第140回 2016年度(平成28年)GDP第一四半期速報が公表されましたなど、政治・経済を中心とした日常的な情報を、独自な視点で解析します。

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この記事のカテゴリー >>政府データ(経済指標の見方)


現在進行中のシリーズを少しお休みして、今回は久しぶりに「経済」に関連したトピックスをお届けします。

というのも、今朝から私が過去に掲載したこちらの記事↓
第85回 2016年(平成28年)GDP速報が公表されました~2015年度GDP速報の見方~

へのアクセスが急増しているからです。

ご存知の方がほとんどだとは思うのですが、政府の会計カレンダーには「暦年」と「年度」がございます。
私が上記記事を掲載したのは、「2015年度(平成27年度)第4四半期」のデータが発表されたので、2015「年度」一年間を通じたそろったため、ピックアップして速報として記事を作成しました。

2016年データとしては初めてのデータだったこともあり、「2015年度最終四半期である2016年のGDP速報が発表されましたよ」という意味で付けたタイトルなんですが、改めて本日2016年度第一四半期のGDP速報が公表されまして、タイトル的に詐欺みたいなタイトルとなってしまったので、これを補完する意味で記事を作成します。

【財務省】
財務省

【今回のテーマ】

ということで、今回テーマとするのはこちらのニュース。
4~6月GDP、年率0.2%増 住宅・公共投資が寄与

2015年8月15日、日本経済新聞のニュースです。
4月~6月、というのがすなわち「2016年度第一四半期」なのですが、今回の記事では、このニュースをベースに記事を作成していきます。


2016年度第一四半期GDP速報値を検証する

【日本経済新聞記事より】
(※後で必要な部分だけ解説しますので、最初は読み流してください)
 内閣府が15日発表した2016年4~6月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除く実質で前期比0.0%増、年率換算では0.2%増だった。プラスは2四半期連続。うるう年効果があった1~3月期(年率換算で2.0%増)から成長の勢いが鈍った。個人消費が底堅く推移したことでプラスを確保した。ただ企業の設備投資や輸出が鈍った。

 QUICKが12日時点で集計した民間予測の中央値は前期比0.2%増で、年率では0.7%増だった。

 生活実感に近い名目GDP成長率は前期比0.2%増、年率では0.9%増だった。名目も2四半期連続でプラスになった。

 実質GDPの内訳は、内需が0.3%分の押し上げ効果、外需の寄与度は0.3%分のマイナスだった。項目別にみると、個人消費が0.2%増と、2四半期連続でプラスだった。前期(0.7%増)から伸び率が縮小した。

 輸出は1.5%減、輸入は0.1%減だった。国内需要の低迷で輸入量が減少。円高・ドル安や海外経済の減速が響き、輸出は力強さを欠いた。

 設備投資は0.4%減と、2四半期連続でマイナスだった。生産活動の回復が鈍く、設備投資意欲は高まらなかった。住宅投資は5.0%増。公共投資は2.3%増。民間在庫の寄与度は0.0%のマイナスだった。

 総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは前年同期と比べてプラス0.8%だった。輸入品目の動きを除いた国内需要デフレーターは0.6%のマイナスだった。〔日経QUICKニュース(NQN)〕

以下が日本経済新聞に掲載されている記事内容です。

記事タイトルにある「4~6月GDP年率0.2%増」というキーワードは、「2016年度第一四半期の実質GDPの成長率(前期比)を季節調整して、年率換算すると0.2%増えたことになりました」という意味です。

季節調整というのは、特殊な計算式を用いて、その季節特有の経済現象による影響(例えば夏休みだったり、クリスマスだったり、お正月だったり)を除外した数字のこと。(計算式は政府じゃないとわかりません)

年率換算っていうのは・・・

【年率換算の計算方法】
(※関心がある人だけ読んでください)

1.第1四半期を前期、つまり前年度の第4四半期のGDPと比較して成長率を出します。
 第1四半期の成長率を1Q、前年度の第4四半期のGDPを4Q’とします。

第1四半期を前期比と比較した成長率
=(1Q-4Q')/4Q' この計算式を①とします。

2.①は「成長率」ですので、本体である4Q'に、1+①をかけたものが第1四半期のGDPになります。
第1四半期のGDP=4Q'×(1+①)×100

3.「年率換算」を行うときは、第一四半期の成長率が、第2四半期~第4四半期まで継続して続く、と考えるので

第2四半期のGDP=4Q'×(1+①)×(1+①)
第3四半期のGDP=4Q'×(1+①)×(1+①)×(1+①)
第4四半期のGDP=4Q'×(1+①)×(1+①)×(1+①)×(1+①)=4Q'(1+①)^4(^=乗数のことです)

