第147回 ニューディール政策とブロック経済の違い/世界恐慌後の世界など、政治・経済を中心とした日常的な情報を、独自な視点で解析します。

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この記事のカテゴリー >>十五年戦争(日中戦争)の原因と結果


<継承する記事>
第145回 五・一五事件と二・二六事件の違いをわかりやすく検証します

【前回までの振り返り】
前回までの振り返り・・・というより、今回は今一度 今シリーズ 第1回目の記事 を振り返ってみます。



こちらは同記事でもご紹介している動画です。私が日本の「歴史」を改めて考えなおすきっかけとなった動画です。
動画では、近代化を果たした日本が、特にアメリカやヨーロッパからの「外圧」で、欧米と戦争する以外に選択肢がなくなり、やむを得ず大東亜戦争(太平洋戦争)を起こすこととなった・・・と述べられています。

これは、確かに一つの側面ではあるのですが、そもそも「大東亜戦争」とされる戦争は、アメリカや日本との開戦ではなく、日本と中国との開戦からスタートしており、ではなぜ日本はそもそも中国と戦争を起こすに至ったのかという、その理由を検証することがこのシリーズを始めたの一つの目的でした。

日本と中国の、所謂「日中戦争(盧溝橋事件)」が起きるまでにはもう少しかかるのですが、中国側の原因としては、

 ・イギリスをはじめとする欧州の植民地政策により清朝がズタボロにされたこと。
 ・清朝のプライドが、中国大陸の近代化を著しく遅らせてしまったこと。
 ・清朝を引き継いだ中華民国に於いて、政権を握った袁世凱が保身のため自国民の感情に「反日感情」を植え付けてしまったこと。
 ・ロシア革命成功に伴う「共産主義」への国民の傾倒。
 ・孫文の打ち立てた中国国民党への「共産主義」の浸透。
 ・共産主義者たちの残虐なまでの「暴力」。

この様な、様々な要因が重なって日本と戦争を起こすための精神的な土壌が醸造されていったことが分かりました。
一方で日本側の原因としては、

 ・「ロシア(ソ連)」の脅威。
 ・朝鮮半島と清朝のあまりにもの情けなさ。
 ・第一次世界大戦を目の当たりにした軍人たちの中に芽生えた「危機感」。
 ・軍人たちの中に浸透した「国家社会主義思想(右翼マルクス主義思想)
 ・日本の政治を担った多くの政治家たちの「無能さ」。
 ・右翼マルクス主義が浸透した軍人たちの、政治家たちに対する不信感。
 ・軍部内における「皇道派」と「統制派」の対立と暴走。

確かに中国の側に起因する問題も多くありましたが、だからと言って日本に責任がなかったというと、決してそうは言えないようにも感じます。ただ、共通して言えるのは、「マルクス主義」という思想の問題です。

これも根源をたどれば欧州「フランス革命」にまでたどり着きます。

彼らが「民主主義」を勝ち取ったのは確かに素晴らしいかもしれません。ですが、自分たちの欲望を満たすために「アヘン」や「キリスト教」を利用して中国をズタボロにし、「共産主義」を暴走させて「ソ連(コミンテルン)」という組織を生み出し、日本や中国を内部から崩壊させたこと。

日本や中国を責める前に、このような欧米の横暴をだれも批判しないことを、私としてはとても不思議に思います。

【今回の記事】
今回の記事では、視点を日本や中国から少しそらして、「ヨーロッパ」や「アメリカ」に移し、シリーズを作成したもう一つの目的である「日本がどのようにして欧米に戦争状態にまで追い込まれたのか」という内容について検証してみたいと思います。


世界恐慌時のアメリカ

第142回の記事 に於きまして、「世界恐慌」をテーマとし、世界恐慌が世界をどのような状況に巻き込んだのか、ということを記事にしました。今回の記事では、その内容をもう少し深めてみたいと思いと思います。

第一次世界大戦後のアメリカは、第一次世界大戦の戦争特需を受けて景気の良い状態にあったわけですが、ヨーロッパ経済が回復し、ヨーロッパの産業が復興してくると、ヨーロッパから景気の良いアメリカに対する「輸出」が増えてきます。

特に農産物の輸入は国内の農産物の物価を崩壊させるほどだったようで、当時のウォレン・ハーディング大統領は、1921年に緊急関税法、翌年9月21日にフォードニ―・マッカンバー関税法という法律を成立させます。

【ハーディング大統領】
ハーディング

農作物の価格が下落したのは、何も輸入の影響だけでなく、米国内における農業の機械化も一つの大きな原因だったのですが、結果的に生産過剰となったため、米国への農産物の輸入品に対して高関税をかけます。

欧州ではこれに対抗して、アメリカからの輸入品にも同様に高関税をかけるのですが、このことで物流がストップしてしまい、このことも世界恐慌の一つの大きな要因となります。ちなみに、ウォレン・ハーディング大統領とは、日本との間で「ワシントン海軍軍縮条約」を締結させた大統領でもあります。

