第18回 「流動性の罠」と「円キャリートレード」を問うなど、政治・経済を中心とした日常的な情報を、独自な視点で解析します。

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第16回の記事では、第一次安倍内閣における当時の安倍総理の経済に対する考え方を参考に、「デフレ脱却」を考える上では本丸といえる「流動性の罠」というテーマについて掲載いたしました。

「流動性の罠」とは、「政策金利が0%に近付けば近づくほど、中央銀行(日銀)の金融政策が無効化されてしまう」という考え方です。

政策金利とは預金を含むすべての金融商品の利率のベースとなる金利です。
これが0%に近付くということは、どんなに利率の高い金融商品を保有していたとしても、その価値がまったく増えない。増えないどころか下手をすると赤字になってしまうかもしれない、という状況を意味します。

ですから、企業も投資家も「投資」を行おうとせず、現金のまま資金を保有しようとするようになります。
現金の価値が、最も高くなる市場=デフレ社会です。

このような社会では、元本が保証され、政策金利よりは利益率が高くなることが保証されている資産、「国債」の人気が高くなります。
ですので、国債の売れ行きが良くなり、国債の金利の代表である「長期金利」がどんどん低くなります。それでも政策金利よりはましですから、特に利払いが発生する金融機関は、その資金を国債に投じようとするようになります。(この考え方は、流動性の罠を脱却する上で一つの重要な考え方になります)

ですが、「国債」は「流動性の低い資産」ですから、「国債」という資産状況のままでは資金を動かすことができません。
特に、国債は5年物、10年物、20年物、30年物までありますから、その間資金を動かすことができないということになります。(厳密には違うのですが、現時点ではそのようなものだ、と覚えておいてください)

ですから、その流動性の低い資産である国債を日本銀行が市場から買い上げ、流動性の高い資産である「現金通貨」に換えて市場に流す行為を「買いオペレーション(買いオペ)」と呼び、このように日銀が市場に流動性を供給する行為を「量的緩和」と呼びます。

ですが、「流動性の罠」に陥った経済状況では「現金通貨」の価値が最も高いですから、市場に流動性が供給されたところで、誰もその資金を借りようとはしません。(「借入」とは「投資」の一つの形態です。「借入」によって生まれた資産は、現金を現金のまま保有する行為とは異なります)

ですから、せっかく日銀が市場に流動性を供給したところで、誰もこの資金を利用しなければ、まったく意味がありません。
せっかく流動性を供給したのに、再びその資金が国債に回って終了。

資産を現金通貨のままで保有するということは、即ち誰もものを買おうとしない、誰も投資をしないということです。
その結果、金融市場に日銀が供給した現金通貨が蓄積し、経済は横ばいのまま停滞。もしくは市場規模が縮小し、名目GDPの値は下落し続けることになります。

これが、「流動性の罠」と呼ばれる経済状況です。


円キャリートレードを問う

第16回の記事 では、安倍内閣が「流動性の罠」と呼ばれる経済状況に陥った状況の中、なぜ税収を増やして公債債務残高を減らし、名目・実質GDPを成長させることができたのか、という疑問を投げかけ、「円キャリートレード」という言葉に着目して今回の記事を進めることをお示ししました。

これは、「マネタリズム」と「ケインズ型経済政策」を比較することが目的です。

安倍さん自身が言っているように、第一次安倍内閣で公債発行残高が減少した理由は、当時の安倍内閣が何か特別なことをしたわけではなく、「経済が回復し、成長したから」です。

小泉内閣における経済政策の影響が大きいのです。
ですが、多くの方がご存知のように、小泉内閣とは、「構造改革なくして景気回復なし」と喧伝していたように、「構造改革」=「緊縮財政」を中心に財政を運営していました。「聖域なき構造改革」という言葉が記憶に残っている方も多いのではないでしょうか。

では、経済活性化のために小泉内閣が何をしたのかというと、「金融緩和」と「規制緩和」。
「規制緩和」の代表といえるのが「郵政民営化」です。「民間でできることは民間に」という言葉が記憶に残っている方は多いと思います。

