第214回 TPPと自由と繁栄の弧(回廊)構想/麻生太郎副総理の外交理念など、政治・経済を中心とした日常的な情報を、独自な視点で解析します。

ランキングサイト

この記事のカテゴリー >>TPP


<継承する記事>
第213回 TPPって何?/今更聞けないTPP協定批准までの経緯

TPPについて調べていて思ったのは、TPP交渉は単に関税を撤廃するためだけに行われているのではなく、関税を撤廃・もしくは削減した上で、さらに国家間で公正な貿易を行うための「ルール作り」を行っていたんだな、ということです。

特に日本が交渉参加を表明するまでは、どちらかというとFTA的な、「関税を撤廃した自由貿易圏を作る」というイメージが強く、あたかもアメリカが自国企業の利益のみを優先し、TPPに参加する他の国々を食い物にしているかのような印象が強くありました、その部分がピンポイントでクローズアップされていたのも事実です。

私はその内容までは把握しきれていませんが、少なくとも「甘利交渉」以降のアメリカの反応を見ていますと、日本が交渉に参加したことで、TPPがアメリカの思う通りにはならなくなった・・・という側面が強くなったのではないかと思われます。

日本は交渉参加することで、「国際取引のルール作り」を行ったんでしょうね。

内容をきちん咀嚼しきれていない以上、「推測」にすぎませんから、このことについての言及はここまでにしておきます。


TPPと「自由と繁栄の弧(回廊)」構想

今回の記事は、外務大臣時代の麻生さんが提唱した、「自由と繁栄の弧」構想について記事にしてみたいと思います。


とはいえ、「自由と繁栄の弧」構想については、既に 第6回の記事 である程度具体的に記していますので、どちらかというとその掘り起こしと「TPP」問題と関連する部分についてピックアップして記事にすることが目的になります。

「自由と繁栄の弧(回廊)」は別に「価値観外交」の名称でも知られています。
「価値観外交」について、外務省は、

『普遍的価値(自由、民主主義、基本的人権、法の支配、市場経済)に基づく「価値の外交」』

と説明しています。

自由と繁栄の弧

もう少しイメージしやすい画像もネットにはあるのですが、余りたのブログから拝借してくるのも何なので、外務省から画像をいただきました。

「自由と繁栄の弧」というのは、「アメリカ」「EU」「ロシア」「中国」という4つの地域を巨大な「経済圏」としてとらえ、アジアを中心とするそれ以外の国がお互いに連携することで、この4つの経済圏と対等に渡り合える関係性を築こうと、そういう考え方です。

「中国」に関しては「経済」という面も確かにあるのですが、あくまでも「自由と繁栄の弧」とは、「価値観外交」を目指すものであり、「価値観を一にする地域」との連携を図ることを目的としていますので、上記書籍上で麻生さんは共産主義を貫く中国は「価値観を一にする」とは考えていません。

ただ、実は「北朝鮮」はこの考え方に含まれています。

「北朝鮮」「韓国」「台湾」「ASEAN」「南アジア」「中東」「中央アジア」などのアジア諸国をはじめ、EUやロシアとの交渉をうまく進めるために「北欧」、拡大してオセアニア、環太平洋に至るまでこの考え方を拡大させています。

このイメージがちょうど「中国を取り巻くように」見えるため安倍内閣の「地球儀を俯瞰する外交」が「中国包囲網」などと揶揄されるわけです。「自由と繁栄の弧」のイズムはきちんと安倍内閣にも継承されているんですね。

ただ、すでにご理解いただいていますように、別に安倍内閣もまた、「中国」を包囲しているわけではなく、中国をはじめ、「EU」「ロシア」そして「アメリカ」を4つのブロックとしてとらえ、これらと対等に渡り合える経済圏を作ろうと考えているわけです。

ちなみに麻生さんは、「発展途上」にある国は、まだ成熟していないため、日本が積極的にかかわっていくことで「日本流の民主主義」を普及させることが可能だと考えています。

