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一昨日(2017年3月8日)、2016年度(平成28年度)第3四半期速報が発表されましたので、今回はこの情報についての記事を掲載します。

一次速報の記事 でもご案内しましたように、2016年度第三四半期のGDP情報最大の特色は、「家計最終消費支出」がついに前年同月比でプラス成長を果たしたという事。

では、まずはこの「家計最終消費支出」について1次速報と2次速報を比較する形で情報を掲載いたします。

【名目家計最終消費支出】
1次速報原系列
 今年度 75,079
 昨年度 74,591
 成長率 0.65%

2次速報原系列
 今年度 75.124兆円
 昨年度 74.591兆円
 成長率 0.71%

持ち家の帰属家賃を除く1次速報原系列
 今年度 62.602兆円
 昨年度 62.113兆円
 成長率 0.78%

持ち家の帰属家賃を除く2次速報原系列
 今年度 62.647兆円
 昨年度 62.113兆円
 成長率 0.85%

【実質家計最終消費支出】
原系列
 今年度 73.823兆円
 昨年度 73.189兆円
 成長率 0.87%

2次速報原系列
 今年度 73.871兆円
 昨年度 73.189兆円
 成長率 0.92%

持ち家の帰属家賃を除く1次速報原系列
 今年度 60.597兆円
 昨年度 60.118兆円
 成長率 0.79%

持ち家の帰属家賃を除く2次速報原系列
 今年度 60.644兆円
 昨年度 60.118兆円
 成長率 0.87%

今回発表された二次速報と一次速報の比較です。
一次速報の時は、マスコミ報道との比較を行う為に敢えて季節調整系列や年率換算をデータとして掲載しましたが、本来あえて示す必要のあるデータではないので、今回の記事では割愛します。

その代り、季節調整系列や年率換算に比べるとよっぽど重要なデータであると考えられる、「持家に帰属する家賃を除く家計最終消費支出」を掲載しています。

なぜ季節調整系列や年率換算が重要ではないのかということは、私のGDPに関連した過去の記事 を、なぜ持家に帰属する家賃を除く消費支出の方が大切なのか、という情報については私の消費者物価指数に関連した過去の記事 をご覧ください。

さて。肝心のそれぞれの数字ですが、軒並み上方修正されていますね。
物価上昇率として考えますと、原系列は

0.71%-0.92%=-0.21%
で、0.21%の物価下落、持家に帰属する家賃を除く原系列では

0.85%-0.87%=-0.02%
で0.02%の物価下落となっています。

ただ、「持家に帰属する家賃」そのものが、実際には消費が行われていない架空の数字であり、これがマイナス成長していることから、より実態に近い成長率は当然「持家に帰属する家賃」を除く物価上昇率で、名実共に0.8%代後半の成長率を示す中での物価下落。

なぜ物価が下落しているのかという理由に就いては、皆さんもうご存知の通りですね。
「原油価格の下落に伴う物価下落」が原因であり、これは「輸入額の推移」を見ても明らかです。

第二四半期の二桁を超えるマイナス幅に比較すれば大分落ち着きましたが、それでも8.8%輸入額は前年度より下落しています。

ただ、おそらく12月の時点では輸入額はプラスに転じており、最終消費支出を下落させるためのファクターではなく、上昇させるためのファクターとして働いているはずです。

つまり、来期、第四四半期からは「実質消費支出」を下落させるためのファクターとして作用するはず。
私の過去の記事をご覧いただいている方はもう解ってはいらっしゃるでしょうが、私はこの「実質値」なるものをまともには信用していません。

ですが、それでも「原価」が増大し、「利益」を抑えるようなことが起きていないかどうかを見るためには、この「実質値」は大切な値になります。

名目値が増大する中で、同時に実質値も増大させることができるかどうか。これは第四四半期の家計最終消費支出(持家に帰属する家賃を除く)をみる上で、非常に大切な視点になります。


名目GDPと実質GDP

内閣府

さて。それでは改めて「名目GDP」と「実質GDP」。
一次速報と二次速報を比較してみましょう。

【名目GDP】
1次速報原系列
 今年度 140.425兆円
 昨年度 138.256兆円
 成長率 1.57%


2次速報原系列
 今年度 140.424兆円
 昨年度 138.241兆円
 成長率 1.58%

【実質GDP】
1次速報原系列
 今年度 134.394兆円
 昨年度 132.211兆円
 成長率 1.65%

2次速報原系列
 今年度 134,364
 昨年度 132,195
 成長率 1.64%

ふむ・・・。
名目原系列を見ますと、一次速報と二次速報の間で、二次速報の方が減少しているのですが、なぜか前年同月比は二次速報の方が大きくなる、という珍現象が起きてますね。

よく見てみますと、2016年全体でもそうなのですが、なぜか2015年の原系列までもが下方修正されています。
詳細に見てみますと、修正が行われているのはピンポイントで企業設備投資。

数値としては2016年度第三四半期の企業設備投資のみが上方修正され、2014年度第四四半期~2016年度第二四半期までトータルで下方修正されていますね。

で、その結果2016年度第三四半期の企業設備投資は一次速報の前年度比0.9%から二次速報では2.6%増と大幅な修正が行わています。

けれども、なぜか名目GDP原系列全体では一次速報より二次速報の方が減退。
詳細を見てみますと、民間・家計・持家に帰属する家賃を除く家計、民間住宅、そして先ほどお伝えした企業設備投資まで含めて、軒並み実数として増加しています。

代わりに下落しているのは「民間在庫」「政府消費支出」「公的資本形成」の3つ。
一次速報と二次速報との間での比較ですので、実際に何か物量の変化が起きているわけではありませんが、思ったより企業在庫が減っていて、政府消費支出と政府の設備投資費が減少していたという事。

つまり、「政府の力に頼らずとも、民間の力だけで経済成長を果たす」という理想の形に近づいている、ということですね。
ただ、なぜ2015年にまでさかのぼって企業の設備投資費が減少しているのかは・・・謎です。内閣府に直接聞いてみますかね。

それにしても、改めて2015年を暦年で見てみますと、経済成長という意味では非常に理想的な成長率を果たしていたんですね。
1-3は消費増税が行われた増税年度ですから、横においておくとしても、4-6が3.3%増、7-9が3.9%増、10-12が2.6%増

2016年になって1%を上回る程度の増加幅に落ち着きますが、よもや年間を通じて3%付近の成長率を果たしていたとは・・・。
実質で見ると消費増税の影響を受けていたはずの1-3が1.3%の実質成長率。4-6が0%、7-9が0.2%、10-12が-0.2%となっています。

そして2016年第三四半期は実質が名目を上回る「物価下落」の状況がみられる中で、名目そのものは1.5%を上回る成長率を果たしています。

「原油価格の下落やエネルギー価格の下落」に伴う物価下落は、決して日本国経済に対して悪い影響は与えておらず、むしろ好材料として作用していることを示す何よりもの証拠ですね。

ただ。原油価格がついに前年度をオーバーする数字となった以上、これからは「名目」がプラス成長を果たす中で、いかに実質値も合わせてプラス成長を果たしていくことができるのか。これが最大のポイントになります。

これを果たすことが、安倍内閣黒田日銀の目指す「2%物価成長率」を達成する上での必要最低条件です。
これからはもう「原油価格が前年度比で下落しているんだから」という理由は成り立たなくなります。

さて。「アベノミクス」の効果やいかに!


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<継承する記事>
第276回 2016年(平成28年)12月名目賃金と実質賃金(速報)

21日に 速報値の記事 を掲載したばかりだったのですが、どうもその翌日に確報値が掲載されていたらしく、そしてまたその速報値とのギャップがなかなか鮮やかなので、今回は珍しく「速報値」と「確報値」を合わせて掲載します。


「速報値」と「確報値」の比較

【2016年(平成28年)12月現金給与総額速報値】
調査産業計(12月)

【2016年(平成28年)12月調査産業計確報値】
調査産業計-2

さて、いかがでしょう。

速報値では、名目が0.1%成長、実質が-0.4%成長であったわけですが、これが確報値では名目0.5%成長、実質0.1%成長と、実に理想的な形に変わっているではありませんか。

6月や7月の情況は、原油価格の下落に伴って国内の消費者物価が下落する中で起きた現象です。
「原油価格」が高騰して日本国内で利益を上げられる企業はまずありませんから、これが「下落」するだけで、その下落した分が他の「消費」または「貯蓄」へと回されることになります。

日本国内にとってみればこれは非常に理想的な状況なのですが、原油価格だっていつまでも下落し続けるわけではありません。
大切なのは、「輸入物価の下落」に頼らずともきちんと利益を上げていける経済構造。

そのためにはやはり「物価」が上昇する中で「実質」も上昇する構造が一番望ましいわけです。

例えば天候不順に伴う生鮮食品の価格高騰や、海外の投機的な動きに伴った輸入価格の上昇などが原因で物価が上昇する場合は、これは日本の企業の利益を圧迫しますから、仮に名目と物価が共に上昇したとしても、実質にはマイナス要因として作用します。

だからこそ、「生鮮食品」や「輸入価格(エネルギー価格)」の動向に頼らず、日本国内の「内需」に起因する経済動向で物価を上昇させ、同時に「実質値=消費量」をも上昇させるような経済構造が必要になります。

勿論今回の話題は「消費」ではなく「賃金」に於ける名目値と実質値の問題ですから、「消費」とは必ずしも同列には語れませんけどね。


「速報値」と「確報値」が乖離した理由

さて。では、今回の名目賃金と実質賃金が、「速報値」と「確報値」の値がここまで開いた理由とは一体なんだったのでしょう。

【2016年(平成28年)12月決まって支給する給与速報値】
決まって支給する給与(12月)


【2016年(平成28年)12月決まって支給する給与確報値】
決まって支給する給与(12月)-2


第276回の記事 でも記しましたが、「決まって支給する給与」とは、「基本給+時間外手当」のことです。
グラフで見る限り、この項目は速報値と確報値との間で大きな変化はありませんね。

【2016年(平成28年)12月所定内給与速報値】
所定内給与(12月)


【2016年(平成28年)12月所定内給与確報値】
所定内給与(12月)-2

こちらは、いかがでしょう。「所定内給与」、つまり「基本給」の事です。
こちらは残念ながら、「名目賃金指数」が前年度比0.5%から0.4%上昇にダウン。合わせて「実質賃金指数」も「0.0%上昇」から「0.1%の下落」へと転じています。

ただ、確かに実質値は下落に転じていますが、特に「賃金指数」で考える場合、まずは「名目」です。
「物価」や「消費」で考える場合は、確かに「何が原因で上昇したのか」または「下落したのか」ということを考える必要があるのですが、賃金の場合は違います。

賃金は企業が生まれた利潤を労働者に還元するものですから、「輸入物価が上昇した」としても賃金は増えません(物価や消費『額』は上昇します)。むしろ下落します。

名目賃金が上昇するということは、「起業の利潤が増えている」ということを表しているからです。


少し話が脱線しましたが、「決まって支給する給与」に変化がなく、「所定内給与」の上昇幅が縮小したということは、「現金給与総額」の賃金指数が名実共に改善している理由はこの二つの要因ではないとういことです。

寧ろ、、「決まって支給する給与」に変化がなく、「所定内給与」の上昇幅が縮小したのであれば、この二つの項目は「現金給与総額」の賃金指数を悪化させる要因として働いていることになります。

では、一体なぜ「調査産業計の賃金指数」は名実共に改善したのでしょうか。

第276回の記事 をお読みいただいたかたはもう気づいているかもしれませんね?

「現金給与総額の賃金指数」が名実共に改善した最大の理由は、「特別に支払われた給与」。つまり「ボーナス」です。

速報値の段階では、2016年12月に支払われたボーナスは従業員一人当たり平均で28万4327円。
前年、2015年12月のボーナスが28万4537円ですから、割合にして約0.1%のマイナス。名目値で前年度割れと試算されていました。

所が、確定値では2016年12月に支払われたボーナスは従業員一人当たり平均で28万6866円。
0.8%のプラス成長です。持家に帰属する家賃の消費者物価指数が0.5%ですから、実質値では0.3%のプラス成長になります。

そう。このボーナスの大幅改善こそが「速報値」と「確報値」を乖離させた最大の理由だったのです。

前回の記事で、仮にほぼすべての被雇用者の賃金が増えていたとしても、

 「平均賃金を下回る給与所得者の数」×「平均賃金を下回る給与所得者の平均賃金上昇額」

が、

 「平均賃金を上回る給与所得者の数」×「平均賃金を上回る給与所得者の平均賃金上昇額」

を上回っていた場合、平均賃金は下落する、という話をお伝えしました。
特に安倍内閣スタート時の様に、大量の無職者が有職者となるようなケースであれば、元々賃金が「0(ゼロ)」であった無職者が、一斉に賃金を手にするようになるわけですから、当然

 「平均賃金を下回る給与所得者の数」×「平均賃金を下回る給与所得者の平均賃金上昇額」

の値は急速に上昇します。ですから、無職者が減り、給与所得者全体の賃金が上昇したとしても、「名目賃金が下落する」という様な矛盾が公然に発生していました。

で、この現象は「基本給」にのみ起きる現象ではなく、当然「ボーナス」に関しても発生します。
つまり、

 「平均ボーナスを下回る給与所得者の数」×「平均ボーナスを下回る給与所得者の平均ボーナス上昇額」



 「平均ボーナスを上回る給与所得者の数」×「平均ボーナスを上回る給与所得者の平均ボーナス上昇額」

を上回っていれば、当然「平均ボーナス」の金額は減少します。
例え給与所得者全員のボーナスの額が増額していたとしても、です。

速報値の段階では、ボーナスの名目賃金指数が0.1%のマイナスでしたから、私は

 「平均ボーナスを下回る給与所得者の数」×「平均ボーナスを下回る給与所得者の平均ボーナス上昇額」



 「平均ボーナスを上回る給与所得者の数」×「平均ボーナスを上回る給与所得者の平均ボーナス上昇額」

を上回っている

から発生した現象である、と指摘したのですが、なんと確定値ベースではこの「名目前年同月比」が0.8%ものプラス上昇。
速報値を0.9%も上回る結果です。

私が、中間層の見方 によってお示しした様に、安倍内閣に入って以来、毎年継続して「低所得者」の数が下落し、「中間層」の水準がどんどん上昇している傾向はとても顕著となってきています。

ボーナスの傾向も逆転し、

 「平均ボーナスを上回る給与所得者の数」×「平均ボーナスを上回る給与所得者の平均ボーナス上昇額」



 「平均ボーナスを下回る給与所得者の数」×「平均ボーナスを下回る給与所得者の平均ボーナス上昇額」

を上回っている

という情況に変化したということですね。

これは今回の賃金指数の見方としては非常に特徴的な部分だと思います。
2016年(平成28年)12月賃金指数の総評としては、

「アベノミクスの効果が、ついにボーナスの分野でもはっきりと見えるようになった」

というのが今回の私の総評でございます。


この記事のカテゴリー >>実質賃金と名目賃金


遅ればせながら・・・となるのでしょうか。
今月6日に2016年(平成28年)12月分「毎月勤労統計」が公表されておりまして、ここで12月度賃金指数が発表されておりますので、このことを本日の記事にしたいと思います。

前回の記事 で私の記事の検索結果掲載順位が下落し、ほぼすべてのページに関してアクセス数が下落した事をお伝えしました。

検索順位そのものは全体的に少しずつ回復しつつあるようなのですが、アクセス数は相変わらず・・・
むしろ更に下落しているくらいなのですが、ただ、そんな中でもやっぱりアクセス数が多いのは「名目賃金と実質賃金」に関する記事。

特に第156回の記事 については、ピーク時に比べると落ち込んではいるものの、毎日継続的なアクセスが見られます。

ただ、本日のアクセス状況を見ていると、同じ「名目賃金と実質賃金」に関する記事の中でも、第262回の記事 へのアクセスが目立ちます。

賃金に関する記事として「第262回の記事」の特徴は、現時点において、私の賃金に関する記事の中では「最新」であるという事。

ところが、データとしては11月のデータで、最新のデータとしては既に「2016年12月」のデータが出ていますので、ひょっとしてがっかりして帰らせてしまったのではないかな・・・と思いまして、今回の記事では改めて

 「2016年(平成28年)12月名目賃金と実質賃金(速報)」

について記事にしたいと思います。

2016年(平成28年)12月名目賃金と実質賃金(速報)

【2016年(平成28年)12月賃金指数推移(全体)】
調査産業計(12月)

こちらが「2016年度12月」までの「賃金指数」の推移。1年間の推移です。
さらに前年の推移もご覧になりたい方は先月の記事 をご覧ください。

9月の時点での賃金指数の特徴は、「名実逆転」。
「物価が下落する中で名目賃金」が上昇している(8.9月は0%、横ばいですが)為、名目の上昇率を実質が上回る・・・という歪な状況が続いていたわけですが、10月、11月で逆転状況が解消されましたよ、というのが11月の賃金指数をみる上での特徴でした。

