第157回 グラフで見る消費者物価指数/消費は本当に減っているのか?(前編)など、政治・経済を中心とした日常的な情報を、独自な視点で解析します。

ランキングサイト

この記事のカテゴリー >>「物価」の見方


<継承する記事>
第156回 名目賃金と実質賃金/2016年7月(速報)

※こちらは2016年7月度の消費者物価指数に関する記事です。記載漏れしていました。
【前回までの振り返り】
前回の記事では、今月発表された、2106年7月の「賃金指数」に関連して、その特徴について記事にしました。

おさらいをしますと、「名目賃金が1.4%上昇する中で、それを上回るペースで実質賃金が2.0%上昇した」ということ。
この部分に集約されます。

通常は名目上昇率を実質上昇率が下回るものなのですが(上回る時は名目の値がプラスではなくマイナス)、この常識を覆すレアな経済現象が起きたということです。

その理由として、名目賃金が上昇する中での原油価格の下落に伴うエネルギーの価格の下落が、名目賃金上昇に上乗せして、所得に占める「可処分所得」を増やしたということ。このことで「消費量」が増え、結果的に実質賃金を上昇させたということを記事にしました。

「物価」

【今回のテーマ】
ところが、私のお話しする「消費者物価指数」の話。
つまり、「原油価格の下落に伴ってエネルギー価格は下落したけど、それ以外の項目では物価は上昇しているんですよ」という話を、なぜかご理解いただけない方がいらっしゃいます。

「結局 『家計の消費』 は減っているんでしょ?」と。

そこで今回の記事では、多くの方が誤解している「消費」について、「消費者物価指数」を「10大項目別」にグラフ化する事でご理解いただけるような記事を作成してみたいと思います。


「消費者物価指数」総合の推移

【消費者物価指数(総合)】
消費者物価指数(総合)

まずは全体像から。「消費者物価指数」というのは、「基準年」と比較してそれぞれの項目がどれだけの割合成長しているのか、基準年を「100」と考えて、成長率を割合で示した数字です。今年度より、「2015年」、つまり昨年が基準年に代わっているため、昨年の物価の平均が「100」とされています。

青いラインが「総合」、オレンジのラインが「生鮮食料品を除く総合」、そしてグレーが「食料およびエネルギーを除く総合」です。
それぞれCPI、コアCPI、コアコアCPIといいます。期間は2014年7月~2016年7月までの2年間です。

ただ、私最近いろいろなデータを見てきて、「CPI」はともかく、「コア」や「コアコア」で見る指標に本当に意味があるのだろうかと、疑問を抱くようになりました。

確かに、コアCPIの様に季節の変動の影響を受けやすい「生鮮食品」を全体のCPIから除外してみることに意味はあるのかもしれません。

ですが、その後の数字からは「輸入物価」の影響を顕著に受ける「エネルギー価格」が除外されておらず、特にこのところのエネルギー価格「のみ」が下落し続ける「物価」を見るときの指標としては全く参考にならない指標なのではないかと感じています。

また、「コアコア」で見た場合も、季節の変動を受けやすい「生鮮食品」と「エネルギー価格」をともに除いたデータであるのならばまだ納得できるのですが、なぜかここからは生鮮食品だけでなく、「食品」全体が除外されてしまっています。なぜこのような指標の取り方をするのでしょうか。私には非常に疑問です。

以上のような内容を踏まえて先ほどのグラフを見てみると、今年に入ってから「食料およびエネルギーを除く総合)=コアコアCPI」のみが100を上回っており、「総合」および「生鮮食品を除く総合」はともに100を下回っています。100の赤いラインより下で推移していますね?

