第128回 日銀が引き受けた国債は返済されるのか?~量的緩和後の国債~など、政治・経済を中心とした日常的な情報を、独自な視点で解析します。

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この記事のカテゴリー >>日本国債の問題


私は、過去の記事の中で、何度か「日本国債の問題」についての記事を掲載しました。

コンセプトとしては、「日本国債はどの様なルールで発行されるのか」、「日本国債はどの様なルールで返済されるのか」、「限りなく破綻する可能性が0に近い日本国債を破たんさせる方法」、「日本国債の『直接引き受け』のメリットとデメリット」という、4つのコンセプトから記事にしました。

これまでの記事の中で、私が疑問に思いつつも調査を行っていなかった項目。
それが、今回のタイトルにある、「日銀が引き受けた国債は返済されるのか」という疑問に対する調査です。

「日銀が引き受けた国債」とは、現在のルールからすれば、日本国政府が発行した日本国債(既発債/発行済み国債)を、金融機関から日本銀行が買い上げた国債のことです。

「買いオペレーション」とか、最近では「量的緩和」という名前でもよく知られるようにもなりました。

【日本国債:日銀HPより】
国債

「日本国債を破綻させない方法」の一つとしてよくあげられるのが、この「日本国債の日銀による引き受け」にあります。
現在も「量的緩和」の名目で日銀は市場から国債を引き受け、代わりに日銀券を流通させています。

さて。ではこの日銀が引き受けた日本国債。この日本国債が仮に「償還期」を迎えたとき、日本国政府は日銀に対してきちんと「返済」を行っているのでしょうか。
そもそも、日本国政府は日銀が引き受けた国債を「返済」する義務があるのでしょうか?

長らく疑問に感じていた部分ではあるのですが、それほど重要な問題ではないと考え、調査は行わずにそのままにしていた問題でもあります。

【本日のテーマ】
そこで今回は、改めて日銀が引き受けた、あるいは市場から買い取った「日本国債」。
この様な方法で日銀が保有することとなった「日本国債」が償「償還期」、つまり「返済期限」を迎えたとき、果たして日本国政府はこれを返済しているのか。

返済しているとしたら、果たしてどのような方法で返済しているのか。今回の記事では、このような問題について記事にしたいと思います。


「高橋洋一」氏の妄想
疑問に持ちつつも放置していた、日銀が保有する「国債」の返済に関する問題。

私がなぜこの問題に記事にしようと考えたのかというと、実は本章のサブタイトルにある「高橋洋一」という人物が「週刊ダイヤモンド」という週刊誌サイトに寄稿した記事に対して疑問を持ったことが原因です。

【週刊ダイヤモンドサイト記事より】
(※以下に掲載する記事内容は、記事内容としては重要ではないので、そのまま読み飛ばしてください)
「ヘリコプターマネー」の効果はアベノミクスとほぼ同じ
高橋洋一 [嘉悦大学教授] 【第148回】 2016年7月14日

【バーナンキ氏と安倍首相が会談政府が「ヘリマネ」政策を検討!?】
 前FRB議長のベン・バーナンキ氏が11日に日銀の黒田東彦総裁と、12日に安倍晋三首相と会談した。

 これに対して、政府で「ヘリコプターマネー」を検討しているという報道があり、菅義偉官房長官は13日午前の会見で、「ヘリコプターマネー」政策を政府が検討している事実はないと述べた。

 ただ、菅官房長官は、12日の会見で、「ヘリコプターマネー」について特段の言及はなかったが、財政政策で名目GDPを上げるとともに、それと協調して金融政策はやるべきと説明している。

 まず、「ヘリコプターマネー」を整理しておきたい。

 ネット界隈では、「ヘリマネ」といわれる。もっとも、ヘリコプターの語源は、helicopterはギリシャ語 héikos 「らせんの」+pteró「翼」。ドラえもんでは「タケコプター」というが、本来なら「タケ+プター」だろう。ちょっと「ヘリマネ」とはいいにくい。

【ノーベル賞経済学者フリードマン氏が論じバーナンキ氏が再び取り上げて注目された】
 ヘリコプターマネーのもともとの意味は、中央銀行がカネを刷ってヘリコプターから人々にばら撒くというものだ。ただし、実際にこれを行うのは難しい。「いつどこにヘリコプターが行くのか教えてほしい」というジョークすらある。現在のように中央銀行と政府が役割分担している世界では、中央銀行が新発国債を直接引き受けることで財政赤字を直接賄うことをいうことが多い。

