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<継承する記事>
第224回 平成28年(2016年)10月消費者物価指数速報③/品目別指数②

一覧として見やすいように、2016年度10月の消費者物価指数関連の記事をまとめて掲載しておきます。

第222回 平成28年(2016年)10月消費者物価指数速報①/歪なマスコミ報道
第223回 平成28年(2016年)10月消費者物価指数速報②/品目別指数①
第224回 平成28年(2016年)10月消費者物価指数速報③/品目別指数②

ここ数年の「消費者物価指数」の見方は以下のようになります。

・増税年度である2014年後半頃より、「原油価格」が世界的に急落しはじめ、このことが影響して日本国内でも「消費者物価指数(総合)」や「消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)」が継続的に下落していました。

・今年度に入って、今度は「家電製品」に関連した消費者物価指数が急落し始めました。ですが、政府データとしては急落しているものの、業界団体の出荷ベースの情報を見ると、政府データとは真逆の状況が見えてきます。

・先月(2016年度9月)より、ようやく原油価格が下落幅を縮小し始めました。

・今月(2016年度10月)は「生鮮食品」が急騰したことと、原油価格の下落幅が縮小したことにより、ようやく「消費者物価指数(総合)」がプラスに転じました。

今月の記事シリーズでも、上記内容に着目し、第223回、第224回と家電・テレビの動向に特に着目した記事を作成しました。

業界の出荷状況を見れば、決してこの二つの分野の「物価」が下落しているとは考えられない状況にあることもまたお示ししました。一つ考えられることがあるとすれば、出荷される段階では正規の販売方法がとられているが、店頭で販売される段階で昨年以上の値下げが行われているのではないか、ということ。

まあ、これは店頭で販売される段階での問題ですから、販売業者が問屋に対して抑圧的に値下げを強要しているような状況さえなければ、許容範囲といえるのかもしれません。


エネルギーに関連した消費者物価指数

大洋の恵

ただ、私として個人的に関心があるのはやはり「エネルギー価格」の動向です。
今「消費者物価指数」を低迷させ、あたかも継続的に物価が下落し続けている様に見せかけているその主犯こそ「エネルギー価格」だからです。

勿論、エネルギー価格は私たちの生活に対してランニングコストとして継続的にかかわってくる分野ですから、安ければ安いほうがいい。何度もお伝えしていますように、エネルギー価格はその大部分が「輸入」によって賄われていますから、これが下落することで損をする人は日本国内にはほとんどいません。

ただ、「消費者物価指数」に関してきちんと理解することができていない人たちにとっては、「消費者物価指数(総合:CPI)」にせよ、「消費者物価指数(生鮮食品を除く総合:コアCPI)」にせよ、これが「下落している」と報道されただけで、あたかも消費が減退しているかのように錯覚してしまう人が多くいるのもまた事実なのです。

例えば2016年10月の「CPI」は前年同月比でプラス0.1%。「コアCPI」はマイナス0.4%、「コアコアCPI」はプラス0.2%となっています。

CPIとコアCPIを比較した時に、CPIはプラスなのにコアCPIはマイナスです。
違いは「生鮮食品」を除いているかどうかですから、この数字だけ見れば、「生鮮食品が高騰したため、消費者物価指数総合が上昇した」という風に判断することができます。

ですが、「コアコアCPI」、つまり「食料およびエネルギーを除く総合」に着目すると、「物価を大幅に押し上げていた生鮮食品が除かれているにも拘らず、『コアコア』はさらに輪をかけて上昇している』ことが分かります。

物価を大幅に押し上げていたはずの生鮮食品が除かれるのですから、普通コアコアは下落しなければおかしいのですが、逆に総合よりも上昇しています。それだけ「エネルギー価格」が上から物価を押さえつける効果は大きいのです。


「エネルギー価格」が関連する分野は主に10大費目の内、「光熱・水道」および「交通・通信」の二つです。
この他にも「家具・家事用品」の内「家事用消耗品」などもその影響を受けます。家事用消耗品に関しては第223回の記事 で既にふれていますので、他の2つの項目について掲載します。


「水道・光熱」の消費者物価指数

「水道・光熱」を構成している中分類項目は以下の通りです。数字は「前年同月比」になります

 光熱・水道 -6.0(9月:-6.2)

  電気代 -6.8(9月:-6.5)
  ガス代 -7.8(9月:-8.2)
  他の光熱 -19.0(9月:-21.6)
  上下水道料 0.4(9月:0.4)

「他の光熱」はそのまま「灯油」のことです。エネルギー価格に含まれない「上下水道料」は継続して0.4%の物価上昇率となっていますが、他の「エネルギー価格」に相当する品目は全てわずかではありますが、マイナス幅を縮小させています。


「交通・通信」の消費者物価指数

「交通・通信」を構成している消費者物価指数は以下の通りです。

 交通・通信 -1.7(9月:-2.1)

  交通 0.0(9月:-0.2)
  自動車等関係費 -1.7(9月:-2.3)
  通信 -2.5(-2.7)

「交通」および「自動車等関係費」が主にエネルギー価格が関連する項目です。


【「交通」のフィルタリング】

「交通」は項目数が多いですので、「小分類」別に比較します。

交通 0.0(9月:-0.2)

 鉄道運賃(JR) 0.0(9月:0.0)
 鉄道運賃(JR以外) 0.5(9月:0.1)
 一般路線バス代 0.2(9月:0.1)
 高速バス代 0.0(9月:0.0)
 タクシー代 0.3(9月:0.3)
 航空運賃 -2.4(9月:-3.8)
 有料道路料 0.5

特に大きな影響を受けているのは「航空運賃」になりますが、個々も下落幅が縮小しています。

【「自動車等関係費」のフィルタリング】
自動車

「自動車関係費」も項目数が多いですので、まずは「小分類」別に掲載します。

 自動車等関係費 -1.7 (9月:-2.3)

  自動車 0.1(9月:0.0)
  自転車 4.8(9月:4.4)
  自動車等維持 -2.4 (9月:-3.2)

特に影響が大きいのは「自動車等維持費」。この項目の中に「ガソリン代」が入っています。

  自動車等維持 -2.4 (9月:-3.2)
   ガソリン -7.7(9月:-9.2)
   自動車タイヤ 1.4(9月:0.7)
   自動車バッテリー -0.4(9月:-0.2)
   カーナビゲーション -4.8(9月:-7.3)
   自動車整備費(定期点検) 1.0(9月:0.5)
   自動車整備費(パンク修理) 1.5(9月:1.4)
   自動車オイル交換料 0.8(9月:0.7)
   車庫借料 0.1(9月:0.1)
   駐車料金 0.9(9月:0.9)
   自動車免許手数料 0.0(9月:0.0)
   レンタカー料金 0.0(9月:0.0)
   洗車代 0.2(9月:0.3)
   ロードサービス料 0.0(9月:0.0)
   自動車保険料(自賠責) 0.0(9月0.0)
   自動車保険料(任意) 0.0 (9月:-0.3)

項目数も多いですね。「ガソリン」は前年同月比で-9.2から-7.7に下落幅を縮小させています。
この他に、「自動車タイヤ」や「自動車バッテリー」も原油価格の動向の影響を受けると考えられます。原材料に原油が含まれますからね。

「カーナビゲーション」の消費者物価も下落幅を縮小させています。
この品目の下落幅が大きい理由としては、家電やテレビと同様に正確なデータが反映できていない可能性が疑われる他、スマートフォンの普及により、スマホがカーナビの代用品としての機能を果たすようになってきている理由も大きいのではないでしょうか。

補足にはなりますが、「自動車」の項目も見てみます。

  自動車 0.1(9月:0.0)
   軽乗用車 0.5(9月:0.5)
   小型乗用車A 0.2(9月:-0.1 )
   小型乗用車B -9.7(9月:-9.7)
   普通乗用車A 0.3(9月:0.5)
   普通乗用車B 0.8(9月:-0.1)

自動車の物価に大きく影響を当てているのは「小型乗用車B」、つまり輸入小型車の消費者物価です。
代わりに普通乗用車B(輸入車)は物価を下落から上昇へと改善させており、小型乗用車A(国産車)も同様に改善させていることから、ようやく「自動車」の分野に関しては物価が上昇へ向かう兆しが見えてきているのではないでしょうか。


もう一つ補足ですが、「通信」に関しては、-2.7から-2.5へとここも下落幅を縮小させています。
最も影響が大きいのは「携帯電話」の通信料と本体の物価です。

携帯電話通話料は-2.8から-2.2へと下落幅を縮小させ、本体代は-8.3から-7.2となっています。
携帯電話に関してはやはり格安スマホなどの影響が大きくなっていると考えられます。


エネルギー指数については、その影響が大きいことを日銀の黒田さんも言及しており、エネルギー指数はマイナスからゼロになるだけで物価に好材料を与えることを認めています。

【為替(円ドル)/ガソリン/原油価格比較 平成28年(2016年)11月】
為替・ガソリン・原油比較(2016年11月)