実は、これが「消費が伸びていない」とされる理由です。つまり、物価を総合して計算すると、今年に入ってから継続して2015年を下回る金額でしか消費者は商品を購入していないことになるからです。


「食料」の消費者物価指数の推移

ですが、「食料」と「エネルギー」を除けば消費者物価指数はプラスで動いているわけですから、消費者物価を下落させている理由は、「食料」か「エネルギー」、又はその両方にあるのではないか、と考えるのが普通なのではないでしょうか。

【消費者物価指数(食料)】
消費者物価指数(食料)

「10大項目別」で考えると、「食料」という括りになるのですが、「食料」の項目は「生鮮食品」と「それ以外の食品」で異なった動きをしますので、統計局は「食料」と同時に「生鮮食品」と「それ以外の食品」を分けてデータを掲載しています。

生活の基盤となる項目ですから、ここが上がりすぎると「生活が困る」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、前段でもお伝えしました通り、消費者物価指数は「消費された」ものしかカウントしません。

店頭に100円のパンと200円のパンが並んでいたとき、200円のパンを選ぶ人が多ければこの店のパンの「物価」は上昇することになります。こういう考え方です。

「生鮮食品」と「それ以外の食品」を分けてみますと、その両者で随分異なった動きをしていることが分かります。
「生鮮食品」は季節によって物価が大きく上下しているのに比較して、「それ以外の食品」に関しては非常に安定して、緩やかに上昇し続けていることが分かります。

【食料品の物価上昇率(前年同月比)】
食料:前年同月比

「前年同月比」に関していただきたくないのは、グラフで見かけ上下落している様に見えても、「前年同月比」の数字が正の数であれば、これは「昨年に比べて上昇している」ことになります。下落しているように見えるのは、「前年と比較して上昇率が緩やかになっている」だけであり、「下落している」わけではないということに留意して資料をご覧ください。

逆に数値が負の数であれば、これは物価が昨年と比較して「下落している」ことになります。
このことを踏まえて「前年同月比」のグラフを見ていただくと、「生鮮食料品」は激しく上がり下がりを繰り返しているものの、それ以外の食品に関しては、確かに伸び率は緩やかになってこそいますが、1%を超える水準で上昇し続けていることが分かります。

ちなみに、物価指数の推移を示したグラフで、タイトルの右側に示している「ウェイト」とは、10に分けた項目別の「重要度」のようなものです。日本で国民が消費する「消費物」全体を10000であると考えて、「量」と「金額」の両側面から考えた消費される「規模」を数値化したものです。

「食料」であれば、消費物全体1万分の2623を「食料」が占めていて、このうち414を生鮮食料品が、2209をそれ以外の食料が占めていますよ、ということです。つまり、生鮮食品は今年に入って確かに「マイナス」を記録していますが、食品全体としての影響はそれほど大きくありませんよ、ということになります。


「住居」の消費者物価指数の推移

「食料」に続いて「ウェイト」が大きいのが「住居」です。

【消費者物価指数(住居)】
消費者物価指数(住居)

ほぼ横ばいですね。ややマイナスを記録しているものの、ほぼ「ゼロ」です。
実は、「住居」が伸び悩んでいる原因の一つに「家賃」の問題があります。

「住居」の項目はさらに「持家の帰属家賃を除く住居」、「家賃」>「持ち家を除く家賃」、「設備修繕・維持」となっています。

このうち、もっともウェイトが大きいのが「家賃」で、「住居」全体のウェイト2087中1782が「家賃」です。下落しているのはこの項目なのです。「持ち家の帰属家賃を除く住居」は2016年7月の時点で昨対0.5ポイント上昇、設備修繕・維持は同じく1.2ポイント上昇しています。比較して「家賃」は0.3ポイントの下落。

「家賃」は7月だけでなく、継続的に下落し続けています。おそらく、これは原油価格の下落に伴ったエネルギー価格の下落が原因なのではないかと推測しています。飽くまでも推測であり、明示できるような根拠があるわけで張りません。

ちなみに「持ち家の帰属家賃」というのは、「もしこの家が自分の家ではなく借家だったら、一体いくら家賃を支払っているのか」というフィクションに基づく数字です。家賃全体がマイナスですから、当然「持ち家の帰属家賃」も下落しています。