書いている内容は、第126回の記事で私が掲載した「ヘリコプターマネー」に言及したものです。

第126回の記事でご説明した様に、ヘリコプターマネーに関しては、本田悦郎内閣官房参与がバーナンキFRB全理事長と安倍総理をつなぎ、「日銀による新規発行国債の直接引き受け」についてバーナンキより説明をさせた・・・というのが一連の流れなのですが、高橋洋一氏は、ヘリコプターマネーという言葉が独り歩きしているが、ヘリコプターマネーとは別に日銀による直接引き受けのことのみについて言及したものではない。

現在の量的緩和+国債発行+財政政策のコンボも実質的には「ヘリコプターマネー」であり、この政策で問題はないと考えている、とこの様に言及しています。

私はこの記事で高橋洋一氏が主張している内容そのものは同じ考え方をしていて、賛同できる内容には仕上がっているのですが、彼の場合、過去に彼が行った発言との間で整合性が取れていないことに、私は非常に不快感を覚えています。

記事を追って、その部分に関してもご紹介していければと思います。

高橋洋一
【高橋洋一:日刊ビジネスより】


【日銀(直接)引き受け8兆円?】

さて。今回の記事で私が問題にしたいのは、先ほどの週刊ダイヤモンド記事の続きの部分。
つまり会員登録を行うことで閲覧可能になる部分の中で、高橋洋一氏が言及している、とある一説についてです。

この部分のみ、改めて掲載してみます。

【週刊ダイヤモンド記事続き部分より一部抜粋】
 経済学者からみれば、政府が国債発行で財政支出を行って中央銀行が新発国債を直接引き受けることと、政府が国債発行で財政支出を行って中央銀行が既発国債を買って量的緩和を行うことは、経済的には同じである。

 ただし、法律的な立場から見れば、前者は中央銀行の国債引受であるが、後者は中央銀行による既発国債の買いオペなので、異なる。

 もっとも、しばしば日銀引受は禁じ手とされているが、これは勉強不足といえよう。今の制度では日銀保有国債額の範囲であれば認められている。筆者が現役の大蔵官僚で理財局国債課にいたとき、毎年日銀引受は行われていた。ちなみに、2016年度でも日銀引受は8兆円行われる予定だ。

問題にしたいのは、このうち最終段落の、

 『しばしば日銀引受は禁じ手とされているが、これは勉強不足といえよう。
 今の制度では日銀保有国債額の範囲であれば認められている。
 筆者が現役の大蔵官僚で理財局国債課にいたとき、毎年日銀引受は行われていた。
 ちなみに、2016年度でも日銀引受は8兆円行われる予定だ』


という文章についてです。

これって、ものすごい詭弁なんですよね・・・。

彼、過去に日経ビジネスより受けたインタビューに対して、こんな回答をしています。

【日経ビジネス記事より】
高橋洋一氏が反論!「その消費増税論議、ちょっといいですか」2012年3月21日(水)

――日経ビジネスオンラインで2月に連載した「今さら聞けない消費増税」で、高橋さんは2回目の日銀がもっとお金を刷って経済成長すれば増税は不要では? に対して、国債の日銀引き受けを「禁じ手だ」とする説明を「ミスリーディングだね」とツイートしていましたね。どの辺がミスリーディングなのでしょうか。

高橋:というのは、私は自分が毎年やっていたからね。禁じ手と言うけれど、小泉政権の時の2005年、円安にするのに一番簡単なのが日銀引き受けだったので、(官邸にいた)私が“がばちょん”とやったのです。

 (「既発債の買い入れというのは、日銀の金融調節の一環として流通市場でしているもので、発行市場で買い入れするのとは意味が全く違います」という)国債の発行市場、流通市場を区別する説明も観念的だね。私は大蔵省(現財務省)の国債課で担当官をしたこともありますが、国債を発行するためだけの発行市場なんて特別にない。実際にはすべてが流通市場で、たまたま売るモノが新発モノなら教科書の中で発行市場と呼んでいるだけですよ。

がばちょん・・・ですか。続きです。
――日銀引き受けは、財政法の明文で禁止されているとのことですが。

高橋:そうだけれど、但し書きがあり、国会の議決を得た範囲ではできるのです。僕は理財局にいたとき毎年日銀引き受けを実施したし、官邸にいた時もやりました。2005年に23兆円分を引き受けた記録は誰も超えていません。だから2005年前後は日銀のマネー発行量が多い。増税なしで税収を増やすために、お金を刷ったからです。もちろんハイパーインフレになどならず、少し円安になっただけでした。

えっ!?
小泉内閣の時、23兆円も日銀による国債の直接引き受けが国会で議決されたの!?