こちらは2016年11月の原油価格、ガソリン実売価格を為替相場と共に比較したものです。
為替・原油は月初、ガソリン実売価格はe燃費様データを利用させていただいています。ガソリン価格のみは平均値となっています。

ですので、特に為替相場に関しては現在の価格より大幅な円高となっています。
原油価格がほぼ横並び、ガソリン価格に関しては前年同月より3円安くなっていますから、どうでしょう。11月データ辺りではそろそろ原油価格の影響はほぼなくなるような状況になるのではないでしょうか。


この他、衣類・履物も消費者物価指数が前年同月比で1.4%から1.2%に下落するなど、やや気にかかる動きはしているのですが、ここは季節ものの動向が影響を与えているのではないかと考えられます。

秋冬物はそろそろ動きが出てきている様なのですが、ジーンズや子供用洋服など、季節を選ばずに着用することができる品目にやや下落する動きが見えます。この当たりは本格的に寒くなる季節の到来を待ちたいと思います。

原油価格に対してはそろそろ解消の兆しが見えていますから、あとは家電関係のみ、というところですね。
それにしてもなんで家電関係はこんなに物価が下落しているのでしょう・・・。

明確な理由を知りたいものです。


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第223回 平成28年(2016年)10月消費者物価指数速報①/品目別指数①

「教養娯楽」分野のフィルタリング

前回に引き続いて、2016年10月度消費者物価指数の内、「教養娯楽」の分野を分析してみます。

 教養娯楽用耐久財
  テレビ -17.9(9月:-18.6)
  携帯型オーディオプレーヤー 0.0(9月:-1.6)
  電子辞書 0.1(9月:-1.6)
  ビデオレコーダー 2.7(9月:0.9)
  パソコン(デスクトップ型) -3.5(-0.7)
  パソコン(ノート型) -5.1(-2.3)
  プリンタ 6.5(-53.9)
  カメラ 4.8(4.7)
  ビデオカメラ 2.9(1.8)
  ピアノ 0.0(0.0)
  学習用机 3.3(3.3)

プリンタの変動幅ははっきり言って異常ですね。
どのような計算をすればここまで変動にぶれが生じるのか、私には理解できません。

パソコンは「デスクトップ型」「ノート型」ともに下落幅が拡大していますね。
パソコンの物価変動に関しては、第209回の記事 でもお伝えしましたように、他の消費者物価に先駆けて、POSデータ等を利用した、どちらかというとミクロベースから収集しているようなデータなので、この信ぴょう性はそこそこ高いと思われます。

電子情報産業協会 様データより引っ張ってくることが出来はするのですが、現時点ではまだ10月データは公表されていません。

テレビ情報も同じ電子情報産業協会 様によって公開されているのですが、同じくまだ10月データは公表されていません。

ちなみに、前回、9月のデータは上げていませんでしたので、これを引っ張ってきますと、こんな感じです。

テレビ

【9月のテレビ出荷台数及び前年同月比】
 薄型テレビ(総数)
  数 量 374
  前年比 106

  29型以下
   数 量 78
   前年比 82.2
  30~36型
   数 量 115
   前年比 97.7
  37~49型
   数 量 121
   前年比 142.9
  50型以上
   数 量  60
   前年比 108.1

数量の単位は『千台』です。

見ての通り、売り上げ総数が前年同月比で増加しています。

内訳では小型になるにしたがって売り上げ台数は減少。大型、特に37~49型 の増加量が多くなっています。

「消費者物価」が増加する要素万点なんですが、なぜ「消費者物価指数」では減少しているんでしょうね?


「教養娯楽用耐久財」全体で考えますと、ウェイトは2とわずかにすぎませんが、さすが53.9%のマイナスから6.5%まで増加したプリンターの影響は大きいと思います。

ウェイトが一番大きいのはテレビで、マイナス幅は1.3%縮小していますから、ここの影響も大きいでしょう。
教養娯楽用耐久財のマイナス幅が2.3%縮小した理由は主にこの2つだと考えられます。


「教養娯楽用品」のフィルタリング

「教養娯楽用品」はアイテム数が結構多いです。

教養娯楽用品

 文房具
  ボールペン
  ノートブック
  はさみ

 運動用具類
  ゴルフクラブ
  グローブ
  テニスラケット
  釣ざお
  トレーニングパンツ
  水着
  競技用靴

 玩具
  家庭用ゲーム機(据置型)
  家庭用ゲーム機(携帯型)
  ゲームソフト
  人形
  玩具自動車
  組立玩具

 切り花
  切り花(カーネーション)
  切り花(きく)
  切り花(バラ)

 他の教養娯楽用品
  記録型ディスク
  メモリーカード
  コンパクトディスク
  ビデオソフト
  ペットフード(ドッグフード)
  ペットフード(キャットフード)
  ペットトイレ用品
  鉢植え
  園芸用土
  園芸用肥料
  電池
  プリンタ用インク

全部数字を掲載すると脳が沸きそうな感じになるので、まずは「小分類」ごとに数字を掲載してみます。


【教養娯楽用品】

 文房具 1.3(9月:1.7)
 運動用具類 4.0(9月:-0.8)
 玩具 -2.7(9月:-2.2)
 切り花 3.7(9月:0.7)
 他の教養娯楽用品 0.6(9月:1.0)

影響が大きいのは「運動用具類(ウェイト:52)」と「切り花(ウェイト:31)」の二つですね。
それ以外は上げ幅が縮小、もしくは下げ幅が拡大しています。

運動用具類に関しては-0.8が4.0にまで拡大していますね。


【運動用具類】
  ゴルフクラブ 31.1(9月:6.6)
  グローブ 7.5(9月:7.5)
  テニスラケット 2.3(9月:2.4)
  釣ざお 1.4(9月:-0.2)
  トレーニングパンツ -6.4(9月:-8.1)
  水着 2.2(9月:-0.1)
  競技用靴 5.9(9月:2.8)

ゴルフクラブ・・・すごいですね。
他に釣り竿がマイナスから一気に1.6%の上昇、水着が同じくマイナスから一気に2.3%の上昇、競技用靴も3.1%上昇幅を拡大させています。

ゴルフクラブはウェイトが8、釣り竿が11、水着が6、競技用靴が9です。

ゴルフをする人のペルソナを想像すると、なんとなく「なぜ増えたのか」という理由が想像できますね。
富裕層が余分に使うことができる資金が増えた・・・ということでしょうか。


【切り花】
「切り花」っていうと、利用する人のペルソナはイメージしにくいですが、ではどんな花が買われたのか、ということを見ると、少し事情が見えてきます。

 切り花
  切り花(カーネーション) 3.7(9月:0.7)
  切り花(きく) 10.1(9月:-0.4)
  切り花(バラ) 2.4(9月:0.7)

上昇幅はどれも大きいのですが、目立つのが「きく」ですね。
マイナスから一気に10.5%上昇。「きく」でイメージされるのはやはり弔辞です。

あくまでも想像ですけどね。
とはいえ、きくだけでなく、カーネーションも、バラうも増加しています。

ただ、この「切り花」の分野は時折マイナスをつけることがありますが、通年でプラス成長している分野です。

そう考えると、「教養娯楽用品」への影響が大きかったのは「運動用具類」の上昇によるものが大きいということになりますね。


【教養娯楽サービス】
さて。もう一つ、9月と比較して0.4%上昇幅を拡大させたのがこの分野です。
この分野も品目数が多いので、まずは小分類別に掲載します。

教養娯楽サービス

  宿泊料 2.3(9月:2.3)
  パック旅行費 8.2(9月:1.7)
  月謝類 0.6(9月:0.6)
  他の教養娯楽サービス -0.1(9月:0.0)

宿泊費に関しては、先月より引き続きの2.3%成長ですね。
大きいのは「パック旅行費」。品目は「外国パック旅行」のみです。

宿泊費が国内旅行、パック旅行費が海外旅行というイメージでしょうか。
パック旅行費は6.5%上昇幅を拡大しています。

他は横ばい、もしくは下落していますから、大きいのはこの旅行費ですね。
だだ、旅行費に関しては、2015年の夏場に海外旅行が下落する時期があったものの、ここも継続的に上昇しています。

6月は前年同月で10.3、7月が7.4、8月が6.9%の昨対です。


「消費者物価指数」が記事にされる場合、どうも「物価が下落している局面」にのみ注目が集まってしまいますが、きちんと上昇している分野にも着目してニュース記事を作らないと、私たち民間人が正しく情報を判断することはできません。

マスコミにはそういう責任を実感してほしいです。


次回記事では、その他、特に「エネルギー費」の側面に着目して記事を作成してみたいと思います。


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第222回 平成28年(2016年)10月消費者物価指数速報①/歪なマスコミ報道