ところが、今月「賃金指数」をグラフで見てみますと、名目が0.1%と辛うじて上昇している中で、「実質賃金」が-0.4%の下落に転じています。

最大の理由は、分母となる消費者物価指数の動向 です。

上記リンク先にて同月、12月の消費者物価指数に関して解説していますので、詳細はそちらをご覧ください。
一番大きな理由としては、「エネルギー価格の下落」がある程度落ち着き、特に「前年同月比」で見た場合、一部項目では上昇に転じているという事。

もちろんエネルギー価格だけではないのですが、この様な「消費者物価指数」の動向の影響を受け、実質賃金は下落に転じました。

この様な事を記すと、

「名目賃金はたった0.1%しか上昇していないし、物価が上昇したせいで『実質的な賃金』は下落したんだ!やっぱりアベノミクスは失敗だったんだ!」

という人が出てきそうですが・・・

実は、12月の「賃金指数」には、他の月にはない特別な数字が登場します。
それが「特別に支払われた給与」、つまり「ボーナス」のことです。


「賃金指数」の内訳

「賃金指数」とはそもそも、「基準年」を設定し、厚生労働省が企業に対して行ったアンケート結果をもとに算出した「現金給与総額」。

つまり、給与所得者が受け取っている賃金が、月額平均でいくらになるのか。これを金額で表したものを、基準年と比較して指数化したものの事を言います。

現在であれば、平成22年が「基準年」ですから、平成22年1年間の月額平均給与所得を平均化した上で、更に「100」に換算し、増えていれば100以上、減っていれば100以下になります。

12月はボーナス月ですので、他の月に比べると「賃金指数」そのものは跳ね上がります。
例えば2016年12月の賃金指数は「172.0」。基準年である平成22年年間を通じた平均月額給与所得より72%も上回っていることになります。

ですが、12月の賃金指数は毎月跳ね上がりますので、同じ数字を前年の171.9と比較すると、前年同月比では「0.1%」しか上昇していない、ということになるわけです。

「現金給与所得」=「決まって支給する給与」+「特別に支払われた給与」

という計算式で表すことができます。
そして、

「きまって支給する給与」=「所定内給与」+「所定外給与」

となります。

「特別に支払われた給与」とは「ボーナス」の事。
「所定内給与」とは「基本給」の事。
「所定外給与」とは「時間外手当」の事です。

そして、「基本給」と「時間外手当」を合わせた金額のことを「きまって支給する給与」と言います。


「きまって支給する給与」と「所定内給与」

【2016年(平成28年)12月賃金指数推移(決まって支給する給与)】
決まって支給する給与(12月)

【2016年(平成28年)12月賃金指数推移(所定内給与)】
所定内給与(12月)

2016年12月の「特別に支払われた給与」は、実は-0.1%と減少しています。
ですが、それ以上に「所定内給与」は上昇しており0.3%上昇。そして「所定内給与」は更に上昇していて「0.5%」の上昇。

「所定内給与」は6月以降、浮き沈みこそあれ、継続的に上昇しています。
しかもその「上昇幅」は12月が最も大きい、というのがこのグラフから読み取れる情報です。

「実質賃金」が下落しているのは、繰り返し述べますが、「消費者物価指数(持家に帰属する家賃を除く)」が9月から10月にかけて下落から上昇に転じたことが最大の理由で、これは経済実態を表している、というよりも計算式上の、テクニカルな問題であると言った方が表現としては的を射ていると思います。

そしてそれも、「所定内給与」、つまり「基本給」に照らしてみると、確かに11月は実質賃金も下落していますが、12月は0まで戻しています。

確かに「ボーナス」も増えるに越したことはありません。
ですが、「名目値」で考える場合もう一つ頭に入れておく必要があるのは、「被雇用者数の推移」です。


「名目賃金指数」が下落する理由」

第38回の記事 でもご説明しましたが、名目賃金で考える場合、

 「給与所得者の数が増加すると平均賃金が下落する」

という「平均のマジック」を考慮に入れる必要があります。
計算式で考えると、

 「平均賃金を下回る給与所得者の数」×「平均賃金を下回る給与所得者の賃金上昇額」
   <「平均賃金を上回る給与所得者の数」×「平均賃金を上回る給与所得者の賃金上昇額」

とならなければ、「名目賃金」が上昇に転じることはありません。

これが「きまって支給する給与」と「所定内給与」についてはほぼクリアされているわけですが、「特別に支払われた給与」=「ボーナス」についてはまだ解消されていない、と考えられるわけです。

「ボーナス」は基本的に「基本給×〇カ月」と計算されるわけですから、基本給が上昇するのであれば普通「ボーナス」は上昇するはずです。

勿論かけられる側の「〇カ月」が減少するケースもありますから一概には言えませんが、基本給が上昇しているわけですから、一方的にボーナスのみが減少している、ということは考えにくいのではないでしょうか。ここは「推測」であって何か明確な根拠があるわけではありませんけどね。

一番考えられるのは、

「ボーナスの支給額が増えた人の数」は増えた

けれども、

「ボーナスの平均支給額を下回る人の数」×「ボーナスの平均支給額を下回る人のボーナス上昇額」

の方が

「ボーナスの平均支給額を上回る人の数」×「ボーナスの平均支給額を上回る人のボーナス上昇額」

よりも多かった、と考えるのが一番すんなり来る考え方だと思います。
そして、それでも「きまって支給する給与」と「ボーナス」を合算した金額は前年を上回っていた。

つまり、「きまって支給する給与」、この中でも「基本給」の上昇幅がボーナスの平均支給額の下落をカバーするほどに大きかった、というのが今回の「賃金指数」の見方です。

この様なデータを見るときは、「情報を砕いて見る癖」と「平均のマジックを考慮に入れる癖」を身に付けることが大切だと思います。


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<継承する記事>
第271回 2016年度(平成28年)GDP第三四半期第一次速報が公表されました

前回の記事では、2017年2月13日に発表された「2016年度(平成28年)GDP第三四半期第一次速報」について、普通であれば全体から俯瞰して記事にするのですが、特徴的であった「個人消費(家計最終消費支出)」に着目して記事を作成してみました。

新聞各社、報道局の非常にねじ曲がった報道姿勢には本当に辟易しますね。

今回は、いつものように「GDP」を全体から見るスタンスで記事にしたいと思います。


2016年度(平成28年)GDP第三四半期第一次速報

繰り返しにはなりますが、「GDP」をはじめとする統計指標を見る際には、「実質」ではなく「名目」で見る癖をつけることがとても大切です。

「GDP」というのは、日本の経済統計指標の内で最大の「マクロデータ」となるわけですが、マクロデータを計測する際には、どうしても細部をを反映しきることができません(というよりまず不可能)ので、そこには「合成の誤謬」と言われる計測ミスが必然的に発生します。

第36回の記事 でも触れているのですが、改めて説明しますと、「合成の誤謬」というのは、

 「ミクロの世界で成り立つ現象が、マクロでは矛盾する現象」

の事を言います。
単位が違う、計測方法が違う、価値そのものが異なる様々な物やサービスを同じ一つの統計方法で集計しようとしているわけですから、当然です。出ない方がおかしい。

そして、同じGDPにも、「名目」と「実質」という二つの指標が存在します。

よく、「実質GDP」の事を、「物価変動による影響を取り除いたGDPの事」という説明をする人がいます(国語辞典ベースでもそういう説明です)が、実際にGDPから「物価変動による影響」を正確に取り除くことなどまず不可能です。

「実質GDP」とは、あくまでも「名目GDP」を「消費者物価指数総合(持家に帰属する家賃を除く)」という統計指標で割ったもの。
それ以上でも以下でもありません。

「名目GDP」も「消費者物価指数」も共に「マクロ指標」ですから、当然双方に「合成の誤謬」が発生しています。
「実質GDP」とは、つまり「合成の誤謬」というイレギュラーが含まれることが、予め解っている統計指標で割り算をしたデータだということになります。

つまり、「実質GDP」というのは、それほどに当てにすることができないデータだということなのです。
また更に、前回の記事でもお伝えした「季節調整系列」というデータは、そんないい加減な数字をもとに、「季節特有の影響」という、これまたフィーリング、感覚で決まるような情報を数値化し、そこからはじき出されたもの。

そして更に「年率換算」とは、そんないい加減な「季節調整系列」の「四半期別前期比」が1年間、合計4回継続したとしたら一体どんな数字になるのかという、既にフィクション。ファンタジーの世界に於ける数字です。

「名目GDP」自体に一種のフィクションのようなデータが含まれているわけですから、そこから算出される数字が非常に信頼性に乏しいデータとなることはまさしく「自明の理」。元々信頼性に欠けるデータであったとしても、それでも「名目」、特に「原系列」で見る癖が大切になるのは、そういう理由からです。

この考え方を念頭に於いて次にご紹介する「GDP」速報をご覧ください。

内閣府

【2016年度(平成28年)GDP第三四半期第一次速報(単位:兆円)】
名目GDP(前年同月比)
2015年
 10-12 138.2(2.6%)
2016年
 1-3   133.2(1.2%)
 4-6   132.5(1.3%)
 7-9   131.1(1.0%)
 10-12 140.4(1.6%)

実質GDP(前年同月比)
2015年
 10-12 132.2(1.1%)
2016年
 1-3   1308(0.1%)
 4-6   126.9(0.9%)
 7-9   129.6(1.1%)
 10-12 134.3(1.7%)

いかがでしょうか。
勿論お示ししている数字は全て「原系列」です。

さて、思い出して見てください。
安倍内閣がスタートしたのは2013年(正確には2012年12月)です。

安倍内閣によって組まれた予算(2012年度補正予算を除く)が執行されたのは2013年4月。
そして、2014年4月には「消費増税」が行われました。

「名目GDP」には、消費増税の影響も反映されますから、消費増税が行われれば当然名目GDPの数字も上昇します。
2013年は安倍内閣がスタートした月ですし、当然前年の民主党内閣と比較すれば、大幅に「名目GDP」の値も上昇しています。

2013年度(安倍内閣初年度)名目GDP前年同月比
第1四半期 1.5%
第2四半期 2.7%
第3四半期 2.6%
第4四半期 3.4%

2014年度(増税年度)名目GDP前年同月比
第1四半期 2.0%
第2四半期 0.9%
第3四半期 2.0%
第4四半期 3.3%

さて。安倍内閣初年度には「駆け込み需要」も発生していますし、当然大幅にGDPの影響が増大しています。
ただでさえ2013年度のGDPは急成長しているのに、2014年は「消費増税」の影響で更に「GDP」の値が上乗せされています。

安倍内閣初年度に急成長した上後、消費増税の影響で大打撃を受けているはずなので、当然2015年度の「名目GDP前年同月比」は反動で大幅に下落している・・・はずですよね?

2015年度(増税翌年度)名目GDP前年同月比
第1四半期 3.3%
第2四半期 2.9%
第3四半期 2.6%
第4四半期 1.2%

さて、いかがでしょう。消費増税の影響?何それ状態です。
第3四半期、第4四半期は「2016年度(平成28年)GDP第三四半期第一次速報(単位:兆円)」の所でも掲載しています。

第4四半期で成長率にブレーキがかかっている様に見えますが、

【輸出額前年同月比の推移】

2015年度
第1四半期 5.7%
第2四半期 5.0%
第3四半期 -4.6%
第4四半期 -7.9%

2016年度
第1四半期 -9.4%
第2四半期 -10.7%
第3四半期 -1.5%

いかがでしょう。実は、「名目GDPの伸び率」を鈍化させていた最大の原因は、「輸出額の減少」。
これは日本国内の影響ではなく、海外の景気の影響によるものですから、その責任を日本経済に向けられても困りますね。

金額でいうと、

2015年度(前年比)
第3四半期 -1.1兆円
第4四半期 -1.9兆円

2016年度
第1四半期 -2.1兆円
第2四半期 -2.5兆円
第3四半期 -0.3兆円

となります。GDP全体で考えれば、2兆円は約0.4%、2.5%は0.5%に相当する金額です。
勿論それでも「GDPの伸び率が『鈍化した』」と言えなくはない数字ですが、「海外の景気の低迷によって輸出産業がダメージを受ける中」ででも1%を超える経済成長率を日本国内需は続けてきた、ということをこの数字は示しています。

この様な中で、「個人消費(家計最終消費支出)が伸びない」ことが指摘され続けていたわけですが、実は「輸出額」以上に「輸入額」は更に大きな減少幅を記録しており、
【輸出額前年同月比の推移】
2015年度
第1四半期 -3.8%
第2四半期 -6.0%
第3四半期 -12.1%
第4四半期 -14.8%

2016年度
第1四半期 -16.5%
第2四半期 -18.2%
第3四半期 -8.8%

金額でいえば、元も減少幅の大きかった2016年度第2四半期で4.3兆円のマイナスを記録しています。

実は、この数字を「個人消費」が吸収していましたので、見かけ上の「個人消費」はあたかも減少し続けているかのように見えていました。

ですが、実際には「原価」が減少していただけであり、企業の利益や私たち従業員の「給与所得」は増え続けていたのだと、こう考えることができます。

詳細は私の記事カテゴリーである「物価の見方」 や「実質賃金と名目賃金」をご参照ください。


それでは改めて・・・
改めて、「2016年度(平成28年)GDP第三四半期第一次速報(単位:兆円)」を再掲します。

【2016年度(平成28年)GDP第三四半期第一次速報(単位:兆円)】
名目GDP(前年同月比)
2015年
 10-12 138.2(2.6%)
2016年
 1-3   133.2(1.2%)
 4-6   132.5(1.3%)
 7-9   131.1(1.0%)
 10-12 140.4(1.6%)

実質GDP(前年同月比)
2015年
 10-12 132.2(1.1%)
2016年
 1-3   130.8(0.1%)
 4-6   126.9(0.9%)
 7-9   129.6(1.1%)
 10-12 134.3(1.7%)

特に昨年度第3四半期以降で見る限り、上昇しているのは「名目」だけでなく、「実質」の値も上昇していることが解ります。

計算式で表すと、「名目成長率=実質成長率+物価上昇率」で表すことができますから、

2015年度
第3四半期成長率
 名目 2.6%
 実質 1.1%
 物価 1.5%

第4四半期成長率
 名目 1.2%
 実質 0.1%
 物価 1.1%

2016年度
第1四半期成長率
 名目 1.3%
 実質 0.9%
 物価 0.4%

第2四半期成長率
 名目 1.0%
 実質 1.1%
 物価 -0.1%

第3四半期成長率
 名目 1.6%
 実質 1.7%
 物価 -0.1%

これが「名目成長率と実質成長率の推移」です。

「GDP」というのは私たちの生活の「豊かさ」を表すための指標です。
2016年度第2、第3四半期は物価が0.1%ずつ下落していますが、私たちの生活の豊かさを示す指標である「GDP」は「名実共」にプラス成長しています。

しかも1.5%を超える上昇率を記録しています。
更に「消費増税」を経て記録した「2015年度第3四半期」の成長率は名目2.6、実質1.1、物価1.5%と非常に理想的な上昇率を記録しており、例えば「前年度は減少しているんだから今年度上昇するのは当たり前だろ」的な屁理屈は全く通用しない状況です。

最早「個人消費が減少しているんだからアベノミクスは失敗したんだ!」という悲観論者たちの屁理屈は全く通用しません。
これが「アベノミクス」の成果です。


次回記事では、改めて「なぜ日本は第二次世界大戦(大東亜戦争)を起こしたのか のシリーズへと記事を戻してみたいと思います。


この記事のカテゴリー >>GDPの見方


今回は真珠湾攻撃の話題は少しお休みして、今朝公表されたばかりの「2016年度(平成28年)GDP第三四半期第一次速報」について記事にしたいと思います。

先ずは、公表されたGDPについてのニュースから。結構歪んでます。

【日本経済新聞 2017年2月13日】
10~12月の実質GDP、年率1.0%増 外需に伸び

内閣府

2017/2/13 8:50

 内閣府が13日発表した2016年10~12月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除く実質で前期比0.2%増、年率換算では1.0%増だった。プラスは4四半期連続。輸出主導で外需が伸びた。個人消費は振るわなかったが補った。

 QUICKが集計した民間予測の中央値は前期比0.3%増で、年率では1.0%増だった。

 生活実感に近い名目GDP成長率は前期比0.3%増、年率では1.2%増だった。名目も4四半期連続でプラスになった。

 実質GDPの内訳は、内需が0.0%分の押し下げ効果、外需の寄与度は0.2%分のプラスだった。項目別にみると、個人消費が0.0%減と、4四半期ぶりにマイナスだった。生鮮野菜の高騰が家計支出を抑制した。

