第22回 ケインズ政策の限界など、政治・経済を中心とした日常的な情報を、独自な視点で解析します。

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前回の記事では、「日米構造協議」によって米国から強制された政策、「大規模小売店舗法の緩和」から「廃止」への流れについてご説明いたしました。

今回の記事では、「日米構造協議」によって米国から強制されたもう一つの政策についてご説明いたします。
そして、「ケインズ政策の限界」とは何か。このことをご説明することで、次テーマである「アベノミクスを問う」へとつなげたいと思います。

公共事業が悪者になった理由

第20回の記事でご説明いたしましたように、「日米構造協議」で日本が米国から強制されたこととして、

・1990年より10年間の間、継続してGNPの10%の公共投資を行う

ということが約束させられました。
その総額は430兆円です。1994年、村山富市内閣に於いて、その額は200兆円増額させられましたから、合計で630兆円の公共投資が国内に行い続けられたわけです。

税収で足りない部分に関しては建設国債で賄われるわけですが、このことで多く批判される政策でもあります。
現在の日本政府の国債発行残高が約800兆円ですから、そのうちの大半がこの時期に作られたのではないか、とする批判です。

米国とすれば、貿易赤字解消を狙って行った政策で、日本国政府が国内に投資を行い続けることで内需が拡大し、外需依存度が減るのではないか、という考え方があったわけですが、考えてみるとこの時期の日本はバブル経済の末期。
経済状況としては過剰なインフレ状態にあったわけです。

そこに更に国が投資を行ったりすれば、資金は更に飽和状態となり、国内ではなく海外にその資金が向かい、米国の貿易赤字は更にひどくなるのではないか、という想像が簡単にできます。

ただ、この政策が実施され始めたころ、株価の暴落を始め、既にバブル崩壊がスタートしていましたから、経済政策としてはぴったりと合う政策だったのではないでしょうか。

「デフレ」とは「供給過多」の状態を言います。供給量が多すぎて消費できないため資産や物品の価値が下落し、デフレが発生するわけです。

「ケインズ政策」とは、このように不景気が原因で消費や投資が起きず、失業率が拡大するような状況において、

・政策金利を引き下げることで市場の流動性を高め
・同時に政府が公共投資を行うことで金融機関に滞留した資金を循環させること

を目的とした政策です。デフレ期の政策で、バブルが崩壊する日本において、日米構造協議において日本が強制された政策は、実は最適な政策であったのではないか、と私は考えています。

ところが、小泉内閣や第一次安倍内閣においては「公共投資=悪」というイメージが世論にまで浸透しており、半ば「人気取り」を行うようなイメージでマネタリズム的思想を導入し、「聖域なき構造改革」というキャッチフレーズの下、公共事業狩りが推し進められたわけです。

では、どうして本来であればデフレ期にこそ効果を発揮すると考えられるケインズ型経済政策が批判され、「公共事業=悪」というイメージが国民の間に浸透してしまったのでしょうか。


最も大きな影響をもたらしたものは、村山富市内閣下、武村義正当時大蔵大臣にて発表された「財政危機宣言」。
政府債務の推移
歳出の推移

上記グラフは、第14回、および第16回の記事で、それぞれお示ししたグラフです。

政府債務の推移については、06年、07年のところをそれぞれ赤枠で囲んでいますが、見ていただきたいのは1994年、および1995年のところ。

当時武村大臣が財政危機宣言を行ったのが1995年。見ての通り、1980年以降、バブル期を経て、バブル崩壊以降まで、継続して政府歳出が増え、債務残高も増え続けていることがわかります。

このことから、武村大臣は「このままでは政府の借金が増え続け、いつか返済不能に陥り、日本の財政は破綻してしまう」との宣言を行ったのです。

ですが、第2回の記事でも既にお伝えしています通り、現状では日本の国債には破たんさせる方法がありません。

これは、当時と何か状況が変わったわけではありません。

1.日本国債は95%を金融機関をはじめとする日本人・日本国企業が保有している
2.日本は国内に通貨発行機関を保有しており、万が一返済不能に陥った場合でも、日銀が日銀券を発行し、直接返済することで破綻をまぬかれることができる


