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第277回 日米開戦とハルノート/甲案・乙案の意味(11月20日日本側対案)

今回の記事は、ここまで記してきた、シリーズ十五年戦争(日中戦争)の原因と結果 及びなぜ日本は第二次世界大戦(大東亜戦争)を起こしたのか の総括になるかと思います。

どんなに綺麗事を並べ立てたとしても、結果的に何十万もの人の命を奪い、悲惨な結果をもたらした「開戦」そのものを正当化し、賛美することは出来ません。

ですが、それでももしこの時日本の大本営陣営が開戦を決意せず、戦前の状況を放置していたとしたら、ひょっとしたら現在の日本の状況は現在の北朝鮮の様に無残な状況となり、中国やソ連などの社会主義陣営の影響下に置かれていたのかもしれません。

そう考えると、ある意味ゾッとする話です。

所謂「赤紙」によって戦地へと駆り出され、「英霊」という表現が適切かどうかは私にはわかりませんが、罪もない沢山の日本の民間人が命を落とすこととなった第二次世界大戦ですが、これだけの命を犠牲として、大本営陣営は日本の「誇り」と「高潔さ」を守り抜いたのではないかと、ここまで調べてみて現在ではそう思うのです。

現在私たちが生活する日本の「平和」があるのは、間違いなくあの時代、日本の「誇り」と「高潔さ」を守り抜くため、時に大切な家族との身を切られるような決別を行った沢山の先輩方のおかげである、と。


改めて検証するハルノート

【ハルノート】
日米交渉11月26日米側提案
(1941年11月27日来電、第1192号、1193号)

合衆国及び日本国間協定の基礎概略

第1項 政策に関する相互宣言案

合衆国政府及び日本政府は共に太平洋の平和を欲し其の国策は太平洋地域全般に亙(わた)る永続的且つ広汎なる平和を目的とし、 両国は右地域に於いて何等領土的企図を有せず、 他国を脅威し又は隣接国に対し侵略的に武力を行使するの意図なく又その国策に於いては相互間及び一切の他国政府との間の関係の基礎たる左記根本諸原則を積極的に支持し且つ之を実際的に適用すべき旨宣明す。

 1.一切の国家の領土保全及び主権の不可侵原則

 2.他の諸国の国内問題に対する不干与の原則

 3.通商上の機会及び待遇の平等を含む平等原則

 4.紛争の防止及び平和的解決並びに平和的方法および手続に依る国際情勢改善の為国際協力及び国際調停遵拠の原則

日本国政府及び合衆国政府は慢性的政治不安定の根絶、頻繁なる経済的崩壊の防止及び平和の基礎設定の為め、相互間並びに他国家及び他国民との間の経済関係に於いて左記諸原則を積極的に支持し、 且つ実際的に適用すべきことを合意せり

 1.国際通商関係に於ける無差別待遇の原則

 2.国際的経済協力及び過度の通商制限に現れたる極端なる国家主義撤廃の原則

 3.一切の国家に依る無差別的なる原料物資獲得の原則

 4.国際的商品協定の運用に関し消費国家及び民衆の利益の十分なる保護の原則

 5.一切の国家の主要企業及び連続的発展に資し、且つ一切の国家の福祉に合致する貿易手続きによる支払いを許容せしむるが如き国際金融機構及び取極め樹立の原則


第2項 

合衆国政府及び日本国政府の採るべき措置

合衆国政府及び日本国政府は左記の如き措置を採ることを提案す

 1.合衆国政府及び日本国政府は英帝国支那、日本国、和蘭(オランダ)、蘇連邦、泰国、及び合衆国間多辺的不可侵条約の締結に努むべし

 2.当国政府は米、英、支、日、蘭、及び泰政府間に各国政府が仏領印度支那の領土主権を尊重し、且つ印度支那の領土保全に対する脅威に対処するに必要且つ適当なりと看做(みな)さるべき措置を講ずるの目的を以って即時協議する旨誓約すべき協定の締結に努むべし

 3.斯かる協定は又協定締約国たる各国政府が印度支那との貿易若しくは経済関係に於いて特恵的待遇を求め、又は受けざるべく且つ各締約国の為仏領印度支那との貿易及び通商に於ける平等待遇を確保するが為尽力すべき旨規定すべきものとす

 4.日本国政府は支那及び印度支那より一切の陸、海、空軍兵力及び警察力を撤収すべし

 5.合衆国政府及び日本国政府は臨時に首都を重慶に置ける中華民国国民政府以外の支那に於ける如何なる政府、若しくは政権をも軍事的、経済的に支持せざるべし

 6.両国政府は外国租界及び居留地内及び之に関連せる諸権益並びに1901年の団匪事件(義和団事件の事)議定書に依る諸権利を含む支那に在る一切の治外法権を放棄すべし

 7.両国政府は外国租界及び居留地に於ける諸権利並びに1901年の団匪事件議定書による諸権利を含む支那に於ける治外法権廃棄方に付き英国政府及び其の外の政府の同意を取り付くべく努力すべし

 8.合衆国政府及び日本政府は互恵的最恵国待遇及び通障壁の低減並びに生糸を自由品目として据え置かんとする米側企図に基き合衆国及び日本国間に通商協定締結の為協議を開始すべし

 9.合衆国政府及び日本国政府はそれぞれ合衆国に在る日本資金および日本国に在る米国資金に対する凍結措置を撤廃すべし
 10.両国政府は円払い為替の安定に関する案に付き協定し右目的の為適当なる資金の割り当ては半額を日本国より半額を合衆国より給与せらるべきことを合意すべし

 11.両国政府は其の何れかの一方が第三国と締結しおる如何なる協定も同国に依り本協定の根本目的即ち太平洋地域全般の平和確立及び保持に矛盾するが如く解釈せらるべきことを同意すべし

 12.両国政府は他国政府をして本協定に規定せる基本的なる政治的経済的原則を遵守し、且つ之を実際的に適用せしむる為其の勢力を行使すべし

コーデル・ハル


結論からいうと、このハルノートを日本に対する「最後通牒」としてアメリカ側が示したものであったかどうかというと、ハルノートを日本に対する「最後通牒」とすることはあまりにも無理があります。

ですが、同時にこのハルノートは、日本が米国との間で1941年3月より9か月近くにわたって行ってきた「交渉」を完全にご破算にするものでした。

これまでお互いに真剣に交渉し続けてきたはずの「日米諒解案」を、ハルは突如「これは第三国を招いて交渉を進めていくためのたたき台である」と言いはじめ、これまでの交渉をなかったことにし、議論を6月21日の時点に戻って、もう一度やり直しましょう、と言ってきたわけです。

日本側とすると、南部仏印進駐に対し、米国がどのような反応を示すか。これを試金石として対米開戦を決意しました。
これ、所謂「地政学」的な見地なんでしょうね。

フランス領インドシナは最後までヴィシー政府を指示しており、ヴィシー政府の意向に従って日本の仏印進駐に応じていたのです。
ですが、事態は刻一刻と開戦に向けた緊迫性を増す時期にあり、仮に仏印が米国に説得され、自由フランス側に寝返ってしまうと、日本側としては非常に不利な状況に陥ってしまいます。

ドイツが対ソ開戦を行い、日本が蘭印との交渉に失敗したことで、俄かに「対米開戦」は考えておかなければならない選択肢の一つとして顕在化してしまいました。

このことでソ連は連合国と連携する関係となり、米ソがお互いに支援しあう関係となることも可能性として浮上することになります。
ですが、そもそも日本がドイツと同盟関係を結んだのはソ連に対抗する為であり、日本にとって脅威となるのはドイツではなくソ連なのです。

日本が最も恐れていたのは、蒋介石軍以上に、ソ連共産党による「赤化政策」にこそありました。これぞまさに諸悪の根源です。
日本に取って、「対ソ開戦」はあっても、「対独開戦」はありえない選択肢なのです。

仮に米国が欧州戦線に参戦し、欧州でドイツが敗れるようなことがあれば、日本は、今度は「ソ連」という脅威の影響をダイレクトに受けることとなります。

日本は樺太を挟んでソ連と直接国境を接していますし、日本に取ってドイツの敗北は、「対岸の火事」では済まない問題です。
また同じくソ連と連繋する関係にある蒋介石軍を承認し、汪兆銘政権を否認するということは、更にその「赤化の脅威」が満州や朝鮮半島へも押し寄せることを示しています。

所謂ハルノートでは、日本に対して

 「日本国政府は支那及び印度支那より一切の陸、海、空軍兵力及び警察力を撤収すべし」

と言ってきているわけで、これが日本にとっていかに危険な選択肢であるのかということは想像に難くありません。

そもそも、米国は日本の蒋介石軍や東南アジアに対する行為を「侵略である」としていますが、米国の本音としては、「中国に対する侵略」ではなく、「中国や東南アジアに於いて米国が保有する権益に対する侵略」のことを意味しているわけです。

日本の対蒋介石軍戦の目的は、あくまでも中国に居留する日本人の身の安全を確保し、安心して経済活動を行えるようにするため。

過去の記事でも記したことがあるかもしれませんが、現在でも日本国企業は中国に進出し、中国国内に経済的拠点をたくさん保有しています。逆に中国も日本国内に拠点を有していますし、米国も同様です。

これを「権益」と呼ぶのであれば百歩譲って米国側の主張は正しいと言えなくはありませんが、米国の考え方はそうではありません。

「全」か「無」か。例えば自分たちがフィリピンに保有する石油利権を日本軍が侵略し、奪おうとしている、というような発想しかできないのですよ、彼らは。

ですが、そもそもフィリピンは米国人の国ではありませんし、本当にそれをいうのであれば、米国人はフィリピンから完全に撤退し、現地人にその権益を含めてすべて譲り渡さなければなりません。

米国人はそんなことは絶対にしませんね?

日本は別に蒋介石軍を追い払った後、中国を支配し、中国経済を牛耳ることで自国の利益につなげようとか、そういうことは一切考えていません。中国軍を追い払った後で、現地中国軍に対して日本式の教育を施し、常識ある判断が出来る人民に育て、その後日本と中国との間で共通の経済圏を築き、お互いの発展につなげましょうと、そういう考えしかしていないわけです。

正しく「八紘一宇の精神」ですよね。

日本は米国との間でそういう話し合いをして来たつもりだったわけですが、米国は全く理解しようとすることなく、「で、結局『私たち米国人が中国や東南アジアに保有する権益』を侵略しようとしているのでしょう?」

という認識しかできていないわけです。
そして、自分たちの権益を守るために日本に経済制裁を課し、最終的には石油輸出全面禁止にまで至りました。

この状況で米国は

 「もう一遍最初から話し合いましょうよ」

と日本側に要求してきた、というのがあの「ハルノート」の正体です。そして自分たちの権益を守るために蒋介石軍を支援し、日本との戦争を長引かせてきたのです。

これに英国とオランダが同調し、日本に経済制裁を課したのがあの「ABCD包囲網」です。
日本は自国民の「安全」を守るために必死なのに、米国にとっては「マネーゲーム」でしかないわけです。

英国大使であるクレーギーはこのことをきちんと理解しましたし、ヴィシー政府もまた一定の理解を示しました。
ところが、米国だけは違った。なぜなら、米国だけは「開戦に至る脅威」には一切晒されていないからです。

日本にとっては蒋介石軍と「ソ連」という脅威が迫っていましたし、欧州はまさに「戦争」という脅威の真っ只中に晒されていました。

ですが、米国にとっては、「自分たちが支配している植民地が他国に奪われる」程度の脅威しか存在しないのです。

この差は大きいと思います。
米国ほど「自衛のための参戦」という言葉が空々しく感じられる国はありません。

そして1941年12月7日、日本はついに「真珠湾攻撃」を決行します。

真珠湾攻撃

次回記事では、いよいよ日本軍が行った「真珠湾攻撃」にポイントを絞って記事にしたいと思います。


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第276回 2016年(平成28年)12月名目賃金と実質賃金(速報)

21日に 速報値の記事 を掲載したばかりだったのですが、どうもその翌日に確報値が掲載されていたらしく、そしてまたその速報値とのギャップがなかなか鮮やかなので、今回は珍しく「速報値」と「確報値」を合わせて掲載します。


「速報値」と「確報値」の比較

【2016年(平成28年)12月現金給与総額速報値】
調査産業計(12月)

【2016年(平成28年)12月調査産業計確報値】
調査産業計-2

さて、いかがでしょう。

速報値では、名目が0.1%成長、実質が-0.4%成長であったわけですが、これが確報値では名目0.5%成長、実質0.1%成長と、実に理想的な形に変わっているではありませんか。

6月や7月の情況は、原油価格の下落に伴って国内の消費者物価が下落する中で起きた現象です。
「原油価格」が高騰して日本国内で利益を上げられる企業はまずありませんから、これが「下落」するだけで、その下落した分が他の「消費」または「貯蓄」へと回されることになります。

日本国内にとってみればこれは非常に理想的な状況なのですが、原油価格だっていつまでも下落し続けるわけではありません。
大切なのは、「輸入物価の下落」に頼らずともきちんと利益を上げていける経済構造。

そのためにはやはり「物価」が上昇する中で「実質」も上昇する構造が一番望ましいわけです。

例えば天候不順に伴う生鮮食品の価格高騰や、海外の投機的な動きに伴った輸入価格の上昇などが原因で物価が上昇する場合は、これは日本の企業の利益を圧迫しますから、仮に名目と物価が共に上昇したとしても、実質にはマイナス要因として作用します。

だからこそ、「生鮮食品」や「輸入価格(エネルギー価格)」の動向に頼らず、日本国内の「内需」に起因する経済動向で物価を上昇させ、同時に「実質値=消費量」をも上昇させるような経済構造が必要になります。