ちなみに、「家賃」のウェイトが1782で、内「持ち家の帰属家賃を除く家賃」は283。
つまり、本当に「家賃」として支払われている家賃は1782中たった283で、残る1499は「持家の帰属家賃」。つまり、本当は家賃として支払っていないんだけど、もし払っていたとしたらこれくらいになる、という金額です。

日本の「物価」からはこのようなフィクションに基づく数字が物価全体からマイナスされているんです。「住居」のウェイトは「食料」に次ぐ2番目の規模を誇っています。このうち最も大きいのが「家賃」で、そのうち最も大きなウェイトを占めるのが「フィクション」に基づく数字。

なんでこんな数字を入れ込んでいるのか、私には理解できません。


「交通・通信」の消費者物価指数の推移


【消費者物価指数(交通・通信)】
消費者物価指数(交通・通信)

次にウェイトが大きいのがこの「交通・通信」の分野で1476。見ての通り、グラフはもろに右肩下がりです。
実は、「消費者物価指数」に対して最も足を引っ張っているのはこの部分です。

「交通・通信」の項目は「交通」「自動車関係費」「通信」の3つで構成されています。
「交通」が0.00、「自動車関係費」が-3.9、「通信」が-1.3です。この中で、やはり大きいのは「自動車等関係費」の下落でなんと-3.9%の下落。「自動車等関係費」のウェイトが836で、このうち「ガソリン」のウェイトが206.マイナス幅は14.4となっています。

これは間違いなく「原油価格の下落」による影響ですね。できれば「自動車関係費」を構成する他の科目も知りたいところです。


「教育娯楽」の消費者物価指数の推移

【消費者物価指数(住居)】
消費者物価指数(教養娯楽)

次に大きいのがこの「教養娯楽」という項目。
何を差すのかがつかみにくい項目ですが、調べてみると「教養娯楽耐久財」や「教養娯楽用品」などがこれに該当するそうです。
「教養娯楽耐久財」とは、「耐久財。テレビ・音響映像機器・パソコン・カメラ・楽器・学習机」などの教養や娯楽、趣味の分野に用いられる「家電」や「家具」のことを言うようです。

「教養娯楽用品」は、もう一つある項目「教育」が「授業料等、教科書・学習参考教材など」ということですから、「教養」「娯楽」「趣味」に関係する用品で、それ以外のもの、ということになるんでしょうかね。線引きは詳細には把握しきれていませんが、このグラフも上がったり下がったりを繰り返していますね。

ただ・・・

【教育娯楽の物価上昇率(前年同月比)】
教養娯楽:前年同月比

こちらは同じ「教育娯楽」の物価指数を前年同月比で示したものです。
今年の7月に1%を割り込んではいるものの、「昨対」という観点で見れば安定して物価上昇を続けていることが分かります。

但し、この項目の内「教養娯楽用耐久財:テレビ」に関しては-11.9%と大幅に下落しています。
後程「家庭用耐久財」も出てくるのですが、ここも-4.5%と下落。この家電グループの物価下落に関してはきちんとした理由を別途調べる必要がありそうです。


「光熱・水道」の消費者物価指数の推移


【消費者物価指数(光熱・水道)】
消費者物価指数(光熱・水道)

次にウェイトが大きいのはこちら。745になります。
見ての通り、個々も完全なる右肩下がりですね。

「ガソリン」を除くエネルギーはほぼこちらに入ると思いますので掲載してみますと、

・電気代(ウェイト356) 前年同月比 -8.2%
・都市ガス(ウェイト116) 前年同月比 -14.4%
・プロパンガス(ウェイト:65) 前年同月比 -2.5%
・灯油(ウェイト41) 前年同月比-25.4%

