第159回 GDP1次・2次速報、確報値の違い/三面等価の原則のバイアスなど、政治・経済を中心とした日常的な情報を、独自な視点で解析します。

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第140回 2016年度(平成28年)GDP第一四半期速報が公表されました

【前回までの振り返り】
昨日(2016年9月8日)の私のブログへのアクセス状況を見ていますと、第140回の記事 へのアクセスが増えていました。

日本経済

理由はこちら。

【朝日新聞 2016年9月8日10時20分】
実質GDP改定値、年率+0.7%に上方修正 設備投資上振れ

[東京 8日 ロイター] - 内閣府が8日発表した2016年4─6月期実質国内総生産(GDP)2次速報値は、前期比プラス0.2%(1次速報値プラス0.048%)、年率換算ではプラス0.7%(同プラス0.2%)と上方修正された。設備投資や民間在庫投資の上振れが寄与した。 

 ロイターの事前予測調査では、中央値が前期比プラス0.0%、年率プラス0.0%だった。

 財務省が1日に発表した法人企業統計を反映させた結果、民間設備投資は1次速報値の前期比マイナス0.4%からマイナス0.1%に上方修正された。

 民間在庫投資の寄与度はマイナス0.0ポイントからプラス0.1ポイントに改定。在庫自体は積み上がっており、1次速報値と比べて1─3月期から増加幅が拡大したことが要因となった。電子通信機器などの原材料在庫や仕掛品在庫が増加した。

 公的固定資本形成は前期比プラス2.6%と1次速報の同プラス2.3%から上振れた。個人消費は前期比プラス0.2%と変わらずだった。

 一方、名目GDPは前期比プラス0.3%、年率プラス1.3%。1次速報では前期比プラス0.2%、年率プラス0.9%だった。

タイトルにも掲載しました通り、昨日2106年度(平成28年度)第一四半期(4~6月期)のGDP二次速報が発表されたからです。
ただ、やはり検索後、表示されるのは一次速報の記事。やはりせっかく二次速報の情報を求めて検索をかけてくださったのに、一次速報の情報しか載せていないのは申し訳ないな・・・と思うわけです。

また、第156回の記事 に於きまして、正確性を欠く情報を掲載してしまっていたことが判明しました。

【今回のテーマ】
そこで、今回の記事では、第156回の記事 に掲載した内容の修正と共に、昨日掲載された「二次速報」のニュースをベースに、一次速報と比較して、私なりの意見を掲載してみたいともいます。


「GDP一次速報」と「GDP二次速報」、「確定値」の違い

既に第157回の記事 で誤った情報を掲載していたのはこちらの部分です。改めて今回の記事でこのことを改めて解説いたします。

「GDP(国内総生産)」というのはそもそも「一定期間内で日本国内で行われた『生産』の総額」を現した言葉です。
ですが、普段私たちが目にする「GDP」とは、「生産」ではなく「消費」の総額を目にしています。

これは、例えば「A」という商品を考えた場合。「A」という商品は通常で考えれば、

「原材料費」+「付加価値(利益)」


という二つの項目で形成されています。「原材料」を組み合わせて一つの製品を作ったとしても、これが「消費」に回されず(出荷されず)代金を受け取ることができなかったとすれば、この流通経路の中で発生した「生産額」は「原材料費」のみ。
つまり、原材料を生産し、出荷することができた元請けまでで「生産」は終了しているわけです。

ところが、これがきちんと「出荷」または「消費」され、きちんと代金が支払われれば、「原材料費」+「付加価値(利益)」という二つの項目で形成された商品「A」が生産されたこととなり、『商品「A」の「代金」』全額が「生産額」として計上されることになります。

つまり、本来であれば「支払われた代金」と「受け取った代金」は同額となるはずです。
この時、

・「支払われた代金」を集計して統計を取った集計結果を「支出面から見たGDP」
・「受け取った代金」を集計して統計を取った集計結果を「生産面から見たGDP」

といいます。また、「生産側」が受け取った代金は、生産側の「所得」として計上されるのですが、この計上された「所得」はなにがしかの方法で「分配」されます。

例えば企業の所得で考えた場合、販売によって得た収入は従業員の「賃金」であったり、電気代や家賃などの「支払い」であったり、固定資産税や所得税などの「税金」であったり、最終的にどこにも分配されなかった収入は「収益」として企業内部に貯蓄されることとなります。