 輸出は2.6%増、輸入は1.3%増だった。アジア向けや北米向けに需要が回復し輸出が拡大した。国内需要が伸び、輸入量が増加した。 設備投資は0.9%増と、2四半期ぶりにプラスだった。輸出増などを受けて生産活動が回復し、設備投資需要が高まった。住宅投資は0.2%増。公共投資は1.8%減。民間在庫の寄与度は0.1%のマイナスだった。

 総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは前年同期と比べてマイナス0.1%だった。輸入品目の動きを除いた国内需要デフレーターは0.3%のマイナスだった。

 同時に発表した16年暦年のGDPは実質で前年比1.0%増、生活実感に近い名目で1.3%増となった。

代表して日本経済新聞記事から引用していますが、今回の報道はどこもこんな感じ。今回のGDP速報にて最も特徴的な部分を、どの報道機関もまったく報道していないのです。

しかも・・・記事内容、ほぼ「嘘」ですからね。
「嘘」というと語弊があるんですが、報道機関で共通して掲載しているのは

 「輸出主導で外需が伸びた。個人消費は振るわなかったが補った」

という内容です。これ、まったくの嘘。出鱈目です。
寧ろ今回の速報の特徴は「個人消費が」伸びた」事。

しかも「横ばい」だとか「微増」だとか、そんなレベルじゃなく、「名実共」に、はっきりと。

「GDP(支出側)」っていうのは、基本的に以下のような項目で構成されています。

国内総生産(支出側)

 民間最終消費支出
  家計最終消費支出
  除く持ち家の帰属家賃

 民間住宅

 民間企業設備

 民間在庫変動

 政府最終消費支出

 公的固定資本形成

 公的在庫変動

 財貨・サービス

 純輸出
  輸出
  輸入

この内、「個人消費」と呼ばれるのは、

  家計最終消費支出
  除く持ち家の帰属家賃

の2つ。
「持家の帰属家賃」っていうのは、本来GDPにすら加えるべきではない指標だと思うのですが、なぜか継続して掲載され続けています。

合わせて言えば、「民間住宅」も「個人消費」として考えることができます。

過去のGDPに関する記事で何度もお伝えしていることですが、改めて復習がてら、「GDP」について解説してみたいと思います。

「GDP」には「名目」と「実質」の2種類があります。

このうち、「名目」とは、全体で「何円」消費されたのかという「金額」を考えるための統計データ。
一方「実質」とは、全体で「何個」消費されたのかという「数量」を考える為の統計データのことです。

ただ、この世の中にある全てのサービスを「個数」で表現することなどとてもできません。不可能です。
「何リットル」という単位、「何グラム」という単位、「何人」という単位等々数多の「単位」が存在しますし、同じ単位でもサービスによってその価値は大幅に変化します。

「実質GDP」というのは、その本来であれば集計することが不可能なはずの「単位」を強引に統合し、唯一示すことの出来る共通の単位、「円」で表現したものです。

ですがそもそも、例えばGDPを「みかん」で考えると、

 「100円のみかんを10個、合計で1000円購入した」場合。

合計値である「1000円」が名目GDP、購入数量である「10個」が実質GDP、更に単価である「100円」が「GDPデフレーター」と呼ばれるものです。

本当にただこれだけの話。こんな単純な指標なんですよ、ほんとは。
「組み合わせ」のパターンが余りにも複雑なんでとても分かりにくく感じるかもしれませんが、単純化する「GDP」とはそういう指標なんです。

四半期別GDPを見る際に問題なのは、政府が集計している指標の中に、「原系列GDP」と「季節調整系列GDP」、そして「年率換算」という3つの指標が含まれていること。名実共にそれぞれの指標がありますから、合計で6つの「GDP」が存在することになります。

今回の速報の中で、特に着目していただきたいのは、当然「個人消費」ですから、今回の記事はこの「個人消費」に着目して記事を作成したいと思います。


家計最終消費支出

2016年度(平成28年)第三四半期家計最終消費支出

名目家計最終消費支出

原系列
 今年度 75,079
 昨年度 74,591
 成長率 0.65%

季節調整系列
 今年度 293,430
 昨年度 291,549
 成長率 0.65%

 前期比 0.3%
 年率換算 1.1%(持家に帰属する家賃を除くと1.4%)

実質家計最終消費支出

原系列
 今年度 73,823
 昨年度 73,189
 成長率 0.87%


季節調整系列
 今年度 289,275
 昨年度 286,764
 成長率 0.88%

 前期比 -0.0%
 年率換算 -0.1%(持家に帰属する家賃を除くと-0.4%)

さて。いかがでしょうか。

どの程度この統計の意味が理解できているのか、という点で見え方は変わってくるとは思うのですが、

 「名目原系列」では昨年と比較して「0.65%」成長しており、
 「季節調整系列」でも同様に「0.65%」成長。
 前期、2016年度第2四半期と比較しても0.3%成長。
 これを「年率換算」すると1.1%成長、
 更にここから「持家に帰属する家賃」を除くと1.4%成長しています。

一方実質でも、

 「原系列」は0.87%成長、
 「季節調整系列」でも0.88%成長

しているのですが、これがなぜか「前期比」となると-0.0%成長、これを「年率換算」すると-0.1%成長、持家に帰属する家賃を除くと-0.4%成長と、軒並み「減少している」ことになってしまうのです。

おかしいですよね、これ?

ちなみに「前年同月比」を昨年12月より合計5四半期の推移を見てみますと、

名目
2015年度第3四半期(10-12) -0.3%
2015年度第4四半期(1-3) -0.5%
2016年度第1四半期(4-6) -0.2%
2016年度第2四半期(7-9) -0.4%
2016年度第3四半期(10-12) 0.7%

実質
2015年度第3四半期(10-12) -0.3%
2015年度第4四半期(1-3) -0.3%
2016年度第1四半期(4-6) 0.3%
2016年度第2四半期(7-9) 0.3%
2016年度第3四半期(10-12) 0.9%

わかりますか?
実質個人消費のマイナス成長は今年度に入って以来解消されていたのですが、名目は昨年度第3四半期より継続して下落しており、今年度第2四半期まで継続していたのですが今期に入ってようやく解消され、プラス成長を果たしたのです。

然も(四捨五入してですが)0.7%成長。
マスコミが大好きな「季節調整系列 前期比 年率換算」ではなんと1.1%。持家に帰属する家賃を除くと1.4%成長となるわけです。

また更に、今期の特徴では「個人消費」に於いても「名目上昇率」を「実質成長率」が上回っているということ。
計算式からすると0.2%物価が下落したことになるわけですが(当然GDPデフレーターもマイナスになります)、名目GDPは上昇し、実質GDPはこれを更に上回る成長率を記録したのです。

先ほどのみかんの例で例えると、

 「100円のみかんを10個、合計で1000円購入」

という状況で、みかんの値段が例えば90円に値下がりするのですが、おかげで販売数量は12個に増え、販売総額は1080円に増えた・・・と、そんなイメージです。

実質賃金と名目賃金のページ でもお伝えした、

 「物価が下落したおかげで、『消費金額』も『消費量』も共に上昇した」

という状況。この状況は「賃金」だけでなく、実際の「個人消費」のケースでも同様の経済現象が起きていたことが、GDPデータにより証明された形です。

ですが、今回ご紹介した日経をはじめ、大手新聞社が掲載した情報は

 輸出主導で外需が伸びた。個人消費は振るわなかったが補った。

消費は増えたんです。外需が伸びたかどうかなど関係ありません。
寧ろ「前年同月」で見れば輸出はマイナスです。

「経済面」を担当する「日本経済新聞」の記者なんですよ、この記事を書いた人物は。どなたかは知りませんが。
どんだけ経済音痴なんだと真剣に罵倒したい気分です。

何が「個人消費は振るわなかった」だ。
もっと真剣に経済統計を見ろよ、と言ってやりたいですね、はっきり言って。

もちろんここには「前年同月比では下落し続けていた原油価格がようやく前年の価格と釣り合った」ことや、「生鮮食品が高騰したこと」なども含まれているわけですが、「実質値を季節調整し、『前期』と比較し、年率換算した数値」はそんな事すら反映できていないわけです。

いい加減人為的な計算式で算出した「実質値」「季節調整系列」「年率換算」などのまったく当てにならない指標に依存した飛ばし記事を書くのはやめてほしいですね。

ちなみに「名目」の「民間住宅」、つまり人間が一生のうちで購入する最も高額な商品であると言われる「住宅」はの2016年度第3四半期の前年同月比は「7.1%」。

第1四半期4.2、第二四半期5.3ですから、どんどん上昇していることが分かります。
「2%物価上昇率」を目指すのは、あくまでも考え方の一つであって、例えこれに追いついていないとしても、「名目」も「実質」も共に大幅なプラス成長を果たしているのなら、最早掲げる必要性すらない目標値です。

難関を超え、大手新聞社の「記者」となった人物なのに、この程度の情報に気づけないなんて、私には信じられません。

この記事のカテゴリー >>実質賃金と名目賃金


第260回の記事 で少し話題にしましたが、今回は「賃金」データについて記事にしたいと思います。

私のブログ・・・一番最初に人気が出たのは第27回の記事 だったのですが、この記事を更に上回る記事として 第104回の記事 に人気が集まる様になりました。

勿論、第27回の記事の記事の閲覧数が減少した、とかそういうわけではなく、第27回の記事 の閲覧数はそのままに、これを更に上回る形で第104回の記事 の閲覧数が増加したのです。

共に「国債」に関連した記事だったのですが、ここ1~2か月の間、この2つの記事を更に上回る記事として、第156回の記事 に閲覧数が集まるようになりました。

まだまだ私のブログの閲覧数も自慢できるほどの数字ではありませんので詳細は掲載しませんが、一日当たりの閲覧数としては、第27回の記事 や第104回の記事 を一桁上回る数字です。

なぜこのような現象が起きたのか、というと、ツイッターをはじめ、何か所かで第156回の記事 を引用して掲載してくださった方がいたから。

関心が高かったのは7月の時点で名目賃金の上昇率が高い伸び率を記録する中で、「実質賃金」がこの数字を更に上回る成長率を示したこと。

「名目値」は金額を、「実質値」は消費量を表す数字ですから、この結果を受けて私が「日本国民の手取りが上昇している上に、手取りを上回るスピードで『消費量』も増えている」と掲載したことに多くの方が関心を持ってくださった様です。

「前年同月比」で見る限り、7月の時点ではまだ「原油価格」が下落する傾向にありましたから、企業の利益が増え、従業員の賃金が増え、名目賃金が上昇する中で更に原油価格の下落に伴って消費者物価が下落したことから発生した珍現象です。

第260回の記事 で「家電商品の物価」を例に「物価が減少したからと言って、この事を以て『アベノミクスは失敗した』というのは誤りだ」と表現しましたが、7月に起きた珍現象は、このことを象徴するような経済現象でした。


今回の記事では、この「名目賃金」と「実質賃金」の見方に付いて、現在確認できる最新のデータである、「2016年度11月賃金指数(確報)」データより過去2年間にわたる「前年同月比」の推移をグラフ化して、これを参考データとしながら記事を作成していきたいと思います。

【賃金指数前年同月比の推移(2014年12月~2016年11月)】
賃金指数前年同月比推移

水色が名目賃金指数、オレンジ色が実質賃金指数前年同月比の推移です。
物価が上昇していると水色のグラフ線が上に、、物価が下落しているとオレンジ色のグラフ線が上になります。

ちなみに計算式としては、

名目賃金指数÷消費者物価指数(持家に帰属する家賃を除く)=実質賃金指数

または
名目指数上昇率-物価上昇率=実質指数上昇率

となります。
2015年3月まで、名目上昇率と実質上昇率の間に大きな開きがあるのは消費増税に伴う物価変動が原因です。

青がオレンジ色を上回る状況は2016年1月の物価上昇率0%を挟み、2016年2月まで継続します。

さて。問題になるのはその翌月、2016年3月の数字です。

私、第156回の記事では、

「名目が高い上昇率を示す中で、名目成長率を実質成長率が上回るという珍現象が発生したのは、おそらく初めてのことではないか」

と表示しましたが、違いましたね。かなり最近、2016年3月の時点で発生していましたね。

あくまでも賃金ベースでの話にはなりますが、名目賃金の前年同月比が1.5%と高い上昇率を示す中で、同時に実質成長率は1.6%と、名目を更に上回る上昇率を示しています。

これはどのような状況が起きているのかと申しますと、

「物価が下落したおかげで、『消費金額』も『消費量』も共に上昇した」

と、そういう事を示しています。
翌4月は名目賃金が0、翌5月は名目賃金が前年比-0.1と下落するわけですが、その翌月、6月にはまた再び、名目成長率が1.4%という高い成長率を示す中で、実質賃金成長率はなんと2.0%という伸び率。

そして翌7月の数字は第156回の記事 で話題にした通り。

8月、9月は名目成長率が0%となりますが、翌10月からは漸く歪な状況が解消され、実質を名目が上回るようになります。

まあ、これは生鮮食品高騰の影響もありますから、一概に称賛できる話ではありませんが、賃金指数の推移から物価を見てみますと、

「物価が下落しているということが必ずしも個人消費が下落していることを示しているわけではない」

ということがよくわかります。

まあ、何しろ「アベノミクス」が行われた結果、起きた経済現象がこれまでのセオリーの斜め上を行くものが多発した・・・ということでしょうか。

前年同月比で考える原油価格が漸く安定し、より正確に「物価」を図ることができるようになったわけですから、自称経済専門家の皆さまもぜひ、メディア上で「個人消費が減退している!」などというデマを用いて世論をかき乱すようなことをせず、客観的、公正な視点から経済評論を行ってもらいたいものです。


この記事のカテゴリー >>GDPの見方


実は9日に作成し、公開直前まで出来上がっていたのですが、公開寸前でなんとブラウザがクラッシュ。
文章がすべて消えてしまいました。非常にショックでしたが、気を取り直して再度記事作成に取り掛かります。

今回の記事は、2016年度四半期別GDP 第2四半期 二次速報についての記事になります。

内閣府

私は一次速報について記事にすることはよくありますが、今回の様に二次速報を記事にすることはおそらく初めてではないでしょうか。今回の二次速報は、実はそれほどに大きな意味のあるものです。

第192回 内閣府、GDP算出方法の改定/2016年第二四半期二次速報より①
第193回 内閣府、GDP算出方法の改定/2016年第二四半期二次速報より②
第194回 「財政投融資債」とは何か?/「一般会計」と「財政投融資会計」の違い
第197回 内閣府、GDP算出方法の改定/2016年第二四半期二次速報より③
第198回 内閣府、GDP算出方法の改定/2016年第二四半期二次速報より④

上記5回のシリーズにてご案内しましたように、今回の第二四半期二次速報より、GDPの算出方法が見直され、その見直し結果に基づいた統計データが公表されています。


今回の一次速報と二次速報の違い


GDP算出方法の改定の詳細は上記リンク先をご覧いただければと思います。
この中でも、今回のGDP公表データー(支出側GDP)に大きな影響を与えているのは以下の2記事です。
(※支出側GDPについての考え方は第164回の記事 をご参照ください)

1.産業関連表の見直し
2.研究開発費を「資産」として計上

第192回の記事 でもご説明したのですが、「産業関連表」とは、「商品」が私たちの手元に届くまでにたどった「流通経路」をその加工される前の段階にまでさかのぼって集計した、その「分配率」を計算するための元データのことです。

詳細はリンク先記事をご覧ください。
今回見直された「産業関連表」は、「2011年」の流通経路を参考に算出されています。2011年。今から5年前の流通経路です。

5年前というだけでも非常に古い様に感じるのですが、1次速報までの段階で用いられていた産業関連表は、なんと2005年。今から11年も前のデータを用いて算出されていました。

また2点目。「研究開発費の資産計上」に関しましては、第193回の記事 にてご説明しています。

この項目は主に「民間企業設備投資」という項目に影響を与えます。これまで「経費」として、「支出側」ではなく一部「生産側」GDPに計上されていたデータが、「研究開発費」として「支出側」に掲載されることになりました。

研究開発費については、計上する場所が変わっただけですので、ちょっとしたトリックのようなイメージがありますが、「産業関連表の見直し」は話が違います。

これまで、誤ったデータに基づいて算出されていたGDPが、より正確なものに近づくことになります。今回の記事では、特にこの「産業関連表の見直し」に関連した内容を記事にしてみます。


【名目GDPと実質GDP】

まずは、最大の基礎データである「GDP(総合)」から見てみます。

【名目GDP(原系列/前年同月比)】

 1次速報 123兆4619億円(0.8%)
 2次速報 130兆9934億円(0.9%)

【実質GDP(原系列/前年同月比)】

 1次速報 132兆8753億円(0.9%)
 2次速報 129兆5584億円(1.1%)
 
実質GDPがガクッと下落している様に感じるのは、基準年の見直しが行われたことによるものです。
産業関連表と同じく2005年から2011年へと変更されています。

前年同月比ベースで考えますと、共に名目GDPより実質GDPの成長率の方が大きくなっており、2016年度第二四半期は2015年度第二四半期よりも物価が下落していることが分かります。これをGDPデフレーターで見ますと、

