めたる議題は両国政府間に協定せらるるものとす

付則
本了解事項は両国政府間の秘密覚書とす本了解事項発表の範囲性質及時期は両国政府間に於て決定するものとす

松岡洋右
【松岡洋右】

これが松岡修正案の内容です。

勿論、この時点ではまだ松岡単独の修正案ではありますが、松岡外相が修正した内容に目を通すと、この時日本が米国に対して主張したかったことが凡そ見えてくるのではないでしょうか。

まず、第1項に於いて、松岡は国際観念、及び国家観念として、両国が「後進民族の抑圧又は搾取を排撃すべき」責任を容認するこ、という内容を追加しています。

裏を返せば、「自分たちはこんなことをしていませんが、お宅らはやってますよね」というメッセージを載せている、とも読み取れます。

また第2項に於いて、「日本国政府及米国は世界平和の将来を共同の目標とし相協力して欧州戦争の拡大を防止するのみならず 其の速かなる平和克復に努力す」との文言を加えた上で、ハル側が「現に欧州戦争に参入し居らざる国家に軍事的連衡関係の拡大することを防止」することが日本が三国同盟に参加した目的だ、としていることに対し、松岡は『現に欧州戦争に参入し居らざる国家の参戦』そのものを防止することがその理由だとしています。

「現に欧州戦争に参入し居らざる国家」とはすなわちダイレクトにアメリカのことです。
松岡はここで、「三国同盟とはそもそもお宅を欧州戦に参戦させない為に存在するんだよ」と言っているわけです。

また、松岡は同項目に於いて、

「日本国政府其の現在の条約上の義務を免れんとするか如き意志を有せず尤も枢軸同盟に基く軍事上の義務は該同盟締約国独逸か現に欧州戦争に参入し居らざる国に依り積極的に攻撃せられたる場合に於てのみ発動するものなることを声明す」

という文章も削除し、

「日独伊三国条約に基づく軍事的援助義務は同条約三条に規定せらるる場合に於て発動せらるるものなること勿論なることを闡明す」

という文章に訂正しています。
米国の言う「現在の条約」とは即ち「 九カ国条約 」のことです。

松岡は、続く第3項で、

「A、支那の独立
 B、日支間に成立すべき協定に基く日本国軍隊の支那領土撤退
 C、支那領土の非併合
 D、非賠償
 E、門戸開放方針の復活但し之が解釈及適用に関しては将来適当の時期に日米両国間に於て協議されるべきものとす
 F、蒋政権と汪政権との合流
 G、支那領土への日本の大量的又は集団的移民の自制
 H、満洲国の承認」

という、アメリカ側が蒋介石政権に和平勧告を行う「前提条件」として示しているこれら8つの項目をごそっと削除していますが、これはすなわち「9カ国条約を守れ」という米国側からの暗黙的なメッセージだと考えられます。

第2項において「日本国政府其の現在の条約上の義務を免れんとするか如き意志を有せず」なる文言を削除したのも、松岡とすれば、

「私たちはこの条約を破るつもりなど毛頭ない。だが蒋介石軍がそれに託けて、中国本土に於いて私たちの同胞たちに一体何をしたのか、お宅は忘れたというのか!?」

とのメッセージを込めたものだと考えられます。

その上で、第3項では

「米国政府は近衛声明に示されたる三原則及び右に基き南京政府と締結せられたる条約及日満支共同宣言に明示せられたる原則を了承し且日本政府の善隣友好の政策に信頼し直に蒋政権に対し和平勧告をなすべし」

としています。「近衛声明に示されたる三原則」とは、「善隣友好、共同防共、経済提携」の三つ。
南京政府とは汪兆銘政権のこと。これは、おそらく日満支における「東亜新秩序」のことを意図したものと思われます。

つまり、

「蒋介石が政権の座から降りれば、あとは我々と汪兆銘との間で『9カ国条約の下』うまくやっていくんだから、アメリカさん、蒋介石に支援金や支援物資を送り続けたりせず、さっさと降伏勧告してくださいよ」

と松岡は言っているわけですね。
また南方の領土問題について、諒解案で米国側は、「フィリピン」の問題にしがみついているわけですが、これはフィリピンが当時米国の占領下にあったから。アメリカはこのフィリピンに対する「権益」にしがみついていたわけです。

ですが松岡とすれば、「そんなんどうでもいいから。さっさと蒋介石への支援をやめて和平勧告してくださいよ」といったところでしょうか。

これは、アメリカではなく欧州の東南アジアにおける領土問題に対して言及した部分がゴソッと削除されていることからも推察されます。

ともあれ、コーデル・ハルと日本との間の交渉は、この松岡修正案をベースに繰り広げられることになります。


次回記事では、この松岡修正案を受けて6月21日、米国側から提出された提案書をベースに記事を作りたいと思います。


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