この様に、

・「分配された資金」を集計して統計を取った集計結果を「分配面から見たGDP」といいます。

本来この3つの項目。

「支出」「生産」「分配」の3つの側面から見たGDPは完全に一致しなければなりません。

この事を「三面等価の原則」といいます。

【「支出面から見たGDP」と「生産面から見たGDP」の間の「バイアス」】

ところが、実際にはこの「支出面から見たGDP」と「生産面から見たGDP」の間には開きがあります。
つまり、二つのGDPの間では「一致性」が見られないのです。

【支出面から見たGDP】
「支出面から見たGDP」、つまり私たちが最も一般的に見ている「GDP」では、日本国の中で生産され販売された数多(あまた)の商品群の中から、代表的ないくつかの商品を抽出し、「加重平均」を取ることによって算出されています。
(「加重平均」の計算方法については第53回の記事 をご参照ください。)

第158回の記事 で「消費者物価指数」の「10大項目」のことを具にご紹介しましたが、消費者物価指数を算出する際も同じ方法がとられています。

ただ、「加重平均」を取る際に用いる「ウェイト」。

ウェイトとはすなわち、第157回の記事第158回の記事 をそれぞれご参照いただければ「ウェイト」についてもイメージをしやすいと思うのですが、消費全体を10000と考えた場合、それぞれの項目の重要度が1万分のいくつになるのかということを指標化した数字のことです。

この「ウェイト」の決定方法として、「需要(支出)側から見たウェイト」と「供給(生産)側から見たウェイト」の二つの指標を用いて「支出側から見たGDP」は計算されています。よく名称として登場させている「コモディティーフロー法」とは、このうち「供給側から見たウェイト」を算出する際に用いられています。

「コモディティーフロー法」とは、「供給サイド」に於いて生産された「生産物」が、様々な流通過程。「運送」や「卸し」「小売り」等様々過程で発生する「経費」等を含めて、どのような経緯を経て消費者によって「消費」されるのか。

これを大本である「工業統計表」、「商業統計表」、「事業所統計表」(経済産業省)などから得られる基礎統計指標に、総務省が作成している「産業連関表」によって算出された「分配率」を各項目別にかけて算出された値が「供給(生産)側から見たウェイト」になります。この「供給(生産)側から見たウェイト」を算出するために用いられている計算方法を「コモディティーフロー法」といいます。

その品目数は工業統計表だけでも2000品目にも及ぶのだそうです。

一方、「需要(支出)側から見たウェイト」とは総務省が作成している「家計調査」や「家計消費状況調査」といった統計指標を用いて作成されます。

この二つの「ウェイト」を統合することによって名目GDPの内「家計最終消費支出」は算出されます。
統合の仕方としては、「支出側から見たウェイト」と「生産側から見たウェイト」の開き。これが大きければ「重要度が低い」と考えられ、ウェイトが少なめに、逆に開きが小さければ「需要度が高い」と考えられ、ウェイトも大きめに設定されます。


「確定値」の段階ではコモディティーフロー法の大本となる経済指標に先ほどお示しした「工業統計表」、「商業統計表」、「事業所統計表」が用いられるのですが、速報を発表する段階ではまだこれらの統計指標は出来上がっていないため、「鉱工業指数」や「生産動態統計」、「特定サービス産業動態統計」等の、月次や四半期で発表される統計指標を用いて計算しています。

但し、一次速報値では「生産動態統計」、「特定サービス産業動態統計」の最終月のデータがまだ発表されていないため、昨年のデータから「前年同月比」等を用いて推計し、算出しています。


「支出面から見たGDP」を算出する際に用いられた「需要(支出)側から見たウェイト」と「供給(生産)側から見たウェイト」ですが、この二つの値は本来であれば同じ値にならなければなりません。

ですが、その値に開きが生れる理由は「サンプルの取り方の違い」にあります。
つまり、同じ項目の中でも、「生産側が供給したサンプル」と「支出側が需要したサンプル」が一致しない、ということです。

【生産側から見たGDP】
この様に、「支出側から見たGDP」を計算する際には「コモディティーフロー法」という方法が用いられるのですが、一方で「生産側から見たGDP」を算出する際には「付加価値法」という方法を用いるのだそうです。

考え方としては、コモディティーフロー法では既に出来上がった「成果物」が消費者の手元に届くまでにどのような経緯を経て消費者の手元に届いたのか、という考え方をしています。これは先ほどご説明した通りです。

メーカーを基準にして考えてみます。メーカーで出来上がった成果物は、

「どのような経緯を経て成果物は消費者の手元に届いたのか」、と考えるのが「コモディティーフロー法」。
「どのような経緯を経て成果物は制作されたのか」と考えるのが「付加価値法」。

全く別物ように感じられるかもしれませんが、例えばスーパーマーケットで考えた場合。

商品そのものはメーカーのところで出来上がっていますが、スーパーマーケットでは、商品を入荷し、利益設定を行い、販売員が店頭に並べ、レジを通過して消費者の手元に届いて初めてそれが「成果物」となるのです。