【GDPデフレーター(指数/前年同月比)】

 1次速報 92.9(-0.1%)
 2次速報 101.1(-0.2%)

2次速報の方がマイナス幅が大きくなっていますので、二次速報の方が「物価下落率」が大きくなっていることになります。
(GDPデフレーターの見方は、第218回の記事 をご参照ください)

「物価」で考えた場合、GDPは全てのマクロ指標を包括したデータになりますから、その最大の原因と考えられるのはやはり「原油価格」の存在です。

そこで、「原油価格」の影響が反映されている「輸入額」についてみてみます。

【輸入額(名目原系列)/前年同月比)】

 1次速報 19兆2429億円(-18.5%)
 2次速報 19兆4399億円(-18.4%)

このあたりは、「算出方法の改定」とはあまり関係のない分野ですが、18%を超えるマイナス(金額にして役3.5兆円)のマイナスは大きいですね。


【「研究開発費」の影響】

次に、「研究開発費」の影響を考えてみます。

分野とすると「民間企業設備」という項目になります。

【名目民間企業設備(原系列)/前年同月比)】

 1次速報 17兆1636億円(-1.3%)
 2次速報 19兆8888億円(-0.5%)

勿論、この中には「産業関連表」の見直しに伴う変化も含まれているわけですが、合計で約2.7兆の違いが生れています。
では一方で、「産業関連表」のみの影響を受けて変動していると考えられる、「家計最終消費支出」についてみてみましょう。


【産業関連表の見直しに伴う変化】

【名目家計最終消費支出(原系列)/前年同月比)】

 1次速報 70兆8315億円(-0.9%)
 2次速報 72兆9116億円(-0.4%)

約2.08兆円の違いです。二次速報に占める割合で考えると、約2.8%の「誤差」です。
民間企業設備の「誤差」が約13.7%。約11%違うわけですが、この違いが「研究開発費の資産計上」による影響を受けたものと考えられます。


【年度ベースでの比較】

さて、ではこれを「年度ベース」で見るとどうでしょうか。

勿論2016年度はまだデータが出ていませんから、2015年度と、安倍内閣がスタートする前の2012年度の数字を比較してみます。

【名目GDP2012年度/2015年度比較(原系列/前年同月比)】

 2012年度
  1次速報 474兆4037億円
  2次速報 494兆6744億円       
  1次速報-2次速報=20兆2707億円 

 2015年度
  1次速報 500兆6213億円
  2次速報 532兆1914億円       
  1次速報-2次速報=31兆5701億円 

いかがでしょう。この様なデータを示すと、「そもそも統計方法が違っているんだから、データが違うのは当たり前だろ!」

という意見が出るかもしれません。ですが、私が見てほしいのは、統計方法の改定により「いくらGDPが増えたのか」などという単純な話ではありません。

一番着目していただきたいのは、1次速報と2次速報の「誤差」です。
2012年度の誤差は20.27兆円であったものが、2015年度には31.57兆円に広がっています。

その差は約11.3兆円にも上ります。

例えば、「研究開発費」がデータとして加えられましたので、これを「研究開発費の伸びしろが影響している」と考える人もいるかもしれません。ですが・・・

【名目民間企業設備年度/2015年度比較(原系列/前年同月比)】

 2012年度
  1次速報 64兆7979億円
  2次速報 71兆8342億円       
  1次速報-2次速報=7兆0363億円 

 2015年度
  1次速報 70兆995億円
  2次速報 81兆2078億円       
  1次速報-2次速報=11兆1083億円 

民間企業設備の「2012年度の誤差」と「2015年度の誤差」の開きは4兆0720億円と確かに大きいのですが、

【名目家計最終消費支出2012年度/2015年度比較(原系列/前年同月比)】

 2012年度
  1次速報 281兆1680億円
  2次速報 283兆9824億円       
  1次速報-2次速報=2兆8144億円 

 2015年度
  1次速報 284兆7216億円
  2次速報 292兆3669億円       
  1次速報-2次速報=7兆4530億円 

民間家計最終消費支出の「2012年度の誤差」と「2015年度の誤差」の開きは4兆6386億円と、こちらも「民間企業設備」に負けず大きな開きとなっています。

2014年に消費増税もおこなれていますから、ここを問題にする人もいそうですが、では「消費増税後」の「2014年」と「2015年」を比較した場合はどうなのでしょうか。

【名目家計最終消費支出2014年度/2015年度比較(原系列/前年同月比)】

 2014年度
  1次速報 286兆1262億円
  2次速報 291兆5161億円      
  1次速報-2次速報=5兆3899億円 

 2015年度
  1次速報 284兆7216億円
  2次速報 292兆3669億円       
  1次速報-2次速報=7兆6453億円 

いかがでしょう。何度も言いますが、今回の二次速報より改定された改定内容は、「支出側GDP」で考えれば、「産業連関表の見直し」と「研究開発費の資産計上」の2点です。

この他、

A.「雇用者報酬の見直し」
B.「財政投融資債の計上方法の見直し」
C.「輸出入項目内訳の見直し」

が行われているわけですが、Aは生産(分配)側GDPの問題ですし、Bは政府の会計方法が見直されるだけで、金額そのものが変わるわけではありません。Cは名前の通り輸出入の問題ですから、今回主に掲載した「家計最終消費支出」や「民間企業設備」には関係がありません。

そして「研究開発費の資産計上」は「民間企業設備」にかかわる分野であり、「家計最終消費支出」がこの影響を受けることはありません。

つまり、「産業関連表」=「流通経路の見直し」が行われただけで、2015年度の「家計最終消費支出(名目)」は、2014年度と比較して、2005年度の古い産業関連表を用いて計算した計算結果では「1兆4046億円のマイナス」であったはずなのに、2011年度ベースの少し新しくなった産業関連表を用いただけで、8530億円のプラス成長に変わってしまったのです。

これは、私がこのブログを通じて、特に消費増税関連の問題で「消費増税が消費を減退させた」という論調に対して、「その評価は現状を正確に評価できていない」という考え方に基づいて、散々記事を記してきたことが証明されたに等しい内容です。

第53回 実質GDPへの疑惑
↑こちらの記事は、タイトルにある通り、「実質GDPの疑惑」について掲載したものです。

このころはまだ不勉強な部分もあったわけですが、記事中に掲載している「加重平均」やその結果算出された「ウェイト」については、実質GDPだけでなく、名目GDPや消費者物価指数を算出する済にも同じように用いられていますので、その後の記事で、私は「名目GDP」についても「消費者物価指数」についても、これが「当てにならない」ことを散々掲載してきました。

2015年度のGDPは、「速報ベース」ではなく、「確報ベース」の値です。
これが、「産業関連表の見直し」によって大幅に覆された結果となったのです。

「合成の誤謬」とはよく言ったものです。

この記事の作成方法として、私は実は今回の二次速報データを予め検証することをせず、私の頭の中にある予測を記事として書き記し、私の予測の中にある数字が出てくるかどうか、非常にワクワクしながら記事を作成しました。

その結果、内閣府統計データに記されていた数字が悉く私の予測通りの数字であったことは、非常にうれしく感じています。

来年中にはおそらくビッグデータを活用した、新たなる統計方法に基づいたGDPデータ が登場するはずです。

日本国内の経済の実態が、どの程度まで正確に反映された統計データが登場するのか、今からとても楽しみです。


この記事のカテゴリー >>GDPの見方


前回の記事 で少し触れましたが、一昨日(2016年11月14日)、2016年度第二四半期(7月~9月)のGDP一次速報が発表されましたので、今回はこの話題について記事にしたいと思います。

ニュース情報では、こんな感じで報道されています。

【日本経済新聞(2016/11/14 12:32)】
GDP実質2.2%増 7~9月年率、輸出・住宅伸びる

 内閣府が14日発表した2016年7~9月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比0.54%増、年率換算で2.2%増となった。プラスは3四半期連続。アジア向けを中心に輸出が伸び、国内でも住宅投資が堅調だった。一方、内需の2本柱である個人消費と設備投資はゼロ近傍で停滞した。

 実質GDPの増加率は、15年1~3月期(年率5.0%)以来の高い伸びとなった。市場の事前予測の中央値(年率0.8%、QUICK調べ)を大きく上回った。生活実感に近い名目GDPの増加率は0.2%、年率換算で0.8%だった。

 石原伸晃経済財政・再生相は同日の談話で「日本経済はこのところ弱さもみられるが、緩やかな回復基調が続いている」との認識を示した。

 前期比0.54%伸びた実質GDPの増減にどれだけ影響したかを示す寄与度をみると、外需が0.45%分押し上げた。輸出は2.0%増えた。「iPhone7」など新型スマートフォン(スマホ)の増産のため、半導体製造装置や電子部品の輸出が伸びた。アジア経済の復調も輸出を押し上げた可能性がある。

 GDP統計で輸出に分類される訪日外国人(インバウンド)消費は9.4%増えた。熊本地震で訪日を見送るケースが相次いだ4~6月期の落ち込みを取り戻した。輸入は0.6%減少した。

 内需は実質GDPを0.09%分押し上げた。住宅ローン金利の低下が購買意欲を刺激し、住宅投資は2.3%増えた。個人消費は0.06%の伸びにとどまった。新型スマホの販売が好調だったが、台風など天候不順の影響でアルコールを含む飲料やガソリンの消費が落ち込んだ。

 設備投資は0.03%の増加にとどまった。米欧の自動車市場が堅調な輸送機械は伸びたが、農業機械やソフトウエアの新規投資は振るわなかった。収益が伸び悩むなか、企業が設備投資を様子見している。公共投資は0.7%減った。16年度当初予算などの前倒し執行が押し上げた4~6月期の反動が出た。

 物価の動きを総合的に示すGDPデフレーターは前年同期比0.1%低下した。13年10~12月期以来11期ぶりに前年を下回った。円高が物価の重荷になっている。収入の動きを示す雇用者報酬は名目ベースで前年同期比2.0%増えた。

 内閣府は12月8日に公表する7~9月期改定値から推計方法を見直す。これまで付加価値を生まない「経費」として扱った研究開発費を付加価値を生む「投資」と見なし、GDPに加算する。内閣府の試算では、新たな基準年となる11年の名目GDPは19.8兆円かさ上げされるという。

財務省

どの記事にも共通して記されていたのは、実質GDPが2.2%増加し、これが3四半期連続でのプラス成長である、ということです。

おさらいになりますが、「GDP」には「名目GDP」と「実質GDP」の二つの種類があります。

「名目」と「実質」の違いについて記載しますと、

「名目とは『金額ベース』の指標」であり、
「実質とは『数量ベース』の指標」であるということ。

分かりやすく言えば、「名目GDP」とは、「総額で何円の消費が起きたのか」という数字で、「実質GDP」とは「総数で何個消費されたのか」ということです。

データとして記載しますと、

2016年度第1四半期の名目GDP 125兆円(前年同月比 1.4%)
2016年度第1四半期の実質GDP 129兆円(前年同月比 0.6%)

であったのに対して、

2016年度第2四半期の名目GDP 123兆円(前年同月比 0.8%)
2016年度第2四半期の実質GDP 132兆円(前年同月比 0.9%)

となっています。
二次速報を間に挟んでいないので、第140回の記事 で掲載した内容とは若干内容が変わっています。

勿論数字は「名目、および実質」の「原系列」。
原系列以外に「季節調整系列」というものがあります。季節特有の現象を計算式を用いて除外するわけですが、人為的に操作された数字で、実はそれが正確であるという明確な根拠に乏しいため、私は全く信用していません。

季節調整が行われる理由は、「前年同月」ではなく「前期」と比較し、「年率換算」をして「同じ成長率が1年間継続したらどうなるか」というフィクションに基づいた結果を計算するためです。(詳しくは 第140回の記事 をご参照ください)

第一四半期から第二四半期にかけての経済成長率がまる1年間継続するわけがありませんから、はっきり言って「年率換算」の数字を用いて経済を考えるなど、『論外』ですね。

暴走しました。理想としては、名目2%、実質1%、物価上昇率1%の上昇としたいのですが、ともに前年同月を上回っており、まずまずというところではないでしょうか。


ちなみに、第140回の記事 でも掲載しています通り、名目GDP成長率、実質GDP成長率、物価上昇率の関係は

 名目GDP成長率=実質GDP+物価上昇率

となっています。
今回は名目成長率が0.8、実質成長率が0.9ですから、物価上昇率は-0.1。つまり、物価は下落していることになります。

これは「消費者物価指数」に関連した記事 でも散々お伝えしていますので、みなさんご存知の通りですね。

理由はこちら。

 2016年度第2四半期の輸入額 19.242兆円(前年同月比 -18.6%)

数値は勿論、名目の原系列です。
日本の輸入の大部分を占めているのはもちろん「原油」。

「輸入額」というのは、日本にしてみればそのまんま「原価=仕入れ価格」になりますから、輸入額は本来少なければ少ないほど良いのだ、と考えることができます。(ただし、『経済活動が滞っている』ことが理由である場合もあるので、他の経済指標との比較はとても大切なことですが)

分かりやすく表現するとすれば、「輸入額+付加価値」=「物価」ですから、利益の増加幅以上に輸入額が下落すれば、当然物価は下落します。GDPは「物価」の集合体ですから、付加価値以上に輸入額が下落すれば、GDPの伸び率も抑えられてしまうわけです。


しかし、「原油価格」っていうのは、元々「名目は減少しているのに原油価格が上昇するせいで『消費者物価指数』が上昇している様に見えることを批判し、「数字から輸入額が除外されている『GDPデフレーター』」で物価を見ることが正しい、と言っていたのに、今では事態が逆転してしまっています。

GDPデフレータでは「原油価格下落による名目値の動向」と「原油価格を含まない名目値の動向」が混在してわからなくなってしまっているため、「GDPデフレーター」よりも「消費者物価指数」で「費目・品目別」に見る習慣をつけることの方が大切になっています。


「家計最終消費支出」について

「家計最終消費支出」とは、国全体の消費支出の内、「政府」でも「企業」でもない「家計」が消費に回すことができた金額の合計値です。

この金額が大きければ当然「家計ベースでの消費が増えた」こととなるわけですが、

 2016年度第二四半期の「家計消費支出」は「前年同月比-0.9%」。

まあ、みなさんご想像の通りですね。私はこの数字は当然「原油価格の下落」が大きく影響していると考えています。
第140回の記事 と見解は一緒なのですが、やはり大きな特徴として、「民間住宅」への支出が伸びていることがその理由です。

これは日本経済新聞記事にも記していますね?
内需は実質GDPを0.09%分押し上げた。住宅ローン金利の低下が購買意欲を刺激し、住宅投資は2.3%増えた。個人消費は0.06%の伸びにとどまった。新型スマホの販売が好調だったが、台風など天候不順の影響でアルコールを含む飲料やガソリンの消費が落ち込んだ。

掲載内容は「実質値」に関する掲載です。ツッコミどころ満載なんですが、「住宅投資」に関する記載はその通りだと思います。

「住宅」って日本人が一生で起こす消費の内、最も大きな買い物です。
ちなみに「民間住宅」は名目の前年同月比で5.9%も上昇しています。

第一四半期が4.4%でしたから、これに輪をかけての上昇となりました。
GDP指標の内「民間住宅」という分野は、「住宅」という限定的な分野に絞られていますし、この分野が「原油価格下落」の影響を受けることはありません。ですから、他の分野と比較しても、より正確に「消費」が反映されていると考えられるのです。

一生で一番大きな買い物である「住宅」にこれだけの消費を行えるようになっているのに、それ以外の「最終消費」はマイナスであることに対して非常に疑問を感じるわけです。

過去の記事で述べています通り、「賃金」も上昇していますしね。


ただ、気にかかる分野として、「企業設備投資」が前年同月比-1.3%と減少しているのは少し気にかかるところです。第一四半期が-0.1%ですから、企業に少し元気がなくなっているのかな、と感じさせる数字です。

12月8日には、「二次速報」が上がってきます。
ここでは、ついに新しい「産業関連表」に基づいて製作された新しいGDPが登場します。

2008SNAの件もあるのですが、こちらは私たちがよく見る「支出側から見るGDP」に繁栄される要素は少ないかなと考えているので、一番大きいのは「産業関連表」の問題だと思います。

今回の一次速報も、第一四半期の情報も、過去までさかのぼって修正されるはずですので、どのような修正内容となるのか、今から楽しみです。


次回記事では、改めて「GDPデフレーター」について記事を記してみたいと思います。




この記事のカテゴリー >>消費増税問題


<継承する記事>
第210回 2016年度9月次税収(消費税収・所得税収等)が発表されました①

「消費納税」の考え方

全開の記事より、「消費税」の部分だけをピックアップして記事にしてみます。
内容としては、2015年度中に私が考え続けていた「誤解」をより詳らかに説明することを目的とします。


