第101回 「リーマンショック級の危機」は本当に訪れないのか?~「外需依存度」から見る世界経済など、政治・経済を中心とした日常的な情報を、独自な視点で解析します。

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<前回の記事 第100回 財務省の陰謀?~「消費税収」見込み額の不一致~

今回のテーマは、およそ推測はつくと思いますが、消費増税再延期にあたりまして、安倍首相が口にした一連の言い回し、「リーマンショック級の危機」について、現在の世界経済の状況は、果たして本当にそのような状況に至ってないのか、そのことを検証することにあります。

第88回の記事に於きまして、私は安倍さんが伊勢志摩サミットにおいて述べた「リーマンショックを下回る水準にまで下落している」という言葉。これについて、下記のように記しています。
(※全体の文脈には影響がないので、読み飛ばしても大丈夫です)
例えば原油価格の下落であったり、食料品価格の下落であったり、元々は海外の投機筋のマネーゲームが理由で価格が暴騰していた投機市場から、投機筋が撤退してしまったために起こった経済現象です。

安倍さんは、「リーマンショック前後の下落幅と比較」しているといっていますが、原油価格が下落したのはリーマンショックが発生した直後。「前後」という表現は、いささか正確性を欠いているように思います。
そして、今回の原油価格の下落は、何も今になって急に始まった経済現象ではなく、昨年7月頃より、継続して起きている経済現象です。このことは、日本経済にとってはマイナス、というよりもむしろプラスに作用しています。

新興国への投資の伸び率にしても、これが下落していることが本当に経済にとって大問題となるのであれば、「新興国に対してどう経済的支援を行っていくのか」ということの方が議題となるはずです。

そう。だから内需拡大のため、財政出動しましょう・・・という話にはならないはずなんです。

続いて、下記のようにも記しています。
消費増税を先延ばしするために、なんとG7を完全に利用しているんです。
これは正直びっくりです。利用する、といってもG7に入って、突然こんな提案を行うわけはありません。

G7各国に対しても事前から根回しが行われているはずですし、はっきり言って日本以外のG7各国にとっては、突然「財政出動」だとか言われても、なんのこと、突然? となるはずです。

つまり、安倍首相の伊勢志摩サミットにおける発言について、肯定しながらも、いささか否定的な考え方を私は記しているわけです。

ですが、このところ、逆に「本当にそうなのだろうか?」という疑問がわいてくる場面がありました。
私としても現在の世界経済が「リーマンショック級の危機」にあるなどとはとても思いません。

ですが、同様のリスクを抱える状況にないと、本当に言えるのだろうか、と考えています。
後段では、タイトルにもあるように、「外需依存度」というキーワードに着目して記事を作成したいと思います。


「外需依存度」から見る世界経済

この考え方のベースとなったのは、リーマンショックが発生した後に開かれたG20金融サミットにおける麻生さんの発言にあります。
第19回の記事をご参照ください)
重要な点として、この問題の根底にはグローバルなインバランス(経常収支不均衡)の問題があり、基軸通貨国アメリカへの世界中からの資本流入という形で、アメリカの赤字がファイナンスされるという根本があることを忘れてはなりません。

したがって、過剰消費国(アメリカ)において消費抑制策の実施と、同時にアメリカの巨大な消費需要に支えられて経済成長を遂げていた外需依存度の大きな国々において、自律的な内需主導型モデルへとシフトするときなのです。

これは、麻生さんが当時、リーマンショックが発生した理由について、麻生さんの考え方を述べた文章で、これに対する解決方法とセットでご自身の考え方を述べています。

整理しますと、

【リーマンショックが発生した理由】
グローバルなインバランス(経常収支不均衡)の問題があり、基軸通貨国アメリカへの世界中からの資本流入という形で、アメリカの赤字がファイナンスされるという根本があること

【解決するための方法】
過剰消費国(アメリカ)において消費抑制策の実施と、同時にアメリカの巨大な消費需要に支えられて経済成長を遂げていた外需依存度の大きな国々において、自律的な内需主導型モデルへとシフトする

となります。何を言っているのか意味が分からない、と思う方もたくさんいらっしゃるかもしれません。

簡単に言えば、

【リーマンショックが発生した理由】
(アメリカ以外の先進国も含めた)外需依存度の高い国が、自国内では消費が起きないため、巨大な消費国であるアメリカに輸出して自国経済を潤していること。