いやいやいや・・・。
実はこれ、本当にものすごい「詭弁」なんです。
今回の記事のタイトル、『日銀が引き受けた国債は返済されるのか?』となっていますね。

私がこの質問に対する回答にたどり着いたのは、実は先ほどご紹介した、高橋洋一氏の『妄想』に対する調査結果から導き出された、いわば「副産物」なのです。


日銀が引き受けた国債は返済されるのか?

では、改めて本日のタイトル、本題へとテーマを移します。

この質問に対する回答が記されていたのはこちらのページです。

「日本銀行の対政府取引」について

リンク先は日本銀行のホームページです。
このページに記されている内容は、日本銀行が日本国政府が発行した日本国債を、「直接引き受けできるケース」について記されています。

あくまでも前提条件としてるのは、「財政法第5条」に掲載されている内容。

【財政法第5条】
『すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない

この条文にあります。
これは、高橋洋一氏の記事にも記されていますね。

但し、これには例外があって、いくつかのケースにおいて、国会による議決を経ずとも、政府が必要とする範囲内において直接引き受けられるケースがあります。

【(2)政府の一時的な資金需要への対応等】
(a)政府短期証券の引受け

日本銀行による公債の引受けは、財政法により原則として禁止されている(財政法第5条2本文)が、政府の一時的な資金需要に対応するために発行される政府短期証券については、当該条項の適用を受けないと解されており、日本銀行法でも、日本銀行が政府短期証券の引受けを行うことができる旨の条項が設けられている(日本銀行法第34条第4号3)。

具体的な事例をあげますと、

『(1)市場における公募入札において募集残額等が生じた場合
(2)為替介入の実施や国庫資金繰りの予想と実績との乖離の発生などにより、予期せざる資金需要が発生した場合』

つまり、

①新規国債を発行する折、万が一全額売り切れなかった場合。
②為替介入を実施する場合。
③政府が予測していた予算を実態が大きく上回った場合。

に国債を日銀が直接引き受けることができる、と書かれています。
現在実施されているのはほぼ②の「為替介入」における引き受けだけですね。

発行される国債は短期証券です。
このことは、私のブログでも何度か述べたことがあると思います。


【国会の決議を受けて直接引き受けている『国債』とは?】

さて。問題となるのはこちらですね。
先ほどの日銀のホームページにはどのように記されているでしょう。

【国会の決議を受けて日銀が直接引き受けている国債】
(b)償還期限が到来した国債等の借換えのための引受け

前述のとおり、財政法においては、日本銀行が公債を引き受けることは原則として禁じられているが、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲で実施する引受けは、例外として許容されている(財政法第5条但書7)。
現在、この例外を定めた条項に基づいて国債の引受けを行っているのは、日本銀行が保有する国債のうち、償還期限が到来した国債等の借換えのための引受けのみである。

具体的には、日本銀行が保有する国債の償還および買入消却のための国債整理基金への売却に際し、その償還額ないしは売却額の限度内で、借換えのための引受けを行っている。この引受けについては、各年度の予算策定手続の中で国会の議決を経た上で行われており、また、各年度毎の借換えのための引受額は、政策委員会で決定され、公表されている。

わかりやすく書き出してみましょう。

 現在、この例外を定めた条項に基づいて国債の引受けを行っているのは、日本銀行が保有する国債のうち、
 償還期限が到来した国債等の借換えのための引受け『のみ』である。


このページが作られたのは、2004年5月12日です。
わかりますでしょうか?

つまり、高橋洋一が偉そうに「23兆円分引き受けた!」と吹聴している「国債」とは、「償還期を迎えた国債の『借換債』」だということなのです。1年物の短期証券。

借換債については第27回の記事でご説明しましたね?