【2015年度の「誤解」とは?】

何度もお伝えしています通り、「消費税」は「前年度の納税額」を参考に決められます。
今年は2016年なので、2015年の納税額を参考に決められています。2015年の納税額は、2014年の納税額を参考に決められています。

ですが、私は当初、「今年度」の「月別」データは、「今年度の消費」に対して支払われた税金だとずっと思いこんでいました。

【第一の誤解】

2014年。消費増税が行われた当時。

確かに5%から8%に増税されたため、「税収」だけで比較すれば3%分の誤差が生れるため、フェアな比較はできないかもしれない。だが、税率がかけられる前。税抜きの消費額同士を比較すれば、「消費の変化」を見ることができるはずだ。


【真実】
会計年度、決算月の違いにより、企業の中には2014年度に2013年度分の消費税を納税する企業がいる。
したがって2014年度の税収からは正確な「税抜きの消費金額」を計算することはできない。

【第二の誤解】

2014年の誤解を踏まえた上で。2015年度スタート当時。

2014年度は確かに税率が混在するかもしれないが、増税前の税率は5%、増税後の税率は8%なので、2013年の月別のデータから5%分、増税後、2015年の月別のデータから8%分の税率を引いて計算すれば、税抜きの消費金額を算出し、増税前後を比較することができるはずだ。

【真実】
「消費税率」には「国税」と「地方税」が混在していて、政府が公表しているのは「一般会計税収(国税)」であり、増税前は4%が国税分、増税後は6.8%が国税分なので、そもそも計算する税率が違う。

【第三の誤解】

自らの予測が大外れしてショックを受けた2015年5月までの間。

政府が発表している一般会計は「国税」であり、増税前の2013年度の月別の税抜き消費額を税率4%から逆算し、増税後、2015年度の月別の税抜き消費額を6.8%から逆算し、それぞれを比較すれば消費額の変化を月別に比較できるはずだ。

【真実】
年間の消費税納税総額が分かるまでの間、月別の消費税納税は前会計年度納税額を参考にして決められている。


特に、第三の誤解を知ったときは、正直雷で撃たれたような衝撃を覚えました。

これらの誤解に対するそれぞれの真実を踏まえた上で、増税前後の「消費税収」について考えてみます。


2014年度の消費税収と2015年度の消費税収についての考え方

消費税の「税抜き価格」を計算する場合、一番考え方が難しいのは2014年度です。


【2014年度の「月別」の消費納税額】

2014年の「月別」の消費納税額は、増税が行われる前。2013年度の消費納税額を参考に決められています。

ただ、実際に2014年の月別の納税額を見てみますと、2013年度の実績以上の納税が行われています。
考えられる理由としては分納を行うことができるのは前年度に納税額が大きかった企業だけですから、納税額そのものが大きくなっていること、などでしょうか。

また、年間を通じて実績を上げ続ける自信のある企業などはきちんと月別でも8%勘定の納税を行っていたのかもしれません。
どちらにしても2014年の月別の消費納税額は増税前、2013年のものを参考としていますので、本来の実績よりも低い納税額となっています。


【2014年度の「年間」の消費納税額】

一方、「年間の消費納税額」に関して言えば、2014年度の納税額の一部には2013年度の実績も含まれていますから、トータルでの納税額も年間を通じて完全に8%の税率が適用されている2015年度と比較すると低くなっています。


【2015年度の「月別」の消費納税額】

一方で、2015年度の「消費税収」は2014年度の実績をベースに決定されています。
ですので、2015年度の「月別」の納税額は2015年度実績ベースの納税額よりは低い納税額となっています。


では、改めて今年度(2016年度)9月次の「消費税納税額」を見てみます。

平成28年度 9月末租税及び印紙収入、収入額調 財務省

イメージからしますと、納税までに2か月の猶予がありますから、実際には2か月前。7月の納税額です。昨年度(2015年度)の7月の納税額を参考に行われた7月分の納税額です。勿論8月分や9月分の納税を行っている企業もいます。

6月までは還付分が反映されていて、累計はマイナスになっていますので、正味7月~9月の3か月分のデータです。
累計で前年同月比93.1%、予算比で98.6%となっています。

飽くまでも昨年度の実績が反映されたものであり、14年、15年の実績と違って初めて純粋の税率8%同士が比較されたデータであることもあるのですが、「マイナス」っていうのはあまり気持ちのいいものではありませんね。


【その他の税収について】

税収全体で見ますと、前年同月比は前年比95.2%、予算比が102.3%となっています。

下落幅として大きいのはやはり筆頭が「法人税」の累計53.1%(-2746億円)ですが、金額の面だけからいえば消費税の-3177億円も大きいです。

その他前年同月と比較して、揮発油税の-126億円、関税の-568.6億円などが大きいです。
一般会計税収全体としては8029億円のマイナス。ただ、予算比ではプラスとなっていますから、このまま予算ベースの値を維持することに期待したいですね。



この記事のカテゴリー >>消費増税問題


発表されてから少し時間が経過してしまいましたが、毎月月初に発表されている「税収」の月別の値が財務省より公表されていますので、こちらの内容を記事にしてみたいと思います。

第186回の記事 でもご説明しましたが、私がこの「月別の税収」にこだわり始めたのは、そもそも「消費増税が行われてから後、消費が落ちているのではないか」とする各種の主張に異を唱えることが目的でした。

「消費税」は「消費されたもの」に対してかけられる税金ですから、消費税率がかけられる前の「消費本体」の動向を見れば、本当に消費が減っているのかどうかを判別することが可能になるからです。

ただ、記事を作成していて、よくよく考えると、「今年度の月別の消費税収」は「昨年度の納税額」を参考にして決められているため、実際に今年度月別に収められている消費税の納税額は、昨年の納税額を参考にして決められていることになりますので、月別の「消費税納税額」は参考にはならない・・・ということに、8月の記事を作成していて気づいてしまいました。

ですから、「月別の消費税納税額」は「この年の消費動向の参考とはならない」ことを前提として記事を作成することになります。


【2016年度9月次税収】

平成28年度 9月末租税及び印紙収入、収入額調 財務省

こちらが2016年9月次一般会計税収一覧です。


【所得税収について】

8月分 と比較しての大きな違いとして、「所得税源泉分」の前年同月比ベースでのマイナスです。

8月は100.3%でしたが、9月は82.9%と大きく下落していますね。
ちなみに9月に納められる所得税収は、8月分の所得税収。

ですから、8月の「給与所得」が前年を下回っていたことになります。
但し、これについては第188回の記事 で既にその理由をご説明しています。

厚生労働省2016年8月分毎月勤労統計によりますと、2016年はボーナスの支払いが7月に集中しており、2015年は8月に集中していたため、その差として8月の名目賃金総額が下落しました。7月のボーナス支給が前年同月比でプラス3.7%、8月のボーナスが前年同月比でマイナス7.7%ですから、原因はここだと考えられます。

累計が前年同月比でマイナスになっていますので、私の主張は「希望的観測」なのかもしれませんが、政府の予算ベースでも101.9%と100%を超えていますので、政府も同様な予測を元々行っていたのだと思います。

また一方で同じ所得税でも「申告分」は前年比でプラスとなっています。
これは、企業が7月に行った「予定納税」が理由であり、9月にも前年を上回る予定納税が「遅延」して行われたものと考えられます。

トータルではやはり「所得税源泉分」が足を引っ張る形となり、前年比累計96%となっていますが、予算比では100.9%となっています。


【法人税収の推移】

「法人税」に関しましては、8月次の記事 でもお伝えしました通り、納期は年1回。前年の納税額が20万円を超える企業は中間納税を行うこととなっています。

累計の前年同月比が53.1%となっていますが、これは7月まで行われていました、前年度の法人税納税額の還付の影響が大きくなっています。9月次の納税額は前年同月比で96.7%、累計での政府予算比は113%となっています。


【消費税収について】

既にお伝えしています通り、「消費税納税額」は昨年度の納税額をベースに決められています。
ということは、昨年度の納税額は、「一昨年」の納税額をベースに決められていました。

消費税は、前年度の納税額によって、「毎月」「2か月に1度」「半年に一度」「1年に1度」という4つのパターンでの納税を行うことになっています。

この納税方法について、第114回の記事 で一度詳しく説明はしているのですが、では読んですぐ理解できるかというと、必ずしもそのような内容にはなっていないように感じますので、一度記事を分けて、「消費税」の部分だけピックアップして記事にしたいと思いjます。


この記事のカテゴリー >>日本国債の問題


<継承する記事>第197回 内閣府、GDP算出方法の改定/2016年第二四半期二次速報より③
前回の記事で予告しましたように、今回の記事では「建設国債」と「赤字国債」の違いについて記事にしたいと思います。

最終的に、前回の記事 に関連して、「研究開発費」が「GDP」に組み入れられることと、「財政政策の可能性」について言及する形で締めくくりたいと思います。


「建設国債」と「赤字国債」の違い

これが何か問いかけられて、きちんと答えられる人は意外と少ないかもしれませんね。
第194回の記事 で、「財政投融資債」についてご説明した時、少しこの話題に触れました。

日本の「国債」には3種類あり、それが「建設国債」「赤字国債」「財政投融資債」の3つです。
民主党内閣で「年金特例国債」という名称の国債も発行されましたが、これも「赤字国債」の一種です。

「建設国債」と「赤字国債」の最大の違いは、それぞれの国債を発行した後で、その発行額に対する「対価」が存在するかどうかということになります。

アクアライン

「建設国債」というのは、その名の通り、「建築建造物」に対して発行される国債ですから、国債が発行された後、例えば「構想道路」を作るために建設国債を発行すれば、当然そこには「高速道路」という建築構造物が出来上がります。

考え方でいうと、「もし仮に建設国債が返済不能に陥っても、『高速道路』という対価が残っているから問題ない」という考え方です。もし建設国債が返済不能に陥れば、高速道路を売却して返済すればいいでしょ、という発想です。

勿論日本の国債が破綻することなど、政府機関に巨大隕石が激突して財政運営そのものが破綻するようなことにでもならない限り120%ありえませんから、そんな事態に陥ることはまずありえないのですが、それでもそうなったときには、という話です。


最近まで私のブログで最大の人気を誇っていた 第27回の記事 が取り扱っている「60年償還ルール」。

日本の国債の返済期限が60年に設定されている理由は、建設国債を発行して作った建築建造物の減価償却期間を「60年」と考えていることに由来します。建設国債を使って作った建築構造物が、一年に60分の1ずつその価値を減らしていき、60年経過すると0になる、という考え方です。

「減価償却」っていうのは、例えばトンネルを一つ作っても、その価値がたった1年で償却されるわけではない、という考え方になります。「トンネル」を「消費物」であると考えたとき、一体何年で消費仕切るのか。これが「減価償却期間」です。

国の建築構造物的には、「トンネル」であれば「トンネル」を、1年間に60分の1ずつ、60年間かけて消費する、という考え方をします。

余談ですが、私のブログで現在は第104回の記事 が人気記事トップの座を奪取しております。

内容は「本当の国債発行残高」という内容。上記した「建設国債」や「赤字国債」以外に、「借換債」発行残高の推移についても掲載しています。

そういう意味では「借換債」も「第4の国債」と言えなくはありませんが、元々は「建設国債」や「赤字国債」であったものが姿を変えているだけですので、私としては「建設国債」や「赤字国債」の一種である、と考えています。

一方の「赤字国債」。これは、建設国債の様に「対価」となる資産を生み出さない目的のために発行される「国債」のことです。

道行く人々

実は、「国債」を発行するための裏付けとなる法律は、「財政法第4条第1項但し書き」がその根拠となっています。

【財政法第4条第1項】
第四条  国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。

但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる。

別の機会にも掲載した気はしますが、記されているとおり、「公共事業費・出資金・貸付金」の財源としてのみ国債は発行することが認められているのです。ちなみに「出資金」や「貸付金」に該当するのが「財政投融資債」です。

つまり、法制度上、「公共事業費」以外に「国債」を発行することは認められていないのです。この法律に基づいて発行される国債のことを「建設国債」といいます。財政法第4条に基づいて発行されますから、別名「4条国債」といいます。

ですが、例えば「リーマンショック」であったり、「東日本大震災」のような、政府が元々想定していない緊急事態が発生した時にまでこの法律を守っていたのでは日本国は大変なことになります。

「雇用」や「企業活動」を維持したり、「失業者対策」を施したりするため、「対価を発生させない資金の需要」が急速に高まってしまいます。この様な場合に、「特例として」発行されるのが「特例国債」。別名「赤字国債」です。

赤字国債を発行するため、赤字国債を発行するための「特例公債法」という法律を作成し、国会の承認を得た上で発行されるのが「特例国債(赤字国債)」です。

特例債は「対価」を発生させませんから、仮にこの国債がもし返済不能に陥れば、「貸主」はその分損害を被ることになります。
資産から発行額を差し引いた値がマイナスになりますから、「赤字国債」と呼ばれるのです。


赤字国債の発行額とその目的

ところがこの「赤字国債」。実はリーマンショックや東日本大震災のような「緊急事態」が発生した場合以外でも、ほぼ毎年発行され続けています。

戦後初めて発行されたのが昭和40年で1,972億円。
その後しばらくの間発行されていないのですが、昭和50年~平成2年にかけて毎年発行された後、3年間を開けて平成6年に再開され、それ以後は毎年発行されています。

ちなみに今年度、2016年度の赤字国債発行額は28兆円となっています。建設国債が6兆円となっています。
一体何のために発行されているのか。第27回の記事 をご覧いただければわかると思いますが、その大部分が「過去に発行した国債の利払いと60年償還ルールで定められている元本の返済」に充てられています。額にして23兆6121億円です。


この様に記すと、「借金を借金で返しているのか!!!」と激怒する人が出てきそうですが、これについては再度第27回の記事 をご覧いただければと思います。

数値で記しますと、2016年度に発行されている「借換債」の額が109兆1144円。この金額に、13兆7161億円を加えた総額、122兆8305億円が2016年度に返済しなければならない日本国政府の借金の総額です。ただ、「借換債」の部分は事実上2016年度には返済する必要のない借金ですから、「借換債」を発行して再度借り直します。

13兆7161億円は返済する必要のある金額ですから借換債は発行せず、日本国政府が一般会計の中から支払います。
一方で利息が9兆8961億円発生していますから、これは全額返済します。

一般会計から支出された分に関しては「赤字国債」を発行していますので、これが「国債発行残高」として積み上げられていくことになります。

60年償還ルールがスタートしてからまだ60年経過していませんから、国債発行がスタートした昭和40年より昭和が23年。平成が28年間。合わせて51年分の「国債」が現在も返済し続けられていることになります。

去年は50年分、今年は51年分、来年は52年分と蓄積されていきますが、これが60年経過しますと、国債発行初年度の国債から完済されていきますので、発行しなければならない借換債の額も、赤字国債の額も頭打ちとなります。後は新規発行国債の額がいくらか、というところに集約されることになります。

「グラフもないしわかりにくい!」という方は、どうぞ第27回の記事 、または第104回の記事 をご覧ください。


「研究開発費」が「GDP」に「資産計上」される意義

さてこの記事。ここからが本題です。

研究

というより、ここまで記すと、もうお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんね。

「研究開発費」は、これまで「経費」とみなされてきましたから、例えば政府が民間に政府のシステム開発等を委託したとしても、ここにかかる経費には「国債」を発行することはできませんでした。

もしするとすれば、これは「赤字国債」を発行して行わざるを得ず、国会の承認を得る必要がありますから、野党にあらぬ噂を立てられてしまえばこれでご破算になってしまいます。

勿論「建設国債」であったとしても、これには国会の承認は必要になりますから、赤字国債とどう違うんだ、と言われると明確な違いをお示しすることはできませんが、これまでと異なってくるのは、例えば第190回の記事 でご紹介した「地域経済分析システム『リーサス』」の様な統計システムが、「資産」として計上されるということ。

「対価」が発生するのです。
ということは、ひょっとしてこのような「研究開発費」についても「建設国債」を発行することが可能になるんじゃないの!? ってことです。

今後、「GDP」についても「ビッグデータ」を導入するための研究開発が行われていくわけですし、当然その「研究結果」が「資産」として計上されるはずです。ここに建設国債を発行することが可能になるのならば、当然予算に余裕が出てきますから、国債の返済のために発行しなければならない赤字国債の額を減らすこともできるようになるはずです。

「今減らしても将来は!」云々といいたい方は改めて第27回の記事 、または第104回の記事 をご覧ください。

特に「赤字国債の返済」という項目は、金融機関や民間から「国債」という資産を回収することになりますから、確かに金融機関や民間の「現金資産」は増えるかもしれませんが、プラスマイナスで考えればゼロか、むしろマイナスになります。
勿論現在は「マイナス金利」ですので少し事情が変わるかもしれませんが。