【解決するための方法】
アメリカは巨大な消費を抑制する政策を行い、外需依存度の高い国はもっと自国内の需要を高め、自国内で経済を回せる仕組みを作ること。

と、いうことです。これでもまだ難しい、と感じるかもしれませんが、おぼろげながらでもご理解いただけると嬉しく思います。

ものすごく簡単に言うと、リーマンショックを引き起こした理由は、当時「外需依存度の高かった国」の外需依存度が高いことに原因があったことになりますから、リーマンショック前と比較して、その国の「外需依存度」がいまだに高い状況にあるとすれば、それは未だに「リーマンショック前の状況」から抜け出せていないことになります。

日本の外需依存度

外需依存度とは、簡単に言えば「輸出額+輸入額」の「国内GDP比」ということになります。では、まず最初に日本の「外需依存度」を見てみます。

【日本の貿易依存度の推移】・【日本の輸出入額の推移】
日本の輸出入額日本の貿易依存度
データは世界のネタ帳様より拝借し、私流に加工してあります。

他国と比較しやすいよう、輸出入額の推移は、金額の上限を4500(10億USドル)で固定しています。
このグラフで見ますと、日本の「貿易依存度」はリーマンショック時が31.84%、最新の2014年が32.77%ですから、GDPに占める「貿易依存度」は上昇していることが分かります。
但し、ドルベースで見る「輸出入額」では減少していますので、必ずしも貿易への依存性が高まっている、とは言いにくそうです。

発展途上国や新興国に関しては、どうしても貿易(外需)への依存度が高くなりがちですので、今回はそれ以外の、所謂「先進7ヵ国」についての資料を比較してみることにします。

アメリカの外需依存度

では、麻生さんが「世界中から資本が流入している」というアメリカの依存度はどのようになっているのでしょう。

【アメリカの貿易依存度の推移】・【アメリカの輸出入額の推移】
アメリカの貿易依存度アメリカの輸出入額

アメリカの貿易依存度は23.25%です。
アメリカの輸出額は1.6兆ドル、輸入額は2.4兆ドルです。その差額はマイナス0.6兆ドル。2014年の時点では、米国の「貿易赤字」はまったく解消されていません。

ちなみに、同じ北米の先進国、カナダの貿易依存度は下記のとおりです。

【カナダの貿易依存度の推移】・【カナダの輸出入額の推移】
カナダの貿易依存度カナダの輸出入額
50%を上回る高い依存度となっていますが、リーマンショック時は下回っていますし、経済の規模は米国や日本を大幅に下回る規模ですから、そこまで大きな影響はないものと思われます。


欧州先進国の外需依存度

さて。この「外需依存度」を考える場合、特に問題となるのが、この欧州の「外需依存度」です。

【ドイツの貿易依存度の推移】・【ドイツの輸出入額の推移】
ドイツの貿易依存度ドイツの輸出入額

こちらはドイツの貿易依存度、および輸出入額です。
見ていただくとよくわかると思いますが、ドイツの貿易(外需)依存度は70.29%。日本やアメリカと比較しても、実に倍以上の依存度です。ドイツのGDPの規模は、ドルベースで考えると、日本のGDPを1兆ドル近く下回り、米国と比較すると1/5~1/6程度の規模になります。

このような状況の中で、、日本の貿易額を1.2兆円近く上回り、アメリカの貿易額の67%規模の金額を輸出しています。
リーマンショック時の貿易依存度が69.79%ですから、リーマンショック時の依存度を上回っており、また輸出額も、輸入額もともにリーマンショック時の水準を上回っています。

では、他の欧州先進国の状況はどうでしょう。

【イギリスの貿易依存度の推移】・【イギリスの輸出入額の推移】
イギリスの貿易依存度イギリスの輸出入額

【フランスの貿易依存度の推移】・【フランスの輸出入額の推移】
フランスの貿易依存度フランスの輸出入額

【イタリアの貿易依存度の推移】・【イタリアの輸出入額の推移】
イタリアの貿易依存度イタリアの輸出入額

フランスとイタリアは40%を上回る規模、イギリスは39%を上回る規模ですね。
フランス、イタリアはリマンショック時を依存度、金額ともに下回っています。

イギリスはリーマンの時を上回ってはいるものの、2011年から連続して下落する傾向にあることと、フランスやイタリアも同様に輸出額の規模がドイツほど大きくないことを考えると、特に日本が訴えていた「財政出動政策」を要求していた相手は誰かと考えると、これはピンポイントで「ドイツ」なのではないかという推論が成り立ちます。