では、いつもの通り「CPI(総合)」を「10大費目別(前年同月比)」で見てみます。

 食料 2.3(9月:0.6)
 住居 -0.2(9月:-0.1)
 光熱・水道 -6.0(9月:-6.2)
 家具・家事用品 -1.0(9月:-1.5)
 被服及び履物 1.2(9月:1.4)
 保健医療 1.0(9月:1.0)
 交通・通信 -1.7(9月:-2.1)
 教育 1.5(9月:1.5)
 教養娯楽 1.0(9月:0.3)
 諸雑費 0.7(9月:0.6)


「食料」の消費者物価指数

食料

今回の10大費目別指数の特徴として最も大きいのはやはり「食料」の物価指数の上昇です。
理由ははっきりしていまして、

 食料 2.3%(9月:0.6)
 生鮮食品 11.4%(9月:-0.8)
 生鮮食品を除く食料 0.6%(9月:0.8)

「生鮮食品」の物価高騰が最大の理由です。
この話題は、ニュース等でもよく見かけたのではないでしょうか。

日本生命のシンクタンクと思われるニッセイ基礎研究所というところでは、これが新たなる消費抑制につながる、とも分析しています。
消費者物価(全国16年10月)~生鮮食品の価格高騰が消費の新たな悪材料に

記事内容としては、個人的に首をかしげる部分もいくつかあります。
内容として、「食料」と「エネルギー価格」にしか触れていないのは専門機関が記す記事としては少しお粗末なのではないでしょうか。

「生鮮食品の価格高騰が消費の新たな悪材料に」なっているにもかかわらず、「食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)」や「生鮮食品及びエネルギーを除く総合(日銀版コアコアCPI)」がなぜプラス幅を拡大しているのか、ニッセイ基礎研究所の記事ではこの部分が検証できていません。


「家具・家事用品」の消費者物価指数

住居

「食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)」や「生鮮食品及びエネルギーを除く総合(日銀版コアコアCPI)」がプラス幅を拡大している理由として、影響が大きいと思われる分野の一つは、「家具・家事用品」の項目ではないかと思われます。

マイナス幅が1.5から1.0に0.5ポイント縮小しています。
中分類で見てみますと、以下の通りです。

 家具・家事用品
  家庭用耐久財  -4.2(9月:-6.8)
  室内装備品 -4.7(9月:-4.6)
  寝具類 1.0(9月:1.8)
  家事雑貨 4.5(9月:5.1)
  家事用消耗品 -1.2(-0.9)
  家事サービス 0.1(0.1)

前年同月比的には「悪化」している項目が多いのですが、この中で唯一「家庭用耐久財」に関しては「改善」していますね?
勿論数値としてはマイナスですから、前年度より「悪化」しているのですが、前月と比較するとマイナス幅は縮小しています。

「家庭用耐久財」の中には小分類として、「家事用耐久財」と「一般家具」の二つの項目があります。

家庭用耐久財

 家事用耐久財 -9.2(9月:-13.1)

  電子レンジ -23.0(9月:-16.8)
  電気炊飯器 -3.1(9月:-11.1)
  ガステーブル -3.0(9月:-2.3)
  電気冷蔵庫 -2.4(9月:-4.9)
  電気掃除機 -17.8(9月:-20.3)
  電気洗濯機(全自動洗濯機) -16.5(9月:-14.8)
  電気洗濯機(洗濯乾燥機) -7.9(9月:-26.7)

  冷暖房用器具 1.8(9月:0.0)
   ルームエアコン 1.4(9月:-0.6)
   温風ヒーター 0.2(9月:1.6)
   空気清浄機 9.7(9月:4.5)

 一般家具 -0.7(9月:-0.2)
  整理だんす 2.5(9月:1.3)
  食堂セット -1.9(9月-1.0)
  食器戸棚  -2.4(9月:-0.7)

「一般家具」は-0.2から-0.7にマイナス幅を拡大していますから、改善要因として大きいのは「家事用耐久財」の下落幅の縮小だということになります。

「家事用耐久財」の中で、マイナス幅を拡大しているのは

「電子レンジ」・「ガステーブル」・「電気洗濯機(全自動洗濯機)」の3項目。
それ以外の項目は全てマイナス幅を縮小。特に「冷暖房機器」の内「ルームエアコン」に関してはマイナスどころか、消費者物価はプラスに転じ、元々プラスであった「温風ヒーター」も「空気清浄機」もプラス幅を拡大しています。


「日本電気工業会」データ

毎回お示ししていますが、この「家事用耐久財」に関しましては、現実の物価変動を政府データが吸収しきれていないのではないか、と考えている分野です。

まずは先月、9月データを掲載してみます。
そこで、日本電機工業会ホームページより、実際に出荷された数量、および出荷額を毎回お示ししています。

【9月】
(単位:千台・百万円)数量 前年比 金額 前年比
電子レンジ       253  141.9  8,419  165.8
電気炊飯器      502  100.8  11,785  95.0
電気冷蔵庫      358  103.2  42,720 101.9
電気掃除機      486  117.3  10,858 124.0
電気洗濯機(全体) 383   111.7  29,295 111.6
洗濯乾燥機      94   105.7  14,269 106.7
ルームエアコン    469  104.3  39,274  108.3

【10月】
(単位:千台・百万円)数量 前年比 金額 前年比
電子レンジ       235  102.3  6,917 103.1
電気炊飯器      428  92.4   9,694  91.8
電気冷蔵庫      237  96.4  27,275  95.9
電気掃除機      336  88.8  7,211   93.7
電気洗濯機(全体) 345  118.7  24,587 117.5
洗濯乾燥機      63   104.7  8,831 111.2
ルームエアコン    336  114.7  28,236 111.2

「炊飯器」「冷蔵庫」「掃除機」に関してはやや勢いに陰りが見えるものの、特に「洗濯機」「洗濯乾燥機」「ルームエアコン」に関しては出荷額で昨対10%を超える上昇幅を記録しています。

「消費者物価指数」の項目と比較すると、やはり首をかしげるばかりですね。
ただ、どちらにせよこの項目の「前年同月比下落幅」が「縮小」したことが消費者物価指数全体に影響を与えているということは間違いありません。


「教養娯楽」の消費者物価指数

もう一つ大きいのは、この分野ですね。
数字で見てみると、プラス0.3%からプラス1.0%への拡大ですから、先ほどの「家具・家事用品」よりも大きな上昇幅です。
「家具・家事用品」のウェイトが348、「教養娯楽」が989となっていますから、影響力は「教養娯楽」の方が圧倒的に大きいですね。

教養娯楽
 教養娯楽用耐久財 -5.5(9月:-7.8)
 教養娯楽用品 2.0(9月:0.2)
 書籍・他の印刷物 0.2(9月:0.4)
 教養娯楽サービス 1.5(9月:1.1)

全項目で改善していますが、この中で特に影響力が大きいのは「教養娯楽用品」です。
プラス幅が1.8、ウェイトは210となっています。教養娯楽用耐久財のマイナス幅も2.3改善しています。ウェイトは59ですが、ここの影響も大きいです。

またもう一つ、「教養娯楽サービス」も0.4%プラス幅を広げています。ここはウェイトが592ですから、ここの影響も無視できません。

ボリュームが大きくなりそうですので、記事を分けます。


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毎月恒例となってきました、消費者物価指数速報。10月分が発表されたのは2016年11月24日になります。

今回の消費者物価指数に関しての報道はこんな感じです。

【NHK報道(1月25日 8時40分)】
消費者物価指数 8か月連続で下落
先月、10月の全国の消費者物価指数は、変動の大きい生鮮食品を除いた指数が去年の同じ月を0.4%下回り、8か月連続でマイナスとなりました。

総務省の発表によりますと、モノやサービスの値動きを示す先月の全国の消費者物価指数は、天候による変動の大きい生鮮食品を除いて、去年・平成27年を100とした指数で、99.8となり、去年の同じ月を0.4%下回りました。消費者物価指数がマイナスとなるのは、8か月連続です。これは、原油価格の下落によって電気代やガソリン価格が下がっているほか、洗濯機や炊飯器などの家電製品も値下がりしていることなどによるものです。
一方、酒類以外の食料とエネルギーを除いた指数は、100.6と、去年の同じ月を0.2%上回り2か月ぶりにプラスとなりました。

また、全国の先行指標とされる今月(11月)の東京都区部の消費者物価指数の速報値は、生鮮食品を除いた指数が99.7となり、去年の同じ月を0.4%下回って9か月連続でマイナスとなりました。

総務省は「原油価格の下落の幅は縮小してきているが、家電は新製品でも値引きされるなど価格が下がる傾向は続いており今後の動向を注視したい」と話しています。

同じ報道を他の報道機関でもタイトルで見てみます。

10月の消費者物価指数、8か月連続で下落 読売新聞-2016/11/24
消費者物価指数、8カ月ぶりマイナス幅縮小 野菜高騰で総合指数プラス ロイター-2016/11/24
日銀版消費者物価、10月0.3%上昇 8カ月ぶり上げ幅拡大  日本経済新聞-15 時間前
消費者物価0.4%下落=8カ月連続マイナス-10月 詳細-時事通信-2016/11/24