勿論今回の話題は「消費」ではなく「賃金」に於ける名目値と実質値の問題ですから、「消費」とは必ずしも同列には語れませんけどね。


「速報値」と「確報値」が乖離した理由

さて。では、今回の名目賃金と実質賃金が、「速報値」と「確報値」の値がここまで開いた理由とは一体なんだったのでしょう。

【2016年(平成28年)12月決まって支給する給与速報値】
決まって支給する給与(12月)


【2016年(平成28年)12月決まって支給する給与確報値】
決まって支給する給与(12月)-2


第276回の記事 でも記しましたが、「決まって支給する給与」とは、「基本給+時間外手当」のことです。
グラフで見る限り、この項目は速報値と確報値との間で大きな変化はありませんね。

【2016年(平成28年)12月所定内給与速報値】
所定内給与(12月)


【2016年(平成28年)12月所定内給与確報値】
所定内給与(12月)-2

こちらは、いかがでしょう。「所定内給与」、つまり「基本給」の事です。
こちらは残念ながら、「名目賃金指数」が前年度比0.5%から0.4%上昇にダウン。合わせて「実質賃金指数」も「0.0%上昇」から「0.1%の下落」へと転じています。

ただ、確かに実質値は下落に転じていますが、特に「賃金指数」で考える場合、まずは「名目」です。
「物価」や「消費」で考える場合は、確かに「何が原因で上昇したのか」または「下落したのか」ということを考える必要があるのですが、賃金の場合は違います。

賃金は企業が生まれた利潤を労働者に還元するものですから、「輸入物価が上昇した」としても賃金は増えません(物価や消費『額』は上昇します)。むしろ下落します。

名目賃金が上昇するということは、「起業の利潤が増えている」ということを表しているからです。


少し話が脱線しましたが、「決まって支給する給与」に変化がなく、「所定内給与」の上昇幅が縮小したということは、「現金給与総額」の賃金指数が名実共に改善している理由はこの二つの要因ではないとういことです。

寧ろ、、「決まって支給する給与」に変化がなく、「所定内給与」の上昇幅が縮小したのであれば、この二つの項目は「現金給与総額」の賃金指数を悪化させる要因として働いていることになります。

では、一体なぜ「調査産業計の賃金指数」は名実共に改善したのでしょうか。

第276回の記事 をお読みいただいたかたはもう気づいているかもしれませんね?

「現金給与総額の賃金指数」が名実共に改善した最大の理由は、「特別に支払われた給与」。つまり「ボーナス」です。

速報値の段階では、2016年12月に支払われたボーナスは従業員一人当たり平均で28万4327円。
前年、2015年12月のボーナスが28万4537円ですから、割合にして約0.1%のマイナス。名目値で前年度割れと試算されていました。

所が、確定値では2016年12月に支払われたボーナスは従業員一人当たり平均で28万6866円。
0.8%のプラス成長です。持家に帰属する家賃の消費者物価指数が0.5%ですから、実質値では0.3%のプラス成長になります。

そう。このボーナスの大幅改善こそが「速報値」と「確報値」を乖離させた最大の理由だったのです。

前回の記事で、仮にほぼすべての被雇用者の賃金が増えていたとしても、

 「平均賃金を下回る給与所得者の数」×「平均賃金を下回る給与所得者の平均賃金上昇額」

が、

 「平均賃金を上回る給与所得者の数」×「平均賃金を上回る給与所得者の平均賃金上昇額」

を上回っていた場合、平均賃金は下落する、という話をお伝えしました。
特に安倍内閣スタート時の様に、大量の無職者が有職者となるようなケースであれば、元々賃金が「0(ゼロ)」であった無職者が、一斉に賃金を手にするようになるわけですから、当然

 「平均賃金を下回る給与所得者の数」×「平均賃金を下回る給与所得者の平均賃金上昇額」

の値は急速に上昇します。ですから、無職者が減り、給与所得者全体の賃金が上昇したとしても、「名目賃金が下落する」という様な矛盾が公然に発生していました。

で、この現象は「基本給」にのみ起きる現象ではなく、当然「ボーナス」に関しても発生します。
つまり、

 「平均ボーナスを下回る給与所得者の数」×「平均ボーナスを下回る給与所得者の平均ボーナス上昇額」



 「平均ボーナスを上回る給与所得者の数」×「平均ボーナスを上回る給与所得者の平均ボーナス上昇額」

を上回っていれば、当然「平均ボーナス」の金額は減少します。
例え給与所得者全員のボーナスの額が増額していたとしても、です。

速報値の段階では、ボーナスの名目賃金指数が0.1%のマイナスでしたから、私は

 「平均ボーナスを下回る給与所得者の数」×「平均ボーナスを下回る給与所得者の平均ボーナス上昇額」



 「平均ボーナスを上回る給与所得者の数」×「平均ボーナスを上回る給与所得者の平均ボーナス上昇額」

を上回っている

から発生した現象である、と指摘したのですが、なんと確定値ベースではこの「名目前年同月比」が0.8%ものプラス上昇。
速報値を0.9%も上回る結果です。

私が、中間層の見方 によってお示しした様に、安倍内閣に入って以来、毎年継続して「低所得者」の数が下落し、「中間層」の水準がどんどん上昇している傾向はとても顕著となってきています。

ボーナスの傾向も逆転し、

 「平均ボーナスを上回る給与所得者の数」×「平均ボーナスを上回る給与所得者の平均ボーナス上昇額」



 「平均ボーナスを下回る給与所得者の数」×「平均ボーナスを下回る給与所得者の平均ボーナス上昇額」

を上回っている

という情況に変化したということですね。

これは今回の賃金指数の見方としては非常に特徴的な部分だと思います。
2016年(平成28年)12月賃金指数の総評としては、

「アベノミクスの効果が、ついにボーナスの分野でもはっきりと見えるようになった」

というのが今回の私の総評でございます。


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第274回 日米開戦決断に至る経緯/第三次近衛文麿内閣解散に至る経緯

今回の記事では、第274回記事 にてお示しした「9月25日日本側対案」に引き続き米国側に示される「11月20日対案」の原型となる、「甲案」及び「乙案」について記事にしたいと思います。

松岡が去り、近衛内閣が総辞職し、ついに「東條英機」が政権の中心の座に就きました。
今後の交渉は「近衛内閣」ではなく「東條内閣」によって行われます。

東條英機

【対米甲案及乙案】
昭和16年11月5日御前会議決定
対米甲案及乙案

甲案
(1) 通商無差別問題
九月二十五日案にて到底妥結の見込みなき際は「日本国政府は無差別原則が全世界に適用せらるるものなるに於ては太平洋全地域即ち支那に於ても本原則の行わるることを承認す」と修正す

(2) 三国条約の解釈及履行問題
我方に於て自衛権の解釈を濫りに拡大する意図なきことを更に明瞭にすると共に三国条約の解釈及履行に関しては従来屢々説明せる如く帝国政府の自ら決定する所に依りて行動する次第にして此点は既に米国側の了承を得たるものなりと思考する旨を以て応酬す

(3) 撤兵問題
本件は左記の通り緩和す
(A) 支那に於ける駐兵及撤兵
支那事変の為支那に派遣せられたる日本国軍隊は北支及蒙疆の一定地域及び海南島に関しては日支間平和成立後所要期間駐屯すべく爾余の軍隊は平和成立と同時に日支間に別に定めらるる所に従い撤去を開始治安確立と共に二年以内に之を完了すべし

(註)所要時間に付米側より質問ありたる場合は概ね二十五年を目途ろするものなる旨を以て応酬するものとす

(B) 仏印に於ける駐兵及撤兵
日本国政府は仏領印度支那の領土主権を尊重す、現に仏領印度支那に派遣せられ居る日本国軍は支那事変にして解決するか又は公正なる極東平和の確立するに於ては直に之を撤去すべし、尚四原則に付ては之を日米間の正式妥結事項(了解案たると又は其他の声明なるとを問わず)中に包含せしむることは極力回避するものとす


乙案
(1) 日米両国政府は孰れも仏印以外の南東亜細亜及南太平洋地域に武力的進出を行わざることを確約す
(2) 日米両国政府は蘭領印度に於て其必要とする物資の獲得が保障せらるる様相互に協力するものとす
(3) 日米両国政府は相互に通商関係を資産凍結前の状態に復帰すべし 米国政府は所要の石油の対日供給を約す
(4) 米国政府は日支両国の和平に関する努力に支障を与うるが如き行動に出でざるべし

備考
必要に応じ本取極成立せば南部仏印駐屯中の日本軍は北部に移駐するの用意あること並に日支間和平成立するか又は太平洋地域に於ける公正なる平和確立する上は前記日本軍隊を撤退すべき旨を約束し差支なし
必要に応じては甲案中に包含せらるる通商無差別待遇に関する規定及三国条約の解釈及履行に関する既定を追加挿入するものとす

経緯からすると、米国は9月25日に日本側が示した対案に対し、改めて

 「ハル四原則の確認」 及び 「仏領インドシナおよび中国からの撤兵の要求」

がなされます。
日本側は、米国の要求に応じて松岡を外相から外した上で、この「25日対案」を示したわけですが、結局お互いに平行線。
妥結に至ることはありませんでした。

タイミング的には8月に日本軍による「南部仏印進駐」が実行され、米国は日本に対し「石油輸出全面禁止」を敢行。
資源の枯渇という危機に晒される日本としては、この後対米国戦の準備を進めながら、同時に戦争回避に向けた交渉を進めていくこととなります。

例えば、11月7日には「機密連合艦隊命令作第二号」というものが出されていて、作戦(真珠湾攻撃)の結構予定日を12月8日して、連合艦隊司令長官をあの山本五十六が務める、潜水艦隊が11月10日~20日にかけて出発しています。


「ハル」より改めて行われた「要求」に対する回答して作成されたのが前記した「甲案」と「乙案」。
交渉役は野村大使です。

そしてこの甲案および乙案は日本の「最終案」。
日本側とすれば、これ以上は妥協するつもりはありませんよ、という日本側からのメッセージです。

交渉の進め方として、野村は先ず「甲案」を中心に交渉を進めます。
これで妥結に至らなかった場合は「乙案」を中心に交渉を進める、という形です。

「機密連合艦隊命令作第二号」が発令されたその日に野村は米国側に「甲案」を手渡すわけですが、その3日後、つまり「機密連合艦隊命令作第二号」が実行に移されたその日、野村は米国側より、

 「アメリカ政府は日本が近日中に武力行使を実施するという確実な情報を得ている」

という趣旨の内容を告げられたことを日本側に報告します。
そして、この時米国側より、「日本の出方によっては米国も『対日開戦』を辞さない」とも告げられています。

また、その翌々日(11月12日)、東郷外務大臣は「天津英租界封鎖事件」に於いて、当時の日本の有田外相と交渉した「クレーギー英大使」と会談し、クレーギーより米国のハルが

 「日米会談は予備的意見交換の域をでないものである」

と説明していた、との情報を受けます。
つまりこれは交渉ではなく、今後の日米の対重慶政府、対欧州戦争、対南方政策についての方針を決めるための「予備的な意見交換である」とハルはクレーギーに説明した、との報告を受けたわけです

これはさすがに「馬鹿にしているのか!」と感じたのではないでしょうか。
日本は当然日中戦争に対して早く決着をつけたい、と考えているわけで、これを裏側から支援し続ける米国に対して「こんなことはいいかげんにしてほしい」と散々メッセージを送っていたわけです。

その上で資源の対日輸出を全面的にストップされ、日本としては後がない状態にまで追い込まれているのです。
対米開戦まで決意して、国内では閣僚間で喧々諤々、意見をぶつけ合って喧嘩までして話し合いを続けていたのに、これを「予備的な『意見交換』」だとか。

日本に取ってはこの交渉結果はまさしく「死活問題」となるのに、米国はまるで「ゲーム」でもあるかのようにしてこの交渉を進めていたということです。

東郷はクレーギーに対し、「日本側が最終提案を行い交渉は最終段階に入っている」と通告します。

勿論ポジティブな意味合いではありませんね。
この交渉がまとまらなければ米国に戦争を仕掛けますよ、と言ったに等しいわけです。

実際既に潜水艦隊を真珠湾に向けて発信させた後ですし。

ハルは野村に対し、「甲案」への返答の代わりに、「甲号」「乙合」という二つの「オーラルステートメント」を提示しました。

ハルは東條内閣に対して、「新内閣もこれまでの(近衛)内閣と『日米諒解案』に対する立場は一緒なのか」ということを「甲号」で問いかけた上で、さらに「乙号」にて、「日中和平に対する思いつき」を説明しています。

ハルのこののらりくらりした態度に対して、野村大使も「遺憾なものである」と発言しています。

この間にも日本に於いては開戦に向けた準備が進められており、この時点で「南方」には、既に「蘭領東インド、マレー半島、フィリピン諸島」を攻略するための部隊が編成されています。

11月15日、大本営陸軍部より、南方軍に対して攻撃命令が発令されます。(この時点での作戦開始は保留されています)


「11月20日日本側対案」の提示

さて。このような状況の中、東郷は「業を煮やした」のでしょうか。
野村大使に加えて米国に対し、更に「来栖三郎大使」を派遣します。

そして11月20日、米国に提示されたのが「乙案」。つまり日本側の「最終案」です。


米国側からの回答が遅々として得られない中、11月26日、ついに「真珠湾攻撃」を行う為の「ハワイ作戦部隊」が択捉島ヒトカップ湾より出動します。

もちろん交渉がまとまれば作戦を中止して引き返すよう命令を与えられて。

その翌日、11月26日に米国側より突きつけられたのがあの「ハルノート」でした。

【ハルノート】
日米交渉11月26日米側提案
(1941年11月27日来電、第1192号、1193号)