となっています。全て合わせて578/10000にすぎませんが、

物価が上昇している項目の10倍近い規模で物価が下落していることになりますから(単純計算でも578×10=5780←578×0.1=57.8 の誤りです。思い込みで暴走してしまいました)、これらエネルギー価格が物価下落に及ぼしている影響は非常に大きいです。
(※誤解を与えかねない計算式を示してしまいましたので補足です。例えばウェイト2000の項目の物価が1%上昇したとしたら20上昇したことになります。ですが、エネルギー項目を仮に500と考えた場合、上昇する規模が10とすると、2000の項目が20しか上昇していないのに、エネルギー項目だけで50上昇することになります。この発想を述べています)


これにガソリンを加えると全体で784、エネルギートータルでの前年同月比は11.3%の下落です。
いかがでしょう。これまでの項目を見ても、「エネルギー価格の下落」が物価全体に与えている影響がどれほど大きいかということはご想像いただけましたでしょうか。

記事が少し長くなりすぎていますので、後半残り5項目は次回記事に託しまして、今回はここまでで記事を終了いたします。



このシリーズの過去の記事
>> 第158回 グラフで見る消費者物価指数/消費は本当に減っているのか?(後編)
このシリーズの新しい記事
>>

このシリーズの一覧をご覧になりたい方は >>「物価」の見方 よりご確認ください


このエントリーにお寄せ頂いたコメント

以前もお話ししたことありましたが、統計に現れない単身者がより高額になる食料品の消費者物価の信頼度って(;^_^A
以前の内容でコンビニの袋詰めポテトサラダを買うのは単身男性が多いです。スーパーの簡易パックポテトサラダ副材は家庭向けなのでポテトサラダの副材は胡瓜が主ですが、コンビニポテトサラダ副材はベーコン等味の濃い物で、単価は、はり、酒の肴向けです。単身男性ですから家計調査には入りません。 又、理解されない方々には朗報。台風の影響で北海道の野菜が壊滅的で、馬鈴薯、玉葱、南瓜は凄く高くなります。理解しない以外の多くの国民には迷惑ですが。件のサイトは不就労が多いから(;>_<;)
かっ at 2016/09/10(土) 01:37 | URL

被せてすみません_(._.)_
家賃ですが、
此も他でお話ししましたが、関東圏は工場設置用の土地が見つからないです。工場自体への機械の投資案件は伸び、投資していますが、、建てやは殆どが出来ません。工場が建てられるぐらいの土建業は皆、オリンピック及び道路工事に持ってかれており、民間が使えないからです。
人口移動を見ても、
例年通常だと地方から都市部へ1000万以上の流入は東京、千葉神奈川、埼玉、愛知、大阪、福岡に異動があり、地方から学生、就職、転勤により発生します。
今年、1000万以上は大阪以外は東京、神奈川のみ。東京、神奈川がオリンピック関連の出稼ぎが多く、
内訳として、今年の採用は現地採用が多く、企業の転勤が少なかった。(工場が出来ないから人をその地域に囲わず、本支店への異動も少ないため)
人の異動が無いから、家賃への新規契約も少なく、特に家賃の消費者指導が強い東京は礼金が取れなくなっていて、その分、家賃に添加して回収するため去年まで東京家賃相場はデフレでも上げ潮でしたが、今年は新規契約か無いため下げ相場になりました。

詰まりは、オリンピックと言う過剰な受容から企業が組織改変出来ず、家賃相場が下がったかと(●^o^●)
此で、勘違いして地上げでもしたら誰かが大好きなフィーバー土地バブルになりますねヽ(^○^)ノ
かっ at 2016/09/10(土) 02:07 | URL

かっさん、いつもありがとうございます(*^^)v

いつも記載内容にうなずかされてしまいます。
家賃の記述は本当に参考になりますね(;'∀')
のんき at 2016/09/12(月) 16:57 | URL

URL:
コメント:
 

スポンサードリンク

Copyright © 真実を問う!データから見る日本 All Rights Reserved.
ほったらかしでも稼げるFC2ブログテンプレート [PR]