ですが、「研究開発費」という名目で建設国債を発行し、これを研究機関に投資すれば、これは研究機関の「所得」にも還元されますし、研究機関が発注する先であったり、人件費等々の「投資」へと変化し、新たな所得構造を生み出します。

勿論今回の改正では「公共」の研究開発費で、「公共資産」が生れる研究開発に限定されることにはなりますがそれでも財政政策の幅は広がります。これまで土建業者相手にしか発行できなかった「国債」が、知的研究機関にも発行できるようになることは、非常に可能性を感じさせる出来事だと、個人的には思っております。

いざとなれば、その研究成果を政府が民間に無償で提供すれば、その成果によって民間企業にもさらなる利益を生み出します。
(実際に政府はそのような研究とノウハウの提供を行っています)


勿論これは私の勝手な憶測ですから、政府が本当にそういうやり方をしてくるのかどうかはまだわかりません。

私の考え方としては、「分配」はあくまで「労働の対価」として行われるべきだということ。これが支柱にあります。
ですから、「社会保障費」として赤字国債を発行してまで分配するやり方には正直賛成できません。

これをやってしまうと、短期的には良い効果をもたらす可能性はありますが、やがて国民から「労働する意欲」を奪ってしまう可能性を否定できないからです。(第28回の記事 をご参照ください)

日本国民が、自力で経済を成長し続ける力を取り戻すためには、「乗数効果の高い分野」へ「投資」を行うこと。これが一番だと思います。

あくまでも統計データレベルでのお話ですが、この様な見方があるということを考え方の一つに考えていただけると嬉しく思います。


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<継承する記事>第197回 内閣府、GDP算出方法の改定/2016年第二四半期二次速報より③
今回の記事では、「内閣府、GDP算出方法の改定」についてのシリーズ①~③までの記事内容を総括する記事を作成しようと思います。

まとめますと、今回内閣府が行う「GDP算出方法の改定」とは、まず一つ目に、これまで用いてきた「2005年度版産業関連表」から「2011年度版産業関連表」への変更を行うこと。
第192回記事 をご参照ください)

そして、これまで古い国際基準である「1993SNA」に対応して作成してきていたものを、新しい国際基準「2008SNA」に対応した内容に変更すること。
第193回記事 をご参照ください)

この2点です。

どちらにせよ、産業関連表は5年遅れ、SNA(国民経済計算の国際基準)は8年遅れですから、この更新を行うことで本当に国内の経済状況を正確にとらえられるのか、ということに関しては非常に疑問に感じる部分も大きいのですが、特に「産業関連表」に関しては、10年前の産業構造で現在を判断するよりは、さすがに5年前の状況で判断したほうが、まだましだろうとは思います。

データとしては恐らく過去に遡及した物を出してくるでしょうし、計測方法が変更されたため、データとしてかさ上げされることになりますので、本来の「国力」が上昇するわけではない、ということから、この変更内容の重要性については5段階あったとしたら、下から2番目くらいになるでしょうか。

重要度としては、第189回の記事 ~第191回の記事 にかけてご紹介した、「統計指標へのビッグデータの活用」の方がよほど大きいと思います。

この二つの改定に関しては、GDP算出方法の改定が今年度第2四半期(7月~9月)二次速報分から、ビッグデータを活用した指標の導入が早ければ来年度から、ということですから、時期がずれますので、変化の調査は行いやすいと思います。

ただ、GDP算出方法の改定に関連した内容としては、特に「非金融(実物)資産の範囲」という項目に関してはひょっとすると経済実態を計測する上で、大きな影響が出てくる可能性のある部分だとは考えています。
第193回の記事 に掲載してある内容です。

「研究開発費」が「資産」として残る・・・といってもイメージがしにくいかもしませんね。

【日本における研究開発費の研究主体別構成比】
「研究開発費」の内訳
※内閣府PDF

大部分が「企業」にはなっていますが、その他にも「大学」や「公的研究機関」なども含まれていますね?
想像しやすいのが、「ノーベル賞」などがこれに該当するのではないでしょうか。

青色発光ダイオードなどはイメージしやすいかもしれませんよね。
ノベール賞を受賞したのは研究者である中村修二教授だったのに、研究にお金を出したのは日亜化学工業だったという理由で、中村教授には報酬が経った2万円しか渡されず、中村教授激怒・・・という光景を覚えている方もいらっしゃると思います。

つまり、「青色発光ダイオード」という技術の開発にかかった費用(研究開発費)は日亜化学工業だったんだから、中村教授一人が偉いわけじゃない、みたいな理屈です。

この事例を持ち出したのは、この事件そのものについて言及したいわけではなく、「青色発光ダイオード」という技術(知的財産)にかけられた費用は、これまでのGDPではすべて「経費」として扱われ、この知的財団には何の価値も与えられていなかったわけです。

勿論「青色発光ダイオード」という技術開発にかけられた「研究費用」そのものがGDPに組み入れられることも大きいのですが、これは、日本の「財政政策」にとっても一つの新しい「可能性」が生れることを暗示しています。

次回記事に於きましては、ではこの「財政政策の可能性」とは何なのか。
これを「建設国債と赤字国債」というタイトルで掲載してみたいと思います。




タイトルで、なんとなく私の言わんとしていることに気づくことができた方は・・・さすがです。


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<継承する記事>第194回 「財政投融資債」とは何か?/「一般会計」と「財政投融資会計」の違い
記事は第194回の記事の続きです。

テーマは今回のタイトルにある、内閣府GDP算出方法の改定に関連した内容で、第193回の記事 に掲載した『国際基準「2008SNA」』より、

3.一般政府や公的企業の取扱精緻化
 ・一般政府と公的企業との間の例外的支払の取扱の精緻化 等

4.国際収支統計との整合
 ・財貨の輸出入における所有権移転原則の徹底 等

という二つのテーマについてご説明することを目的にしています。

第149回の記事 では、とくに3番の「一般会計や公的企業の取扱精緻化」というテーマについてご説明する上で、先に「財政投融資」という言葉についてご理解いただいておくことが必要だと感じたため、これを記事にしました。

それでは、改めて、まずは

「3.一般政府や公的企業の取扱精緻化」というテーマについて記事を進めていきます。


【一般政府や公的企業の取扱精緻化とは?】

内閣府資料 では、「一般政府や公的企業の取扱精緻化」について、以下のように掲載しています。

「公的企業から政府への特別な支払(財政投融資特別会計から一般会計への繰入れ等)の記録変更により、これまで振れの大きかった財政収支について、より基調の動きを記録」

つまり、「一般政府や公的企業の取扱精緻化」とは、「財政投融資特別会計から一般会計への繰入れ等の記録を変更」しますよ、ということです。

第194回の記事 に於きまして、「財政投融資特別会計」が、『政府の「一般会計」との間で、横断的に資金の行き来を行いながら運用』しているとお伝えしました。

平成28年度財政投融資特別会計

こちらは今年度。2016年度予算ベースでの「財政投融資特別会計」なのですが、右側、「歳出」の中に、「公債等事務取扱費一般会計へ繰り入れ」という項目がありますね?

これがそれに該当します。

28年度はこれが7100万円ですから、微々たるものであるように見えるかもしれませんが、

【「例外的支払」の例(「公的企業⇒政府」)】
2006 年度 財政投融資特別会計⇒国債整理基金特別会計 12兆円

2007年度 日本郵政公社⇒一般会計 約1兆円

2008年度 財政投融資特別会計⇒一般会計、国債整理基金特別会計 計約11.3兆円

2009年度 財政投融資特別会計⇒一般会計 約7.3兆円

2010年度 財政投融資特別会計⇒一般会計 約4.8兆円

2011年度 財政投融資特別会計⇒一般会計 約1.1兆円
(独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構⇒一般会計 約1.2兆円
(独)日本高速道路保有・債務返済機構⇒一般会計 約0.3兆円

財政投融資特別会計に限ったものではありませんが、2001年度以降に限定して、これだけの金額が、「公的企業」から「一般政府」に「例外的に支払い」されています。

この際、GDPへの記載としては、「資産移転」という名目で計上されており、一見するとこれだけの金額、政府資産が増えたかのように見えてしまいます。実際そうなんですが、税収が増えたわけでもなんでもないのに収入が増えたように見えてしまうため、政府の財政状況が改善されたかの様に見えてしまうのです。

財政投融資特別会計的には、これらの資金は元々財政投融資資金を運用した結果生まれた「積立金」であり、財政投融資の資金は元々原資が「財政投融資債」と呼ばれる「国債」ですので、余剰資金が生れれば(利子率の変動に備えた一定の予備資金以外)全額「国債整理基金特別会計」へと組み入れられてきました。

上表で、「国債整理基金特別会計へ繰り入れ」とされているのがその積立金です。
財政投融資債の運用利益は国債の返済資金としても活用されているんですね。

ところが、2008年に勃発したリーマンショックの影響を受け、この財政投融資特別会計の積立金が切り崩され、「国債整理基金特別会計」ではなく、「一般会計」へと資産移転が行われているのです。

これは、実際の経済活動に伴ったものではありませんので、これを「GDP指標」に割り当てて国内の経済力を計る指標と考えるのは、本来であれば間違っているはずなのです。

このやり方は、今回採用される「2008SNA」だけでなく、これまで採用されていた「1993SNA」でも用いられていなかった、日本独特のやり方です。

「2008SNA」では、これを「資産移転」ではなく「持分の引出し」として項目を分けて表示します。
つまり、外側から見てこれらの収入が元々政府が同年に収入として得たものではなく、別会計から引き出したものだ、ということが外目から判別できるようにするわけです。

このことで、トータルでのGDPが変化することはありませんが、政府の収支状況もより正確な判断ができるようになりますね。


【国際収支統計との整合とは?】

よく読んでみたのですが、この項目は少しわかりにくいですね。私も誤解のないようにお伝えできるかどうかが少し自信ありません。

「財貨の輸出入における所有権移転原則の徹底」
とあります。

これ、要は日本が国外の生産地に対して、製造物等の「加工」を依頼した場合。
「財物」の移動があるかどうか、というところを重要視している様です。

つまり、車を1台製造するときに、車一台分、又はその一部を構成する材料が国境をまたいで移動した場合は確かに物の「輸出」と「輸入」が行われていますから、問題はありません。

ところが、製品が移動した後、物の移動がなくても、例えば電話で問い合わせをして、財物の移動が発生せずに問い合わせだけで依頼側の目的が完了したとしたら、これは当然「輸入」でも「輸出」でもありません。単に「サービス」の提供が行われただけです。

これまでは、この「サービス」についても輸入品、輸出品の金額に分配されていたわけですが、これを「財貨は財貨、サービスはサービスとして取扱なさい」という勧告を行っているのが2008SNAです。

まあ、どのみち「輸出入」に関連した部分ですので、日本国内の需要を計る指標としての重要性は薄い部分です。


次回記事に於きましては、①~③までの「GDP算出方法の改定内容」を総括する形で記事を締めくくりたいと思います。


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<継承する記事>第192回 内閣府、GDP算出方法の改定/2016年第二四半期二次速報より②
前回の記事を引き続き掲載しようと思っていたのですが、内容を理解していただくために、先に「財政投融資債」というものをご理解いただく必要があるなと感じたので、今回は「内閣府、GDP算出方法の改定/2016年第二四半期二次速報より」というテーマを少しお休みして、「財政投融資債」についての解説記事を作成します。


「財政投融資債」とは何か?

過去の記事で、「赤字国債」と「建設国債」の違いについて記事にしていたように思い込んでいたのですが、どうもこの記事は作っていなかったようですね。

日本の、所謂「国債」には「建設国債」と「赤字国債」の2種類の国債と、加えて「財政投融資債」と言われる3種類の国債が存在します。

順番から言えば、先に「建設国債」と「赤字国債」の説明を行ってから財政投融資債について説明を行うべきなのですが、今回のテーマは「国債」についての説明ではなく、「2008SNA」に従った、内閣府によるGDP改定がそもそものテーマですので、この話題は後日記事に委ねます。

ということで、今回の記事では「財政投融資債」というものについて説明します。

【財政投融資の流れ】
財政投融資の流れ

こちらは内閣府のホームページ に掲載されている、「財政投融資」の流れを、「一般会計」の動きとの間で比較できるようにしたものです。

図はいくつかあったのですが、これが一番わかりやすいと思います。
といっても、ぱっと見に理解できるものでもありませんね。

図の左側、青い部分が「一般会計」におけるお金の流れ。黄色い部分が「財政投融資」におけるお金の流れです。
「一般会計」というのは基本的に日本国政府全体の会計帳簿のことで、基本的に「税金」によって運用されています。

「財政赤字」などという言葉が使われるのは、基本的にこの「一般会計帳簿」の赤字のことを指します。

一方で「財政投融資」というのは、一般会計の会計帳簿とは別に、「財政投融資特別会計(財政融資資金勘定)」という会計帳簿の中で運用されます。「特別会計」と呼ばれるものの一つです。


「特別会計」には「財政投融資」以外にも、私がよくお示ししているものとして、「年金特別会計」というものがありますね? 年金会計については会計の仕組み上、「一般会計より繰り入れ」られる部分はあるのですが、逆に「一般会計に繰り入れ」られる項目はありません。

一般会計より繰り入れられる以外は、「年金特別会計」「基礎年金勘定」「年金積立金」という3つの会計帳簿の中で横断的に運用されています。

ところが、「財政投融資債」はこの年金特別会計のような特別会計とは異なり、政府の「一般会計」との間で、横断的に資金の行き来を行いながら運用されています。

運用状況はこんな感じです。

【2016年度財政投融資運用状況】
平成28年度財政投融資特別会計

「財政投融資特別会計」とは、制度的には「一般会計帳簿」とは別枠で取り扱われ、扱いとしては「金融機関」としての扱いとなります。

また一方で、この表の中に登場している「国債整理基金特別会計」という項目もまた一般会計や財政投融資特別会計とは別の、所謂「国債発行残高」を取り扱うための会計帳簿なのですが、こちらは「財政投融資特別会計」とは異なり、「中央政府」としての扱いになります。

次回以降で話題とする「GDP改定」で重要となる内容なので覚えておいてください。
今回はさらっと流しておきます。


【「財政投融資」の流れ】
では改めて、もう一度こちらの図を。

財政投融資の流れ

「財政投融資」とは、基本的に政府が発行した「財政投融資債」と呼ばれる国債で運用されています。

政府が発行した「財政投融資債」は、所謂「国債」ですから、市中金融機関に対して入札にかけられ、落札した金融機関に販売されます。

金融機関より受け取った資金は「財政投融資金」という、これまた別の会計帳簿に移されます。
「財政投融資金」に移された資金は他の行政機関、管理団体へと出資され、ここから私たち民間人や企業・地域などに有償で貸し付けが行われます。

ただ、その金利は現在で13年未満であれば0.01%。これを超えると0.1%、39年までで0.5%、それ以上で0.6%ということですから、非常に破格な貸付金利ではないでしょうか

勿論破綻する可能性もあり、回収不能に陥る可能性も否定できませんが、「赤字国債」や「建設国債」の様に「発注」という形でばらまくやり方に比べれば、財政的にも安定した運用が可能だと思います。

後日掲載しますが、「建設国債」は建築建造物が代替資産として残りますので「国富」として考えればプラマイゼロです(災害等で崩壊した場合は別です)。ですが、「赤字国債」にはこのような代替資産が残りませんので文字通りプラスマイナスすれば「赤字」になります。

ところが、これを「財政投融資債」によって賄えば、これは「貸付」ですから、バランスシート的には新規発行債を販売した際の「負債」と貸し付けを行ったことによる「貸付額」によって、双方が相殺されますから、こちらも「プラマイゼロ」ということになります。

貸付先が破たんした場合にこれが「赤字化」しますから、リスクを云々いうのであれば、まずは赤字国債を破たんさせる方法を提示してからにしろ、といいたくなります。共産党さん。

参院予算委 安倍政権の無責任さ浮き彫り リニア新幹線・辰巳議員が批判

ちなみに同記事では、『辰巳氏は「JRは、市場金利より低い金利で多額の借金を借り続けられる。利益供与ではないのか」と追及しました』とありますが、じゃあ赤字国債を発行して得た資金を投じた分野の業者にも同じように「利益供与だ」というのかと、これも突っ込んでやりたくなります。

「助成金」や「補助金」などはその最たる事例ですね。

最も共産党さんは、「赤字国債」そのものに反対していますから、このような論調がまかり通るのだと思いますが。

次回記事では、少し今回の「GDP改定」についての記事はお休みして、蓮舫氏の「二重国籍問題」について思うところがございますので、こちらを記事にしたいと思います。


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<継承する記事>第192回 内閣府、GDP算出方法の改定/2016年第二四半期二次速報より①
前回の記事の続きです。

内閣府が行うもう一つの改定基準、『新たな国際基準「2008SNA」』について。

「2008SNA」とは、日本語で正式名称を「2008年版国民勘定体系」という名称です。
こちらは2009年に、「国際連合」で合意された国民経済計算の「最新」の国際基準なのだそうです。