合衆国及び日本国間協定の基礎概略

第1項 政策に関する相互宣言案

合衆国政府及び日本政府は共に太平洋の平和を欲し其の国策は太平洋地域全般に亙(わた)る永続的且つ広汎なる平和を目的とし、 両国は右地域に於いて何等領土的企図を有せず、 他国を脅威し又は隣接国に対し侵略的に武力を行使するの意図なく又その国策に於いては相互間及び一切の他国政府との間の関係の基礎たる左記根本諸原則を積極的に支持し且つ之を実際的に適用すべき旨宣明す。

 1.一切の国家の領土保全及び主権の不可侵原則

 2.他の諸国の国内問題に対する不干与の原則

 3.通商上の機会及び待遇の平等を含む平等原則

 4.紛争の防止及び平和的解決並びに平和的方法および手続に依る国際情勢改善の為国際協力及び国際調停遵拠の原則

日本国政府及び合衆国政府は慢性的政治不安定の根絶、頻繁なる経済的崩壊の防止及び平和の基礎設定の為め、相互間並びに他国家及び他国民との間の経済関係に於いて左記諸原則を積極的に支持し、 且つ実際的に適用すべきことを合意せり

 1.国際通商関係に於ける無差別待遇の原則

 2.国際的経済協力及び過度の通商制限に現れたる極端なる国家主義撤廃の原則

 3.一切の国家に依る無差別的なる原料物資獲得の原則

 4.国際的商品協定の運用に関し消費国家及び民衆の利益の十分なる保護の原則

 5.一切の国家の主要企業及び連続的発展に資し、且つ一切の国家の福祉に合致する貿易手続きによる支払いを許容せしむるが如き国際金融機構及び取極め樹立の原則


第2項 

合衆国政府及び日本国政府の採るべき措置

合衆国政府及び日本国政府は左記の如き措置を採ることを提案す

 1.合衆国政府及び日本国政府は英帝国支那、日本国、和蘭(オランダ)、蘇連邦、泰国、及び合衆国間多辺的不可侵条約の締結に努むべし

 2.当国政府は米、英、支、日、蘭、及び泰政府間に各国政府が仏領印度支那の領土主権を尊重し、且つ印度支那の領土保全に対する脅威に対処するに必要且つ適当なりと看做(みな)さるべき措置を講ずるの目的を以って即時協議する旨誓約すべき協定の締結に努むべし

 3.斯かる協定は又協定締約国たる各国政府が印度支那との貿易若しくは経済関係に於いて特恵的待遇を求め、又は受けざるべく且つ各締約国の為仏領印度支那との貿易及び通商に於ける平等待遇を確保するが為尽力すべき旨規定すべきものとす

 4.日本国政府は支那及び印度支那より一切の陸、海、空軍兵力及び警察力を撤収すべし

 5.合衆国政府及び日本国政府は臨時に首都を重慶に置ける中華民国国民政府以外の支那に於ける如何なる政府、若しくは政権をも軍事的、経済的に支持せざるべし

 6.両国政府は外国租界及び居留地内及び之に関連せる諸権益並びに1901年の団匪事件(義和団事件の事)議定書に依る諸権利を含む支那に在る一切の治外法権を放棄すべし

 7.両国政府は外国租界及び居留地に於ける諸権利並びに1901年の団匪事件議定書による諸権利を含む支那に於ける治外法権廃棄方に付き英国政府及び其の外の政府の同意を取り付くべく努力すべし

 8.合衆国政府及び日本政府は互恵的最恵国待遇及び通障壁の低減並びに生糸を自由品目として据え置かんとする米側企図に基き合衆国及び日本国間に通商協定締結の為協議を開始すべし

 9.合衆国政府及び日本国政府はそれぞれ合衆国に在る日本資金および日本国に在る米国資金に対する凍結措置を撤廃すべし
 10.両国政府は円払い為替の安定に関する案に付き協定し右目的の為適当なる資金の割り当ては半額を日本国より半額を合衆国より給与せらるべきことを合意すべし

 11.両国政府は其の何れかの一方が第三国と締結しおる如何なる協定も同国に依り本協定の根本目的即ち太平洋地域全般の平和確立及び保持に矛盾するが如く解釈せらるべきことを同意すべし

 12.両国政府は他国政府をして本協定に規定せる基本的なる政治的経済的原則を遵守し、且つ之を実際的に適用せしむる為其の勢力を行使すべし

このハルノートとセットでついて来たのが「ハル」の「オーラルステートメント」です。

【ハルのオーラルステートメント】
Oral
Strictly confidential
November 26, 1941

The representatives of the Government of the United States and of the Government of Japan have been carrying on during the past several months informal and exploratory conversations for the purpose of arriving at a settlement if possible of questions relating to the entire Pacific area based upon the principles of peace, law and order and fair dealing among nations. These principles include the principle of inviolability of territorial integrity and sovereignty of each and all nations; the principle of non-interference in the internal affairs of other countries; the principle of equality, including equality of commercial opportunity and treatment; and the principle of reliance upon international cooperation and conciliation for the prevention and pacific settlement of controversies and for improvement of international conditions by peaceful methods and processes.

It is believed that in our discussions some progress has been made in reference to the general principles which constitute the basis of a peaceful settlement covering the entire Pacific area. Recently the Japanese Ambassador has stated that the Japanese Government is desirous of continuing the conversations directed toward a comprehensive and peaceful settlement of the Pacific area; that it would be helpful toward creating an atmosphere favorable to the successful outcome of the conversations if a temporary modus vivendi could be agreed upon to be in effect while the conversations looking to peaceful settlement in the Pacific were continuing. On November 20 the Japanese Ambassador communicated to the Secretary of State proposals in regard to temporary measure to be taken respectively by the Government of Japan and by the Government of the United States, which measures are understood to have been designed to accomplish the purposes above indicated.

The Government of the United States most earnestly desires to contribute to the promotion and maintenance of peace and stability in the Pacific area, and to afford every opportunity for the continuance of discussion with the Japanese Government directed toward working out a broad-gauge program of peace throughout the Pacific area. The proposals which were presented by the Japanese Ambassador on November 20 contain some features which, in the opinion of this Government, conflict with the fundamental principles which form a part of the general settlement under consideration and to which each Government has declared that it is committed. The Government of the United States believes that the adoption of such proposals would not be likely to contribute to the ultimate objectives of ensuring peace under law, order and justice in the Pacific area, and it suggests that further effort be made to resolve our divergences of view in regard to the practical application of the fundamental principles already mentioned.

With this object in view the Government of the United States offers for the consideration of the Japanese Government a plan of a broad but simple settlement covering the entire Pacific area as one practical exemplification of a program which this Government envisages as something to be worked out during our further conversations.

The plan therein suggested represents an effort to bridge the gap between our draft of June 21, 1941 and the Japanese draft of September 25 by making a new approach to the essential problems underlying a comprehensive Pacific settlement. This plan contains provisions dealing with the practical application of the fundamental principles which we have agreed in our conversations constitute the only sound basis for worthwhile international relations. We hope that in this way progress toward reaching a meeting of minds between our two Governments may be expedited.

読めませんね。。。
私も訳しきれません。ですが、第250回の記事 でも記しました通り、このオーラルステートメントのポイントとなるのは、

「日本大使が提示した11月20日の提案は、和解のための基本原則と矛盾し、受け入れることはできない」
「ハルノートは、1940年6月21日にアメリカが側が出した提案と、日本が9月25日に出した提案のギャップを埋める事を目的としている」

これ、はっきり言って

 「議論を6月21日の時点に戻って、もう一度一からやり為しましょう」

と、ハルはそう言っているのに等しいのです。
いや・・・オタクが資源輸出を全面的にストップしたせいで、日本にはもう「資源」は枯渇する寸前まで来ていて、そんな悠長なことは言ってられないんですけど。

日本がオタク求めているのは「重慶政府への支援を中止すること」と「欧州戦線に参戦しないこと」。
この二つだけです。あんたたちが重慶政府を支援したりさえしなければ、そもそもこんな問題は発生しなかったんですよ、

と、そう言いたかったでしょうね、大本営陣営は。
それをまた一から交渉をやり直せとか、喧嘩うってるんですか、アメリカさん、と。

これまでの経緯を考えれば、これが日本側の本音でしょう。

「ハルノート」が日本に対する「最後通牒」であったとするのは誤りだと思います。
ですが、これを突きつけられて日本が開戦を決意したことはとてもよく理解できます。

次回記事では、改めてハルが突きつけて来た「ハルノート」を、これまでの交渉経過を振り返りながら検証してみたいと思います。


この記事のカテゴリー >>実質賃金と名目賃金


遅ればせながら・・・となるのでしょうか。
今月6日に2016年(平成28年)12月分「毎月勤労統計」が公表されておりまして、ここで12月度賃金指数が発表されておりますので、このことを本日の記事にしたいと思います。

前回の記事 で私の記事の検索結果掲載順位が下落し、ほぼすべてのページに関してアクセス数が下落した事をお伝えしました。

検索順位そのものは全体的に少しずつ回復しつつあるようなのですが、アクセス数は相変わらず・・・
むしろ更に下落しているくらいなのですが、ただ、そんな中でもやっぱりアクセス数が多いのは「名目賃金と実質賃金」に関する記事。

特に第156回の記事 については、ピーク時に比べると落ち込んではいるものの、毎日継続的なアクセスが見られます。

ただ、本日のアクセス状況を見ていると、同じ「名目賃金と実質賃金」に関する記事の中でも、第262回の記事 へのアクセスが目立ちます。

賃金に関する記事として「第262回の記事」の特徴は、現時点において、私の賃金に関する記事の中では「最新」であるという事。

ところが、データとしては11月のデータで、最新のデータとしては既に「2016年12月」のデータが出ていますので、ひょっとしてがっかりして帰らせてしまったのではないかな・・・と思いまして、今回の記事では改めて

 「2016年(平成28年)12月名目賃金と実質賃金(速報)」

について記事にしたいと思います。

2016年(平成28年)12月名目賃金と実質賃金(速報)

【2016年(平成28年)12月賃金指数推移(全体)】
調査産業計(12月)

こちらが「2016年度12月」までの「賃金指数」の推移。1年間の推移です。
さらに前年の推移もご覧になりたい方は先月の記事 をご覧ください。

9月の時点での賃金指数の特徴は、「名実逆転」。
「物価が下落する中で名目賃金」が上昇している(8.9月は0%、横ばいですが)為、名目の上昇率を実質が上回る・・・という歪な状況が続いていたわけですが、10月、11月で逆転状況が解消されましたよ、というのが11月の賃金指数をみる上での特徴でした。

ところが、今月「賃金指数」をグラフで見てみますと、名目が0.1%と辛うじて上昇している中で、「実質賃金」が-0.4%の下落に転じています。

最大の理由は、分母となる消費者物価指数の動向 です。

上記リンク先にて同月、12月の消費者物価指数に関して解説していますので、詳細はそちらをご覧ください。
一番大きな理由としては、「エネルギー価格の下落」がある程度落ち着き、特に「前年同月比」で見た場合、一部項目では上昇に転じているという事。

もちろんエネルギー価格だけではないのですが、この様な「消費者物価指数」の動向の影響を受け、実質賃金は下落に転じました。

この様な事を記すと、

「名目賃金はたった0.1%しか上昇していないし、物価が上昇したせいで『実質的な賃金』は下落したんだ!やっぱりアベノミクスは失敗だったんだ!」

という人が出てきそうですが・・・

実は、12月の「賃金指数」には、他の月にはない特別な数字が登場します。
それが「特別に支払われた給与」、つまり「ボーナス」のことです。


「賃金指数」の内訳

「賃金指数」とはそもそも、「基準年」を設定し、厚生労働省が企業に対して行ったアンケート結果をもとに算出した「現金給与総額」。

つまり、給与所得者が受け取っている賃金が、月額平均でいくらになるのか。これを金額で表したものを、基準年と比較して指数化したものの事を言います。

現在であれば、平成22年が「基準年」ですから、平成22年1年間の月額平均給与所得を平均化した上で、更に「100」に換算し、増えていれば100以上、減っていれば100以下になります。

12月はボーナス月ですので、他の月に比べると「賃金指数」そのものは跳ね上がります。
例えば2016年12月の賃金指数は「172.0」。基準年である平成22年年間を通じた平均月額給与所得より72%も上回っていることになります。

ですが、12月の賃金指数は毎月跳ね上がりますので、同じ数字を前年の171.9と比較すると、前年同月比では「0.1%」しか上昇していない、ということになるわけです。

「現金給与所得」=「決まって支給する給与」+「特別に支払われた給与」

という計算式で表すことができます。
そして、

「きまって支給する給与」=「所定内給与」+「所定外給与」

となります。

「特別に支払われた給与」とは「ボーナス」の事。
「所定内給与」とは「基本給」の事。
「所定外給与」とは「時間外手当」の事です。

そして、「基本給」と「時間外手当」を合わせた金額のことを「きまって支給する給与」と言います。


「きまって支給する給与」と「所定内給与」

【2016年(平成28年)12月賃金指数推移(決まって支給する給与)】
決まって支給する給与(12月)

【2016年(平成28年)12月賃金指数推移(所定内給与)】
所定内給与(12月)

2016年12月の「特別に支払われた給与」は、実は-0.1%と減少しています。
ですが、それ以上に「所定内給与」は上昇しており0.3%上昇。そして「所定内給与」は更に上昇していて「0.5%」の上昇。

「所定内給与」は6月以降、浮き沈みこそあれ、継続的に上昇しています。
しかもその「上昇幅」は12月が最も大きい、というのがこのグラフから読み取れる情報です。

「実質賃金」が下落しているのは、繰り返し述べますが、「消費者物価指数(持家に帰属する家賃を除く)」が9月から10月にかけて下落から上昇に転じたことが最大の理由で、これは経済実態を表している、というよりも計算式上の、テクニカルな問題であると言った方が表現としては的を射ていると思います。