ちなみに借換債の引き受け手は通常市中金融機関が引き受けます。
仮に600万円分の10年物の長期国債が償還期を迎えた場合、政府は市中金融機関に対して100万円+利息分を一般会計予算のから、残る500万円分を借換債を発行し、引き受け手に対して600万円+利息分を返済するのです。

この時発行される借換債のうちの一部を「日銀に引き受けさせてやったぜ!」と吹聴しているのが高橋洋一です。
ですが、よく考えてみてください。

日銀が引き受けることのできる「借換債」は、日銀が保有する「国債」の保有範囲内において、その償還期を迎えた国債に対する借換債に限られます。

元々日銀が保有している国債ですから、この国債に対して発行される借換債を日銀が引き受けようが引き受けまいが、市場に対してまったく影響することはありません。
日銀の資産内で、「国債」の一部が「借換債」に変わっただけで、一般の金融市場にはまったくん、何の変化も起きていません。

なのに日銀が借換債を23兆円分引き受けたことで円安に・・・・なるわけないじゃん。

百歩譲って日銀による引き受けで円安になるとしても、それは日銀が引き受けた国債の買い取り額が市場に流通して初めて実現する問題です。

はっきり言って、これ、完全な『デマ』です。
そして、今回のヘリコプターマネーにおける発言も、このときの考え方がベースになっています。

私が彼のことを許せないのは、この程度の経済感覚しか持っていない男が、私が敬愛する麻生さんのことを、バカにしてるんですよね。しかも堂々と。TVとかでも普通に。

本日の『日銀が引き受けた国債は返済されるのか?』という質問に対する回答としては、日銀が引き受けることもできる、というのが回答になりますが、現時点では引き受けは1回のみで、2回目以降は全額返済を受けている、というのが本当のところであるようです。

まあしかし・・・「専門家」っていったい何なんでしょうね。



このシリーズの過去の記事
>> 第194回 「財政投融資債」とは何か?/「一般会計」と「財政投融資会計」の違い
このシリーズの新しい記事
>> 第126回 ヘリコプターマネーの是非~そのメリット・デメリットとは?

このシリーズの一覧をご覧になりたい方は >>日本国債の問題 よりご確認ください


このエントリーにお寄せ頂いたコメント

私見です。又々お邪魔します。
とあるリフレ派の方々は解ってないから放置しておいて、
三○と高○氏は解ってないのでなく、財政の権力を持った方が正論を崩さない存在が邪魔なのかと。昔以上に地方に建設業等で金使って貰いたいためには邪魔なのかと。でなければ、借替のみの引き受けが行われている、逆に其以外の引き受けは立法府で審議されないと財政法違犯なのは自分達が知っています。
ちょこちょこ私は話出しますが、財務省のポチと言ういいかたも嫌いです。日本は大化の改新以後から優秀な人材を政の事務として登用して執政するのが今に続き、海外に比べ非情に優秀。不勉強なマスコミがたまに悪いところ見つけ騒ぐ。官僚や政治家の悪いところを異常に騒ぐ国民性だから今の官僚代議員制が成り立っているのもありますが。そして財務省の官僚に経済政策を望むのは、セブンイレブンにいってイオンのトップバリューが何故買えないとクレームつける位、お門違い。そしてお門違いをする三○、高○は邪魔なのかと。アメリカにとっても邪魔かもですね(゜▽゜*)
かっ at 2016/07/25(月) 23:43 | URL

かっさん、いつもありがとうございます。

三○氏は、そうは言っても私が経済に関心を深める一つのきっかけを作ってくれた人物。
このところの目に余る様子には辟易としてはいるものの、それでもその感謝の念だけは忘れないようにしています。

彼は、いわゆるリフレ派たちとは異なり、金融政策よりも財政政策を優位に考える人物なので、かっさんの主張はまあ、そうかもしれないな・・・と思わないでもありません。

ただ、高○氏はどうなんでしょうね。
私は彼のこと、昔から嫌いなんです。基本的に麻生さんが言っていることと高○氏の言っていることは同じことを言っているはずなのに、なぜか彼は麻生内閣時代、辞書にて麻生さんのことを扱き下ろしましたからね。

そのくせ麻生内閣の後、民主党内閣に入ってから麻生政策とまったく同じ主張をして、自身が麻生内閣の評価を落とす一翼を買ったことを一度も謝罪したことはありませんから。

それどころか、「あの人は何もわかっていませんからね」と未だに馬鹿にし続ける始末。

ですから、彼を評価したがる人物のこともどうも好きになれません。
ただ、この部分はかっさんと意見が全く一致していることをうれしく思います。

まあしかし、セブンイレブンの例えには思わず吹き出しました(;^_^A
のんき at 2016/07/26(火) 00:23 | URL

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