郵便局を4分社化して民営化された経緯を覚えていらっしゃいますでしょうか。
小泉内閣において、郵便局は「窓口業務」「郵便業務」「郵便貯金」「保険(かんぽ)」という4つの業務を別々に担う、4つの会社に分割されました。

いち早く分割されたのが保険事業。残る3事業は民営化こそされましたが、麻生内閣の折に民営化事業の見直しが提言され、さらに民主党内閣、当時国民新党亀井静香郵政大臣の下、株式の一般公開は凍結されました。(ただし、現安倍内閣では凍結は解除され、上場されることが決まっています)

一方で金融緩和に関しては「ゼロ金利政策」と「量的緩和」が行われました。「ゼロ金利政策」ですが、実質は「0.15%」。限りなくゼロに近づけたというところでしょうか。
加えて、月1.8兆円の国債の買い取りによる流動性の供給。

また、少し時代はさかのぼりますが、橋本龍太郎内閣において、「金融システム改革法」という法改正が行われました。
このことで、為替取引を含む金融市場の取引の上限が撤廃され、またそれまで窓口業務でしか行えなかった金融商品の取引が電子商取引=インターネット上で行えるようになり、また企業単位でしか行えなかった金融商品の取引が、個人単位でも行えるようになりました。

これらの法改正や金融・規制緩和の結果起きた現象が「円キャリートレード」と呼ばれる経済現象です。

世界一低い日本の金利。
日銀の量的緩和によって市場にあふれた資金。
金融システム改革法によって簡単に参入できるようになった日本市場での金融商品の取引。

橋本龍太郎内閣が誕生するまでは外資から守られていた日本の金融市場が、橋本龍太郎によって外資に対して解放され、
小泉純一郎内閣において行われた低金利政策により、外資がお金を借りやすい状況が生まれ、
小泉純一郎内閣下の日銀によって行われた量的緩和により、銀行がお金を貸しやすい状況が生まれた。

このことにより、米国や欧州の外資系金融機関が日本の銀行から莫大な資金を借り、サブプライムローンをはじめとするアメリカの不安定な金融資産に投資される、という流れが生まれます。このような資金の流れのことを「円キャリートレード」 と呼びます。

また、金融システム改革法では銀行窓口での投資信託も解放されましたから、こういった外資が運用する信託商品に対して、日本の一般人がお金を預ける、という流れも生まれます。

小泉内閣における経済成長は、「実感なき景気回復」とも揶揄されています。
小泉内閣において成長したといわれる経済とは、このように実体経済ではない、金融市場における経済成長であったということです。

このことが日本の「見た目の」経済を回復させ、小泉内閣を引きついた第一次安倍内閣において公債発行残高を減らすまで税収を増やしたのです。

郵政民営化も、350兆円にも上る、潤沢な郵政資金を、外資に対して解放し、海外へ流出させることが本来の目的であった・・・というとどう感じるでしょうか。

少なくとも、第一次安倍内閣までの安倍さんの考え方は、このようなマネタリズムに基づく経済政策こそ最良の経済政策であるという考え方が中心でした。

ですが、その結果起きたのがあのリーマンショックです。
日本から借りられ、アメリカに行われた投資から膨らんだ資金は実に6兆円。

全世界の現金通貨をかき集めても、とてもそんな額にはならないほどの資金が「電子商取引」上に生まれたのです。

そして、リーマンブラザーズが崩壊。全世界で、日本のバブル崩壊と同じような状況が生まれたのです。
証券は次々と紙くずと化しますから、我先にと現金化され、少しでもダメージが少なくなるよう、一斉に日本の銀行に返済されます。

このことによって、為替相場は全世界的に「円高」となり、同時に日本の株価も急落したのです。
このような経済状況から、日本だけでなく、全世界を立ち直るきっかけを作ったのが麻生太郎当時内閣総理大臣。そして故中川昭一当時財務大臣です。

彼らが用いた財政政策こそ「ケインズ型経済政策」。そして「高橋是清型経済政策」でした。

次回はいよいよ、「デフレを脱却する方法」。「流動性の罠」に陥ったデフレ社会から、日本経済を立ち直らせるための方法についてお示しします。
このシリーズの過去の記事
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