そしてそれも、「所定内給与」、つまり「基本給」に照らしてみると、確かに11月は実質賃金も下落していますが、12月は0まで戻しています。

確かに「ボーナス」も増えるに越したことはありません。
ですが、「名目値」で考える場合もう一つ頭に入れておく必要があるのは、「被雇用者数の推移」です。


「名目賃金指数」が下落する理由」

第38回の記事 でもご説明しましたが、名目賃金で考える場合、

 「給与所得者の数が増加すると平均賃金が下落する」

という「平均のマジック」を考慮に入れる必要があります。
計算式で考えると、

 「平均賃金を下回る給与所得者の数」×「平均賃金を下回る給与所得者の賃金上昇額」
   <「平均賃金を上回る給与所得者の数」×「平均賃金を上回る給与所得者の賃金上昇額」

とならなければ、「名目賃金」が上昇に転じることはありません。

これが「きまって支給する給与」と「所定内給与」についてはほぼクリアされているわけですが、「特別に支払われた給与」=「ボーナス」についてはまだ解消されていない、と考えられるわけです。

「ボーナス」は基本的に「基本給×〇カ月」と計算されるわけですから、基本給が上昇するのであれば普通「ボーナス」は上昇するはずです。

勿論かけられる側の「〇カ月」が減少するケースもありますから一概には言えませんが、基本給が上昇しているわけですから、一方的にボーナスのみが減少している、ということは考えにくいのではないでしょうか。ここは「推測」であって何か明確な根拠があるわけではありませんけどね。

一番考えられるのは、

「ボーナスの支給額が増えた人の数」は増えた

けれども、

「ボーナスの平均支給額を下回る人の数」×「ボーナスの平均支給額を下回る人のボーナス上昇額」

の方が

「ボーナスの平均支給額を上回る人の数」×「ボーナスの平均支給額を上回る人のボーナス上昇額」

よりも多かった、と考えるのが一番すんなり来る考え方だと思います。
そして、それでも「きまって支給する給与」と「ボーナス」を合算した金額は前年を上回っていた。

つまり、「きまって支給する給与」、この中でも「基本給」の上昇幅がボーナスの平均支給額の下落をカバーするほどに大きかった、というのが今回の「賃金指数」の見方です。

この様なデータを見るときは、「情報を砕いて見る癖」と「平均のマジックを考慮に入れる癖」を身に付けることが大切だと思います。


この記事のカテゴリー >>アクセス対策について


本日は少し趣旨を変えてこんな記事をば。

【Google検索からのアクセス数の変動】
google検索クリック数の変動

こちらは、Google Search Console 。昔は「ウェブマスターツール」という名称であった、Google検索専用のアクセス解析ツールでのアクセス解析数の変動です。

実は、今月(2017年2月)に入って、私のブログへのアクセス数が急落する・・・という現象が続いておりまして、せっかく記事を作成し、たくさんの方に見ていただいていた中で、この現象の仕方はただ事ではありません。

で、気にかかっていたのは以下のような文言。

1 月 22 日: Search Console ではインフラストラクチャの更新を実施しました。そのため、データが変わる可能性があります。詳しくは、Search Console でのデータの異常についてご確認ください


で、私のブログで起きた大きな変化は以下のような内容。

【私のブログがリンクされているサイト】
サイトへのリンク

赤いアンダーラインで引いているサイト。解りますでしょうか。
ちなみに、このサイトを開いてみると、こんな感じです。

【パクリサイトの中身】
パクリサイト
2パクリサイト
パクリサイト3
パクリサイト4
パクリサイト5

切り抜き方が下手で申し訳ありません。
解りますでしょうか。

私のブログのデザインまで含めてすべて「RSSフィード」という情報を使って完コピ引用した上で、恐らくアフィリエイトではないかと思われるのですが、そこに自分の販売したい商品を張り付け、まるで自分のサイトでもあるかのようにして丸パクリしているのです。

黒い太文字で書いている部分と最下部の赤枠で囲んだ部分以外は全て私のブログを文章及びデザインごと丸パクリした内容です。

酷すぎますね。件数で14万件のリンクって・・・
唖然です。

で、一応

「info:サイトURL」

を使って検索してみますと、これらのサイトがGoogleでインデックスされているかどうかを調べることができるのですが、どうやらインデックスはされていない模様。一ページも検出されません。(この方法を使うと、自サイトでインデックスされているページがあるかどうかが一発でわかります)

私のアクセス数が減った原因として、この悪質なリンクが原因で私のサイトがいわゆる「パンダ・ペンギン」、つまり自サイトの検索数や評価を高めるため、まったく意味のないリンクを大量に張り付けたサイトである、とみなされたのかと思ったのですが、どうやらそうではないようです。

それにしても・・・ひどい。


アクセス数が減少した本当の理由

さて。それでは私のサイトへのアクセス数が激減した理由は、一体何だったのでしょうか。

冒頭のグラフは、Googleで特定のキーワードを検索し、検索結果から私の記事をクリックしてくれた人。
その延べ人数の変動で、所謂「クリック数」という情報です。

で、この情報に「検索結果表示回数」、つまり特定のキーワードで検索をした結果、私のブログ記事がその検索結果に何回表示されたのか、というグラフを重ねてみますと・・・

google検索クリック数&表示回数の変動

如何でしょう。
見事に一致していますね。

そう。私のブログへのアクセス数が激減した最大の理由は、検索結果への「表示回数」が減少したから。
検索者が特定のキーワードで検索をする回数がここまで極端に変わることはありませんから、考えられるのは「検索順位」がダウンしたこと。

ブログ全体の検索順位で見てもよくわからないのですが、私のブログへのアクセス数が最も多い「実質賃金 推移」というキーワードで見てみますと

「実質賃金」推移の変動

解りますでしょうか?
一気にガクンと下落しているところがありますね?

下落する前、2月9日の掲載順位が2.4位、なのですが、2月10日が3.9位と減少した後、11日には6.5位。
その後、6位前後をうろうろしながら推移しています。

検索結果1ページに表示されてるサイト数は10サイトですので、確かに6.5位でも1ページ目に表示されてはいるのですが、それでも私のサイトへのアクセス数には大きな影響がみられます。

私の記事へのアクセス数をばらしてしまう様で気が引けるのですが、

【掲載順位変動(2017年2月10日→2月11日】
クリック数
3位 日中戦争結果 6.5位→11.0位
4位 実質賃金    12位→39.7位
5位 日銀 国債 引き受け 3.8位→5.0位
6位 60年償還ルール 1位→2.5位
7位 国債 日銀引き受け 問題点 2位→4.2位
8位 GDPデフレーター 11.5位→28位

ベスト10で見るとこんな感じです。
掲載していない順位はそれほど被害を受けてはいないのですが、これらのサイトは2月10日と11日を境に、明らかに平均アクセス数が減少しているのです。(11日1日だけそうだった、というわけではなく、継続的にそうだということです)

特に酷いのがずっと1ページ目に表示されていた「実質賃金」が一気に40位まで下落していたり、同じく1ページ目に表示されていた「GDPデフレーター」も3ページ目に追いやられています。

この他、「緊急事態条項」が20番台後半から圏外に、
マクロ経済スライドが20番台から40番台になど、それなりにアクセスのあったキーワードの掲載順位も影響を受けています。

「実質賃金」の下落は正直痛いですね。所謂「ビッグワード」の一つだと思います。
これが1ページ目に表示されていたのに、ここまでの下落っぷりはひどい。

可能性として考えられるのは、「実質賃金」と検索をかけたとき、なぜか私のサイトでは「実質賃金と名目賃金」というカテゴリー名が表示され、タイトル名では表示されていなかった、という事。

で、複数ページが「実質賃金と名目賃金」という同じカテゴリー名称で1ページ目に表示されていましたので、急落した理由はこれかな、と思います。

だったら正式な名称でインデックスしてほしいんですけど、Googleさん。
そうか・・・アクセスが急落した原因はそれだったのか・・・

なんだか翼をもがれた様で、心が折れそうですが、原因が分かった以上、これらの記事を上回る記事を作り上げていくしかありませんね。


この記事のカテゴリー >>十五年戦争(日中戦争)の原因と結果


<継承する記事>
第273回 日米開戦決断に至る経緯/ハルノートが提示されるまでの日本

前回の記事でお伝えしました通り、今回は

 近衛内閣総理大臣
 豊田外務大臣
 東条陸軍大臣
 及川海軍大臣
 鈴木企画院総裁

の「五相」の間で行われた、「対米英開戦に向けた論議」について記事にしたいと思います。

【1941年10月12日五相会議】
10月12日五相会議(近衛、豊田、東条、及川、鈴木)
陸軍大臣説明す

豊田
 日米交渉妥結の余地あり、それは駐兵問題に多少のあやをつけると見込みがあると思う、妥結の妨害は北仏の兵力増加は妥結の妨害をしてる
 之を止めれば妥結の余地ある

近衛
 9月6日の日本側提案と9月20日の提案との間には相当の開きがある、米側が誤解して居るにあらずやと思わる、之を検討せば妥結の道あらむ

東條
 判断は妥結の見込みなしと思う、凡そ交渉は互譲の精神がなければ成立するものでない、日本は今日迄譲歩に譲歩し4原則も主義としては之を認めたり、然るに米の現在の態度は自ら妥協する意思なし、先般の回答は9月6日9月20日の我方の書類に対する回答と存す

及川
 外交で進むか戦争の手段によるかの岐路に立つ、期日は切迫して居る、其決は総理が判断してなすべきものなり、若し外交でやり戦争をやめるならそれでもよろし

東條
 問題はそう簡単にはゆかない、現に陸軍は兵を動かしつつあり、御前会議により兵を動かしつつあるものにして今の外交は普通の外交と違う

 やって見ると言う外交では困る

 日本の条件の線にそって総帥部の要望する期日内に解決する確信がもてるなれば、戦争準備を打切り外交をやるもよろしい、其確信はあやふやな事が基礎ではいかぬ、此の様なことで此大問題は決せられぬ、日本では総帥は国務の圏外に在る、総理が決心しても総帥部との意見が合わなければ不可なり、政府総帥部の意見が合いご裁断を要す、

 総理が決心しても陸軍大臣としては之に盲従は出来ない、

 我輩が納得する革新でなければならない、納得できる確信があるなら戦争準備は止める確信をもたなければ総理が決断をしても同居はできぬ、現に作戦準備をやって居るので之をやめて外交だけやることは大問題だ、

 少なくとも陸軍としては大問題だ、

 充分なる確信なければ困る

 外相に確信がありますか、北部仏印のことなどは些末の問題だ、

 外交が延びるからあのような問題が起きるのだ、陸軍がやるから外交困ると言われるのは迷惑だ、

 軍のやっとる基準は御前会議決定によっておるのだ、

豊田
 遠慮ない話を許されるならば(本項は特に記述を避くる様注意あり取扱上留意を要す)
 御前会議決定は軽率だった、前々日に書類をもらってやった

東條
 そんなことは困る
 重大の責任でやったのだ

近衛
 戦争は一年二年の見込みはあるが三、四年となると自信はない
 不安がある

東條
 そんな問題は此前の御前会議の時に決って居る
 7月2日の御決定に南方に地歩を勧め北方は解決すと練りにねってきめられたのだ

 各角度から責任者が研究し其責任の上に立ったものでそんな無責任なものではない、
(及川の態度は東條に同意すると称し何れにか決せざるべからず、而して之は総理が決すべきなりと言い我方の条件にはふれず又武力でやれとも言わず総理に定めさせて責任を総理にとらせる一方なるべく外交やる様に促す様な風に観察せらる)

近衛
 今どちらかでやれと言われれば外交でやると言わざるを得ず、戦争に私は自信ない、自信ある人にやって貰わねばならぬ

東條
 これは意外だ、戦争に自信がないとは何ですかそれは

「国策遂行要領」を決定するときに論ずべき問題でしょう、
外交に見透しありと言う態度ではいけない、確信がなければいけない

東條
 皆の話は結局次の様になる

(イ) 日米交渉問題は駐兵問題を中心とする主要政策を偏向せず
(ロ) 支那事変の成果に動揺を与うることなし

 右の確信を外相として持ち得るや否やを研究するの要あり
 而して私は外相総理の此の確信の具体的根拠を伺い真に作戦準備を打ち切るも、外交にて打解する確信なりと納得するのでなければ陸相としては外交でやることに賛意を表するわけにはゆかぬ

 尚細部に就て言えば駐兵問題は陸軍としては一歩も譲れない、所要時間は2年3年では問題にならぬ、第一撤兵を主体とする音が問題違いである、退却を基礎とすることは出来ぬ

 陸軍はガタガタになる、支那事変の終末を駐兵に求める必要があるのだ

 日支条約の通りやる必要があるのだ、
 所望期間とは永久の考えなり、作戦準備を打ち切っても出来ると言う確信がなければかぬ、やって見て出来ぬから総帥部にやれ言うのは支離滅裂となる、

 吾輩は今日迄軍人軍属を統督するのに苦労をして来た、与論も青年将校の指導もどうやればどうなるか位は知って居る、下のものをおさえて居るので軍の意図する処は主張する、御前ででも主張する考えなり

鈴木
 欧州情勢を検討せねばいかぬ
 独伊が単独講和をやることは困る(鈴木総裁は直に外交打切り開戦決意とは考えあらず)

さて。これは非常に意外ですね・・・。

私、南部仏印進駐を行った時点で、近衛内閣としては既に「対米開戦」に向けての「腹」は決まっていたのかと思っていたのですが、近衛首相はここにきて突然及び腰になります。

豊田外相も同じですね。
考えてみれば、「対米開戦」についてはあの松岡外相も最後の最後まで反対していました。先延ばししてでも、出来る限りその決断を先に延ばそうとしていたのは松岡でしたね?