またさらに、1929年5月。世界恐慌が勃発する直前になるのですが、当時のハーバート・フーヴァー大統領の下、「ホーレイ=スムート関税法」なるものがアメリカの下院を通過します。ホーレイ=スムート関税法とは、アメリカへの輸入品に対する関税を33%からさらに40%にまで上昇させるための法律。

【フーヴァー大統領】
フーヴァー

この状況下で「世界恐慌」が勃発します。
フォードニ―・マッカンバー関税法によってアメリカの輸入品に対する関税を引き上げたことが世界恐慌勃発の一つの原因になったにも関わらず、フーヴァー大統領は世界恐慌後、1930年6月17日、このホーレイ=スムート関税法を成立させてしまいます。

これがヨーロッパの特にドイツ経済にとどめを刺すことになります。1931年6月20日、フーヴァーはドイツに対して債務の返済を猶予するための措置として「フーバーモラトリアム」を宣言するのですが、既に手遅れでした。


ヨーロッパの「ブロック経済政策」

イギリスはこれに対抗するため、1932年7月~8月にかけて、自国イギリスとイギリス内の「自治領」である「カナダ」、オーストラリア、ニュージランド、南アフリカ、アイルランド、ニューファンドランド(現在のカナダの一部)と植民地であるインド、南ローデシアと共に「イギリス帝国経済会議(オタワ会議)」なるものを開き、これらの国々の間で「イギリス連邦特恵関税制度」を締結します。

つまり、これらの国々の間では関税をゼロにする代わりに、その他の国々に対しては高関税を課し、協定を結んだ国々との間で保護貿易を行う、所謂「ブロック経済政策」です。

これらの国々の中でカナダはイギリスのブロック経済(スターリングブロック/ポンドブロック)には参加せず、アメリカの、所謂「ドルブロック」と言われる経済圏に参入します。

アメリカ、イギリスは第一次世界大戦終結に伴って復帰していた「金本位制」からイギリスは1931年9月に、アメリカは1933年3月にそれぞれ離脱します。

1933年7月にイギリスの提唱により、金本位制を維持することを目的として開催された「ロンドンの世界通貨経済会議」は、欧州と米国の対立によって何も決まることはなく決裂し、金本位制から離脱していないフランス・ベルギー・オランダ・イタリア・ポーランド・スイスの間で、フランスを中心とした「金ブロック/フランブロック」が形成されます。

ちなみに、高橋是清の経済政策 によって日本がいち早く金本位制から離脱したのが1931年12月13日。それから3年もたたず、1934年の時点では世界恐慌のリスクから脱却していたわけですから、彼がいかにすごいのかということが分かりますね。他国の力を借りず、単独で脱却したわけですから。彼が暗殺されるのはその二年後。1936年2月26日のことです。


アメリカのニューディール政策と善隣外交政策

フーヴァー大統領の後を受け、フランクリン=ルーズベルト大統領が大統領として就任するのが1933年3月4日。

【フランクリン=ルーズベルト】
フランクリン・ルーズベルト

さて、このルーズベルト大統領。当時の「世界恐慌」の状態を「戦時状態である」とみなして、アメリカ独立戦争当時に制定された「敵対通商法」という法律に基づいて、当時の銀行をすべて休業させてしまいます。

敵対通商法とは、戦時状態においては大統領が、議会の承認を受けずに単独で法律を制定することができる・・・という法律です。

ルーズベルトは、ラジオにて、「1週間以内にすべての銀行の経営実態を調査し、預金の安全を保障する」ことを約束します。
このことで銀行に対する取り付け騒ぎは収束するわけですが・・・どこかで聞いたような話ですね。

第137回 高橋是清の経済政策と昭和金融恐慌/北伐時代の日本
↑こちらの記事に於いてご紹介した、高橋是清が昭和金融恐慌に際して執り行った政策。

即ち、全国の銀行に「支払い猶予令」を、「天皇陛下による『緊急勅令』」という方法で発令し、発令されるまでの間2日間、全国の銀行を一斉に休業させ、片面印刷された紙幣を銀行の窓口に山積みすることで国民を安心させた・・・というあの政策です。

ルーズベルトはさらに、次の法律を矢継ぎ早に成立させます。

 ・緊急銀行救済法
 ・TVA(テネシー川流域開発公社)などによる右写真のような公共事業
 ・CCC(民間資源保存局)による大規模雇用
 ・NIRA(全国産業復興法)による労働時間の短縮や超越論的賃金の確保
 ・AAA(農業調整法)による生産量の調整
 ・ワグナー法「全国労働関係法」による労働者の権利拡大