今更感マックスですが、つまり2009年に「国民経済計算(GDP)」の国際基準が改定されたのに、日本ではいまだにそれ以前の基準のものを用いていた、ということ。

内閣府資料によりますと、「2008年版国民勘定体系」とは、以下の様に掲載されています。

【国際基準「2008SNA」とは】
□国連で合意された国民経済計算に関する最新の国際基準

□前身の1993SNAからの変更事項は63項目にわたる

□1993SNAをベースに、90年代以降の経済・金融環境の変更を織り込んだ改定が中心。以下の4分野に集約

1.非金融(実物)資産の範囲の拡張等
 ・研究・開発(R&D)の資本化
 ・兵器システムの資本化 等

2.金融セクターのより精緻な記録
 ・雇用者ストックオプションの記録
 ・企業年金受給権の記録の改善 等

3.一般政府や公的企業の取扱精緻化
 ・一般政府と公的企業との間の例外的支払の取扱の精緻化 等

4.国際収支統計との整合
 ・財貨の輸出入における所有権移転原則の徹底 等

日本経済


【各国の以降状況】

この2008SNAの移行は、

・オーストラリア 2009年
・カナダ 2012年
・アメリカ 2013年
・ヨーロッパ各国 2014年
・韓国 2014年

と、日本以外の国はほぼ完了しており、日本はオーストラリアより7年、カナダより4年、アメリカより3年、欧州・韓国より2年遅れて導入するわけです。

これもまた、何だかなぁ・・・と思わざるを得ない部分ですね。


【金融セクターのより精緻な記録とは?】

2番は、同じ「国民経済計算」の中でも「分配側(生産側)GDP」の問題となります。

雇用者ストックオプションというのは、将来、一定の価格で雇用者が自社株を受け取ることができる権利のこと。
将来、権利を行使しようとしたときに、この「一定の価格」を株価が上回っていればこの雇用者は利益を得て、逆に下回っていればこの権利を放棄することができます。(上がるまで待つこともできます)

この、雇用者が手にした利益分を「雇用者報酬」これまでは計算に加えていなかったのですが、これを「雇用者報酬」に加えましょう、というのが「雇用者ストックオプション」に関する内容。

「企業年金」は所謂「国民年金」や「厚生年金」以外に企業に所属している従業員が積み立てている「上乗せ年金」のこと。
この受給権の記録を、これまでは上場企業にしか行っていなかったため、上場企業以外の企業にも導入しましょう、というのが「企業年金受給権」に関する内容です。


【非金融(実物)資産の範囲の拡張とは?】

この項目は、「生産側(分配側)」ではなく、「支出側」。つまり、私たちがよく見かけるあの「GDP」に関連する内容です。(生産側GDPと支出側GDPの違いについては、第164回の記事 をご参照ください)

「兵器システム」も同様だと思うのですが、「知的資本」。
ここでは「研究・開発」と記されています。今回の改定では、この「研究開発」という形を持たない成果物を生み出すためにかけられた費用を、「知的資本」として計上しましょう、ということになります。

「研究開発費」に該当するのは、

「人件費、原材料費、固定資産の減価償却費及び間接費の配賦額等、研究開発のために費消された全ての原価」

とされています。例えば「原材料費」であれば、その購入金額を「設備投資費」として企業は投資することができるわけですが、例えば「人件費」はこれがスタッフに対するお給料として発生していれば、これは「分配側(生産側)GDP」に計上されるものなので、支出側GDPには計上されません。

「固定資産の減価償却費」は読んで字のごとく減価償却されますので、固定資産の価値からマイナス計上されることになります。

「間接費の賦課額」というのは、例えば研究開発に直接関係のない、他の事業と共同で利用している設備の減価償却費であったり、研究開発は行わない、警備スタッフの人件費などを「研究開発費」として割り当てて原価計算する計算方法のことです。

従来、この様な費用は、「経費」としてそのまま処理されていたわけですが、今度の改定ではこのような経費を「研究開発費」として資産計上することとなります。

これまで計上されていなかった研究開発費が、GDP上「民間企業設備」という項目に計上されることになりますので、これがGDP全体を押し上げることになります。


次回記事では、「90年代以降の経済・金融環境の変更を織り込んだ改定」の内、残る2項目、その他改定内容についての解説を行っていきたいと思います。



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<継承する記事>第191回 内閣府 ビッグデータ活用の新たな経済指標開発へ②
こちらの記事 でもご紹介したのですが、タイトルにもございますように、内閣府はGDP(国内経済計算)の算出方法を見直し、その改定内容を今年度(2016年度)第二四半期(7月~9月)GDP二次速報より、反映させます。

今回の記事では、内閣府が改正する「国内経済計算」の計算方法について、その背景およびその改定内容が一体どのようなものなのか、その結果何がどう変化するのか、という内容についてご説明したいと考えています。

【ロイター記事より】
(※記事は関心がある方のみご覧ください)
GDP算出方法改定、名目19.8兆円増 「600兆円経済」に追い風か
[東京 15日 ロイター] - 内閣府は15日、国民経済計算の基準改定に伴い、基準年となる2011年の名目国内総生産(GDP)が19.8兆円、率にして4.2%押し上げられるとの試算を公表した。研究開発費や防衛装備品の購入費が新たに算入されることで、安倍政権が掲げる「600兆円経済」の実現に向けて追い風になる可能性もある。

今年12月に発表する16年7─9月期の2次速報から適用する。最新の「11年産業関連表」を取り込んだうえで、国連が09年に採択した国際基準を反映させた。試算は11年を基準年とし、名目GDPへの影響を分析した。

押し上げ分19.8兆円のうち、主な内訳は、1)研究開発の資本化16.6兆円、2)特許サービスの扱い変更1.4兆円、3)防衛装備品の資本化0.6兆円──など。11年の名目値は471.6兆円だったが、算出方法の改定で491.4兆円に増える見込みだ。

政府は20年ごろまでに名目GDPを600兆円に増やす目標を掲げている。内閣府の中長期試算によると、20年度の名目GDPは、高い成長率を維持したケースで582.7兆円。

11年と同様の押し上げ効果が見込まれれば目標は達成可能だが、実質2%・名目3%の成長確保が前提となる状況は変わらない。
内閣府

「GDP」は「国内総生産」という意味ですが、政府はこの確報データを「国民経済計算」という統計データの中に掲載しています。
こちらの記事 でもご紹介しました通り、「国内総生産」とは、「国民経済計算」の中の「国内総生産勘定」という項目に該当します。

内閣府は、この「国民経済計算」の計算方法を改定します、としています。

「GDP」が改定される理由

改定内容は、こちらのPDF で内閣府が紹介しています。

どのような内容に改正するのか、ということですが、PDFでは以下のように掲載されています。

【次回の基準改定に向けて】
• 平成28(2016)年を目途に実施を目指す

• 最新の「平成23年産業連関表」等を取り込む

• 新たな国際基準「2008SNA」への対応も併せて行う

一つ目。「最新の平成23年産業関連表」等を取り込むということですが、「産業関連表」につきましては、第159回の記事 で少しお伝えしましたね?

【産業関連表の構造】
産業関連表

簡単に言えば、企業側で生産された生産物が、どのような流通経路をたどって私たち消費者の手元に届くのか。
この経路を数値化した一覧表です。

例えば、

1.北海道の農場で生産された小麦が収穫され、小麦粉メーカ―に出荷され

2.小麦粉メーカーにて小麦は小麦粉として加工され、小麦粉はパン工場に出荷され

3.小麦粉はパン工場で加工されて食パンになり、食パンはスーパーマーケットまで出荷され、

3.食パンはスーパーマーケットで店頭に並べられ、これを手に取った消費者がレジで会計を済ませて

初めて私たち消費者の手元にまで届きます。

では、小麦が生産されて私たちの手元に届くまでの間に、同じ「小麦粉」にどれだけの付加価値が乗っているのでしょう。

例えば出荷するときには出荷業者も関わっているわけですし、加工する際には工場の部品メーカーも関わっています。
店頭に並べられる際にも販売員の手を通って店頭に並べられますし、レジを経由して私たちの手元に届きます。

この様に、商品が加工されて私たちの手元に届くまでの間に、どれだけの経路を経て付加価値が生れているのか、という指標のことを「中間消費」といいます。

産業連関表とは、この「中間消費」がいくらになるのかということを計算するために用いられる「分配率」の一覧表です。
産業連関表は5年ごとに更新され、最新の産業連関表は今年度(2016年度)6月に公表されました。

2016年度6月に公表されたのですが、そのデータは平成23年度(2011年度)のもの。
5年前かよ、というツッコミを入れたくなるところですが、これまではさらにその5年前。平成17年(2005年)のデータが用いられていたということになります。10年前のデータで現在の「名目GDP」は計算されているんですね。

これを5年前のデータに改定しましょう、というのが今回の改定内容の一つ。


次回記事ではもう一つ、『国際基準「2008SNA」』その他、今回の「改定内容」について記事にしたいと思います。


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<継承する記事>第190回 地域経済分析システム「リーサス」/ビッグデータの活用
改めまして、タイトルは「内閣府ビッグデータ活用の新たな経済指標開発へ②のタイトルで記事を作成してみます。

ニュースのみ、再掲しておきます。

【NHKニュースより(10月7日 5時34分)】
内閣府 ビッグデータ活用の新たな経済指標開発へ

GDP=国内総生産や家計調査などの政府の統計が、景気の実態を捉えきれていないという指摘があるため、内閣府は、スーパーの販売情報などのいわゆるビッグデータを活用した、新たな経済指標を開発することになりました。

政府は、国の経済規模を表すGDPや、消費の動向を示す家計調査など、数多くの経済統計を取りまとめ、景気判断や経済運営に生かしています。しかし、ネット通販の普及などにより、消費などの実態が経済統計に十分に反映されていないのではないかという指摘が出ています。

このため内閣府は、スーパーマーケットなどで蓄積されるPOSデータと呼ばれる販売情報や、カーナビによる経路の検索情報など、いわゆるビッグデータを活用した新たな経済指標を開発することになりました。内閣府では、ビッグデータを活用することで、景気の変化を迅速に捉えられるようになるほか、より深く分析することも可能になるとしていて、早ければ来年度にも試験的に新たな経済指標の公表を始める方針です。

ただ、こうした新たなデータは、天候などの特殊な要因で変動しやすい可能性も指摘されており、こうした課題をどのようにして克服するかを含めて、検討を進めることにしています。

ビッグデータ(イメージ)

記事は多他局・新聞社も出しているのですが、内容としてはNHKの記事が一番正鵠を射ていると思います。

現在の政府データについて問題だと考えられるのは、

1.指標のほとんどがサンプルデータであり、サンプルの取り方によって結果が大きく変わってしまう。

2.ベースとなったサンプルを抽出した時期と、比較する対象となる時期との間に複数年単位でのタイムラグがあり、今現在のデータを反映しきれていない。

3.「テレビゲーム」と「スマホゲーム」の関係の様に、同じカテゴリーでも活躍するフィールドが変化した場合でも、「古いフィールドが縮小している」というデータのみが反映され、新しいフィールドと比較しにくい状況が放置されている。

主にこの3つが挙げられると思います。


第159回の記事 や第164回の記事 は上記1番のケースの代表的な事例です。
GDP速報が1次速報と2次速報、確報とで内容が変わってしまうのも、「生産側(分配側)」で集計したGDPと「支出側」で集計したGDPの間で「統計上の不突合」と呼ばれるバイアスが発生するのも、この「サンプルデータ」の違いによるものです。

第165回の記事 でご紹介した「消費活動指数」と「消費者物価指数」の違いも同様ですね。

日本で消費されるものや生産されるものを、一寸の違いもなく、完全に掌握しろと言ってもまず無理な話だというのはその通りなのですが、特に「支出側」のデータを調査する際には「アンケート」という方法が用いられますので、回答者のさじ加減によってもその結果は異なってしまうのです。

勿論生産側のデータを計測する場合も、企業に対するアンケート結果が反映されるわけですが、消費者よりは少なくとも真剣に回答しますので、結果として正確性のある情報が出てきます。

ただ、それでも結局「人」が判断するものですし、また「サンプルデータ」であることに変わりはありません。

サンプルデータを全体に反映させるために計算式等が用いられるわけですが、この計算式を作成する際の大本になるデータを最大で5年前(一部データは10年前)のものを用いていますから、いくら指数演算を行って整合性を取ろうとしても、完全に正確なものは出てこないのです。

特に消費量や消費額が大幅に変動する際はその変動幅がより大きく判断されてしまう傾向がありますから、実際の市場動向とは異なる計算結果が出てくるのです。第53回の記事 でお伝えしましたね。

曲者となっているのは全ての統計を算出する際の大本となっている「ウェイト」の問題。
本来であれば「幾つ消費されたのか」という「消費量」を用いて分配しなければならないのに、単位も、重量も、付加価値も、何もかも異なる数多の「コモディティ」を分配するために、「共通の単位」として「金額」を用いなければならなくなっていること。

同じ「チョコレート」でも、「チロルチョコが幾つ売れたのか」ということと、ゴディバの高級チョコレートが幾つ売れたのか、というのでは全く意味が違います。

ゴディバチョコ

30粒入り8000円のゴディバチョコと袋詰め30個600円のチロルチョコでは、同じ「30粒」という単位でも、まったく意味が違いますね? 例としては極端ですが、現在の政府指標では、このようなニュアンスの違いが、正確に反映されていないのです。

だから第182回の記事 の事例のように、「トータルの売り上げ台数は変わらず、小型テレビの売り上げ台数が急落し、代わりに大型テレビの売り上げが伸びている」という状況が、消費者物価指数では一括して「テレビの物価が急落している」などという、現実とは全く違うデータに代わって出てきたりするのです。


また、このようにある意味「いい加減」に計測されている「ウェイト」は基本的に5年間同じものが利用されます。
これを指数演算することで「整合性が取れるように」しているのですが、先ほどのテレビの事例を見ても、とても整合性が取れている状況にはありませんよね?

この様な状況を問題視、内閣府では「アナログデータ」ではなく、ニュース記事にあるように、各スーパーマーケット等にある「POSデータ」やカーナビによる経路の検索情報などを活用した「データベース」を作成し、ここに外部からアクセスする形でより正確な「統計指標」を作成しようとしているわけです。

前回の記事 でご案内した「地域経済分析システム「リーサス」」などはその先駆け的なデータベースです。

ただ、同様に前回ご案内した通り、都道府県・市区町村ごとに確認できる「1年間に新たに発生した付加価値」の元となるデータが、4年前に集計されたデータである、というのでは話になりません。そこで、企業ごとの売り上げ・出荷情報等をリアルタイムでデータベースに反映させ、統計データ化させることが今回の目的だろうと思います。

カーナビ情報等は、基本的にGoogle等が公開している情報が主にはなるのでしょうが、公開されている分、政府としても利用しやすいと思います。

「アプリ」などをはじめとする「出荷」を伴わないネット販売、特にアプリ内課金等をどう反映させるのか、などは気にかかるところですが、まずは活用できる範囲から、複合的に利用していくことで、より正確な経済状況を反映させた指標が出来上がるのではないでしょうか。

統計データ好きの私としては、非常に楽しみなところです。

そして、何よりこのような「現物」としては資産が残りにくい「研究費」「開発費」であったとしても、ここから発生した利益が給与として従業員の所得に回されているわけですから、勿論このような「研究開発費」も本来であればGDPデータに加えるべきところです。

ということで、実は以前少し示しておきながら、そのまま放置していた、「内閣府GDP見直し」に関する記事を次回作成してみたいと思います。


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<継承する記事>第189回 内閣府 ビッグデータ活用の新たな経済指標開発へ①
本来「内閣府 ビッグデータ活用の新たな経済指標開発へ②」とすべきところなのですが、今回の記事は前回の記事 でもご紹介しました通り、既に政府が公開済みの ビッグデータ活用システム「リーサス(RESAS)」 に関連した内容を中心に記事にしたいと思います。

実際にこのリーサスが公開されたのは2015年4月21日。
昨年度はじめにすでに公開されています。

内容としては、政府がこれまで公開していた様々な経済指標に加え、政府データだけでなく、例えば帝国データバンクなどをはじめとする民間の調査機関などのデータも活用し、様々な経済指標を組み合わせて見ることができるようになっています。

データが重すぎるので、これを見ながら・・・となるとあまりに時間がかかりすぎるので、特徴的な一枚のデータを中心にご説明してみます。

RESAS(稼ぐ力)

データは、私が住んでいる愛媛県を中心に見てみます。
こちらは、愛媛県の「稼ぐ力」。つまり、期首と期末を比較して、1年間でどの程度経済が成長したのか、ということを示した数値です。

画像では、「松山市0.39」となっています。
この0.39問う数字がそもそも何を表しているのかということは明確にはわかりませんが、同じ数字を他の市・町と比較してみますと、こんな感じです。