近衛は、ここにきて「開戦の決意は自分にはできない」と、言葉にします。

松岡はこの様に言っていました。
「南部仏印進駐をするのであれば、英米開戦を行う覚悟を持ってしなければならない」と。

ですが、近衛は結局その「覚悟」ができていなかったということです。
そして、にもかかわらず「南部仏印進駐」を決行してしまった。

いや、できていたのかもしれません。ですが、最後の最後で、最終的な決断を行うだけの勇気が持てなかった。
対蒋介石軍ではここまで迅速な対応を見せていたにも拘わらず。

近衛内閣はこの四日後、10月16日に「総辞職」します。
そして、この後で政権の座に就くのが東條英機。

ついにあの東條が政権の中心としての立場を担うことになります。
前回の記事に於いて、わたしは

 『10月9日第58回連絡会議において、ついに「タイムリミット」が話題に上ります』

と記しましたが、今回の公文書の中で登場する「御前会議」という言葉。
7月2日の「御前会議」とは「情勢の推移に伴う帝國国策要綱」に関するものですが、実はもう一つ、9月6日にもこの「御前会議」が行われています。

実は、「タイムリミット」に就いてはこの御前会議に於いて、「10月下旬」としてはっきり掲載されています。

【9月6日御前会議】
昭和16年9月6日御前会議を経て決定
帝國国策遂行要領

9月6日御前会議


帝國は現下の緊迫せる情勢 特に米英蘭等各国の執れる対日攻勢「ソ」連の情勢及英国国力の弾撥性等に鑑み「情勢の推移に伴う帝国国策要領」中南方に対する施策を左記に依り遂行す

1.帝国は自存自衛を全うする為対米(英蘭)戦争を辞せざる決意の下概ね十月下旬を目途とし戦争準備を完整す

2.帝国は右に並行して米、英に対し外交の手段を画して帝国の要求貫徹に努む
  対米(英)交渉に於て帝國の達成すべき最小手段の要求事項並に之に関連し帝国の約諾し得る限度は別紙の如し

3.前号外交交渉に依り10月上旬頃に至るも尚我要求を貫徹し得る目途なき場合に於ては直ちに対米(英蘭)開戦を決意す
  対南方外の施策は規定国策に基き之を行い特に米「ソ」の対日連合戦線を結成せしめざるに努む

逆に言えば、日本政府は天皇陛下の御前で、ここまでの決意をしていたということですね。

東條とすれば、ここまでの決意で軍をすすめ、開戦にむけた準備をしているのに、「あれは適当にやったことだ」と言われたのでは軍隊への示しがつかないと、そう言っているのですね。

ですが近衛や豊田にとってそこまでの覚悟ができていたのかというと、最終的にはそうではなかった、ということですね。

ということは、です。11月20日、日本側より米国に対して最後の「修正案」が提示されるわけですが、この11月20日対案を作成したのは既に近衛内閣ですらなかった・・・ということです。

五相会議に於いて、近衛や豊田に対して非常に強硬な姿勢を見せ、そしてついに「内閣総理大臣」となった東條英機。

彼が中心となり、「11月20日対案」が作成され、米国へと提示されるわけですが、次回記事に於いては、そんな東條が、一体どのような経緯を経て「11月20日対案」を作成し、米国側へと提示したのか、その経緯を手繰ってみたいと思います。


この記事のカテゴリー >>十五年戦争(日中戦争)の原因と結果


<継承する記事>
第270回 日本が日米開戦を決断するに至る経緯~真珠湾攻撃

今回の記事では、時間帯を一気にハルノートが突きつけられた時間まで進めます。

ハルノートは、11月20日に日本側が出した「対案」」への返答として送られてきたものなのですが、ハルノートの中でハルは、

「1940年6月21日にアメリカが側が出した提案と、日本が9月25日に出した提案のギャップを埋める事を目的としている」

としていますので、今回の記事ではまず、ハルが「ギャップを埋める」対象としている日本側の「9月25日提案」について検証してみたいと思います。内容は、一旦読み飛ばしていただければと思います。

【9月25日提案】
日米了解案(9月20日)

日本国「アメリカ」合衆国国交調整に関する了解案
合衆国及日本国政府は伝統的友好関係回復の為共同宣言に於て表現せらるるが如き了解に関する一般的協定の交渉開始及締結の為共同の責任を受諾す

両国国交の最近の疎隔の特定原因に論及することなく両国間友好的感情悪化の原因となれる事件の再発を防止し且其の不測不幸なる結果に付矯正を図ることは両国政府の衷心よりの希望なり

共同の努力に依り合衆国及日本国が太平洋に於ける平和の樹立及保持のための有効なる貢献を為す事及友好的了解を速に完成することに依り、世界平和を助長し且現に文明を没滅せんとする惧ある悲しむべき混乱を仮令一掃せしむること不可能なりとするも之が悪化を抑制せんことは両国政府の真摯なる希望なり

斯かる果断なる措置の為には長期の交渉は不適当にして又効果薄弱なり。仍て両国政府は両国政府を不取敢道義的に且其の行動に関し拘束すべき一般的了解を成立せしめ之を完了する為には適当の手段を案出実施することを希望す

両国政府は斯る了解には緊急を要する樞要問題のみを包含せしめ後日会議の審議に譲り得べき附随的事項は之を含ましめざること然るべしと信ず

両国政府は左の如き特定の事態及態度を明瞭にし又は改善するに於ては融和関係の達成を期待し得べしと認む

1.国際関係及国家の本質に関する合衆国及日本国の観念
2.欧州戦争に対する両国政府の態度
3.日支間の和平解決に対する措置
4.両国間の通商
5.南西太平洋地域に於ける経済問題
6.太平洋地域に於ける世事的安定に関する方針

因て合衆国政府及日本国政府は茲に左の相互的了解及政策の宣言に到達セリ

第1条(国際関係及国家の本質に関する観念)
 両国政府は其の国策は永続的平和の樹立並に両国民間の相互信頼及協力の新時代の創始を目的とするものなることを確認す

 両国政府は各国家及民族が正義及衡平に依る萬邦協和の理想の下に生存する一宇をなすことは其の伝統的及現在に於ける観念並びに確信なることを声明す。

 即ち平和的手続きに依り規律せられ、且つ精神的及物質的福祉の追及を目的とする相関的利害関係に基き何れも等しく権利を享有し、責任を容認す、而して右福祉たるや、各国家及民族が他の為に之を毀損すべからざると同様に自らの為に之を擁護すべきものとす。更に両国政府は他の民族の抑圧又は搾取を排撃すべき各自の責任を容認す

 両国政府は国家の本質に関する各自の伝統的観念並に社会的秩序及び国家生活の基礎的道義的原則は引き続きこれを保存すべく、且右道義的原則及び観念に反する外来の思想又は理念に依り之を変革せしめざることを固く決意す

第2条(欧州戦争に対する両国政府の態度)
 両国政府は世界平和の将来を共同の目標とし適当なる時期至る時は相協力して世界平和の速かなる克復に努力すべし
世界平和克復前に於ける事態の諸発展に対しては両国政府は防護と自衛との見地により行動すべく、又合衆国の欧州戦参入の場合に於ける日本国独逸国及伊太利国間三国条約に対する日本国の解釈及之に伴う義務履行は専ら自主的に行わるべし

第3条(日支間の和平解決に対する措置)
 両国政府は支那事変の解決が太平洋全域の平和延(ひ)いては世界の平和に至大の関係あるを認め之が急速なる実現促進の為努力すべし

 合衆国政府は支那事変解決に対する日本国政府の努力と誠意とを諒解し、之が実現促進の為重慶政権に対し戦闘行為の終結及平和関係の回復の為速に日本国政府と交渉に入る様橋渡しを為すべく且日本国政府の支那事変解決に関する措置及努力に支障を与うるが如き一切の措置及行動に出ざるべし

 日本国政府は支那事変解決に関する基礎的一般条件が近衛声明に示されたる原則及右原則に基き既に実施せられたる日支間約定及事項と矛盾せらるものなること並に日支間の経済協力は平和的手段に依り且国際通商関係に於ける無差別の原則及隣接国間に於ける自然的特殊緊密関係存立の原則に基き行わるべく而して第三国の経済活動は公正なる基礎に於て行わるる限り之を排除するものに非ることを声明す

駐 日支和平基礎条件別紙の通り
  連絡会議決定案に依る

第4条(日米両国の通商)
 両国政府は両国間正常の通称関係を回復せしむるに必要なる措置を遅滞なく講ずることに同意す

 両国政府は前項の措置の第一着手として現に実施しつつある相互の凍結措置を直に撤廃し且両国の一方が供給し得且他方が必要とするが如き物資を相互に供給すべきことを保証すべし

第5条(南西太平洋に関する経済問題)
 両国政府は南西太平洋地域に於ける日本国及合衆国の経済活動は平和的手段に依り且国際通商関係に於ける無差別待遇の原則に?し行わるべきことを相互に誓約す

 両国政府は前項の政策遂行の為両国が通商手続きに依り各国が自国の経済の安全防衛及発達の為必要とする商品及物資獲得の手段を確保する為の合理的機会を有し得るが如き国際通商及国際投資の条件創設に付相互に協力すべきことに同意す

 両国政府は石油、護謨(ゴム)、「ニッケル」、錫等の特殊物資の生産及供給に付無差別待遇の基礎に於て関係諸国との協定及其の実行に関し有効的に協力すべし

第6条(太平洋地域に於ける政治的安定に関する方針)
 両国政府は太平洋地域に於ける事態の速かなる安定の緊急なる所以を認め右安定に脅威を与うるが如き措置及行動に出てざるべきことを約す

 日本国政府は仏領印度支那を基地として其の近接地域(支那を除く)に武力的進出を為さざるべく又太平洋地域に於ける公正なる平和確立する場合には現に仏領印度支那に派遣し居る日本国軍隊は之を撤退すべし

 合衆国は南西太平洋地域に於ける軍事的措置を軽減すべし

 両国政府は「タイ」及蘭領印度の主権及領土を尊重すべきこと並に比律賓の独立が完成せらるべき際に於て同群島の中立化に付協定を締結する用意あることを声明す

 合衆国政府は比律賓群島に於ける日本国人に対する無差別待遇を保障すべし

別紙
日支和平基礎条件

1.善隣友好
2.主権及領土の尊重
3.日支共同防衛
 日支両国の安全の脅威となるべき共産主義的並に其他の秩序攪乱運動防止及治安維持の為の日支協力
 右の為及従前の取極及慣例に基く
4.撤兵
 支那事変遂行の為派遣せられたる前号以外の軍隊は事変解決に伴い撤退
5.経済協定
(イ) 支那事変に於ける重要国防資源の開発利用を主とする日支経済協定を行う
(ロ) 右は公正なる基礎に於て行わるる在支第三国経済活動を制限することはなし
6.蒋政権と汪政府との合流
7.非併合
8.無賠償
9.満州国承認

やはり中心となっているのは、日本の三国同盟に対するスタンスと米国の蒋介石軍に対する態度について。

私、松岡が外相の座を退いた事で、後の日本国政府が何がしかの「譲歩」を示したのかと思ったのですが、少なくともこの25日対案を見る限り、譲歩するどころかむしろ、エスカレートしていますね。

「アメリカさん。もしオタクが欧州戦線に参戦した場合、うちは独自のスタンスを取らせていただきますよ」
と述べ、暗に参戦するなと圧力をかけた上で更に

「支那事変の解決こそが太平洋地域、ひいては世界平和の肝となるわけだから、さっさと蒋介石軍に引導を渡し、日本との和平交渉に応じる様仲介してくださいよ」

と言っています。また更に、「別紙」を添付し、「和平」のための条件も付きつけていますが、これは基本的に汪兆銘政権と日本国政府が実際に行っている内容ですから、実績があります。

内容としては、それほど無茶な要求である様には思えないのですが、当然米国側は応じません。

日本側としては、「南仏進駐」は将来的な対米開戦を視野に入れた決断であり、その判断基準として「米国が石油全面禁輸」を行ってくるかどうかにあったわけですが、米国は予測された通り、「石油全面禁輸」を実行してきました。

ここまでくると、日本の資源の備蓄にも限りがあるわけですから、日米交渉にもタイムリミットが切られます。
日本側は、そのタイムリミットを「1941年10月15日」に設定しました。

つまり、10月15日までに対米交渉に進展がみられなければ、「対米開戦」を決意せざるを得ない、と。
ここに記している内容は、日本側とすると「絶対に譲れない条件」です。対米開戦が既に念頭にありますから、もう譲歩する必要はない・・・といったところでしょうか。

ところが、肝心の米国と交渉する立場にある米国大使、「野村吉三郎」はとても及び腰。
米国に完全に抱き込まれていますから、日本側の要求を正確に伝えきっていないのだと思われます。

日米諒解案が示された時点からそうでしたが、彼は「交渉役」としては適任ではなかったのでしょうね。
もし日米開戦に対する「戦犯」が存在するとすれば、残念ながら彼はその「戦犯」であったともいえるのかもしれません。

【1941年9月20日第54回連絡会議】
9月20日第54回連絡会議
日米諒解案の最終的決定に関する件

1.要旨
日米国交調整に関する了解案に対し参謀本部より修正意見を提議し全部可決せられ最後的決定を見るに至る
本件に関し前日連絡会議を開くべく総理以下集合待機し居りたる所参謀本部より意見ありとて之が延期を要望したるものなり