また1935年には「WPA(公共事業促進局)」を設立し、公共事業を全米で行うことで失業者の大量雇用を実現します。
ただし、彼が制定した法律の内いくつかが最高裁判所にて「違法」とされた事や、積極財政政策に伴う政府債務の増大を受けて緊縮財政政策へと転じた結果、失業率は再び上昇することとなります。

アメリカ経済が本当にたてなおるのは、実は彼のニューディール政策ではなく、第二次世界大戦勃発に伴う軍需景気が最大の原因でした。


善隣外交政策

この言葉、あまりポジティブなニュアンスでは用いられないようですね。という条文があったぐらいです。(ちなみに日本でも優生保護法という差別
彼は貿易相手国として、これまでの政権・・・要はフーヴァー大統領ですが、彼が承認していなかった「ソ連」という国を選択し、「国家」として承認してしまいます。

彼は、このほかにも南米各国に対する政策方針を転換し、これまでの威圧的な外交姿勢から、友好的な姿勢へと転換します。
ルーズベルトは、北中南米一体にアメリカの影響が及ぶ経済圏、「ドルブロック」を築くことになるんですね。

アメリカは、「互恵通商条約法」用法律を制定し、このような国々に対して、関税引き下げを行っていきます。
ところが・・・。

日本に対しては、関税を引き下げるどころか、「関税引き上げ」を行ってきます。
第二次世界大戦後の日本とアメリカの関係を考えてもわかると思うんですけど、「貿易摩擦」と言って、二国間貿易に於いて、どちらか一方のみの黒字が大きいと、特にアメリカは極端な関税を日本に課してきます

これはこの当時も同様だったようで、例えば「生糸」の事例を考えてみますと、是清政策によって世界恐慌から脱却した日本は、実は生糸の輸出が絶好調でした。とはいえ、貿易収支的にはアメリカの一方的な黒字。輸出量もごくわずか、1%にも満たない程度で、アメリカとしてはそれほど大きな影響はなかったはずです。

ところが、アメリカはそんな生糸に対して一方的に42%の関税率の引き上げを通告してきます。
既にヨーロッパ各国は「ブロック経済政策」を取っており、日本にとってはこの通告は大ショックだったようです。

理由は、アメリカ国内の生糸産地のマスコミが、現地の世論を煽ったから。
アメリカ全体の生産量と比較して、わずか1%にも満たない輸入量でしかなかったにも関わらず、日本製品がものすごいバッシングにあったんですね。

日本が満州にて行った行為に対するイメージの低下がその一つの理由だったのかもしれませんが、それ以上に他国が苦しんでいる中で黄色人種である日本が、ただ一国絶好調であったこともそのような不満の原因だったのかもしれません。


まとめ

この後、1937年10月5日、ルーズベルト大統領より、「隔離演説」なる演説が行われます。

【ルーズベルト演説】
「世界の九割の人々の平和と自由、そして安全が、すべての国際的な秩序と法を破壊しようとしている残り一割の人々によって脅かされようとしている。(…)不幸にも世界に無秩序という疫病が広がっているようである。身体を蝕む疫病が広がりだした場合、共同体は、疫病の流行から共同体の健康を守るために病人を隔離することを認めている」

また、以下のような内容も含まれているのだとか。
「宣戦の布告も警告も、また正当な理由もなく婦女子をふくむ一般市民が、空中からの爆弾によって仮借なく殺戮されている戦慄すべき状態が現出している。このような好戦的傾向が漸次他国に蔓延するおそれがある。彼ら平和を愛好する国民の共同行動によって隔離されるべきである」

これは、蒋介石の国際連盟に対して、満州事変に対しての提訴を受けてのことです。
後半の内容を見る限り、中国がやったことの方がよほどひどいと思いますが・・・。

確かに満州事変について日本側に非はあるかもしれません。ですがおそらくルーズベルトは、中国大陸において共産主義者が紛れ込んだ国民党軍が一体何をしたのか、このことをまったく理解せずにこの演説を行ったのではないでしょうか。

この後、彼は日本の経済を封鎖するための経済制裁を次々と日本に課していきます。
この流れを見ると、確かに冒頭の動画で説明している内容も理解できますね。

それにしても、第二次世界大戦に至る過程において、右翼マルクス主義者たちが実行した「満州事変」は完全なイレギュラーですね。ただ、これがなかったら、中国大陸の状況はもっとひどくなっていたような気もします。

【次回テーマ】
次回記事に於きましては、日中戦争の勃発。「盧溝橋事件」にまで話題を進めていきたいと思います。



このシリーズの過去の記事
>> 第145回 五・一五事件と二・二六事件の違いをわかりやすく検証します
このシリーズの新しい記事
>> 第148回 盧溝橋事件の真相を追う/第29軍の誕生(蒋介石対馮玉祥)

このシリーズの一覧をご覧になりたい方は >>十五年戦争(日中戦争)の原因と結果 よりご確認ください


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