唯一日経の報道だけが書き方が違いまね。
名誉を守るために言っておきますと、朝日新聞も日経と同様の報道を行っています。

日銀版コアコアCPI、10月は+0.3% 9カ月ぶりプラス幅拡大‎ 朝日新聞 - ‎20 時間前

報道スタンスは2方向に分かれていて、

 1.消費者物価指数は前年同月比で0.4%下落した
 2.日銀版消費者物価指数は前年同月比で0.3%プラスで上昇幅が拡大した

とする二つの見方をしています。
検索結果一覧には出ていなかったので、先ほどのタイトル一覧には掲載しませんでしたが、私が一番最初に見た報道は産経新聞の報道でした。

スタンスは1番。前年同月比で0.4%消費者物価指数が下落した、という報道です。
私は事前に総務省発表を見ていましたから、一瞬頭をかしげました。

確か、消費者物価指数は上昇していたはず・・・だったからです。


消費者物価指数(総合)

ということで、まずは消費者物価指数を「総合(CPI)」「生鮮食品を除く総合(コアCPI)」「食料およびエネルギー価格および生鮮食品を除く総合(コアコアCPI)」を見てみます。

【2016年度10月消費者物価指数】
 CPI 0.1%
 コアCPI -0.4%
 コアコアCPI 0.2%

と、このようになっています。
ただ私、これまで報道内容を深読みせず、報道機関が発表しているのは「消費者物価指数(総合)」をメインにしていると思っていたのですが、よくよく見てみると、どの月も「消費者物価指数(生鮮食品を除く)」で報道していたようですね。

これは私のチェックミスです。思い込みですね。
これまで、特に私が消費者物価指数に特化した記事を作成し始めてから、「消費者物価指数(総合)」と「消費者物価指数(生鮮食品を除く)」が乖離することがなかったため、気づいていませんでした。

今回はコアが-0.4、総合は+0.1と、実に7か月ぶりに総合はプラスに転じました。

日銀が目指している「物価上昇率」が「コアCPI」であることから報道機関はコアCPIを報道に用いていたのでしょうか。
ただ今回は日経と朝日が、「コアCPI」ではなく、「日銀版コアコアCPI」を持ち出してきたのは結構意外です。

特に政府を責める記事を記す傾向がある朝日がこのような報道をしてきたのは私としては非常に意外でした。

日銀版コアコアCPIについては私がちょうど前回の記事で記したばかりのホットな話題です。
221回 GDPデフレーターと消費者物価指数の違い/どちらを見るべきか?③

表も掲載してみます。

【日銀版コアコアCPI(生鮮食品&エネルギーを除く総合】
CPI(生鮮食料・エネルギー除く)

この表では、9月の日銀版CPIが+0.1%となっています。ここから10月は+0.3%となっていますので、日経と朝日では「日銀版CPIの上げ幅が拡大しましたよ」と報道しているのです。

報道内容としては Goodjob ですね。


次回記事より、いつも通り「10大費目別」に消費者物価指数を見てみます。
この見方にもだいぶ慣れてきましたので、少しスマートに見えてくるかな、と思っています。


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<継承する記事>
第220回 GDPデフレーターと消費者物価指数の違い/どちらを見るべきか?②

「GDPデフレーター」と「消費者物価指数」を比較した場合、GDPデフレーターの最大の長所は、その値から「輸入物価」全体がマイナスされており、日本国内の利益、私たちの給与所得に影響を与える部分に限定した「物価状況」を見ることができるという部分に尽きることを前回の記事ではお伝えしました。

ですが、「消費者物価指数」で考える場合も、輸入物価の影響を受けやすい、「エネルギーの消費者物価」を取り除いてやることで、GDPデフレーターに近い値をはじき出すことができます。

総務省統計局資料としても、この「エネルギー価格」を含まない、消費者物価指数である「コアコアCPI」を発表してはいるのですが、この値からは消費者物価指数の内、全体への影響が最も多い「食料」全体の物価まで外されてしまっていますので、私としてはこの「コアコアCPI」で物価を見るのはあまり好きではありません。

「食料」の内、「生鮮食品」に関しては確かに気温や気候条件など、本来の経済状況とは異なる側面から影響を与えることが考えられますので、ここを除く事には賛同するのですが、食料全体となると話は別です。

これは、実は日銀が同じことを考えて、丁度「エネルギー価格および生鮮食品を除くCPI」というものを発表しています。

これが以下のグラフになります。

【エネルギー価格および生鮮食品を除く消費者物価指数(CPI)】
CPI(生鮮食料・エネルギー除く)

少し小さくて見えにくいかもしれませんね。
2013年度から見ると、

2013年度 前年同月比
4月    -0.6
5月    -0.4
6月    -0.2
7月    -0.2
8月    0.0
9月    0.0
10月   0.3
11月   0.6
12月   0.6
1月    0.8
2月    0.9
3月    0.8

2014年度
4月    0.8
5月    0.7
6月    0.8
7月    0.8
9月    0.7
10月   0.6
11月   0.5
12月   0.5
1月    0.4
2月    0.4
3月    0.5

2015年度
4月    0.7
5月    0.7
6月    0.7
7月    0.9
8月    1.1
9月    1.2
10月   1.2
11月   1.3
1月    0.9
2月    1.0
3月    0.9

2016年
4月    0.8
5月    0.7
6月    0.7
7月    0.5
8月    0.4
9月    0.2

この、所謂「日銀版コアコアCPI」からは、実は「消費増税による影響」もあらかじめ除外されています。

内閣府が公表しているCPIからも、1.7%をマイナスすることで増税の影響を除くことはできるのですが、こちらの方があらかじめきちんと計算されていますし、内閣府統計にはないデータですから、私は現時点ではこの「日銀CPI」こそがより正確に国内の物価状況を見る資料としては適しているのではないかと思っています。

GDPデフレーターの欠点も、消費者物価指数の欠点もきれいに取り除かれていると思います。

今年度に入ってから、特に7月、8月、9月と上昇幅が縮小していますが、このグラフから「消費増税による影響」はとても感じられませんね。
寧ろアベノミクスの本領が発揮されているのは消費増税が行われた、その翌年である2015年であることがよくわかります。

散々お伝えしてきていますように、「原油価格下落」による影響が長く続いており、このことであたかも消費者物価が下落し続けているかのように言われていますが、少なくとも2013年10月以降、一度たりとも前年同月を下回った月など存在しないことが分かりますね?

また、今年度に入って下落している理由もその最大の理由は「家電製品の物価の下落」であり、この理由として、政府試算が現実の物価状況を正確に捕捉しきれていないことを私は挙げています。

第207回 平成28年(2016年)9月消費者物価指数速報/コアコアCPI下落の理由③
第209回 平成28年(2016年)9月消費者物価指数速報/コアコアCPI下落の理由⑤


さて。それでは今回の命題。
「物価」を判断する指標として、「GDPデフレーター」と「消費者物価指数」のどちらを用いるべきか。
結論は、「消費者物価指数」を利用して日銀が作成している「日銀版コアコアCPI」をみましょう。

これが結論になります。
その上で、疑問に思った部分について「品目別CPI」を見て原因追及をしましょう。

このやり方が一番正確な情報を導き出すことが可能です。
間違えても「2014年に行われた消費増税の影響が2016年7月になって突然出てきた」なんてトンデモ論に惑わされることのありませぬよう・・・。



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第219回 GDPデフレーターと消費者物価指数の違い/どちらを見るべきか?①

前回の記事では、「物価」が「原価」と「利益」によって構成されていること、安倍内閣の目指す「物価上昇」には、「原価」を構成する国内業者の利益をも確保することを目指しているんだ、ということをお伝えしました。

また一方でこの状況を目指そうとすると、商品を購入する人の意思に関わらず、「原価」そのものが上昇することとなり、結果的に消費者の意思に関わらず「物価」は上昇することになり、結果的に消費が減るのではないかと、ここまでお伝えしたと思います。


この状況を、「GDPデフレーター」を表す等式に当てはめて考えてみます。

 GDPデフレーター=名目GDP÷実質GDP

このうちデフレーターが「単価」、名目が「購入総額」、実質が「購入数量」になります。

「原価上昇によって物価が上昇する」ということは、この等式では「GDPデフレーター」に相当する部分が上昇するということです。
「名目GDP」は「購入総額」で、「GDPデフレーター×実質GDP」で表すことができます。

「消費が減る」ということは、GDPデフレーター=販売単価は上昇しているわけですから、残る「実質GDP」、つまり「購入数量」が減ることになります。

購入単価500円だったものが600円に上昇し、売上数量10個であったものが9個に減少したケースを考えてみます。

 購入総額(名目GDP)=購入単価500円×購入数量10個・・・①

こちらが変化する前の名目GDP。

 購入総額(名目GDP)=購入単価600円×購入数量9個・・・②

こちらが変化後の名目GDPです。

①の計算結果は6000円。②の計算結果は5400円ですから、名目GDPは減少していますね?