2.審議に方り議論せられたる要点左の如し
(1)第二条三国同盟に関する態度に就て
書記官長
 三国同盟の見解は日本政府としては防御的のものなりと??説明せる所なるを以て其の意味の事を附加いたし度(たい)


 右防御的との見解は日本の意見として述べたるものにして米側は何等意見を述べあらず又其の態度を示し居らず。
 即ち防護と自衛と云う大きくかぶせた表現法を適当と思う

右に依り後者の意見の如く決定す

(2) 第三条の「且日本国政府の平和的解決に関する措置」を「日本国政府の支那事変解決に関する措置」と改むる件に就て
山本局長
 和平解決の方が興意義なり

参謀総長
 戦闘行為の終結及び平和関係の終結の為に橋渡しをするものにして「平和解決」のみでは戦闘行為の終結と云うことが除外されて居る様に思われる、支那事変解決と改めた方が適当なり

(3)第三条の「註」に就て
岡局長
 駐兵の地点及機関をはっきりしない様にしたい、即ち駐兵の地点を削除し一定地域所期期間としたい

右意見に依り先般の連絡会議決定案を修正することとせり

(4)第6条 北方不進出の件削除に関し
総理
 北方に故なく進出せざることは既に先方に云うてある、従て之をかくすのも変だ、又必ず尋ねてくる。故に残すを適当とす

右と同一趣旨にて相当発言あり
参謀総長
 本庄の主要問題は仏印と南西である、北方は直接関係がない。北方に関する問題は先方から聞いて来れば答えるのであって了解案に特別入れる必要なし。特に南にも北にも何れも武力的に手を出すことは出来ぬと云う形にするのは考物である。南にも北にも故なく出ぬことは考に於て一致して居る点であるが北は望みとしては云い度くない

 本了解案に再び更めて入れる必要なく先方より問われれば答えて可なるべし

右に依り削除することに決す

3.尚
鈴木総裁
 本案は最後的のものなりや、更に修正の余地ありや、時間に余裕あるならば之を以てぎりぎりのものとする必要はないのではないか

陸相/参謀総長
 時日に余裕なし、既に本日迄の進方は遅く時期は既に切迫して居る

総理
 成るべく早く進行せしむる様処置する必用あり、故に問返のなき様(北方のこと)に云う方が宜しい

外相
 外国人の旅行制限令を出し度いと云うことだが何か新しい事をやる様な感じを与える、此の点どうか、急に色々処置されると外交上困る

陸相 防諜上処置する必要あり

外相 陸軍の若い者が南方進出をいきまいて居ると云うが此の点はどうか

参謀総長
 いろいろ国防上の見地から若い者の中でも心配して論議するものがあるだろうが画策として決定せられたるものは大臣総長が実行して居るのであって一々若い者の云うことなど気にする必要なし


【1941年9月25日第55回連絡会議】
9月25日第55回連絡会議
政戦の転機に関連し対米外交交渉成否の見透
決定の時期に関する件

1.陸海両総帥部長の情報説明の後、対米政戦略の転機は遅くも10月15日を以て決せらるべき必要に関し参謀総長より総帥部の見解を説明し、軍令部総長亦海軍側の見解を補足説明す

2.右に対し直接の意見なかりしも

外相
 遅くも10月15日迄に決すべき件は能く承知せり

「グルー」に27日迄に返事をする様云うてある。27日は三国同盟締結1周年記念日でもあり、何時迄も問題が長引いてはよろしくない故此の日迄に返事をする様云うた次第である

 総帥部が此の様に要求せられるならば回答に期限を切ろうか、而しそれも最後通牒のようになり具合が悪い

参謀総長
 とにかく早くやって呉れ


 近衛「ルーズベルト」会見が成立せぬ場合は問題ではないか、成立する場合には15日の決意の為に10月1日頃出発せなければならぬ、其の様な事が果たして出来るか

陸相
 大体の見込みをつけて決定すればよいではないか

参謀総長
 先方と話合の結果僅か数年の小康を保ち得るに過ぎずして数年後又いざこざを起す様では宜しくない。数十年間も穏やかなる様なものでなければならぬ

以上を以て本件は政府の諒承を得たるものと認めらるるも特に深く立入って論議せられたることなし

3.20日連絡会議決定の日米諒解案の取扱について
参謀総長
 あの了解案は如何取扱たるや、米側に伝えたりや

外相
 未だ伝えあらず、本日午後発電す

参謀総長
 なぜ今迄発電せざりしや

外相
 何も新しいことはないので従来の質問に返事をしておけばよいわけだ。此の際この了解案を出すと何か又新しい条件でも出す様に思われるので今迄出さなかった

総長所見
 了解案取扱に関し今日質問せざるは非常に良かったと思う

このような会議を経て、米国側に「9月25日対案」が送られるわけですが、これに対して米国側からは改めて、「ハル四原則」すなわち、

(1)すべての国家の領土と主権を尊重すること
(2)他国の内政に干渉しない原則を守ること
(3)通商の平等を含めて平等の原則を守ること
(4)平和的手段によって変更される場合を除き太平洋の現状を維持すること

の確認と、

「仏領インドシナおよび中国からの撤兵を要求する覚書」

が野村を通じて送られてきます。
ハル四原則の内「(2)」に於いて、日本側とアメリカ側は全く相容れることができないわけですね。

そして、10月9日第58回連絡会議において、ついに「タイムリミット」が話題に上ります。


次回記事に於きましては、第58回連絡会議より3日後、

 近衛内閣総理大臣
 豊田外務大臣
 東条陸軍大臣
 及川海軍大臣
 鈴木企画院総裁

この5者の間で行われた、対米英開戦に向けた論議について記事にしたいと思います。

この記事のカテゴリー >>GDPの見方


<継承する記事>
第271回 2016年度(平成28年)GDP第三四半期第一次速報が公表されました

前回の記事では、2017年2月13日に発表された「2016年度(平成28年)GDP第三四半期第一次速報」について、普通であれば全体から俯瞰して記事にするのですが、特徴的であった「個人消費(家計最終消費支出)」に着目して記事を作成してみました。

新聞各社、報道局の非常にねじ曲がった報道姿勢には本当に辟易しますね。

今回は、いつものように「GDP」を全体から見るスタンスで記事にしたいと思います。


2016年度(平成28年)GDP第三四半期第一次速報

繰り返しにはなりますが、「GDP」をはじめとする統計指標を見る際には、「実質」ではなく「名目」で見る癖をつけることがとても大切です。

「GDP」というのは、日本の経済統計指標の内で最大の「マクロデータ」となるわけですが、マクロデータを計測する際には、どうしても細部をを反映しきることができません(というよりまず不可能)ので、そこには「合成の誤謬」と言われる計測ミスが必然的に発生します。

第36回の記事 でも触れているのですが、改めて説明しますと、「合成の誤謬」というのは、

 「ミクロの世界で成り立つ現象が、マクロでは矛盾する現象」

の事を言います。
単位が違う、計測方法が違う、価値そのものが異なる様々な物やサービスを同じ一つの統計方法で集計しようとしているわけですから、当然です。出ない方がおかしい。

そして、同じGDPにも、「名目」と「実質」という二つの指標が存在します。

よく、「実質GDP」の事を、「物価変動による影響を取り除いたGDPの事」という説明をする人がいます(国語辞典ベースでもそういう説明です)が、実際にGDPから「物価変動による影響」を正確に取り除くことなどまず不可能です。

「実質GDP」とは、あくまでも「名目GDP」を「消費者物価指数総合(持家に帰属する家賃を除く)」という統計指標で割ったもの。
それ以上でも以下でもありません。

「名目GDP」も「消費者物価指数」も共に「マクロ指標」ですから、当然双方に「合成の誤謬」が発生しています。
「実質GDP」とは、つまり「合成の誤謬」というイレギュラーが含まれることが、予め解っている統計指標で割り算をしたデータだということになります。

つまり、「実質GDP」というのは、それほどに当てにすることができないデータだということなのです。
また更に、前回の記事でもお伝えした「季節調整系列」というデータは、そんないい加減な数字をもとに、「季節特有の影響」という、これまたフィーリング、感覚で決まるような情報を数値化し、そこからはじき出されたもの。

そして更に「年率換算」とは、そんないい加減な「季節調整系列」の「四半期別前期比」が1年間、合計4回継続したとしたら一体どんな数字になるのかという、既にフィクション。ファンタジーの世界に於ける数字です。

「名目GDP」自体に一種のフィクションのようなデータが含まれているわけですから、そこから算出される数字が非常に信頼性に乏しいデータとなることはまさしく「自明の理」。元々信頼性に欠けるデータであったとしても、それでも「名目」、特に「原系列」で見る癖が大切になるのは、そういう理由からです。

この考え方を念頭に於いて次にご紹介する「GDP」速報をご覧ください。

内閣府

【2016年度(平成28年)GDP第三四半期第一次速報(単位:兆円)】
名目GDP(前年同月比)
2015年
 10-12 138.2(2.6%)
2016年
 1-3   133.2(1.2%)
 4-6   132.5(1.3%)
 7-9   131.1(1.0%)
 10-12 140.4(1.6%)

実質GDP(前年同月比)
2015年
 10-12 132.2(1.1%)
2016年
 1-3   1308(0.1%)
 4-6   126.9(0.9%)
 7-9   129.6(1.1%)
 10-12 134.3(1.7%)

いかがでしょうか。
勿論お示ししている数字は全て「原系列」です。

さて、思い出して見てください。
安倍内閣がスタートしたのは2013年(正確には2012年12月)です。

安倍内閣によって組まれた予算(2012年度補正予算を除く)が執行されたのは2013年4月。
そして、2014年4月には「消費増税」が行われました。

「名目GDP」には、消費増税の影響も反映されますから、消費増税が行われれば当然名目GDPの数字も上昇します。
2013年は安倍内閣がスタートした月ですし、当然前年の民主党内閣と比較すれば、大幅に「名目GDP」の値も上昇しています。

2013年度(安倍内閣初年度)名目GDP前年同月比
第1四半期 1.5%
第2四半期 2.7%
第3四半期 2.6%
第4四半期 3.4%

2014年度(増税年度)名目GDP前年同月比
第1四半期 2.0%
第2四半期 0.9%
第3四半期 2.0%
第4四半期 3.3%

さて。安倍内閣初年度には「駆け込み需要」も発生していますし、当然大幅にGDPの影響が増大しています。
ただでさえ2013年度のGDPは急成長しているのに、2014年は「消費増税」の影響で更に「GDP」の値が上乗せされています。

安倍内閣初年度に急成長した上後、消費増税の影響で大打撃を受けているはずなので、当然2015年度の「名目GDP前年同月比」は反動で大幅に下落している・・・はずですよね?

2015年度(増税翌年度)名目GDP前年同月比
第1四半期 3.3%
第2四半期 2.9%
第3四半期 2.6%
第4四半期 1.2%

さて、いかがでしょう。消費増税の影響?何それ状態です。
第3四半期、第4四半期は「2016年度(平成28年)GDP第三四半期第一次速報(単位:兆円)」の所でも掲載しています。

第4四半期で成長率にブレーキがかかっている様に見えますが、

【輸出額前年同月比の推移】

2015年度
第1四半期 5.7%
第2四半期 5.0%
第3四半期 -4.6%
第4四半期 -7.9%

2016年度
第1四半期 -9.4%
第2四半期 -10.7%
第3四半期 -1.5%

いかがでしょう。実は、「名目GDPの伸び率」を鈍化させていた最大の原因は、「輸出額の減少」。
これは日本国内の影響ではなく、海外の景気の影響によるものですから、その責任を日本経済に向けられても困りますね。

金額でいうと、

2015年度(前年比)
第3四半期 -1.1兆円
第4四半期 -1.9兆円

2016年度
第1四半期 -2.1兆円
第2四半期 -2.5兆円
第3四半期 -0.3兆円

となります。GDP全体で考えれば、2兆円は約0.4%、2.5%は0.5%に相当する金額です。
勿論それでも「GDPの伸び率が『鈍化した』」と言えなくはない数字ですが、「海外の景気の低迷によって輸出産業がダメージを受ける中」ででも1%を超える経済成長率を日本国内需は続けてきた、ということをこの数字は示しています。

この様な中で、「個人消費(家計最終消費支出)が伸びない」ことが指摘され続けていたわけですが、実は「輸出額」以上に「輸入額」は更に大きな減少幅を記録しており、
【輸出額前年同月比の推移】
2015年度
第1四半期 -3.8%
第2四半期 -6.0%
第3四半期 -12.1%
第4四半期 -14.8%

2016年度
第1四半期 -16.5%
第2四半期 -18.2%
第3四半期 -8.8%

金額でいえば、元も減少幅の大きかった2016年度第2四半期で4.3兆円のマイナスを記録しています。

実は、この数字を「個人消費」が吸収していましたので、見かけ上の「個人消費」はあたかも減少し続けているかのように見えていました。

ですが、実際には「原価」が減少していただけであり、企業の利益や私たち従業員の「給与所得」は増え続けていたのだと、こう考えることができます。

詳細は私の記事カテゴリーである「物価の見方」 や「実質賃金と名目賃金」をご参照ください。


それでは改めて・・・
改めて、「2016年度(平成28年)GDP第三四半期第一次速報(単位:兆円)」を再掲します。

【2016年度(平成28年)GDP第三四半期第一次速報(単位:兆円)】
名目GDP(前年同月比)
2015年
 10-12 138.2(2.6%)
2016年
 1-3   133.2(1.2%)
 4-6   132.5(1.3%)
 7-9   131.1(1.0%)
 10-12 140.4(1.6%)

実質GDP(前年同月比)
2015年
 10-12 132.2(1.1%)
2016年
 1-3   130.8(0.1%)
 4-6   126.9(0.9%)
 7-9   129.6(1.1%)
 10-12 134.3(1.7%)