中予
 松山市 0.39
 伊予市 2.15
 東温市 2.53
 松前町 1.31
 砥部町 0.57
 久万高原町 0.33

となっています。その他、他の主要都市と比較すると、

 今治 1.93
 新居浜 0.95
 西条 1.23
 八幡浜 0.91
 宇和島 0.34

等となっています。データは2012年「経済センサス」からの出展となっています。
県庁所在地にもかかわらず、松山市は他の市町と比較しても下から三番目(全20市町中)となっております。

人口も一番多いはずなんですけどね。
ただ、これはあくまでも2012年の話。民主党政権時代の数字ですので、安倍内閣に入ってから、どの程度成長したのか、というところが一番知りたい部分です。

この、「リーサス」というシステムは、このような様々な経済指標を、横断的に一つの画面の中で確認できるシステムです。
一つの画面、といいましても、項目ごとに切り替える必要はありますが、票やグラフで確認するよは何倍もわかりやすくなっています。

この他にも、品目ごとに、どの品目がどの地域からどの地域に物流しているのかというデータや、消費がどの地域からどの地域に動いているのか、など動的なデータも見ることができます。

「ビッグデータ」とは何なのか。
これを一言で言い表すのはとても難しいのですが、リーサスが取り扱っている「消費動向」や「生産状況」を日本全体だけでなく、都道府県、市区町村別に複合的に集計された結果もまた一つの「ビッグデータ」です。

「速報性」という意味で「リーサス」はまだ「地域創生」の為に必要な本当の課題をクリアできてはいませんが、私がまとめているような表やグラフのデータを地図上に重ねることで、視覚的に情報を判断できる状況を作り上げたところは評価すべきだと思います。

ちなみにこの「リーサス」を作るためにも「公共投資」が行われています。「ダム」や「道路」、「新幹線」など、目に見えるわかりやすい「公共投資」ではありませんが、これも立派な「公共投資」なんです。

単に「発注」という形でお金を企業に分配し、それが国民の所得に・・・というやり方も確かに有効かもしれません。
インフラ整備や国土強靭化もよいでしょう。

ですが、このようなすぐには目に見えない分野への投資が地域経済活動に活用され、地域経済化の活性化のために活用されるのならば、これは大いに評価すべきではないでしょうか。

麻生内閣の時、「電子黒板」を代表とする教育現場へのICTの環境整備のために補正予算が組まれ、公共投資が行われた事例がありました。短期的に見れば「無駄遣い」に見えるかもしれません。

ですが、このことで電子黒板の製造に対して資金が割り当てられましたし(所謂「公共事業」では資金の分配されない分野です)、また実際に教育の現場に導入されることで生徒たちの学力アップにもつながります。これを「経済対策」として実施するアイデアはとても有益だと思うのです。


私たちは、よく「経済対策」として「ケインズ政策」を比較してお示しすることがあります。
ケインズ政策とは、「資金が不足する金融市場に現金通貨を供給し、国債を発行して資金を実体経済に再分配することで経済の活性化につなげていく」モデルです。

この場合の「実体経済への再分配」=「公共事業」だと考える人たちもいます。

ですが、「建物」や「インフラ」として形に残るものだけでなく、研究開発費として普段は目に見えにくい分野への投資を行い、業務システムの効率化を行ったり、将来の経済発展のために活用できる分野への投資もケインズの目指した「財政政策」の一種だと思うのです。

安倍内閣の目指した「第三の矢」も本来はこういったものであるべきだと私は思います。
ということで、改めて次回は「内閣府 ビッグデータ活用の新たな経済指標開発へ②」というテーマで、改めて今回安倍内閣が挑む経済指標の作成について記事を作成したいと思います。



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第186回の記事 で少しお伝えしたのですが、タイトルにもございます通り、内閣府は「GDP=国内総生産や家計調査などの政府の統計」の見直しに入りました。

タイトルはNHKニュースより抜粋しました。NHKニュースですので、すぐに消えてしまいますから、本文も引用しておきます。

【NHKニュースより(10月7日 5時34分)】
内閣府 ビッグデータ活用の新たな経済指標開発へ

GDP=国内総生産や家計調査などの政府の統計が、景気の実態を捉えきれていないという指摘があるため、内閣府は、スーパーの販売情報などのいわゆるビッグデータを活用した、新たな経済指標を開発することになりました。

政府は、国の経済規模を表すGDPや、消費の動向を示す家計調査など、数多くの経済統計を取りまとめ、景気判断や経済運営に生かしています。しかし、ネット通販の普及などにより、消費などの実態が経済統計に十分に反映されていないのではないかという指摘が出ています。

このため内閣府は、スーパーマーケットなどで蓄積されるPOSデータと呼ばれる販売情報や、カーナビによる経路の検索情報など、いわゆるビッグデータを活用した新たな経済指標を開発することになりました。内閣府では、ビッグデータを活用することで、景気の変化を迅速に捉えられるようになるほか、より深く分析することも可能になるとしていて、早ければ来年度にも試験的に新たな経済指標の公表を始める方針です。

ただ、こうした新たなデータは、天候などの特殊な要因で変動しやすい可能性も指摘されており、こうした課題をどのようにして克服するかを含めて、検討を進めることにしています。

長い間「政府の統計指標は消費の実態を正確に反映できていない」と訴え続けてきた私としますと、これは「朗報」です。

「消費者物価指数」や「GDP」、「家計調査」など、現在政府が発表している指標は、「アンケート調査」を中心とした、実にアバウトな指標に頼って公表されています。

対象が「家庭」であったり「企業」であったりするわけですが、当然のこととして「家庭」を対象に行ったアンケート調査結果と「企業」を対象に行ったアンケート調査結果では、その結果に狂いが生じます。

政府は双方の整合性を取るために、計算式によって無理やり双方を統合しているのが現状ですし、その他計算式に使われる元データが5年前や10年前のデータを下に計算しているようなものが多く、大幅な狂いが発生しない様指数計算などを行って整合性を保とうとはしているのですが、特に消費動向や物価に急激な変化が出た場合には全く対応しきれていないのが現状です。

そこで、消費動向をより正確に把握するため、「ビッグデータ」を活用した新たな経済指標の開発を行うようになりました、というのが今回のニュースです。


「ビッグデータ」って何?

このところ、よく耳にするようにはなっているかもしれません、この「ビッグデータ」という言葉。
なんとなく知ってはいても、じゃあいざどんな情報なのか、って聞かれると、はっきり答えることが難しい人も多くいるのではないでしょうか。

実は内閣府のこの「ビッグデータ」を活用した取り組み、何も現在に始まったことではありません。
私、過去の記事で少しだけ触れたことがあります。

第86回 本当のアベノミクス
↑こちらの記事は、新藤元総務大臣が来松(松山に来るってことです)なされた際に私が参加した勉強会で、新藤さんからお伺いした内容を記事にしたものです。

伝聞したものを、きちんと咀嚼できないまま記事にしていますので、記事としては少し拙い仕上がりになっていますが、記事全体が、現在の安倍内閣がすでに取り組んできた「ビッグデータ」を活用した様々なプロジェクトの内容となっています。

で、この記事の中で、一番最後の章で「ちなみに・・・」から始まる文章。
私が新藤さんに直接質問させていただいた内容を掲載しています。

なぜこの質問をしたのかというと、とあるきっかけで、私が居住する松山の経済状況をよくするにはどのような方法を取ればよいのか、ということを調査する必要がうまれ、この時に調査した体験から、「このままでは諸々の経済対策が『後手』に回ってしまう」と感じたことが理由です。

どんな場合でもそうなのですが、本当に経済をよくしたいと考えるのなら、まずは「現状」を把握することが一番大切です。

愛媛県 地図

私の居住する愛媛県は、数にして20の市と町から形成されています。
上図では20の市町を5つのブロックに分けていますが、このブロックの内、「南予地方局」管轄エリアと「八幡浜支局」管轄エリアをとまとめて「南予(なんよ)」、「東予地方局」と「今治支局」の管轄エリアをまとめて「東予」といいます。

真ん中のピンク色のエリアが「中予」という地域で、中予の中の「松山市」が所謂県庁所在地になります。
中予地区全体で見ますと、アベノミクスの恩恵をきちんと受けている地域もあるのですが、「松山市」がその恩恵に預かれているのかというと、これは少し微妙なところです。

構造とすると松山の人が、その収益を松山市以外の地域で取得し、消費もまた松山市以外の場所で行っている、というような構造です。県庁所在地ですので、勿論人口は全市町中最も多いのですが、松山という地域にはその人口を受け入れられるキャパのある働き先がないのです。

で、このような情報を松山市に挙げて我が事として受け止めてもらおうにも、実は松山市に対して示せるデータが、現時点で言えば「2015年度」データしか存在しないのです。

2015年。増税が行われたまさにその年のデータです。ですが、既にそれから丸一年が経過し、今年度も早半年以上が過ぎているのです。「雇用」に関しても同様なのですが、「完全失業率」や「就労者数」を把握できるためのデータが、数年前のものしか存在しません。

これでは、例えばリーマンショックのような経済ショックが突然発生したとしても、現在の雇用状況がどうなっているのかすらわからないわけですから、はっきりって「手の打ちようがない」のです。経済対策を施したとしても、その結果が1年後にしかわからないというのでは話になりません。

「松山」という地域を「国」であると考えると、「松山国」の人が国外に働きに出て「松山国」の家族に仕送りし、その家族がまた国外で消費を起こしているような状況にあるわけですが、本来の松山市のあるべき姿は全く逆。

周辺の市や町から出稼ぎに来てもらい、松山で消費を起こしてもらうような体制を本来であれば取るべきなのです。
なんといっても「県庁所在地」なんですから。

ですが、松山市は、現時点で松山市の経済状況がどうなっているのか、把握するすべを保有していないのです。
雇用状況がどうなっているのか、把握できていないのです。


ただ私、たまたま松山市に居住していますので、今回は「松山市」の事例を示したのですが、実はこのような状況にあるのは「松山市」だけではありません。一部市区町村で独自にデータ集計を行っている自治体以外、まったく松山市と同じような状況にあります。

そこで私は新藤さんに対して、

「これでは『地域創生』といっても全てが後手に回ってしまうんじゃないでしょうか。
もっと短期間で経済状況や雇用状況が把握できる方法が必要なのではないでしょうか」

という質問を投げかけたのです。

これに対して新藤さんから返ってきた返答が『地域経済分析システム(RESAS(リーサス))』というシステムの存在に関する内容でした。


次回記事では、少しこの『地域経済分析システム(RESAS(リーサス))』というシステムについてご説明したいと思います。その後、改めて内閣府が開発しようとしている「新たな経済指標」に関して掲載できればと思います。


この記事のカテゴリー >>実質賃金と名目賃金


前回の記事 に於きまして、「税収」の内、「源泉徴収分所得税」について少しお伝えしたと思います。

「源泉徴収」とは、所謂「給与所得者」が支払っている所得税ですから、この分野の所得税が減っているということは前年度と比較して「給与所得」総額が減少している可能性があることを示唆しています。

但し、あくまでも所得税が前年度割れをしているのは「累積」であって、8月単年度では前年比でプラスとなっています。
そこで、一体どのタイミングでマイナスになっているのか、ということを過去に遡って調べてみると、6月までは累計前年同月比で107.2%。つまり大幅なプラス成長。

ネックとなっているのは7月度の源泉分所得税収です。つまり、7月にある何か特別な出来事が原因である、ということ。
調べてみますと、源泉徴収の納付ルールの中に、「納期の特例」というルールがあり、特例の承認を受けている人は、今年の場合であれば2016年1月~6月までの支払い分を、一括して2016年7月11日に納付すればよい、ということになっています。

つまり、7月の納税額が極端に減少している理由として、昨年度(2015年度)1月~3月までの期間を含む特例期間に特例の承認を受けていた人の数が前年よりも減っていたことが理由としては考えられるようです。

今回の記事では、この内容に関連しまして、昨日(2016年10月7日)に厚生労働省より、名目賃金や実質賃金に関連した「毎月勤労統計」というものが発表されていますので、今年度8月の「賃金」に関連した情報を掲載できればと思います。


2016年8月分毎月勤労統計

賃金

あくまでもこのデータは、速報性を重視した、「常用雇用者数5名以上の事業所」の「サンプルデータ」となっていることを前提としてお伝えします。

ただ私、少し勘違いしていたのですが、「常用雇用者5名以上の事業所」であれば、その事業所に務める「常用雇用者以外の労働者」についてもデータとしては含まれている様です。

それでは改めまして、「2016年8月度毎月勤労統計」について。
ニュース等では、「実質賃金が0.5%増加しました」という情報がほぼタイトルとして取り上げられている様です。
ただ、「実質賃金」というデータは実際には存在しません。「実質賃金指数が増加した」というのが正確な情報です。

「実質賃金指数」は「名目賃金指数」を「消費者物価指数(持家に帰属する家賃を除く)」で割った指数です。

第178回 以降のシリーズでお伝えしていますように、8月の消費者物価指数も相変わらず「エネルギー価格の下落」に伴う影響で、「消費者物価指数」そのものが下落していますから、物価が下落した分「消費できる量」は増えますから、当然「実質賃金」は増加します。

ですので、今回のデータとしては「実質賃金」よりも「名目賃金」が増加しているのかどうかとういことの方が重要になります。
仮に名目賃金が下落していれば、それは企業が「給与」としての支出を減らしているということになりますからね。

企業が支出を減らすケースとしては、「企業業績が悪化している」もしくは「利益が膨らんでいるのに内部留保を増加させている」かのどちらかです。名目賃金の増減は「企業業績」を図る指標ともなるわけです。


悪化している「名目賃金」

そう。実は2016年8月度の「名目賃金」は「前年同月比」を下回っているのです。
下落幅は0.1%。微々たるものですけどね。

金額は全事業所の平均で27万1676円。ですが、です。
この項目を少し分解してみてみると、ちょっと違う事情が見えてきます。

「名目賃金」は「現金給与総額」を最大枠として、「きまって支給する給与」と「特別に支払われた給与」の二つに分けられています。「きまって支給する給与」が所謂「月給」のこと。「特別に支払われた給与」が所謂「ボーナス」のこと。

2016年8月度の「きまって支給する給与」は25万8977円で前年同月比0.3%のプラス増加。
一方「特別に支払われた給与」は1万2699円で前年同月比マイナス7.7%と減少しています。

そうなんです。実は、2016年度8月の「現金給与総額=名目賃金」を下落させている主犯は「特別に支払われた給与=ボーナス」だったのです。

でも、考えてみてください。ボーナスの支給額で1万2699円って、少し少なすぎると思いません?
8月ですから、確かにボーナス支給月である企業もあるかもしれませんが・・・・

ということで一般的にボーナスが支給されるであろう7月のデータを見てみます。


【2016年7月に支払われたボーナス】

7月度の「特別に支払われた給与」を見てみますと、11万2637円で、前年同月比プラス3.7%となっています。
金額にして前年より4042円のプラス。8月に「特別に支払われた」給与は前年同月比でマイナス879円。

7月は「きまって支給する給与」も0.1%増えています。つまり、8月の平均給与所得が前月を下回った理由は、昨年8月に支給されていたボーナスが前倒しで7月に支給されたケースが増えたから、と考えるのが正確な見方だと思います。


【「所定内給与」と「所定外給与」】

「きまって支給する給与」は、さらに細分化されていて、「所定内給与」と「所定外給与」の二つで構成されています。

「きまって支給する給与」全体は前年同月比0.3%とプラス成長しているのですが、「所定外給与」は実は-1.9%と大幅なマイナスです。一方「所定内給与」は0.5%でプラス成長しており、ここから見えてくるのはこれまで残業や時間外労働で対応していた分野を「所定内労働」で対応するようになり、時間外労働を行わずとも賃金が上昇する傾向が生まれ始めていると考えることができます。


【「一般労働者」と「パートタイム労働者」】

「毎月勤労統計」では、労働者全体を「一般労働者」と「パートタイム労働者」という分類でも分けています。

この分野を見ますと、全体で「一般労働者」が前年同月比で0.0%なのに対し、パートタイム労働者の前年同月比は-1.9%と大幅に減少しています。

「パートタイム労働者」で見てみますと、ボーナスは-7.2%。所定外労働が-8.5%と共にマイナス要因としては大きくなっているのですが、「所定内労働」だけで見てみましても、-1.7%と大幅に減少しており、一見すると「パートタイム労働者の扱いがひどくなっているのではないか」と考えることもできます。

ただ、「就業形態別」の労働時間を見てみますと、常用雇用者の前年比-0.5と比較して、パートタイム労働者の労働時間は-2.4と大幅に減少していることから、これまでパート労働者に頼っていた分野を常用雇用者が担うようになってきたと考えることができるのではないでしょうか。


勤労統計全体で見ると、「ボーナス払い」の影響こそあるものの、全体としては順調に給与所得は増加している、と考えることができるのではないでしょうか。


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