第185回 マクロ経済スライドの改定内容をわかりやすくご説明いたします。②など、政治・経済を中心とした日常的な情報を、独自な視点で解析します。

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<継承する記事>第184回 マクロ経済スライドの改定内容をわかりやすくご説明いたします。①
それでは、前回の記事の続きです。
もう一度厚生労働省が提出した法案の内、年金に部分に関する概要をお示ししたいと思いjます。

【マクロ経済スライドの改正内容】
年金額の改定ルールの見直し((1)は平成30年4月、(2)は平成33年4月施行)

公的年金制度の持続可能性を高め、将来世代の給付水準を確保するため、年金額の改定に際して、以下の措置を講じる。

(1) マクロ経済スライドについて、年金の名目額が前年度を下回らない措置を維持しつつ、賃金・物価上昇の範囲内で
前年度までの未調整分を含めて調整。

(2) 賃金変動が物価変動を下回る場合に賃金変動に合わせて年金額を改定する考え方を徹底。

「年金制度」とはもともと、

「物価や賃金が上昇すれば物価や賃金に合わせて年金支給額を上昇させ、
物価や賃金が下落すれば物価や賃金に合わせて年金支給額も減少させましょう」


というルールで運用されてきました。これを「物価スライド」または「賃金スライド」といいます。
当時のルールでは、物価か賃金の内、上昇する場合は上昇幅が少ないほうを、下落する場合は下落する幅が少ない方を採用しましょう、ということになっていました。

西暦2000年に物価が下落した時、本来であれば年金支給額を減らす必要があったのですが、この時の経済状況を鑑みて、年金の下落を据え置く、「物価スライド調整措置」というものが採用されました。

このスライド調整は3年間継続し、2003年からはこの措置が終了し、物価が下落した分年金支給額も減少することになりましたが、この3年間の間据え置いた分の「物価スライド据え置き分」が解消されないまま、現在に至っているのです。

マクロ経済スライドが導入された2004年の年金制度改定では、この「据え置き分」について、

「過去3年分の物価スライドの特例措置(1.7%分)については、平成17(2005)年度以降、物価が上昇する状況の下で解消する。 」

とされていますが、2006年~2008年にかけて物価は上昇に転じるのですが、この据え置き分が解消されることはありませんでした。(2008年にはリーマンショックが発生しましたね)

現在の安倍内閣において年金支給額が減少している様に感じるのは、安倍内閣においてこの時の「据え置き分」の解消がスタートしたからです。ですが、この据え置き分の解消はすでに2015年に終了しており、2015年以降は正規の「マクロ経済スライド」が適用されています。


では、そもそも「マクロ経済スライド」と何なのか?


実は、先ほど述べた「物価下落」に関する記述は「マクロ経済スライド」に関する説明ではなく、あくまでも「物価スライド」。
つまり、マクロ経済スライドが導入される以前から導入されていた制度に関する記載です。

厚労省の改正内容の内、「マクロ経済スライド」に関する改正内容は実は(1)のみ。(2)は「物価スライド」や「賃金スライド」に関連した記載内容です。

「マクロ経済スライド」とは、同制度が実施されるまでの「物価スライド」や「賃金スライド」制度に「スライド調整率」を導入した仕組みのことを言います。

「スライド調整率」が導入されるのは物価が上昇する場合のみで、下落する場合には導入されません。ということは、「マクロ経済スライド」とは「年金上昇率を抑えるための仕組み」ということになりますね?

【スライド調整率図解】
スライド調整率

内容は第112回の記事 と同じものになりますが、内容は上図のようなイメージです。

「スライド調整率」は現役世代の人口の伸び率や受給世帯の平均余命(何歳まで生きるのか)というデータに基づいて政府が独自に作成したもの。計算方法まではわかりません。

法律では、「受給権者が65歳に達した日の属する年度の初日の属する年の3年後の4月1日の属する年度」以前と以降で法律を分けて適用されることになっています。


「物価変動率」と「賃金変動率」

私、単純に「新規裁定者」は賃金スライドが、「既裁定者」は物価スライドがそれぞれ単純に適用されるものと思っていたのですが、法律によりますと、どうやらいくつか組み合わせがあるようです。