よく「名目GDPが上昇しても実質GDPが減少したのでは国民の生活はより苦しくなる」というような主張をする人がいます。
ですが、もし実質GDPが減少する、つまり購入単価が減るということは、それは名目GDP、すなわち「購入総額」が減少することを意味しています。

問題になるのは、「GDPデフレーター」、つまり「購入単価」の減少にあるのです。

さきほどもご説明しましたように、この場合の「購入単価」には、「原価」にも「売価」にも含めて「生産」や「流通」にかかわったすべてのセクションで「利益」を確保することができていますから、名目GDPが上昇するのであれば、たとえ実質GDPが減少したとしても、企業は軒並み利益を得ることができていることになります。

企業の利益は従業員の給与にも反映されますから、おのずと国民の生活は豊かになることになります。
企業の内部留保が問題になることはありますが、このケースではあえて外して考えます。

ですが「GDPデフレーター」、つまり「購入単価」に相当する部分が減少するのであればこれは企業が利益を削っていることになりますから、これは従業員の給与にも反映されますから、国民の生活を苦しめることになります。

この様に記しますと、いかに「名目GDP」を上昇させることが大切なのかということが分かります。
喩え実質GDP、つまり「購入数量」が減ったとしても、名目GDPさえ成長するのであれば、これは「国民の利益が増えている」ことを示しているのですから。


「GDPデフレーター」と「輸入物価」の関係

この様に記しますと、「確かに名目GDPが上昇すれば、国民の利益は増加するかもしれない。だが、『円安の影響で輸入物価が上昇すれば、そのことが原因で国内の物価が上昇し、企業の利益が圧迫されるのではないか」と主張する人が現れます。

ちょうど安倍内閣がスタートした当初のマスコミがまさにこれでした。
結果的にアベノミクスの影響で(と、私は考えています。※第162回の記事 をご参照ください)原油価格が大幅な下落に転じ、「輸入物価」全体も上昇するどころか、むしろ「急落」することになりました。

ただ、仮に「円安の影響で輸入物価が上昇する」ケースを想定してみても、「GDPデフレーター」で考えると、マスコミのこのような主張は実にナンセンスなものへと変わってしまいます。

「GDPデフレーター」とは、繰り返しになりますが「名目GDP」を「実質GDP」で割ったものです。
改めて「GDP」について考えますと、前回の記事 で掲載した以下の表で考えると、とてもわかりやすく考えることができます。

GDP.png

縦軸に「消費支出・投資・在庫」、横軸に「家計・企業・政府」を取り、これに「輸出」と「輸入」の項目を加えたもの。これが「GDP」です。

「輸出と輸入の項目を加えた」と記しましたが、計算式上加えられているのは「輸出」のみであり、「輸入」は逆にマイナスされています。「GDP」からは、元々「輸入額」はマイナスされているのです。

つまり、円高によるかどうかは別として、輸入物価が上がろうが下がろうが、元々計算式に加えらえていない値が変化したところで、「GDP」そのものには全く影響がありません。

「GDPデフレーター」も同じ。GDPデフレーターで考える以上、輸入物価上昇による物価上昇など、元々考慮する必要はありません。仮に輸入物価の上昇により国内の利益が圧迫されるのであれば、物価から輸入額を差し引いた値はマイナスになりますから、名目GDPは減少します。

「GDPデフレーター」で見るのが良いのか、「消費者物価指数でみるのが良いのか」と考えた場合、輸入額の物価に対する影響まで包括できているのかどうかという点ではGDPデフレーターの方が優秀だと考えられます。


「GDPデフレーター」と「消費増税」

ところが、2014年に行われた「消費増税」。この場合は少し事情が異なってきます。
消費税は、ある一定以上の売り上げを上げている企業が販売するものには一律で課税されますから、それこそ「消費者の意思に関わらず」物価が上昇します。

しかも、その「利益」はGDP的には「政府」の利益になります。
勿論、この利益分が翌年には「社会保障費」として国民に分配されますので、消費増税悪玉論とつなげるべきではないと考えていますが、少なくとも単年度で考えると「家計最終消費支出」からはマイナスされるのです。

「GDPデフレーター」には政府の収益も加算されていますから、増税による物価上昇も「インフレ」として影響を与えるのですが、企業の利益を圧迫し、国民の消費動向を鈍らせる要素となっていますから、増税年度に限っては異なる見方をする必要が出てきます。


「消費者物価指数」と「消費増税」

ところが、これを「消費者物価指数」で考えますと、実はもう少し正確な見方をすることができます。
このことについては、日本総研様資料 で、以下のように記されています。

消費税が課税される個別品目でみた場合、消費税率の引き上げ分(5%⇒8%)がフル転嫁されれば、税込み価格は約2.86%((1.08-1.05)/1.05≒2.86%)押し上げられる。消費者物価指数(除く生鮮食品)に占める課税品目の割合(経過措置の影響で4月に旧税率が適用される品目を除く)は6割程度であることから、増税分がフル転嫁された場合、消費者物価指数(除く生鮮食品)は約1.7%ポイント押し上げられる計算となる。


要は、消費増税が消費者物価指数に与える影響は前年同月比で1.7%程度ですよ、ということです。
これをそのまま信用すれば、という前提条件付きにはなりますが、消費者物価指数から1.7%マイナスすることで、消費増税の影響を除いた、おおよその物価動向を見ることができます。


次回記事では、この「消費増税の影響を除いた消費者物価指数」の推移について、「原油価格下落の動向」と「GDPデフレーター」を絡める形で記事を作成してみたいと思います。


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<継承する記事>
第218回 GDPデフレーターとは何か?/日本一わかりやすく考える

前回の記事では、「GDPデフレーター」という指標について、それがそもそもどういう意味合いを持つもの何か、ということに着目して記事を作成しました。

作成しながら出来上がっていった考え方ではあるのですが、たぶんGDPデフレーターについてこのように説明している人はまずいないと思います。個人的に自信のある解説内容なので、ぜひ見ていただけるうれしいです。


この「GDPデフレーター」という言葉なのですが、そもそもその時点での経済が「インフレ」なのか、「デフレ」なのか、GDPデフレーターとは、この「物価状況」を図るための指標です。

第9回の記事 でも掲載していますが、GDPデフレーターは「基準年を100」とした場合、100を上回っていればインフレ、下回っていればデフレです。

前回の記事 の内容をおさらいしますと、「GDPデフレーター」とは以下の計算式で表すことができます。

 GDPデフレーター=名目GDP÷実質GDP

前回の記事では、スーパーマーケットでリンゴを総額5000円、個数を10個購入した場合の事例として、「名目GDP」は「総額」、「実質GDP」は「個数」、そして「GDPデフレーター」とは「購入単価」に相当するものであることをお示ししました。

あくまでもこの人が購入したりんごは1種類で、全て同じ金額であることを前提としたものにはなりますが。

GDPデフレーターが変動するということは、上の事例で考えれば「リンゴの単価」が変動することを示しています。
1個500円で売られていたリンゴが400円になればデフレ、600円になればインフレです。

前回も記した通り、アベノミクスが目指している社会とは、一個500円のリンゴではなく、一個600円のリンゴが選ばれる社会です。ものすごく喩えが小さいですけどね。


さて。改めまして今回のテーマはタイトルにもございます通り「GDPデフレーター」と「消費者物価指数」の違いです。

「GDPデフレーター」も、「消費者物価指数」も共に「物価変動」を見ることができる数字です。
では、日本国経済を考える場合、「GDPデフレーター」と「消費者物価指数」の内、どちらの数字を見ればより正確な「物価変動」を理解することができるのでしょうか。

「物価」

「GDPデフレーター」と「消費者物価指数」の違い

「GDPデフレーター」も「消費者物価指数」も、「物価動向の全体像」をとらえるための指標ですから、所謂「マクロ指標」となります。ですが、どちらがより生活の実感に近いかというと、これは圧倒的に「消費者物価指数」です。

「GDPデフレーター」とは、既にお伝えしています通り、「名目GDP」を「実質GDP」で割ったものです。

「GDP(支出側から見たGDP)」という指標は、まず2つの次元で構成されています。

縦軸を構成しているのが「消費支出」と「投資」と「在庫」。横軸を構成しているのが「家計」「企業」「政府」そして「輸出入」です。
縦軸を構成している「消費支出」と「投資」「在庫」という項目は輸出入には当てはまりません。

【GDPの構成要件】
GDP.png

こんな感じです。「消費者物価指数」とは、このうち「家計最終消費支出」に限定した「GDPデフレーター」といっても良いと思います。

「消費者物価指数」は「家計最終消費支出」を更に分割して「10大費目別」や「中分類」、「小分類」、「品目別」とさらに砕いていくことでより私たちの生活の実感に近い情報を手に入れることができるようになっています。


ですが、私の様に情報を分析することが好きな人間にとっては「消費者物価指数」を「10大費目別」や「品目別」まで砕いて見る機会もあるのですが、一般的にニュース等で報道されるときは、「消費者物価指数」というトータル指標として報道されます。

