第220回 GDPデフレーターと消費者物価指数の違い/どちらを見るべきか?②など、政治・経済を中心とした日常的な情報を、独自な視点で解析します。

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この記事のカテゴリー >>「物価」の見方


<継承する記事>
第219回 GDPデフレーターと消費者物価指数の違い/どちらを見るべきか?①

前回の記事では、「物価」が「原価」と「利益」によって構成されていること、安倍内閣の目指す「物価上昇」には、「原価」を構成する国内業者の利益をも確保することを目指しているんだ、ということをお伝えしました。

また一方でこの状況を目指そうとすると、商品を購入する人の意思に関わらず、「原価」そのものが上昇することとなり、結果的に消費者の意思に関わらず「物価」は上昇することになり、結果的に消費が減るのではないかと、ここまでお伝えしたと思います。


この状況を、「GDPデフレーター」を表す等式に当てはめて考えてみます。

 GDPデフレーター=名目GDP÷実質GDP

このうちデフレーターが「単価」、名目が「購入総額」、実質が「購入数量」になります。

「原価上昇によって物価が上昇する」ということは、この等式では「GDPデフレーター」に相当する部分が上昇するということです。
「名目GDP」は「購入総額」で、「GDPデフレーター×実質GDP」で表すことができます。

「消費が減る」ということは、GDPデフレーター=販売単価は上昇しているわけですから、残る「実質GDP」、つまり「購入数量」が減ることになります。

購入単価500円だったものが600円に上昇し、売上数量10個であったものが9個に減少したケースを考えてみます。

 購入総額(名目GDP)=購入単価500円×購入数量10個・・・①

こちらが変化する前の名目GDP。

 購入総額(名目GDP)=購入単価600円×購入数量9個・・・②

こちらが変化後の名目GDPです。

①の計算結果は6000円。②の計算結果は5400円ですから、名目GDPは減少していますね?

よく「名目GDPが上昇しても実質GDPが減少したのでは国民の生活はより苦しくなる」というような主張をする人がいます。
ですが、もし実質GDPが減少する、つまり購入単価が減るということは、それは名目GDP、すなわち「購入総額」が減少することを意味しています。

問題になるのは、「GDPデフレーター」、つまり「購入単価」の減少にあるのです。

さきほどもご説明しましたように、この場合の「購入単価」には、「原価」にも「売価」にも含めて「生産」や「流通」にかかわったすべてのセクションで「利益」を確保することができていますから、名目GDPが上昇するのであれば、たとえ実質GDPが減少したとしても、企業は軒並み利益を得ることができていることになります。

企業の利益は従業員の給与にも反映されますから、おのずと国民の生活は豊かになることになります。
企業の内部留保が問題になることはありますが、このケースではあえて外して考えます。

ですが「GDPデフレーター」、つまり「購入単価」に相当する部分が減少するのであればこれは企業が利益を削っていることになりますから、これは従業員の給与にも反映されますから、国民の生活を苦しめることになります。

この様に記しますと、いかに「名目GDP」を上昇させることが大切なのかということが分かります。
喩え実質GDP、つまり「購入数量」が減ったとしても、名目GDPさえ成長するのであれば、これは「国民の利益が増えている」ことを示しているのですから。


「GDPデフレーター」と「輸入物価」の関係

この様に記しますと、「確かに名目GDPが上昇すれば、国民の利益は増加するかもしれない。だが、『円安の影響で輸入物価が上昇すれば、そのことが原因で国内の物価が上昇し、企業の利益が圧迫されるのではないか」と主張する人が現れます。

ちょうど安倍内閣がスタートした当初のマスコミがまさにこれでした。
結果的にアベノミクスの影響で(と、私は考えています。※第162回の記事 をご参照ください)原油価格が大幅な下落に転じ、「輸入物価」全体も上昇するどころか、むしろ「急落」することになりました。

ただ、仮に「円安の影響で輸入物価が上昇する」ケースを想定してみても、「GDPデフレーター」で考えると、マスコミのこのような主張は実にナンセンスなものへと変わってしまいます。

「GDPデフレーター」とは、繰り返しになりますが「名目GDP」を「実質GDP」で割ったものです。
改めて「GDP」について考えますと、前回の記事 で掲載した以下の表で考えると、とてもわかりやすく考えることができます。

GDP.png

縦軸に「消費支出・投資・在庫」、横軸に「家計・企業・政府」を取り、これに「輸出」と「輸入」の項目を加えたもの。これが「GDP」です。

「輸出と輸入の項目を加えた」と記しましたが、計算式上加えられているのは「輸出」のみであり、「輸入」は逆にマイナスされています。「GDP」からは、元々「輸入額」はマイナスされているのです。

つまり、円高によるかどうかは別として、輸入物価が上がろうが下がろうが、元々計算式に加えらえていない値が変化したところで、「GDP」そのものには全く影響がありません。

「GDPデフレーター」も同じ。GDPデフレーターで考える以上、輸入物価上昇による物価上昇など、元々考慮する必要はありません。仮に輸入物価の上昇により国内の利益が圧迫されるのであれば、物価から輸入額を差し引いた値はマイナスになりますから、名目GDPは減少します。

「GDPデフレーター」で見るのが良いのか、「消費者物価指数でみるのが良いのか」と考えた場合、輸入額の物価に対する影響まで包括できているのかどうかという点ではGDPデフレーターの方が優秀だと考えられます。


「GDPデフレーター」と「消費増税」

ところが、2014年に行われた「消費増税」。この場合は少し事情が異なってきます。
消費税は、ある一定以上の売り上げを上げている企業が販売するものには一律で課税されますから、それこそ「消費者の意思に関わらず」物価が上昇します。

しかも、その「利益」はGDP的には「政府」の利益になります。
勿論、この利益分が翌年には「社会保障費」として国民に分配されますので、消費増税悪玉論とつなげるべきではないと考えていますが、少なくとも単年度で考えると「家計最終消費支出」からはマイナスされるのです。

「GDPデフレーター」には政府の収益も加算されていますから、増税による物価上昇も「インフレ」として影響を与えるのですが、企業の利益を圧迫し、国民の消費動向を鈍らせる要素となっていますから、増税年度に限っては異なる見方をする必要が出てきます。


「消費者物価指数」と「消費増税」

ところが、これを「消費者物価指数」で考えますと、実はもう少し正確な見方をすることができます。
このことについては、日本総研様資料 で、以下のように記されています。

消費税が課税される個別品目でみた場合、消費税率の引き上げ分(5%⇒8%)がフル転嫁されれば、税込み価格は約2.86%((1.08-1.05)/1.05≒2.86%)押し上げられる。消費者物価指数(除く生鮮食品)に占める課税品目の割合(経過措置の影響で4月に旧税率が適用される品目を除く)は6割程度であることから、増税分がフル転嫁された場合、消費者物価指数(除く生鮮食品)は約1.7%ポイント押し上げられる計算となる。


要は、消費増税が消費者物価指数に与える影響は前年同月比で1.7%程度ですよ、ということです。
これをそのまま信用すれば、という前提条件付きにはなりますが、消費者物価指数から1.7%マイナスすることで、消費増税の影響を除いた、おおよその物価動向を見ることができます。


次回記事では、この「消費増税の影響を除いた消費者物価指数」の推移について、「原油価格下落の動向」と「GDPデフレーター」を絡める形で記事を作成してみたいと思います。


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