大枠で、

新規裁定者が「名目手取り賃金変動率が1以上である場合」と「1を下回る場合」、
既裁定者が「物価変動率が1以上である場合」と「物価変動率が1を下回る場合」

に分けられます。

【新規裁定者の場合】
・名目手取り賃金変動率が1を下回る場合(通常は名目手取り賃金変動率を基準とします)
物価変動率が賃金変動率を上回る場合・・・物価変動率を基準とする。


【既裁定者の場合】
・物価変動率が1以上である場合(通常は物価変動率を基準とします)
物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回る場合・・・名目手取り賃金変動率を基準とする

・名目手取り賃金変動率が1を下回る場合
物価変動率が名目手取り賃金以下である場合・・・名目手取り賃金変動率を基準とする。
物価変動率が名目手取り賃金を上回る場合・・・物価変動率を基準とする

となっています。
「マクロ経済スライド」とは、それぞれの「基準」に従って毎年物価、又は賃金上昇率を「スライド調整」します。
このスライド調整率が現在は0.9となっていて、基準となる変動率が0.9を上回った場合にのみ年金支給額が上昇します。

0.9以下の場合は変動しません。改定ルールの中で、

『(1) マクロ経済スライドについて、年金の名目額が前年度を下回らない措置を維持しつつ、賃金・物価上昇の範囲内で
前年度までの未調整分を含めて調整』

とされているのは、物価(もしくは賃金)が上昇する過程において、例えば物価上昇率が0.5であった場合。
スライド調整率を下回っていますが、その差額0.4がマイナスされることはありませんよ、ということです。

物価、もしくは賃金が上昇する過程においては、年金が前年度を下回ることはなく、0.9以上上昇すれば年金も上昇しますよ、ということです。

それでは、もう一つ。私が「マクロ経済スライドの改正内容」に記した、厚労省の法案。

(2) 賃金変動が物価変動を下回る場合に賃金変動に合わせて年金額を改定する考え方を徹底。
これはすでに現行法案にも記されている内容です。改正法案では、重複していたりわかりにくかったりする部分を整理してはいますが、記している内容は全く同じ内容を記しています。


今回の改正内容には、あくまでも「賃金変動が物価変動を下回る場合に賃金変動に合わせて年金額を改定する考え方を『徹底』」するとしているだけで、何か特別に変更しようとか、そういうことを書いているわけではありません。

マクロ経済スライド説明(玉木議員)

そもそも「年金を減らす新ルール」などという表現が間違っていることは簡単に理解できますね?
玉木議員の説明は、「現行法制度を守る必要はない」と言っているに等しいのです。

しかもこのケースが発生するのは、
物価上昇率が1%を上回る状況の中で、名目手取り賃金の下落率が物価上昇率の絶対値を下回る場合、

もしくは
物価上昇率が1%を下回る状況の中で、名目手取り賃金下落率が1%を下回る場合

のどちらかです。
しかも玉木議員は、この状況が「現在発生している」と言っていますが、現在名目手取り賃金は上昇し続けています。

【全労働者の内、1年以上継続で働いた労働者の平均給与所得(国税庁より)】
2015年国税庁平均給与推移
「手取り」というわけではありませんが、明らかに安倍内閣に入って以来、給与所得の名目値は上昇し続けていますね?

今年度の厚労省データを見てみましても、5月にこそ前年同月比で0.1のマイナスを記録していますが、6月は1.4%、7月は1.2%とプラス成長。また賃金に反映される「物価」とは「消費者物価指数(総合)」ですが、原油価格の下落の影響で、むしろマイナスを記録しています。

パターンとして、名目手取り賃金変動率が1以下で、かつ物価変動率が名目以下である場合以外、年金はマイナスされてしまうことになるんですが、玉木議員が本当に年金受給者のことを思うのなら、本当に問わなければならないのはこの事じゃありませんかね?

安倍内閣としては、これを補てんするため、年金受給者に対して年6万円の給付を行うことを考えている様ですが。
玉木議員も動画の終わり辺りでこのことに言及しており、この点に関しては自民・民進の意見は一致した、と考えてよいのでしょうか?

大切な国会の予算委員会なんですから、このような見当はずれのレッテル貼りに終始するのではなく、きちんと国民の方を向いた、国民にとって本当に必要な議題について、安倍首相を論破するためじゃなく、国民が分かりやすく理解するためにその時間を使ってもらいたいものです。


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