こんな感じです。

【日本経済新聞ニュース】
9月の全国消費者物価、0.5%下落 7カ月連続下落 2016/10/28 8:33

 総務省が28日発表した9月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は、生鮮食品を除く総合が99.6と、前年同月比0.5%下落した。下落は7カ月連続。QUICKが発表前にまとめた市場予想の中央値は0.5%下落だった。8月は0.5%下落した。

 食料・エネルギーを除く「コアコア」のCPIは100.4と横ばいだった。生鮮食品を含む総合は99.8と、0.5%下落した。

 同時に発表した10月の東京都区部のCPI(中旬速報値、2015年=100)は、生鮮食品を除く総合が99.7と0.4%下落した。生鮮食品を含む総合は100.3と0.1%上昇した。〔日経QUICKニュース(NQN)〕

タイトルに「消費者物価指数(総合)」、文中に「コアコアCPI」も掲載していますが、一般の方はこの「コアコアCPI」を意識することはあまりありません。

では、そもそも「GDPデフレーター」と「消費者物価指数」。どちらの動向を見ればより日本国内の現実に近い「物価動向」を見ることができるのでしょうか。


「物価」とは何か。

政府も日銀も、特に安倍内閣に入って以来、「物価上昇」を盛んに訴えています。
では、一体なぜ物価を上昇させなければならないのでしょうか。

これも過去の記事でお伝えしたことがあると思いますが、「物価」とは、「店頭売価」のことではなく、あくまでも「店頭で消費者が物品を購入した支払金額」のマクロデータを指標として現したものです。

店頭に500円の普通のリンゴと600円のおいしいリンゴが並んで売られていたときに、店頭で500円の普通のリンゴを勝った人より600円のおいしいリンゴを買った人の増加率が大きければこの店の「リンゴの物価」は上昇します。

逆に600円のリンゴよりも500円のリンゴを選んだ人の増加率画大きければ「リンゴの物価」は下落します。

よく「安倍内閣で物価が上昇したせいで国民の生活が苦しくなった」というような表現をする人がいますが、店頭で600円のリンゴを購入する人が増えなければ物価は上昇しません。

つまり、600円のリンゴを買う余裕のある人が増えるため、物価は上昇するのです。
いくら安倍内閣が物価上昇を煽ったところで、500円のリンゴを買う人の方が多ければ物価は上昇しないのです。

ここを勘違いしている人が多いのではないかと思います。


さて。この600円のリンゴですが、この600円という金額はどのようにして決められているのでしょうか。

当たり前の話ですが、「物価」とは「原価」と「利益」によって決められます。
「物価」が上昇するのは「原価」が上がるか「利益」があるのか、その両方が上昇するのか。このどれかしかありません。

例外として「消費増税」が行われたときには「原価」と「利益」以外に物価全体にかけられた「消費税」が増加しましたので、「原価」と「利益」以外の影響で物価が上昇しました。

ただ、増税が行われることはそう頻繁にあることではありませんから、普通は「原価」か「利益」か、もしくはその両方が上昇するかのどれかが原因になります。


「原価」の考え方

では、このうち「原価」の考え方なのですが、この「原価」もまた「物価」同様、「原価」と「利益」によって構成されています。

「物価」は販売店の経費だけでなく、リンゴであれば出荷する農家、農家から市場まで輸送するための設備費、輸送費、リンゴを仕分けるための機械、育てるための肥料や除草剤、殺虫剤等々、様々な費用がかけられているのです。

安倍内閣が掲げている「物価上昇」とは、単にリンゴを販売する際の販売額を挙げるだけでなく、これらの一連の工程の中でもきちんと利益を確保するようにしなさいと、そういっているのです。

農業

ですから、当然商品を仕入れる段階ではすでにその「原材料費」の中にその工賃が上乗せされることになります。
その上で店頭販売価格に利益を載せて、販売して売れるのかどうか。これが「アベノミクス」では問われていることになります。


記事が少し長くなりましたので、記事を分けます。
私は「物価」について、「店頭で、その価格で販売できなければ物価は上昇しない」とお伝えしました。

ですが、このように記しますと「原材料費が高騰するのだから、やっぱりアベノミクスでは『消費する側』の事情には関係なく物価が挙げられるんじゃないか」という人がいるかもしれません。

ですので、次回記事では、「原材料費が高騰した結果」、物価が上昇するとどのようなことになるのか。
そのような内容について重ねて掲載したいと思います。


この記事のカテゴリー >>「物価」の見方


前回の記事 でもご案内しましたが、このところ「GDPデフレーター」に関連したキーワードからの検索が増えていますので、少しこのキーワードに関連した記事を追加してみたいと思います。

↓勿論過去にもこの「GDPデフレーター」について記事にしたことはあります。
第9回 GDPデフレーターとは何か

キーワードからのアクセスもこの記事にランディングしています。
ただ、私自身の知識量とすると、あの時より現在の方が増えていると思いますし、文字色をたくさん使ってしまっていることで、却って読みにくくなっているのではないか・・・という懸念もありましたので、今回改めてこの「GDPデフレーター」について記事を作成してみようと思います。


「GDPデフレーター」とは何か?

「GDPデフレーター」とは何かと申しますと、これは一言で、「国内の物価が『インフレ』であるか、『デフレ』であるかを判断するための指標」である、ということになります。

その計算式は、

 名目GDP ÷ 実質GDP × 100

で表されます。
既に何度もお伝えしていますように、「名目」とは「何円消費されたのか」という「金額」を表すための指標であり、「実質」とは「何個消費されたのか」という「量」を表すための指標です。

金額を個数で割るわけですから、「消費量1当たりの金額」が算出されます。

りんご

例えば、リンゴを総額5000円購入したとして、購入数量が10個であったとすると、りんご一つ当りの単価は

5000÷10=500

になりますよね?
つまり、500円のリンゴを10個買った結果合計で5000円支払いました、とこうなるわけです。

この場合、「総額5000円」に相当するのが「名目GDP」、「購入数量10個」に相当するのが「実質GDP」、「りんご一つ当りの単価」に相当するのが「GDPデフレーター」です。

このように考えるとわかりやすいですよね?
例えば総額が6000円になったけれども、購入数量は10個のままであったとすると、りんご一つ当りの単価は600円になります。

この現象をGDPに置き換えて考えると、名目GDPは2割上昇したが実質GDPは上昇しなかった。GDPデフレーターの上昇率は20%であった

というように表現されます。

「名目GDP」と「実質GDP」

この様に表現すると、多くの人の頭の中に、「クエスチョンマーク」が思い浮かぶかもしれません。

「え、だって『実質GDP』って金額で表されてるじゃん!」

と。

これは当然だと思います。
先ほどのリンゴの事例を用いて、少し頭の体操をしてみたいと思います。

【質問1】
Aさんは、とあるスーパーマーケットで、リンゴを10個、総額5000円購入しました。リンゴ一つ当りの単価は何円だったでしょう?

質問は先ほどの事例とまったく同じです。答えは5000÷10=500で500円になります。

ですが、この答えは本当に正しいのでしょうか?

【質問2】
Aさんは、とあるスーパーマーケットで、リンゴを10個、総額5000円購入しました。リンゴ一つ当りの単価は何円だったでしょう?
このスーパーマーケットで販売しているリンゴは「フジ」「つがる」「王林」「紅玉」「ジョナゴールド」の5種類です。

この様な問題であったとすると、いかがでしょう。

「リンゴ一つ当りの単価」は本当に 『5000円÷10個=500円』 という数式で表せるのでしょうか。

答えは「×」です。

実はこの500円という単価は「リンゴ一つ当りの単価」ではなく、「リンゴ一つ当りの平均単価」だったんですね。

では、次の質問です。

【質問3】
Aさんは、とあるスーパーマーケットで、リンゴとみかんを合計で10個、総額5000円購入しました。リンゴ一つ当りの単価は何円だったでしょう?
このスーパーマーケットで販売しているリンゴは「フジ」「つがる」「王林」「紅玉」「ジョナゴールド」の5種類です。

秋のフルーツ

いかがでしょう。こうなってくると、もうすでに平均値を求めることすら不可能ですね?
では、こんな質問だといかがでしょうか?