となります。「年率換算」とは、この様な計算方法によって算出された第4四半期のGDPを前年度の第4四半期と比較した結果を算出するための計算方法です。

ですので、第1四半期の「前期比」を「年率換算」した計算結果は

{4Q'(1+①)^4-4Q'}÷4Q’×100={(1+①)^4-1}×100

これが「年率換算」の計算結果です。
もう少しわかりやすく表現すると、

〔{1+第一四半期の成長率(前期比)の4乗}-1〕×100(%)

これが「年率換算」です。

わかりやすく言えば、対象となる四半期のGDP成長率が1年間連続で続いた何%になるのか・・・という、いうなればフィクションに基づいた計算結果ですね。

しかも、この時に例えばクリスマスのある12月が含まれる時期と、他の月と比べて一番日数の少ない2月が含まれる時期が同じ基準で計算されるのはおかしいよね・・・ということで「季節調整」を行ったうえで年率換算する・・・という・・・。

しかもなぜか名目GDPの年率換算はクローズアップせず、「消費者物価指数」等の経済指標から「一人当たりの消費量」に置き換えて計算し直した「実質GDP」を取り上げるという・・・。
(詳細は「第53回の記事にてご確認ください)

ということで、私は基本的に「実質GDP」も「季節調整」も「年率換算」も「参考」程度にしか考えていません。
ましてマスコミがこのように大々的に取り上げるのは、非常に誤解が生まれやすい指標である、とも考えています。

これ以降の記事は、これを踏まえた上でご覧ください。


【では、改めて「2016年度第一四半期の経済統計」を見てみましょう】

2016年度第1四半期の名目GDP 125兆円(前年同月比 1.31%)
2016年度第1四半期の実質GDP 123兆円(前年同月比 0.55%)

これはともに、統計結果に対して一切手を加えていない「原系列」と呼ばれるデータです。
前記した通り、二つのデータを算出する上での統計方法に若干問題があるものの、それでもまだ「信頼できるデータ」ということができるでしょう。

かっこ書きで「前年同月比」を示しているのは、季節特有のバイアスが生まれやすい「前期比」よりも、比較的バイアスが生まれにくい、「前年の同じ時期」と比較することを目的としています。

ちなみにこの名目の経済成長率から実質の経済成長率を差し引いた計算結果を「物価上昇率」といいます。
名目1.3%、実質0.5%、物価上昇0.7% というのが、今回の統計結果です。

名目とは「金額ベース」のデータであり、「どのくらい稼いだのか」ということを見るための指標。
実質とは「消費量ベース」のデータであり、「どれくらいの量売れたのか」ということを見るための指標です。

今回の結果でいうと、名目が実質の成長率を上回っていて、共にプラス成長していますので、「物の値段が上昇しているにも関わらず、物が売れる量も同時に増えている」ということになります。

ただ、「GDP」を構成しているのは私たち「民間人(家計最終消費支出者)」だけでなく、「企業」や「政府」「輸出入」によってもGDPは成り立っています。

私たちが「生活が豊かになった」と感じるためには、GDP全体はもちろんなのですが、やはり「家計最終消費支出」という項目に改善して盛らなければこれを実感することはできません。


【2016年度第1四半期の家計最終消費支出】


「家計最終消費支出」。つまり、私たち民間人が、家庭においてどれくらいお金を使ったのか、又はどれくらいの量を購入したのか、というデータです。

2016年度第1四半期の名目家計最終消費支出 69.7兆円(前年同月比 -0.38%)
2016年度第1四半期の実質家計最終消費支出 73.3兆円(前年同月比 -0.33%)

下落してますね・・・・。
下落している上に、名目の下落率のほうが大きいです。
これは、「家計における消費は『金額』『消費量』ともに下落している上に、物価も下落している」ということ。

つまり、「デフレ」であると・・・。

ですが、実はこれにはからくりがあります。
それが、下記のデータです。


【2016年度第1四半期の輸出入額】

2016年度第1四半期の名目輸出額 19.87兆円(前年同月比 -9.26% -2.03兆円)
2016年度第1四半期の名目輸入額 19.34兆円(前年同月比 -16.67% -3.87兆円)

これは、私の過去の記事に目を通していただいている方にはすでに「周知」の事実ですよね。
輸出入額なので、あえて実質で掲載する必要もないかなと考えています。

輸出額のマイナスも確かにあるのですが、特に「輸入額」のマイナス具合。これが、「家計最終消費支出」の下落にも影響していると私は考えています。

GDPを算出する際、まずは「家計」「企業」「政府」の3つの項目別で「消費総額」を計算し、次に3項目の「消費」を合算します。
その後、その合計値から「輸入」を引いて「輸出」をプラスします。

ですから、GDPの統計データに記されている「家計最終消費支出」には「輸入物価」が含まれており、例えば「原油価格の下落」などによって輸入物価が下落すると、合わせて「家計最終消費支出」も下落してしまいます。

第99回の記事等をご覧になった方はご存知ですね?