(計算方法は、ドルベースの輸出入額をドルベースのGDPで割って算出していますので、特に「貿易依存度」で見る場合、為替変動の影響は排除しています。
例えば円ベースに換算する場合、輸出入額にも、GDPにも1ドル当たりの円を掛け算します。ですが、「依存度」を算出する場合は分母にも分子にも同額の為替相場円が含まれることになりますので、約分されて計算式の中から消えてしまう値になります。)

この傾向を見ますと、ドイツの経済モデルとして、国内では緊縮財政政策を取り、経済の成長は輸出入によって稼ぐ、という経済モデルが見えてきます。麻生さんがドイツの財務大臣と議論をした時に、ドイツの財務大臣が麻生さんに対して何を言ったのかということが、なんとなく見えてきます。

ドイツのGDPは現地通貨ベースで成長し続けていますので、仮に麻生さんがドイツに対して財政出動による内需拡大を要求したとしても、「うちは緊縮財政政策を行っても、きちんと経済成長を果たしている。お宅は財政健全化もできず、経済も成長できていない。全く説得力がない」と言われたのではないかと、なんとなく想像がつきます。

麻生さんからすると、「お宅が外需に依存しているから国際的な経済危機が起きるとピンポイントで日本がダメージを受ける」といいたいのでしょうが、これを聞き入れてもらえない。そんな状況があるのではないでしょうか。

ドイツがやっていることは、あれだけの経済危機を体験していながら、いまだにリーマンショック並みのことをしているわけです。

世界第二位の経済大国

もう1カ国、気になる国がありますね?
そう。「中国」です。

【中国の貿易依存度の推移】・【中国の輸出入額の推移】
中国の貿易依存度中国の輸出入額

中国に関しては、他のどの国にも見られない、「異常」ともいえる状況が生まれています。
リーマンショック以前には60%を上回る外需依存度であった中国ですが、2014年は41%程度にまでその依存度は縮小しています。
ですが、その「輸出額」を見ますと、2.3兆ドル。リーマンショックの時と比較して1兆ドル規模の輸出金額を増やしているのです。1兆ドルは日本円に換算すると106兆円程度になります。
輸出入を合計した「外需」が合計で4.3兆ドル。日本のGDP規模の金額になります。リーマンショック前と比較すると約2兆ドル規模の拡大です。

これだけの「外需」を増やしていながら、なんとその外需依存度は減少し続けている・・・という珍現象。
中国には20の省(日本でいう都道府県)があるわけですが、この20省のGDPを合計すると、なんと中国1国のGDPを上回ってしまう・・・というとんでもない国ですから、その信ぴょう性や推して知るべし、ですね。

ちなみに・・・

お隣韓国の外需依存度の推移はこんな感じです。

【韓国の貿易依存度の推移】・【韓国の輸出入額の推移】
韓国の貿易依存度韓国の輸出入額

2014年時点の話にはなりますが、韓国の輸出額はイタリア、イギリス、カナダを抑えてなんと全体で第7位。
輸入額はカナダ、イタリアを抑えて全体で第9位。韓国は堂々の「貿易大国」なのです。

そんな韓国の貿易依存度は77.86%。輸出依存度は40.6%、輸入依存度は37.26%。
ドイツを抑えて、全ての先進国を上回る依存度にあります。

まとめ

このような状況を見ると、麻生さんのいう

『グローバルなインバランス(経常収支不均衡)の問題』も、
『基軸通貨国アメリカへの世界中からの資本流入という形で、アメリカの赤字がファイナンスされるという根本』も、

何も解消されておらず、いまだに

『アメリカの巨大な消費需要に支えられて経済成長を遂げていた外需依存度の大きな国々』

は未だに『外需依存度の大きな国々』のままであり続けている様です。

安倍さんは「リーマンショック前後の状況によく似ている」といいましたが、これは言ってみると、あの時から何も状況は変わっていない、とも言えるのではないでしょうか。

私は基本危機感をあるような記事は作成しませんが、やはり本当の意味で日本経済を「リーマンショック級の危機」から救いたいのであれば、やはり日本1国で考えるのではなく、先進7か国を中心としたさまざまな国々との信頼関係を築き、何があっても世界がちょっとやそっとでは動揺することがないような、「内需主導」の経済政策を手掛けることが必要なのではないかと、本日の解析結果から感じました。

ただ、実は本日お示ししたのは「貿易収支」に関する情報であり、「物」や「サービス」を介在させた資金の移動を指示したもので、もう一つ、物やサービスを介在させない、「投資」に関する疑問までを払拭できたわけではありません。

次回記事では、「対内直接投資」と「対外直接投資」という2つのキーワードに着目して記事を作成したいと思います。




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