ですから、流通全体で考えると「販売された時点で成果物に投入された中間投入額」と「成果物が消費者の手元に届くまでに消費された中間消費額」は本来イコールになるはずなのです。

ですが、現実にはこれは一致しません。これは「サンプルデータの違い」によるものです。


2106年度(平成28年度)第一四半期(4~6月期)のGDP二次速報の評価

ということで、今回発表された「二次速報」に関する評価です。
私が着目している「家計消費支出」に関して言えば、コモディティーフロー法を用いる際に使われている「生産動態統計」や「特定サービス産業動態統計」等が、二次速報では前年度実績からの予測ではなく、今年度の実績に変わった、ということになりますね。

GDP全体では、

<一次速報>
2016年度第1四半期の名目GDP 125.1兆円(前年同月比 1.31%)
2016年度第1四半期の実質GDP 129.8兆円(前年同月比 0.55%)

<二次速報>
2016年度第1四半期の名目GDP 125.3兆円(前年同月比 1.478%)
2016年度第1四半期の実質GDP 130兆円(前年同月比 0.76%)

という変化です。一方、家計最終消費支出では、

<一次速報>
2016年度第1四半期の名目家計最終消費支出 69.7兆円(前年同月比 -0.38%)
2016年度第1四半期の実質家計最終消費支出 73.3兆円(前年同月比 0.33%)

<二次速報>
2016年度第1四半期の名目家計最終消費支出 69.7兆円(前年同月比 -0.37%)
2016年度第1四半期の実質家計最終消費支出 73.3兆円(前年同月比 0.33%)

ほぼ横ばいですね。名目がやや改善している程度です。ただ、

<一次速報>
2016年度第1四半期の名目民間住宅 3.6272兆円(前年同月比 4.4%)
2016年度第1四半期の実質民間住宅  3.3417兆円(前年同月比 5.6%)

<二次速報>
2016年度第1四半期の名目民間住宅 3.6298兆円(前年同月比 4.4%)
2016年度第1四半期の実質民間住宅  3.3432兆円(前年同月比 5.6%)

これは、GDP速報値の内、「輸入物価変動」の影響を受けず、また単独データであるためサンプルバイアスの影響も受けにくいと考えられる「民間住宅」の変動を示した数字です。また、「住宅」はいわゆる「消費者物価」の中で最も高価な買い物になります。

前年同月比の割合そのものは横ばいに見えますが、名目で26億円、実質で15億円、それぞれ上昇していますね?
微々たるものではありますが、この分野の改善は、「輸入物価」と「国内重要」が混在して見えにくい「家計消費支出」の状況を類推する上で、非常に心強いデータだと思います。

第157回の記事第158回の記事 で、それぞれ「消費者物価指数」のことを記事にしました。

ただ、「消費者物価指数」とは、確かに消費の活況状況を示す数値ではあるのですが、「どのような理由で上昇したのか」という理由が推測に頼るしかない部分があるのも事実です。

ですが、GDPにおける「民間住宅」の項目は、これは言い換えれば「売上金額」の総額の推移を示しています。
実際にこれだけの金額が「前年よりも売れていますよ」という数字です。

この数字が名目4.4、実質5.6も、それぞれ上昇していますよ、という情報なのです。
第156回 の賃金の情報と同様、「実質」が「名目」を上回っていることになります。

この状況を説明すると、「昨年、2015年と比較して、住宅の販売総額の伸び率を、住宅の販売件数の伸び率が上回りましたよ」ということになります。

例えば、住宅メーカーが昨年に比べて住宅を安売りしたのでしょうか?
ですが、売上高が4.4%も上昇する中で、わざわざ値段を下げる必要もないでしょう。

第157回の記事 でもお伝えしたように、「住居:持ち家に帰属する家賃を除く」の物価は前年と比較して0.5%上昇していましたね?

即ち、住宅の売単価もまた平均して上昇しているということです。
にも関わらず、売上総額以上に売り上げ件数が上昇しているというのはどういうことでしょう?

一番考えられるのは、「可処分所得」の増加です。
名目賃金が上昇した上に、原油価格の下落により、輪をかけて「可処分所得が増えている」ということをこのデータは示しているものだと、私は思います。

この情報を見ても、「消費が減退している」という考え方が、いかに底の浅い考え方であるのかということが分かります。

【次回テーマ】
次回記事では、もう一つの経済指標「7月度月別税収」の情報が今月頭に更新されていますので、こちらもご紹介したいと思います。



このシリーズの過去の記事
>> 第164回 生産側のGDPと支出側のGDP/統計上の不突合とは?
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