【2016年度第1四半期の消費者物価指数】


過去にも同様の検証を行いましたが、今回も同じく「消費者物価指数」を掲載してみます。
ただ、消費者物価指数は、GDPの様に「四半期別」で掲載しているわけではないので、ピックアップして最終月、6月のものを示してみます。

まずは全体から。

 総合指数は2010年(平成22年)を100として103.3
 前月比は0.2%の下落
 前年同月比は0.4%の下落

となっています。つまり、全体で見ると前年同月で0.4%下落している、ということです。
これを、「項目別」に見てみます。

2016年6月消費者物価指数

総合 -0.4
 生鮮食を除く総合        -0.5
 食料 ・エネルギーを除く総合  0.4

食料 1.1
 生鮮食品         0.3
 生鮮食品を除く食料  1.3

住居         -0.1
光熱・水道     -8.7
家 具・家事用品  0.0
被服及び履 物   2.0
保健医療      0.6
交通・通信     -2.4
教育         1.4
教養娯楽      1.1
諸雑費       0.9

マイナスになっているのが「総合(CPI)」、「生鮮食品を除く総合(コアCPI)」の二つで、「食料・エネルギーを除く総合(コアコアCPI)」はプラス成長しています。

詳細項目では「住居」、「光熱・水道」、「交通・通信」の3項目はマイナスになっています。
これ以外に「家具・家事用品」が唯一0%成長ですが、それ以外の項目は全てプラス成長しています。

「住居」の中でマイナスを記録しているのは「家賃」。
「光熱・水道」の中でマイナスを記録しているのは「電気代」「ガス代」「その他光熱」
「交通・通信」の中でマイナスを記録しているのは「自動車等関係費(ガソリン代)」と「通信」。

その他家電用品などをはじめ、マイナスを記録している項目もありますが(家 具・家事用品が0%成長となっているところに寄与しています)、影響が大きいのはやはり「原油価格」に代表される「エネルギー価格」の下落に伴うものであって、「輸入物価」の影響を強く化ていることが分かります。

「家計最終消費支出」の「実質」が下落しているのは、「輸入物価の下落」に伴う物価の下落の影響を消費量全体に反映し切れていないかと思います。

消費者物価指数を判断する際の現在の基準年は2015年となってはいますが、そもそも物価を判断するときに、「エネルギー価格はマイナス方向に変動しているけど、それ以外の項目はプラス方向に変動している」というような、全く異なる経済現象が同じ指標の中で、同時に発生するっていう想定がないのではないでしょうか。

ここはあくまで推測にすぎませんから、根拠となる指標を更に調査しなければなりませんけどね。


まとめ

ちなみに・・・というわけではありませんが、このような「輸入物価の変動」に伴う歪なバイアスを完全に除外して考えられる項目の中に、「民間住宅」という項目があります。

2016年度第1四半期名目成長率は前期比前年同月比で4.4%で、実に4四半期連続でのプラス成長です。

駆け込み需要のあった13年度第3・第4四半期には及びませんが、今回の経済指標において、この分野は最も明るい材料なのではないでしょうか。

「住宅」っていえば、「家計」から支出される金額の中でも、最も大きい支出金額になりますからね。
同程度の支出が、「住宅」以外の分野でも行われているんじゃないか、と考えるのが発想としては適正なんじゃないかと思います。

アベノミクスのウィークポイントとして「家計消費支出」の分野を挙げる人も多いんですが、私の評価としては、そんな「家計消費支出」の分野も含めて、「安倍内閣は好調を維持している」という評価を与えたいと思います。



このシリーズの過去の記事
>> 第189回 内閣府 ビッグデータ活用の新たな経済指標開発へ①
このシリーズの新しい記事
>> 第53回 実質GDPへの疑惑

このシリーズの一覧をご覧になりたい方は >>政府データ(経済指標の見方) よりご確認ください


このエントリーにお寄せ頂いたコメント

あるブログで、この方はデフレ脱却していないからもっと政府支出をと言ってます。

方や産業界では『オリンピックが終わるまで、工場設立はしない』
と言われています。新規に着工しようとしても人工が集まらず金が掛かりすぎる為。道路や幹線等の整備が急激に上がり、地価上昇が現実となり、民間住宅が慌てて買われている実態。首都圏では工場規模の土地は見つかりません。
この状況で財政出動派が言うように更に公共事業増やせばどうなるか。実態にそった指数がないなか、前期比で右往左往すべきで無いですよね\(^^)/

で、アベノミクス反対派はトリクルダウンが~ばかり、始めから狙ってませんから\(^^)/
かっ at 2016/08/16(火) 17:31 | URL

かっさん、いつもありがとうございます(^^)/
「公共事業」も、やっぱり「国土強靭化」よろしく土建分野に集中して配分するからやっぱりおかしくなるんでしょうね。

教育とか、医療とか、ITだとか、もっと様々な分野に、幅広く予算を割いてもらいたいですよね(*^^)v

ただ、これをやると「表に見えにくい」から評価されにくいですけど(;^_^A
のんき at 2016/08/16(火) 19:59 | URL

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