特に昨年度第3四半期以降で見る限り、上昇しているのは「名目」だけでなく、「実質」の値も上昇していることが解ります。

計算式で表すと、「名目成長率=実質成長率+物価上昇率」で表すことができますから、

2015年度
第3四半期成長率
 名目 2.6%
 実質 1.1%
 物価 1.5%

第4四半期成長率
 名目 1.2%
 実質 0.1%
 物価 1.1%

2016年度
第1四半期成長率
 名目 1.3%
 実質 0.9%
 物価 0.4%

第2四半期成長率
 名目 1.0%
 実質 1.1%
 物価 -0.1%

第3四半期成長率
 名目 1.6%
 実質 1.7%
 物価 -0.1%

これが「名目成長率と実質成長率の推移」です。

「GDP」というのは私たちの生活の「豊かさ」を表すための指標です。
2016年度第2、第3四半期は物価が0.1%ずつ下落していますが、私たちの生活の豊かさを示す指標である「GDP」は「名実共」にプラス成長しています。

しかも1.5%を超える上昇率を記録しています。
更に「消費増税」を経て記録した「2015年度第3四半期」の成長率は名目2.6、実質1.1、物価1.5%と非常に理想的な上昇率を記録しており、例えば「前年度は減少しているんだから今年度上昇するのは当たり前だろ」的な屁理屈は全く通用しない状況です。

最早「個人消費が減少しているんだからアベノミクスは失敗したんだ!」という悲観論者たちの屁理屈は全く通用しません。
これが「アベノミクス」の成果です。


次回記事では、改めて「なぜ日本は第二次世界大戦(大東亜戦争)を起こしたのか のシリーズへと記事を戻してみたいと思います。


この記事のカテゴリー >>GDPの見方


今回は真珠湾攻撃の話題は少しお休みして、今朝公表されたばかりの「2016年度(平成28年)GDP第三四半期第一次速報」について記事にしたいと思います。

先ずは、公表されたGDPについてのニュースから。結構歪んでます。

【日本経済新聞 2017年2月13日】
10~12月の実質GDP、年率1.0%増 外需に伸び

内閣府

2017/2/13 8:50

 内閣府が13日発表した2016年10~12月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除く実質で前期比0.2%増、年率換算では1.0%増だった。プラスは4四半期連続。輸出主導で外需が伸びた。個人消費は振るわなかったが補った。

 QUICKが集計した民間予測の中央値は前期比0.3%増で、年率では1.0%増だった。

 生活実感に近い名目GDP成長率は前期比0.3%増、年率では1.2%増だった。名目も4四半期連続でプラスになった。

 実質GDPの内訳は、内需が0.0%分の押し下げ効果、外需の寄与度は0.2%分のプラスだった。項目別にみると、個人消費が0.0%減と、4四半期ぶりにマイナスだった。生鮮野菜の高騰が家計支出を抑制した。

 輸出は2.6%増、輸入は1.3%増だった。アジア向けや北米向けに需要が回復し輸出が拡大した。国内需要が伸び、輸入量が増加した。 設備投資は0.9%増と、2四半期ぶりにプラスだった。輸出増などを受けて生産活動が回復し、設備投資需要が高まった。住宅投資は0.2%増。公共投資は1.8%減。民間在庫の寄与度は0.1%のマイナスだった。

 総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは前年同期と比べてマイナス0.1%だった。輸入品目の動きを除いた国内需要デフレーターは0.3%のマイナスだった。

 同時に発表した16年暦年のGDPは実質で前年比1.0%増、生活実感に近い名目で1.3%増となった。

代表して日本経済新聞記事から引用していますが、今回の報道はどこもこんな感じ。今回のGDP速報にて最も特徴的な部分を、どの報道機関もまったく報道していないのです。

しかも・・・記事内容、ほぼ「嘘」ですからね。
「嘘」というと語弊があるんですが、報道機関で共通して掲載しているのは

 「輸出主導で外需が伸びた。個人消費は振るわなかったが補った」

という内容です。これ、まったくの嘘。出鱈目です。
寧ろ今回の速報の特徴は「個人消費が」伸びた」事。

しかも「横ばい」だとか「微増」だとか、そんなレベルじゃなく、「名実共」に、はっきりと。

「GDP(支出側)」っていうのは、基本的に以下のような項目で構成されています。

国内総生産(支出側)

 民間最終消費支出
  家計最終消費支出
  除く持ち家の帰属家賃

 民間住宅

 民間企業設備

 民間在庫変動

 政府最終消費支出

 公的固定資本形成

 公的在庫変動

 財貨・サービス

 純輸出
  輸出
  輸入

この内、「個人消費」と呼ばれるのは、

  家計最終消費支出
  除く持ち家の帰属家賃

の2つ。
「持家の帰属家賃」っていうのは、本来GDPにすら加えるべきではない指標だと思うのですが、なぜか継続して掲載され続けています。

合わせて言えば、「民間住宅」も「個人消費」として考えることができます。

過去のGDPに関する記事で何度もお伝えしていることですが、改めて復習がてら、「GDP」について解説してみたいと思います。

「GDP」には「名目」と「実質」の2種類があります。

このうち、「名目」とは、全体で「何円」消費されたのかという「金額」を考えるための統計データ。
一方「実質」とは、全体で「何個」消費されたのかという「数量」を考える為の統計データのことです。

ただ、この世の中にある全てのサービスを「個数」で表現することなどとてもできません。不可能です。
「何リットル」という単位、「何グラム」という単位、「何人」という単位等々数多の「単位」が存在しますし、同じ単位でもサービスによってその価値は大幅に変化します。

「実質GDP」というのは、その本来であれば集計することが不可能なはずの「単位」を強引に統合し、唯一示すことの出来る共通の単位、「円」で表現したものです。

ですがそもそも、例えばGDPを「みかん」で考えると、

 「100円のみかんを10個、合計で1000円購入した」場合。

合計値である「1000円」が名目GDP、購入数量である「10個」が実質GDP、更に単価である「100円」が「GDPデフレーター」と呼ばれるものです。

本当にただこれだけの話。こんな単純な指標なんですよ、ほんとは。
「組み合わせ」のパターンが余りにも複雑なんでとても分かりにくく感じるかもしれませんが、単純化する「GDP」とはそういう指標なんです。

四半期別GDPを見る際に問題なのは、政府が集計している指標の中に、「原系列GDP」と「季節調整系列GDP」、そして「年率換算」という3つの指標が含まれていること。名実共にそれぞれの指標がありますから、合計で6つの「GDP」が存在することになります。

今回の速報の中で、特に着目していただきたいのは、当然「個人消費」ですから、今回の記事はこの「個人消費」に着目して記事を作成したいと思います。


家計最終消費支出

2016年度(平成28年)第三四半期家計最終消費支出

名目家計最終消費支出

原系列
 今年度 75,079
 昨年度 74,591
 成長率 0.65%

季節調整系列
 今年度 293,430
 昨年度 291,549
 成長率 0.65%

 前期比 0.3%
 年率換算 1.1%(持家に帰属する家賃を除くと1.4%)

実質家計最終消費支出

原系列
 今年度 73,823
 昨年度 73,189
 成長率 0.87%


季節調整系列
 今年度 289,275
 昨年度 286,764
 成長率 0.88%

 前期比 -0.0%
 年率換算 -0.1%(持家に帰属する家賃を除くと-0.4%)

さて。いかがでしょうか。

どの程度この統計の意味が理解できているのか、という点で見え方は変わってくるとは思うのですが、

 「名目原系列」では昨年と比較して「0.65%」成長しており、
 「季節調整系列」でも同様に「0.65%」成長。
 前期、2016年度第2四半期と比較しても0.3%成長。
 これを「年率換算」すると1.1%成長、
 更にここから「持家に帰属する家賃」を除くと1.4%成長しています。

一方実質でも、

 「原系列」は0.87%成長、
 「季節調整系列」でも0.88%成長

しているのですが、これがなぜか「前期比」となると-0.0%成長、これを「年率換算」すると-0.1%成長、持家に帰属する家賃を除くと-0.4%成長と、軒並み「減少している」ことになってしまうのです。

おかしいですよね、これ?

ちなみに「前年同月比」を昨年12月より合計5四半期の推移を見てみますと、

名目
2015年度第3四半期(10-12) -0.3%
2015年度第4四半期(1-3) -0.5%
2016年度第1四半期(4-6) -0.2%
2016年度第2四半期(7-9) -0.4%
2016年度第3四半期(10-12) 0.7%

実質
2015年度第3四半期(10-12) -0.3%
2015年度第4四半期(1-3) -0.3%
2016年度第1四半期(4-6) 0.3%
2016年度第2四半期(7-9) 0.3%
2016年度第3四半期(10-12) 0.9%

わかりますか?
実質個人消費のマイナス成長は今年度に入って以来解消されていたのですが、名目は昨年度第3四半期より継続して下落しており、今年度第2四半期まで継続していたのですが今期に入ってようやく解消され、プラス成長を果たしたのです。

然も(四捨五入してですが)0.7%成長。
マスコミが大好きな「季節調整系列 前期比 年率換算」ではなんと1.1%。持家に帰属する家賃を除くと1.4%成長となるわけです。

また更に、今期の特徴では「個人消費」に於いても「名目上昇率」を「実質成長率」が上回っているということ。
計算式からすると0.2%物価が下落したことになるわけですが(当然GDPデフレーターもマイナスになります)、名目GDPは上昇し、実質GDPはこれを更に上回る成長率を記録したのです。

先ほどのみかんの例で例えると、

 「100円のみかんを10個、合計で1000円購入」

という状況で、みかんの値段が例えば90円に値下がりするのですが、おかげで販売数量は12個に増え、販売総額は1080円に増えた・・・と、そんなイメージです。

実質賃金と名目賃金のページ でもお伝えした、

 「物価が下落したおかげで、『消費金額』も『消費量』も共に上昇した」

という状況。この状況は「賃金」だけでなく、実際の「個人消費」のケースでも同様の経済現象が起きていたことが、GDPデータにより証明された形です。

ですが、今回ご紹介した日経をはじめ、大手新聞社が掲載した情報は

 輸出主導で外需が伸びた。個人消費は振るわなかったが補った。

消費は増えたんです。外需が伸びたかどうかなど関係ありません。
寧ろ「前年同月」で見れば輸出はマイナスです。

「経済面」を担当する「日本経済新聞」の記者なんですよ、この記事を書いた人物は。どなたかは知りませんが。
どんだけ経済音痴なんだと真剣に罵倒したい気分です。

何が「個人消費は振るわなかった」だ。
もっと真剣に経済統計を見ろよ、と言ってやりたいですね、はっきり言って。

もちろんここには「前年同月比では下落し続けていた原油価格がようやく前年の価格と釣り合った」ことや、「生鮮食品が高騰したこと」なども含まれているわけですが、「実質値を季節調整し、『前期』と比較し、年率換算した数値」はそんな事すら反映できていないわけです。

いい加減人為的な計算式で算出した「実質値」「季節調整系列」「年率換算」などのまったく当てにならない指標に依存した飛ばし記事を書くのはやめてほしいですね。

ちなみに「名目」の「民間住宅」、つまり人間が一生のうちで購入する最も高額な商品であると言われる「住宅」はの2016年度第3四半期の前年同月比は「7.1%」。

第1四半期4.2、第二四半期5.3ですから、どんどん上昇していることが分かります。
「2%物価上昇率」を目指すのは、あくまでも考え方の一つであって、例えこれに追いついていないとしても、「名目」も「実質」も共に大幅なプラス成長を果たしているのなら、最早掲げる必要性すらない目標値です。

難関を超え、大手新聞社の「記者」となった人物なのに、この程度の情報に気づけないなんて、私には信じられません。

この記事のカテゴリー >>十五年戦争(日中戦争)の原因と結果


<継承する記事>
第269回 日本はなぜ真珠湾を攻撃したのか/日米開戦の原因に迫る⑯

日本はなぜ真珠湾攻撃を行ったのか。ここに至る経緯について私は、第249回の記事 で、「Yahoo知恵袋」に掲載されていた質問に対する回答を検証するという形で「日米開戦の原因」についての検証をスタートしました。

一般的に、日本が真珠湾攻撃に至った理由として、

「世界恐慌以降のブロック経済政策」
「米英蘭支によるABCD包囲網」

が挙げられます。

ですが、実際「ブロック経済政策」を敷いていたのは欧州各国だけで、米国はルーズベルトが就任すると早々にこの「ブロック経済政策」は中止しました。

なぜか日本に対してだけは輸入品に高い関税をかけて輸出しにくい状況を作り出した、とはいうもののどうもこれが「日米開戦」まで至った理由だと考えるのは適切でないように感じます。

そしてまたこのブロック経済政策に於いて、ドルブロックやポンドブロック等を仕掛けられた為、日本が輸出先をなくし、結果的に「大東亜共栄圏」を建設し、ドルブロックやポンドブロックに対抗しようとした、といった説も見かけるのですが、これもどうやら間違っている様です。

そして最終的に米英蘭支が日本を経済的に孤立させるため、「ABCD包囲網」が築かれ、日本はやむを得ず真珠湾攻撃に至った・・とする説も見られるのですが、どうもこれも正しくはない様です。

余りに中国(蒋介石軍びいき)な政策を米英が取りましたから、裏で中国と米英は繋がっていて、日本を追い込むために共同で動いているんじゃないか、という邪推を当時の日本政府・軍要人たちがしていたことは事実でしょうし、ABCD包囲網が築かれたことが日本に最終的な決断をさせたことも事実なのでしょうが、「だから日本は開戦を決意した」わけではどうもなさそうです。