【質問3】
Aさんは、とあるスーパーマーケットで、リンゴと牛乳を総額5000円購入しました。Aさんは牛乳を何リットル購入したでしょう。
リンゴの平均単価は500円であると考えます。

先ほどまでは「単価」を問いかける質問でしたが、今回は「販売量」を問いかける問題になっています。

もう意味が分かりませんよね、ここまでくると。

では、次の質問です。

【質問3】
Aさんは、とあるスーパーマーケットで、リンゴと牛乳を総額5000円購入しました。Aさんはこのスーパーマーケットの商品をいくつ購入したでしょう。
リンゴの平均単価は500円、牛乳1リットル当たりの平均単価は200円であるとする

えっ、ってなりますよね、こんな聞き方されると。リンゴを数える単位が「個」であると考えている人もいらっしゃるかもしれませんが、ひょっとすると「g」かもしれません。牛乳の単位も「リットル」ではなく、「パック」かもしれません。

組み合わせが今回はまだスーパーマーケットで販売されている程度のものですから、まだ辛うじて想像できるかもしれませんが、ここに「ガソリン」であったり「パソコン」であったり、「車」であったり、「家」であったり、単位も、考え方も異なるコンテンツが入ってくると、もうとても「販売数量」など数えることは不可能になってしまいます。

ましてこれが国家レベルになると、「金融」だとか「設備投資費」だとか「税金」だとかとても同じ単位で考えることができないコンテンツだらけになってしまいますし、住んでいる地域が異なれば、一単位当たりの金額を平均化することそのものが不可能になるケースだらけになってしまいます。

そこで、「国家」規模でこれを考える場合、単位を「個」だとか「g」だとか「リットル」だとか、異なる単位で集計することはせず、「円」という共通の単位で販売数量を計測しているのです。正式には数式を用いて算出しています。
その最大の計算結果が「実質GDP」なのです。

つまり、「実質GDP」とは、単位こそ「円」で表現していますが、実際には金額ではなく、「数量」を表しているのです。

詳しくは、第53回の記事 などでも掲載しています。


「GDPデフレーター」とは何か。
それは、日本国内で1年や四半期などの期間内で消費されたありとあらゆるコンテンツの「平均単価(単位:%)」を現したものです。

日本国政府や日銀が「インフレ(物価上昇)」を目指しているのは、この平均単価で考えた場合、冒頭のリンゴの事例を挙げますと、500円のリンゴより、600円のリンゴが消費される社会を作ることを目指している、ということです。

ただ、その時に、確かに500円のリンゴより600円のリンゴの方が売れるようにはなったけれども、販売数量が9個しか売れなくなったのでは意味がありません。せめて同数、願わくば11個、12個と売れるような社会を作りましょう、というのが現在の安倍内閣の政策=「アベノミクス」なのです。

いかがでしょう。「GDPデフレーター」について、「日本一わかりやすく」考えるお手伝いができましたでしょうか?

次回記事では、同じ「物価」を計る指標として「GDPデフレーター」以外に「消費者物価指数」という指標があるわけですが、ではどちらの指標を用いるべきなのか、どちらの指標で見れば正確なインフレ・デフレの状況が判断できるのか。

そのようなテーマで記事を記したいと思います。


この記事のカテゴリー >>GDPの見方


前回の記事 で少し触れましたが、一昨日(2016年11月14日)、2016年度第二四半期(7月~9月)のGDP一次速報が発表されましたので、今回はこの話題について記事にしたいと思います。

ニュース情報では、こんな感じで報道されています。

【日本経済新聞(2016/11/14 12:32)】
GDP実質2.2%増 7~9月年率、輸出・住宅伸びる

 内閣府が14日発表した2016年7~9月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比0.54%増、年率換算で2.2%増となった。プラスは3四半期連続。アジア向けを中心に輸出が伸び、国内でも住宅投資が堅調だった。一方、内需の2本柱である個人消費と設備投資はゼロ近傍で停滞した。

 実質GDPの増加率は、15年1~3月期(年率5.0%)以来の高い伸びとなった。市場の事前予測の中央値(年率0.8%、QUICK調べ)を大きく上回った。生活実感に近い名目GDPの増加率は0.2%、年率換算で0.8%だった。

 石原伸晃経済財政・再生相は同日の談話で「日本経済はこのところ弱さもみられるが、緩やかな回復基調が続いている」との認識を示した。

 前期比0.54%伸びた実質GDPの増減にどれだけ影響したかを示す寄与度をみると、外需が0.45%分押し上げた。輸出は2.0%増えた。「iPhone7」など新型スマートフォン(スマホ)の増産のため、半導体製造装置や電子部品の輸出が伸びた。アジア経済の復調も輸出を押し上げた可能性がある。

 GDP統計で輸出に分類される訪日外国人(インバウンド)消費は9.4%増えた。熊本地震で訪日を見送るケースが相次いだ4~6月期の落ち込みを取り戻した。輸入は0.6%減少した。

 内需は実質GDPを0.09%分押し上げた。住宅ローン金利の低下が購買意欲を刺激し、住宅投資は2.3%増えた。個人消費は0.06%の伸びにとどまった。新型スマホの販売が好調だったが、台風など天候不順の影響でアルコールを含む飲料やガソリンの消費が落ち込んだ。

 設備投資は0.03%の増加にとどまった。米欧の自動車市場が堅調な輸送機械は伸びたが、農業機械やソフトウエアの新規投資は振るわなかった。収益が伸び悩むなか、企業が設備投資を様子見している。公共投資は0.7%減った。16年度当初予算などの前倒し執行が押し上げた4~6月期の反動が出た。

 物価の動きを総合的に示すGDPデフレーターは前年同期比0.1%低下した。13年10~12月期以来11期ぶりに前年を下回った。円高が物価の重荷になっている。収入の動きを示す雇用者報酬は名目ベースで前年同期比2.0%増えた。

 内閣府は12月8日に公表する7~9月期改定値から推計方法を見直す。これまで付加価値を生まない「経費」として扱った研究開発費を付加価値を生む「投資」と見なし、GDPに加算する。内閣府の試算では、新たな基準年となる11年の名目GDPは19.8兆円かさ上げされるという。

財務省

どの記事にも共通して記されていたのは、実質GDPが2.2%増加し、これが3四半期連続でのプラス成長である、ということです。

おさらいになりますが、「GDP」には「名目GDP」と「実質GDP」の二つの種類があります。

「名目」と「実質」の違いについて記載しますと、

「名目とは『金額ベース』の指標」であり、
「実質とは『数量ベース』の指標」であるということ。

分かりやすく言えば、「名目GDP」とは、「総額で何円の消費が起きたのか」という数字で、「実質GDP」とは「総数で何個消費されたのか」ということです。

データとして記載しますと、

2016年度第1四半期の名目GDP 125兆円(前年同月比 1.4%)
2016年度第1四半期の実質GDP 129兆円(前年同月比 0.6%)

であったのに対して、

2016年度第2四半期の名目GDP 123兆円(前年同月比 0.8%)
2016年度第2四半期の実質GDP 132兆円(前年同月比 0.9%)

となっています。
二次速報を間に挟んでいないので、第140回の記事 で掲載した内容とは若干内容が変わっています。

勿論数字は「名目、および実質」の「原系列」。
原系列以外に「季節調整系列」というものがあります。季節特有の現象を計算式を用いて除外するわけですが、人為的に操作された数字で、実はそれが正確であるという明確な根拠に乏しいため、私は全く信用していません。

季節調整が行われる理由は、「前年同月」ではなく「前期」と比較し、「年率換算」をして「同じ成長率が1年間継続したらどうなるか」というフィクションに基づいた結果を計算するためです。(詳しくは 第140回の記事 をご参照ください)

第一四半期から第二四半期にかけての経済成長率がまる1年間継続するわけがありませんから、はっきり言って「年率換算」の数字を用いて経済を考えるなど、『論外』ですね。

暴走しました。理想としては、名目2%、実質1%、物価上昇率1%の上昇としたいのですが、ともに前年同月を上回っており、まずまずというところではないでしょうか。


ちなみに、第140回の記事 でも掲載しています通り、名目GDP成長率、実質GDP成長率、物価上昇率の関係は

 名目GDP成長率=実質GDP+物価上昇率

となっています。
今回は名目成長率が0.8、実質成長率が0.9ですから、物価上昇率は-0.1。つまり、物価は下落していることになります。

これは「消費者物価指数」に関連した記事 でも散々お伝えしていますので、みなさんご存知の通りですね。

理由はこちら。

 2016年度第2四半期の輸入額 19.242兆円(前年同月比 -18.6%)

数値は勿論、名目の原系列です。
日本の輸入の大部分を占めているのはもちろん「原油」。

「輸入額」というのは、日本にしてみればそのまんま「原価=仕入れ価格」になりますから、輸入額は本来少なければ少ないほど良いのだ、と考えることができます。(ただし、『経済活動が滞っている』ことが理由である場合もあるので、他の経済指標との比較はとても大切なことですが)

分かりやすく表現するとすれば、「輸入額+付加価値」=「物価」ですから、利益の増加幅以上に輸入額が下落すれば、当然物価は下落します。GDPは「物価」の集合体ですから、付加価値以上に輸入額が下落すれば、GDPの伸び率も抑えられてしまうわけです。


しかし、「原油価格」っていうのは、元々「名目は減少しているのに原油価格が上昇するせいで『消費者物価指数』が上昇している様に見えることを批判し、「数字から輸入額が除外されている『GDPデフレーター』」で物価を見ることが正しい、と言っていたのに、今では事態が逆転してしまっています。

GDPデフレータでは「原油価格下落による名目値の動向」と「原油価格を含まない名目値の動向」が混在してわからなくなってしまっているため、「GDPデフレーター」よりも「消費者物価指数」で「費目・品目別」に見る習慣をつけることの方が大切になっています。