イスラム国を含む中東や北朝鮮が含まれているのはこの考え方が理由です。


「TPP」に加盟することを表明しているのは

「シンガポール」、「ブルネイ」、「チリ」、「ニュージーランド」、「アメリカ」、「オーストラリア」、「ベトナム」、「ペルー」、「マレーシア」

に日本を加えた10か国。

TPP.jpg
一般社団法事日本貿易会より

ベトナム・マレーシア・シンガポール、ブルネイは所謂ASEANに所属する地域。

オーストラリアとニュージーランドがオセアニア、カナダ・アメリカ・メキシコが北米、ペルー・チリが南米。
米国を除けば、全て「自由と繁栄の弧」構想に含まれる地域です。

勿論、この「自由と繁栄の弧」構想は前記した4つの経済圏、すなわちアメリカ、EU、ロシア、中国という4つの巨大な経済圏と対立しようというわけではありません。

元々十分な経済力も、国力も持っていない発展途上にある国々が、これら4つの経済圏と対等に交渉が行える力を持つということ。東南アジア諸国がベトナムやシンガポールなど一国一国ではなく、「ASEAN」という一つの経済ブロックを形成して日中韓やアメリカ、EUなどと交渉を行っているのと同じ発想です。

その旗振り役に日本がなろうということです。


「自由貿易協定」って、結局「輸出する側」がどのようなメリット受けるのか、ということだと思います。
米韓FTAで考えた場合、経済規模や人口の面から考えると、経済面で約70倍、人口面で約6000倍の開きがあるわけですから、韓国とすると当然「輸出先」としての魅力は非常に大きいものがあります。

ですが、一方でアメリカが韓国から受け入れるものと同等のものを韓国もアメリカから受け入れろと言われた場合、韓国にはアメリカほどの市場規模はありませんから、当然国内の産業としては壊滅的な打撃を受けてしまうことになります。

ですから、韓国の交渉方法としては、韓国が受ける被害をいかに最小限に抑えて、韓国が受ける利益を最大にするのかというスタンスでの交渉になります。

カナダ・アメリカ・メキシコの3国間で結ばれたNAFTAにしても同様で、カナダとアメリカはNAFTAを築く以前から同等の経済圏を築いていましたから、問題はメキシコが受ける被害をいかに最小限に抑えて、メキシコが受ける利益を最大化するのか、という交渉になるわけです。

アメリカとすれば、その規模から考えれば譲歩するための選択肢はたくさんあるわけですが、メキシコや韓国からすればその選択肢がもともと少ない。ですから、当然そのデメリット感はアメリカ以上に大きくなります。

ただ、メキシコは元々輸出入ともにその依存度がGDP比で約4割、韓国も米韓FTAを結んだ2010年の実績で同じく輸出入ともに約4割でしたから、その影響がそこまで大きかったのかというと、そこには疑問が残ります。


ところが、日本の場合、経済の規模がドルベースでアメリカの約1/4になりますから、TPPを交渉のテーブルに載せた場合、他のTPP交渉参加国に比べれば交渉する選択肢も多岐にわたることとなります。

日本とアメリカの間で行われた交渉に基づく選択肢は、そのままとまでは言わないまでも、各国の事情に合わせて他の参加国とアメリカとの間の交渉のテーブルにも挙げられることとなりますから、日本が参加する前と後とでは、当然米国にとっては日本だけでなく、他の参加国に対しても譲歩しなければならない内容が増えてくるわけです。

つまり、経済的に弱い国々が、ASEANの様にたとえ一つのグループにまとまって巨大な経済圏と交渉しようとしたとしても、とても「対等」といえるような内容にはなりません。

ですが、ここに「日本」という大国が一国入るだけでまるで事情は変わってくるのです。


次回記事では、「自由と繁栄の弧」構想の真の意味を、今度は今後交渉のテーブルとして浮上してくると想定される「RCEP」及び「FTAAP」に着目して記事にしたいと思います。


このエントリーにお寄せ頂いたコメント

URL:
コメント:
 

スポンサードリンク

Copyright © 真実を問う!データから見る日本 All Rights Reserved.
ほったらかしでも稼げるFC2ブログテンプレート [PR]