ということで、よほど悪意を持って破たんさせるための決議でも行わない限り、日本国債が破たんすることはないわけです。

ですが、当時の武村大臣が行った発言を下に、これから後、マスコミ報道を中心に、「このままでは日本の財政は破綻する」とのデマが吹聴されるようになります。

そして、「いつ破綻するかわからないのに、日本政府は『箱もの』ばかり作って無駄遣いをしている」との最もらしい風説が定説として日本国民の中に浸透していきます。

このことから、いつしか「公共事業=悪」であるような印象が、広く国民の間に浸透したことは事実です。

ですが、次はこちらのグラフご覧ください。
名目GDPの推移

1990年より10年間。1994年にさらに予算を追加し、総額で630兆円の公共投資を行ったはずです。
ですが、グラフで見てもわかる通り、1991年以降名目GDPはほぼ横ばい。

97年までは成長こそしているもの、98年には反転して下落に転じます。
第14回の記事において、1994年、および1997年の2回に渡って、日本の経済を大きく失速させる事件があったことはお伝えしました。

ですが、日米構造協議に基づく公共投資は継続して行われているはずですし、政策金利もバブル崩壊以降下落し続けています。
つまり、いわゆる「ケインズ政策」はずっと行い続けられているはずなのに、その効果は生まれていない。

つまり、「ケインズ政策」には限界があると考えられるわけです。

「ケインズ政策の限界」

もちろん、バブル崩壊後、実施された「ケインズ政策」において、その効果が失われた理由の一つとして、1997年4月に実施された「消費増税」による影響があることは否めません。
ケインズ政策とは、「金融緩和」と「財政出動」を同時に行うことが必要だとしています。ですが、消費増税はいわゆる「緊縮財政政策」ですし、97年、98年と連続して歳出額も縮小されています。

ですが、私はそれ以上に、バブル崩壊後のケインズ政策が効果を発揮しなかった理由は、「同一の分野」に「継続して支出が行われ続けたこと」にあったのではないかと考えています。

ケインズ政策の中で、「公共事業」が必要だとされる理由として、民間で消費や投資が行われない中、政府が民間に代わって仕事を作り、民間に発注することで、民間企業に収入が増え、これが給与として配分され、給与所得の増えた従業員がさらに消費を起こし、一度投じた政府支出が、2度、3度と繰り返し利用されることで、最初に投じた額以上の消費行動が行われることにあります。

このことを「乗数効果」と呼びます。

Wikipediaからの引用ですが、乗数効果とは、以下のような等式で表されます。

X+βX+β^2X+β^3X+・・・・X/(1-β)(β^2=βの2乗)

Xとは家計における給与所得の増額分。つまり、お給料がX円増えましたよ、ということです。一方βとは、増えた給与増額分のうち、消費に回された割合のこと全家計におけるその平均値です。

つまり、「X円給料が増えた過程では、(1-β)X円を貯金して、残りβX円のお買い物をします」ということです。
β円のお買い物をしてもらったお店ではβ円収入が増えるので、βX円のうち、さらにβ×βX円を消費に回します。この行動を繰り返して消費活動を国全体で起こします。

2倍になることは絶対にないのですが、仮にβの値が7であった場合、乗数効果は1.8倍に限りなく近い数字になります。
逆にβの値が3であれば、限りなく1.4倍に近い数字。

つまり、この乗数効果がどれくらい大きいのかということによって政府が行った支出の効果が変わってきます

国民の手元に増えた収入のうち、

どれくらいの割合が消費に回されたのかということを「消費性向」、
どのくらいの割合が貯蓄に回されたのかということを「貯蓄性向」

と言います。上記の式でいうと、βの値を「限界消費性向」、(1-β)の値を「限界貯蓄性向」と言います。

つまり、政府が行った投資がより消費性向の高い分野に行われればより高い経済効果がもたらされます
バブル崩壊後に行われた公共投資では、繰り返し土木・建築分野のみに投資が行い続けられたことで、やがて消費性向が低くなり、政府支出に対して発揮される乗数効果が弱くなったということではないかと考えているのです。

これは、「国債」が持っている法的な裏付け、その性格にこそ原因があります。
ケインズ政策にはいったい何が足りないのか。どのような方法をとれば日本国は「デフレ」から脱却できるのか。

次回は安倍内閣において提唱されている「三本の矢」。この言葉に着目して記事を進めてみたいと思います。
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