「家計最終消費支出」について

「家計最終消費支出」とは、国全体の消費支出の内、「政府」でも「企業」でもない「家計」が消費に回すことができた金額の合計値です。

この金額が大きければ当然「家計ベースでの消費が増えた」こととなるわけですが、

 2016年度第二四半期の「家計消費支出」は「前年同月比-0.9%」。

まあ、みなさんご想像の通りですね。私はこの数字は当然「原油価格の下落」が大きく影響していると考えています。
第140回の記事 と見解は一緒なのですが、やはり大きな特徴として、「民間住宅」への支出が伸びていることがその理由です。

これは日本経済新聞記事にも記していますね?
内需は実質GDPを0.09%分押し上げた。住宅ローン金利の低下が購買意欲を刺激し、住宅投資は2.3%増えた。個人消費は0.06%の伸びにとどまった。新型スマホの販売が好調だったが、台風など天候不順の影響でアルコールを含む飲料やガソリンの消費が落ち込んだ。

掲載内容は「実質値」に関する掲載です。ツッコミどころ満載なんですが、「住宅投資」に関する記載はその通りだと思います。

「住宅」って日本人が一生で起こす消費の内、最も大きな買い物です。
ちなみに「民間住宅」は名目の前年同月比で5.9%も上昇しています。

第一四半期が4.4%でしたから、これに輪をかけての上昇となりました。
GDP指標の内「民間住宅」という分野は、「住宅」という限定的な分野に絞られていますし、この分野が「原油価格下落」の影響を受けることはありません。ですから、他の分野と比較しても、より正確に「消費」が反映されていると考えられるのです。

一生で一番大きな買い物である「住宅」にこれだけの消費を行えるようになっているのに、それ以外の「最終消費」はマイナスであることに対して非常に疑問を感じるわけです。

過去の記事で述べています通り、「賃金」も上昇していますしね。


ただ、気にかかる分野として、「企業設備投資」が前年同月比-1.3%と減少しているのは少し気にかかるところです。第一四半期が-0.1%ですから、企業に少し元気がなくなっているのかな、と感じさせる数字です。

12月8日には、「二次速報」が上がってきます。
ここでは、ついに新しい「産業関連表」に基づいて製作された新しいGDPが登場します。

2008SNAの件もあるのですが、こちらは私たちがよく見る「支出側から見るGDP」に繁栄される要素は少ないかなと考えているので、一番大きいのは「産業関連表」の問題だと思います。

今回の一次速報も、第一四半期の情報も、過去までさかのぼって修正されるはずですので、どのような修正内容となるのか、今から楽しみです。


次回記事では、改めて「GDPデフレーター」について記事を記してみたいと思います。




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<継承する記事>
第215回 TPP問題とRCEP・FTAAP/「自由と繁栄の弧」の真価①

前回の記事に引き続き、今回の記事では、「RCEP」・「FTAAP」についての記事を掲載します。


「RCEP」とは

RCEPの正式名称は「東アジア地域包括的経済連携」といいます。

しかし・・・ややこしい。
色々調べているのですが、まだ「真相」がよく見えてきません。

全体像としては、1997年に起こった「アジア通貨危機」をきっかけに、東アジア内での連携が必要とされるようになり、ASEANの議会に日中韓が招待される形で「ASEAN+3」がスタート。

2002年11月に開催されたASEAN+3首脳会合で、同地域の経済大臣会合に対し、「東アジアFTA」の検討を指示されます。
東アジアFTAは「EAFTA」と呼称されます。

2004年11月に開催されたASEAN+3首脳会合では、中国提案によりEAFTAの共同専門家グループが設置されます。

この経緯を、ネット上の記載によっては「中国が2005年4月から提唱してきた」とするものもあれば、「韓国が提案し、中韓が推す」との記載もあります。どちらが真実なのかがよくわかりません。要調査、ですね。

実は「東アジアFTA」のこの考え方、「中国を中心とした経済圏=東アジア共同体」を作り上げることが目的とされている様で、日本とするとあまり好ましい情報ではありませんね。

中韓が推しているという時点で既に・・・。ちなみに日本で東アジア共同体にめっちゃ乗り気だったのは民主党内閣において総理大臣を務めた鳩山由紀夫なのですが・・・まあこの情報は蛇足ですね。

この考え方には日本だけでなくASEAN諸国も懸念を表明していました。

そこで、2006年8月に日本から提案されたのが「東アジアEPA」。これまで中国が主導してきた「東アジアFTA」に「インド」「オーストラリア」「ニュージーランド」を加えた「ASEAN+6」を経済圏とした「東アジア経済連携協定(CEPEA)」を形成することが当時の日本の経済産業省によって提唱されたのです。

分かりやすいですね。
中韓が形成しようとしていたのは「自由貿易圏(FTA)」であり、つまりこのエリアから関税を撤廃・又は削減することで域内の物品やサービス、投資の自由化を行おうとしていたわけです。

ところが、これに対して日本は単に関税の撤廃・削減を行うだけでなく、経済協力や投資、知的財産権に関しても「ルール作りを行いましょう」と提案したわけです。

しかも、ここに「オーストラリア」「ニュージーランド」「インド」という新たなフィクサーを加え、中国のわがままを通りにくくしたという・・・。これを提唱したのが中国シンパとの呼び声が高い二階俊博当時経済産業大臣ということですから、これは非常に意外ですね。

2011年8月には日中共同で「EAFTAおよびCEPEA構築を加速させるためのイニシアチブ」という提案が行われ、東アジアFTAが東アジアEPAに吸収される形で設立に向けての交渉がスタートしたのが「RCEP(東アジア地域包括的経済連携)」です。

TPPにおけるガンはアメリカでしたが、RCEPにおけるガンは中国です。「自由貿易圏」を形成しようとする米中に対し、これを「経済連携協定」へと進化させるのが日本の役割であることがよくわかります。

RCEPへ向けての交渉でもまた「自由と繁栄の弧」構想が功を奏していることが分かりますね?


「FTAAP(エフタープ)」とは?

先ほどお伝えしたアジアにおける経済協定とはまた別に、これらの地域を含めた「アジア太平洋地域」における経済協定、「APEC(エイペック)」というものが存在します。

APEC.png


APECの歴史はCEPEAやEAFTAの歴史よりも古く、その設立は1989年。
日本に後押しされる形でオーストラリアのホーク首相の提唱でスタートしました。

発足時の参加国は

「オーストラリア」、「ブルネイ」、「カナダ」、「インドネシア」、「日本」、「アメリカ」、「マレーシア」、「ニュージーランド」、「フィリピン」、「シンガポール」、「タイ」、「韓国」

の合計12カ国。現在ではここに台湾、中国、香港、メキシコ、パプアニューギニア、チリ、ペルー、ロシア、ベトナムの合計9カ国と地域が加わり、現在では21の国と地域で構成されています。

FTAAP(エフタープ)とは、このAPEC地域における自由貿易圏形成を目指したものです。
「FTA」「AP」ですから、想像は簡単につきますよね。

アジア、パシフィック、自由貿易圏です。

TPPともよく似ていますが、TPPとFTAAPの違いは、「中国(および台湾・香港)」と「ロシア」が含まれているかいないかの違いです。一方でRCEPには「ロシア」と「アメリカ」が含まれていません。

TPPにもRCEPにも共に含まれている国は、実は日本とACEAN、オセアニア諸国だけなんですね。

こうやって考えると、「TPP」の持つ意味も少し見えてくるのではないでしょうか。
安倍内閣がなぜTPP参加を急ぐのか。「TPP」にしても、「RCEP」にしても、ゆくゆくは「FTAAP」に向けたルール作り。その基盤づくりであることは明白なんです。

勿論「米中露」という利害関係が対立する3つの経済圏が同時に含まれる「FTAAP」が本当に成立するのかというと、これは非常に怪しい話です。ですが、今後の世界関係において日本がイニシアチブを発揮していくためには、日本が中心となって国際社会のルール作りを行っていくべきなんです。


さて。米国では「政治の素人」ともいえるトランプが総理大臣になりましたね?
前総理大臣であるバラク=オバマが総理大臣になったのはいつだったか、覚えていますか?

彼が総理大臣になったのは2009年1月。リーマンショックの影響がピンポイントで世界を急襲しているその真っ只中にありました。
リーマンショックからの脱却に向けてどう舵を取ればよいかわからなったオバマは、とある人物に電話をかけて教えを請います。

その人物こそ麻生太郎さん。当時の日本の内閣総理大臣でした。

トランプが米国経済に対してどのようにかじ取りを行っていくのか。現在ではまだ明確ではありません。
ですが、意外とオバマさんがそうであったように、トランプもまた日本の総理大臣に教えを請い、安倍さんと連携しながら経済政策を推し進めていくのではないか・・・と私は考えていたりします。

ともあれ、今後の動向を静かに見守っていきたいですね。


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