日本が南部仏印進駐を実行する以前に、コーデルハルより「6月21日米国対案」と同時に「オーラルステートメント」が突きつけられた時点で、日本の要人の中には「対米開戦」に向けての凡その覚悟は既にできていた、と考えなければやはり日本軍の行動を説明することは出来ないでしょう。

公文書の中にも、これを証明するようなものが存在します。

【第三十(四十の間違い?)回連絡会議】
7月21日第30回連絡会議(第40回の間違いと思われる)
近衛第三次内閣成立に伴う初顔合せの件

第40回連絡会議

1.場所 宮中大本営
自今場所は宮中大本営と定めらる

2.出席者
近衛内閣総理大臣
豊田外務大臣
東条陸軍大臣
及川海軍大臣
平沼国務大臣
鈴木国務大臣兼企画院総裁
杉山参謀総長
永野軍令部総量
宮田内閣書記官長
武藤陸軍軍務局長
岡 海軍軍務局長

自今出席者は概ね右の通りに定めらる

3.参謀長別紙要望を述べ(同時に別紙を配布す)たる後次の事を附加す

三国同盟がゆるみはせぬか、英米依存に還元するのではないかとの事を世間では考えて居るものあるらしきも、此の如きことは断じてあるべからず、之れは国内のみならず第一線の兵のご奉公の精神にも影響する所大いなるを以て、特に政府に於ては留意あり度(たい)

陸相
政府が声明せる如く、総辞職の時にも又組閣の際にも規定の国策は変えぬというて居る、迅速果敢にやることを発表して居る。
之れは総帥部の要望に沿うて居ると思う。又陸軍大臣も閣議に於て国策にゆるみない様要望して居る、之れも総帥部のご要望にかなうものと思う。

外相
自分は各国の大公使に、国策上何か変わりはないかと云う考えをおこさしては困ると思ったので、既定方針にはよく云い送り従来通りやれと云うた

又同時に在東京独伊大使を呼び、外相更迭せるも帝国の態度は何ら変更なしと既に述べあり

尚自分は三国条約締結当時海軍次官なりしを以て、之れに関しては重大なる責任あり、同条約成立の時の一端を担いて居るのであって変更するような事はせぬ

(総長所見)
外相の述べたる態度より右は真実なるが如く思わる、尤も総帥部より要望したるを以て申訳的に述べたるかの知れぬ

次て参謀総長、仏印進駐に関し現在までの経緯、今後の予定及び関東軍に対する兵力増強並国内防御、防空等に就き説明セリ
又海相、南方に派遣すべき艦隊の兵力に就て述べたり

軍令部総長
 米に対しては戦勝の算あるも、時を追うて此の算は少なくなる、明年御半期は最早歯が立ちかねる、その後益々悪くなる、米は恐らく軍備の整う迄は問題を引ずり之を整頓するならん。

 従って時を経れば帝国は不利となる。戦わずして済めば之にこした事はなし。然し到底衝突は避くべからずとせば時を経ると共に不利となると云うことを承知せられ度(たい)。尚比島を占領すれば海軍は戦争がやりやすくなる

 南洋の防備は大丈夫相当やれると思う

次て外相、「ヴシー」との14以来今日迄の交渉の状況に就き説明セリ。其の際「オットー」の態度に関し左の如きことを述べたり

 仏印進駐に関しよろしく頼むと云うた所「オットー」は、仏印より応諾して来れば何もせぬてよかろう、応諾せぬ場合には何とかやりましょう、と云うが如き消極的回答をしたので、更に会談を求め、二度目は「オットーは「シリヤ」の例をひき、独は「ソ」と交戦中故強かなる威力を仏に加えることはまー出来ぬとと云う態度であった以上二回の回答の結果は世話はするも積極的ならずと云う印象を受けた

海軍側より日仏交渉が大体成立すべき旨の在仏武官電を紹介し会議を終了す

総長所見
 軍人が多い関係か情報交換には明るい感じを得たり、今迄と異なり連絡会議の価値は増大せるものと思う

4.本席上連絡会議並大本営政府間情報交換の実施に関し左の如く申合せたり(以下略)

続いて第41回大本営政府連絡会議の内容です。前回より名称も「連絡懇談会」から「連絡会議」に変わっていますね。

【第41回大本営連絡会議】
7月24日第41回連絡会議
仏印進駐、対米国交調整、泰国大使館の件

第41回連絡会議

1.冒頭参謀総長より、軍隊は25日出発、28日「ナトラン」29日「サンジャック」に到着すべきことを述べたり

外相
 「ヴシー」政府から、進駐軍隊が軍紀を守る様、又安南人に対し非合法的な事なき様注意せられ度(たい)旨申来れるを以て承知あり度(たい)

 共同防衛の意味にて進駐するのであるから、右の如き事なき様、彼らをひきつける様軍隊を指揮せられ度希望す

参謀総長
 本件は軍司令官に能く通しありて万心配なし。尚今後も充分に留意すべし

2.仏印進駐に関する政府の声明案文を可決す。発表は26日正午とし独伊大使に対しては本24日支那、満州、英米大使に対しては25日通告することに決定す

外相
 仏印進駐問題は米国に影響を及ぼし、重要物資の輸出禁止、資金凍結、金の買入禁止、日本船舶抑留等を実施することあるべし

 重要物資中の問題となるべきものは綿花、木材、小麦、石油にして、綿花木材に対しては既に手を打ちたり、小麦は支那向けのものなるを以て何とか手を打ち得べく、先ず心配なかるべし

 石油は懸念せらるる所なるも米が全面的に石油禁輸をやるかどうかは問題だ。

 次に資金凍結に就ては、在米日本現金は3億円、証券3億5千万円にして、之に対し在日米貨は3億円なり。
 即ち差引2億5千万円が日本側の損失となる。之れは石油を輸入する場合に資金不足となり、、帝国として相当困る
 金の買入停止は現在米向金を出して居らぬから心配なし

 日本船舶抑留に就ては、目下米近海に十隻あるも海軍省より未だ港に入らぬものは2、3日入らぬ様指令しあるを以て、全部が抑留せらるることはなかろう

 資金凍結に関しては小倉蔵相も困るという意見で、蔵相は蔵相と個人関係ある「モーゲンソウ」米蔵相に手紙を出すと云いしも、暫く待ってもらって居る

3.対米国交調整に就て
外相
 野村大使は過般「ハル」長官の「オラルステートメント」を先方に返したが、帝国の修正案は未だ「ハル」に通しあらずして之れに就き野村より意見具申あり。外務省としてはN工作を打切るのは具合悪いと思う。

 此度の仏印進駐は軍事占領にあらずして、帝國の必要に基づき仏側と話合の上の事なるを米国に諒解せしめ、資金凍結又は帝国船舶の「パナマ」運河通貨を渋ることを止めてもらい、又N工作を続け度(たい)と思う

 尚、N工作に就き米国の主張は次の二点にあり

 (1) 支那の和平交渉の細目を米がやり度(た)きこと
 (2) 太平洋の和平問題にて日本からしばられぬ様すること

 N工作に関しては更にご相談申上ぐべし

4.尚豊田外相より、昨日の枢密院会議にて決定せる泰国公使館の大使館昇格に関し、直に大使を派遣すべきや否やに就て提案あり。

之に対しては現在仏印進駐の度種々噂の出る時故直に大使を派遣すべしと云う意見と、仏印進駐に伴う米の出方も一応見る必要あるを以て暫く後日に延ばす方宜しと云う意見ありしも、結局未決定の儘解散せり

右会議の先で重光大使の帰朝断ありて解散セリ

はっきり書かれていますね。
外相
 仏印進駐問題は米国に影響を及ぼし、重要物資の輸出禁止、資金凍結、金の買入禁止、日本船舶抑留等を実施することあるべし

 重要物資中の問題となるべきものは綿花、木材、小麦、石油にして、綿花木材に対しては既に手を打ちたり、小麦は支那向けのものなるを以て何とか手を打ち得べく、先ず心配なかるべし。

 石油は懸念せらるる所なるも米が全面的に石油禁輸をやるかどうかは問題だ。

 次に資金凍結に就ては、在米日本現金は3億円、証券3億5千万円にして、之に対し在日米貨は3億円なり。
 即ち差引2億5千万円が日本側の損失となる。之れは石油を輸入する場合に資金不足となり、、帝国として相当困る
 金の買入停止は現在米向金を出して居らぬから心配なし

 日本船舶抑留に就ては、目下米近海に十隻あるも海軍省より未だ港に入らぬものは2、3日入らぬ様指令しあるを以て、全部が抑留せらるることはなかろう

 資金凍結に関しては小倉蔵相も困るという意見で、蔵相は蔵相と個人関係ある「モーゲンソウ」米蔵相に手紙を出すと云いしも、暫く待ってもらって居る

と。ここに記されている「外相」とは、もうすでに松岡ではなく、新たに外相として就任した豊田外相です。

改めて振り返って見ますと、第229回の記事 からABCD包囲網についての検証をスタートしたわけですが、この時点ではまだ「北部仏印進駐」と「南部仏印進駐」の違いを私自身が理解できていませんから、この二つの進駐を同じレベルで考えて記事にしていますね。

北部仏印進駐と南部仏印進駐の中であった決定的な出来事としては「日独伊三国同盟」と「独ソ開戦」の2つです。
結局考えてみれば、日本の南部仏印進駐は将来的な日米開戦をも視野に入れたものであった、ということですね。

国際情勢から考えてみても、将来的にいつかは衝突することは避けられない日本とアメリカ。

日本からすれば、「アメリカが蒋介石に対する支援さえやめてくれれば」。
米国からすれば、「日本が三国同盟から脱退し、中国から撤退さえしてくれれば」。

けれども、双方にとってその肝となる部分は絶対に譲ることができないわけです。
ただ個人的には米国が蒋介石に対する支援を止めるこことは、それほど難しいことではなかった筈ですが。

「自由主義社会」という米国の一方的な理想を日本に押し付け、日本人の生命と尊厳を毀損するリスクを多分に背負った蒋介石軍を放置してくれる程度であればまだしも、むしろ支援を行い続け、中国大陸に於ける日本に対する脅威を増大させ続けたという事実。

ここさえ彼らが認識し、「日本が撤退した後の中国に於ける権益」などという、自国の利益のみを優先した政策を放棄してくれさえすれば、はっきりいってこんなことにはならなかったわけですが。

また米国が欧州戦に参戦し、ドイツがソ連に敗れた後の事を考えると、どうしてもドイツを支援しないわけにはいかない。

となれば必然的に日本と米国は衝突するしかないわけです。

日本が南部仏印を抑えなければならない最大の理由は、もし仮に日米開戦となった時、ここを押さえておくかどうかということは、特に太平洋戦線に於いて死活問題ともなりかねない問題です。

また更に先に米国がヴィシーを説得し、仏印そのものを抑えてしまうようなことがあれば目も当てられません。
軍令部総長の言葉として、

米に対しては戦勝の算あるも、時を追うて此の算は少なくなる、明年御半期は最早歯が立ちかねる、その後益々悪くなる、米は恐らく軍備の整う迄は問題を引ずり之を整頓するならん。

 従って時を経れば帝国は不利となる。戦わずして済めば之にこした事はなし。然し到底衝突は避くべからずとせば時を経ると共に不利となると云うことを承知せられ度(たい)。尚比島を占領すれば海軍は戦争がやりやすくなる

 南洋の防備は大丈夫相当やれると思う

というやり取りも掲載されています。
フィリピンの占領、というのは今すぐにというわけではないでしょうが、仮に日米開戦が行われた場合、その選択肢の一つとして既にフィリピン占領という選択肢は存在したということになりますね。

南部仏印進駐を行った際、仮に米国が何もしてこなければそれが一番よい。
米国がここで何らかの対抗措置を取るかどうかということが、対米開戦の決断を行うかどうかの試金石だったということではないでしょうか。

将来日米開戦となったおり、ここを抑えておくかどうかは非常に重要な問題となるわけですが、それでも極力開戦を避けるため、この地域に間違っても武力行使をせぬ様、慎重に慎重を期していたいた様子がとてもよく伝わってきますね。

ただそれでも米国は制裁を課してきた。であれば仕方ない、としたのが日米開戦に至った本当の理由だと思われます。
前記した軍令総長の言葉にもあるように、この状態で戦争を仕掛けるのであれば、早ければ早い方が良い。

何より石油資源の全面禁輸を課せらえたわけですから、放っておけばどんどん日本の資源の在庫は底をつき、時が経てばたつほどどんどん日本は不利になります。

となれば、ABCD包囲網という言葉も、日本が米英に戦争を仕掛けるための「口実」であったという公算の方が大きくなりますね。
日本が先に米国に戦争を仕掛けるための「大義名分」が必要であったということではないでしょうか。

ですが、戦争に向けての準備が進められる一方で、米国に対してはそれでも開戦を避けるための交渉が行われ続けていました。
日本にとって「戦争が避けられる状況」はただ一つ、米国が蒋介石軍の危険性をしっかりと認識し、日本と歩調を合わせることです。

合わせられないにせよ、その危険性を認識し、蒋介石軍から手を引く事。これ以外にありません。
これを日本に約束し、実行して初めて「戦争を避ける」事が出来るのです。

またもう一つ、日本とすればドイツがソ連に敗れ、ソ連が日本に牙を剥くような情況を作り出すわけにはいきませんから、米国がソ連に対して宣戦布告を行わないこと。即ち、「欧州戦線に参戦しないこと」。

これを約束することができれば最悪な事態は避けることができたわけですが、特に後者は米国にとってもできない選択肢かもしれませんね。どちらにせよ、衝突することは避けられなかった・・・と。

次回記事以降でも、引き続き「公文書」に着目しながら日米交渉の経緯を追いかけてみたいと思います。


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